説明

リガンド分析

本明細書にはレセプター−リガンドペアの分析法が記載される。本法は、リガンドのレセプターに対する結合親和性に関する情報を提供すること、あるいは、リガンドのレセプターに対する結合速度動態に関する情報を提供することが可能である。いくつかの場合においては、本法は、レセプター-リガンド相互作用を評価および/または最適化するための極めて包括的なシステムであって、様々なタイプのレセプターリガンド相互作用、例えば、タンパク−小型分子相互作用に適用が可能なシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2003年3月10日出願米国仮出願第60/453,473号、2003年3月10日出願米国仮出願第60/453,457号、2003年4月7日出願米国仮出願第60/460,910号、2003年4月15日出願米国仮出願第60/463,025号、および、2003年9月12日出願米国仮出願60/502,670号に対する優先権を主張する。なお、上記出願それぞれについて引用することによりその全体を本出願に含める。
【0002】
(背景)
各種疾病を治療する薬剤を発見するための努力は、組み合わせ化学のような技術およびヒトゲノムの解明によって革新的な進歩を遂げている。ゲノミクスおよび生物学的スクリーニング両分野における高処理技術の発達は、コンピュータ技術における長足の進歩と相俟って、これらの道具を新薬の合理的探求法の一部として用いることを一層実現可能としている。
【0003】
しかしながら、化学的ゲノミクスの潜在能力をフルに発揮するためには、組み合わせ化学のような技術力を、新たに発見された疾病標的用リード化合物の展開に利用するための効率的な一般ツールの開発が必要である。化学合成の分野ではタンパク機能探査用の各種化合物ライブラリーの構築において相当な洗練を可能とした進歩が見られているにも拘わらず、混合系でのリガンド結合メカニズムを直接評価したり、リガンド親和性を判定するための一般的技術は現在でもなお不足している。ゲノムおよびプロテオーム分析によって、ヒト疾患の小型分子療法の標的と特定されるヒトおよび細菌タンパクの数が急速に増えており、このために、機能的アッセイが利用できない新規標的に適用が可能なタンパク−リガンド結合の評価法に対して今後の展開の成否を決める要求が生じている。結合部位によってリガンドの化学タイプの親和性を序列化したり分類したりすることは、リガンド構造−活性関係について合理的解明をするのに共結晶X線構造を利用できない標的の場合には特に好ましい。
【0004】
どの薬剤候補が残るのかを早期に予測できる予測因子は、そのK、すなわち、標的生体分子との平衡解離定数である。Kは、薬剤候補が、その標的にどれくらい緊密に結合するかを表す尺度であり、候補の効力、毒性の可能性、および副作用に関する予測因子である。薬剤候補の動態、例えば、薬剤候補が標的から解離する解離速度kも、薬剤候補が最終的に薬剤となるかどうかを早期に示す予測因子となり得る。kは、薬剤候補がその標的にどれくらい緊密に結合するかを表す尺度であり、候補の潜在的効力、毒性、および副作用のインディケーターとなり得る。Kおよびkを含めた、各種結合特性を効率的に論理的矛盾無く評価できる能力があるならば、その能力は、創薬プロセスを目覚しく改善することができるであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
アフィニティー選択質量分析(AS−MS)技術は、リガンド(例えば、小型分子および有機化合物)のレセプター(例えば、タンパクおよび酵素)に対する結合特性を評価するに当たって特に有望である。これらの技術により、複雑な混合物からタンパク結合成分が、その分子量、または衝突による断片パターンに基づいて一意に特定され、化合物ライブラリーの中から複数のリガンドを同時に評価することが可能になる。現代のMS技術の感受性が高いので、極少量の精製生体分子レセプターを用いてAS−MS実験を行うことが可能である。細胞、またはそれ以外の複雑な生化学アッセイとは異なり、AS−MSは、対象標的に対して選択的に結合する化合物についてのみ結果を提示するものであり、従って、標的外活性から生じた擬似陽性を排除する。
【0006】
本発明者らは、本明細書において、1つのタンパクレセプターに対する、複数のリガンドの親和度を同時に序列化し、一方、ある場合にはさらに、複数のリガンド同士が、選択競合リガンドとして同じ部位に結合するのか、または、アロステリックな結合部位において相互作用を介して影響を及ぼしあうのかを明らかにする多次元クロマトグラフィー質量分析法を記載する。2つのリガンドが異なる部位に結合する場合、本法は、それらの絶対的結合親和度、および、それらの間の結合協力度の定量評価をも与えることが可能な場合もある。
【0007】
1つの局面において、本発明は、レセプターE、リガンドS、および、レセプターリガンド結合対ESを含む複数の混合物においてリガンドにたいするレセプターの結合親和度を分析する方法をその特質とする。本法は下記の工程を含む、すなわち、
(a)複数の混合物であって、各混合物は、レセプター[E]、リガンド[S、および滴定剤Tを含み、TのSと置き換わる相対的活性が定量可能となるようにE、S、Tの内の1つ以上の濃度が選択される複数の混合物を供給すること、
(b)複数の混合物それぞれを平衡に達せしめること、
(c)複数の混合物それぞれについて、未結合リガンドSから、レセプター-リガンド結合対ESを分離すること、
(d)複数の混合物それぞれにおいて、分析装置からの、レセプター-リガンド結合対ESの信号応答を定めること、および、
(e)工程(d)におけるレセプター-リガンド結合対ESの信号応答を評価し、リガンドSのレセプターEに対する結合親和度を定めること、
である。
【0008】
ある場合には、各混合物は、[E]および[Sに対するTの相対的濃度が、SiのTと置き換わる相対的活性の比較を可能とするように選ばれる。
【0009】
ある場合には、本法は、複数の混合物であって、各混合物は、レセプター初期濃度[E]、リガンド初期濃度[S、および、既知濃度の滴定剤Tを含み、複数の混合物のそれぞれにおいて[E]および[Sは一定であり、[Sは、複数の混合物それぞれにおいてほぼ同じであり、滴定剤の濃度は複数の混合物内において変動させられる複数の混合物を供給することを含む。
【0010】
ある場合には、複数の混合物は、それぞれ、複数のリガンドSおよび複数のレセプター-リガンド結合対ESを含み、信号応答は、前記レセプター-リガンド結合対の内の少なくとも2つについて定められ、レセプター-リガンド結合対ESの相対的結合度が定められる。
【0011】
ある場合には、例えば、混合物が複数のリガンドを含む場合には、前記複数のリガンドSの少なくとも約90%は一意の分子量を持つ。
【0012】
ある場合には、各混合物は、[E]および[Sに対するTの相対的濃度が、第1リガンドSの結合親和度が、第2リガンドSの結合親和度と比較されて、それによってEに対するSとEに対するSの相対的結合親和度を測る尺度が得られるように選ばれる。
【0013】
ある場合には、結合親和度は、相対的結合平衡定数KdiSである。
【0014】
ある場合には、本法は、1つ以上のリガンドのACE50、すなわち、レセプター-リガンドペアの信号応答が、滴定剤濃度0の時の値の50%に達する時の滴定剤濃度を計算することを含む。
【0015】
ある場合には、複数のリガンドの相対的KdSは、最低のACE50値を持つリガンドが、リガンド混合物の内で最高Kを持ち、最高ACE50値を持つリガンドが、リガンド混合物の内で最低Kを持つように定められる。
【0016】
ある場合には、本法は、複数の混合物におけるレセプター-リガンド結合対ESのKdiを求めるに際し、滴定剤の濃度の関数で表した複数の混合物それぞれにおけるレセプター-リガンド結合対[ES]濃度の変化を、式(I)の等式:
【0017】
【数4】

または、式(I)から導かれる等式に適合させることによって計算することを含む。
【0018】
ある場合には、複数のリガンドSの相対的KdiSが定められる。
【0019】
ある場合には、レセプターの初期濃度[E]は既知であり、リガンドの初期濃度[Sは既知である。
【0020】
ある場合には、レセプターの濃度[E]は、リガンドの濃度[Sの合計よりも大きい。
【0021】
ある場合には、本法はさらに、リガンドSは、レセプターEに競合的に、アロステリックに、または非競合的に結合するのかを判定することを含む。例えば、レセプター-リガンドペアESが、複数の混合物のそれぞれにおいて比較的定常な信号応答を維持する場合、リガンドSは、非競合的にレセプターEに結合する。ある場合には、本法は、複数の混合物それぞれにおいて、レセプター-リガンドペアESの信号応答の、レセプター-滴定剤ペアの反応に対する比の、滴定剤濃度に対する変動を定めることを含み、複数の混合物それぞれの前記比が滴定剤濃度と直線関係を持つならば、リガンドSはレセプターに競合的に結合し、複数の混合物それぞれの前記比が非直線的関係を持つならば、リガンドSはレセプターにアロステリックに結合するとされる。
【0022】
ある場合には、レセプターは、生体分子、ポリペプチド、酵素、または核酸である。
【0023】
ある場合には、リガンドは、有機分子、例えば、製薬化合物または小型分子(例えば、約600a.m.u.未満の分子量を持つ分子)、またはポリペプチドである。
【0024】
ある場合には、複数の混合物は、レセプター-リガンド結合対ES、未結合レセプター、および未結合リガンドから成る平衡を実現する。
【0025】
ある場合には、本法は、レセプター-リガンド結合対を解離させる条件下で使用が可能な液体クロマトグラフィー、例えば、逆相液体クロマトグラフィーの使用を含む。
【0026】
ある場合には、レセプター結合リガンドは、サイズ排除クロマトグラフィーまたは限外ろ過を用いて複数の混合物のそれぞれから分離される。
【0027】
ある場合には、信号応答は質量分析を用いて定量される。
【0028】
ある場合には、本法は、レセプター-リガンド結合対ESを破壊することを含む。
【0029】
ある場合には、レセプター-リガンド結合対ESの信号応答は、複数の混合物それぞれにおいて、該レセプター-リガンド結合対ESにおけるリガンドSの相対的量を測定することによって定量される。
【0030】
ある場合には、リガンドSの相対量は、質量分析器から得られる信号応答を評価することによって定量される。
【0031】
別の局面では、本発明は、レセプター-リガンド結合対の平衡解離定数Kを定量する方法を特質とする。前記方法は、下記の工程を含む。すなわち、
(a)レセプター-リガンド結合対のリガンドに対して較正された質量分析器を設けること、
(b)複数の混合物であって、各混合物は、レセプター[E]およびリガンド[S]を含み、EおよびSの内の1つ以上の濃度が、Eに対するSの結合親和度が定量可能となるように選択される、複数の混合物を供給すること、
(c)複数の混合物それぞれを、結合したレセプター-リガンド結合対ES、未結合レセプター、および未結合リガンドから成る平衡に達せしめること、
(d)複数の混合物のそれぞれからレセプター結合リガンドを分離すること、
(e)複数の混合物のそれぞれにおいて、質量分析器から得られるレセプター-リガンド結合対の信号応答を定量すること、および、
(f)工程a−eにおいて知られ、測定され、または獲得された情報を用いて、複数の混合物それぞれについて、レセプター-リガンドペアの濃度[ES]、および、初期の、既知のリガンド濃度[S]を、式(I)の等式:
【0032】
【数5】

に適合させ、
レセプター-リガンド結合対のKを生成すること。
【0033】
ある場合には、複数の混合物は、それぞれ、レセプターの初期濃度[E]、および、リガンドの、既知の初期濃度[S]を含み、[E]は、複数の混合物のそれぞれにおいて同じであり、[S]は複数の混合物のそれぞれにおいて変動される。
【0034】
ある場合には、本法はさらに、混合物におけるレセプター初期濃度[E]を定量することを含む。
【0035】
ある場合には、レセプターは、生体分子、ポリペプチド、酵素、または核酸である。
【0036】
ある場合には、リガンドは、有機分子、例えば、製薬化合物または小型分子(例えば、約600a.m.u.未満の分子量を持つ分子)、またはポリペプチドである。
【0037】
ある場合には、複数の混合物は、レセプター-リガンド結合対、未結合レセプター、および未結合リガンドの平衡を達成する。
【0038】
ある場合には、レセプター結合リガンドは、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて混合物から分離される。
【0039】
ある場合には、本法は、液体クロマトグラフィーを使用することを含む。
【0040】
ある場合には、本法はさらに、例えば、高温条件下で逆相液体クロマトグラフィーを用いてレセプター-リガンド結合対ESを破壊することを含む。
【0041】
ある場合には、レセプター-リガンド結合対の濃度[ES]は、複数の混合物のそれぞれについて、レセプター-リガンド結合対ESにおけるリガンドの量を測定することによって定量される。
【0042】
別の局面において、本発明は、レセプター-リガンド結合対の結合速度動態の分析法を特質とする。この方法は下記の工程を含む。すなわち、
(a)レセプター[E]、および、リガンド[Sを含む混合物を供給すること、
(b)混合物を、レセプター[E]、リガンド[S]、およびレセプター-リガンド結合対[ES]の平衡に達せしめること、
(c)混合物を、過剰な競合的インヒビターIによって処理すること、
(d)複数の時点においてレセプター-リガンド結合対の減少を
(i)未結合リガンドからレセプターリガンド結合対を分離すること
(ii)前記複数時点それぞれにおいて、レセプター-リガンド結合対の信号応答を分析装置によって定量することによって測定すること、および、
(e)工程(a)−(d)において知られ、測定され、または獲得された情報を用いて、レセプター-リガンド結合対の結合速度動態を評価することである。
【0043】
ある場合では、レセプター-リガンド結合対の信号応答は分析装置によって測定される。
【0044】
ある場合では、混合物は複数のリガンドSを含む。
【0045】
ある場合、例えば、混合物が複数のリガンドSを含む場合、複数のリガンドSの少なくとも90%は一意の分子量を持つ。
【0046】

ある場合では、結合速度動態は、知られ、測定され、または獲得された情報を用いて評価され、レセプター-リガンド結合対の信号応答の時間変化を、式(XVIII)の等式:
【0047】
【数6】

