説明

ランプ

帯域通過フィルタ(1)は、空気入りのアルミニウム室(2)からなり、その室は蓋(3)と中央絞り部(5)を有する立方共振空洞(4)を有する。空洞の対向する末端節部に、完全導電体(PECs)(6、7)が配備されている。一方のPECは空洞の一端における入力部(9)からの給電線(8)に接続され、また他方のPECは導波管(12)内の放射器(11)に給電線(10)を介して接続されている。調整ねじ突起(14、15)が前記PECsと対向して、また調整ねじ突起(16)が絞り部(5)内に各々配備され、それによって帯域通過フィルタ及び導波管の入力インピーダンスをマイクロ波駆動回路の出力インピーダンスに整合させる。無電極放電バルブ(21)が中央凹み部(22)内に配置され、放射器が別の凹み部(23)内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電極放電バルブを有し、マイクロ波エネルギー源により駆動されるランプに関する。
【背景技術】
【0002】
バルブの内容物を強力に励起してそれを白熱させるために、マイクロ波エネルギーを効率的にバルブに結合させることが極めて重要である。従って、この目的のためには、空気導波管はこれまで成功してはいない。
【0003】
フレデリック・エム・エスピュー他を発明者とする米国特許第6737809号明細書には、約2を越える誘電率を有する少なくとも一つの誘電体から基本的に構成され、適正な周波数のマイクロ波エネルギーと結合したときに少なくとも一つの共振モードで共振するような形状及び寸法を有する本体を備えた誘電体導波管一体型のプラズマランプが開示されている。前記プラズマランプにおいては、本体の空洞内に配置されたバルブが、共振する本体からエネルギーを受け取って発光プラズマを生成するガス充填物を含んでいる。
(なお、この明細書は、「バルブ」に関するものではあるが、ランプ本体から分離可能な離散型バルブを記述していない。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6737809号明細書
【特許文献2】米国特許第4607242号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ランプ内の無電極放電バルブへのマイクロ波エネルギーの改良された結合を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、無電極放電バルブと、該無電極放電バルブにマイクロ波エネルギーを照射するための放射器と、導電性シールドで被覆されたセラミック材から形成されたバルブ受け器と、マイクロ波回路とからなる、マイクロ波エネルギー源により駆動されるランプであって、
前記バルブ受け器が、内部に無電極放電バルブを収容し、該無電極放電バルブから光線を放出させるように開口された第一の凹み部と、内部に放射器を収容し、該放射器へのマイクロ波の結合を許容するように開口された第二の凹み部とを有し、さらに前記マイクロ波回路が、マイクロ波エネルギー源からのマイクロ波エネルギーの入力部と、バルブ受け器内の放射器へのマイクロ波回路の出力結合部とを有するランプにおいて、
マイクロ波結合器が、マイクロ波エネルギー源の出力インピーダンスを、マイクロ波結合器、バルブ受け器及び無電極放電バルブの結合体の入力インピーダンスと整合させる容量性−誘導性整合回路であることを特徴とするランプが提供される。
【0007】
マイクロ波回路、即ち容量性−誘導性整合回路は、好ましくは、個別のキャパシタ素子及びインダクタ素子を帯域通過フィルタとして配置させた集中素子又はタンク回路であってもよい。また、それは、前記に代えて、櫛型ラインフィルタであってもよい。
【0008】
前記整合回路下流の好ましい実施態様は空気導波管の帯域通過フィルタであるが、他の誘電物質、例えばセラミック材を基材とする導波管が使用されてもよいことは明らかである。このような導波管が、米国特許第4607242号明細書に開示されてる。
【0009】
都合の良い例によれば、整合回路は、無電極放電バルブと帯域通過フィルタ自体との間の小さな生産量の差を考慮するのみならず、導波管と無電極放電バルブの共振周波数を含むような帯域幅のフィルタを与えるために同調可能とされるように配置される。
【0010】
