説明

ランプ用箔接続体

ランプ(10)において使用するのに適した箔接続体(28、30)を提供する。箔接続体は、導電材料により形成された基板層(40)を含む。ランプ動作中の基板の酸化を低減するために被覆(42)を提供する。被覆は、貴金属を含む、基板上の第一の被覆層(44)と、第一の被覆層により前記基板から離間された、貴金属を含む第二の被覆層と、随意的に、第一及び第二の被覆層により前記基板から離間された、貴金属を含む第三の被覆層とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンチ部内に導電箔を組み入れたピンチシールにより形成された電気ランプに関する。特に、箔の酸化を妨げる層により酸化から保護されたモリブデン箔に関する。
【背景技術】
【0002】
石英ガラスランプエンベロープを有する電気ランプは、モリブデン箔により内部電極に接続された、モリブデン製の外部電流導体を有する場合が多い。箔は、ピンチシールの領域において使用される。厚さの大きなモリブデン導体よりも柔軟性が高いため、ピンチ領域の導体に加わる応力を良好に吸収できる。モリブデンは、約350℃以上の温度等、酸化環境において急速に酸化する。密封ピンチ及び真空形成シールに使用されるモリブデン箔の場合、この酸化は、開回路を発生させる、或いは、密封を割り開く可能性があり、何れの場合もランプの故障が生じる。酸化反応は、密封工程中、ガラス質材料が冷却する際に、リード線の周囲に微細な通路が形成されることで発生すると考えられる。こうした通路により、酸素は、ランプシールの箔領域へ侵入可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クロム処理は、ランプ動作中、Mo−Nbピン−箔組立体の酸化を低減するために開発された。こうした処理では、比較的厚いクロム層を箔に堆積させる。こうした処理は、処理制御が困難であるため、不満足な結果をもたらすことが多い。更に、クロム層は、酸化が発生する前の箔温度の上昇をある程度しか許容しない。酸化環境に露出されるシール領域のモリブデンを、アルカリ金属ケイ酸塩により被覆することも提案されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態例では、ランプ用箔接続体を提供する。箔接続体は、電導材料から形成された基板層を含む。ランプ動作中の基板の酸化を低減する被覆は、貴金属を含む、基板上の第一の被覆層と、第一の被覆層により基板から離間された、貴金属を含む第二の被覆層と、随意的に、第一及び第二の被覆層により前記基板から離間された、貴金属を含む第三の被覆層と、を含む。
【0005】
別の態様では、ランプを提供する。ランプは、エンベロープを含む。ランプの動作中にエンベロープ内で放電を発生させるために、少なくとも一個の内部電極を提供する。ランプは、更に、外部接続体と、外部接続体を内部電極に電気的に接続する箔接続体とを備える。箔接続体は、導電材料により形成された基板層を含む。基板上の第一の被覆層は、貴金属を含む。第二の被覆層は、第一の被覆層により前記基板から離間される。第二の被覆層は、貴金属を含む。随意的に、第三の被覆層は、第一及び第二の被覆層により前記基板から離間され、存在する場合には、貴金属を含む。
【0006】
別の態様において、箔接続体を形成する方法は、導電材料を含む基板層を提供するステップを含む。基板上に貴金属を堆積させ、基板上に第一の層を形成する。貴金属の堆積を一定期間に渡って停止させる。その後、第一の層上に貴金属を堆積させ、第一の層より厚い、基板上に第二の層を形成する。随意的に、貴金属の堆積を第二の期間に渡って停止させ、その後、第二の層上に貴金属を堆積させ、基板上に第三の層を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本実施形態例の態様は、例えば、モリブデンとガラス質材料との間のピンチシールにおいて、電気ランプの内部及び外部電極間に電気的接続を提供し得る、モリブデン含有箔等、放電ランプ用電導箔接続体の酸化耐性を高めるシステム及び方法に関連する。様々な態様において、方法例は、約250℃乃至約700℃の酸化環境に露出されるモリブデンの酸化耐性を高める。その結果、モリブデン箔周囲の密閉シールと、こうしたシールを利用する電気ランプとの寿命を延長できる。箔の例には、酸化環境に露出されるシール領域内のモリブデンの少なくとも一部の被覆が含まれる。
【0008】
