説明

ランプ

厚い壁を有するランプ(11)は、両端に取り付けられたモリブデン製のカップ封着(10)を有する。この封着は、厚い壁のチューブのボアによって形成された空隙(15)内に突き出したタングステン電極(14)を有する。さらに、この封着は、厚い壁を有する石英製チューブ(12)の端部に溶融された短くて薄い壁を有する石英製チューブ(18)の端部に設置された羽根状の角部(17)を有するモリブデン製カップ(16)を備えている。これらの電極は、接合部(19)でろう付けされる。このランプは、カップ封着部の前方に取り付けられた付属の排気管(20)を介して、希ガスと金属ハロゲン化物その他の励起可能な材料の充填材によって満たすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電極放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光させるためにカプセル内で放電を励起することが知られている。典型例は、水銀蒸気を用いた蛍光灯ランプである。これは、紫外線放射を生じさせる。次に、これは、蛍光性粉末が発光するように励起させる。ナトリウム放電ランプのような多くの放電ランプは、直接、使用される励起可能な材料の特定の放電周波数で可視光を生成する。このようなランプは、タングステン・フィラメントランプよりも消費電力1W当たりの発光光束の観点で効率的である。しかしながら、これらは放電に必要な電流を流すために劣化し、最終的には効率も低下する。
【0003】
無電極バルブ型ランプの開発プログラムにおいて、我々は、国際出願番号PCT/GB2006/002018号(以下「2018ランプ」という)、ランプ用バルブに関する国際出願番号PCT/GB2005/005080号、マイクロ波で駆動されるランプの整合回路に関する国際出願番号PCT/GB2007/001935号に示すとおり、無電極バルブ型ランプを開発してきた。これらはすべて、バルブ内の発光プラズマを励起させるためのマイクロ波エネルギーを使用して無電極で駆動されるランプに関するものである。我々の前記2018ランプは誘電性の導波路を使用しているが、これは実質的に2.4GHzの駆動周波数で波長を減らしている。このランプは背面投射型テレビのような家庭用電気機器に適している。
【0004】
米国特許番号6,737,809号において、我々は、マイクロ波で駆動される光源であって、
・中に密閉されたボイド空間を有するプラズマのルツボであって、そこから出てくる光に対して半透明な材料からなる固体のプラズマのルツボと、
・前記プラズマのルツボを取り囲むファラデー箱であって、前記プラズマのルツボから出てくる光を少なくとも部分的に透過しつつ、マイクロ波を閉じ込めているファラデー箱と、
・前記密閉されたボイド空間において、その内部で発光プラズマを生成するために充填された、マイクロ波のエネルギーによって励起可能な充填材と、
・前記充填材にプラズマを誘導するマイクロ波エネルギーを伝送するために前記プラズマのルツボの中に設けられたアンテナであって、前記アンテナが、
・マイクロ波エネルギー源と結合するために前記プラズマのルツボの外側に伸びている接続部
を有しているようなアンテナと、
を有する光源について記載している。
【0005】
我々の開発プログラムの推進において、我々は、国際公開番号WO2009/063205号として現在公開されている2008年11月14日付の国際特許出願番号PCT/GB2008/003829号に示されるように、バルブと導波路を一つの構成要素として一体化させた。後段において、我々は、マイクロ波で駆動される光源であって、前記光源が、
・中に密閉されたボイド空間を有するプラズマのルツボであって、そこから出てくる光に対して半透明な材料からなる固体のプラズマのルツボと、
・前記プラズマのルツボを取り囲むファラデー箱であって、前記プラズマのルツボから出てくる光を少なくとも部分的に透過しつつ、マイクロ波を閉じ込めているファラデー箱と、
・前記密閉されたボイド空間において、その内部で発光プラズマを生成するために充填された、マイクロ波のエネルギーによって励起可能な充填材と、
・前記充填材にプラズマを誘導するマイクロ波エネルギーを伝送するために前記プラズマのルツボの中に設けられたアンテナであって、前記アンテナが、
・マイクロ波エネルギー源と結合するために前記プラズマのルツボの外側に伸びている接続部
を有しているようなアンテナと、
を有しており、前記密閉されたボイド空間のプラズマからの光が前記プラズマのルツボを通過可能であり、そこから前記箱を介して放射されるように配置されたことを特徴とする光源について記載している。
【0006】
我々は、この光源を発光共振器(LER)と呼んでいる。
【0007】
このLERの明細書(WO2009/063205号)において、用いられているように「半透明」とは半透明とされている物の材料が透明または半透明であることを意味し、「プラズマのルツボ」とはプラズマを閉じ込めた(あるいは、閉じ込めるための)密封体を意味し、ボイド空間の充填材がアンテナからのマイクロ波エネルギーによって励起された時はそのボイド空間内を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