またはその導関数に適合させることによって、レセプター-リガンド結合対の解離速度ks2を計算する。
【0048】
ある場合では、本法は、非競合的に結合するリガンドを特定する工程であって、リガンド-レセプター結合対が、複数時点のそれぞれにおいて比較的定常な濃度を維持する場合、そのリガンドはレセプターに非競合的に結合するものとされる、特定工程を含む。
【0049】
ある場合には、複数のリガンドSの内の少なくとも2つの結合動態が比較される。
【0050】
ある場合には、レセプターは、生体分子、ポリペプチド、酵素、または核酸である。
【0051】
ある場合には、リガンドおよび/または競合的インヒビターは、有機分子、例えば、製薬化合物または小型分子(例えば、約600a.m.u.未満の分子量を持つ分子)、またはポリペプチドである。
【0052】
ある場合には、本法は、レセプター結合リガンドを液体クロマトグラフィーの機能に委ねることを含む。
【0053】
ある場合には、レセプター結合リガンドは、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて未結合リガンドから分離される。
【0054】
ある場合には、信号応答は質量分析を用いて定量される。
【0055】
ある場合には、本法はさらに、レセプター-リガンド結合対を破壊することを含む。
【0056】
ある場合には、レセプター-リガンド結合対の信号応答は、該レセプター-リガンド結合対におけるリガンドの相対的量を測定することによって定量される。
【0057】
ある場合には、本法はさらに、レセプター-リガンド結合対の半減期t1/2を定めることを含む。
【0058】
1つの局面において、本発明は、あるサンプルにおいてレセプター-リガンド複合体を特定する方法を特質とする。該方法は下記の工程を含む。すなわち、
(a)レセプター-リガンド複合体を含むサンプルを供給すること、
(b)サンプルをサイズ排除クロマトグラフィーにかけ、サイズ排除クロマトグラフィーで得られる溶出液をUV検出器と、サンプルループを含むマルチポートバルブを通過させること、
(c)UV検出器を用いてサンプル中のレセプター-リガンド複合体を検出する工程であって、該レセプター-リガンド複合体の検出は、UV検出器と、サンプルループを含むマルチポートバルブと連通するコントローラーを活性化し、コントローラーはレセプター-リガンド複合体がサンプルループ中に存在する時点でマルチポートバルブを活性化するように較正され、マルチポートバルブの活性化はサンプルループ中のレセプター-リガンド複合体をクロマトグラフィー装置に転送させ、および、
(d)レセプター-リガンド複合体中にリガンドを特定し、それによってレセプター-リガンド複合体を特定することである。
【0059】
ある場合には、サンプルはまた未結合のリガンドを含む。
【0060】
ある場合には、レセプター-リガンド複合体は未結合リガンドから分離される。
【0061】
ある場合には、方法はまたレセプター-リガンド複合体を解離することを含む。
【0062】
ある場合には、レセプター-リガンド複合体の解離はクロマトグラフィー装置で起こる。
【0063】
レセプター-リガンド複合体のレセプターは、例えば、ポリペプチド、酵素、または核酸であってもよい。
【0064】
レセプター-リガンド複合体のリガンドは、例えば、ポリペプチド、有機分子、または核酸であってもよい。
【0065】
ある場合には、コントローラーは手動で較正される。また別のある場合には、コントローラーは、コンピュータソフトウェアプログラムによって較正される。
【0066】
ある場合には、クロマトグラフィー装置は逆相カラムである。
【0067】
ある場合には、解離リガンドは質量分析によって特定される。
【0068】
ある場合には、リガンドは特定用タグを欠如する。ある場合には、リガンドは、特定用タグ、例えば、蛍光タグ、または放射性タグであってもよい特定用タグを持つ。
【0069】
別の局面では、本発明は、サンプルにおいて複数のレセプター-リガンド複合体を特定する方法を特質とする。方法は下記を含む。すなわち、
(a)複数のレセプター-リガンド複合体を含むサンプルを供給すること、
(b)サンプルをサイズ排除クロマトグラフィーにかけ、サイズ排除クロマトグラフィーで得られる溶出液をUV検出器と、サンプルループを含むマルチポートバルブを通過させること、
(c)UV検出器を用いてサンプル中のレセプター-リガンド複合体を検出する工程であって、該レセプター-リガンド複合体の検出は、UV検出器と、サンプルループを含むマルチポートバルブと連通するコントローラーを活性化し、コントローラーは、レセプター-リガンド複合体の少なくとも一部がサンプルループ中に存在する時点でマルチポートバルブを活性化するように較正され、マルチポートバルブの活性化はサンプルループ中に存在するレセプター-リガンド複合体をクロマトグラフィー装置に転送させ、および、
(d)解離レセプター-リガンド複合体から得られた解離リガンドを特定することである。
【0070】
ある場合には、サンプルはまた複数の未結合リガンドを含む。
【0071】
ある場合には、レセプター-リガンド複合体は未結合リガンドから分離される。
【0072】
ある場合には、方法は、複数の解離リガンドを特定することを含む。
【0073】
ある場合には、方法は単一レセプターを含む。
【0074】
ある場合には、方法はまたレセプター-リガンド複合体を解離することを含む。
【0075】
ある場合には、レセプター-リガンド複合体の解離はクロマトグラフィー装置で起こる。
【0076】
レセプター-リガンド複合体のレセプターは、例えば、ポリペプチド、酵素、または核酸であってもよい。レセプター-リガンド複合体のリガンドは、例えば、ポリペプチド、有機分子、または核酸であってもよい。
【0077】
ある場合には、コントローラーは手動で較正される。また別のある場合には、コントローラーは、コンピュータソフトウェアプログラムによって較正される。
【0078】
ある場合には、クロマトグラフィー装置は逆相カラムである。
【0079】
ある場合には、1つ以上の解離リガンドが質量分析によって特定される。
【0080】
ある場合には、リガンドは特定用タグを欠如する。ある場合には、リガンドは、特定用タグ、例えば、蛍光タグ、または放射性タグであってもよい特定用タグを持つ。
【0081】
ある場合には、複数のリガンドの少なくとも約90%が一意の分子量を持つ。例えば、リガンドの約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%が一意の分子量を持ってもよい。
【0082】
ある場合には、本発明は、望ましい結合特性を持つ1つ以上の化学化合物を特定する過程に関する。一般に、そのような化合物は、下記の工程を用いて特定される。すなわち、(1)第1リガンドの化学的構造の構造的変種(すなわち、関連化合物)としてのリガンド混合物を供給すること(ある場合には、これらの化合物は、その分子量によって一意に特定することが可能である)、(2)構造変種の混合物を分析し、起源のリガンドのその生体分子レセプターに対する親和度に対し、構造的変種の相対的親和度を定性的に、および/または、定量的に序列化すること、および、(3)その結果を用いて望ましいリガンドを特定し、リガンドの混合、合成、および/または序列化から成る、その後のサイクルのための関連リガンドを設計することである。
【0083】
本明細書に記載される方法のいずれのものも、繰り返し、すなわち反復的に、あるいは、継時的に、例えば、本明細書に記載される別の方法と交互に使用されてもよい。例えば、第1の方法を用いて、リガンド、またはリガンド混合物に関する結合情報(例えば、相対的結合親和度)を与えるのに用いたならば、別のリガンドは、第1の方法で得られた情報を用いるように設計または試験される。この別のリガンドは、例えば、第1の方法を用いて、あるいはそれと別に、本明細書に記載される第2の方法を用いてさらに評価されてもよい。例えば、リガンド混合物は、先ず、結合親和度の序列で評価し、次に、結合親和度情報を用いて新たなリガンドを設計し、その新たなリガンドを次に、親和度または結合動態によって序列化することも可能である。
【0084】
本明細書に記載される1つ以上の方法の結果を用いて、評価のために、新たな追加リガンドの合成または集合を指令することが可能である一方、ある例では、単一リガンド、またはリガンド混合物を、方法の1つ以上の工程が再試行される複数の方法、または単一法を用いて評価することが可能である。例えば、単一リガンド、またはリガンド混合物は、結合親和度(例えば、K)を定量することによって、さらにまた、結合速度(例えば、koff)を定量することによって評価することが可能である。結合親和度および結合速度動態を定量するこれらの方法は、任意の順序で実行することが可能であり、また、反復的に実行することも可能である。ある場合には、方法の再現性を確かめるために、単一の方法が、同じリガンドまたはリガンド混合物について実行される。
【0085】
本明細書に記載される方法は、サンプル中のレセプター-リガンド複合体を特定するのに極めて効率的な方法である。これらの方法は、レセプター-リガンド複合体を、サイズ排除クロマトグラフィー段階から、分析装置、例えば、LC−MS装置に直接配送することが可能であり、この配置は、高速のサンプルスクリーニングを可能とするばかりでなく、分画収集器の使用、または、分析装置表面に対するサンプルの付着によるサンプル損失の低下をも可能とする。さらに、本法の望ましい出力は、単一リガンドではなく、リガンド混合物(例えば、結合ライブラリー)によって実現が可能であり、それらリガンドの生成を必要としない。ある場合には、本明細書に記載される方法は、サンプルをミクロンスケールで操作する能力を付与するという利点を持つ。従って、ある1つのレセプターに対して、一度に多数の化合物をスクリーニングすることが可能である。前述の方法はまた、高い感度を持つことが可能なので、マイクロスケールサンプルの正確な検出と特性解明が可能である。さらに、分析用の望ましい生成物を求める探求において分析装置から溶出される溶出液についてランダムサンプリングを行うのではなく、代表的サンプルを、試料が実際にサンプリングループの中にある時にのみ収集することが可能である。
【0086】
本明細書に記載される過程は、レセプター-リガンド相互作用を最適化するための極めて一般的なシステムを提供することが可能であり、かつ、多様なたんぱく質クラス、例えば、可溶タンパク、膜関連タンパク、酵素、核ホルモンレセプター、および、Gタンパク結合レセプター(GPCR)を含むタンパク(ただし、それらに限定されない)と小型分子との相互作用に適用が可能である。さらに、本過程は、その出力について生化学アッセイを要せず、1回の実験当たり通常5μg未満の、ごく少量の精製タンパク、または他の生体分子レセプターしか利用しない。さらに、本明細書に記載される方法は、その実行に際してレセプターの構造に関する知識を要しない。さらに、方法の望ましい出力は、リガンドの混合物(例えば、結合ライブラリー)において実現が可能であり、リガンドの精製を要しない。
【0087】
本発明の1つ以上の実施態様の詳細を、付属の図面と下記の説明において記載する。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明と図面、および特許請求項から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0088】
(詳細な説明)
米国特許第6,207,861号は、質量符号化結合ライブラリーの製作法、および、それら質量符号化結合ライブラリーにおいて、1個以上の生体分子と会合する化合物を特定する(すなわち、スクリーニングする)方法に関する。この質量符号化ライブラリーは、個々の化合物の少なくとも約90%(すなわち、90以上100以下の任意の整数パーセント)が、その質量符号化ライブラリーの他の個別化合物の分子量とは異なる分子量を持つように設計・合成される。
【0089】
米国特許第6,207,861号のスクリーニング法は、自動化リガンド特定システム(ALIS)と呼ばれるシステムを記載する。このALISシステムは一般に下記のように機能する。(1)対象とする生体分子(例えば、タンパク)の溶液を、リガンド(例えば、小型有機分子、またはそのライブラリー)の存在下に、指定の時間インキュベートして、生体分子-リガンド複合体形成反応を平衡に達しさせる、(2)生体分子溶液、未結合リガンド、および生体分子-リガンド複合体を、サイズ排除クロマトグラフィー段階を通過させ、生体分子、プラス生体分子-リガンド複合体を、未結合のリガンドから、分子サイズに基づいて分離する、すなわち、生体分子、プラス生体分子-リガンド複合体を、溶出流の先頭において共同溶出させる、(3)生体分子、プラス生体分子-リガンド複合体を含むが、未結合のリガンドを全く含まない、この溶出流部分を逆相クロマトグラフィー段階に載せて脱塩し、さらに、その有機分子が、分子量、または質量分析-質量分析断片化パターンに基づいて特定され、較正された信号応答の測定によって定量化されるように質量分析装置に溶出させる。
【0090】
本明細書に記載される方法は、米国特許第6,207,861号の技術を応用するもので、本法もまた、レセプター-リガンドペアの定量分析は、分析装置または検出器(例えば、質量分析器、HPLC、UV、IR、NMR等)から得られる、ある範囲のリガンド濃度に渡って実行されたリガンド結合実験におけるリガンド回収に相当する信号応答を分析することによって実現可能であるという発見に一部基づく。この場合、リガンド回収は、未結合リガンドと結合リガンドの分離(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲルろ過、超遠心による)に基づく。これらの実験は、レセプター-リガンド結合の速度論および平衡熱力学を記載するモデルに数学的に一致させることが可能なデータを生む。このモデルは、レセプターとリガンドの混合物について、解離平衡定数(K)、レセプター初期濃度[R]、および解離の絶対速度(オフ速度、koff)の推定値を与えることが可能である。
【0091】
「解離平衡定数」(K)という用語は、E+S=ESタイプの反応において、逆方向速度定数と前進方向速度定数の比を表す。平衡時には、解離平衡定数(K)は、反応物の濃度の積を、生成物の濃度で割ったものに等しい(K=[E][S]/[ES])。Kの値が小さければ小さいほど、会合反応物同士の結合性相互作用は強い。親和(会合)定数は、該平衡定数の逆数である。
【0092】
レセプターにたいするリガンドの可逆的結合は下記:
【0093】
【数7】

のように表される。
【0094】
は下記:
【0095】
【数8】

のように表される。
【0096】
ある場合には、konはkと表され、koffはkと表される。
【0097】
全レセプター初期濃度[E]は、開放レセプターの濃度[E]、プラス、結合レセプターの濃度[ES]として定義される([E]=[E]+[ES])。全リガンド濃度[S]は、遊離リガンドの濃度、プラス、結合リガンドの濃度と定義される([S]=[S]+[ES])。
【0098】
従って、Kは、平衡複合体濃度[ES]と、初期受容濃度[E]と基質濃度[S]の項を用いて下記:
【0099】
【数9】

のように表される。
【0100】
を求めるためには、複合体平衡濃度[ES]、レセプター初期濃度[E]および基質初期濃度[S]を知るか、確定しなければならない。
【0101】
[ES]は、実験的に測定することが可能である(例えば、結合リガンドを、未結合リガンドから分離するためにサイズ排除クロマトグラフィーを用い、その後、液体クロマトグラフィーによってレセプター-リガンド複合体を分解し、さらにその後、リガンドに対して較正された質量分析器による質量分析によって)。
【0102】
[S]は、既知か、または推定することが可能である。
【0103】
[E]は条件によって変動する可能性があり、実験的に定められる。[E]を測定するために、そのレセプターに対してリガンドを滴定することが可能である。複合体[ES]の復帰は[E]の値で最大値に達し、対応する滴定曲線は下記の方程式:
【0104】
【数10】

に一致させることが可能である。その結果は、レセプター-リガンド複合体の平衡濃度ESを、パラメータK、[S]、および[E]の関数として表す。任意のKおよび[E]について、[ES]対[S]のプロットは、図1に示す直角双曲線に従う。この曲線の厳密な形は、調べられるリガンドのKに依存する。図2に示すように、[ES]へ向かう漸近極限値は[E]に依存する。この態様は飽和結合と記述される。
【0105】
様々な[S]値における較正実験によって測定された一組の[ES]値が与えられたならば、方程式を、数値による非直線性回帰技術を用いて[ES]、[S]データペアに適合させ、パラメータKおよび[E]に対する最適合数値を見出すことが可能である(図3参照)。
【0106】
単一レセプターに対する単一リガンドの相互作用を記載するのに用いられたものと同じ式が、複数の化合物(例えば、複数のリガンド)の混合物と単一レセプター結合部位との相互作用を記載するのに、下記に示すように、使用することが可能である。
E+S+S+...S→ES+ES+...ES
各リガンドSに対するKは下式:
【0107】
【数11】

のように表される。この式は、単一リガンドの場合の前述のK式の類推によって、
【0108】
【数12】

に拡張される。
【0109】
リガンドSについてはある範囲の濃度、第2のリガンドSについては固定濃度という、理論的2成分混合物の式(I)の連立方程式解によって、図4に注記する条件に対して、図示のようなレセプター-リガンド複合体濃度[ES]および[ES]のグラフが得られる。既知のリガンドSの初期濃度[Sが増すにつれて、対応するレセプター-リガンド複合体濃度[ES]も増加する。ところが、SおよびSがレセプターに競合的に結合する(例えば、オルソステリック結合)場合、レセプター-リガンド複合体濃度[ES]は減少する。なぜなら、高濃度のSが、レセプターEの結合部位を争ってSを押し退けるからである。
【0110】
混合物中に複数のリガンドが存在する場合、第2リガンドに比べて、受容器に対して相対的に弱い結合親和度を持つ第1リガンドは、滴定剤(例えば、既知の競合的リガンド)に対し、第2リガンドよりも低い濃度で押し退けられる。例えば、複数の未知のリガンドの存在下に、ある酵素の既知のインヒビターを滴定する場合、相対的結合親和度は、その複数のリガンドが、競合的リガンドによって酵素から押し退けられる順番を評価することによって定めることが可能である。
【0111】
「ACE50」という用語は、対象リガンドに対し、競合体不在の場合の対象リガンドの濃度値の1/2(50%)に低下させるのに必要な競合化合物の濃度を指す。ACE50は、対象リガンドおよび競合因子の平衡結合定数K、および、レセプターおよびリガンド濃度等のパラメータに依存する。ACE50は、既知の化合物が、対象リガンドを押し退ける濃度を表す数値であるが、これは、生化学的または生物物理学的IC50の定義と逆である。なぜなら、後者は、対象リガンドが、既知の化合物、例えば、放射性リガンドを押し退ける濃度を表すからである。従来のIC50値とは対照的に、より高いACE50は、より親和度の高いリガンドであることを示す。すなわち、対象化合物を結合部位から移動させるのに、競合因子のより高い濃度が必要とされるからである。
【0112】
レセプターEが対象リガンドSのプールに対して相対的に過剰に存在し、レセプター-リガンドプール混合物が別の競合リガンドによって滴定される実験条件下では、プールの成分間の競合は無関係であり、対象リガンドSについて観察される外見上唯一の競合は、該リガンドSと添加競合因子の間の競合だけである。
【0113】
複数の化合物の親和度を同時にランク付けするためにACE50法がどのように使われるのかを示す、様々のKdを持つ3種のリガンドの混合物に関する結合移動シミュレーション実験が図5aに提示される。このシミュレーションでは、全プール成分の全体濃度([S]=[S=[S=1.0μM)は、全体レセプター濃度(5.0μM)の桁である。この条件下では、ライブラリー間競合はごく少なく、個々のライブラリー成分は滴定剤とのみ競合する。ACE50値は、リガンド濃度に対しては感受性を持たない。任意の1つのリガンド濃度が9倍変動しても同じ親和度序列を与える。方法のこの特質は、リガンド濃度が、ブロック反応性の構築能力の差によって変動する可能性のある場合に、合成混合物を直接評価する際には有利となる。レセプター濃度よりもプール濃度の方が高い場合の結果が図5bに示される。このシミュレーションに示される極端な場合には、異なるKdを持つ3種のリガンドは、3種のライブラリー成分それぞれの全体リガンド濃度が5μMであり、レセプター濃度が2μMである場合、ほぼ等しいACE50値を与える。
【0114】
リガンド混合物から得られるACE50データからK情報を抽出することは、リガンドの二重混合物Sの溶液と添加競合因子に還元される。
【0115】
前述の原理を用いると、全体レセプター濃度を[E]、リガンドSの全体リガンド濃度を[Sとすると、Kの式(すなわち、Kdi)は、下記の式(I):
【0116】
【数13】