モリブデン箔の温度を約400乃至450℃に到達させる条件下で通常動作するランプは、電圧が正しく調整されない時、更に高温に達する可能性があることが分かっている。例えば、電圧の調整が劣悪である場合、箔の温度は、500乃至550℃に達し得る。これは、特に、例えば、劇場の照明、ナイトクラブの照明等、娯楽用に使用されるようなワット数の高いランプに当てはまる。したがって、通常予想されるものより遙かに早く、ランプの故障が生じ得る。被覆の例は、モリブデン箔の酸化を妨げ、動作中、長期間に渡り、箔が500乃至600℃以上といった450℃を越える温度に達しても、箔接続体の酸化率は、ランプ故障の決定要因となるのに十分な高さにはならない。
【0009】
図1を参照すると、ランプの一例10は、ハロゲン管等の光源12を含む。管12は、通常、石英、溶融シリカ、又はアルミノケイ酸塩等の透明ガラス質材料で形成される透光性エンベロープ14を含む。エンベロープは、内部チャンバ16を定める。エンベロープ14には、必要に応じてUV又は赤外線反射コーティングを被覆してもよい。ランプの一例は、少なくとも約500W、例えば、少なくとも約1000W、一実施形態においては、約4kW以上までのワット数で動作する、高輝度放電(HID)ランプである。したがって、ランプは比較的高温に達し得る。
【0010】
チャンバ16内部には、通常はキセノン又はクリプトン等の不活性ガスと、例えば、臭化メチル又は他のブロモメタンといったハロゲン化アルキル等のハロゲン源とを含む、ハロゲン充填物が密閉封止される。一対の内部電極18、20は、チャンバ16内へ、その対向端部から水平に延び、ランプ動作中に放電を支持する間隙22を定める。タングステン電極18、20が励起要素を形成するものとしてランプの一例を説明するが、フィラメント等、他の励起要素も考えられる。
【0011】
以下の説明では、特に記述がない限り、全てのパーセンテージは重量によるものである。
【0012】
内部電極18、20は、主にタングステン等の電導材料により形成され、例えば、少なくとも50%のタングステン、一実施形態では、少なくとも約80%又は少なくとも99%のタングステンにより形成し得る。内部電極18、20の長手軸線は、チャンバ16の長手軸線X−Xと一致する。内部電極18、20は、以下、更に詳しく説明するように、箔接続体28、30により、外部接続体又はピン24、26に電気的に接続される。図示実施形態において、電極18は箔28により外部コネクタ24に直接接続されるが、一個以上の中間電気接続体により、電極18から箔接続体28を離してもよく、電極20についても同様である。更に、接続体24、26はランプの対向端部から延びるものとして図示したが、ランプの同じ端部から平行に延びることも考えられる。
【0013】
外部接続体24、26は、電源との電気的接続のため、エンベロープ14のそれぞれの端部の基部32、34まで外側に向かって延びる。接続体24、26は、ピン又は管の形状にしてよく、主に、モリブデン又はニオブ等の電導材料、例えば、少なくとも50%のモリブデン、一実施形態では、少なくとも約80%又は少なくとも99%のモリブデンにより形成し得る。モリブデン合金、例えば、モリブデンニッケル合金等、他の電導材料も考えられる。
【0014】
図2に示したように、箔接続体28、30は、隣接する接続体24、26及び内部電極18、20のものよりも実質的に小さい、長手軸線に垂直な厚さを有する。箔接続体28、30は、その端部において、それぞれの外部接続体24、26及び内部電極18、20に溶接、ろう付け、或いは他の形で接続し得る。ランプの組立中には、箔接続体28、30の領域において、ガラス質エンベロープ材料を締め付けてシール36、38を形成する。箔接続体28、30は、それぞれ、箔接続体の厚さよりも実質的に大きな幅及び長さを有する。例えば、箔接続体の厚さを約0.5mm未満、例えば、0.2乃至0.3mmとし、幅及び長さを、それぞれ1mm以上、一般には2mm以上にし得る。
【0015】
電源により励起した時、間隙における放電22は、照明と共に熱エネルギを発生させる。熱エネルギは、電極18、20及び/又はガラス質材料により、箔接続体28、30が加熱されやすいピンチ領域へ伝導され得る。
【0016】
本実施形態例は、タングステン−ハロゲンランプにより説明するが、セラミック金属ハロゲン化物発光管等といった他の光源も利用し得ることを理解されたい。本明細書において「励起可能要素」という用語は、したがって、フィラメントに加え、セラミック金属ハロゲン化物発光管の電極間の間隙にある金属ハロゲン化充填物等、電流印加時に光を発する他の励起可能材料を包含する。
【0017】
