説明

リアルタイムに測色する耐候性試験装置

【課題】 原位置でリアルタイムに測色する促進耐候性試験装置を提供する。
【解決手段】 試験槽の中で光源5と試験片3との間に配置された第一入力光学要素10が、試験片3の色を連続的に決定する測色センサー31および光分析制御システム310に、光ファイバー9によって接続されている。得られた色は格納された値と比較され、経時による色の漸進的変化を決定することができる。別の実施形態では、入力光学要素の影による干渉を制限するため、第一入力光学要素10が、試験片3と光源5とを結ぶ線からずれて配置される。また別の実施形態では、試験槽内の回転ラック1における様々な角度位置に配置された様々な試験片3の色を測定するため、いくつかの入力光学要素が並んで配列されて使用され、またさらに別の実施形態では、CIEの基準のもとでの色を計算するための光源5の光をフルスペクトルで計測するために、第二入力光学要素11が使用されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に耐候性試験装置に関し、特に、耐候性試験装置の試験槽に配置された試料について、原位置でリアルタイムに測色する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装面、布、樹脂シートその他の材料の、促進された経時劣化特性を試験するために、屋内での促進耐候性試験装置が知られている。このような試験は、温度および/または湿度を制御した条件下にて、時には高温および/または高湿での条件下にて、例えば太陽光に近似するキセノン光源のような人工の光源からの高密度放射に試験片を曝すことによってなし遂げられる。キセノン光源は、絶対温度6,500度での黒体放射の分布によく似ているクラスDの光源に、たびたび関連付けられる。これらの光源は、色スペクトル分析のために、D65と分類されている。
【0003】
自然の屋外の環境下において、熱、光および湿度は、結合して相乗的に、屋外で自然条件に曝露された製品の光学的、機械的、化学的特性の変化を引き起こす。一般的に、本発明に係る試験装置および従来技術に係る試験装置は、加速された時間に基づく耐候性のデータを得るのに使用され、製品の製造者は、彼らの製品が数カ月または数年の時間という曝露条件に対してどのように反応するかという情報を得ることができる。多くの製品、たとえば塗料や着色プラスチックなどおいて、経年による色の変化は、当初の外観から漸進的に変化していくため、試験片の耐久性を評価するのに用いられる。
【0004】
典型的には、促進耐候性試験装置は、試験片の温度を制御するために、空気をシステムの中で循環させる。典型的にはキセノンランプのような高密度プラズマランプなどの、試験装置に存在する熱源および/または放射源によって、試料が加熱不足や加熱過剰とならないようにするためである。様々な試験の実行ごとの間の正確な比較を確保するために、また試験装置によりもたらされる曝露条件を正確に所定の条件とし、さらに数年にわたって様々な試料を比較するために、条件を再現できるようにするには、試験片が正確に所定の光の条件に曝されることが望ましい。
【0005】
公知の促進耐候性試験装置では、試験片を運搬する回転ラックが光源を取り囲んでいる。ここでこの光源は、多くの場合キセノンランプであり、十分な紫外線成分を有する照射を放つ。これらの光源は、クラスDの光源と考えられ、ここでエネルギー分布はいわゆる黒体放射に密接に一致する。黒体の温度が上がるにつれて、放出される放射線の波長が短くなるような、顕著な変化が生じる。キセノンランプは、放出温度が絶対温度6,500度での黒体放射に似た分布を有する、クラスD65の光源である。クラスD65の光源は、北半球における昼光での太陽光の分布を模擬するのにしばしば用いられる。クラスD55の光源もまた、地球上での他の地域のために重要である。
【0006】
システムにおける試料の位置による違いを避けるため、回転ラックは、典型的には毎分約一回転で回転する。また、試験片に付与される照射の典型的なレベルは、約1SUNである。ここで1SUNとは、様々な基準で推定することができるが、ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズの耐候性試験法によれば、波長340ナノメートルの紫外線が1平方メートルあたり0.55ワットの強さ、と定義されている。キセノンランプのようなエネルギー源はフルスペクトル分布で記述され、また可視範囲内でどれだけのエネルギーが放出されたかによって記述することもできる。可視範囲の光は人間の眼により認識することができ、一般的に380ナノメータから780ナノメータと考えられており、人間の眼にある黄斑色素が吸収する範囲でもある。