で表される。
【0117】
競合リガンドSが不在の場合、リガンドSのK式(すなわち、Kdi)は、下記の式(II)に示す式:
【0118】
【数14】

に単純化される。
【0119】
単純に、かつ読み易くするために、下記の等式では、次の名称を使用する。
【0120】
kd1=Kd1
kd2=Kd2
s10=[S
s20=[S
e0=[E]
es1=[ES
es2=[ES

【0121】
[ES]に関する式(II)を解くと2つの解が得られ、実数解は下記の式(III):
【0122】
【数15】

で示される。
【0123】
この式は、競合因子S欠如の場合の[ES]の値を表す。この数値の半分は、定義により、競合因子Sの全体濃度[SがACE50に等しい場合に存在する[ES]の量である。
【0124】
[ES]について式(III)を解くと2つの解が得られ、実数解は下記の式(IV):
【0125】
【数16】

で示される。
【0126】
この式は、競合因子Sと競合している場合の[ES]の値を与える。式(IV)の右辺(rhs)を、右辺の1/2に等しいと設定し、[ES]について解くと下記の式(V):
【0127】
【数17】

が得られる。
【0128】
式(V)は、[ES]が競合因子S不在時の値の1/2である場合の[ES]の値を表す。言い換えれば、これは、[S=ACE50の場合の[ES]の値である。
【0129】
類推から、[ES]について解くと2つの解が得られ、実数解は、下記の式(VI):
【0130】
【数18】

に示すものとなる。
【0131】
ACE50における[ES]の値−これは、式(III)のrhsの1/2である−を、競合因子Sと競合している時の[ES]の値の式−式(VI)である−に代入すると、下記の式(VII):
【0132】
【数19】

が得られる。
【0133】
上の式(V)および(VII)の両方とも、[S=ACE50における[ES]の式である。式(V)のrhsを式(VII)のrhsに等しく設定し、[Sについて解くと、下記の式が得られる。これは、[ES]が、競合因子不在時の値の1/2である場合の[Sの値である。言い換えれば、下式の[SはACE50に等しく、競合因子Kd1および対象リガンドKd2のK、レセプター全体濃度[E]、および滴定されるリガンドの全体濃度[Sで表される:
【0134】
【数20】


【0135】
式(VIII)によって、任意の一組の実験パラメータKd1、Kd2、E、および[SにおけるACE50値を予想することが可能になる。さらにこの式を用いてACE50決定のためのパラメータを最適化することが可能なる。
【0136】
d2について、式(VIII)を解くと4個の解が得られ、その内実数解は、Kd2を、ACE50、競合因子Kd1のK、レセプター全体濃度E、および、滴定されるリガンドの全体濃度[Sで表した式である。図6に示すように、式(I)の厳密解は膨大で扱いにくく、ACE50、Kd1、Eおよび[Sの実験値からKd2の値を導くための別法として、ACE50、Kd1、Eおよび[Sを入力パラメータとして用い、Kd2について、式(VIII)の数値解を求めるやり方がある。
【0137】
図7は、化合物S、SおよびSの三重混合物を、既知のリガンドSによって滴定した場合の理論的結果を示す。リガンドの全体濃度(添加競合因子を除く)は、レセプター全体濃度よりも低いことに注意されたい。この状況では、混合物中の化合物は互いに競合的ではなく、ただ、過剰に加えられたリガンドとのみ競合すると考えられる。
【0138】
d2=0.5μMの、2.0μMのオルソステリック競合性リガンドSの存在下に、Sで滴定すると、ESについてより浅い結合曲線が得られ、タンパク-リガンド複合体ESの濃度は、レセプターがSによって飽和されるにつれて減少する。ESのESに対する比は、レセプターが制限的試薬である場合(すなわち、滴定剤とリガンドとが、レセプター部位を争って競合しなければならない場合)、滴定剤の全体濃度[Sと共に直線的に増加する。この直線関係は、もっとも単純にはレセプターとのオルソステリックな相互作用によって説明される、相互に排他的な競合結合を示し、下記の式:
【0139】
【数21】

によって記述される。
【0140】
従って、ESに対するESのリガンド回収の比、対、滴定剤の全体濃度[Sのプロットは、[S>[E]の場合、オルソステリックリガンド同士について直線を与える。もしも滴定剤とリガンドのMS反応較正係数が既知であるならば、この直線の勾配は、リガンドと滴定剤の親和度の比を、リガンドの濃度で割った値に等しい。
【0141】
複数のリガンドが1つのレセプターに結合するのを記述する際に本明細書で用いる「オルソステリック」という用語は、同じレセプター部位に結合し、一般に互いに排他的に結合する複数のリガンドを指す。例えば、1つのリガンドがレセプターに結合する場合、それは、別のリガンドのレセプターに対する結合を物理的に阻止する。
【0142】
前述の方法の例を図8に示す。図7のデータの正規化プロットは、混合物中のリガンドのACE50値は、それぞれのKの関数として変動することを示す。ある範囲の[S値において測定された一組のACE50が与えられた場合、リガンド混合物の各成分の、タンパク標的に対する親和度をランク付けすることが可能である。さらに、各リガンドSのACE50値に基づいて、図6に示した方程式を解くことによって、個々の結合親和度Kdiに関する定量的推定が得られる。
【0143】
アロステリック結合の三重複合体モデルを下記に示す。このモデルでは、リガンドSおよびSは、それぞれ、解離定数Kd1およびKd2を持ってレセプターEの別々の部位に結合する。しかしながら、もしも両リガンドがレセプターに同時に結合した場合、両者は、係数αだけ相互の結合定数に影響を及ぼし合う。例えば、Sは、解定数Kd1においてEに結合するが、二重複合体ESに結合して、解離定数αKd1において3重複合体ESを形成する。α>1の場合、複数のリガンドの一方によるアロステリック相互作用は、他方の解離定数を増し、負の協力性をもたらす。α<1の場合は、一方のリガンドによるアロステリック相互作用は、他方の結合には影響を与えない。
【0144】
【数22】


【0145】
混合成分を分離するためにサイズ排除法を用いることは、一般に、アロステリックに結合した3重複合体から、タンパク-リガンドの2重複合体を分離しない。例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを用いた場合、タンパク様分子種は全てSEC段階から共に溶出する。従って、ある特定のリガンドの回収測定値は、そのリガンドを含むタンパク-リガンド複合体の合計を表す。例えば、回収されたSは、生成物ESおよびESの合計濃度と相関する。図9は、Kd1=2.0μMを持つSを、5.0μM濃度のレセプターEと、Kd2=0.5μMを持つ、2.0μM濃度のSとの混合物において滴定した場合の、2つのアロステリックリガンドの回収シミュレーションを示す。協調係数α=10では、2つの部位の間の負の協調性のために、滴定剤の濃度の増加と共にSの回収が減少する。しかしながら、その回収は、先にオルソステリック結合競合で見た場合のように、ゼロまで低下することはなく、むしろ、レセプター濃度は定常であり(Sの結合部位は滴定剤によって占拠されない)、一方、Kd2は係数αだけ増加するので、リガンド回収はプラトーに至る。これは、2つのリガンドの回収比に対して、重要かつ測定可能な影響を持つ。該比は、レセプター制限的条件下では、滴定剤濃度と共に直線的に増加するのではなく、下記の式(IX):
【0146】
【数23】

のように双曲線となる。その極限値は、式(X):
【0147】
【数24】

の値である。負の協力性が大きい場合、その相互関係は、相互に排他的な競合的結合と区別がつかない。この時式(IX)の右辺は、式(XI):
【0148】
【数25】

の右辺に還元される。
【0149】
リガンドのK、リガンドの全体濃度[S、レセプター全体濃度[E]、および、滴定剤とリガンドの相対的MS反応較正係数が与えられている場合、アロステリック競合リガンドに対するACE50滴定から得られた反応比データから、滴定剤のKおよび協力性係数αが得られる。図10のACE50反応比データの非直線性回帰分析によって、NGD−28835について、協力性係数α=8.3±0.7、および3.0±0.3μMのK値が得られた。このK値は、基本的キナーゼに対して行った独立の滴定実験によって測定された3.3±1.3μMという値とよく一致する。
【0150】
図11A−Fは、いくつかのAkt−1について行った結合モードの同時決定を示す。滴定剤スタウロスポリンによる飽和結合は、これらのリガンドを定量的には押し退けることはしないが、反応比曲線対滴定剤濃度は漸近境界を持つ。これは、全リガンドが、ATP/スタウロスポリン結合部位に関してアロステリックに結合することを示す(図11aと11b)。これと対照的に、最近知られるAkt−1リガンドM−1(メルク社)による競合は、この同じ化合物の混合物の各成分に対してオルソステリック結合競合を実現する。これらの結果は、M−1化合物と、それにたいして直接競合するリガンドは、ATP/スタウロスポリン結合部位とは別の場所に結合することを示唆する(図11cおよび11d)。
【0151】
この結論を独立して評価するために、図12a−dに示すように、M−1およびスタウロスポリンによるAkt−1キナーゼ活性の抑制を、ATP濃度を変動させて調べた。スタウロスポリンは、ATP-結合部位に結合する。この含意と一致して、ATP濃度を増加させると、ナノモルインヒビタースタウロスポリンのIC50測定値を50倍以上増す。理論に拘束されることを望むものではないが、ATP濃度増加によるスタウロスポリンIC50の増加は、主に、ATP Kの増加による。この反応におけるスタウロスポリンのVmaxに及ぼす作用は、ATPの高濃度においても僅かなものである。これらの結果は、スタウロスポリンが、ATPのオルソステリック競合因子であることを確実にする。(図12aおよび12b)。
【0152】
M−1のIC50はマイクロモルにしか過ぎないが、そのIC50は、同じATP濃度範囲に対して、スタウロスポリンのナノモルIC50よりも小さい倍率でしか増加しない。ATP濃度増加に伴うM−1 IC50の増加は、Vmaxの5倍の減少と、スタウロスポリンにおいて観察されたものよりも小さいKの増加とが合わさったためである。これらの結果は、M−1は、Akt−1に対する混合型、非競合的インヒビターであり、ATP変位(ATP Kmの増加)と、Akt−1キナーゼ活性の遅滞(Vmax減少)を含む生化学的作用機構を示し、かつ、M−1は、Akt−1における、ATP−およびスタウロスポリン結合ポケットとは場所的には別の部位に結合することを裏付ける。(図12cおよび12d)。この結論は、M−1とスタウロスポリンはAkt−1に同時に結合することを示唆するACE50の結果とも一致する。さらに、その結果は、ACE50技術が、どのようにしてリガンド混合物のオルソステリックおよびアロステリック結合機構を評価するのに用いられるかを例示する。
【0153】
Akt−1結合メカニズムの詳細を示すことの他に、M−1滴定実験はまた、混合物成分の親和度ランキングを与える。NGD−28839は、最高のACE50値w持つ。これは、この物質が、このテスト混合物の中でもっとも高い親和度を持つリガンドであることを示している。なぜなら、この物質は、移動のために、滴定物質M−1の最高濃度を要求するからである。NGD−28839は、混合物成分の中でもっとも優れた生化学活性を示す。すなわち、50μM濃度においてAkt−1キナーゼ活性の44±8%抑制を実現する。図5におけるNGD−28839のACE50値は、M−1のKが0.3±0.1の場合、Kが3.5±0.7μM(95%信頼間隔1.5から10.2μM)に一致して4.1μM(95%信頼間隔3.4から5.0μM)である。この混合物における他のリガンドは、Akt−1に対して、NGD−28839よりも弱い抑制活性を示した。これは、ACE50滴定実験によってそれらがより低い親和度を持つという所見と一致する。
【0154】
ACE50による化合物混合物における親和度ランキング付け、および親和度最適化はさらに図13a−bに示される。この図では、ムスカリン性アセチルコリンレセプターM、GPCRに対して小規模ライブラリーのリガンドが用いられた。このリガンドプールは、AS−MSによる、質量符号化ライブラリーの高処理スクリーニングによって発見されたいくつかの化合物を代表する化学タイプを始め、いくつかのNGD−3346の構造的類縁体を含む。既知のMリガンド、アトロピンを、成分当たり0.5μMの化合物プールの存在下に、2.0μM Mに対して滴定剤として用いた。反応比プロットは直線的であり(図13b)、試験リガンドは全てアトロピンとオルソステリックに競合することを示した。この結果と一致して、独立した生化学アッセイを行ったところ、試験リガンドは全て、アトロピン同様、Mの拮抗剤であることが示された。ACE50曲線は親和度における明瞭な差を示し、NGD−3350は、同種の構造体NGD−3348およびNGD−3346よりも10倍高い親和度を示した(図13a)。独立した生化学活性測定はこの結果を確認した。NGD−3350は、細胞によるcAMPアッセイにおいて1.6μMのIC50を示し、M拮抗性に関する組織によるアッセイでは9.6μMのIC50を示した。残りの化合物は全て、cAMPアッセイにおいて僅かなM拮抗活性を示したけれども、組織において目立った活性を示したのはNGD−3350のみであった。これらの結果は、複数の化合物、特に、組み合わせ化学技術によって合成された構造的類縁体の混合物について、親和度によってそれらを同時にランク付けし、前駆体に対して親和度を向上させた化合物、例えば、母体化合物NGD−3346に対して親和度を向上させたNGD−3350を特定する点においてACE50法が有利であることを強調するものである。
【0155】
単一部位平衡結合における生成物と反応因子の平衡濃度は、平衡解離定数Kで表されるが、この平衡解離定数は、下式(XII):
【0156】
【数26】

に示されるように、解離速度定数kの会合速度定数kに対する比として表される。この式から、任意の会合速度定数kにおいて、解離速度定数kの値がより低くなると、より小さいKd値が得られ、従って、所望のタンパク-リガンド複合体の平衡濃度がより高くなることが見て取れる。
【0157】
レセプター-リガンド複合体E-S(または、もっと簡単に書くとES)濃度の、時間に対する全体変化率、dES/dtは、形成速度と分解速度の差である(式(XIII)参照)。
【0158】
【数27】