図3に示したように、箔接続体28は、モリブデン、或いは、モリブデンニッケル合金等、その合金から形成された基板層又は箔40を含む。箔は、モリブデンを主成分として含んでよく(例えば、少なくとも10%、或いは少なくとも20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%、又は99.9%のモリブデン)、モリブデンを支配的成分として含んでよい(約50%以上)。箔40は、少なくとも厚さ約0.1mmを有し、約0.5mmまで、例えば、約0.2乃至約0.3mmにしてよい。基板の表面43に形成された被覆42は、箔40を含む材料の酸化を妨げる。被覆42は、箔40より薄い(図3は、基板40の一部のみを示している)。図3は、箔の上面43の被覆を示しているが、下方の反対側平面43も同じく被覆し、実際には箔40の表面全体を被覆し得ると理解されたい。箔接続体30は、接続体28と同じように形成し得る。
【0018】
被覆42は、貴金属を含み得る。一般に、貴金属は、ランプ動作温度において、モリブデンよりも低い酸化率を有するものにする。貴金属の例は、白金と、金と、ニッケルと、その組み合わせ及び合金とを含む。例えば、被覆は、貴金属(即ち、単独又は組み合わせ)を主成分として含む(例えば、被覆42は、少なくとも10%、或いは少なくとも20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、99%、又は99.9%の貴金属である)。被覆42は、一層又は複数の個別層を含み得る。実施形態例により形成された多層貴金属被覆42は、箔内のモリブデンの酸化率を低下させる。そのため、450乃至700℃の範囲で選択された温度において、箔40の酸化率は、モリブデン箔又はクロム処理モリブデン箔のものより低くなる。
【0019】
被覆42の例は、実質的に純粋な金属(例えば、少なくとも99%又は少なくとも99.99%等、少なくとも90%のAu、Pt、又はNi)、或いは、Ni/Al、Au/Al、Au/Ag、Au/Fe、Au/Cr、Au/Mo、又はAu/Ni合金等、その合金、或いは、その組み合わせが含まれる/形成するものであり、ここで被覆42は、第一の記載(貴金属)要素を少なくとも30%含み、一実施形態では、少なくとも約50%含む。白金の場合、容易に合金を形成しないため、実質的に純粋な形態で使用し得る。白金は、金よりも高い融点を有するため、ランプ動作温度が特に高くなる場合があると予想される時には金よりも適切となり得る。
【0020】
図示した被覆42は、隣接し、実質的に同一範囲に広がる、複数の被覆層44、46、48を有する。図示した実施形態には三つの被覆層を示しているが、より少数又は多数の層を利用してもよい。層44、46、48は、基板上に順次堆積させ、被覆42を形成する。各層は、主成分として(例えば、少なくとも10%、或いは少なくとも20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、又は99%)、貴金属を含み、この貴金属は、単一の貴金属、或いは一つ以上の貴金属の混合物を含み得る。図示した実施形態では、同じ貴金属又はその合金を使用して、被覆層のそれぞれを形成する。しかしながら、層44、46、48に、異なる金属/合金を使用することも考えられる。ケイ素、二酸化ケイ素アルミナ、アルミニウム、又はその組み合わせ等の外部親和層を被覆42の外側に任意に提供し、ピンチ部35、38におけるガラス質材料との接合を向上させ得る。
【0021】
被覆層44、46、48は、粒状構造が異なってよい。基板に最も近い第一の層44は、少なくとも約1.5ナノメートル(nm)にしてよく、約10nmまでの厚さ、例えば、2nm乃至約5nmの厚さ、例として、約3乃至4nm等にすることができる。一般に、第一の層44の厚さは、少なくとも穴のない連続層を提供するのに十分となるように選択される。第一の層は、基板40の上層への被覆材料の拡散による、箔材料(図示実施形態のモリブデン)と、白金、金、又はニッケル等の被覆材料とのナノ合金を含み得る。約10nmを上回る厚さでは、ナノ合金を生成する傾向が低下する。したがって、10nmより大きな厚さでは、第一の層の利点が強化されにくくなる。第一の層44において、貴金属(群)は、他の層より低い濃度にし得るが、一般には少なくとも20%であり、一実施形態では、少なくとも約50%である。いかなる理論にも拘束されないが、第一の層は、箔層40への後続層の拡散を妨げる拡散障壁として機能すると考えられる。
【0022】
第二の層46は、第一の層よりも幾分厚くしてよく、約5乃至約100nmの厚さ、例えば、厚さ約10乃至20nm、例として、厚さ約14nm等にしてよく、これにより、第一の層より粒子の大きい粒子構造を提供する。一般に、第二の層は、第一の層より少なくとも約5nm厚くし得る。第三の層46(及び随意的に任意の後続層)は、第二の層46より厚く、これにより、更に粒子サイズの増加をもたらす。例えば、第三の層46は、約50nm乃至約2ミクロン、例えば、約100nm乃至1ミクロンの厚さを有し、一実施形態において、約500ナノメータの厚さを有し得る。一般に、第三の層は、第二の層より少なくとも約20nm厚くし得る。第三の(最外)層46の厚さは、予想されるランプの耐用時間数に合わせて選択し得る。酸素は、この層を徐々に貫通していくため、層が厚いほど、層を貫通する時間は長くなる。第三の層の厚さの一例は、予想ランプ寿命である約1000時間に基づいたものとなる。耐酸化被覆42は、約1ミクロンまでの合計厚さtを有し、一般に約600nm以下にし得る。