我々のLERランプでは、高出力でプラズマが駆動される。薄い壁を有する電極ランプは、同一の内側直径を有し、高出力で動作するが、内壁が高温になるために問題が発生しやすい。典型的なLERプラズマチャンバーは、50W/cm2より大きい壁の負荷で駆動される。従来の一般的な照明用の溶融石英アークチューブは、50W/cm2より小さい負荷で駆動される。壁の負荷は、LERランプ内の消費電力をプラズマチャンバーの内面の面積で割った値で定義される。我々は、この高い壁の負荷はLERランプの放熱する能力によって可能となるものと信じている。熱は、プラズマチャンバー付近から離れるように誘導され、比較的大きな表面の面積からの放射と対流によって消失する。対流は、強制対流でも自然対流でも良い。
【0009】
現在、我々は、励起可能な材料をLERと同じオーダーの規模の空隙(ボイド空間)に充填された厚い壁を有する電極ランプが、LERの出力と同じオーダーで駆動されると信じている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は改良した光源を提供することを目的とする。
【0011】
本発明によれば、
・封着された空隙を内部に有する半透明のルツボと、
・前記空隙の他端で前記ルツボによって支持され、前記空隙の中に突き出した一対の電極と、
・発光プラズマを内部で形成するために、前記電極間に流れる電流によって励起可能な材料からなる前記空隙内の充填材と、
を備えた電極ランプであって、
・前記半透明のルツボが、少なくとも壁の厚さ方向において前記空隙の断面の寸法と同程度の壁の厚さを有する
ことを特徴とする電極ランプが提供される。
【0012】
この配置では、使用時において、
・空隙内のプラズマからの光がプラズマルツボを透過して、そこから放射することができ、
・プラズマからの熱を空隙からルツボ表面に誘導し、ルツボの駆動温度が安定するようにそこから消失させることができる。
【0013】
熱のほとんどがルツボの表面から対流によって放熱し、また放射によっても消失することが予測される。
【0014】
また、我々は、特に前記空隙の付近で、ルツボの内側材料から熱が放射されることを予測している。今のところ、我々は、その場所から放射される熱に由来する正確な測定方法を知らない、すなわち、どのくらいの熱が各円筒または表面から放射されるかによって、ルツボを円筒または表面をより大きくするかどうか考慮する方法を知らない。しかしながら、我々は、厚い壁を有するランプが、空隙付近のルツボの材料からの放射によって熱の大部分を消失するものと信じている。
【0015】
我々のLERランプでは、通常、空隙の直径に対する外側直径の割合は係数5より大きくされる。これは、ルツボを空洞共振器とするための寸法であり、換言すると、ルツボの寸法は、マイクロ波の駆動周波数に対応させたものである。
【0016】
本発明において、我々は、このようなルツボの大きさに対する空隙の大きさの割合を使用することができるが、より大きな割合が必要となることは予測していない。実際、我々は、マイクロ波共振には小さすぎるルツボの断面の寸法を予測している。それでも、このルツボの断面の寸法は、空隙の断面を含むために、従来のランプよりも実質的に大きい。
【0017】
半透明のルツボ内の空隙は、
・押圧された、もしくは狭くされた封着部によって、または、
・真空崩壊封着によって、または、
・カップ封着によって、または、
・段階的なガラス封着によって、
電極の周囲で封着される。
【0018】
好ましくは、モリブデンまたは同程度の低い熱膨張係数と高い導電性を有する他の材料からなる細長い一片は、この封着を貫通してルツボ内に突き出しており、電極をルツボの外側と電気的に接続する。
【0019】
好ましくは、電流によって励起可能な材料を半透明なルツボ内の空隙の中に導入するために、封着可能な排気管が設けられる。
【0020】
ここで、本発明の理解のために、本発明の特定の実施形態について添付図面を参照しながら記載する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一のランプの斜視図を示す図である。
【図2】本発明の第二のランプの中央の断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、図1を参照すると、ランプ1は、厚い壁を有する石英製チューブからなる半透明のルツボ2を有している。このチューブの端部3は、閉じられており、タングステン電極4を備えている。ルツボ内で、空隙5が定義される。このチューブは、5mmのボアと10mmの厚さTの壁を有している。このように、空隙は5mmの横断面Cと12mmの長さLを有している。この空隙は、励起可能な材料、通常、金属ハロゲン化物と希土類元素の気体を充填される。実際の充填材は、放射光スペクトルに対応するように選択されるだろう。