好ましい実施態様においては、整合回路が一対の完全導電体(PECs)からなり、それらは各々ハウジング内部に接地され、また各々、一方が入力用、他方が出力用である接続部を有している。各完全導電体の遠端部と対向して同調素子が設けられ、さらに別の同調素子が両方の完全導電体間の絞り部内に設けられている。
【0011】
さらに、好ましい実施態様においては、バルブ受け器が共振導波管であってもよい。都合の良い例によれば、それは、空間の節約のために半波導波管又は四分の一波導波管であるが、しかしながら全波導波管のような他の構成が考慮されてもよい。
好ましくは、前記共振導波管は1を越える誘電率を有する材料からなり、都合の良い例によれば、それはセラミック材からなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る帯域通過フィルタを備えたランプの斜視図である。
【図2】ランプの平面図における中央縦断面図である。
【図3】ランプの立面図における中央縦断面図である。
【図4】帯域通過フィルタのみの周波数変動に伴う入力周波数に対するVSWR(電圧定在波比)の応答を示す図表である。
【図5】バルブの発光前におけるランプと帯域通過フィルタ及び導波管の結合の場合の図4と同様の図表である。
【図6】バルブの発光後におけるランプと帯域通過フィルタ及び導波管の結合の場合のさらに図4と同様の図表である。
【図7】本発明に係る典型的な帯域通過フィルタの斜視図である。
【図8】図7に示す帯域通過フィルタの側面図である。
【図9】図7に示す帯域通過フィルタの別の側面図である。
【図10】図9のIX−IX線における側方横断面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の理解に資するために、具体的な実施態様を実施例により、添付図面に照らして以下に説明する。
図面を参照すると、帯域通過フィルタ1は、蓋3を備えた空気入りのアルミニウム製共振室2からなり、それらは協働して中央絞り部5を有する立方共振空洞4を確定している。共振空洞4の対向する末端節部に、完全導電体(PECs)6、7が配備されている。一方のPEC6は、共振空洞4の一端に設けられた入力部9から延びる給電線8に接続され、また他方のPEC7は、隣接する導波管12内の放射器11に別の給電線10を介して接続されている。
【0014】
調整ねじ突起14、15がPECs6、7と対向して配備されると共に別の調整ねじ突起16が絞り部5内に配備され、それらによって通過帯域と該通過帯域におけるフィルタの伝送特性が調整され、帯域通過フィルタ1及び導波管12の入力インピーダンスをマイクロ波駆動回路(図示なし)の出力インピーダンスに整合させることができる。典型的には、前記インピーダンスは50Ωである。
【0015】
導波管12はセラミック材からなり、その表面に金属被覆が施されている。前記導波管12は、帯域通過フィルタ1における共振室2の一端に設けられ、無電極放電バルブ21が、共振室2から離れて軸線方向に指向する中央凹み部22内に配置され、放射器11が、中央凹み部22の片側近傍にある別の凹み部23内に配置されている。この配置はランプを構成し、帯域通過フィルタ1は、都合よくは半波モードで共振するときの導波管12の共振周波数を含む通過帯域を有している。前記において、帯域通過フィルタ1が駆動されるとき、導波管12が共振して無電極放電バルブ21を駆動することになる。
【0016】
使用時において、整合回路と無電極放電バルブ21を備えたセラミック製導波管12の結合された入力インピーダンスは、設計周波数のマイクロ波が、無視し得る程度の反射を伴って入力部9の内側へと送信されるような場合のインピーダンスである。セラミック製導波管12から反射されたマイクロ波は、整合回路の出力部から導波管12内に逆反射され、マイクロ波駆動回路への逆伝播のために整合回路を通って送信されることがない。
【0017】
次に、図4に参照を転じて、調整ねじ突起14、15、16による帯域通過フィルタ1の調整を以下に説明する。PECs6、7は互いに類似し、それらの遠端部に調整ねじ突起14、15を各々整合させている。都合の良い例によれば、入力用PEC6が、低いVSWR周波数スパイクF1を生じるように調整され、出力用PEC7が、高いVSWR周波数スパイクF2を生じるように調整される。前記スパイクのレベルや周波数は、一方の調整が他方に影響を及ぼすとしても個別に制御されることが可能である。さらに、通過帯域の幅は、主として絞り部5の調整ねじ突起16により制御される。
