説明

ランプ、ランプモジュールおよび当該ランプモジュールを備えたプロジェクター

ランプ(8)および、この種のランプを有するプロジェクター(10)用のランプモジュール(1)が開示されている。ここでランプモジュールのランプ管(20)および/またはカバーディスク(40)は少なくとも部分的に反射防止コーティングを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はランプに関し、殊に、ガラス(殊に石英ガラス)から成るランプ管を有するプロジェクターのためのランプモジュール用のショートアーク放電ランプに関する。このランプ管はアノードおよびカソードを収容し、充填ガス、殊にキセノンを含む。
【0002】
従来技術
従来のプロジェクターでは、ランプ、殊にキセノンショートアーク高圧放電ランプは、反射器システムとともにハウジング内に組み込まれる。このハウジングは、カバーディスクによって閉鎖されている光出射開口部を有している。このようなランプないしはこのようなランプモジュールは、文献WO2006/07228号から公知である。
【0003】
このようなプロジェクターで問題となるのは、光源(ライアーク高圧放電ランプ)から光の出射窓までの光の光路において、光学的に異なる媒体間(殊に空気ないし充填ガス−石英ガラス/ガラス)で移行が複数回行われなければならない、ということである。このような媒体移行によって、反射損失が生じてしまう。なぜなら入射光の一部は媒体内に入射せず、媒体によって反射されてしまい、このシステムによって利用されなくなってしまうからである。従来のプロジェクターでは、異なる媒体間で移行が8回まで行われるので、これによって、結果として生じる光損失は25%を超えてしまう。さらに、投影システム内での反射によって、熱の問題および不所望な散乱光作用が生じてしまう。
【0004】
このような光損失を補償するために、従来技術では、より高い光出力を伴うランプを使用することが提案される。これは例えばキセノンショートアーク高圧放電ランプである。しかし、このような高いランプ出力は、高いランプコストおよび短いランプ寿命の他に、熱の問題も有している。なぜならこれに加えて、ランプ、反射器および出射窓の効果的な冷却が準備されなければならないからである。
【0005】
発明の開示
従って本発明の課題は、ランプを過度に高価にすることなく、ないしは上述した欠点を甘受することなく、高い発光効率を保証する、プロジェクターのランプモジュール用のランプ、このようなランプモジュールおよびこのようなプロジェクターを提供すること、並びに、ランプおよびランプモジュールの製造方法を提供することである。
【0006】
上述の課題は、ランプが、アノードおよびカソードを収容する、ガラス、殊に石英ガラスから成るランプ管を有し、このランプ管内に、填ガス、殊にキセノンが封入されており、このランプ管が少なくとも部分的に内面および/または外面に反射防止コーティングを有している形式のランプおよびこのようなランプを備えたプロジェクター用のランプモジュールによって解決される。
【0007】
媒体間の境界層上に反射防止コーティングを用いることによって、光の反射損失が低減される。これによって、システムの総発光効率が改善される。従って、小さい出力の光源の使用も可能である。しかも発光効率を低減させることはない。小さい出力の光源を使用することによって、プロジェクター内の熱問題も低減する。従ってランプ出力が同じ場合には、より多くの光が使用可能になる。
【0008】
ランプ管が、内面にも外面にも、少なくとも部分的に反射防止コーティングを有している実施例は特に有利である。ランプが、反射器システムを備えたプロジェクター用のランプモジュール内に組み込まれているのは有利であり、ここで、反射器システムが2つの反射器から構成されるのは特に有利である。この場合に、第2の反射器(補助反射器)は球面反射器であり、第1の反射器(主反射器)は、楕円形の反射器である。相応に配置された補助反射器および主反射器によって、補助反射器に入射する光が、ランプ管を通って、主反射器の方向へ反射されて戻されるので、光は、反射防止コーティングによって、入射時ないし通過時にランプ管によってもはや反射されない。このようなランプモジュールの場合にまさに、ランプ管に、光が補助反射器に出力される領域において、内面および外面にコーティング施される。また、光が主反射器にのみ出力される領域において、ランプ管は内面にのみコーティングを有する。
【0009】
別の有利な実施例では、補助反射器の光出射開口部がカバーディスクで閉じられる。このカバーディスクは、自身で反射が生じるので、同じように反射防止コーティングを有している。カバーディスクは有利には透明なガラスセラミックまたは石英ガラスから成り、ここでガラスセラミックは、良好なコーティング特性を有しているので有利である。
【0010】
球面ないしは楕円形の反射器を有する反射器システムの構成は次のことを保証する。すなわち、主反射器の方向に放射されずに、失われてしまうであろう光が、主反射器に戻るように反射され、ここから同じように、カバーディスクによって覆われている光出射開口部を通って出射することを保証する。
【0011】