【0023】
親和層50は、存在する場合、厚さ約50乃至約500nm、例えば、約100nmにし得る。したがって、ピンチ部内のガラス質材料に接触する箔接続体28、30の外面52(親和層50が存在しない場合、被覆42が提供する)は、一実施形態において、箔層40の表面43から約1.5ミクロン以下であり、一般には、1ミクロン未満である。
【0024】
第二及び第三の層46、48は、中間の第一の層44により下層40への拡散が妨げられるため、第一の層44よりも高濃度の被覆材料を含み得る。層46及び48では、例えば、貴金属は、少なくとも濃度50%、一実施形態では、少なくとも約80%にしてよく、100%までにすることができる。図示した実施形態において、各層は、粒界において後続層と直接接触する。
【0025】
被覆42は、スパッタリング、電子ビーム堆積、熱堆積、電気メッキ、これらの組み合わせ等、適切な制御堆積手法により形成し得る。一般に、層は、順次堆積させ、各層の堆積間には十分な時間を取り、堆積層の冷却を可能として、後に付与した層が独自の粒状構造を有するようにする。
【0026】
例えば、スパッタリング手法の一例において、被覆されるべき箔40は、被覆材料により形成されたターゲット(例えば、金又は白金ターゲット)を含む排出可能なチャンバに配置する。合金を被覆材料として堆積させる場合、合金を含む単一のターゲットを利用してよい。或いは、合金を形成する元素の一つをそれぞれ含む、二種類以上のターゲットを利用してよい。チャンバを適切な真空条件(約5Torr等)まで排気し、約300℃等の適切なチャンバ動作温度でスパッタリングを開始する。箔は、両側43が被覆されるように回転させてよい。
【0027】
基板40に直接堆積させる第一の層44の場合、スパッタリングは、所望の厚さ(例えば、約3乃至4nmのAu又はPt)が表面43に堆積するまで継続する。ここで、スパッタリングを停止する。その後の休息期間は、約二分以上、一般には約一時間未満、例えば五分間継続させてよく、この間に箔及び第一の層の冷却が生じ得る。例えば、箔及び第一の層は、約100℃以下の温度まで冷却させてよい。スパッタリング及び後続の冷却期間中、第一の層の被覆材料(例えば、Au又はPt)と、箔の最外領域の箔材料(例えば、Mo)は、相互拡散した固溶体を形成し、固溶体は、後に、下層の箔への酸素の貫通を妨げる拡散障壁として機能する。第一及び第二の層44、46間の粒界を提供する粒子平面を形成するのに十分な時間の後、ターゲット(又は異なる貴金属ターゲット)を動作温度で十分な時間に渡ってスパッタリングし、第二の層46を形成し、例えば、約14nmのAu又はPtを堆積させる。その後、スパッタリングを再度停止し、被覆した箔が十分な時間に渡って冷却され得るようにして、第二及び第三の層間の第二の粒界を形成する(例えば、第一の冷却期間のように、少なくとも約二分間、例として五分間等)。第二の被覆層46は、介在する第一の層44のため、いかなる有意な範囲においても下の箔40を貫通しない。したがって、第二の層は、第一の層よりも被覆材料の濃度が高い。
【0028】
その後、ターゲット(又は異なる貴金属ターゲット)を動作温度で十分な時間に渡って再度スパッタリングさせ、第三の層、例えば、約500nmのAu又はPtを形成する。層50を利用する場合は、第二のターゲットをスパッタリングするか、他の制御堆積手法を利用して、外層を形成する。例えば、アルミニウムの層50を、約100nmの厚さで堆積させ、エンベロープのガラス質材料がアルミノケイ酸ガラスである時に、全般的により長い寿命をランプに提供する。これにより、ピンチ部のガラスとの良好な調和を提供し、優れたシールを形成できる。石英エンベロープに対しては、ケイ素又は二酸化ケイ素を外層50に使用し得る。
【0029】
このように形成した箔接続体28は、例えば、白金のタップに溶接することで、外部接続体24と内部電極18とに取り付け、その間に従来の形で電気経路を形成し得る。或いは、被覆42に応じて、箔接続体28は、ろう付けにより、介在する溶接材料無しで、電極18と外部接続体24とに直接取り付けてもよい。組立体24、28、18と、対応する組立体20、30、26とは、その後、電極18、20の先端がチャンバ16内へ突出し、適切な間隙22だけ間隔が空くように、エンベロープ14のそれぞれの端部にはめ込み得る。エンベロープ14を加熱し、箔接合体28、30に隣接した状態で収縮させ、ピンチシール36、38を形成する。次に、基部接続体32、34を、外部電極24、26に接続し得る。完成したランプ10は、反射物を(図示無し)を備えた適切なハウジング内に位置決めし、電源に接続し得る。
