リガンド様活性を有する分子の検出方法
【課題】AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法等を提供すること。
【解決手段】AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法であって、(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、および(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるAGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法。
【解決手段】AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法であって、(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、および(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるAGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AGEsまたはOxLDL等のリガンド様活性の新規検出技術および生活習慣病危険因子などの検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レクチン様酸化低密度リポタンパク質(LDL)受容体1(Lectin−like Oxidized LDL receptor:本明細書中以降、LOX−1ともいう)は、アテローム発生の原因となる酸化LDL(本明細書中以降、OxLDLともいう)のような変性LDLに対する特有のスカベンジャー受容体であり、1997年に、培養ウシ大動脈内皮細胞において初めて同定された。LOX−1は、他のスカベンジャー受容体と機能的には類似しているにもかかわらず、構造的には異なる独特の構造を有している。
【0003】
ウシLOX−1(bLOX−1)は、C型レクチンファミリーに属する273アミノ酸残基からなる分子量約50kDaの糖タンパク質であり、N末端が細胞質内にあり、C末端が細胞外に出ている細胞膜1回貫通型のII型膜タンパク質である。ヒトLOX−1(hLOX−1)はまた、C型レクチンファミリーに属する273アミノ酸残基からなる約30kDa(139位および183位の糖鎖付加により、分子量約40kDa)のII型膜タンパク質である。この受容体は、構造的には、以下の4つのドメイン:N末端側の細胞質ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン、ネックドメイン、およびC型レクチン様ドメイン(本明細書中以降、CTLDという)からなる。このCTLDは、種間で、特に、6個のシステイン残基の位置で高度に保存されており、LOX−1のリガンドを認識するための機能的ドメインである。このCTLD中の6個のシステイン残基は、hLOX−1の分子内ジスルフィド結合に関与している。この保存されたCTLDに加えて、hLOX−1および他の既知の種におけるネックドメインは、高い配列同一性を有している。また、Xieら(非特許文献1:Protein Expression and Prification 32:68−74(2003))によれば、CTLDが変性LDLを結合するのに十分な最小ドメインであり、たとえCTLDがグリコシル化されていなくても、変性LDLを認識および結合できることが明らかにされた。
【0004】
これまでの研究により、LOX−1は、血管内皮細胞のみならず、マクロファージおよび活性化血管平滑筋細胞において発現されており、構造的に関連性のない種々の高分子(変性LDL、細菌、老化赤血球、アポトーシスを受けた細胞、および血小板があげられる)を認識し、生体防御機構や炎症性機転などの種々の生命現象において重要な役割を果たしていること、そしてその発現は種々の条件下で、高脂血症、糖尿病、高血糖、高血圧症、高血圧性腎硬化症、動脈硬化、虚血再灌流傷害、血管バルーン傷害後のような病態;ならびに酸化LDL、アンジオテンシンII、エンドセリン、TNF−α、後期糖化反応生成物(AGE)、TGF−β、8−イソ−プロスタグランジンF2α、ズリ応力のような刺激によって、調節されていることが分かっている(非特許文献2:Folia Pharmacol.Jpn. 127,103−107(2006))。
【0005】
変性LDL測定に関しては、疾病の早期診断、機能性食品の予防効果評価、生活改善や投薬による治療効果の評価など様々な分野での活用が期待されている。これまで、ヒト血漿中の動脈硬化危険因子である変性LDLの測定には、モノクローナル抗体が用いられてきたが、特に変性LDLは分子の修飾構造は一定ではなく、意味のある分子種が明確でないなどの理由で、モノクローナル抗体による検出にも問題が多い。
【0006】
後期糖化反応生成物(Advanced Glycation End Products:本明細書中以降、AGEという)は、糖尿病患者の生活の質を損ねる元凶である血管合併症として知られる糖尿病性血管障害の発症・進展に関与している。血管合併症による眼、神経、腎臓の障害は、それぞれ糖尿病網膜症、神経症、腎症(あわせて三大合併症)とよばれており、糖尿病患者に特徴的な病態である。
【0007】
AGEを認識する受容体(Receptor for AGE:本明細書中以降、RAGEという)は、1992年に、ウシ肺から同定され、AGEと結合するイムノグロブリンスーパーファミリーに属する、分子量約35kDaのI型膜タンパク質(糖鎖修飾を受けた完全なRAGEは、分子量55kDa)である。RAGEの細胞外ドメインは、1つのV型イムノグロブリンドメイン、続いて、2つのC型イムノグロブリンドメイン(C1領域およびC2領域)の3つのイムノグロブリンフォールド構造を取るドメインが結合した構造を取っている。RAGEはまた、細胞膜1回貫通型のドメインおよび43アミノ酸の細胞内ドメインを含む。RAGEは、多様なクラスのリガンド(AGE、S100/カルグラニュリン(calgranμline)、アンホテリンおよびアミロイド−βペプチド(およびβ−シート原線維のクラス))と相互作用する。Vドメインは、リガンド結合に必須の部位であり、細胞内ドメインは、RAGE媒介性細胞内シグナル伝達に必須であることが示された(非特許文献3:Circ Res.2003;93:1159−1169)。
【0008】
