説明

ラミナリンまたはオリゴラミナリンを主成分とする敗血症および敗血症性ショック治療用薬物

本発明は、敗血症および敗血症性ショックの治療用薬物の製造における、ラミナリン、好ましくは可溶形のラミナリン、またはオリゴラミナリンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敗血症および敗血症性ショックの治療に適切なラミナリンまたはオリゴラミナリンを主成分とする薬物に関する。
【0002】
敗血症またはセプシスは、感染による身体の免疫系および凝固系の過剰反応を特徴とする。この反応は、全身性、すなわち全身の感染、および血液凝固を特徴とし、次いで重症セプシスと称する急速な臓器不全を起こし、しばしば死に至る場合がある現象である。
【0003】
したがって重症セプシスは、例えば、肺、腎臓、心臓血管系および/または他の臓器などの1つまたは複数の臓器不全を伴うセプシスとして定義される。
【0004】
敗血症性ショックは、一般的で重大な形態の重症セプシスである。敗血症性ショックは、心臓血管系の機能が停止し始めた時、および動脈圧が危険なまでに低いレベルに下がった時に起こる。
【0005】
セプシスの症状は、年齢、以前の健康状態、および感染に対する患者の反応によって、人により様々であり得る。疾患の進行は予測できず、一部の患者の状態は急速に悪化し、重度のセプシス段階に移り、次いでこれらの患者は肺、腎臓、心臓血管系および/または他の臓器の不全症に罹る。
【0006】
一般にセプシスは、身体のいずれの部分にも起こり得る、細菌性、ウイルス性、または真菌性感染の結果である。
【0007】
肺炎、外傷、外科手術、熱傷、または癌などの重病に罹っている人々は、セプシスに罹患しやすい恐れがあり、癌または肺炎の合併症後に死亡する人々は、実際にセプシスが原因で死亡することが多い。薬物で免疫系が衰弱している高齢の人々や患者は特に脆弱である。
【0008】
死亡率は、症例の30〜70%に達することがある。
【0009】
グラム陽性またはグラム陰性の細菌、菌類、ウイルス、および寄生虫によって起きるセプシスまたは敗血症性ショックの症例数は、
− 病院環境におけるカテーテルおよび他の侵襲性器具使用の増加
− 化学療法の増加、および臓器移植における免疫抑制剤使用の増加
− 重症の炎症性疾患の増加
におそらく関連する憂慮すべき増加を表している。
【0010】
セプシスおよび敗血症性ショックは、
− グルコースが豊富な生理的血清から構成される液体
− 血圧を回復するための血管収縮性薬剤、および
− 抗生物質
の投与により治療される。
【0011】
これらの治療には、患者の酸素投与も含まれる。
【0012】
言及したばかりの従来のこうした治療は、炎症の有害作用を抑制すること、および抗菌防御能を刺激することを目的とし、特に、
− 抗LPS抗体
− 抗TNF−α抗体
− 新規の抗凝固剤、すなわち活性なプロテインCおよびドロテコジン(drotecogin)
の投与を含む、代替手法により現在補完されている。
【0013】
本発明の目的は、特に、敗血症および敗血症性ショックに対処する付加的手段を、医学界に提供することである。
【0014】
実際、敗血症または敗血症性ショックの発現に先行する臨床的現象が、細胞応答の非常に広範な活性化を引き起こし、その結果、サイトカイン類および特にサイトカインまたはケモカインのTNF−α(腫瘍壊死因子α)、プロスタグランジン、脂質メディエーター、ならびに活性化酸素体など、幾つもの臓器を炎症状態にしておくと思われるあらゆる種類の炎症性メディエーターが、血清および肝臓に放出され、その中で最も罹患しやすい臓器は腎臓、肝臓、腸、および肺であることが見出された。
【0015】
したがって本発明が基づく論拠は、上記で引用した炎症性メディエーター、特に患者血清中のTNF−αの含有量を減少させること、および特に免疫を強化し、病原体を除去する際にその反応が知られているクッパー細胞の個数を増加させることを可能にする手段を見出すためであった。
【0016】
驚くべきことであり、意外にも、ラミナリン、特に可溶形のラミナリンを示す公知のβ−1,3−グルカン、およびオリゴラミナリンの有効量を特に経口経路で患者に投与することによって、該物質が、TNF−α濃度に対して減少の方向に作用し、クッパー細胞数に対して増加の方向に作用することが可能になることを見出したことは、上訴会社の功績である。
【0017】