ランプ管ないしは出射窓上の反射防止コーティングが、種々異なる材料および層厚を有する積層体から成る実施例が特に有利である。ここでは材料および層厚は次のような効果が得られるように調整される。すなわち、380nmから780nmまでの波領域における反射ができるだけ良好に抑圧されるように調整される。SiO、NB、Ta、MgSおよび/またはZrOが特に有利である。
【0012】
積層体から成るコーティングが特に有利である。ここでは第1の層としてZrOがランプ管の上または出射窓の上に被着され、次に、層MgFおよびZrOがそれぞれ1つの層ずつ被着され、最終層として層MgFが被着される。しかし層厚および層の数が変化してもよい。
【0013】
さらなる利点および有利な実施形態を、従属請求項および明細書の図面に記載する。
【0014】
以下で本発明を図面に基づきより詳細に説明する。ここで図示されている実施例は、本特許出願の範囲を定めるものではない。
【0015】
以下で本発明を、実施例に基づき、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光学的に異なる2つの媒体の間の移行部での反射の基本図
【図2】例として示されたビーム経過を有する、本発明のランプモジュールの側面図
【実施例】
【0017】
図1は、光学的に異なる媒体の間での移行部での、反射の基本的な問題を概略的に示している。第1の媒体M内を伝播し、光学的に異なる第2の媒体M(例えばガラスディスク)へ入射する光ビームLは、光学的に異なる媒体Mへの入射時に僅かな部分反射され、完全には、光学的に異なる媒体M内に入射しない。このことは図1に示されており、ここでは光ビームLが概略的に、点Aにおいて、光学的に異なる媒体Mへ入射し、大部分Lが異なる媒体M内に入射する。また、部分L1Rは反射される。光学媒体Mから出る時には再び光ビームLの一部L2Rが反射される。また、光ビームLの大部分Lは、この媒体を通って、光学的に異なる媒体M内へ入射する。このような2つの反射L1RおよびL2Rによって、光ビームLの強さは、光ビームLの強さに比べて格段に低減される。
【0018】
光学的に異なる媒体M上に被着されている、本発明の反射防止コーティングによって、反射される光の割合L1RおよびL2Rは低減され、もはや重要ではない。従って、入射する光ビームL1および出射する光ビームL3は実質的に同じ強度を有する。
【0019】
図2は、本発明の有利な形態を示している。図2では、本発明のランプモジュール1は、第1の球面反射器2と第2の楕円反射器4とから成る反射器システム6を有しており、この反射器システム内にランプ8が収容されている。ランプ8は反射器システム6によって支持され、反射器システムとともに、事前に取り付けられたユニットを構成する。このユニットは、プロジェクター、例えばLCD技術またはDLP/DMD技術を備えたデジタルプロジェクターの壁部10に、電気的に絶縁されて組み込まれる。
【0020】
球面反射器2は光出射開口部12を備えて構成され、楕円反射器4は反射器ネック14を備えて構成されており、ここでランプ8は本発明では、反射器ネック14および光出射開口部12の領域内に横たわる。光出射開口部12は、ガラスセラミックまたは石英ガラスから成るカバーディスク40によって閉鎖されている。
【0021】
ランプ8の熱の拡がりひいては、これと結びついている寿命制限のために、効果的な冷却が必要である。このために、図示されていない送風機を介して空気が反射器システム6内に送り込まれる。この冷風の流れはランプ8を取り囲み、効果的に、反射器システム6内で熱滞留が生じるのを阻止する。
【0022】
図示の実施例では、ランプ8はキセノンショートアーク高圧放電ランプとして、従来の構造様式で構成されている。このようなショートアークランプは実質的には、アノード16、カソード18および高純度キセノンガスが充填されているランプ管20から成る。アノードおよびカソードはそれぞれ電極棒28上に取り付けられている。このランプ管20は、光軸22に沿って両側で、それぞれほぼ円筒状のランプ軸24、26に移行する。このランプ軸内では、アドノード16ないしカソード18の電極棒28が気密性に入れられている。
【0023】
反射器システム6は導電性の材料から成り、反射コーティングがされている。プロジェクター10を備えたランプ8の機械的かつ電気的な接続素子として反射器システム6を使用することによって、従来技術と比べて製造コストが格段に低減する。
【0024】
球面反射器2および楕円形反射器4は半径方向に突出した平面を介して相互に接続される。これらは共同してフランジを形成し、このフランジに沿って、ランプモジュール1がプロジェクター10に絶縁して固定される。
【0025】
本発明ではランプ管20は、自身の内面および外面に反射防止コーティングを有している。従って、電極16と電極18との間に生成されたライトアーク42を介して形成された光が、光学的に異なる媒体、ガス/ガラス/ガスを通過する際に反射されない。
【0026】
図2には光のビーム路が概略的に示されており、ここでビーム44は、主反射器の直接方向における放射を表している。この光ビーム44は主反射器4で反射され、楕円形主反射器の第2の焦点、すなわちここでは図示されていない、プロジェクターシステムの出射窓の第2の焦点において反射される。ここで光ビーム44は同じように、ガラスディスク40を通り、同じように、光学的に異なる媒体間での移行が行われる。