【0007】
試験片は、それらの中に含まれている色素のような様々な化学要素の吸収および/または散乱特性によって、色が付いて見える材料から成る。もしも、ある物質が黄色の波長のエネルギーを吸収する場合、その表面は青く見える。塗料の色素は、スペクトルの一部において、より効率的に光を散乱することが知られており、それゆえに材料を着色するのに用いられている。これらの色素は経時により劣化するので、材料の化学的または機械的な劣化を示すものとして材料の色が変化する。
【0008】
色を測定するのに様々な方法および基準が用いられているが、そのひとつにCIE(Commission Internationale de l‘Eclairage、国際照明委員会の略)の基準がある。この基準は1931年に制定され、X,YおよびZの三つの仮想の原色に基づく。それぞれの原色は、可視光のスペクトルの標準化された関数に一致する。この基準のもとでは、これら三つの原色の等エネルギー刺激値は等しい(X=Y=Z)。この基準のもとでは、以下のようにあらわされる。
【0009】
X=1/kΣR(λ)*E(λ)*x(λ)
【0010】
Y=1/kΣR(λ)*E(λ)*y(λ)
【0011】
Z=1/kΣR(λ)*E(λ)*z(λ)
【0012】
ここで、k=ΣE(λ)*y(λ)であり、x(λ),y(λ)およびz(λ)は波長λでの標準観測者関数であり、R(λ)は同じ波長での反射率値である。この基準のもとでは、光源の相対スペクトルエネルギー分布が用いられる。一般的に、XYZの三刺激値は、色度図における色度座標で表現された三次元の色空間にて与えられる。1931年にCIEで制定された基準のもとでは、X,Y,Zについて、2度の視角が用いられ、波長スペクトルを通して31箇所(400nm,410nm,・・・,700nm)の測定からなるスペクトルが用いられていた。1964年にCIEで制定された新しい基準のもとでは、同様のスペクトルについて、10度の視角(X10,Y10,Z10)が用いられている。
【0013】
近年、CIEのXYZ座標は、x=X/(X+Y+Z),y=Y/(X+Y+Z),z=Z/(X+Y+Z)と置き、x+y+z=1の系を用いて変換座標系を形成することにより、二次元座標のプロットに変換されている。この空間は、さまざまな照明値を有する色の結合と関連付けられているという問題があるため、CIE Lb色空間(CIE 1976とも呼ばれる)が考案された。この新しい基準のもとでは、Lが明度を表し(0が黒、100が白)、aが赤の程度−緑の程度を表し、bが黄の程度−青の程度を表す。これらの値を計算するには以下の変換式が用いられる。
【0014】
=116(Y/Y1/3−16
【0015】
=500[(X/X1/3−(Y/Y1/3
【0016】
=200[(Y/Y1/3−(Z/Z1/3
【0017】
ここでXn,Yn,Znはそれぞれ、試料のX,Y,Zを計算するのに用いた光源のもとでのX,Y,Zの値である。CIE1976における他の重要な測定パラメータの一つに、色差ΔE=[(ΔL+(Δa+(Δb1/2で表わされるユークリッド距離がある。ユークリッド距離は、CIE Lbのもとでの三次元空間における、二点間の距離である。
【0018】
例えば光源の部分的または完全なスペクトル分布に基づくユークリッド距離の測定による試験片の色の漸進的変化を測定するために、それぞれの試験片を取り除いて別途卓上試験を行うことなく、試験片の測色が可能な促進耐候性試験装置(光源を元の位置に置いたままで測定が可能な促進耐候性試験装置と併用される場合もある)が求められていた。
【発明の概要】
【0019】
開示される発明は、試験槽内で光源と試験片との間に配置されつつ光ファイバーに接続された入力光学要素を有し、原位置でリアルタイムに測色するシステム(In situ Real−time Color Measurement System,IRCMS)を備える、促進耐候性試験装置である。ここで、この光ファイバーは測色センサーおよび関連する処理および格納システムに接続されており、曝露手段の筐体の中で試験片の色を連続的に測定する。そして、得られた色は格納された値または参照値と比較され、経時による色の漸進的変化を決定する。