【0030】
ランプ動作中、このように形成したランプ10は、従来のランプに比べ実質的に低い故障率で、被覆した箔28において500乃至600℃の範囲の温度に達し、被覆した箔は、通常約1%までの酸素を含有する環境に露出し得る。
【0031】
上述の多層被覆構造42は、粒子サイズの勾配(小さな粒子ほど箔に隣接し、大きな粒子ほど箔から離間)が一因となり、ピンチ部36、38内の応力を吸収可能なバネ状部材を、箔40の表面に形成する。この特性は、改良された耐酸化性に加え、ランプの故障を低減することで、被覆箔を含むランプに対して、全般的に長い平均寿命をもたらす。被覆箔の例により実現し得る他の利点には、良好な伝導経路の提供及びプロセス制御の改善に加え、箔の酸化温度を約600℃以上まで高めることが含まれる。
【0032】
以下の実施例では、実施形態例の範囲を限定することなく、酸化を妨げる被覆の有効性を実証する。
【0033】
実施例
ランプ環境外で加速試験を実施し、被覆を評価した。第一の試験では、厚さ約0.025mmのモリブデン箔を、層44及び46に類似した、それぞれ厚さ4nm及び14nmの第一及び第二の金層により被覆した。これらの試験では、第三の層は使用しなかった。モリブデン基板40への拡散により、4nmより幾分厚いナノ合金化した第一の層44が、その上に厚さ約14nmの粒子平面を有して形成された。被覆した試料を炉内で空気中(酸素25%)に露出し、700℃まで加熱した。三日間に渡って、結晶構造又は脆弱性に変化は見られなかった。その後、小さな突出が現れ始めた。
【0034】
第二の試験では、被覆の無いモリブデン箔を、第一の試験と同じ条件下に置いた。二乃至三時間以内に、箔は脆弱性の兆候を示し始めた。モリブデンは、粒状となり、一体性を失った。表面の顕微鏡検査では、酸化を示すモリブデン表面の突出が明らかとなった。
【0035】
第三の試験では、厚さ100nmの二酸化ケイ素層を有するモリブデン箔を、第一の試験と同じ条件下に置き、これがモリブデンの妨げにならないことを照明した。
【0036】
脆弱性は、機械的衝撃及び抵抗の測定により試験した。鋭い縁部による機械的衝撃により、非被覆箔は、約500マイクロメートルの大きさの主に酸化物である小片へと変化した。抵抗の測定では、より高い温度のアニールにおいても、被覆箔の抵抗が1オーム未満となり、一方、非被覆箔では、抵抗が1メガオームより大きくなった。
【0037】
好適な実施形態を参照して、本発明を説明してきた。当然ながら、上記詳細な説明を読み理解することで、他者は、変形及び変更に想到するであろう。本発明は、こうした変形及び変更を全て含むと解釈されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態例の一態様による箔接続体を含むランプの側断面図である。
【図2】図1の箔接続体を示す拡大斜視図である。
【図3】図1のランプ用である被覆箔の一実施形態の一部の拡大断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材料により形成された基板層と、
ランプ動作中の前記基板の酸化を低減するための被覆と、を備えるランプ用箔接続体であって、
前記被覆は、
貴金属を含む、前記基板上の第一の被覆層と
前記第一の被覆層により前記基板から離間された、貴金属を含む第二の被覆層と、
随意的に、前記第一及び第二の被覆層により前記基板から離間され、存在する場合には貴金属を含む第三の被覆層と、を含む、箔接続体。
【請求項2】
前記基板は、その主成分としてモリブデンを含む、請求項1に記載の箔接続体。
【請求項3】
前記第一の被覆層は、前記第二の被覆層より薄い、請求項1又は2に記載の箔接続体。
【請求項4】
前記第一の被覆層は、厚さ約10nm未満である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の箔接続体。
【請求項5】
前記第二の被覆層は、前記第一の層よりも少なくとも約5nm厚い、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の箔接続体。
【請求項6】
前記第一及び第二の被覆層及び、存在する場合、第三の被覆層は、その粒状構造が異なる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の箔接続体。