したがって本発明の一目的は、敗血症および敗血症性ショックの治療を意図した薬物の製剤に、ラミナリン、好ましくは可溶形のラミナリンまたはオリゴラミナリンを使用することである。
【0018】
有利な一実施形態によれば、本発明の一目的は、敗血症またはセプシスまたは敗血症性ショックの治療を意図した経口投与用薬物の製剤にラミナリンまたはオリゴラミナリンを使用することであり、該薬物は、身体に毎日貢献するのに十分な量、したがってラミナリンまたはオリゴラミナリンを体重kg当り2〜21mg、好ましくは6〜15mgの量で患者に投与される。
【0019】
上訴会社が本発明に到達するのを可能にした研究を説明する前に、「ラミナリン」という用語が、褐藻から抽出され、分子量が約2500〜約6000であるβ−1,3−グルカン型多糖類の混合物を示すことを念頭に置かれたい。
【0020】
一方、オリゴラミナリンは、重合度が2〜10の間、すなわち分子量が350〜2000の間であることを特徴とする、ラミナリンを加水分解して得られるβ−グルカン型オリゴ糖類の混合物である。
【0021】
ラミナリンは、β−1,3アセタール結合を介して結合した、15〜35グルコピラノース単位の線状主鎖で構成され、この主鎖は枝分れの比率が低い。
【0022】
平均重合度は約25である。
【0023】
ラミナリンは、可溶形および不溶形で存在する。
【0024】
褐藻からそれを抽出し、必要に応じ可溶形および不溶形のラミナリンを分離するために、特に、2003年6月5日に公開した本出願会社の国際特許出願WO03/045414号を参照することができる。
【0025】
以下に記載の本研究に関して使用され、本発明に到達することを可能にした特定のラミナリンは、分子量が4500、平均重合度が25であって、基本的には重合度が20〜30の範囲である多糖類から構成される。
【0026】
ラミナリンは、無臭で無風味のオフホワイト粉末の形で供給される。
【0027】
上記で考察した実験研究により、ラミナリンは、特に経口で投与すると、エンドトキシンショックの身体的反動に対して保護作用を発揮することを示すことができた。
【0028】
これらの結果により、マクロファージおよびNK(ナチュラルキラー)細胞などの免疫担当細胞に対して、ラミナリンが免疫賦活剤効果を発揮すると考えるのも当然であろう。
【0029】
当該研究に関して、該実験で使用された生物体に起こったエンドトキシンショックは、リポ多糖類またはLPSの投与により生じ、その結果は公知のように細菌の攻撃と類似している。
【0030】
上記研究用に選択された動物は、Wistar Han雄性ラット(Harlem、Netherlands)だった。
【0031】
実験は、各々ラット8匹の2群で行った。
【0032】
2群のうち一方のラット、即ち「対照群」に、AO4商品名(UAR、France)の入った標準飼料を「無制限に」供給した。他方の群のラットに、商品名「Dectinan」で市販の上記ラミナリンを補充した以外は同じ飼料を供給し、第一段階では4日間(−4〜−1)、Dectinanを5重量%、次いで第二次段階の21日間(0〜21日)は10重量%で該飼料を強化した。この第2群のラットを「Dectinan群」と表す。
【0033】
21日目に、体重kg当り10mg相当量のLPS腹腔内注射により、2群のラットに対しエンドトキシンショックを引き起こした。
【0034】
22および23日目はラットに飼料および水を与えず、24日目に堵殺した。
【0035】
下記パラメータを調査した
・水および飼料の摂取量
・体重の変化
・脂質および糖質のバランス
・直腸温度
・白血球数
・炎症性メディエーター(血清TNF−αおよびPGE2またはプロスタグランジンE2
・肝臓の常在マクロファージ、すなわちクッパー細胞の組織検査マーカー(ED2および/またはペルオキシダーゼ活性)
・LPS処置の毒性マーカー(血清ALT、AST、およびLDHの活性、肝臓、脾臓、胸腺および肺の組織検査)
・盲腸結腸の発酵(糞便および盲腸の増殖重量)。
【0036】
各種の回収および測定が行われる日を、下記表Iで確認する。
【0037】
【表1】

【0038】
さらに特に、下記測定を行った。
a)LPS注射前
・体重
・湿った糞便、および凍結乾燥後の糞便の重量(24時間かけて回収)
・食餌および飲料水の重量
・尾静脈から血液の採取:トリグリセリドおよびグルコースの定量
b)LPS注射後(0、2、4、6、8、および24時)