標準耐候性物質(Standard Weathering Reference Material,SWRM)について標準化された試験を行って目標の色変化がいつ得られるかを決定するため、標準物質(Standard Reference Material,SRM)もまた同様に測定される。別の実施形態では、入力光学要素の影による干渉を制限するため、入力光学要素が試験片と光源とを結ぶ線からずれて配置されており、また別の実施形態では、試験槽内の回転ラックにおける様々な角度位置に配置された様々な試験片の色を測定するため、いくつかの入力光学要素が並んで配列されて使用される。またさらに別の実施形態では、CIEの基準のもとでの色を計算するための、また試験片を自然環境に曝露するための光源の光を、フルスペクトルで計測するために、第二光学要素が使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図面には特定の実施形態が示されているが、本開示の発明は、図面に示された配置および手段に限定されるものではない。
【0021】
【図1】本開示の一実施形態に係る促進耐候性試験装置であって、筐体と、光源と試験片との間に配置された入力光学要素とを備えた促進耐候性試験装置について、アクセス扉を除いて見た透視図である。
【図2】従来技術の一実施形態に従った方法であって、試験片の色の変化を決定する方法を示す図である。
【図3】本開示の一実施形態に係る促進耐候性試験装置であって、図1に示す促進耐候性試験装置を、筐体の正面からアクセス扉を除いて見た拡大図である。
【図4】本開示の一実施形態に係る促進耐候性試験装置であって、第一入力光学要素と第二入力光学要素と光分析制御システムとを備える促進耐候性試験装置の機能図である。
【図5】本開示の一実施形態に係る促進耐候性試験装置であって、第一入力光学要素と光分析制御システムとを備える促進耐候性試験装置の機能図である。
【図6】本開示の一実施形態に従った方法であって、試験片の色の変化を決定する方法を示す図である。
【図7】本開示の一実施形態に係る促進耐候性試験装置であって、第一入力光学要素を備える促進耐候性試験装置を、筐体の正面からアクセス扉を除いて見た拡大図である。
【図8】本開示の他の実施形態に係る促進耐候性試験装置であって、線上に配置された入力光学要素Aと、線からずれて配置された入力光学要素Bとを備える促進耐候性試験装置を、筐体の上面から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ここに記載された特定の詳細な装置に限定されることはなく、また他の変更や応用をも企図するものである。本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、ここに記載した装置に更なる変更を加えることができる。すなわち、上述の記載の主題は、例示として理解されることを意図したものであり、限定する意味のものではない。
【0023】
図1に、本発明の一実施形態に係る促進耐候性試験装置300を示す。一般的に、波線で表わされた空気は、降下して一連の加熱要素または冷却要素を通るよう循環し、筐体2に誘導される。そこで空気は回転ラック1に取り付けられた一連の試験片3に接触する。一旦試験片3が空気の対流により加熱または冷却されると、空気は循環して、流路を規制するよう設けられた一連の開口を通り、筐体2から外に出る。筐体2の内部にアクセスできるよう、アクセス扉(図示省略)が筐体2に取り付けられている。
【0024】
光源5は、一般的にキセノンアークランプまたは他のタイプのランプであり、光化学劣化を促進する光源としてだけでなく、試験片3の表面に向けて放射される熱源としても用いられており、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、カーボンアークランプその他のものが用いられる。光源5は、特定の条件下での特定の光と熱を模擬するような出力およびパワースペクトル分布を用いて、較正される。例えば、北半球での太陽光を模擬するために、D65タイプのキセノンランプを用いることができる。いくつかの実施形態では、空気が対流によって試験片3を加熱するのに対して、光源5は放射によって試験片3を加熱するよう構成されている。地球上におけるほとんどの天候を模擬できるよう、どちらのエネルギー源も独立に較正することができる。
【0025】