ESの形成速度は、会合速度定数k、レセプターEの全体濃度、および、リガンドSの全体濃度に依存し、一方、ESの解離速度は、ES濃度、および解離速度定数kに依存する。従って、レセプターと単一リガンド間の、単一部位における可逆的結合については、下記の式(XIV):
【0159】
【数28】

を用いて、dES/dtをモデル化することが可能である。dES/dtがゼロの場合(定義上、システムが平衡にある場合である)、式(XIV)は、式(XII)の平衡式に還元されることに注意すべきである。
【0160】
前述の単一リガンド-単一部位平衡との類推に基づいて、リガンドSと抑制性リガンドIの間の競合的結合を下記に記述する。式(XV):
【0161】
【数29】

に示すように、開放レセプターEは、遊離リガンドSと反応して複合体ESを形成するか、または、遊離インヒビターIと反応して複合体EIを形成することが可能である。タンパク-リガンド複合体ES、およびEIの濃度の全体変化速度は、それぞれ、式(XVI)および(XVII):
【0162】
【数30】

によって表される。本システムの挙動は、システムパラメータ、すなわち、E、レセプター全体濃度;SおよびI、リガンドおよびインヒビターの全体濃度;混合物中の相互作用成分における会合および解離速度ks1、ks2、ki1、およびki2;および、ESおよびEIの初期濃度に関する数値が与えられた場合、前記2つの連立方程式の数値解を用いることによってモデル化することが可能である。
【0163】
ESの初期値がゼロに等しく無い場合の連立方程式(XVI)および(XVII)を解くことによって、過剰のインヒビターが突然に添加された場合の、システムの時間的変動をモデル化することが可能である。大量の過剰なインヒビターIがESの溶液に添加された場合、EとSの会合速度ks1はゼロと推定することができる。その理由は、レセプター-リガンド複合体ESが解離すると、そのレセプターは次にインヒビターIに結合されるからである。なぜなら、Iは大量に存在するので、ES複合体には解離しか残されておらず、EとSにとって再会合する道は閉ざされているからである。従って、SとIとがEに対して競合的に結合する場合、大量で過剰なインヒビターIは、Eの結合部位の実質的に全てを占拠する。式(XVIII)は、大量で過剰なインヒビターIがESの混合物に添加された場合の、式(XVI):
【0164】
【数31】

の解を示す。
【0165】
図14−17は、インヒビター濃度の変化、および、図示の他のパラメータ、例えば、リガンドSおよびインヒビターIの会合速度および解離速度を含めたパラメータの変動に暴露した場合の、レセプター-リガンド複合体の反応の時間的変化をシミュレートする数学的モデル実験の例である。方程式を解くと、レセプター-リガンド複合体の解離速度kおよび半減期が得られる。ks2のt1/2に対する関係は式(XIX):
【0166】
【数32】

に示される。
【0167】
図14は、典型的な会合・解離速度を持つ5μMのレセプターおよび1μMのリガンドから成るシステムに、元のレセプター−リガンド平衡混合物の1:1希釈液と共に、大量で過剰なインヒビターを、リガンド濃度は定常に維持するようにしながら添加したものの数学的モデルである。前述したように、インヒビターが、レセプターを争ってリガンドと競合する速度は、レセプター−リガンド複合体の解離速度と、インヒビターとレセプターの会合速度に依存する。図14の結果は、インヒビターが様々な会合速度を持つ場合について示される。レセプターを、平衡したレセプター−リガンド混合物と等しいリガンド全体濃度を含む非会合性インヒビター(ki1=0)で希釈すると、最初に、元の値の50%に至る低下があり、次に(活性なインヒビターが不在の場合)システムは自ずから新たな平衡に回復する。しかしながら、過剰な会合性インヒビターの存在下では(ki1≠0)、開放レセプターは、もしあれば、全てインヒビターによって、レセプター−リガンド複合体が再形成されないように塞がれてしまう。さらに、レセプター−リガンド複合体でもし自発的に解離するものでもあれば、その速度はks2に依存するのであるが、その開放されたレセプターは過剰なインヒビターによって塞がれる。従って、レセプター−リガンド複合体の相当濃度が、過剰なインヒビターの添加後時間と共に減少する。結合速度が極めて遅いインヒビターの場合でも(ki1=0.001μM−1−1)、分解曲線の勾配は、純粋な解離速度論から得られる理論的分解曲線[ES]−ks2t(式XVIII)のものに近づくことが見て取れる。分解が指数関数に従うにつれて、実験的分解曲線と理論的曲線の類似性は、図15に示すように、プロットをログ空間で比較した場合にさらに明白である。
【0168】
例えば、過剰なIを、複数のリガンドとレセプターとの混合物に導入した場合、その複数のリガンドの結合速度を相対的に決定することは可能である。Iが十分過剰の場合、リガンドは、一旦レセプターから離れたならばレセプターに再度結合することはないのであるから、リガンド混合物において、その信号応答がもっとも速く減少するリガンドは、それらのリガンドの内でもっとも早い解離速度を持つと判定することができる。
【0169】
この方法の例は図16に示される。この図は、典型的なレセプター−リガンド会合速度を持ち、レセプター−リガンド解離速度を変えながら、5μMタンパクおよび1μMリガンドから成るシステムに、元のレセプター−リガンド平衡混合物の1:1希釈液と共に、大量で過剰なインヒビターを、リガンド濃度は定常に維持するようにしながら添加したものを数学的に示す。モデル化した各リガンド解離速度ごとに、純粋な解離速度論から得られる理論的分解曲線[ESub]−ksub2.t(式(XVIII))も示してある。モデルは、レセプター−リガンド複合体の減少速度は、絶対的解離速度の緊密に相関することを示す。
【0170】
モデル化された競合結合実験におけるレセプター−リガンド複合体の分解速度と、純粋な解離速度の測定から期待される理論的分解曲線との間の厳密な相関度は図17において評価される。モデル化分解曲線はks1=0.01秒−1の場合について示され、理論曲線は、解離速度±この値の10%として示される。結果から、測定解離速度は、実際値の〜10%以内であり、これは、実験法の単純さと考え合わせると、実際の解離速度に関する極めて良好な近似である。
【0171】
実験的に測定された分解曲線が、第一次の解離速度論から期待される指数関数的分解曲線と緊密に合致するのであるから、各リガンドの解離速度と半減期情報を抽出するために、市販の曲線適合アルゴリスム、例えば、Microsoft Excel(登録商標)によって支給されるものを用いて、実験データを純粋の指数関数的分解関数に合致させることも可能である。過剰な競合的インヒビターを、タンパクと、1つの、または複数の対象リガンドとの平衡した混合物に添加した後に実行する逐次実験によって得られた、一組のタンパク−リガンド複合体測定濃度値の時間的変化が与えられた場合、各リガンドの解離速度を定量的に評価し、混合物における複数のリガンドの相対的速度を定量的にランク付けすることが可能である。
【0172】
「非競合的リガンド」という用語は、活性部位とは別の第2部位においてレセプターに結合するリガンドを指す。非競合的リガンドの結合は、別のリガンドと同時に起こり得るし(例えば、酵素の触媒部位で)、または、レセプターのみに結合してなおレセプターの反応に影響を及ぼすことも可能である。ある場合には、非競合的リガンド(例えば、酵素に対する非競合的リガンド)は、レセプターの効力を低減させる(例えば、酵素の効力を減らす、活性部位の配置を含めたレセプターの立体配置を変える)ことによって作用することが可能である。
【0173】
リガンドが非競合的リガンドである場合、過剰なインヒビターIの導入は、その非競合的リガンドがレセプター−リガンド複合体から解離したとしても、その再会合を阻止するように作用しない。従って、非競合的リガンドの信号応答の時間変化は、過剰なインヒビターの添加後も、定常なままである。
【0174】
複数のリガンド同士を比較し、好ましい結合特性を持つリガンドを特定する、もう1つの方法は、「レセプター制限的」および「過剰なレセプター」条件下でリガンド結合を比較することを含む。固定濃度の「初発」(例えば、既知)リガンドS、および、第2の「変動」(例えば、関連または改善)リガンドSから成る、理論的2成分混合物に関する下記の連立方程式(I):
【0175】
【数33】

