リアクトル及びこれを内蔵した電力変換装置
【課題】放熱性に優れたリアクトル及びこれを内蔵した電力変換装置を提供すること。
【解決手段】通電により磁束を発生するコイル11と、コイル11の内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコア12と、コイル11及びコア12を内側に収容するケース13と、コア12に接触配置された冷却管14(冷却部材)とを有することを特徴とするリアクトル1。また、半導体モジュールと冷却器とリアクトル1とを有する電力変換装置において、冷却器の一部がリアクトル1のコア12に接触配置されている。
【解決手段】通電により磁束を発生するコイル11と、コイル11の内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコア12と、コイル11及びコア12を内側に収容するケース13と、コア12に接触配置された冷却管14(冷却部材)とを有することを特徴とするリアクトル1。また、半導体モジュールと冷却器とリアクトル1とを有する電力変換装置において、冷却器の一部がリアクトル1のコア12に接触配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルの発熱を放熱する放熱部材を設けたリアクトル及びこれを内蔵した電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、例えば、磁性体からなるコアとこれに巻回したコイルとからなる。そして、コイルに通電することによりコアに沿った磁束を形成する。
コイルに通電してリアクトルを作動させると、これに伴いコイルからジュール熱が発生する。この発熱により、リアクトルの温度が上昇しすぎると、リアクトルの作動の安定性が損なわれるおそれがある。また、リアクトルの周囲の電子部品の温度上昇を招き、周囲の電子部品の作動安定性を損ねるおそれがある。
その結果、かかるリアクトルを内蔵する電力変換装置等の作動安定性を損ねるおそれがある。
【0003】
そこで、リアクトルの温度上昇を抑制するために、放熱構造を設けたリアクトルが提案されている(特許文献1参照)。
この放熱構造を設けたリアクトルは、板状のヒートシンクに対して、リアクトルを配置して、リアクトルの外表面からの放熱を促進させている。
【0004】
しかしながら、リアクトルの形状によっては、ヒートシンクとの接触面積を充分に確保することが困難となり、放熱効率の向上が困難となるおそれがある。
特に、コイルの発熱する熱は、コイルの内側に溜り易く、上記のごとく、リアクトルの外表面からの放熱だけでは、充分にリアクトルの温度上昇の抑制効果を得ることが困難となるおそれがある。そして、従来のように、例えば鉄心コアを用いる場合等には、コイルの内側に冷却部材を配設することは困難である。
【0005】
【特許文献1】特開2002−50527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたもので、放熱性に優れたリアクトル及びこれを内蔵した電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、通電により磁束を発生するコイルと、
該コイルの内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコアと、
上記コイル及び上記コアを内側に収容するケースと、
上記コアに接触配置された冷却部材とを有することを特徴とするリアクトルにある(請求項1)。
【0008】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記リアクトルにおいては、上記冷却部材が、磁性粉末混合樹脂からなる上記コアに接触配置されている。そのため、冷却部材とリアクトルとの接触面積を大きく確保することができ、効率的に放熱を行うことができる。即ち、上記コアが磁性粉末混合樹脂からなるため、例えば、その形状を冷却部材の表面に追従するように密着させることができる。これにより、冷却部材とリアクトルとの接触面積を大きくすることができる。
そして、コイルへの通電によって発生する熱がコアに伝わり、コアの熱を、コアに密着した冷却部材から放熱することができ、リアクトルの放熱を効率的に行うことができる。
その結果、リアクトルの動作安定性を確保することができる。
【0009】
以上のごとく、本発明によれば、放熱性に優れたリアクトルを提供することができる。
【0010】
第2の発明は、半導体素子を内蔵する半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却器と、上記半導体モジュールに電気的に接続されたリアクトルとを有する電力変換装置であって、
上記リアクトルは、通電により磁束を発生するコイルと、該コイルの内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコアと、上記コイル及び上記コアを内側に収容するケースとを有し、
上記冷却器の一部が上記リアクトルの上記コアに接触配置されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項7)。
【0011】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記リアクトルにおいては、上記冷却器の一部が磁性粉末混合樹脂からなる上記コアに接触配置されているため、冷却器とリアクトルとの接触面積を大きく確保することができ、効率的に放熱を行うことができる。そのため、リアクトルの放熱を効率的に行うことができる。
その結果、リアクトル及びその周囲の電子部品の動作安定性を確保し、電力変換装置の動作安定性を確保することができる。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、リアクトルの放熱性に優れた電力変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記第1の発明(請求項1)、及び上記第2の発明(請求項7)において、上記磁性粉末混合樹脂は、磁性粉末を樹脂に混入させてなる材料である。そして、上記磁性粉末としては、例えば、フェライト粉末、鉄粉、珪素合金鉄粉等がある。また、上記樹脂としては、例えばエポキシ樹脂等の熱可硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0014】
また、上記第1の発明(請求項1)において、上記冷却部材は、上記コアに埋設されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、冷却部材とリアクトルとの接触面積を、より大きく確保することができると共に、コアの内部からリアクトルの放熱を行うことができる。即ち、コイルへの通電によって発生する熱がコアに伝わり、コアの熱を、その内部に埋設された冷却部材の全周から放熱することができる。そのため、リアクトルの放熱を効率的に行うことができる。
【0015】
また、上記コアは上記磁性粉末混合樹脂からなるため、コアの内部に冷却部材を埋設することが容易となる。即ち、例えば、コイルと共にケース内の所定の位置に冷却部材を配置した状態で、上記磁性粉末混合樹脂を充填した後固化させることにより、コアの内部に容易に冷却部材を埋設することができる。
【0016】
上記冷却部材は、上記コイルの内側に配設されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記リアクトルの放熱効率を一層向上させることができる。
即ち、コイルにより発熱される熱は、リアクトルの構造上、コイルの内側に溜り易い。そこで、熱の溜まりやすいコイルの内側に上記冷却部材を配置することにより、効率的にリアクトルの放熱を行うことができる。
また、コイルの内側に配設されるコアが上記のごとく磁性粉末混合樹脂からなるため、コイルの内側に、冷却部材を容易に埋設することができる。
【0017】
また、上記コイルの巻き線方向に直交する直線上において、上記冷却部材と上記コイルとの間の距離は、上記コイルと上記ケースとの間の距離以上であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記コイルの内側に配設した冷却部材が、コイルの内側と外周とにわたって生じる磁束の形成を阻害するおそれがない。即ち、コイルへの通電によって生じる磁束の経路は、コイルの内側と外側とに略均等な状態でループ状に形成される。ところが、磁束が形成されるべき経路に冷却部材が存在すると、上記コアをその部分に存在させることができなくなる。特に、冷却部材を非磁性体によって構成した場合、磁束の形成を阻害することとなる。そこで、コイルの内側におけるコアの厚みを、外周の厚み以上に確保することにより、冷却部材が磁束の形成を阻害することを防ぐことができる。
それ故、リアクトルの性能を低下させることなく、冷却効率を向上させることができる。
【0018】
また、上記冷却部材は、内側に冷却媒体を流通させる冷却管からなることが好ましい(請求項5)。
この場合には、一層冷却効率に優れたリアクトルを得ることができる。