促進耐候性試験装置は、光、熱および湿度の条件を正確なアルゴリズムに応じて変化させることにより、ゆっくり起こる自然の曝露(ウェザリング)条件を圧縮して、短期間での劣化過程にするために、しばしば用いられている。曝露条件の模擬の程度は、急速に変化していくパラメータに依存するため、筐体2の中での入力パラメータおよび測定値は、正確に制御されなければならない。付加的な曝露条件をより良く模擬するために、湿度制御および降雨制御のような他の補助的な制御を、筐体2の中に導入することもできる。試験片3の表面温度は、接触式または非接触式のセンサーで計測することができる。光源5の光の強さは、フルスペクトルの監視システム;固定され、較正されて格納された値;光源5の出力;一つの試験片3の代わりに回転ラック1に配置されたセンサーのうち、いずれか使うことによって計測することができる。
【0026】
回転ラック1は筐体2の中で回転するため、回転ラック1に配置されるセンサーもまた、筐体2に対して移動可能となる。回転ラック1からの知覚的検出は、データの記録が可能なセンサー、無線により伝達可能なセンサー、または図1に示すようにロータリージョイント6を介して命令系統に接続された光ファイバーまたは電気的コネクターに接続されたセンサーの、いずれかを使用することによって行われる。他の実施形態においては、センサーは、筐体2の中で入力光学要素10に接続された光ファイバー9により固定され、回転ラック1とともには回転しないよう構成されている。本開示は、筐体2の中における試験片3の測色に関連するため、上述した促進耐候性試験装置に関わる全ての天候制御機構および検出測定手段にこの主題があてはまることを、当業者は認識するだろう。本開示は、ここに記載の技術を、あらゆる促進耐候性試験装置と併せて使用することを企図するものである。
【0027】
当業者に周知の方法であって、促進耐候性試験装置300の筐体2に収められた回転ラック1に装着された試験片3の色の変化を決定する方法が、図2に示されている。一旦試験片3の曝露が開始される(符号210)と、試験装置の操作者は一定の時間待機する(符号211)か、または曝露される試験片の種類での経験に基づいて、もしくは試験室での手順に関連付けられた一定の時間に基づいて、予め決めておいた時間待機する。そして曝露は停止され(符号212)、試験片は、退色試験またはSRM試験を行うために、促進耐候性試験装置から取り除かれる(符号213)。そして測定された色は試験片の当初の色と比較され、色の変化の度合いを決定する(符号214)。もしも所望の色の変化に達していた場合(符号215)、曝露を終了する(符号216)。もしも所望の色の変化に達してない場合は、試験片3は再び筐体2の中に入れられ、もう一巡の曝露過程を行う(符号210)。測色は、アクセス扉を開き、回転ラック1に装着された試験片3にアクセスして、可搬型装置を用いて行われるか、または、回転ラック1から試験片3を取り外して、卓上測色制御装置を用いて測色し、その後試験片3を元の位置に戻すことにより、行われる。これらの測定では、離散的な時間毎の情報しか得ることができず、連続的なデータや、原位置でのリアルタイム計測を行うことができない。したがって、曝露過程を中断することに付随して、補正をする必要があった。
【0028】
図7は、図1に示す促進耐候性試験装置に、図5の機能図に示す一つの入力光学要素をさらに設けた促進耐候性試験装置を、筐体の正面からアクセス扉を除いて見た拡大図である。図3は、図1に示す促進耐候性試験装置に、図4の機能図に示す二つの入力光学要素をさらに設けた促進耐候性試験装置を、筐体の正面からアクセス扉を除いて見た拡大図である。
【0029】
図7に示す一つの実施形態において、促進耐候性試験装置300は、内部に試験槽が形成されてアクセス扉が設けられている筐体2と、筐体2の中で少なくとも一つの試験片3を保持する回転ラック1と、試験槽の中に配置され試験片3を照射する光源5と、試験槽の中に配置され、光源5から試験片3に照射された光のスペクトル反射率を測定する第一入力光学要素10とを備え、第一入力光学要素10は、光ファイバー9により図5に示す測色センサー31および光分析制御システム310に接続され、原位置でリアルタイムに試験片3の色の漸進的変化を決定するよう構成されている。
【0030】