を解くと、図に注した条件下で、図18に示すレセプター−リガンド複合体濃度[ES]および[ES]のグラフ表示が得られる。レセプター全体濃度[E]を、[E]<[Sから[E]>[Sまで増すにつれて、実験条件は「レセプター制限的」から「レセプター過剰」へと進行すると書き表せる。緊密なリガンドのレセプター−リガンド複合体の、弱いリガンドの複合体に対する比は、実験がレセプター制限的条件に近づくに従って増加する。これは、より緊密なリガンドが、存在する限定量のレセプターを争ってより弱いリガンドに打ち克つことを示す。従って、質量符号化混合物中のリガンドの結合親和度のランク付けは、初期化合物(例えば、元のリード化合物)を含む複数のリガンドの混合物を、レセプター制限的条件下と、レセプター過剰条件下別々に、レセプターに接触させ、レセプター−リガンド複合体をアフィニティー選択質量分析によって定量化し、各リガンドの信号応答比を比較することによって実現される。その際、比とは、1)レセプター不在下のリガンドの信号応答の、レセプター過剰下の各リガンドの信号応答に対する比、および、2)レセプター不在下のリガンドの信号の、レセプター制限的条件下における信号応答に対する比である。
【0176】
本明細書に記載される方法は、混合物の成分を、サイズ排除クロマトグラフィーによって未結合リガンドをレセプターおよびレセプター結合リガンドから分離し、次に液体クロマトグラフィーを用いることによって実行することが可能である。液体クロマトグラフィーは、リガンドからレセプターを解離する条件下で実行することが可能である。次に、この解離されたレセプターを質量分析器に通過させて、信号応答を得る。
【0177】
図19は、左から右へ、本明細書に記載される方法においてサンプル内のレセプター−リガンド複合体が特定される際に、リガンドが辿る経路を示す。レセプター、リガンド、およびレセプター−リガンド複合体を含むサンプルは、サイズ排除カラム(SEC)を通過させられる。ここでは、溶出液は、UV検出器(UV1)によって監視される。次に、サンプルはサンプルループに入り、ここで、第2分析装置に転送されるか、または出口(例えば、廃棄口)に振り向けられ、ここでは、図19に示すように、第2のUV検出器(UV2)によって監視することが可能である。
【0178】
液体サンプル中のレセプターの有無を判定するために、多くのスクリーニングおよび分析技術は光吸収検出器(例えば、UV、蛍光)に依存する。UV検出器は、その検出器を通過する材料によるUV光の吸収を測定する。通常、チャートにおいて、吸収は時間に対してプロットされる。材料は、サイズ排除クロマトグラフィー装置を通過した後、検出され、出力ピークがチャートまたはモニター上に形成される。ピークの大きさ(すなわち、容量)は、特定の波長におけるサンプルまたは材料による吸収の程度に一致する。
【0179】
サンプル材料をUV検出器にかける前に、レセプター−リガンド複合体は、先ず、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、未結合リガンドおよびその他の不純物から分離される。サンプルの各分離成分は、UVトレース中にピークを記録し、これはチャートに作成される。大きな物理的サイズを持つ分子種は、サイズ排除クロマトグラフィーから溶出される最初の分子種であり、早期のUVピークを記録する。例えば、タンパクであるレセプターと、小型分子であるリガンドを有し、レセプターおよびリガンドのあるものはレセプター−リガンド複合体を形成しているサンプルの場合、レセプターとレセプター−リガンド複合体とは、溶出流の先頭部において共同溶出する。これは、小型分子リガンドのはるかに小さいサイズに比べて、タンパクが比較的大型であるためである。
【0180】
「サイズ排除クロマトグラフィー」(SEC)という用語は、異なるサイズを持つ分子を分離するために多孔性粒子を使用することを指す。このものは一般に生物分子を分離するため、分子量およびポリマーの分子量分布を決めるために用いられる。一般に、孔径よりも小さい分子は粒子の中に入ることができるので、粒子の中に入ることのできない比較的大型の分子よりも長い経路を経ることとなり、長い転送時間を要する。孔径よりも大きな分子は孔に侵入できないので、クロマトグラムにおいて第1ピークとして一緒に溶出されない。この条件を全的排除と呼ぶ。孔に入ることが可能な分子は、分子のサイズと形に依存する、粒子における平均滞在時間を持つ。従って、様々な分子は、カラムを通過するのに、異なる全体転送時間を持つことになる。ポアサイズよりも小さな分子は全ての孔に入ることができるので、カラムにおいて最長の滞在時間を持ち、クロマトグラムでは最終ピークとして共同溶出する。
【0181】
サンプルは、SECを溶出流(「SEC溶出流」)として脱け出し、UV検出器を通過する。図20Aに描くように、SEC溶出流10は、高速2位置6ポート選択バルブ4に取り付けられたサンプルループ1を通過し(例えば、1、5、10、15、20、25、50、100、150、200、250、または300μlサンプルループ)、溶出流出口12に、UV検出器(図示せず)がレセプター−リガンド複合体を含むピークを検出するまで流れ込む。サンプルループ1とバルブ4の、この初期位置を「負荷」位置と呼ぶ。
【0182】
レセプター−リガンド複合体を検出すると、コンピュータ(図示せず)に接続されたコントローラーは、サンプルループ1をレセプター−リガンド複合体で満たすのに十分な指定の時間(例えば、2−5秒)にセットされたタイマーを起動する。一旦サンプルループ1がレセプター−リガンド複合体で満たされたならば、コントローラーは、2位置6ポート選択バルブ4におけるサンプルループ1を、図20Bに描かれる位置に回転させる。従って、充填サンプルループは、サンプル中の全レセプター−リガンド複合体の代表的な見解を含む。
【0183】
この位置は「注入」位置と呼ばれる。図20Bで見られるように、SEC溶出液10および溶出流出液12はサンプルループ1にはもはや接続されず、サンプルループ1は、分析装置に接続される別の溶出流につながれる。分析装置溶出液14a(例えば、溶媒)は、サンプルループ1に流入し、通過し、サンプルループ1を、サンプル溶出液14bとして脱け出す。ここで、サンプル溶出液14bは特定のために分析装置(図示せず)に流入する(例えば、質量分析)。
【0184】
分析装置の規模は、小型またはミクロサンプルを含む、各種サイズのサンプルを扱うように合わせることが可能である。15μlのサンプルループのサンプルパラメータは下記の通りである。SECから複数ポートバルブ4への接続チューブは35cmx75μm、サンプルループは84cmx150μm、分析装置溶出流14aをサンプルループに接続するチューブは40cmx20μm、サンプルループから分析装置(すなわち、サンプル溶出液)14bへの接続チューブは50cmx100μm、および、サンプルループから溶出流出口12への接続チューブは45cmx75μmである。SEC後の溶出液を収集するのに用いられるサンプルループは、ポリマーでコートした毛細管で構成される。次に、所望の長さ(すなわち、所望の容量)の毛細管を巻いてループとし、占有スペースを低減させる。
【0185】
コントローラーは手動で、例えば、UVピーク検出とタイマーを観察する人が操作することも可能である。あるいは別に、コントローラーはコンピュータに接続して、ソフトウェアプログラムによって操作することが可能である。例えば、ソフトウェアプログラムは、UV検出器がレセプター−リガンド複合体を検出するのと同時にタイマーをスタートし、その際、指定の時間に、コントローラーは、サンプルループ1を、図20Aに示す負荷位置から図20Bに示す注入位置へと回転させる。
【0186】
ある場合には、コントローラーを操作するために用いられるソフトウェアは、ディジタルとアナログの両インプットを備えた、国立装置データ獲得(DAQ)ボードの周囲に構築される。サイズ排除クロマトグラフィーシステムの接点が、ディジタルインプットの内の1つに接続される。サンプル注入が実行されると、接点は閉鎖され、ディジタルインプットはトリガーされる。これは、コントローラーにサンプル分析試行が開始したことを告知する。
【0187】
本明細書に記載される方法は、各検出器がサンプルの吸収レベルに対して−1Vから+1Vの範囲のアナログ信号を発する、2つのUV検出器を用いることが可能である。例えば、第1UV検出器は、SECカラム(すなわち、SEC溶出液10の流れの中に)と複数ポートバルブ4の間に配置してよい。第2UV検出器は、流出溶出流12の流れの中に配置してもよい。信号は、コントローラーのアナログインプットの内の2つに接続される。信号は、12ビットアナログディジタル(A/D)変換器によってディジタルに変換される。次に、コントローラーは、このディジタル信号を用いて、UV検出器を通過したピークを追跡することが可能となる。
【0188】
サイズ排除クロマトグラフィーの性質のせいで、UV検出器を脱出する最初のピークは、一般に、レセプター−リガンド複合体と開放レセプターを含むピークである。コントローラーは、信号の最初の上昇を待ち構えていて、それをピークと登録する。サンプルループにおけるピーク(すなわち、サンプル)の捕捉は、このピークの検出と同時に起動されるタイマーに基づく。
【0189】
UV検出器を通過する溶媒を押し出すポンプの流速は定常で2mL/分であってもよい。この流速では、100μLサンプルループを充填するのに3.3秒かかる。従って、ピーク特定後サンプルループ1を検出される物質で満たすのに必要な遅延時間は約3.3秒である。しかしながら、UV検出器からコントローラーに至るまでに恐らく信号遅延が起こるので、遅延時間は、各システム構成毎に実験的に決定される(すなわち、システムは較正され、システムの各変更毎に改めて較正される)。容量と流速はサンプル毎に変わるものではないから、UV検出器からサンプルループまでの移動時間に変化がもしあるとすれば、それは、溶媒ポンプによって生じる流速のゆらぎのみに起因する。従って、チューブ配置に何かの変更が加えられた場合(例えば、システムが変更された場合、または何かの部品が交換または調整された場合)、そうとあからさまに表示はされないが、遅延時間に関する再評価が必要である。
【0190】
2つのUV検出器を用いて、複数ポートバルブの回転−これによって、サンプルループに捕捉されたサンプルはLC−MSのような分析装置に振り向けられる−前後のデータを捕捉することが可能となる。2つのUV検出器のデータをプロットすることによって、各サンプルのサンプル捕捉状態が視覚的に描かれる。一方の検出器は、レセプター−リガンド複合体を追跡し、コントローラーによって、サンプルループとバルブの回転タイミングを取るのに利用される。第2検出器は、分析装置から遠ざけられるサンプルフローに接続される。この検出器からのトレースは、サンプルループに捕捉されないものを明らかにする。上記2つのトレースを比較することによって、ピーク捕捉の効率が明らかにされる。
【0191】
UV装置におけるサンプル検出の正確度を向上させるために、アルゴリスムを用いてデータを収集・処理し、ピーク(すなわち、レセプター−リガンド複合体の存在)の存在を判定する。DAQボードは、20kHzの最大周波数でデータを収集する。しかしながら、多くの場合、生のデータはピーク特定に用いるにはあまりにも不安定である。例えば、低タンパク濃度のサンプルは信号雑音のために見失うことがあり得る。従って、アルゴリスムを用いて、データを滑らかにし、高信頼度のデータ出力を得ることも可能である。
【0192】
現在使用されるアルゴリスムは、あらかじめ設定された時間間隔で複数セットの生データを収集し、平均する。次に、これら平均化セットをさらに処理して、データの移動平均を作成する。その結果をコントローラーはピークを求めて追跡する。例えば、10kHzのサンプリングレート(毎秒10,000データポイント)では、500ポイントの生データから成る複数セットが連続的に収集され、50ミリ秒毎に平均される。最初の7セット(それぞれ500ポイントの生データから成る)を、A、B、C、D、E、F、およびGと表示する。AからEまでのセットを平均してデータポイント1を作成する。BからFまでのセットを平均してデータポイント2を作成する。CからGまでのセットを平均してデータポイント3を作成し、以下同様の手順を繰り返す。このデータポイントはコントロールシステムによってプロットされ、ピークの有無に関して検査される。
【0193】
ピーク検出のための基準は、単に、初期閾値に対して数値の上で増えている連続する3データポイントの位置を求めることである。この閾値は、その期間はサンプルバッファーしかUV検出器を通過しない、データ捕捉の最初の2秒間データポイントを追跡して決める。この時の最高データポイントを閾値に設定する。これによって、バッファーによるUV吸収を始め、基線ノイズによる信号変動のために生じる擬似陽性ピークへのヒットが排除される。この閾値は、ユーザーによって、要すれば随意にさらに指定の量だけ増やされてもよい。
【0194】
サンプルを、サイズ排除クロマトグラフィー50mmカラムの上に、リン酸バッファーを用いて2mL/分の流速で流した場合のヒト血清アルブミン(HSA)とリガンドの分離・特定の代表的結果を図21に示す。UV1およびUV2トレースの相対的高さは、各ピークが、再現可能的に、同じ量だけ(〜60%相対的ピーク面積)カットされていることを示す。ピークの保持時間はほとんど同一であるが、これは適正なシステム操作にとって必要ではない。ピークの検出とカットは、ピークの位置について相対的に動的に行われるので、保持時間は無関係である。
【0195】
ピークカット時間の変更は簡単に修正され、HSAシステムにおいてそのようにした結果が図22A−22Fに示される。従って、記載の方法を用いた場合、注入ポートバルブの負荷位置から注入位置への変更のタイミングは、ユーザーが収集したいのはピークのどの部分なのかに応じて調整することが可能である。図22Aは、2秒後にサンプルループに捕捉されたピークの部分を示す。図22Bは、2.5秒後にサンプルループに捕捉されたピークの部分を示す。図22C−22Fは、それぞれ、3.0秒、3.5秒、4.0秒、4.5秒後にサンプルループに捕捉されたピークの部分を示す。図22A−22Fに見られるように、検出からサンプルループの回転までの遅延時間をコントローラーによって変えることによって、サンプルループにおいて、ピークの異なる部分(例えば、検出されるレセプター−リガンド複合体の異なる部分)の捕捉が可能である。プロットの垂直線は、サンプルループに捕捉されたサンプルの100μL部分にほぼ相当する。図示のデータでは、3秒(図22C参照)が遅延時間として最適値である。
【0196】
予想サンプル移動時間は計算されるけれども、バルブ死腔やUV検出器の指定値からのバラツキは較正を必要とする。検出器出力の時間遅れも、考慮しなければならない要因である。各場合について、サンプルの較正試行を行うことによって、これらの要因による移動時間の変動を確定することが可能である。
【0197】
サンプルループのサイズを増すことによってサンプルピークのより大きな部分を捕捉することが可能である。しかしながら、多くの場合、ピークの先頭部分がもっとも望ましい部分である。なぜなら、この部分は、レセプター−リガンド複合体を含むばかりでなく、何かの理由で紛れ込む未結合リガンドを含む可能性がもっとも低いからである。紛れ込みとは、小型の分子が、その実際の質量よりも、見かけ上はるかに大きい質量と共にサイズ排除クロマトグラフィーを通過し、タンパク信号と見分けられないピークとして現れることが観察される現象である。
【0198】
「信号応答」という用語は、分析装置または検出器(例えば、質量分析器、UV、蛍光、HPLC、NMR、IR等)の出力であって、その分析装置に存在する対象物質の量と測定可能なやり方で相関する出力を指す。特定の物質の信号応答は、物質そのものに関係するいくつかの要因(例えば、UV活性、イオン化電位等)を始め、分析装置または検出器に関係する要因(例えば、感度)にも依存する。ある物質の信号応答は、物質量に関して直線的であってもよい。しかしながら、信号応答は、物質の量に関して直線的である必要はなく、むしろ、信号応答は、評価される物質の量に測定可能なやり方で依存することだけが必要とされる。例えば、信号応答は、分析装置または検出器において分析される物質の量に対して対数的な、または指数関数的な関係を持ってもよい。
【0199】
「較正」という用語は、測定によって、または標準との比較によって、計器またはその他の測定装置の各スケール読み取りの適正値を確定することを指す。例えば、分析または測定装置(例えば、質量分析器)は、その真の値が既知の分析対象(例えば、複数濃度の複数リガンド)について複数の値を測定する、または判定することによって較正することが可能である。測定値は、真の測定結果である「絶対的」なものであってもよいし、測定値に相関する「相対的」なもので、数値範囲の上に測定値を表示するものであってもよい。
【0200】
「質量分析器」とは、イオン化された原子または分子の質量対電荷比(m/e)における差を利用して、それらの原子または分子を相互に分離する分析装置を指す。従って、質量分析器は、原子または分子の定量、および分子に関する化学的、構造的情報を定めるのに有用である。分子はそれぞれに異なる断片化パターンを持ち、これが、構造成分を特定するための構造情報を与える。質量分析器の一般的操作は、(a)気体相イオンを作製すること、(b)イオンを、それらの質量対電荷比に基づいて空間または時間において分離すること、および、(c)各質量対電荷比のイオンの量を測定することである。質量分析器のイオン分離力は、その解像度によって表される。
【0201】
従来技術においてはたくさんのイオン源が知られる。例えば、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、電子イオン化(EI)、高速原子衝突イオン化(FAB)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電子捕捉(陰イオン化学的イオン化またはNICIと呼ばれることもある)、および、大気圧化学イオン化(ApCI)である。上記イオン化法から任意に選ばれるもので生産されたイオンは、典型的には磁場である質量分離器、4重極電磁石、または飛行時間質量分離器を通過させられ、イオンの質量が区別され、各質量レベルにおけるイオンの数が定量されるように分離される。
【0202】
質量分析(MS)は、有機化学と無機化学の両方において分子の特性解明と特定のために広く利用されている技術である。MSは、分子に関する分子量情報を提供する。ある分子の分子量は、複数の分子の混合物において特定の分子を特定するに当たって、決定的に重要な情報部分である。MS分析は、例えば、薬剤開発および製造、汚染コントロール分析、および化学的品質管理に利用される。
【0203】
「リガンド」という用語は、レセプターと会合する(例えば、共有的に、または非共有的に)分子を指す。ある場合には、リガンドのレセプターに対する結合は生物学的作用(例えば、共働作用、または拮抗作用)を持つことが可能である。例えば、リガンドは、生体分子(例えば、DNA分子)に結合するポリペプチド(例えば、タンパク)であって、その際、タンパクのDNAに対する結合がmRNA合成を起動してもよい。リガンドはまた、酵素(例えば、HIVプロテアーゼ)に結合する有機分子(例えば、製薬化合物)であって、その際、酵素に対する有機分子の結合が酵素活性を抑制してもよい。
【0204】
「異種リガンド」という用語は、元のリガンドと関連するが、そのリガンドとは異なる分子を指す。例えば、異種リガンドは、元のリガンドと同じコア構造を持つが、そのコア構造に1個以上の異なる末端基を付着させてもよい。この異種基は、例えば、メチル基をエチル基に変えただけの僅かな変動であってもよい。あるいは別に、異種基は、さらに大きな、例えば、アミド基を芳香基に変えるような著明な変動であってもよい。異種リガンドはまた、元のリガンドのコア構造を元にした変化、例えば、フェニル環をピリジル環に変化させる等の変化を含んでもよい。
【0205】
「i」という単語は、レセプターと複数のリガンドの混合物における、1とリガンド数の間の整数であって、「i」はその混合物における個別リガンドを表す。
【0206】
「有機分子」という用語は、非ペプチド化合物であって、炭素と水素を含み、さらに、窒素、酸素、リン、ハロゲン元素、または硫黄のような、さらに別の元素を含む分子(例えば、製薬化合物)を指す。製薬学的に受容可能な塩(例えば、マレイン酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、酢酸、フマール酸、サリチル酸、クエン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、および、メタンスルフォン酸の各塩)も「有機分子」という用語の意味の中に含まれる。
【0207】
「インヒビター」という用語は、レセプターに会合する分子であって、レセプターに会合することによって、レセプターの機能に作用する、または、レセプターの、別のリガンドとの会合を阻害する分子を指す。ある場合には、インヒビターは、リガンドと競合的なやり方で会合する。
【0208】
「レセプター」という用語は、第2分子と会合することによって、作用(例えば、生物学的活性または検出可能な信号)を可能とする、または、作用を起動する分子を指す。例えば、レセプターは、特定の細胞外信号分子(例えば、リガンド)に結合し、細胞中に反応を起動するタンパクであってもよい。細胞表面レセプターの例としては、アセチルコリンレセプター、およびインスリンレセプターが挙げられる。細胞内レセプターの例としてはホルモンであって、細胞膜を横切って細胞中に拡散するリガンドに結合するホルモンが挙げられる。レセプターの他の例としてはポリペプチド、タンパク、酵素、リボザイム、RNA、DNA、および、生体分子模倣体が挙げられる。
【0209】
「生体分子」という用語は、生物活性(例えば、代謝、拮抗作用、共働作用、信号発射、または、転写)に作用を及ぼす分子を指す。生体分子は、生きている生物体に見出されるが、生体分子という用語は、天然に見られる生体分子に限定されず、天然に見られる生体分子の合成版を始め、それらの断片および改変をも含む。生体分子の例としてはポリペプチド、タンパク、酵素、リボザイム、RNA、およびDNAが挙げられる。
【0210】
「ポリペプチド」という用語は、複数のアミノ酸から構成されるポリマーを指す。タンパクはポリペプチドの1つの例となり得る。
【0211】
「酵素」という用語は、化学的または生化学的反応の反応速度を増すことによって(生体)触媒として機能する巨大分子、通常はタンパクを指す。一般に、酵素は、ただ1つの反応タイプ(すなわち、反応選択性)のみを触媒し、かつ、ただ1つのタイプの基質にしか作用しない(すなわち、基質選択性)。基質分子は、同じ部位で変形され(領域選択性)、一般に、基質のラセミペアの内ただ一方のキラル基質のみが変形される(エナンチオマー選択性、立体選択性の特殊形態)。
【0212】
「核酸」という用語は、ヌクレオチドサブユニットから構成されるポリマーを指す。ヌクレオチドサブユニットは、フォスフォジエステル結合によって繋ぎ合わせることが可能である。
【0213】
「レセプター−リガンド結合対」という用語は、一般に、可逆的なやり方で、非共有的な相互作用(例えば、水素結合、イオン相互作用、または疎水性相互作用)によって接合されるレセプターとリガンドを持つ複合体を指す。
【0214】
「滴定剤」という用語は、滴定反応における分析対象(例えば、レセプター)と定量的に反応する、および/または、相互作用を持つ物質(例えば、リガンド)を指す。滴定剤は、通常、反応および/または相互作用が完了するまで注意深く分析対象に添加される標準液である。分析対象の量は、反応完了に必要とされる滴定剤の容量から計算される。
【0215】
「滴定」という用語は、過程であって、それによって、1つの液(例えば、既知のKを持つリガンド液)が、もう1つの液(例えば、基質とK既知のリガンドの混合液)に、前記2つの溶質(例えば、基質と推定Kを有するリガンド)の間の相互作用が完了するまで添加され、その時点で、一方のリガンド液の濃度(例えば、既知の、または推定Kを有するリガンドの濃度)が既知とされる、またはほぼ既知とされる過程を指す。
【0216】
「平衡」という用語は、化学的および/または生化学的可逆反応および/または相互作用における状態であって、反応物質が生成物に、生成物が反応物質に復帰するのと同じ速度で変換され、そのために、各反応物質および生成物の量は事実上定常のままであり続ける状態を指す。
【0217】
「レセプター−リガンド結合対を破壊する」という言説は、レセプター−リガンド結合対を解離させて未結合レセプターとリガンドに分離することを指す。レセプター−リガンド結合対の破壊は、様々の方法で、例えば、クロマトグラフィーの使用(例えば、高温下における高解像度逆相クロマトグラフィー);圧、pH、塩濃度、温度、または有機溶媒濃度の変化;あるいは、レセプターに対する既知のリガンドとの競合、あるいは、上記技術の任意の組み合わせによって実現することが可能である。
【0218】
「液体クロマトグラフィー」という用語は、溶媒に溶解する複数のイオンおよび/または分子を分離するために使用されるクロマトグラフィー分析法を指す。サンプル溶液が第2の固相または液相に接すると、様々な溶質が、吸着、イオン交換、分配、またはサイズの違いによって異なる程度でその他相と相互作用を持つ。この違いを用いて、カラムを通過する各溶質の移動時間を定めることによって、混合物成分をそれぞれ分離することが可能である。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、液体に溶解した化合物を分離するための液体クロマトグラフィーの1つの形である。HPLC装置は、展開相の貯留槽、ポンプ、注入器、分離カラム、および検出器から成る。化合物は、プラグ一杯のサンプル混合液をカラムに注入することによって分離される。混合物中の異なる複数の成分は、液体の展開相と固定相の間の分配態様の違いによって異なる速度でカラムを通過する。
【0219】
「競合的結合因子」という用語は、ある特定部位(例えば、酵素の触媒部位)においてレセプターに結合するリガンドであって、その際に、動的平衡様過程において、別のリガンドと結合を競合するリガンドを指す。
【0220】
「質量符号化」という用語は、化学的化合物のセット(例えば、関連化合物、初期化合物、それらの異種または任意の組み合わせ)の品質であって、化合物セットの個別化合物の少なくとも約90%が、該セットの他の化学的化合物全ての分子量とは異なる分子量を持つ化合物セット品質を指す。
【0221】
「閾値結合特性」という用語は、リガンドの任意の定義された特性であって、そのリガンドが標的と会合する能力の客観的特定を可能とする特性である。例えば、閾値結合特性は、リガンドの特定のK、例えば、K<50μM,<20μM、<10μM、<1μM、<0.5μM、<0.1μM、<0.01μM等と定義することができる。閾値結合特性は、他の既知のリガンドに対して、例えば、ユーザー選択の、または望みの標準化合物に対して定性的または定量的に定義することが可能である。あるいは別に、リガンドの閾値結合特性は、他の複数のリガンドに対して定性的に定義する、例えば、閾値結合特性は、混合物内の最強結合リガンドと定義することも可能であるし、例えば、閾値結合特性は、混合物中のリガンドの半分よりも緊密に結合するリガンドと定義することも可能であるし、混合物のリガンドの3/4よりも緊密に結合するリガンド、混合物中の既知のリガンドよりも緊密に結合するリガンドと定義することも可能である。リガンドのkoff、半減期t1/2、またはその他の結合特性を分析することによって、同じタイプの定量的、相対的結合特性を用いることも可能である。
【0222】
熟練した技術者によって了解されるように、本発明に使用される化合物(例えば、構造的に関連する変異種)を合成する方法は当業者にとっては明白である。さらに、各種合成工程は、所望の化合物を得るのに、別配列または別順序で実行することも可能である。本明細書に記載される化合物を合成するのに有用な、合成化学変形および保護基方法論(保護および脱保護)は従来技術で既知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第2版、John Wiley and Sons(1991);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser′s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);およびL.Paquette編、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、および、その後続版に記載されるものを含む。さらに、化合物、および/または、化合物ライブラリーは、商業供給源から購入が可能である。さらに、化合物は、前駆化合物を購入し、その後追加合成操作を行って所望の化合物を得、それらを組み合わせて製造することが可能である。
【実施例】
【0223】
(実施例1:ヒト血清アルブミン(HSA)のKdの決定および小型分子ワルファリン)
0.125pmol、0.25pmol、0.5pmol、1pmol、2pmol、および、4pmolのワルファリンを含む6個の実験サンプルを分析し、ワルファリンについて質量分析信号を関連付ける較正曲線を確立する。較正の正確度を上げるために、0.125pmolサンプルについては2個のデータポイントを得る。
【0224】
既知のワルファリン濃度[S]を含む7つの実験サンプルを連続希釈で調製する。特に、80、40、20、10、5、2.5、または1.0uMの全体[ワルファリン]から成る2uLサンプルでは、ワルファリンについての較正信号強度は二重に測定される。このサンプルのそれぞれに、その濃度が厳密にではないが名目上は既知である一定量のHSAを加える。この場合、名目上0.2uMの[HSA]を用いた。これらのサンプル液を、レセプター−リガンド(HSA−ワルファリン)複合体が平衡に達するのに十分な時間、ざっと30分共にインキュベートする。
【0225】
次に、この、HSA、未結合ワルファリン、およびHSA−ワルファリン複合体から成る溶液をサイズ排除クロマトグラフィー段階に通過させ、分子サイズに基づいて、HSAとHSA−ワルファリン複合体とを溶出流の先頭部分において共に溶出させて、未結合ワルファリンから分離する。
【0226】
HSAとHSA−ワルファリン複合体とを含むが、未結合ワルファリンを全く含まない溶出流部分は、脱塩および質量分析器への溶出のために逆相クロマトグラフィー段階に振り向けられる。逆相クロマトグラフィーは事実上HSA−ワルファリン複合体を破壊する。分離後、ワルファリンは、その分子量、または質量分析-質量分析断片化パターンに基づいて特定される。次に、ワルファリンは、その較正信号応答測定によって定量される。
【0227】
HSAに結合していないワルファリンは全てサイズ排除によってHSA−ワルファリン複合体から分離されるので、質量分析器に到達したワルファリン(すなわち、回収リガンド)は全て、HSA−ワルファリン複合体由来のものである。従って、ワルファリンの較正信号は、サイズ排除クロマトグラフィーの開始時に存在したHSA−ワルファリンの量と相関する。
【0228】
[HSA−ワルファリン]と[ワルファリン]のデータペアは下記の式:
【0229】
【数34】