【0019】
また、上記冷却部材は、上記ケースと一体化された突起部からなるものであってもよい(請求項6)。
この場合には、コイルの内側に溜まった熱を、突起部を介してケースに逃がすことができる。
【0020】
次に、上記第2の発明(請求項7)において、上記電力変換装置としては、例えば、DC−DCコンバータやインバータ等がある。また、上記電力変換装置は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電流の生成に用いることができる。
また、上記半導体モジュールは、例えばIGBT素子等の半導体素子を内蔵してなり、電力変換回路の一部を構成する。
【0021】
また、上記冷却器の一部は、上記コアに埋設されていることが好ましい(請求項8)。
この場合には、冷却部材とリアクトルとの接触面積を、より大きく確保することができると共に、コアの内部からリアクトルの放熱を行うことができ、リアクトルの放熱を効率的に行うことができる。
【0022】
また、上記冷却器は、上記半導体モジュールの両面に接触配置される複数の冷却チューブと、該複数の冷却チューブを互いに連結する連結管と、冷却媒体を導入する導入管と、冷却媒体を排出する排出管とを有し、上記導入管及び上記排出管の一部が、上記リアクトルの上記コアに接触配置されていることが好ましい(請求項9)。
この場合には、リアクトルを効率的に冷却することができると共に、電力変換装置のコンパクト化を図ることが容易となる。
【0023】
また、上記冷却器の一部は、上記コイルの内側に配設されていることが好ましい(請求項10)。
この場合には、リアクトルの冷却効率に一層優れた電力変換装置を得ることができる。
【0024】
また、上記コイルの巻き線方向に直交する直線上において、上記冷却器の一部と上記コイルとの間の距離は、上記コイルと上記ケースとの間の距離以上であることが好ましい(請求項11)。
この場合には、上記コイルの内側に配設した冷却部材が、コイルの内側と外周とにわたって生じる磁束の形成を阻害するおそれがない。
【0025】
また、上記冷却部材は、上記コイルの内側に充填された上記コアの内側に埋設された磁性体からなり、該磁性体は、上記ケースと接触又は接続していることが好ましい(請求項12)。
この場合には、リアクトルの小型化を図ることができるとともに、インダクタンス性能を確保しつつ放熱効率を向上させることができる。すなわち、ただ単にコイルの外径を小さくしてコイルに囲まれる面積を小さくした場合、リアクトルのインダクタンス値は低下する。
【0026】
しかしながら、上記のごとく磁性粉末混合樹脂からなるコアの内側に磁性体を埋設すれば、磁性粉末混合樹脂からなるコアと磁性体とによる全体の透磁率を増加させることができる。それゆえ、外径を小さくしてコイルを磁性体に近付けることにより、該コイルの巻き数を増やさなくても充分なインダクタンス性能を得ることができる。また、これにより、リアクトルの小型化をも図ることができる。
【0027】
さらに、上記磁性体はケースと接触又は接続しているため、リアクトルの放熱効率を向上させることができる。すなわち、コイルの内側においては磁束が集中して形成されるため、当該部分は高温となり、磁性体も高温となる。ここで、上記磁性体はケースと接触又は接続しているため、比較的放熱されにくいコイルの内側の熱を、磁性体からケースへと伝えることができる。それゆえ、リアクトルの放熱効率を向上させることができる。
なお、上記磁性体として、例えば、鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、パーメンジュール、フェライト、アモルファス磁性合金、センダスト等を用いることができる。
【0028】
また、上記磁性体は、上記磁性粉末混合樹脂からなるコアよりも透磁率が高いことが好ましい(請求項13)。
この場合には、上記磁性体を配設することにより、磁性粉末混合樹脂からなるコアと磁性体とによる全体の透磁率を増加させることができる。それゆえ、リアクトルのインダクタンス性能を確保しつつリアクトルの小型化を充分に図ることができる。
【0029】
また、上記ケースは、上記コイル及び上記コアを内側に収容する収容凹部を有する本体部と、該本体部の開口部を閉塞するための蓋部とからなり、上記磁性体は、上記ケースの本体部に接触又は接続される第一磁性体と上記ケースの蓋部に接触又は接続される第二磁性体とからなり、上記第一磁性体の先端部と上記第二磁性体の先端部とが対向配置されてなることが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記磁性体を所定の位置に容易に配置することができるため、上記リアクトルを容易に形成することができる。また、第一磁性体からケースの本体部を介して形成される放熱経路、及び第二磁性体からケースの蓋部を介して形成される放熱経路を確保して、リアクトルの放熱効率を向上させることができる。
【0030】
また、上記磁性体は、上記第一磁性体の先端部と上記第二磁性体の先端部とが離隔配置されることによって上記第一磁性体と上記第二磁性体との間に形成されるギャップを有することが好ましい(請求項15)。
この場合には、コイルの内側における磁気飽和を防ぐことができ、大電流が流れても充分なインダクタンス性能を有するリアクトルを得ることができる。
【0031】
上記のごとくコイルの内側に透磁率の高い上記磁性体を埋設する場合には、以下のような問題が生じることがある。すなわち、回路に大電流が流れたとき、磁性体において磁束が極端に集中して磁気飽和が生じ、リアクトルのインダクタンス値が低下するという問題が生じる。
【0032】
これに対して、上記のごとくギャップを設けることにより、コイルの内側において磁束が集中している部分から磁束が比較的集中していない部分へと、ギャップを介して磁束を分散させることができる。そのため、コイルの内側において磁束が集中して形成されることを防ぐことができる。そして、これにより、コイルの内側における磁気飽和を防ぐことができ、コイルに大電流が流れても、充分なインダクタンス性能を有するリアクトルを得ることができる。
【0033】
なお、上記ギャップは、磁性粉末混合樹脂からなるコアによって充填されていてもよく、非磁性体など別部材によって充填されていてもよい。また、上記ギャップは、中空状となっていてもよい。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
本発明の実施例に係るリアクトル及びこれを用いた電力変換装置につき、図1〜図3を用いて説明する。
本例のリアクトル1は、図1に示すごとく、通電により磁束を発生するコイル11と、コイル11の内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコア12と、コイル11及びコア12を内側に収容するケース13と、コア12に接触配置された冷却部材としての冷却管14とを有する。
冷却管14は、コア12に埋設されていると共に、内側に冷却媒体141を流通させるよう構成されている。
【0035】
コア12を構成する磁性粉末混合樹脂は、磁性粉末を樹脂に混入させてなる材料である。そして、磁性粉末としては、例えば、フェライト粉末、鉄粉、珪素合金鉄粉等がある。また、樹脂としては、例えばエポキシ樹脂等の熱可硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0036】
また、ケース13及び冷却管14は、例えばアルミニウムからなる。また、冷却媒体としては、例えば、エチレングリコール系の不凍液が混入した水、水やアンモニア等の自然冷媒、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒などを用いることができる。
【0037】
また、上記リアクトル1を内蔵した本例の電力変換装置2につき説明する。
電力変換装置2は、図2に示すごとく、半導体素子を内蔵する半導体モジュール21と、半導体モジュール21を冷却する冷却器3と、半導体モジュール21に電気的に接続されたリアクトル1とを有する。
【0038】
冷却器3は、半導体モジュール21の両面に接触配置される複数の冷却チューブ31と、該複数の冷却チューブ31を互いに連結する連結管32と、冷却媒体141を導入する導入管33と、冷却媒体141を排出する排出管34とを有する。そして、導入管33及び排出管34の一部が、リアクトル1のコア12に埋設されている。即ち、導入管33及び排出管34の一部が、図1における上記冷却管14となる。
【0039】
電力変換装置2は、複数の半導体モジュール21と複数の冷却チューブ31とを交互に積層配置してなる。そして、冷却器3には、導入管33から冷却媒体141が導入され、各冷却チューブ31に分配されながら流通する。この間に、各冷却チューブ31に接触配置された半導体モジュール21と冷却媒体141とが熱交換を行い、半導体モジュール21が冷却される。
【0040】
また、冷却チューブ31を通過して半導体モジュール21から受熱した冷却媒体141は、排出管34を通って排出される。
このように、冷却媒体141は、導入管33から導入され、排出管34から排出される。そして、冷却媒体141が導入管33及び排出管34を流通する間に、リアクトル1と冷却媒体141とが熱交換を行い、リアクトル1の冷却を行う。