【0027】
したがって本発明ではガラスディスク40も反射防止コーティングを有している。従って、ここで生じる反射は同じように最小化される。
【0028】
直接的に楕円形主反射器4に入射せず、補助反射器2によって主反射器4へ反射されるライトアーク42の放射された光成分46は、ランプ管20を1回通過するだけでなく、この移行を三回行う。初めに、レーザビーム46はランプ管20から出射し、次に補助反射器2によって自身の焦点、すなわちライトアーク42に戻るように反射される。ここで、空気とガラスの間でのさらなる移行が行われ、再び、ランプ管20を通って出射し、これによって主反射器4からガラスディスク40の方向へ反射される。光学的に異なる媒体間の移行は、図には円によって示されている。
【0029】
本発明の反射防止コーティングによって、光学的に異なる媒体間の移行部での反射によって生じるビーム損失が格段に低減される。ここで反射防止コーティングは、有利には、種々異なる厚さおよび材料を有する層を有する積層体から成る。ここで層厚および層順序は次のように最適化される。すなわち、可視領域における反射、すなわち380nmから780nmまでの間での反射が最小化されるように最適化される。
【0030】
有利には材料SiO、TiO、Nb、Ta、MgFおよびZrOが使用される。
【0031】
これらの材料は一方では良好な接着性を示し、他方では温度安定性がある。従って、これらの材料はランプ作動時に生じる高い温度に問題無く耐えることができる。特に有利な実施例では、反射防止コーティングは4つの層の積層体から成る。ここで第1の層としてZrOがガラスの上に被着され、次に層MgFが被着され、さらなる層ZrOおよび終端層としてMgFが被着される。この実施例では、以下の層厚シーケンスが特に有利である;18.65nm(ZrO);37.23nm(MgF);142.56nm(ZrO)および99.64nm(MgF)である。
【0032】
ここに示した層厚および層順序は要求に応じて変化可能であり、より多くの層またはより少ない層が使用されてもよい。
【0033】
さらに、わかりやすい反射防止コーティングを選択することもできる。この場合には材料ないしは材料組成も相応に整合される。
【0034】
ランプおよびこのようなランプを有するプロジェクター用のランプモジュールを開示した。ここでランプ管および/またはランプモジュールのカバーディスクは少なくとも部分的に反射防止コーティングを有している(図2)。
【符号の説明】
【0035】
1 ランプモジュール、 2 反射器、 4 反射器、 6 反射器システム、 8 ランプ、 10 壁部、 12 光出射開口部、 14 反射器ネック、 16 アノード、 18 カソード、 20 ランプ管、 22 軸、 24 ランプ軸、 26 ランプ軸、 28 電極棒、 40 カバーディスク、 42 ライトアーク、 44 ライトビーム、 46 光成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード(16)とカソード(18)を収容する、ガラス、殊に石英ガラスから成るランプ管(20)を有しており、
当該ガラス管は充填ガス、殊にキセノンを有している形式のランプ、殊にショートアーク放電ランプにおいて、
前記ランプ管(20)は少なくとも部分的に反射防止コーティングを有している、
ことを特徴とするランプ。
【請求項2】
前記ランプ管(20)は、自身の内面および/または外面に反射防止コーティングを有している、請求項1記載のランプ。
【請求項3】
前記反射防止コーティングは、相互に重なって被着されている複数の層から成る積層体である、請求項1または2記載のランプ。
【請求項4】
前記層はSiO、TiO、Nb、Ta、MgFおよび/またはZrOから成る、請求項3記載のランプ。
【請求項5】
層厚は変化する、請求項3または4記載のランプ。
【請求項6】
層厚および層の順序は、380nmから780nmまでのスペクトル領域における反射防止コーティング用に最適化されている、請求項3から5までのいずれか1項記載のランプ。
【請求項7】
前記反射防止コーティングは、ZrOとMgFとの交互の層順序により形成される、請求項3から6までのいずれか1項記載のランプ。
【請求項8】
少なくとも1つの反射器(2、4)を有する反射器システムを具備している、プロジェクター、殊にデジタルの映画プロジェクターおよびビデオプロジェクター用のランプモジュールにおいて、
当該ランプモジュール内に、請求項1から7までのいずれか1項記載のランプが収容されている、
ことを特徴とするランプモジュール。
【請求項9】
前記反射器システムは光出射開口部(12)を備えて構成されており、当該光出射開口部はカバーディスク(40)によって閉じられている、請求項8記載のランプモジュール。
【請求項10】
前記カバーディスク(40)は反射防止コーティングを有している、請求項8または9記載のランプモジュール。
【請求項11】
前記反射防止コーティングは、相互に重なって被着されている複数の層から成る積層体である、請求項10記載のランプモジュール。
【請求項12】