・直腸温度
・尾静脈血液の採取:トリグリセリド、グルコース、PGE2、TNF−α、遊離脂肪酸、ALT、AST、およびLDH(乳酸脱水素酵素)活性の定量
c)堵殺時
・門脈からの血液:遊離脂肪酸の定量
・大静脈からの血液:血液構成(血球計数、ヘマトクリットおよびヘモグロビン)の測定、ならびに血清における遊離脂肪酸、トリグリセリド、PGE2、TNF−αおよびALT、ASTおよびLDHの活性の定量
・肝臓:重量、組織検査(ヘマトキシリン−エオシン、ペルオキシダーゼ活性およびED2抗体を介するクッパー細胞の検出)用試料の凍結
・脾臓:重量、および組織検査(ヘマトキシリン−エオシン)用としてホルムアルデヒド中に試料を保存
・盲腸:盲腸全体および空の盲腸の重量
・胸腺および肺:組織検査(ヘマトキシリン−エオシン)用としてホルムアルデヒド中に保存した試料。
【0039】
記録結果に統計処理を行った。
【0040】
これに関連して、以下に言及する値は、平均値±SDM(平均値の標準偏差)を表す。LPSの投与前、および堵殺時に得られた結果を、(More Excell html +intro java +cd、著者(複数)Gottleber、01−2000に記載の)Excellプログラムを使用した2群の間のスチューデントt検定(Appareils et Methodes en Biochimie[生化学における装置及び方法]by Pierre Kamoun、3版、medicine sciences Flammarion、1987に記載)で分析した。LPS注射後の各種パラメータ動態検査は、二元配置分散分析法、(Traitement de donnees avec SPSS pour Windows [WindowsのためのSPSSを用いたデータ処理](8.0、9.0版)、著者(複数):Fernando OuelletおよびGerald Baillargeon、出版日:01−2000、に記載の)SPSSプログラムを介するLawrence出版のRudolph N.Cardinalによる「For the Behavioral Sciences Researcher」に記載の分散分析により処理した。
【0041】
統計処理の前に、TNF−αおよびPGE2パラメータ用として個々の値の対数変換を行った。差異がp<0.05(pは許容差5%の確率を意味する)である場合、統計的に有意と考えられる。
【0042】
LPS投与前に得られた結果は、以下に示す通りである。
【0043】
ラットの到着1週間後、ラット平均体重は136±1gであり、無作為の方法で対照群およびDectinan(登録商標)群の2群に各々8匹を分配した。治療の第一日目からLPS注射日までの体重の増加、ならびに水および飼料の総消費量を表Iに示す。該食餌はこれら3種のパラメータに影響を及ぼさず、ラミナリンに毒性が無いことの証明である。
【0044】
記録データを下記の表IIにまとめた。
【0045】
【表2】

【0046】
処置の間の糖血症およびトリグリセリド血症における変化をモニターするために、毎週血液試料を採集した。それぞれ図1および2からの結果として、Dectinan(登録商標)で強化した食餌により、糖血症およびトリグリセリド血症は処置25日後で有意に(4日で5%、および21日で10%)低減され、処置の間の糖血症およびトリグリセリド血症における変化を例示している。
【0047】
24時間の糞便を週1度回収して計量した。
【0048】
図3に示す表からの結果として、Dectinan(登録商標)で強化した食餌により、糞便重量が処置の第一週目から10%増加した。
【0049】
糞便中の水分損失も大きく、Dectinan(登録商標)で強化した飼料投与の第3週目で10%、糞便の水分率は24.7±1.4%であって、一方対照群では17.8±1.5%(*p<0.05、スチューデントt検定)であった。
【0050】
LPSは、投与2時間後に一過性の高体温および高糖血症を誘発する。Dectinan(登録商標)で強化した食餌により、これら2つの現象を有意に増大する。さらに、Dectinan群のラットは堵殺後、対照群のラットより高い体温を維持する。
【0051】
飼料にDectinan(登録商標)を混合した25日間の先行処置によって、LPSにより発生した急性炎症に起因する代謝的効果が阻止されるか、または少なくとも和らげる。すなわち、図4(高体温)、5(高トリグリセリド血症)、および6(高糖血症)のグラフに見られる曲線による結果として、Dectinan(登録商標)は、LPS注射を形成する最初の数時間の低体温、高トリグリセリド血症、および高糖血症を低減する。