【0041】
次に、本例のリアクトル1の製造方法につき、図3を用いて説明する。
まず、ケース13内における所定の位置に、コイル11をセットする。次いで、ケース13内に、磁性粉末混合樹脂液120を注入し、所定加熱温度に所定時間保持して、磁性粉末混合樹脂液120を固化させて、コア12を形成する。
なお、コイル11の巻線端部である引出リード部111は、コア12の外側に突出するようにする。
【0042】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記リアクトル1においては、上記冷却管14が上記コア12に埋設されている。そのため、冷却管14とリアクトル1との接触面積を大きく確保することができると共に、コア12の内部からリアクトル1の放熱を行うことができる。即ち、コイル11への通電によって発生する熱がコア12に伝わり、コア12の熱を、その内部に埋設された冷却管14の全周から放熱することができる。そのため、リアクトル1の放熱を効率的に行うことができる。
その結果、リアクトル1の動作安定性を確保することができる。
【0043】
また、コア12は磁性粉末混合樹脂からなるため、コア12の内部に冷却管14を埋設することが容易となる。即ち、例えば、コイル11と共にケース13内の所定の位置に冷却管14を配置した状態で、磁性粉末混合樹脂を充填した後固化させることにより、コア12の内部に容易に冷却管14を埋設することができる。
【0044】
また、本例の電力変換装置2は、半導体モジュール21を冷却する冷却器3の一部を、リアクトル1の冷却にも用いることができるため、装置の小型化が容易となる。
更に、冷却器3の導入管33及び排出管34の一部をリアクトル1のコア12内に埋設するため、リアクトル1を効率的に冷却することができると共に、電力変換装置2の一層のコンパクト化が容易となる。
【0045】
以上のごとく、本例によれば、放熱性に優れたリアクトル及びこれを用いた電力変換装置を提供することができる。
【0046】
(実施例2)
本例は、図4に示すごとく、冷却管14をコイル11の上下位置におけるコア12内に埋設した例である。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合にも、上記実施例1と同様の作用効果を有する。
【0047】
(実施例3)
本例は、図5に示すごとく、冷却管14を扁平状に形成して、コイル11の外側におけるコア12内に埋設した例である。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合には、コイル11から発生する熱を、より均一に放熱しやすくなり、効率的な冷却を行うことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0048】
(実施例4)
本例は、図6に示すごとく、冷却管14をコイル11の内側におけるコア12内に埋設した例である。
即ち、冷却器3(図2参照)の導入管33及び排出管34の一部である2本の冷却管14が、リアクトル1のコイル11の内側を貫通している。
【0049】
また、コイル11と冷却管14との位置関係については、図6、図7に示すごとく、種々の位置関係をとることができるが、好ましくは以下の関係を満たすよう配置する。即ち、コイル11の巻き線方向に直交する直線上において、冷却管14とコイル11との間の距離B、Dは、コイル11とケース13との間の距離A、C以上とする。つまり、B≧A、D≧Cであることが好ましい。
その他は、実施例1と同様である。
【0050】
本例の場合には、リアクトル1の放熱効率を一層向上させることができる。
即ち、コイル11により発熱される熱は、リアクトル1の構造上、コイル11の内側に溜り易い。そこで、熱の溜まりやすいコイル11の内側に冷却管14を配置することにより、効率的にリアクトル1の放熱を行うことができる。
【0051】
また、コイル11の内側に配設されるコア12が上記のごとく磁性粉末混合樹脂からなるため、コイル11の内側に、冷却管12を容易に埋設することができる。即ち、従来のように鉄心等からなるコアの周囲にコイルを巻回してなるリアクトルの場合、コイルの内側に冷却管を通すことは困難であるが、本発明によれば、コイル11の内側への冷却管12の配設が容易となる。
【0052】
また、コイル11の巻き線方向に直交する直線上において、冷却管14とコイル11との間の距離B、Dは、コイル11とケース13との間の距離A、D以上である。それ故、コイル11の内側に配設した冷却管14が、コイル11の内側と外周とにわたって生じる磁束の形成を阻害するおそれがない。即ち、コイル11への通電によって生じる磁束の経路は、コイル11の内側と外側とに略均等な状態でループ状に形成される。ところが、磁束が形成されるべき経路に冷却管14が存在すると、上記コア12をその部分に存在させることができなくなる。特に、冷却管14が非磁性体によって構成してなるため、磁束の形成を阻害することとなる。
【0053】
そこで、コイル11の内側におけるコア12の厚みB、Dを、外周の厚みA、C以上に確保することにより、冷却管14が磁束の形成を阻害することを防ぐことができる。
それ故、リアクトル1の性能を低下させることなく、冷却効率を向上させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0054】
(実施例5)
本例は、図8、図9に示すごとく、リアクトル1を冷却する冷却部材を、ケース13と一体化された突起部140によって構成した例である。
即ち、リアクトル1のコア12に埋設して、リアクトル1の放熱を行うための冷却部材として、上記突起部140を設けた。突起部140は、アルミニウムからなるケース13と一体化されており、突起部140自体もアルミニウムからなる。
【0055】
また、突起部140は、図9に示すごとく、ケース13の底面から突出形成されており、コイル11の内側に配置されている。なお、突起部140は、ケース13の底面に限らず、上面あるいは側面から突出形成されていてもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0056】
本例の場合には、コイル11の内側に溜まった熱を、突起部140を介してケース13に逃がすことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
なお、本例では、突起部140をコイル11の内側に配置した例を示したが、突起部140をコイル11の外側においてコア12に食込ませる構成とすることもできる。
【0057】
(実施例6)
本例は、図10に示すごとく、冷却管14を、コイル11の外側におけるコア12に接触配置した例である。
そして、コア12は、冷却管14の表面の一部に追従するように密着している。
その他は、実施例1と同様である。
【0058】
本例のリアクトル1においても、冷却管14が、磁性粉末混合樹脂からなるコア12に接触配置されているため、冷却管14とリアクトル1との接触面積を大きく確保することができ、効率的に放熱を行うことができる。即ち、コア12が磁性粉末混合樹脂からなるため、その形状を冷却管14の表面に追従するように密着させることができる。これにより、冷却管14とリアクトル1との接触面積を大きくすることができる。
そして、コイル11への通電によって発生する熱がコア12に伝わり、コア12の熱を、コア12に密着した冷却管14から放熱することができ、リアクトル1の放熱を効率的に行うことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0059】
(実施例7)
本例は、図11に示すごとく、リアクトル1を冷却する冷却部材を、ケース13と接触又は接続している磁性体15によって構成した例である。
すなわち、リアクトル1のコア12に埋設してリアクトル1の放熱を行うための冷却部材として、上記磁性体15を設けた。
【0060】
磁性体15は、例えばアルミニウムからなるケース13の本体部131及び蓋部132と、接触又は例えば溶接等により接続してある。磁性体15は、例えば、鉄からなり、コア11よりも透磁率が高い。
また、磁性体15は、図11に示すごとく、コイル11の内側に埋設されている。そして、磁性体15は、コア12の中心穴123に挿嵌され、その両端をケース13に接触あるいは接続してある。
なお、本例のリアクトル1は、磁性体15の一端のみをケース13に接触又は接続することによって構成することもできる。
その他は、実施例5と同様である。
【0061】
次に、本例の作用効果につき説明する。
冷却部材は、コイル11の内側に充填されたコア12の内側に埋設された磁性体15からなり、該磁性体15は、図11に示すごとく、ケース13と接触又は接続している。これにより、リアクトル1の小型化を図ることができるとともに、その放熱効率を向上させることができる。すなわち、ただ単にコイル11の外径を小さくしてコイル11に囲まれる面積を小さくした場合、リアクトル1のインダクタンス値は低下する。
【0062】