測色は、光源5から試験片3に照射された光の反射率を用いて行われる。ここで、反射率は、筐体2の中で回転ラック1に装着された試験片3の表面により反射される光であると理解される。反射分光光度計は、反射する光に比例する量を反射率として測定し、また第一入力光学要素10に入る光の波長の関数として表現された反射スペクトルとして、測定する。一つの好適な実施形態では図4に図式的に示すような色合わせソフトウェアが用いられ、この実施形態は、測色センサー31と、光学入力を選択する切替装置30に接続されたソフトウェアスイッチ32と、測色アルゴリズム35と、測色アルゴリズム35による測定に基づき、例えばX,Y,Z,x,y,z,L,a,b,ΔL,Δa,Δb,ΔEのような、様々なパラメータを決定するパラメータ決定ソフトウェア36とを含むことができる。一つの実施形態では、測色によるスペクトル出力33は、さらなる処理のために、格納される前に色表示インターフェイスを用いてスクリーン34に表示されるよう構成される。
【0031】
一つの実施形態では、波長スペクトルにおける選択された区域ごとに関連する様々な値を用いてパラメータX,Y,Z,x,y,zが決定および算出されると、L,a,bも決定される。次に、インターフェイスを用いて、ΔL,Δa,Δb,ΔEのような変化量を計算することにより、新しく得られた色と試験片の当初の色および目標の色とが比較される。この実施形態は、得られた情報を表示および処理するために、あらゆる公知のグラフィカルインターフェイスおよびスプレッドシート型のインターフェイスが使用されることを企図するものである。
【0032】
さらにここに開示され企図されるのは、付加的な外部操作手段を使用することにより、反射率の測定が適切に行われることを保証することである。例えば、表面仕上げの異なる試験片は、異なる方向に異なる量だけ光を反射し、これは今度は試験片3が回転ラック1に装着されて回転するとき全体の反射率に大きな変動が生じることにつながる。光沢仕上げされた赤の塗料は、視角が小さい場合には黒く見え得る。空気中の水滴、埃、または霧の存在等の他のパラメータは、反射率の変化につながる。また、曝露により試験片の表面仕上げが変化し、さらに粗くなり、実際には色が変化していなくてもある特定の視角からは色が変化したような印象を与え得る。
【0033】
乾燥周期の使用、試験片3の角度位置と調和した測定、および曝露サイクルにおける特定の正確な瞬間における測色のような、曝露する環境を制御することに加え、原位置でのリアルタイムな測色を向上させるための計算技術および計算アルゴリズムを使用することが企図される。例えば、測定が複数の角度において行われてピーク値において記録されること、複数の測定が行われて平均されること、リアルタイムの測定を補うため移動平均を用いることなどが挙げられる。
【0034】
図3および4に示される別の実施形態においては、光源5のスペクトル分布を測定する第二入力光学要素11が試験槽の中に配置されている。光源5のスペクトル分布の測定については、米国特許第7,038,196号に開示されており、すべての目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。第二入力光学要素11を用いることによって、光源5について原位置でのリアルタイム測定をすることができる。ここで光源5は、反射率の計算のための光源として較正される。色を計算するのに、380nmから700nmまでの可視光のスペクトルにおいて離散的な区域が使用され、これらの区域は、よりよい結果を得るためにそれぞれ互いに相補する関係にある。
【0035】
一つの実施形態では、第一入力光学要素10は、切替装置30を介して測色センサー31に接続されている。光スイッチ、光クロスコネクタ、あるいは二つの入力と一つの出力とスイッチとを備えて一つの出力に向かう二つの入力を選択的に変化させるかまたは循環させるような好適な光学装置など、あらゆる適した切替装置を使用できることが認識されるであろう。一つの実施形態における測色センサー31は、アレイ状に形成された小型の電荷結合素子(charged coupled device,CCD)である。また別の実施形態では、測色センサー31は非走査型分光放射計である。二つの異なるタイプの測色センサー31について記載したが、あらゆる公知の可搬型の測色センサーを使用することができ、例えば電荷結合素子、シリコンアレイ検出器、相補型金属酸化膜半導体素子、能動画素センサー、ベイヤセンサー、foveon X3(登録商標)センサー、ダイオードアレイ検出器、光電子増倍管などを使用することができる。
【0036】