に適合する。これによって、数値による非直線回帰法によってパラメータKと[HSA]について最良適合値が得られる。
【0230】
前述の実験の結果が図23に示される。パラメータKと[HSA]は、数値により非直線回帰法によって、それぞれ、4.9uMおよび0.14uMと推定された。Kdの値は文献の値と良く一致する。[HSA]の値は、名目上のタンパク濃度の〜75%は活性を持つ、すなわち、実験においてリガンドに結合する能力を持つことを示す。
【0231】
(実施例2:ブタ・ムスカリン性レセプター(pM2R)のレセプター−リガンドシステム)
一定濃度(4.0μM)のブタ・ムスカリン性レセプター(pM2R)、定常濃度(1μM)のリガンドSi混合物(下記の表1参照)、および、漸増する濃度を持つ(0、0.1、0.22、0.46、1.0、2.2、4.6、10、22、46、および100μM)別の、既知のリガンド[S(アトロピン)を含む、7個からなる一連の実験サンプルを調製する。これらのサンプル液を、各サンプルにおいて反応を形成するレセプター−リガンド複合体が平衡に達するのに十分な時間、ざっと30分共にインキュベートする。
【0232】
次に、pM2R、未結合リガンド、およびpM2R−リガンド複合体から成るこの溶液をサイズ排除クロマトグラフィーに通過させ、分子サイズに基づいて、pM2RプラスpM2R−リガンド複合体を溶出流の先頭部において共同溶出させて、未結合リガンドから分離する。次に、pM2RプラスpM2R−リガンド複合体を含むが、未結合リガンドを全く含まない溶出流部分は、脱塩と質量分析器への溶出のために逆相クロマトグラフィー段階に振り向けられる。逆相クロマトグラフィーはレセプター−リガンド結合対を破壊・分離する。このようにして、逆相クロマトグラフィー後、リガンドは質量分析(MS)にかけられ、その分子量、または、質量分析-質量分析断片化パターンに基づいて特定される。
【0233】
pM2Rに結合していないリガンドがあったとしてもそれらは全てサイズ排除によってpM2R−リガンド複合体から分離される。従って、質量分析器に到達したリガンド(すなわち、回収リガンド)は全て、対応するpM2R−リガンド複合体由来のものであり、各リガンドSの質量分析信号は、サイズ排除クロマトグラフィーの開始時に存在したpM2R−リガンドRLの量と相関する。
【0234】
一定濃度のリガンドとpM2R濃度を持ち、添加される競合因子アトロピンの濃度を漸増させた場合の各実験サンプルのリガンド回収をプロットし、50%抑制濃度点(ACE50値)を、混合物の各リガンドについて求める(図24参照)。定量的化合物親和度は、ACE50値に基づいて決定される。ACE50値が高ければ高いほどKは低い。
【0235】
の定量的確定のためには、ACE50値、pM2Rレセプター初期濃度[E]、研究対象である混合物中の化合物の初期リガンド濃度[S]、および、競合因子アトロピンKを、式(I)の解である図6に示す式に代入する。結果は図25に示される。
【0236】
(表1:NGD構造の表)
【0237】
【表1−1】

【0238】
【表1−2】

(実施例3:セリンキナーゼZap−70、NGD−6380およびスタウロスポリンのレセプター−リガンドシステム)
9μM Zap−70および1μM NGD−6380の混合物を調製し、室温で30分、すなわち、混合物において結合および未結合成分が平衡に達するのに十分な時間インキュベートする。Zap−70およびNGD−6380から成るこの混合液に、100μMのスタウロスポリンおよび1μMのNGD−6380を含む混合液を加える(インヒビターの添加によってリガンド濃度を不変に保つ)。表2は、スタウロスポリンとNGD−6380の構造を示す。
【0239】
NGD−6380の解離の時間的変化を、20、30、40、60、70、80、および100分間隔で測定する。NGD−6380の解離は下記のようにして測定する。Zap−70、未結合NGD−6380、およびZap−70−NGD−6380複合体から成る溶液の分液を、サイズ排除クロマトグラフィーに通過させて分子サイズに基づいて、Zap−70プラスZap−70−NGD−6380複合体を溶出流の先頭部において共同溶出させて、未結合のNGD−6380から分離する。次に、Zap−70プラスZap−70−NGD−6380複合体を含むが、未結合NGD−6380を全く含まない溶出流部分は、脱塩とレセプター−リガンド結合対の分離のために逆相クロマトグラフィー段階に振り向けられる。このようにして、逆相クロマトグラフィー後、NGD−6380は質量分析(MS)にかけられ、その際信号応答が記録される。
【0240】
Zap−70に結合していないNGD−6380があったとしてもそれは全てサイズ排除工程によってZap−70−NGD−6380複合体から分離される。従って、質量分析器に到達したNGD−6380(すなわち、回収リガンド)は全て、対応するZap−70−NGD−6380複合体由来のものであり、NGD−6380の質量分析信号は、サイズ排除クロマトグラフィーの開始時に存在したZap−70−NGD−6380の量と相関する。従って、Zap−70のZap−70−NGD−6380複合体からの解離は、NGD−6380の信号応答の時間的減少から見て取られる。
【0241】
NGD−6380の信号応答の減少を時間の関数としてプロットし、この実験データを、プログラムMathematica(登録商標)(Wolfram Research Inc.,4.1バージョン)を用いて、式(XVIII):
【0242】
【数35】

の分解指数関数にフィットさせる。解離速度ks2および半減期t1/2の両方を示す結果が図26に示される。
【0243】
(表2:スタウロスポリンおよびNGD−6380の構造の表)
【0244】
【表2】

(実施例4:セリンキナーゼZap−70、NGD−746およびスタウロスポリンのレセプター−リガンドシステム)
9μM Zap−70および1μM NGD−746の混合物を調製し、室温で30分、すなわち、混合物において結合および未結合成分が平衡に達するのに十分な時間インキュベートする。Zap−70およびNGD−746から成るこの混合液に、100μMのスタウロスポリンおよび1μMのNGD−746を含む混合液を加える(インヒビターの添加によってリガンド濃度を不変に保つ)。表3は、スタウロスポリンとNGD−746の構造を示す。
【0245】
NGD−746の解離の時間的変化を、20、30、40、50、60、および90分間隔で測定する。NGD−746の信号応答の減少を時間の関数としてプロットし、この実験データを、プログラムMathematica(登録商標)を用いて、式8の分解指数関数にフィットさせる。
【0246】
[ES]=[ES]−ks2t
式(XVII)
解離速度ks2および半減期t1/2を示す結果が図26に示される。
【0247】
(表3:スタウロスポリンおよびNGD−746の表)
【0248】
【表3】

(実施例5:セリンキナーゼZap−70,リガンド混合物、およびスタウロスポリンのレセプター−リガンドシステム)
9μM Zap−70および、表3に示すリガンドの1μM混合液を調製し、室温で30分、すなわち、混合物において結合および未結合成分が平衡に達するのに十分な時間インキュベートする。Zap−70およびリガンドから成るこの混合液に、100μMのスタウロスポリンおよび1μMのリガンドを含む混合液を加える(インヒビターの添加によってリガンド濃度を不変に保つ)。
【0249】
リガンドの解離の時間的変化を、実施例3の場合のように、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、および120分間隔で測定する。リガンドの信号応答の減少を時間の関数としてプロットし、この実験データを、プログラムMathematica(登録商標)を用いて、式(XVIII)の分解指数関数にフィットさせる。
【0250】
[ES]=[ES−ks2t
式(XVII)
半減期t1/2を示す結果は図27に示される。解離速度ks2は表4に示される。
【0251】
(表4:スタウロスポリンおよびNGD構造の表)
【0252】
【表4−1】

【0253】
【表4−2】

【0254】
【表4−3】

(実施例6:濃度漸増競合リガンドと、起源リガンドプラス構造変異種との間の競合による、混合物アフィニティー選択質量分析によるK評価)
ZAP−70キナーゼ、高処理スクリーニング技術によって発見された、既知の、初発リガンドNGD−746、複数のNGD−746の構造変異種の質量符号化混合物から成るタンパク-リガンドモデルシステムについて下記の工程が実行される。
【0255】
10μM名目濃度のレセプターZAP−70、初発リガンドNGD−746を含む一定濃度(1μM)のリガンド混合液、および、漸増濃度(0、0.22、0.46、1、2.2、4.6、10、22、46、100μM)のZap−70リガンドスタウロスポリンを含む実験サンプルを調製する。サンプルを、各サンプルの反応を形成するレセプター−リガンド複合体が平衡に達するのに十分な時間、ほぼ30分であるが、インキュベートする。
【0256】
Zap−70、未結合リガンド、およびZap−70−リガンド複合体から成る溶液を、サイズ排除クロマトグラフィーに通過させて分子サイズに基づいて、Zap−70プラスZap−70−リガンド複合体を溶出流の先頭部において共同溶出させて、未結合リガンドから分離する。次に、Zap−70プラスZap−70−リガンド複合体を含むが、未結合リガンドを全く含まない溶出流部分は、脱塩と、その後の質量分析器への溶出ために逆相クロマトグラフィー段階に振り向けられる。逆相クロマトグラフィーはレセプター−リガンド結合対を破壊・分離する。このようにして、逆相クロマトグラフィー後、リガンドは質量分析(MS)にかけられ、信号応答が決定され、リガンドは、分子量、または、質量分析-質量分析断片化パターンに基づいて特定される。
【0257】
ZAP−70に結合していないリガンドがあったとしてもそれらは全てサイズ排除工程によってZAP−70−リガンド複合体から分離される。従って、質量分析器に到達したリガンド(すなわち、回収リガンド)は全て、対応するZAP−70−リガンド複合体由来のものであり、各リガンドの質量分析信号は、サイズ排除クロマトグラフィーの開始時に存在したZAP−70−リガンド複合体の量と相関する。
【0258】
各実験サンプルにおける、各混合成分の正規化リガンド回収、および競合リガンドを図28に示す。競合リガンドとしてスタウロスポリンを用い、各リガンドの反応を、該競合因子不在時のその値の半分に減少させるのに必要なスタウロスポリンの濃度、すなわち、そのリガンドのACE50を求めると、各リガンドのACE50値は、そのリガンドのKと逆相関を持つ。図28には、混合物中の各構造変異体について、ACE50値、および、各ACE50値から計算されるK値も示されている。これらのデータは、興味の結合特性を持つリガンドを特定するために、また、さらにそれに続く最適化混合物シリーズ(例えば、異種化合物から成る新しい混合物)を生成するために使用される。
【0259】
(実施例7:初発リガンドNGD−146、および、その誘導体NGD−6037、6367、6371、6380、6390、6423、6432、6862の質量符号化混合物の合成)
200mLの氷酢酸に溶解した5−イオドイサチン1(10g、36.3mmol)およびマロン酸(7.5g、72mmol)を一晩環流した。沈殿をろ過して集め、AcOHとアセトンで洗浄した。次に、この固体を、EtOHで1時間環流した。ろ過し、EtOHおよびEtOで洗浄したところ、生成物として6-イオド-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-キノリン-4-カルボン酸2が8.8g(76%)得られた。H−NMR(400MHz、DMSO−d):δ14.0(br s,1H),12.13(s,1H),8.56(d,1H,J=8.1Hz)、7.83(dd,1H,J=8.7,1.8Hz),7.17(d,1H,J=8.4Hz),6.93(s,1H)。
【0260】
【化1】