【0052】
つまり、Dectinan(登録商標)で強化した飼料の投与により、肝臓の免疫細胞の変調と連動する現象である、LPS注射による擬態の急性炎症に関連した毒性作用から肝臓が保護される。
【0053】
さらに、この飼料の投与は肝臓障害の特異的マーカーの増加を相殺するが、このマーカーはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血清活性から構成されており、該投与により、肝臓を含む臓器の一部の有害な組織変化、即ちアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および乳酸脱水素酵素(LDH)の活性を反映し得る他の血清パラメータも修正される。
【0054】
記録した結果を、図7(ASTにおける変化)、8(LDHにおける変化)および9(ALTにおける変化)に示す曲線により表示する。
【0055】
血清中の下記濃度(pg/ml中)も測定した
− LPS投与の2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、および24時間後のサイトカインTNF−α
− LPS投与の2時間後および24時間後のプロスタグランジンPGE2
【0056】
各結果を図10(TNF−α)および11(PGE2)のグラフにそれぞれ示す。
【0057】
炎症性刺激が無いため、0時間ではTNF−αの検出は不可能になることがある。さらに、飼料中にDectinanが無いため、エンドトキシンショックに曝されたラット血清中のTNF−αおよびPGE2の濃度が減少する。
【0058】
この処置の食欲抑制効果に関連する解釈に対する問題を避けるため、LPS投与後はラットに飼料および水を与えなかった。
【0059】
堵殺後、各種計量を行い、その結果を表IIIにまとめた。
【0060】
【表3】

【0061】
表IIIにまとめた結果の考査により、下記知見を引き出すことができる。
【0062】
体重の減少は、Dectinan(登録商標)を含む飼料の投与により有意に変更することはない(体重に関して、25±2g 対 22±1g)。飼料および水を24時間与えなかった後、動物の体重には2群の間で差がない。肝臓の重量は、有意に近いp値を有するDectinan(登録商標)群で僅かに増加する。盲腸組織および盲腸内容物の重量の平均値によって証明されているように、Dectinan(登録商標)で強化された食餌によって、盲腸の有意な増殖(Dectinan(登録商標)群3.2±0.32g 対 対照2.15±0.24g *p<0.05 スチューデントt検定)がもたらされた。
【0063】
さらに赤血球および白血球を計数し、異なる血液パラメータも測定したが、その操作は大静脈の血液試料に対して行った。
【0064】
結果を表IVにまとめる。
【0065】
【表4】

【0066】
表IVにまとめた結果を考察すると、白血球の中で単球の比率だけが有意に異なり、対照群のラットと比較して、Dectinan(登録商標)で強化した食餌を飼料としたラットのほうが低いことが分かる。
【0067】
免疫組織化学法による膜抗原ED2の検出によって、肝臓でのクッパー細胞の特異的検出が可能となる。これらの細胞は、特に門脈域内に位置しており、LPS投与後24時間でさらに丸くなり膨潤する。各肝臓切片の観察を精緻化するため、定量的手法を行った。ED2陽性細胞を数えるため、10×10四方の(門脈空隙に属する血管を少なくとも3つ含む)3箇所、肝臓切片毎に選択した。Dectinan(登録商標)で強化した食餌での前処理により、肝臓マクロファージの数が増加し(259±19 ED2+細胞/領域 対 217±14 ED2+細胞/視野;n=6、p=0.1、スチューデントt検定)、肝臓のこれら常在マクロファージは、肝臓の循環するリポ多糖類を浄化する。Dectinan(登録商標)群に属する(白四角で表される)ラット8の異常に低い値が平均値内に含まれない場合、差異は有意である。
【0068】
上記処理の結果を図12に例示し、各肝臓切片のED2を検出する手段によりクッパー細胞の定量化を示す。
【0069】