図6には、原位置でリアルタイムに測色する装置によって曝露がどのように行われているかが示されている。光分析制御システム310は、試験片の色の変化の決定に基づき(符号205)、曝露を終了させる(符号206)ことができる。最初のステップでは、標準物質(SRM)の色の変化を制御データとして光分析制御システム310に入れることができる。次に、試験片3の色が上述の装置を用いて測定され(符号201)、試験片の曝露が開始される(符号203)。それに続くステップでは、リアルタイムで、連続的にまたは離散的な時間間隔で、色の変動が測定され(符号204)、そして試験開始当初の測定値(ΔE)と比較される(符号205)。もしも色の変化が所定の値と等しいか所定の値より大きい場合、曝露は終了される(符号206)。もしも測定された色の変化が所望の色の変化より小さい場合には、曝露は再開され(符号207)色の変化が再び測定される(符号204)まで続けられる。
【0037】
図8には、回転ラック1において様々な角度位置に装着されている試験片3についての、異なる採用しうる配置が示されている。符号Aで示されている配置は、第一入力光学要素10および第二入力光学要素11が、光源5と試験片3との間で一列に並ぶような、採用しうる実施形態である。この配置の利点は、試験片3の正面での測色が可能となることだが、不利点は、第一入力光学要素10および第二入力光学要素11により、幾分かの影が作られることである。符号Bで示されている配置では、第一入力光学要素10は、試験片3の法平面から所定の角度傾いた方向に反射する反射光を受光して試験片3のスペクトル反射率を測定する。
【0038】
促進耐候性試験装置で試験片の色を決定する別の方法は、少なくとも一つの試験片3を保持する回転ラック1を有する試験槽2の中に、第一入力光学要素10を配置するステップと、試験片3を識別するステップと、第一入力光学要素10を用いて、試験槽2の中の光源5から試験片3に照射された光のスペクトル反射率を測定するステップと、測定されたスペクトル反射率に基づき、試験片3についてのCIE表色系における三刺激値のセットを計算するステップと、前記三刺激値のセットを、タイムスタンプとともにデータベースに格納するステップとを備える。また別の実施形態の方法は、光源5のスペクトル分布を測定する第二入力光学要素11を前記試験槽2の中に配置するステップと、前記スペクトル分布を、タイムスタンプとともにデータベースに格納するステップとをさらに備える。ここでタイムスタンプは、データの流れを時間順に再構成できるような尺度に関連した、あらゆるタイプ情報または格納の仕組みを採用し得る。例えば、測色データとともに時刻を格納することができるが、逐次格納される値に関連する時間の増分を用いることもまた企図される。また、試験片の色の変化ではなく色あせが観察される対象である場合に、経時的な色の変化(色差ΔE)ではなく色あせ(明度差ΔL)を、試験片の変化を評価することができるツールとして使用することが、耐候性の分野で開示されている。また、他の基準や測色技術、および測色技術との境界技術も使用されること企図される。
【0039】
最後に、図示されてはいないものの企図されるのは、筐体2の中で試験片3からの二回目以降の反射に起因する背景明度を検出することが可能な、環境センサーを用いることであり、これによって測定された色をさらに補正することができる。閉鎖された筐体2の中では、壁面は反射性を有し、また光源5は試験片3のみに指向してはおらず筐体2の全体を指向しており、光源5からの照射の多くは背景光度から成る。
【0040】
本発明の具体的な実施形態が図面に描かれ、また明細書に記述されているが、本発明はこれらに記載されたままの構成に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱しない限り、部品および要素の構成および配置について変更することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 回転ラック
2 筐体
3 試験片
5 光源
9 光ファイバー
10 第一入力光学要素
11 第二入力光学要素
30 切替装置
31 測色センサー
32 ソフトウェアスイッチ
300 促進耐候性試験装置
310 光分析制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に設けられた試験槽へのアクセス扉を有する筐体と、
前記筐体内に少なくとも一つの試験片を保持する回転ラックと、
前記試験片を照射するため、前記試験槽内に配置された光源と、
前記試験槽内に配置され、前記光源から前記試験片に照射された光のスペクトル反射率を測定する第一入力光学要素とを備え、
前記第一入力光学要素は、光ファイバーにより測色センサーおよび光分析制御システムに接続され、
原位置でリアルタイムに前記試験片の色の漸進的変化を決定する
ことを特徴とする促進耐候性試験装置。
【請求項2】