60mLの脱気したHOに溶解した6-イオド-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-キノリン-4-カルボン酸2(3.15g、10mmol)、3,4-(メチレンジオキシル)フェニルボロン酸(2.49g、15mmol)、KPO(8.49g、40mmol)、およびPd(OAc)(112mg、0.5mmol)の混合液をアルゴン下に60oCで2時間加熱した。室温に冷却後、固形分をろ過で収集し、HOとアセトンで洗浄した。次に、これを、20mLの1M HClで処理し、得られた緑黄色固体を再びろ過し、HOで洗浄した。P上で減圧乾燥したところ、2.53g(82%)の生成物3が緑黄色固体として得られた。H−NMR(400MHz、DMSO−d):δ14.0(br s,1H),12.11(s,1H),8.34(s,1H),7.79(d,1H,J=7.6Hz),7.40(d,1H,J=8.6Hz),7.18(s,1H)、7.08(d,1H,J=7.1Hz),7.01(d,1H,J=8.2Hz),6.91(s,1H),6.06(s,2H)。
【0261】
【化2】

30mLのNMPに溶解した酸3(2.0g、10.57mmol)、ペンタフルオロフェノール(2.92g、15.85mmol)、およびEDC(3.04g、15.85mmol)の混合液を室温で6時間攪拌した。NMPの助けを借りて沈殿をろ過し、溶液を60mLの氷水に注いだ。これによって生じた固体をろ過で収集し、氷水とEtOAcで洗浄し、減圧乾燥したところエステル4(2.80g、91%)が得られた。これをさらに精製することなく次の工程に用いた。
【0262】
【化3】

0.5mLのDMFに溶解したエステル4(12mg、0.025mmol)を、1mLのDMFに溶解したピロリジノピロリジン(7.7mg、0.05mmol)とAmberlite(登録商標)基礎レジン(50mg)の混合液に加えた。この反応混合液を室温で12時間攪拌し、イソシアネートレジン(90mg)を加え、3時間攪拌を続けた。次に、この溶液をろ過によって収集し、減圧濃縮して生成物NGD−746を得た。MSm/z446.2(M+1)。
【0263】
【化4】

10mLのオキシフォスフォラスクロリドに溶解した6−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−キノリン−4−カルボン酸3(1.0g、3.2mol)を4時間環流し、室温に冷却した。溶液を濃縮して乾燥させ、黄褐色固体を得た。次に、この固体を20mLのメチレンジクロリドに溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(1.50g、11.5mmol)と、2−(S)−ピロルジニルメチルピロリジン(0.59g、3.84mmol)を0oCでその溶液にゆっくりと加えた。この混合物を室温で12時間攪拌した。回転蒸発による溶媒除去後、残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和NaHCO水溶液および食塩水にて洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥して濃縮した。残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製したところ(6−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−2−クロロ−キノリン−4−イル)−(2−ピロリジン−1−イルメチル−ピロリジン−1−イル)−メタノン5(1.20g、81%)が得られた。MSm/z464.2(M+1);H−NMR(400MHz、CDCl):δ8.05(m、1H)、7.93(m、1H),7.85(br s、1H),7.41(m,1H),7.13(m,1H),7.11(s,1H),6.92(m,1H),6.03(s,1H),4.58(m,1H),3.92(m,0.5H),3.75(m,0.5H),3.38−3.13(m,2H),2.94(m,3H),2.35−2.15(m,2H),2.04(m,3H),2.01−1.85(m,4H),1.83(m,1H)。
【0264】
【化5】

0.3mLのNMPに溶解した2−クロロキノリン5(20mg、0.0425mg)およびN−メチルベンジルアミン(0.1275mmol、3当量)を120oCで12時間加熱した。LC−MS分析によって反応は完了したことが示された。次に、この反応混合物を1mLのDMSO/CHCN(3:1)に溶解し、調製的LCで精製したところ、NGD−6073が得られた。MSm/z549.3(M+1)。
【0265】
0.3mLのNMPに溶解した2−クロロキノリン5(20mg、0.0425mg)および3′−フルオロベンジルアミン(0.1275mmol、3当量)を120oCで12時間加熱した。LC−MS分析によって反応は完了したことが示された。次に、この反応混合物を1mLのDMSO/CHCN(3:1)に溶解し、調製的LCで精製したところ、NGD−6367が得られた。MSm/z553.3(M+1)。
【0266】
0.3mLのNMPに溶解した2−クロロキノリン5(20mg、0.0425mg)および4′−クロロベンジルアミン(0.1275mmol、3当量)を120oCで12時間加熱した。LC−MS分析によって反応は完了したことが示された。次に、この反応混合物を1mLのDMSO/CHCN(3:1)に溶解し、調製的LCで精製したところ、NGD−6371が得られた。MSm/z569.2(M+1)。
【0267】
0.3mLのNMPに溶解した2−クロロキノリン5(20mg、0.0425mg)および4′−トリフルオロメチルベンジルアミン(0.1275mmol、3当量)を120oCで12時間加熱した。LC−MS分析によって反応は完了したことが示された。次に、この反応混合物を1mLのDMSO/CHCN(3:1)に溶解し、調製的LCで精製したところ、NGD−6380が得られた。MSm/z603.3(M+1)。
【0268】
0.3mLのNMPに溶解した2−クロロキノリン5(20mg、0.0425mg)および2−メチルフェネチルアミン(0.1275mmol、3当量)を120oCで12時間加熱した。LC−MS分析によって反応は完了したことが示された。次に、この反応混合物を1mLのDMSO/CHCN(3:1)に溶解し、調製的LCで精製したところ、NGD−6390が得られた。MSm/z563.2(M+1)。
【0269】
0.3mLのNMPに溶解した2−クロロキノリン5(20mg、0.0425mg)およびN−エチルベンジルアミン(0.1275mmol、3当量)を120oCで12時間加熱した。LC−MS分析によって反応は完了したことが示された。次に、この反応混合物を1mLのDMSO/CHCN(3:1)に溶解し、調製的LCで精製したところ、NGD−6423が得られた。MSm/z563.2(M+1)。
【0270】
0.3mLのNMPに溶解した2−クロロキノリン5(20mg、0.0425mg)およびN−メチル−3‘,4’−ジクロロベンジルアミン(0.1275mmol、3当量)を120oCで12時間加熱した。LC−MS分析によって反応は完了したことが示された。次に、この反応混合物を1mLのDMSO/CHCN(3:1)に溶解し、調製的LCで精製したところ、NGD−6432が得られた。MSm/z617.2(M+1)。
【0271】
20mLのオキシフォスフォラスクロリドに溶解した6−イオド−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−キノリン−4−カルボン酸2(5.97g、18.93mmol)を100oCで4時間環流し、室温に冷却した。溶液を濃縮して乾燥させ、黄褐色固体を得た。次に、この固体を100mLのメチレンジクロリドに溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(20ml、100mmol)と、2−(S)−ピロルジニルメチルピロリジン(3.5g、22.7mmol)を0oCでその溶液にゆっくりと加えた。この混合物を室温で一晩攪拌した。この混合液を室温で一晩攪拌した。混合液を二塩化メチレン(200ml)で希釈し、水(2x40ml)と飽和NaHCO水溶液および食塩水にて洗浄した。
【0272】
【化6】

有機相はNaSO上で乾燥して濃縮し、未精製の生成物6(6.5g)を得た。LC−MSによって、この化合物は次工程に十分なほど純粋となっていたので、全く精製することなく直接用いた。MSm/z470.0(M+1)。
【0273】
【化7】

NMP(20mL)に溶解した2−クロロキノリン化合物6(3.12g、6.64mg)およびp−トリフルオロベンジルアミン(5.81g、33mmol)を120oCで36時間加熱した。LC−MS分析によって反応は完了したことが示された。次に、この反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(200ml)で希釈した。有機相を水と食塩水で洗浄しNaSO上で乾燥した。濃縮によって未精製生成物が得られた。この残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(EtN−CHCl−MeOH 2:95:5)で精製したところ所望の生成物7(3.2g)が得られた。MSm/z609.1(M+1)。
【0274】
【化8】

ビス(ピナコラト)ジボロン(279mg、1.1mmol)、KOAc(294、3.0mmol)、およびPdCl(dppf)(24.5mg、0.03mmol)を充填した25ml丸底フラスコに、DMSO(6ml)に溶解した6−イオドキノリン7(607mg、1.0mmol)を加えた。この混合物を、フラスコを真空とアルゴンに交互につなぐことによって徹底的にガス抜きした。次に、得られた混合物を80oCで一晩加熱し、EtOAc(40mL)で希釈し、セライトを通過させてろ過した。得られた生成物8を、濃縮後それ以上精製することなく次の工程に用いた。MSm/z609(M+1)。
【0275】
【化9】