しかしながら、上記のごとくコア12の内側に磁性体15を埋設すれば、磁性粉末混合樹脂からなるコア12と磁性体15とによる全体の透磁率を増加させることができる。それゆえ、外径を小さくしてコイル11を磁性体15に近付けることにより、コイル11の巻き数を増やさなくても充分なインダクタンス性能を確保するとともに、リアクトル1の小型化をも図ることができる。
【0063】
さらに、磁性体15はケース13と接触又は接続しているため、リアクトル1の放熱効率を向上させることができる。すなわち、コイル11の内側においては磁束が集中して形成されるため、当該部分は高温となり、磁性体15も高温となる。ここで、磁性体15はケース13と接触又は接続しているため、比較的放熱されにくいコイル11の内側の熱を磁性体15からケース13へと充分に伝えることができる。それゆえ、リアクトル1の放熱効率を向上させることができる。
【0064】
また、磁性体15は、コア12よりも透磁率が高いため、磁性粉末混合樹脂からなるコア12と磁性体15とによる全体の透磁率を充分に増加させることができる。それゆえ、リアクトル1のインダクタンス性能を確保しつつリアクトル1の小型化を充分に図ることができる。
その他、実施例5と同様の作用効果を有する。
【0065】
(実施例8)
本例は、図12に示すごとく、磁性体15が二つの部材からなるリアクトル1の例である。
すなわち、磁性体15は、図12(a)、(b)に示すごとく、ケース13の本体部131に接続された第一磁性体151とケース13の蓋部132に接続された第二磁性体152とからなる。
【0066】
そして、磁性体15は、図12(b)に示すごとく、第一磁性体151の先端部と第二磁性体152の先端部とが離隔配置されることによって第一磁性体151と第二磁性体152との間に形成されるギャップ16を有する。
本例のリアクトル1の製造方法の一例を以下に示す。
例えば、図12(a)に示すごとく、第一磁性体151をケース13の本体部131に溶接等により接続しておくとともに、第二磁性体152を蓋部132に溶接等により接続しておく。次いで、コイル11をケース13の本体部131の内部の所定の位置に配設した後、ケース13内に、磁性粉末混合樹脂液120を注入する。
【0067】
所定量の磁性粉末混合樹脂液120を注入した後、第二磁性体152が接続されたケース13の蓋部132を本体部131の開口部133に固定する。このとき、第二磁性体152を磁性粉末混合樹脂液120に沈み込ませて第一磁性体151の先端部と第二磁性体152の先端部とが対向するよう配置する。そして、所定加熱温度にて所定時間保持して、磁性粉末混合樹脂液120を固化させることにより、図12(b)に示すような本例のリアクトル1が形成される。
その他は、実施例7と同様である。
【0068】
次に、本例の作用効果につき説明する。
磁性体15は、図12(b)に示すごとく、ケース13の本体部131に接続される第一磁性体151とケース13の蓋部152に接続される第二磁性体152とからなり、第一磁性体151の先端部と第二磁性体152の先端部とが対向配置されてなる。これにより、磁性体15を所定の位置に容易に配置することができ、リアクトル1を容易に形成することができる。
【0069】
また、磁性体15は、図12(b)に示すごとく、第一磁性体151の先端部と第二磁性体152の先端部との間に形成されるギャップ16を有する。これにより、コイル11の内側における磁気飽和を防ぐことができ、大電流が流れても充分なインダクタンス性能を有するリアクトル1を得ることができる。
【0070】
上記のごとくコイル11の内側に透磁率の高い磁性体15を埋設する場合には、以下のような問題が生じることがある。すなわち、回路に大電流が流れたとき、磁性体15において磁束が極端に集中して磁気飽和が生じ、リアクトル1のインダクタンス値が低下するという問題が生じる。
【0071】
これに対して、上記のごとくギャップ16を設けることにより、コイル11の内側において磁束が集中している部分から磁束が比較的集中していない部分へと、ギャップ16を介して磁束を分散させることができる。そのため、コイル11の内側部分において磁束が集中して形成されることを防ぐことができる。そして、これにより、コイル11の内側部分における磁気飽和を防ぐことができ、コイル11に大電流が流れても充分なインダクタンス性能を有するリアクトル1を得ることができる。
その他、実施例7と同様の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1における、リアクトルの断面説明図。
【図2】実施例1における、電力変換装置の斜視説明図。
【図3】実施例1における、リアクトルの製造方法の説明図。
【図4】実施例2における、リアクトルの断面説明図。
【図5】実施例3における、リアクトルの断面説明図。
【図6】実施例4における、リアクトルの断面説明図。
【図7】実施例4における、コイルと冷却管との位置関係についての断面説明図。
【図8】実施例5における、リアクトルの断面説明図。
【図9】図8のA−A線矢視断面図。
【図10】実施例6における、リアクトルの断面説明図。
【図11】実施例7における、リアクトルの断面説明図。
【図12】実施例8における、(a)リアクトルの製造方法を示す説明図、(b)リアクトルの断面説明図。
【符号の説明】
【0073】
1 リアクトル
11 コイル
12 コア
13 ケース
14 冷却管
140 突起部
2 電力変換装置
3 冷却器
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルの発熱を放熱する放熱部材を設けたリアクトル及びこれを内蔵した電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、例えば、磁性体からなるコアとこれに巻回したコイルとからなる。そして、コイルに通電することによりコアに沿った磁束を形成する。
コイルに通電してリアクトルを作動させると、これに伴いコイルからジュール熱が発生する。この発熱により、リアクトルの温度が上昇しすぎると、リアクトルの作動の安定性が損なわれるおそれがある。また、リアクトルの周囲の電子部品の温度上昇を招き、周囲の電子部品の作動安定性を損ねるおそれがある。
その結果、かかるリアクトルを内蔵する電力変換装置等の作動安定性を損ねるおそれがある。
【0003】
そこで、リアクトルの温度上昇を抑制するために、放熱構造を設けたリアクトルが提案されている(特許文献1参照)。
この放熱構造を設けたリアクトルは、板状のヒートシンクに対して、リアクトルを配置して、リアクトルの外表面からの放熱を促進させている。
【0004】
しかしながら、リアクトルの形状によっては、ヒートシンクとの接触面積を充分に確保することが困難となり、放熱効率の向上が困難となるおそれがある。
特に、コイルの発熱する熱は、コイルの内側に溜り易く、上記のごとく、リアクトルの外表面からの放熱だけでは、充分にリアクトルの温度上昇の抑制効果を得ることが困難となるおそれがある。そして、従来のように、例えば鉄心コアを用いる場合等には、コイルの内側に冷却部材を配設することは困難である。
【0005】
【特許文献1】特開2002−50527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題に鑑みてなされたもので、放熱性に優れたリアクトル及びこれを内蔵した電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、通電により磁束を発生するコイルと、
該コイルの内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコアと、
上記コイル及び上記コアを内側に収容するケースと、
上記コアに接触配置された冷却部材とを有することを特徴とするリアクトルにある(請求項1)。
【0008】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記リアクトルにおいては、上記冷却部材が、磁性粉末混合樹脂からなる上記コアに接触配置されている。そのため、冷却部材とリアクトルとの接触面積を大きく確保することができ、効率的に放熱を行うことができる。即ち、上記コアが磁性粉末混合樹脂からなるため、例えば、その形状を冷却部材の表面に追従するように密着させることができる。これにより、冷却部材とリアクトルとの接触面積を大きくすることができる。
そして、コイルへの通電によって発生する熱がコアに伝わり、コアの熱を、コアに密着した冷却部材から放熱することができ、リアクトルの放熱を効率的に行うことができる。
その結果、リアクトルの動作安定性を確保することができる。
【0009】
以上のごとく、本発明によれば、放熱性に優れたリアクトルを提供することができる。
【0010】
第2の発明は、半導体素子を内蔵する半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却器と、上記半導体モジュールに電気的に接続されたリアクトルとを有する電力変換装置であって、