【請求項7】
前記第一及び第二の被覆層中の前記貴金属は同一である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の箔接続体。
【請求項8】
前記被覆層の少なくとも一層中の前記貴金属は、金、白金、及びニッケルの少なくとも一つを主成分として含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の箔接続体。
【請求項9】
前記第一及び第二の被覆層は、それぞれ、少なくとも50重量%の貴金属を含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の箔接続体。
【請求項10】
前記第一の被覆層の前記貴金属は、金又は白金を含む、請求項9記載の箔接続体。
【請求項11】
前記第二の被覆層の前記貴金属は、金又は白金を含む、請求項9記載の箔接続体。
【請求項12】
前記被覆は、前記第三の被覆層を含む、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の箔接続体。
【請求項13】
前記第三の被覆層は、前記箔接続体の最外層である、請求項12記載の箔接続体。
【請求項14】
更に、アルミニウム、ケイ素、アルミニウムの酸化物、ケイ素の酸化物、及びその組み合わせにより構成された集合のうち少なくとも一つを含む層を備える、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の箔接続体。
【請求項15】
前記基板は、その主成分としてモリブデンを含む、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の箔接続体。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の箔接続体と電極とを備えるインタフェース。
【請求項17】
請求項1乃至の15いずれか1項に記載の箔接続体を備えるランプ。
【請求項18】
ランプであって、
エンベロープと、
前記ランプの動作中に前記エンベロープ内で放電を発生させる少なくとも一個の内部電極と、
外部接続体と、
前記外部接続体を前記内部電極に電気的に接続する箔接続体と、を備え、
前記箔接続体は、
導電材料により形成された基板層と、
貴金属を含む前記基板上の第一の被覆層と
前記第一の被覆層により前記基板から離間された、貴金属を含む第二の被覆層と、
随意的に、前記第一及び第二の被覆層により前記基板から離間された、貴金属を含む第三の被覆層と、を含む、ランプ。
【請求項19】
箔接続体を形成する方法であって、
導電材料を含む基板層を提供するステップと、
前記基板上に第一の層を形成するために前記基板上に貴金属を堆積させるステップと、
貴金属の堆積を一定期間に渡って停止させるステップと、
その後、前記第一の層より厚い、前記基板上に第二の層を形成するために、前記第一の層上に貴金属を堆積させるステップと、
随意的に、貴金属の堆積を第二の期間に渡って停止させ、その後、前記基板上に第三の層を形成するために、前記第二の層上に貴金属を堆積させるステップと、を備える方法。
【請求項20】
前記堆積させた第一及び第二の層は、金及び白金の少なくとも一方を主成分として含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記堆積は、真空チャンバ内で前記貴金属を含むターゲットをスパッタリングすることを含む、請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
ランプを形成する方法であって、
請求項18乃至21のいずれか1項に記載の方法により箔接続体を形成するステップと、
内部電極及び外部接続体を前記箔接続体により電気的に相互接続するステップと、
前記内部電極をエンベロープ内において位置決めするステップと、
前記箔接続体の領域において前記エンベロープを締め付けることで前記エンベロープを密閉するステップと、を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−537064(P2009−537064A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509999(P2009−509999)
【出願日】平成19年4月30日(2007.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/067788
【国際公開番号】WO2007/133926
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】