アルゴン下、ジオキサン(2.0mL)に溶解した6−ボロネート8(15mg、0.025mmol)を、Pd(dppf)Cl(2mg)、CsCO(17mg、0.055mmol)、および3,4−エチレンジオキシイオドベンゼン(15mg、0.057mmol)を充填したフラスコに加えた。この混合物を、フラスコを真空とアルゴンに交互につなぐことによって徹底的にガス抜きした。得られた混合物を70oCで加熱し一晩攪拌した。室温に冷却後EtOAcで希釈した。固体を、セライト通過ろ過によって除去し、若干のEtOAcで洗浄した。有機相を濃縮して溶媒を除去した。得られた残渣を調製的LCによって精製したところ生成物9(NGD−6862)が得られた。MSm/z617(M+1)。
【0276】
前記NGD化合物の質量符号化混合物が、単に、NGD−6037、6367、6371、6380、6390、6423、6432およびNGD−6862を、下記の実験において要求される様々な濃度において混合することによって調製された。同じ混合物は、当業者であれば、混合による合成、または従来技術で既知の別法を用いて直接製造することが可能である。
【0277】
(実施例8:サンプルループ経由のSECからMSへのサンプル転送)
ヒト血清アルブミンを複数のリガンドと混合し、得られた混合液を、レセプター−リガンド複合体が平衡に達するのに十分な時間緩衝溶媒中でインキュベートする。混合液が平衡に達したならば、混合液をサイズ排除カラムに注入する。レセプター−リガンド複合体がサイズ排除カラムから溶出するにつれ、それら複合体はUV検出器によって検出される。検出と同時に、コンピュータによって駆動されるコントローラーは、2−位置6−ポート選択バルブに接続されるサンプルループがレセプター−リガンド混合液の代表サンプルによって満たされるのに十分な時間に較正されるタイマーをスタートさせる。サンプルループがレセプター-リガンド複合体で満たされたならば、コントローラーは、選択バルブのサンプルループの、レセプターリガンド複合体を負荷するための位置を、逆相液体クロマトグラフィー(RP−LC)装置の方に振り向ける。RP−LC通過中、レセプター−リガンド複合体は破壊され、レセプターをリガンドから解離する。RP−LCから溶出されると同時に、解離リガンドは質量分析器に転送されそこで特定される。
【0278】
本明細書で引用された参照文献は全て、それが印刷、電子、コンピュータの読み取り可能な保存媒体、またはその他のいずれの形式であるとを問わず、要約、論文、雑誌、公刊物、教科書、学位論文、インターネットウェブサイト、データベース、特許、および特許公報を含め、参照することによりその全体を本明細書に含めることを明言する。
【0279】
以上、本発明のいくつかの実施態様が説明された。しかしながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく各種改変を実行することが可能であることが理解されよう。従って、その他の実施態様も下記の特許請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】図1は、様々なKにおける、レセプター-リガンド複合体ESのリガンド回収対リガンド初期濃度[S]の理論的プロットを表すグラフである。
【図2】図2は、様々な活性レセプター初期濃度[E]における、レセプター-リガンド複合体ESのリガンド回収対リガンド初期濃度[S]の理論的プロットを表すグラフである。
【図3】図3は、10%ランダム誤差を含む理論的データにおける、レセプター-リガンド複合体のリガンド回収データ[ES]対リガンド濃度[S]の数学的適合である。
【図4】図4は、単一化合物Sおよび添加競合因子S間の競合における、レセプター-リガンド複合体ES対競合リガンド初期濃度[Sの理論的プロットを示す。
【図5】図5Aは、レセプター過剰条件下における、異なるKを持つ3種のリガンドの混合物に関するACE50シミュレーション実験を示す。実線は、全体1μM濃度における任意のリガンドの回収をしめす。破線は、0.33または3.0μMにおける回収を示す。図5Bは、図5Aに示したものと同様のACE50シミュレーションを示す。ただし、この実験では、レセプター濃度は、全体リガンド濃度(15μM)に対して制限的である(2μM)。
【図6】図6は、式(I)に対する解を示す。
【図7】図7は、3化合物混合物における、レセプター-リガンド複合体、対、競合リガンド初期濃度[Sの理論的プロットを示す。
【図8】図8は、3成分混合物について、レセプター-リガンド複合体ES、対、競合リガンド初期濃度[Sの理論的正規化プロットを示す。
【図9】図9は、アロステリック競合性滴定剤およびリガンドの信号応答(AS−MS実験から得られたもの)シミュレーションであり、滴定剤濃度を増加した場合の、滴定剤とリガンドの濃度比を示す。
【図10】図10は、Akt−1−NGD−28835およびAkt−1−スタウロスポリン複合体の、AS−MS測定濃度、および、滴定剤濃度を増加させた場合の、両者の濃度比を示す。漸近線に境界される比プロットはアロステリック結合であることを示す。
【図11A】図11Aは、スタウロスポリンと、質量符号化結合ライブラリーのスクリーニングによって発見されたリガンドの混合物との間の、ACE50実験で得られたAS−MS測定による滴定剤とリガンド反応の関係を示す。
【図11B】図11Bは、アロステリック競合を示す、(C)のデータに基づく滴定剤-リガンド回収比を示す。
【図11C】図11C−Dは、それぞれ、M−1および(A)と(B)のリガンド混合物の間のACE50実験で得られた、AS−MS測定によるタンパク-リガンド複合体濃度と比のプロットを示す。プールメンバーとM−1の間には、スタウロスポリンにおける結果とは対照的に、オルソステリック結合競合が観察される。
【図11D】図11C−Dは、それぞれ、M−1および(A)と(B)のリガンド混合物の間のACE50実験で得られた、AS−MS測定によるタンパク-リガンド複合体濃度と比のプロットを示す。プールメンバーとM−1の間には、スタウロスポリンにおける結果とは対照的に、オルソステリック結合競合が観察される。
【図12A】図12A−Dは、ATP濃度を増した場合の、スタウロスポリンとM−1によるAkt−1生化学活性の抑制を示すグラフである。12Aと12Bは、スタウロスポリンの結果を示し、スタウロスポリンとATPの間に競合的結合のあることを示す。12Cと12Dは、M−1の結果であって、M−1とATPの間には、混合型の、非競合的結合のあることを示す。注記:スタウロスポリンはナノモル濃度軸に対してプロットされ、M−1は、マイクロモル軸に対してプロットされている。
【図12B】図12A−Dは、ATP濃度を増した場合の、スタウロスポリンとM−1によるAkt−1生化学活性の抑制を示すグラフである。12Aと12Bは、スタウロスポリンの結果を示し、スタウロスポリンとATPの間に競合的結合のあることを示す。12Cと12Dは、M−1の結果であって、M−1とATPの間には、混合型の、非競合的結合のあることを示す。注記:スタウロスポリンはナノモル濃度軸に対してプロットされ、M−1は、マイクロモル軸に対してプロットされている。
【図12C】図12A−Dは、ATP濃度を増した場合の、スタウロスポリンとM−1によるAkt−1生化学活性の抑制を示すグラフである。12Aと12Bは、スタウロスポリンの結果を示し、スタウロスポリンとATPの間に競合的結合のあることを示す。12Cと12Dは、M−1の結果であって、M−1とATPの間には、混合型の、非競合的結合のあることを示す。注記:スタウロスポリンはナノモル濃度軸に対してプロットされ、M−1は、マイクロモル軸に対してプロットされている。
【図12D】図12A−Dは、ATP濃度を増した場合の、スタウロスポリンとM−1によるAkt−1生化学活性の抑制を示すグラフである。12Aと12Bは、スタウロスポリンの結果を示し、スタウロスポリンとATPの間に競合的結合のあることを示す。12Cと12Dは、M−1の結果であって、M−1とATPの間には、混合型の、非競合的結合のあることを示す。注記:スタウロスポリンはナノモル濃度軸に対してプロットされ、M−1は、マイクロモル軸に対してプロットされている。
【図13】図13A−Bは、ムスカリン性アセチルコリンレセプターMに対する対アトロピン結合競合において、リガンドプールの親和度ランキング、および競合モードの決定を示すグラフである。13Aは、ACE50実験結果のログプロットであり、NGD−3350が、同種化合物NGD−3348およびNGD−3346や、他のプール成分よりも高い親和度を持つことを示す。13Bは、滴定剤-リガンド反応比の直線性プロットであり、アトロピンとプール成分の間にはオルソステリック競合のあることを示す。
【図14】図14は、ゼロ時点において、E+S平衡液の1:1希釈液を、高濃度のインヒビターIと共に、会合速度ki1をゼロから0.1μM−1−1(0−>10−1−1)まで変えながら添加した場合の[ES]に及ぼす作用を表す数学的モデルである。理論的分解曲線[ES]−ks2tを(E)に示す。
【図15】図15は、ゼロ時点において、E+S平衡液の1:1希釈液を、高濃度のインヒビターIと共に、会合速度ki1をゼロから0.1μM−1−1(0−>10−1−1)まで変えながら添加した場合の[ES]に及ぼす作用を表すログプロット数学的モデルである。理論的分解曲線[ES]s2t(勾配=ks2)を(E)に示す。
【図16】図16は、ゼロ時点において、E+S平衡液の1:1希釈液を、高濃度のインヒビターIと共に添加した場合の[ES]に及ぼす作用を表す数学的モデルである。ks2は1から0.001秒−1まで変動する。理論的分解曲線[ES]s2t(勾配=ks2)を(E)に示す。
【図17】図17は、ゼロ時点において、E+S平衡液の1:1希釈液を、高濃度のインヒビターI、inh(I)と共に添加した場合の[ES]に及ぼす作用を表す数学的モデルである。モデルとしたks2=0.01秒−1(A)。ks2=0.01±0.001秒−1の場合の理論的分解曲線(E)。
【図18】図18は、レセプター過剰からレセプター制限状態下で、レセプター濃度[E]の関数として表した、E+Si+Svの平衡液におけるレセプター-リガンド複合体[ES]および[ES]の、アフィニティー選択質量分析反応および比のシミュレーションを示す。
【図19】図19は、レセプター-リガンド複合体のリガンドの辿る経路を示すフローダイアグラムである。
【図20】図20A−20Bは、2つの異なる位置、20Aおよび20Bにある複数ポートバルブを示す。
【図21】図21は、4回の連続サンプル注入に対する波長230nmにおけるUVデータを示す。
【図22A】図22A−22Fは、複数ポートバルブのピークカット遅延時間変更の作用を示す。
【図22B】図22A−22Fは、複数ポートバルブのピークカット遅延時間変更の作用を示す。
【図22C】図22A−22Fは、複数ポートバルブのピークカット遅延時間変更の作用を示す。
【図22D】図22A−22Fは、複数ポートバルブのピークカット遅延時間変更の作用を示す。
【図22E】図22A−22Fは、複数ポートバルブのピークカット遅延時間変更の作用を示す。
【図22F】図22A−22Fは、複数ポートバルブのピークカット遅延時間変更の作用を示す。
【図23】図23は、ヒト血清アルブミン+ワルファリンにおいて、レセプター-リガンド複合体[ES]リガンド回収データ、対、リガンド初期濃度[S]の関係を表す数学的適合線である。
【図24】図24は、5成分混合物対ブタ・ムスカリン性レセプターにおける、レセプター-リガンド複合体ESの正規化数値、対、競合リガンド(アトロピン)初期濃度[Sのプロット、およびそれから得られたACE50値を示す。
【図25】図25は、5成分混合物から選ばれた2個のリガンドにおける、レセプター-リガンド複合体ESの正規化数値、対、競合リガンド(アトロピン)初期濃度[Sのプロット、およびそれらリガンドのK値を示す。
【図26】図26は、Zap−70の複合体、すなわち、Zap−70−NGD−746およびZap−70−NGD−6380のkと半減期を与えるグラフによる解法を示す。
【図27】図27は、Zap−70のリガンド混合物との複合体のkと半減期を与えるグラフによる解法を示す。
【図28】図28は、最適化ライブラリーから得られたレセプター-リガンド複合体のアフィニティー選択質量分析反応の正規化数値、対、競合リガンド全体のプロットを示す。スタウロスポリン濃度、および誘導ACE50およびK値も掲げる。スタウロスポリンK=100nM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レセプターE、リガンドS、および、レセプター−リガンド結合対ESを含む複数の混合物においてリガンドに対するレセプターの結合親和性を分析する方法であって、該方法は、
(a)複数の混合物を提供する工程であって、各混合物は、レセプター[E]、リガンド[S、および滴定剤Tを含み、TのSと置き換わる相対的活性が定量され得るようにE、S、Tのうちの1つ以上の濃度が選択される、工程;
(b)該複数の混合物のそれぞれが平衡に到達することを可能にする工程;
(c)該複数の混合物のそれぞれについて、未結合リガンドSから、レセプター−リガンド結合対ESを分離する工程;
(d)該複数の混合物のそれぞれにおいて、分析装置からの、レセプター−リガンド結合対ESの信号応答を測定する工程;ならびに
(e)工程(d)に由来するレセプター−リガンド結合対ESの信号応答を評価して、リガンドSのレセプターEに対する結合親和性を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
各混合物は、[E]および[Sに対するTの濃度が、SiのTと置き換わる相対的活性の比較を可能にするように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、複数の混合物を提供する工程を包含し、各混合物は、レセプターの初期濃度[E]、リガンドの初期濃度[S、および既知濃度の滴定剤を含み、該複数の混合物のそれぞれにわたって、[E]および[Sは一定であり、該[Sは、該複数の混合物それぞれにおいてほぼ同じであり、該滴定剤の濃度は、該複数の混合物において変動される、方法。
【請求項4】
前記複数の混合物はそれぞれ、複数のリガンドS、および複数のレセプター−リガンド結合対ESを含み、前記信号応答は、レセプター−リガンド結合対ESiのうちの少なくとも2つについて測定され、レセプター−リガンド結合対ESの相対的結合性が決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のリガンドSのうちの少なくとも約90%は、一意的な分子量を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各混合物は、[E]および[Sに対するTの濃度が、第1リガンドSの結合親和性が、第2リガンドSの結合親和性と比較されて、Eに対するSとEに対するSとの相対的結合親和性の測定を提供するように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記結合親和性は、相対的結合平衡定数Kdiである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、工程(e)は、ACE50を算出することを包含し、該ACE50は、滴定剤濃度が0のときにレセプター−リガンド対の信号応答がその値の50%に到達する滴定剤濃度である、方法。
【請求項9】
複数のリガンドの相対的Kは、最低のACE50値を有するリガンドが、リガンド混合物のうちで最高のKを有し、かつ最高のACE50値を有するリガンドが、リガンド混合物のうちで最低のKを有するように決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、工程(e)は、以下の式(I)の等式:
【数1】

または式(I)に由来する等式に対する前記滴定剤の関数として、前記複数の混合物のそれぞれにおける前記レセプター−リガンド結合対の濃度[ES]の変化をフィッティングすることによって、該複数の混合物における該レセプター−リガンド結合対ESのKdiを算出することを包含する、方法。
【請求項11】
前記複数のリガンドSの相対的Kdiが決定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記レセプターの初期濃度[E]は既知であり、前記リガンドの初期濃度[Sは既知である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記レセプターの濃度[E]は、前記リガンドの濃度[Sの合計よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記レセプターEに結合するリガンドSが、競合的な様式、アロステリックな様式、または非競合的な様式で結合するのかどうかを決定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項15】
レセプター−リガンド対ESが、前記複数の混合物のそれぞれにおいて比較的一定の信号応答を維持している場合、前記リガンドSは、レセプターEに対して非競合的な様式で結合していること、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、前記レセプター−滴定剤対の応答に対するレセプター−リガンド対ESの信号応答 対 前記複数の混合物についての前記滴定剤の濃度の比の変化を測定する工程を包含し、ここで、該複数の混合物のそれぞれについての該比が該滴定剤濃度と直線関係を有する場合、前記リガンドSは前記レセプターに対して競合的な様式で結合し、そして該複数の混合物のそれぞれについての該比が直線関係でない場合、該リガンドSは前記レセプターに対してアロステリックな様式で結合する、方法。
【請求項17】
前記レセプターは生体分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記レセプターはポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記レセプターは酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記レセプターは核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記リガンドは有機分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記リガンドはポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記複数の混合物は、レセプター−リガンド結合対ES、結合していないレセプター、および結合していないリガンドの平衡に達する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
液体クロマトグラフィーを使用する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記レセプターが結合したリガンドは、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して前記複数の混合物のそれぞれから分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記レセプターが結合したリガンドは、限外ろ過を使用して前記複数の混合物のそれぞれから分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記信号応答は質量分析法を使用して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記レセプター−リガンド結合対ESを分断する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記レセプター−リガンド結合対ESの信号応答は、前記複数の混合物のそれぞれにおいて、該レセプター−リガンド結合対ESにおけるリガンドSの相対量を測定することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記リガンドSの相対量は、質量分析器からの信号応答を評価することによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
レセプター−リガンド結合対の平衡解離定数Kを決定する方法であって、該方法は、以下:
(a)レセプター−リガンド結合対のリガンドに対して較正された質量分析器を提供する工程;
(b)複数の混合物を提供する工程であって、各混合物は、レセプター[E]およびリガンド[S]を含み、1つ以上のEおよびSの濃度は、Eに対するSの結合親和性が決定され得るように選択される、工程;
(c)該複数の混合物のそれぞれを、結合したレセプター−リガンド結合対ES、結合していないレセプター、および結合していないリガンドの平衡に達することを可能にする工程;
(d)該複数の混合物のそれぞれから該レセプターに結合したリガンドを分離する工程;
(e)該複数の混合物のそれぞれにおけるレセプター−リガンド結合対について、質量分析器からの信号応答を測定する工程;ならびに
(f)工程a〜eにおける既知の情報、測定した情報、または取得した情報を使用して、該複数の混合物それぞれについて、レセプター−リガンド対の濃度[ES]および初期の既知のリガンド濃度[S]を、式(I)の等式:
【数2】

にフィッティングして、該レセプター−リガンド結合対のKを得る工程
を包含する、方法。
【請求項32】
前記複数の混合物のそれぞれは、レセプターの初期濃度[E]、および、リガンドの既知の初期濃度[S]を含み、[E]は、該複数の混合物のそれぞれにおいて同じであり、[S]は該複数の混合物のそれぞれにおいて変化される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記工程(b)の混合物における前記レセプター初期濃度[E]を測定する工程をさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記レセプターは生体分子である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記レセプターはポリペプチドである、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記レセプターは酵素である、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記レセプターは核酸である、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記リガンドは有機分子である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記リガンドはポリペプチドである、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記複数の混合物は、レセプター−リガンド結合対、結合していないレセプター、および結合していないリガンドの平衡に達する、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
前記レセプターが結合したリガンドは、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して混合物から分離される、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
液体クロマトグラフィーを使用する工程をさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記レセプター−リガンド結合対ESを分断する工程をさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記レセプター−リガンド結合対の濃度[ES]は、前記複数の混合物それぞれにおいて、該レセプター−リガンド結合対ESにおけるリガンドの量を測定することによって、工程(e)で決定される、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
レセプター−リガンド結合対の結合速度論を分析する方法であって、該方法は、以下:
(a)レセプター[E]、およびリガンド[Sを含む混合物を提供する工程;
(b)該混合物を、レセプター[E]、リガンド[S]、およびレセプター−リガンド結合対[ES]の平衡に達することを可能にする工程;
(c)該混合物を、過剰な競合的インヒビターIで処理する工程;
(d)複数の時点において該レセプター−リガンド結合対の減少を、以下:
(i)該結合していないリガンドから該レセプターリガンド結合対を分離すること;および
(ii)該複数の時点のそれぞれに対して、該レセプター−リガンド結合対の信号応答を分析装置を用いて測定すること
によって測定する工程;ならびに
(e)工程(a)〜(d)からの既知の情報、測定した情報、または取得した情報を使用して、該レセプター−リガンド結合対の結合速度論を評価する工程
を包含する、方法。
【請求項46】
前記レセプター−リガンド結合対の信号応答は、分析装置を用いて測定される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記工程(a)の混合物は、複数のリガンドSを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記複数のリガンドSのうちの少なくとも90%は一意的な分子量を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記結合速度論は、工程(a)〜(d)からの既知の情報、測定した情報、または取得した情報を使用して、前記レセプター−リガンド結合対の信号応答の経時的変化を式(XVIII)の等式:
【数3】

またはその導関数に対してフィッティングすることによって、該レセプター−リガンド結合対の解離速度ks2を算出して評価される、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
請求項45に記載の方法であって、非競合的な様式で結合するリガンドを同定する工程を包含し、リガンド−レセプター結合対が、前記複数時点のそれぞれにおいて比較的一定の濃度を維持する場合、該リガンドは前記レセプターに対して非競合的に結合している、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記複数のリガンドSのうちの少なくとも2つの結合速度論が比較される、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記レセプターは生体分子である、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
前記レセプターはポリペプチドである、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
前記レセプターは酵素である、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
前記レセプターは核酸である、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
前記リガンドは有機分子である、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
前記リガンドはポリペプチドである、請求項45に記載の方法。
【請求項58】
前記競合的インヒビターは有機分子である、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
前記競合的インヒビターはポリペプチドである、請求項45に記載の方法。
【請求項60】
前記レセプターが結合した結合リガンドを液体クロマトグラフィーに供する工程をさらに包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項61】
前記レセプターが結合したリガンドは、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して結合してないリガンドから分離される、請求項45に記載の方法。
【請求項62】
前記信号応答は、質量分析法を使用して決定される、請求項45に記載の方法。
【請求項63】
前記レセプター−リガンド結合対を分断する工程をさらに包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項64】
前記レセプター−リガンド結合対の信号応答は、該レセプター−リガンド結合対におけるリガンドの相対量を測定することによって決定される、請求項45に記載の方法。
【請求項65】
前記レセプター−リガンド結合対の半減期t1/2を決定する工程をさらに包含する、請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図22E】
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【図22F】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2006−519998(P2006−519998A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507058(P2006−507058)
【出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/007364
【国際公開番号】WO2004/081531
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】