【0018】
図4は帯域通過フィルタ1のみの場合のVSWR応答を示しているが、図5は、ランプの導波管12と無電極放電バルブ21が帯域通過フィルタ1に結合された場合における前記応答を示している。前記応答では、周波数F3を有する付加されたVSWRスパイクが周波数F1とF2の間に挿入されている。これは、導波管12の共振周波数におけるスパイクである。ランプが、通過帯域以内の周波数を有するマイクロ波エネルギーにより、無電極放電バルブ21の内容物のイオン化を引き起こすのに足りる強度で駆動されるとき、この電極放電バルブ21はマイクロ波エネルギーに対して短絡回路を生じ、該マイクロ波エネルギーを吸収して発光する。前記イオン化が保持され得る周波数は特定されているものではなく、図6に示されるように、VSWR応答は特により高い周波数端部において拡大されている。
【実施例1】
【0019】
図7〜10は、セラミック製半波導波管を2.4GHzで駆動するのに適する、本発明に係る整合回路の実施例を示している。それは、39.9×39.9mmのアルミニウム製正方形ブロック101からなり、該ブロック101には肉厚6.0mmの側板102が各々10個のねじ103でねじ止めされている。これらは、調整ねじ104と後述される結合部を考慮しつつ一定に位置決めされる。調整ねじ104が、ブロック101の一方の側壁105にねじ込まれ、該側壁105は5.84mmの肉厚を有している。前記側壁105と対向する肉厚4.24mmの側壁107から中央空洞106内へと、2体の指状PECs108、109が延設されている。これらは、矩形断面を呈している。側壁105、107間の端壁110、111は、6.60mmの肉厚、即ち中央空洞106から外部に至る断面の厚さを呈している。前記全ての側壁105、107及び端壁110、111は、(6.60mmの肉厚に垂直方向の)16.04mmの高さを有している。
【0020】
指状PECs108、109は、16.04mmの高さの方向に5.04mmの肉厚を呈し、側壁105、107の6.60mmの肉厚の方向に4.28mmの肉厚を呈している。指状PECs108、109は、ブロック101の中間高さ位置において端壁110、111の高さ方向に配置されている。また、それらの指状PECs108、109は、端壁110、111から等しく3.15mmの間隔を置いて且つ該端壁110、111と平行に配置されている。そして、それらの指状PECs108、109は、11.84mm離れたそれらの間に絞り部の間隙を有している。前記指状PECs108、109と対向する方向から、即ち調整ねじ104を備えた側壁105から中央空洞106内に延びるように、全高さにわたる耳状絞り部112が5.70mmの肉厚で中央に配置され、中央空洞106内に5.28mmの長さだけ延長されている。前記側壁105と対向する側壁107からは、指状PECs108、109が26.54mmの長さに延設されている。前記ブロック101、指状PECs108、109及び耳状絞り部112は全て中実固体から機械加工され、また全ての入隅部は半径1.5mmに曲面加工されている。
【0021】
調整ねじ104は、指状PECs108、109の中心軸と整合する微細に雌ねじ切りされたねじ穴インサート113内に収容されている。前記調整ねじ104は、インチ当たり64山の直径1/4インチ(UNS規格)のねじであるが、それは非常に微細なねじであり、整合回路の特性の精緻な調整を可能にしている。
【0022】
端壁110、111には、入力及び出力結合部116用のねじ115を収容するために雌ねじが切られている。これらの結合部116は中央電線117を備え、該電線117は、対向する端壁110、111の内側面から3.26mm離れた指状PECs108、109に直接通じている。指状PECs108、109は電線117を収容するために直径1.3mmに穿孔され、前記電線117は定位置にはんだ付けされている。
【0023】
本発明は、前記の実施態様の細部に限定されるものではない。例えば、アルミニウム製ブロック及び側板の内側表皮が、銀や金のように非常に高い電気伝導率を有する金属でめっきされてもよい。2.4GHzの周波数について、表皮厚さは2ミクロンである。6ミクロンや10ミクロンに至るめっきは、高い電気伝導率のめっき内に電流を誘導させるのに十分な被覆を提供するものである。
