説明

リアクトル

【課題】インダクタンス値を低減させることなく小型化を図れるようにしたリアクトルを提供する。
【解決手段】磁性体からなる第1コア1および第2コア2を接合してなるコアと、同コアの磁脚に巻装した絶縁皮膜を有するコイル3とを備え、少なくとも前記コイル3が巻装される前記磁脚の上下端部に対応する前記コイル3が絶縁体3aにより絶縁被覆されてなる構成にした。これにより、コイル3とEI型のコアとの絶縁距離は、E型のコア1の磁脚をなす中脚1bの外周部に絶縁部材を設けた構成である場合に較べて大きく確保できるので、安全規格で要求される沿面距離に較べてコイル3とEI型のコアの外面との距離を短くして、リアクトル10の小型化に寄与できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに係わり、より詳細には、巻回されたコイルとコアとの絶縁距離を確保して小型化をはかれるように構成したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、EI型のコアやEE型のコア等を使用するリアクトルでは、例えば、比較的安価であり磁気特性の良好な珪素鋼鈑等の電磁鋼鈑を、E型やI型等の所定の形状に打ち抜いた後、複数枚積層してブロック化し、これらを組み合せて形成されたコアが使用されている。積層した電磁鋼鈑は、接着剤を使用して電磁鋼鈑を接着する方法や、リベット止めやカシメによる方法、または、電磁鋼鈑を溶接する方法等によってブロック化している。
【0003】
上述した構成により、電磁鋼鈑を積層したEI型のコアを使用するものとして、例えば図4(A)および図4(B)に示すリアクトル300のように、磁脚をなす中脚301および外脚302と、これらを連結する連結部303とからなるE型のコア304と、E型のコア304の中脚301および外脚302の先端部に接合されるI型のコア305とを備え、E型のコア304の中脚301は、その外周に絶縁紙306を介して巻装された導電体からなるコイル307を備え、安全規格で要求される沿面距離または空間距離を確保できるように、E型のコア304とコイル307の内面とを所定の空間距離Aだけ離すとともに、コイル307と外脚302との間には絶縁紙308を備えたものが一般的に知られている。
【0004】
リアクトル300の組立において、上述したようにE型のコア304の中脚301にコイル307を巻装する際、中脚301とコイル307との間に設ける絶縁紙306と、この絶縁紙306を設けるための組立工数が必要になるという問題があった。また、図4(A)および図4(B)に示す中脚301の下部両端301dおよび上部両端301eは絶縁紙306で絶縁できないので、下部両端301dとこれに対応するコイル307の内径下部両角307cとの間を絶縁し、また、上部両端301eとこれに対応するコイル307の内径上部両角307dとの間を絶縁するには、図4(B)に示すようにE型のコア304とコイル307とを所定の空間距離Aだけ離間する必要があるため、巻回されたコイル307の外形が大型化することになってリアクトル300を小型化できないという問題があった。
【0005】
リアクトル300の小型化を図るには、上述した空間距離Aを狭くすることでコイル307の外形が大型化しない構成にする必要がある。そのため、例えば図5に示すリアクトル100のように、磁脚をなす中脚101および外脚と、これらを連結する連結部とからなるE型のコア104と、E型のコア104に接合されるI型のコアとを備え、中脚101に絶縁紙105を介して巻装されたコイル106を備えた構成であって、中脚101の外周部分における連結部103側に下部切欠溝108が形成される一方、下部切欠溝108に対向するI型のコア105の対向位置に上部切欠溝109が形成されることで、中脚101にコイル106を巻装したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載のリアクトル100は、下部切欠溝108および上部切欠溝109を形成することで、図4(A)および図4(B)に示すリアクトル300に比べて中脚101の上下部両端とコイル106の内径上下部両角との距離が大きくなる。この距離が大きくなったことで、E型のコア104とコイル106との間は空間距離を狭くしても絶縁できるので、コイル106の外形寸法を小さく抑えることができてリアクトル100の小型化を図れるようにしている。
【0007】
しかしながら、上述したリアクトル100においては、下部切欠溝108および上部切欠溝109が形成されることでコア104の断面積が小さくなり、この部分での磁束密度が高くなって部分的な磁気飽和が発生する。これにより、インダクタンス値が低下し、リアクトル100の性能が劣化する虞があった。
【0008】
また、例えば図6に示すリアクトル200のように、磁脚をなす中脚201および外脚と、これらを連結する連結部とからなるE型のコア204と、E型のコア204に接合されるI型のコアとを備え、中脚201に絶縁紙205を介して巻装されたコイル206を備えた構成であって、コイル206が、階段形状とした内径巻始め側207をE型のコア204への挿入方向となるように巻装されたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2に記載のリアクトル200は、コイル206の内径巻始め側207を階段形状とすることで、図4(A)および図4(B)に示すリアクトル300に比べて中脚201の上下部両端とコイル206の内径上下部両角との距離が大きくなる。この距離が大きくなったことで、E型のコア204とコイル206との間は空間距離を狭くしても絶縁できるので、コイル206の外形寸法を小さく抑えることができてリアクトル200の小型化を図れるようにしている。