上記リアクトルは、通電により磁束を発生するコイルと、該コイルの内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコアと、上記コイル及び上記コアを内側に収容するケースとを有し、
上記冷却器の一部が上記リアクトルの上記コアに接触配置されていることを特徴とする電力変換装置にある(請求項7)。
【0011】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記リアクトルにおいては、上記冷却器の一部が磁性粉末混合樹脂からなる上記コアに接触配置されているため、冷却器とリアクトルとの接触面積を大きく確保することができ、効率的に放熱を行うことができる。そのため、リアクトルの放熱を効率的に行うことができる。
その結果、リアクトル及びその周囲の電子部品の動作安定性を確保し、電力変換装置の動作安定性を確保することができる。
【0012】
以上のごとく、本発明によれば、リアクトルの放熱性に優れた電力変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記第1の発明(請求項1)、及び上記第2の発明(請求項7)において、上記磁性粉末混合樹脂は、磁性粉末を樹脂に混入させてなる材料である。そして、上記磁性粉末としては、例えば、フェライト粉末、鉄粉、珪素合金鉄粉等がある。また、上記樹脂としては、例えばエポキシ樹脂等の熱可硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0014】
また、上記第1の発明(請求項1)において、上記冷却部材は、上記コアに埋設されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、冷却部材とリアクトルとの接触面積を、より大きく確保することができると共に、コアの内部からリアクトルの放熱を行うことができる。即ち、コイルへの通電によって発生する熱がコアに伝わり、コアの熱を、その内部に埋設された冷却部材の全周から放熱することができる。そのため、リアクトルの放熱を効率的に行うことができる。
【0015】
また、上記コアは上記磁性粉末混合樹脂からなるため、コアの内部に冷却部材を埋設することが容易となる。即ち、例えば、コイルと共にケース内の所定の位置に冷却部材を配置した状態で、上記磁性粉末混合樹脂を充填した後固化させることにより、コアの内部に容易に冷却部材を埋設することができる。
【0016】
上記冷却部材は、上記コイルの内側に配設されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記リアクトルの放熱効率を一層向上させることができる。
即ち、コイルにより発熱される熱は、リアクトルの構造上、コイルの内側に溜り易い。そこで、熱の溜まりやすいコイルの内側に上記冷却部材を配置することにより、効率的にリアクトルの放熱を行うことができる。
また、コイルの内側に配設されるコアが上記のごとく磁性粉末混合樹脂からなるため、コイルの内側に、冷却部材を容易に埋設することができる。
【0017】
また、上記コイルの巻き線方向に直交する直線上において、上記冷却部材と上記コイルとの間の距離は、上記コイルと上記ケースとの間の距離以上であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記コイルの内側に配設した冷却部材が、コイルの内側と外周とにわたって生じる磁束の形成を阻害するおそれがない。即ち、コイルへの通電によって生じる磁束の経路は、コイルの内側と外側とに略均等な状態でループ状に形成される。ところが、磁束が形成されるべき経路に冷却部材が存在すると、上記コアをその部分に存在させることができなくなる。特に、冷却部材を非磁性体によって構成した場合、磁束の形成を阻害することとなる。そこで、コイルの内側におけるコアの厚みを、外周の厚み以上に確保することにより、冷却部材が磁束の形成を阻害することを防ぐことができる。
それ故、リアクトルの性能を低下させることなく、冷却効率を向上させることができる。
【0018】
また、上記冷却部材は、内側に冷却媒体を流通させる冷却管からなることが好ましい(請求項5)。
この場合には、一層冷却効率に優れたリアクトルを得ることができる。
【0019】
また、上記冷却部材は、上記ケースと一体化された突起部からなるものであってもよい(請求項6)。
この場合には、コイルの内側に溜まった熱を、突起部を介してケースに逃がすことができる。
【0020】
次に、上記第2の発明(請求項7)において、上記電力変換装置としては、例えば、DC−DCコンバータやインバータ等がある。また、上記電力変換装置は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の動力源である交流モータに通電する駆動電流の生成に用いることができる。
また、上記半導体モジュールは、例えばIGBT素子等の半導体素子を内蔵してなり、電力変換回路の一部を構成する。
【0021】
また、上記冷却器の一部は、上記コアに埋設されていることが好ましい(請求項8)。
この場合には、冷却部材とリアクトルとの接触面積を、より大きく確保することができると共に、コアの内部からリアクトルの放熱を行うことができ、リアクトルの放熱を効率的に行うことができる。
【0022】
また、上記冷却器は、上記半導体モジュールの両面に接触配置される複数の冷却チューブと、該複数の冷却チューブを互いに連結する連結管と、冷却媒体を導入する導入管と、冷却媒体を排出する排出管とを有し、上記導入管及び上記排出管の一部が、上記リアクトルの上記コアに接触配置されていることが好ましい(請求項9)。
この場合には、リアクトルを効率的に冷却することができると共に、電力変換装置のコンパクト化を図ることが容易となる。
【0023】
また、上記冷却器の一部は、上記コイルの内側に配設されていることが好ましい(請求項10)。
この場合には、リアクトルの冷却効率に一層優れた電力変換装置を得ることができる。
【0024】
また、上記コイルの巻き線方向に直交する直線上において、上記冷却器の一部と上記コイルとの間の距離は、上記コイルと上記ケースとの間の距離以上であることが好ましい(請求項11)。
この場合には、上記コイルの内側に配設した冷却部材が、コイルの内側と外周とにわたって生じる磁束の形成を阻害するおそれがない。
【0025】
また、上記冷却部材は、上記コイルの内側に充填された上記コアの内側に埋設された磁性体からなり、該磁性体は、上記ケースと接触又は接続していることが好ましい(請求項12)。
この場合には、リアクトルの小型化を図ることができるとともに、インダクタンス性能を確保しつつ放熱効率を向上させることができる。すなわち、ただ単にコイルの外径を小さくしてコイルに囲まれる面積を小さくした場合、リアクトルのインダクタンス値は低下する。
【0026】
しかしながら、上記のごとく磁性粉末混合樹脂からなるコアの内側に磁性体を埋設すれば、磁性粉末混合樹脂からなるコアと磁性体とによる全体の透磁率を増加させることができる。それゆえ、外径を小さくしてコイルを磁性体に近付けることにより、該コイルの巻き数を増やさなくても充分なインダクタンス性能を得ることができる。また、これにより、リアクトルの小型化をも図ることができる。
【0027】
さらに、上記磁性体はケースと接触又は接続しているため、リアクトルの放熱効率を向上させることができる。すなわち、コイルの内側においては磁束が集中して形成されるため、当該部分は高温となり、磁性体も高温となる。ここで、上記磁性体はケースと接触又は接続しているため、比較的放熱されにくいコイルの内側の熱を、磁性体からケースへと伝えることができる。それゆえ、リアクトルの放熱効率を向上させることができる。
なお、上記磁性体として、例えば、鉄、ケイ素鋼、パーマロイ、パーメンジュール、フェライト、アモルファス磁性合金、センダスト等を用いることができる。
【0028】
また、上記磁性体は、上記磁性粉末混合樹脂からなるコアよりも透磁率が高いことが好ましい(請求項13)。
この場合には、上記磁性体を配設することにより、磁性粉末混合樹脂からなるコアと磁性体とによる全体の透磁率を増加させることができる。それゆえ、リアクトルのインダクタンス性能を確保しつつリアクトルの小型化を充分に図ることができる。
【0029】
また、上記ケースは、上記コイル及び上記コアを内側に収容する収容凹部を有する本体部と、該本体部の開口部を閉塞するための蓋部とからなり、上記磁性体は、上記ケースの本体部に接触又は接続される第一磁性体と上記ケースの蓋部に接触又は接続される第二磁性体とからなり、上記第一磁性体の先端部と上記第二磁性体の先端部とが対向配置されてなることが好ましい(請求項14)。
この場合には、上記磁性体を所定の位置に容易に配置することができるため、上記リアクトルを容易に形成することができる。また、第一磁性体からケースの本体部を介して形成される放熱経路、及び第二磁性体からケースの蓋部を介して形成される放熱経路を確保して、リアクトルの放熱効率を向上させることができる。
【0030】
また、上記磁性体は、上記第一磁性体の先端部と上記第二磁性体の先端部とが離隔配置されることによって上記第一磁性体と上記第二磁性体との間に形成されるギャップを有することが好ましい(請求項15)。