【0023】
比較のために、空隙の長さに対応するチューブの外側の表面積は、チューブの半径Rと空隙の長さLにより、2πRLとなる。図1のランプでは、表面積は、2×π×12.5×12=942.48mmとなる。
【0024】
仮に、この表面積からの対流および放射による熱損失が、この表面積に比例するだけだとすれば、同程度の表面積を有する従来の薄い壁を有する電極ランプは、1mmの壁の厚さで、12×12.5/3.5=42.86mmの長さを有することとなる。
【0025】
厚い壁を有するランプを生成するために壁の厚さを増加させることは、別の言葉で言えば、割合の係数を3より大きくすることによってその長さが減少させることである。また、このことは、照明器具として使用する際の放射光を集光する点で重要な利益を有する。光学系は、その光学系が制御している光源が点光源に近づいたとき、効率的になることが知られている。本発明の例示するランプは、照明効率が著しく増加することによって、比較的短い長さで発光する。実際、我々は、このような効率の増加により、照明の数を半分にまでも減少させることができると期待していた。また、これは、運転コストだけでなく資本コストも半分にできるというものである。
【0026】
当業者に知られている多数の従来の方法で、この電極は、ランプ内に組み込むことができる。したがって、一つの実施例についてだけ述べる。
【0027】
図2を参照すると、厚い壁を有するランプ11は、両端に取り付けられたモリブデン製のカップ封着10を有する。この封着は、厚い壁のチューブのボアによって形成された空隙15内に突き出したタングステン電極14を有する。さらに、この封着は、厚い壁を有する石英製チューブ12の端部に溶融された短くて薄い壁を有する石英製チューブ18の端部に設置された羽根状の角部17を有するモリブデン製カップ16を備えている。これらの電極は、接合部19でろう付けされる。このランプは、カップ封着部の前方に取り付けられた付属の排気管20を介して、希ガスと金属ハロゲン化物その他の励起可能な材料の充填材によって満たすことができる。
【0028】
高出力のために、厚い壁を有するチューブの直径を空隙のボアの二倍以上の大きさまで増加させ、低出力のために、壁の厚さを空隙のボアの直径程度まで薄くすることができる。
【0029】
このランプは、直列接続されたチョークと共に電源電圧を落とすことを含め、従来のいかなる方式においても駆動することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・封着された空隙を内部に有する半透明のルツボと、
・前記空隙の他端で前記ルツボによって支持され、前記空隙の中に突き出した一対の電極と、
・発光プラズマを内部で形成するために、前記電極間に流れる電流によって励起可能な材料からなる前記空隙内の充填材と、
を備えた電極ランプであって、
・前記半透明のルツボが、少なくとも壁の厚さ方向において前記空隙の断面の寸法と同程度の壁の厚さを有する
ことを特徴とする電極ランプ。
【請求項2】
前記半透明のルツボ内の前記空隙が、押圧された、もしくは狭くされた封着部によって、前記電極の周囲で封着されていることを特徴とする請求項1記載の電極ランプ。
【請求項3】
前記半透明のルツボ内の前記空隙が、真空崩壊封着によって、前記電極の周囲で封着されていることを特徴とする請求項1記載の電極ランプ。
【請求項4】
前記半透明のルツボ内の前記空隙が、カップ封着によって、前記電極の周囲で封着されていることを特徴とする請求項1記載の電極ランプ。
【請求項5】
前記半透明のルツボ内の前記空隙が、段階的なガラス封着によって、前記電極の周囲で封着されていることを特徴とする請求項1記載の電極ランプ。
【請求項6】
モリブデンまたは同程度の低い熱膨張係数と高い導電性を有する他の材料からなる細長い一片が、前記封着を貫通して前記ルツボ内に突き出しており、前記電極を前記ルツボの外側と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の電極ランプ。
【請求項7】
電流によって励起可能な材料を前記半透明のルツボ内の前記空隙の中に導入するために、封着可能な排気管を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の電極ランプ。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−514617(P2013−514617A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543892(P2012−543892)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002287
【国際公開番号】WO2011/073623
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(507212067)セラビジョン・リミテッド (14)
【Fターム(参考)】