前記試験槽内に配置され、前記光源のスペクトル分布を測定する第二入力光学要素をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の促進耐候性試験装置。
【請求項3】
前記光源が、キセノンアークランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプおよびカーボンアークランプのなかから選択されること
ことを特徴とする請求項1に記載の促進耐候性試験装置。
【請求項4】
前記第一入力光学要素が、切替装置を介して前記測色センサーに接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の促進耐候性試験装置。
【請求項5】
前記測色センサーが、電荷結合素子、電荷結合配列、シリコンアレイ検出器、相補型金属酸化膜半導体素子、能動画素センサー、ベイヤセンサー、foveon X3(登録商標)センサー、ダイオードアレイ検出器、光電子増倍管、非走査型分光放射計からなる群から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の促進耐候性試験装置。
【請求項6】
前記光分析制御システムが、スペクトル出力に接続されたソフトウェアスイッチと、リアルタイムに色差を計算する測色ソフトウェアとを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の促進耐候性試験装置。
【請求項7】
前記光分析制御システムが、前記試験片の色の変動の測定結果に基づいて、曝露を終了させることができる
ことを特徴とする請求項6に記載の促進耐候性試験装置。
【請求項8】
前記第一入力光学要素および前記第二入力光学要素が、前記光源と前記試験片との間で一列に並んでいる
ことを特徴とする請求項2に記載の促進耐候性試験装置。
【請求項9】
前記第一入力光学要素が、前記試験片の法平面から所定の角度傾いた方向に反射する反射光を受光して、前記試験片のスペクトル反射率を測定する
ことを特徴とする請求項2に記載の促進耐候性試験装置。
【請求項10】
少なくとも一つの試験片を保持する回転ラックを有する試験槽内に、第一入力光学要素を配置するステップと、
前記試験片を識別するステップと、
前記第一入力光学要素を用いて、前記試験槽内の光源から前記試験片に照射された光のスペクトル反射率を測定するステップと、
測定されたスペクトル反射率に基づき、前記試験片についてのCIE表色系における三刺激値のセットを計算するステップと、
前記三刺激値のセットを、タイムスタンプとともにデータベースに格納するステップとを備える
ことを特徴とする促進耐候性試験装置内の試験片の色を測定する方法。
【請求項11】
前記光源のスペクトル分布を測定する第二入力光学要素を前記試験槽内に配置するステップと、
前記スペクトル分布を、タイムスタンプとともに前記データベースに格納するステップとをさらに備える
ことを特徴とする請求項10に記載の促進耐候性試験装置内の試験片の色を測定する方法。
【請求項12】
ソフトウェアを用いてスペクトル出力を作るステップと、
前記スペクトル出力をスペクトル分布として表示するとともに前記データベースに格納するステップとをさらに備える
ことを特徴とする請求項10に記載の促進耐候性試験装置内の試験片の色を測定する方法。
【請求項13】
前記三刺激値のセットと、前記データベースに格納された試験開始当初のCIE表色系における三刺激値のセットとを比較することにより、リアルタイムの色差を決定するステップと、
前記リアルタイムの色差と、前記データベースに格納されている、前記試験片における色の変動の最大限値とを比較するステップと、
前記リアルタイムの色差が、前記色の変動の最大限値と等しいかまたは前記色の変動の最大限値を超える場合に、曝露を終了させるステップとをさらに備える
ことを特徴とする請求項10に記載の促進耐候性試験装置内の試験片の色を測定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−19841(P2010−19841A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−162405(P2009−162405)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(502117583)アトラス・マテリアル・テスティング・テクノロジー・エル・エル・シー (10)
【Fターム(参考)】