この場合には、コイルの内側における磁気飽和を防ぐことができ、大電流が流れても充分なインダクタンス性能を有するリアクトルを得ることができる。
【0031】
上記のごとくコイルの内側に透磁率の高い上記磁性体を埋設する場合には、以下のような問題が生じることがある。すなわち、回路に大電流が流れたとき、磁性体において磁束が極端に集中して磁気飽和が生じ、リアクトルのインダクタンス値が低下するという問題が生じる。
【0032】
これに対して、上記のごとくギャップを設けることにより、コイルの内側において磁束が集中している部分から磁束が比較的集中していない部分へと、ギャップを介して磁束を分散させることができる。そのため、コイルの内側において磁束が集中して形成されることを防ぐことができる。そして、これにより、コイルの内側における磁気飽和を防ぐことができ、コイルに大電流が流れても、充分なインダクタンス性能を有するリアクトルを得ることができる。
【0033】
なお、上記ギャップは、磁性粉末混合樹脂からなるコアによって充填されていてもよく、非磁性体など別部材によって充填されていてもよい。また、上記ギャップは、中空状となっていてもよい。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
本発明の実施例に係るリアクトル及びこれを用いた電力変換装置につき、図1〜図3を用いて説明する。
本例のリアクトル1は、図1に示すごとく、通電により磁束を発生するコイル11と、コイル11の内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコア12と、コイル11及びコア12を内側に収容するケース13と、コア12に接触配置された冷却部材としての冷却管14とを有する。
冷却管14は、コア12に埋設されていると共に、内側に冷却媒体141を流通させるよう構成されている。
【0035】
コア12を構成する磁性粉末混合樹脂は、磁性粉末を樹脂に混入させてなる材料である。そして、磁性粉末としては、例えば、フェライト粉末、鉄粉、珪素合金鉄粉等がある。また、樹脂としては、例えばエポキシ樹脂等の熱可硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0036】
また、ケース13及び冷却管14は、例えばアルミニウムからなる。また、冷却媒体としては、例えば、エチレングリコール系の不凍液が混入した水、水やアンモニア等の自然冷媒、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノール、アルコール等のアルコール系冷媒、アセトン等のケトン系冷媒などを用いることができる。
【0037】
また、上記リアクトル1を内蔵した本例の電力変換装置2につき説明する。
電力変換装置2は、図2に示すごとく、半導体素子を内蔵する半導体モジュール21と、半導体モジュール21を冷却する冷却器3と、半導体モジュール21に電気的に接続されたリアクトル1とを有する。
【0038】
冷却器3は、半導体モジュール21の両面に接触配置される複数の冷却チューブ31と、該複数の冷却チューブ31を互いに連結する連結管32と、冷却媒体141を導入する導入管33と、冷却媒体141を排出する排出管34とを有する。そして、導入管33及び排出管34の一部が、リアクトル1のコア12に埋設されている。即ち、導入管33及び排出管34の一部が、図1における上記冷却管14となる。
【0039】
電力変換装置2は、複数の半導体モジュール21と複数の冷却チューブ31とを交互に積層配置してなる。そして、冷却器3には、導入管33から冷却媒体141が導入され、各冷却チューブ31に分配されながら流通する。この間に、各冷却チューブ31に接触配置された半導体モジュール21と冷却媒体141とが熱交換を行い、半導体モジュール21が冷却される。
【0040】
また、冷却チューブ31を通過して半導体モジュール21から受熱した冷却媒体141は、排出管34を通って排出される。
このように、冷却媒体141は、導入管33から導入され、排出管34から排出される。そして、冷却媒体141が導入管33及び排出管34を流通する間に、リアクトル1と冷却媒体141とが熱交換を行い、リアクトル1の冷却を行う。
【0041】
次に、本例のリアクトル1の製造方法につき、図3を用いて説明する。
まず、ケース13内における所定の位置に、コイル11をセットする。次いで、ケース13内に、磁性粉末混合樹脂液120を注入し、所定加熱温度に所定時間保持して、磁性粉末混合樹脂液120を固化させて、コア12を形成する。
なお、コイル11の巻線端部である引出リード部111は、コア12の外側に突出するようにする。
【0042】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記リアクトル1においては、上記冷却管14が上記コア12に埋設されている。そのため、冷却管14とリアクトル1との接触面積を大きく確保することができると共に、コア12の内部からリアクトル1の放熱を行うことができる。即ち、コイル11への通電によって発生する熱がコア12に伝わり、コア12の熱を、その内部に埋設された冷却管14の全周から放熱することができる。そのため、リアクトル1の放熱を効率的に行うことができる。
その結果、リアクトル1の動作安定性を確保することができる。
【0043】
また、コア12は磁性粉末混合樹脂からなるため、コア12の内部に冷却管14を埋設することが容易となる。即ち、例えば、コイル11と共にケース13内の所定の位置に冷却管14を配置した状態で、磁性粉末混合樹脂を充填した後固化させることにより、コア12の内部に容易に冷却管14を埋設することができる。
【0044】
また、本例の電力変換装置2は、半導体モジュール21を冷却する冷却器3の一部を、リアクトル1の冷却にも用いることができるため、装置の小型化が容易となる。
更に、冷却器3の導入管33及び排出管34の一部をリアクトル1のコア12内に埋設するため、リアクトル1を効率的に冷却することができると共に、電力変換装置2の一層のコンパクト化が容易となる。
【0045】
以上のごとく、本例によれば、放熱性に優れたリアクトル及びこれを用いた電力変換装置を提供することができる。
【0046】
(実施例2)
本例は、図4に示すごとく、冷却管14をコイル11の上下位置におけるコア12内に埋設した例である。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合にも、上記実施例1と同様の作用効果を有する。
【0047】
(実施例3)
本例は、図5に示すごとく、冷却管14を扁平状に形成して、コイル11の外側におけるコア12内に埋設した例である。
その他は、実施例1と同様である。
本例の場合には、コイル11から発生する熱を、より均一に放熱しやすくなり、効率的な冷却を行うことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0048】
(実施例4)
本例は、図6に示すごとく、冷却管14をコイル11の内側におけるコア12内に埋設した例である。
即ち、冷却器3(図2参照)の導入管33及び排出管34の一部である2本の冷却管14が、リアクトル1のコイル11の内側を貫通している。
【0049】
また、コイル11と冷却管14との位置関係については、図6、図7に示すごとく、種々の位置関係をとることができるが、好ましくは以下の関係を満たすよう配置する。即ち、コイル11の巻き線方向に直交する直線上において、冷却管14とコイル11との間の距離B、Dは、コイル11とケース13との間の距離A、C以上とする。つまり、B≧A、D≧Cであることが好ましい。
その他は、実施例1と同様である。
【0050】
本例の場合には、リアクトル1の放熱効率を一層向上させることができる。
即ち、コイル11により発熱される熱は、リアクトル1の構造上、コイル11の内側に溜り易い。そこで、熱の溜まりやすいコイル11の内側に冷却管14を配置することにより、効率的にリアクトル1の放熱を行うことができる。
【0051】
また、コイル11の内側に配設されるコア12が上記のごとく磁性粉末混合樹脂からなるため、コイル11の内側に、冷却管12を容易に埋設することができる。即ち、従来のように鉄心等からなるコアの周囲にコイルを巻回してなるリアクトルの場合、コイルの内側に冷却管を通すことは困難であるが、本発明によれば、コイル11の内側への冷却管12の配設が容易となる。
【0052】
また、コイル11の巻き線方向に直交する直線上において、冷却管14とコイル11との間の距離B、Dは、コイル11とケース13との間の距離A、D以上である。それ故、コイル11の内側に配設した冷却管14が、コイル11の内側と外周とにわたって生じる磁束の形成を阻害するおそれがない。即ち、コイル11への通電によって生じる磁束の経路は、コイル11の内側と外側とに略均等な状態でループ状に形成される。ところが、磁束が形成されるべき経路に冷却管14が存在すると、上記コア12をその部分に存在させることができなくなる。特に、冷却管14が非磁性体によって構成してなるため、磁束の形成を阻害することとなる。
【0053】