前記層は、SiO、TiO、NB、Ta、MgFおよび/またはZrOから成る、請求項11記載のランプモジュール。
【請求項13】
層厚は変化する、請求項11または12記載のランプモジュール。
【請求項14】
層厚および層の順序は、380nmから780nmまでのスペクトル領域における反射防止コーティングに対して最適化されている、請求項11、12または13いずれか1項記載のランプモジュール。
【請求項15】
前記反射防止コーティングは、ZrOとMgFとの交互の層順序により形成される、請求項11から14までのいずれか1項記載のランプモジュール。
【請求項16】
前記反射器システムは2つの反射器から成る、請求項9から15までのいずれか1項記載のランプモジュール。
【請求項17】
前記第1の反射器は楕円形に構成されており、前記第2の反射器は球面に構成されている、請求項16記載のランプモジュール。
【請求項18】
前記少なくとも1つの反射器は金属から成る、請求項9から17までのいずれか1項記載のランプモジュール。
【請求項19】
前記カバーディスクはガラスセラミックから成る、請求項9から18までのいずれか1項記載のランプモジュール。
【請求項20】
請求項9から19までのいずれか1項記載のランプモジュールを備えている、
ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項21】
ランプ管(20)に反射防止コーティングを施す、
ことを特徴とする、ランプ、殊にショートアーク放電ランプの製造方法。
【請求項22】
前記反射防止コーティングを層毎に、積層体として、前記ランプ管(20)上に被着する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
層厚および層の順序を、380nmから780nmまでのスペクトル領域における反射防止が得られるように最適化する、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
前記ランプ管(20)上に、ZrOから成る第1の層、MgFから成る第2の層、ZrOから成る第3の層およびMgFから成る第4の層を被着する、請求項21から24いずれか1項記載の方法。
【請求項25】
被着される積層体は18.65nm;37.23nm;142.56nmおよび99.64nmの層厚順序を有している、請求項24記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの反射器(2、4)を有する反射器システムを具備している、プロジェクター、殊にデジタルの映画プロジェクターおよびビデオプロジェクター用のランプモジュールを製造する方法において、
請求項21から25までのいずれか1項記載の方法に従って製造されたランプを備えているランプモジュールを使用する、
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
反射器システムによって形成された光出射開口部をカバーディスクによって閉鎖し、当該カバーディスク上に反射防止コーティングを被着する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
反射器システムによって形成された光出射開口部をカバーディスクによって閉鎖し、当該カバーディスクに反射防止コーティングを施す、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記反射防止コーティングを層毎に、積層体として、前記ランプ管(20)上に被着する、請求項26から28までのいずれか1項記載の方法。
【請求項30】
層厚および層の順序を、380nmから780nmまでのスペクトル領域における反射防止が得られるように最適化する、請求項26から29までのいずれか1項記載の方法。
【請求項31】
前記ランプ管(20)上に、ZrOから成る第1の層、MgFから成る第2の層、ZrOから成る第3の層、MgFから成る第4の層を被着する、請求項26から30までのいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
被着される積層体は18.65nm;37.23nm;142.56nmおよび99.64nmの層厚順序を有している、請求項26から30いずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−517019(P2011−517019A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502237(P2011−502237)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053906
【国際公開番号】WO2009/121404
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(504458493)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (168)
【氏名又は名称原語表記】Osram Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】