酵素ペルオキシダーゼは、(クッパー細胞などの)マクロファージ、好中球、および好酸球内に存在することが知られている。免疫細胞(好中球)が補充されると、LPS投与により肝臓中の陽性細胞数が増加する。Dectinan(登録商標)を補充した食餌は、陽性細胞数を減少させるように思われる。
【0070】
エオシンおよびヘマトキシリンで染色した後の組織学的解析により、組織構造、および障害細胞または壊死の病巣も明らかになる。肝臓では、LPS注射に関連する有害な変化、主に壊死病巣は、Dectinan(登録商標)群および対照群の両群で実質的には見られない。有害な生化学的変化(主にALTにおける増加)は一般的に早く、肝臓組織内での有害な変化に必ずしも反映されるわけではないことが判る。肺が通常炎症状態に関連する浮腫を示す一方、胸腺および脾臓は壊死領域を明らかに示す。
【0071】
上記にまとめた結果は、血清中のAST、LDH、およびALT活性の増加に対し、Dectinan(登録商標)の保護作用を示している。LPSの毒性は、保護作用により低くなり、炎症誘発性サイトカインであるTNF−α分泌の減少と相互に関係していることが認められる。炎症性刺激24時間後のPGE2濃度の減少も認められる。
【0072】
低体温により、高用量のLPS投与後、早期に症状が発現する。実際、TNF−αは高体温の維持に関与する「極低温」信号として見なされ、この現象は、この場合Dectinan(登録商標)群よりも高いTNF−α濃度を有する対照群のラットのほうが、より明らかである。
【0073】
LPS投与により引き起こされたエンドトキシンショックによって、一つには肝臓での激しいグリコーゲン分解による一過性の高糖血症が生じ、次いで、末端組織および特に免疫細胞によるグルコースの使用で、糖血症の段階的減少が生じる。Dectinan(登録商標)群のラットにおいて一過性の高糖血症がさほど顕著でない場合、潜在的な代謝標的として肝内グリコーゲン分解が誘起されることもあり得る。
【0074】
高用量のLPS投与は、両動物群が受ける高トリグリセリド血症を誘発する。血清トリグリセリド濃度は、Dectinan(登録商標)で強化された食餌後に体系的に低くなるが、LPS注射によるトリグリセリドの変動は同じである。炎症性刺激は別として、血液中のトリグリセリド濃度の低下は、高度に有利な結果をなす。
【0075】
ED2抗体の組織学的研究によって、Dectinan(登録商標)で強化された食餌のもとでのクッパー細胞数の増加が実証されており、それは骨髄から生じる原細胞の補充、または存在するクッパー細胞の肝内の増殖のいずれかに関与する可能性がある。クッパー細胞の活性および炎症状態中に補充された免疫細胞に起因する内因性ペルオキシダーゼの組織学的研究では、Dectinan(登録商標)で強化された食餌後はそれがあまり顕著ではないように思われる。さらに、LPS投与後、循環単球数は対照群よりもDectinan(登録商標)群のほうが少ないと観察されることが興味深い。
【0076】
結論として、Dectinan(登録商標)で強化された飼料の投与によって、肝臓由来の酵素および肝臓内の免疫細胞数の補充に関する望ましい結果を伴い、LPSに関連する炎症を減少するのを可能にし、この現象が肝臓ミクロファージ数の増加と関連して起こると観察されることが興味深い。
【0077】
本発明に従ったラミナリンまたはオリゴラミナリンの使用により得られる薬物は、錠剤、硬ゼラチンカプセル、またはサッシェの形で、あるいは例えば液体、特に、経口で摂取する溶液の形でも供給することができる。
【0078】
実施例1:錠剤
Dectinan(登録商標)を主成分とするコーティングされていない錠剤450mg
その配合は以下の通りである
− Dectinan(登録商標) 225mg、即ち、50%
− マルトデキストリン 176mg、即ち、39.1%
− リン酸三カルシウム 40mg、即ち、 8.9%
− ステアリン酸マグネシウム 9mg、即ち、 2%。
【0079】
各成分をふるいにかけ、混合し、次いでインゴットの形に圧縮する。続いて後者を、最終錠剤に錠剤化する段階に適する大きさの顆粒に変形する微粉砕機に導入する。
【0080】
錠剤は、非コーティング、フィルムコートまたは糖衣の形で販売することができる。該錠剤は、ビン、あるいは15または20単位のブリスターパックに包装することができる。
【0081】
投与量は、1日2〜4錠、食中に2回摂取し、15日続く治療コースで摂取する。
【0082】
実施例2:硬ゼラチンカプセル