そこで、コイル11の内側におけるコア12の厚みB、Dを、外周の厚みA、C以上に確保することにより、冷却管14が磁束の形成を阻害することを防ぐことができる。
それ故、リアクトル1の性能を低下させることなく、冷却効率を向上させることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0054】
(実施例5)
本例は、図8、図9に示すごとく、リアクトル1を冷却する冷却部材を、ケース13と一体化された突起部140によって構成した例である。
即ち、リアクトル1のコア12に埋設して、リアクトル1の放熱を行うための冷却部材として、上記突起部140を設けた。突起部140は、アルミニウムからなるケース13と一体化されており、突起部140自体もアルミニウムからなる。
【0055】
また、突起部140は、図9に示すごとく、ケース13の底面から突出形成されており、コイル11の内側に配置されている。なお、突起部140は、ケース13の底面に限らず、上面あるいは側面から突出形成されていてもよい。
その他は、実施例1と同様である。
【0056】
本例の場合には、コイル11の内側に溜まった熱を、突起部140を介してケース13に逃がすことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
なお、本例では、突起部140をコイル11の内側に配置した例を示したが、突起部140をコイル11の外側においてコア12に食込ませる構成とすることもできる。
【0057】
(実施例6)
本例は、図10に示すごとく、冷却管14を、コイル11の外側におけるコア12に接触配置した例である。
そして、コア12は、冷却管14の表面の一部に追従するように密着している。
その他は、実施例1と同様である。
【0058】
本例のリアクトル1においても、冷却管14が、磁性粉末混合樹脂からなるコア12に接触配置されているため、冷却管14とリアクトル1との接触面積を大きく確保することができ、効率的に放熱を行うことができる。即ち、コア12が磁性粉末混合樹脂からなるため、その形状を冷却管14の表面に追従するように密着させることができる。これにより、冷却管14とリアクトル1との接触面積を大きくすることができる。
そして、コイル11への通電によって発生する熱がコア12に伝わり、コア12の熱を、コア12に密着した冷却管14から放熱することができ、リアクトル1の放熱を効率的に行うことができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0059】
(実施例7)
本例は、図11に示すごとく、リアクトル1を冷却する冷却部材を、ケース13と接触又は接続している磁性体15によって構成した例である。
すなわち、リアクトル1のコア12に埋設してリアクトル1の放熱を行うための冷却部材として、上記磁性体15を設けた。
【0060】
磁性体15は、例えばアルミニウムからなるケース13の本体部131及び蓋部132と、接触又は例えば溶接等により接続してある。磁性体15は、例えば、鉄からなり、コア11よりも透磁率が高い。
また、磁性体15は、図11に示すごとく、コイル11の内側に埋設されている。そして、磁性体15は、コア12の中心穴123に挿嵌され、その両端をケース13に接触あるいは接続してある。
なお、本例のリアクトル1は、磁性体15の一端のみをケース13に接触又は接続することによって構成することもできる。
その他は、実施例5と同様である。
【0061】
次に、本例の作用効果につき説明する。
冷却部材は、コイル11の内側に充填されたコア12の内側に埋設された磁性体15からなり、該磁性体15は、図11に示すごとく、ケース13と接触又は接続している。これにより、リアクトル1の小型化を図ることができるとともに、その放熱効率を向上させることができる。すなわち、ただ単にコイル11の外径を小さくしてコイル11に囲まれる面積を小さくした場合、リアクトル1のインダクタンス値は低下する。
【0062】
しかしながら、上記のごとくコア12の内側に磁性体15を埋設すれば、磁性粉末混合樹脂からなるコア12と磁性体15とによる全体の透磁率を増加させることができる。それゆえ、外径を小さくしてコイル11を磁性体15に近付けることにより、コイル11の巻き数を増やさなくても充分なインダクタンス性能を確保するとともに、リアクトル1の小型化をも図ることができる。
【0063】
さらに、磁性体15はケース13と接触又は接続しているため、リアクトル1の放熱効率を向上させることができる。すなわち、コイル11の内側においては磁束が集中して形成されるため、当該部分は高温となり、磁性体15も高温となる。ここで、磁性体15はケース13と接触又は接続しているため、比較的放熱されにくいコイル11の内側の熱を磁性体15からケース13へと充分に伝えることができる。それゆえ、リアクトル1の放熱効率を向上させることができる。
【0064】
また、磁性体15は、コア12よりも透磁率が高いため、磁性粉末混合樹脂からなるコア12と磁性体15とによる全体の透磁率を充分に増加させることができる。それゆえ、リアクトル1のインダクタンス性能を確保しつつリアクトル1の小型化を充分に図ることができる。
その他、実施例5と同様の作用効果を有する。
【0065】
(実施例8)
本例は、図12に示すごとく、磁性体15が二つの部材からなるリアクトル1の例である。
すなわち、磁性体15は、図12(a)、(b)に示すごとく、ケース13の本体部131に接続された第一磁性体151とケース13の蓋部132に接続された第二磁性体152とからなる。
【0066】
そして、磁性体15は、図12(b)に示すごとく、第一磁性体151の先端部と第二磁性体152の先端部とが離隔配置されることによって第一磁性体151と第二磁性体152との間に形成されるギャップ16を有する。
本例のリアクトル1の製造方法の一例を以下に示す。
例えば、図12(a)に示すごとく、第一磁性体151をケース13の本体部131に溶接等により接続しておくとともに、第二磁性体152を蓋部132に溶接等により接続しておく。次いで、コイル11をケース13の本体部131の内部の所定の位置に配設した後、ケース13内に、磁性粉末混合樹脂液120を注入する。
【0067】
所定量の磁性粉末混合樹脂液120を注入した後、第二磁性体152が接続されたケース13の蓋部132を本体部131の開口部133に固定する。このとき、第二磁性体152を磁性粉末混合樹脂液120に沈み込ませて第一磁性体151の先端部と第二磁性体152の先端部とが対向するよう配置する。そして、所定加熱温度にて所定時間保持して、磁性粉末混合樹脂液120を固化させることにより、図12(b)に示すような本例のリアクトル1が形成される。
その他は、実施例7と同様である。
【0068】
次に、本例の作用効果につき説明する。
磁性体15は、図12(b)に示すごとく、ケース13の本体部131に接続される第一磁性体151とケース13の蓋部152に接続される第二磁性体152とからなり、第一磁性体151の先端部と第二磁性体152の先端部とが対向配置されてなる。これにより、磁性体15を所定の位置に容易に配置することができ、リアクトル1を容易に形成することができる。
【0069】
また、磁性体15は、図12(b)に示すごとく、第一磁性体151の先端部と第二磁性体152の先端部との間に形成されるギャップ16を有する。これにより、コイル11の内側における磁気飽和を防ぐことができ、大電流が流れても充分なインダクタンス性能を有するリアクトル1を得ることができる。
【0070】
上記のごとくコイル11の内側に透磁率の高い磁性体15を埋設する場合には、以下のような問題が生じることがある。すなわち、回路に大電流が流れたとき、磁性体15において磁束が極端に集中して磁気飽和が生じ、リアクトル1のインダクタンス値が低下するという問題が生じる。
【0071】
これに対して、上記のごとくギャップ16を設けることにより、コイル11の内側において磁束が集中している部分から磁束が比較的集中していない部分へと、ギャップ16を介して磁束を分散させることができる。そのため、コイル11の内側部分において磁束が集中して形成されることを防ぐことができる。そして、これにより、コイル11の内側部分における磁気飽和を防ぐことができ、コイル11に大電流が流れても充分なインダクタンス性能を有するリアクトル1を得ることができる。
その他、実施例7と同様の作用効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】実施例1における、リアクトルの断面説明図。
【図2】実施例1における、電力変換装置の斜視説明図。
【図3】実施例1における、リアクトルの製造方法の説明図。
【図4】実施例2における、リアクトルの断面説明図。
【図5】実施例3における、リアクトルの断面説明図。
【図6】実施例4における、リアクトルの断面説明図。
【図7】実施例4における、コイルと冷却管との位置関係についての断面説明図。
【図8】実施例5における、リアクトルの断面説明図。
【図9】図8のA−A線矢視断面図。
【図10】実施例6における、リアクトルの断面説明図。
【図11】実施例7における、リアクトルの断面説明図。