【符号の説明】
【0024】
F1、F2、F3 VSWR周波数スパイク
1 帯域通過フィルタ
2 共振室
4 共振空洞
5 絞り部
6、7 完全導電体(PECs)
8、10 給電線
9 入力部
11 放射器
12 導波管
14、15、16 調整ねじ突起
21 無電極放電バルブ
22 中央凹み部
23 凹み部
101 ブロック
102 側板
103 ねじ
104 調整ねじ
105、107 側壁
106 中央空洞
108、109 指状PEC
110、111 端壁
112 耳状絞り部
113 ねじ穴インサート
115 ねじ
116 結合部
117 中央電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電極放電バルブと、該無電極放電バルブにマイクロ波エネルギーを照射するための放射器と、導電性シールドで被覆されたセラミック材から形成されたバルブ受け器と、マイクロ波回路とからなる、マイクロ波エネルギー源により駆動されるランプであって、
前記バルブ受け器が、内部に無電極放電バルブを収容し、該無電極放電バルブから光線を放出させるように開口された第一の凹み部と、内部に放射器を収容し、該放射器へのマイクロ波の結合を許容するように開口された第二の凹み部とを有し、さらに前記マイクロ波回路が、マイクロ波エネルギー源からのマイクロ波エネルギーの入力部と、バルブ受け器内の放射器へのマイクロ波回路の出力結合部とを有するランプにおいて、
マイクロ波回路が、マイクロ波エネルギー源の出力インピーダンスを、マイクロ波回路、バルブ受け器及び無電極放電バルブの結合体の入力インピーダンスと整合させる容量性−誘導性整合回路であることを特徴とするランプ。
【請求項2】
マイクロ波回路が櫛型ラインフィルタである、請求項1に記載のランプ。
【請求項3】
マイクロ波回路が集中素子回路である、請求項1に記載のランプ。
【請求項4】
マイクロ波回路が帯域通過フィルタとして配置された、請求項1に記載のランプ。
【請求項5】
マイクロ波回路が、金属製のハウジングと、各々ハウジング内部に接地された一対の完全導電体(PECs)と、一方が入力用、他方が出力用である一対の接続部とからなる、請求項4に記載のランプ。
【請求項6】
マイクロ波回路が同調可能である、請求項1〜5の何れかに記載のランプ。
【請求項7】
ハウジング内に各完全導電体(PECs)の遠端部と対向して配備された個別の同調素子を含む、請求項5に従属する請求項6に記載のランプ。
【請求項8】
両方の完全導電体(PECs)の間の絞り部内に配備された別の同調素子を含む、請求項7に記載のランプ。
【請求項9】
金属製のハウジングが、内側に、高い電気伝導率を有する金属で6ミクロン又はそれ以上の厚さにめっきされた、請求項5〜8の何れかに記載のランプ。
【請求項10】
マイクロ波回路における要素間の誘電体が空気である、請求項1〜9の何れかに記載のランプ。
【請求項11】
マイクロ波回路における要素間の誘電体がセラミック材である、請求項1〜9の何れかに記載のランプ。
【請求項12】
バルブ受け器が共振導波管である、請求項1〜11の何れかに記載のランプ。
【請求項13】
バルブ受け器が共振半波導波管である、請求項1〜12の何れかに記載のランプ。
【請求項14】
共振導波管が1を越える誘電率を有する材料からなる、請求項12又は12に記載のランプ。
【請求項15】
共振導波管がセラミック材からなる、請求項14に記載のランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−539214(P2009−539214A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512657(P2009−512657)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001935
【国際公開番号】WO2007/138276
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(507212067)セラビジョン・リミテッド (14)
【Fターム(参考)】