【0010】
しかしながら、上述したリアクトル200においては、コイル206の内径巻始め側207を階段形状に形成して巻線全長を短くしたことで、中脚201に巻装されるコイル206のターン数が減少することになって所望するインダクタンス値が得られない虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002―208525号公報
【特許文献2】特開2005―158864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、コイルとコア間を絶縁し所望する性能を実現して小型化を図れるようにしたリアクトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成できるように構成するため、本発明は以下に示す特徴を備えている。
【0014】
磁性体からなる第1コアおよび第2コアを接合してなるコアと、同コアの磁脚に巻装した絶縁皮膜を有するコイルとを備え、
少なくとも前記磁脚の上下端部に対応する前記コイルが絶縁体により絶縁被覆されてなることを特徴としている。
【0015】
また、絶縁体が熱収縮チューブからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コアの磁脚にコイルを巻装した際、磁脚の上下部に対応するコイルが熱収縮チューブからなる絶縁体で絶縁被覆されているため、コイルの内径側の上下部に対応するコアに切欠溝を形成することなく、または、コイルの内径巻始め側を階段形状に形成することなくコイルとコア間を絶縁できるので、リアクトルの性能を劣化させることなく小型化を図ることができる。
【0017】
また、コイルとコア間が、絶縁被覆され巻装されたコイルを磁脚に巻装することで絶縁されるので、コイルとコイルを巻装する磁脚間の絶縁紙を削除できるようになって作業性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるリアクトルの外観斜視図である。
【図2】本発明によるリアクトルの説明図で、(A)は正面図であり、(B)は平面図であり、(C)は側面図である。
【図3】本発明によるリアクトルの分解図である。
【図4】従来例によるリアクトルの第一例を示す説明図で、(A)は正面図であり、(B)は平面図である。
【図5】従来例によるリアクトルの第二例を示す正面図である。
【図6】従来例によるリアクトルの第三例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施例として、空気調和機等の電源回路に用いられるものであって、力率改善用等として使用されるリアクトルを例に挙げて説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
【0020】
本発明によるリアクトル10は、図1と、図2(A)乃至図2(C)と、図3とに示すように、E型のコア1からなる第1コアと、I型のコア2からなる第2コアとで構成されたEI型のコアと、絶縁チューブ3aからなる絶縁体で所定の部位が絶縁被覆されたワイヤー3bを巻回してなるコイル3と、EI型のコアとコイル3間を絶縁した絶縁紙4とを備えている。
【0021】
また、リアクトル10は、図示は省略するが、リアクトル10を電気機器に取り付けるための底板と、リアクトル10を電気機器の制御基板と接続するためのリード線と端子と端子台とをそれぞれ備えている。
【0022】
E型のコア1は珪素鋼鈑等の電磁鋼鈑で形成され、図2(A)乃至図2(C)に示すように、正面から見てE型の形状であって所定の奥行き寸法Dとなるように複数枚積層されており、このE型のコア1は中央部に設けられた中脚1bおよびその両側に設けられた外脚1aからなる3本の磁脚と、この3本の磁脚を連結する連結部1cとをそれぞれ備えている。
【0023】
I型のコア2は珪素鋼鈑等の電磁鋼鈑で形成され、図2(A)乃至図2(C)に示すように、幅寸法LがE型のコア1と同じであって、例えば、高さ寸法HがE型のコア1の外脚1aの幅寸法Wと同じである略長方形形状とした電磁鋼鈑を、E型のコア1と同じ奥行き寸法Dとなるように複数枚積層して略直方体形状としている。E型のコア1の外脚1aの先端部はI型のコア2の対応する面と溶接により接合されて、リアクトル10を構成するEI型のコアが形成される。
【0024】
コイル3は、図3に示すように、銅等の導電線にポリエステル系の絶縁被膜を設けたワイヤー3bである所謂マグネットワイヤーが所定の回数で巻回されることにより、この巻回された内周部がE型のコア1の中脚1bに挿入されるように形成されている。巻回されたコイル3の内周部一層目となるワイヤー3bは、図2(A)および図3に示すように絶縁チューブ3aからなる絶縁体によって絶縁被覆されており、これ以外のコイル3の部位となるワイヤー3bは、E型のコア1およびI型のコア2に対しコ字状に形成された絶縁紙4によって絶縁されている。
【0025】
なお、内周部一層目以外のコイル3とEI型のコアとの間は、上述したコ字状の絶縁紙4によって絶縁される構成に限らず、コイル3とEI型のコアとの間が、巻回されたコイル3の外周部をなすワイヤー3bに被覆した絶縁チューブ3aによって絶縁される構成にしてもよい。
【0026】
巻回されたコイル3の内周部一層目は、E型のコア1の中脚1bに対し絶縁チューブ3aで絶縁されることにより、中脚1bの外周部との間に絶縁紙を設ける必要がなくなって、コイル3はその外周部にのみコ字状の絶縁紙4を備えることでE型のコア1に挿入できるようになる。
【0027】