【図12】実施例8における、(a)リアクトルの製造方法を示す説明図、(b)リアクトルの断面説明図。
【符号の説明】
【0073】
1 リアクトル
11 コイル
12 コア
13 ケース
14 冷却管
140 突起部
2 電力変換装置
3 冷却器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により磁束を発生するコイルと、
該コイルの内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコアと、
上記コイル及び上記コアを内側に収容するケースと、
上記コアに接触配置された冷却部材とを有することを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
請求項1において、上記冷却部材は、上記コアに埋設されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記冷却部材は、上記コイルの内側に配設されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項4】
請求項3において、上記コイルの巻き線方向に直交する直線上において、上記冷却部材と上記コイルとの間の距離は、上記コイルと上記ケースとの間の距離以上であることを特徴とするリアクトル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記冷却部材は、内側に冷却媒体を流通させる冷却管からなることを特徴とするリアクトル。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記冷却部材は、上記ケースと一体化された突起部からなることを特徴とするリアクトル。
【請求項7】
半導体素子を内蔵する半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却器と、上記半導体モジュールに電気的に接続されたリアクトルとを有する電力変換装置であって、
上記リアクトルは、通電により磁束を発生するコイルと、該コイルの内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコアと、上記コイル及び上記コアを内側に収容するケースとを有し、
上記冷却器の一部が上記リアクトルの上記コアに接触配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項7において、上記冷却器の一部は、上記コアに埋設されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項9】
請求項7又は8において、上記冷却器は、上記半導体モジュールの両面に接触配置される複数の冷却チューブと、該複数の冷却チューブを互いに連結する連結管と、冷却媒体を導入する導入管と、冷却媒体を排出する排出管とを有し、上記導入管及び上記排出管の一部が、上記リアクトルの上記コアに接触配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項において、上記冷却器の一部は、上記コイルの内側に配設されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項10において、上記コイルの巻き線方向に直交する直線上において、上記冷却器の一部と上記コイルとの間の距離は、上記コイルと上記ケースとの間の距離以上であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項1又は2において、上記冷却部材は、上記コイルの内側に充填された上記コアの内側に埋設された磁性体からなり、該磁性体は、上記ケースと接触又は接続していることを特徴とするリアクトル。
【請求項13】
請求項12において、上記磁性体は、上記磁性粉末混合樹脂からなるコアよりも透磁率が高いことを特徴とするリアクトル。
【請求項14】
請求項12又は13において、上記ケースは、上記コイル及び上記コアを内側に収容する収容凹部を有する本体部と、該本体部の開口部を閉塞するための蓋部とからなり、上記磁性体は、上記ケースの本体部に接触又は接続される第一磁性体と上記ケースの蓋部に接触又は接続される第二磁性体とからなり、上記第一磁性体の先端部と上記第二磁性体の先端部とが対向配置されてなることを特徴とするリアクトル。
【請求項15】
請求項14において、上記磁性体は、上記第一磁性体の先端部と上記第二磁性体の先端部とが離隔配置されることによって上記第一磁性体と上記第二磁性体との間に形成されるギャップを有することを特徴とするリアクトル。
【請求項1】
通電により磁束を発生するコイルと、
該コイルの内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコアと、
上記コイル及び上記コアを内側に収容するケースと、
上記コアに接触配置された冷却部材とを有することを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
請求項1において、上記冷却部材は、上記コアに埋設されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記冷却部材は、上記コイルの内側に配設されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項4】
請求項3において、上記コイルの巻き線方向に直交する直線上において、上記冷却部材と上記コイルとの間の距離は、上記コイルと上記ケースとの間の距離以上であることを特徴とするリアクトル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記冷却部材は、内側に冷却媒体を流通させる冷却管からなることを特徴とするリアクトル。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記冷却部材は、上記ケースと一体化された突起部からなることを特徴とするリアクトル。
【請求項7】
半導体素子を内蔵する半導体モジュールと、該半導体モジュールを冷却する冷却器と、上記半導体モジュールに電気的に接続されたリアクトルとを有する電力変換装置であって、
上記リアクトルは、通電により磁束を発生するコイルと、該コイルの内側及び外周に充填された磁性粉末混合樹脂からなるコアと、上記コイル及び上記コアを内側に収容するケースとを有し、
上記冷却器の一部が上記リアクトルの上記コアに接触配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項7において、上記冷却器の一部は、上記コアに埋設されていることを特徴とするリアクトル。
【請求項9】
請求項7又は8において、上記冷却器は、上記半導体モジュールの両面に接触配置される複数の冷却チューブと、該複数の冷却チューブを互いに連結する連結管と、冷却媒体を導入する導入管と、冷却媒体を排出する排出管とを有し、上記導入管及び上記排出管の一部が、上記リアクトルの上記コアに接触配置されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項において、上記冷却器の一部は、上記コイルの内側に配設されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項10において、上記コイルの巻き線方向に直交する直線上において、上記冷却器の一部と上記コイルとの間の距離は、上記コイルと上記ケースとの間の距離以上であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項1又は2において、上記冷却部材は、上記コイルの内側に充填された上記コアの内側に埋設された磁性体からなり、該磁性体は、上記ケースと接触又は接続していることを特徴とするリアクトル。
【請求項13】
請求項12において、上記磁性体は、上記磁性粉末混合樹脂からなるコアよりも透磁率が高いことを特徴とするリアクトル。
【請求項14】
請求項12又は13において、上記ケースは、上記コイル及び上記コアを内側に収容する収容凹部を有する本体部と、該本体部の開口部を閉塞するための蓋部とからなり、上記磁性体は、上記ケースの本体部に接触又は接続される第一磁性体と上記ケースの蓋部に接触又は接続される第二磁性体とからなり、上記第一磁性体の先端部と上記第二磁性体の先端部とが対向配置されてなることを特徴とするリアクトル。
【請求項15】
請求項14において、上記磁性体は、上記第一磁性体の先端部と上記第二磁性体の先端部とが離隔配置されることによって上記第一磁性体と上記第二磁性体との間に形成されるギャップを有することを特徴とするリアクトル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−335833(P2007−335833A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347900(P2006−347900)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]