Dectinan(登録商標)を主成分とする植物または海産物由来の硬ゼラチンカプセル363mg
288mgの散剤におけるその配合は以下の通りである
− Dectinan(登録商標) 225mg、即ち、78.1%
− 微結晶セルロース 60mg、即ち、20.8%
− シリカ 2mg、即ち、 0.7%
− ステアリン酸マグネシウム 1mg、即ち、 0.4%。
【0083】
この硬ゼラチンカプセルは、ビン、あるいは15または20単位のブリスターパックに包装することができる。
【0084】
投与量は、硬ゼラチンカプセルを1日2〜4個、食中に2回摂取し、15日続く治療コースで摂取する。
【0085】
実施例3:サッシェ
Dectinan(登録商標)を主成分とする投与量サッシェ1g
その配合は以下の通りである
− Dectinan(登録商標) 225mg、即ち、22.5%
− マルトデキストリン 275mg、即ち、27.5%
− 果糖 295g、 即ち、29.5%
− レモン搾り汁粉末 200mg、即ち、20%
− シリカ 5mg、即ち、 0.5%。
【0086】
Dectinan(登録商標)22.5gを含む水溶液1リットルを、マルトデキストリン27.5gと混合する。次いで他の成分を混和する。次いで、こうして得た溶液を微粒化し、その粉末を顆粒化する。次いで、その粉末を60℃で終夜乾燥し、3%未満の乾燥物質を得る。次いで、粉末1gを含み、大きさ60×30mmのアルミニウムサッシェに包装する。
【0087】
投与量は、サッシェを1日2〜4個、食中に2回摂取し、15日続く治療コースで摂取する。
【0088】
実施例4:経口で摂取する溶液
− 水 即ち、92.85%
− Dectinan(登録商標) 即ち、 2.25%
− 果糖 即ち、 4%
− レモン香料 即ち、 0.2%
− クエン酸 即ち、 0.5%
− ソルビン酸カリウム 即ち、 0.1%
− 安息香酸ナトリウム 即ち、 0.1%。
【0089】
経口で摂取するこの溶液は、単回投与量を10mlまたは100mlビンに詰めることができる。
【0090】
投与量は、1日に10mlを2〜4回分、または食さじ2〜4杯、食中に2回摂取し、15日続く治療コースで摂取する。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】処置の間の糖血糖における変化を示すグラフである。
【図2】処置の間のトリグリセリド血症における変化を示すグラフである。
【図3】処置の間の糞便重量の変化を示すグラフである。
【図4】直腸体温の変化を示すグラフである。
【図5】高トリグリセリド血症の変化を示すグラフである。
【図6】高糖血症の変化を示すグラフである。
【図7】ASTにおける変化を示すグラフである。
【図8】LDHにおける変化を示すグラフである。
【図9】ALTにおける変化を示すグラフである。
【図10】血清中のTNF−αの変化を示すグラフである。
【図11】血清中のPGE2の変化を示すグラフである。
【図12】肝臓切片のED2陽性細胞の数を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
敗血症および敗血症性ショックの治療を目的とする薬物製剤における、ラミナリン、好ましくは可溶形のラミナリン、またはオリゴラミナリンの使用。
【請求項2】
敗血症および敗血症性ショックの治療を目的とする経口投与用の薬物の製剤におけるラミナリンまたはオリゴラミナリンの使用であって、身体に毎日貢献するのに十分な量、ラミナリンまたはオリゴラミナリンを体重kgあたり2〜21mg、好ましくは6〜15mgの量で前記薬物を患者に投与する使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−545646(P2008−545646A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511752(P2008−511752)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001129
【国際公開番号】WO2006/123059
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.WINDOWS
【出願人】(507382740)
【氏名又は名称原語表記】LABORATOIRES GOEMAR
【Fターム(参考)】