そのため、コイル3とE型のコア1の中脚1bとの間から絶縁紙を削除できるので、例えば、中脚1bの外周部に絶縁紙を設けてこれにコイル3の内周部を密接させるように挿入するといった面倒な作業が不要になって、コイル3をE型のコア1に挿入する時の作業性が良好になる。
【0028】
また、コイル3は、E型のコア1の中脚1bの外周部に面する部位となるワイヤー3bが絶縁チューブ3aにより絶縁被覆されたことで、コイル3とEI型のコアとの空間距離を狭めても絶縁することが可能になることから、リアクトル10を小型化できる構成になる。
【0029】
具体的には、図4(A)および図4(B)に示す従来のリアクトル300では、中脚301の下部両端301dおよび上部両端301eは絶縁紙306で絶縁できないので、下部両端301dとこれに対応するコイル307の内径下部両角307cとの間を絶縁し、また、上部両端301eとこれに対応するコイル307の内径上部両角307dとの間を絶縁するには、E型のコア304とコイル307との間に所定の空間距離Aが必要になる。これに対し、本実施例におけるリアクトル10では、コイル3の内周部一層目のワイヤー3bが絶縁チューブ3aによって絶縁被覆されているため、中脚1bの下部両端1dとコイル3の内径下部両角3cとの間または上部両端1eとコイル3の内径上部両角3dとの間は、上述した所定の空間距離Aよりも狭い空間距離Bによって絶縁することが可能になる。
【0030】
そのため、巻回されるコイル3の外径の小型化を図ることができ、且つ、コイル3とEI型のコアとを絶縁できるようになり、上述した背景技術のように、EI型のコアに上下の切欠溝を形成し、または、コイルの内径巻始め側を階段形状に形成してリアクトル10の性能を低下させてしまうことなく、リアクトル10を小型化できる。
【0031】
なお、コイル3とE型のコア1の中脚1bとを絶縁する構成として、コイル3と中脚1bとの間に図示しない絶縁紙を設けるとともに、コイル3は、中脚1bの下端部1dおよび上端部1eに対応する部位となるワイヤー3bのみ絶縁チューブ3aによって絶縁被覆してもよい。
【0032】
また、ワイヤー3bを絶縁被覆する絶縁チューブ3aは熱収縮チューブからなる構成になっており、これによって、E型のコア1の中脚1bの外周部に面するコイル3の部位となる内周部一層目のワイヤー3bに熱収縮チューブを被せ熱処理により絶縁被覆した際、絶縁チューブ3aがワイヤー3bに熱収縮によって密着することになる。
【0033】
そのため、例えば、ポリオレフィンやフッ素系ポリマーなどの材質からなり、収縮後の肉厚がt0.18〜t0.2ミリメートル程度となる熱収縮チューブを用いることでワイヤー3bの直径が増大し過ぎないようにして、中脚1bの外周部に面するコイル3の内周部一層目となるワイヤー3bの占積率の増加を最小限に抑えることができる。
【0034】
次に、図1乃至図3に基づいて、上述した構成でなるリアクトル10の組立方法および組立手順について、以下に説明する。
【0035】
まず、コイル3は、E型のコア1の中脚1bに挿入した際にその外周部に面する部位となるワイヤー3bを熱収縮チューブからなる絶縁チューブ3aで予め絶縁被覆したのち、所定の回数で複数層に巻回されることで、図3に示すようにE型のコア1に挿入できる形状に形成する。
【0036】
巻回されたコイル3は、その外周部にコ字状に形成された複数の絶縁紙4を備えて、図3に示す矢印のようにE型のコア1に挿入される。
【0037】
次に、E型のコア1の上端部に、図3に示す矢印のように、I型のコア2の対応する面を合わせ組み付けて溶接により接合する。これにより、図1と、図2(A)乃至図2(C)とに示すようなリアクトル10が形成され、最後に、図示しない端子及び端子台や底板を取付けたのち、ワニスを含浸して完成となる。
【0038】
以上説明したように、本発明の構成によれば、コイル3は、E型のコア1の中脚1bの外周部に面する部位となる内周部一層目のワイヤー3bが絶縁チューブ3aにより絶縁被覆されたことにより、図2(B)に示すコイル3とEI型のコアとの空間距離Bを、図4(A)および図4(B)に示す従来のリアクトル300における空間距離Aよりも狭めることが可能になって、巻回されたコイル3の外形寸法を小さくしてコイル3とEI型のコアとを絶縁できることになり、リアクトル10を小型化できるようになる。
【符号の説明】
【0039】
1 E型のコア(第1コア)
1a 外脚
1b 中脚
1c 接続部
1d 中脚の下部両端
1e 中脚の上部両端
2 I型のコア(第2コア)
3 コイル
3a 絶縁チューブ
3b ワイヤー
3c コイルの内径下部両角
3d コイルの内径上部両角
4 絶縁紙
10 リアクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなる第1コアおよび第2コアを接合してなるコアと、同コアの磁脚に巻装した絶縁皮膜を有するコイルとを備え、
少なくとも前記磁脚の上下端部に対応する前記コイルが絶縁体により絶縁被覆されてなることを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記絶縁体が熱収縮チューブからなることを特徴とする請求項1に記載のリアクトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−69751(P2012−69751A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213452(P2010−213452)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】