RAGEは、正常組織および血管系においては低レベルでしか発現されない。しかし、この受容体は、そのリガンドが蓄積した場所においてアップレギュレートされる。例えば、糖尿病患者の血管では、RAGEの代表的リガンドとしては、以下のAGE構造体が挙げられる:(カルボキシメチル)リジン−タンパク質付加物(インビボで存在する主なAGE)、カルボキシエチル−リジン(CEL)タンパク質付加物、ペントシジン−付加物(コラーゲンおよび基底膜の不安定化に関連した糖尿病組織において見いだされる主要なAGE架橋物質)、ピラリン、イミダゾロン、メチルグリオキサール(他の範囲のAGEの形成の前駆体)、クロスリン、フルオロリンク、プロピリジン、アルグピリミジン、ベスパーリジン、グリオキサール誘導リジンダイマー、デオキシグルコサミン誘導リジンダイマーなど。RAGEの発現は、糖尿病血管系において内皮細胞、平滑筋細胞、および浸潤性単核食細胞で増加している。AGE−RAGE相互作用は、血管系ホメオスタシスにおいて重要な細胞の特性を変化させる。例えば、RAGEがAGEと結合した後、内皮細胞は、VCAM−1、組織因子、およびIL−6の発現、ならびに高分子へのそれらの透過性を増加させる。単核食細胞において、RAGEは、サイトカインおよび増殖因子の発現を活性化し、可溶性AGEに応じて細胞移動を誘導するのに対して、走触性は、固定リガンドで起こる(非特許文献4:J.Clin.Invest.108:949−955(2001))。
【0009】
本発明者らは、これまでに、LOX−1変異体−界面活性剤複合体およびRAGE変異体−界面活性剤複合体、ならびにこれらを用いて生活習慣病危険因子などを検出する方法を出願した(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−320489号公報
【特許文献2】特開2002−181820号公報
【特許文献3】特開2003−36499号公報
【特許文献4】特開2003−238404号公報
【特許文献5】特開2003−125786号公報
【特許文献6】特開2002−17353号公報
【特許文献7】特開2009−108037号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Protein Expression and Prification 32:68−74(2003)
【非特許文献2】Folia Pharmacol.Jpn. 127,103−107(2006)
【非特許文献3】Circ Res.2003;93:1159−1169
【非特許文献4】J.Clin.Invest.108:949−955(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らが提出した特許文献7では、特異的分子を用いていることから、その反応特異性に依拠せざるを得ず、OxLDL様分子およびRAGE分子について網羅的な検出ができないという点があり、これを克服することが困難であった。したがって、病変の検出においても、偽陰性の可能性を極小化できないと考えられることから、これを克服することを1つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明では、本発明者らは、OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法またはAGEs様活性を示す分子の検出または定量方法として、固相に固定されたRAGE143またはその改変体あるいは固相に固定されたCTLD14またはその改変体の存在下で、サンプルに標識したAGEまたは標識したOxLDLを接触させる工程を利用することによって、網羅的検出または定量を可能にした。
【0014】
したがって、本発明は、以下を提供する。
(1)AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法であって、
(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるAGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法。
(2)糖尿病性腎症の予備的な検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法。
(3)糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる糖尿病に罹患した被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法。
(4)糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該固定化されたAGEもしくはその改変体に対する該RAGE分子または該AGEもしくはその改変体のリガンドの結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、工程を包含する、方法。
(5)前記RAGE分子は、RAGE143、RAGE1、RAGE223、RAGE226またはその改変体である、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(6)前記AGE分子は、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体である、項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(7)OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法であって、
(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたCTLD分子の存在下で標識した変性LDLに接触させるか、または固相に固定された変性LDLの存在下で、標識したCTLD分子に接触させる工程、
および
(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法。
(8)前記CTLD分子は、CTLD14、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長、CTLDまたはそれらの改変体である、項目7に記載の方法。
(9)前記変性LDLは、酸化LDL(OxLDL)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL、糖化LDL、アセチル化LDLまたはその改変体である、項目7または8に記載の方法。
(10)AGEs様活性を示す分子の検出または定量のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する手段
を備え、該結合の阻害の存否またはレベルは、AGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、キット。
(11)糖尿病性腎症の予備的な診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該RAGE分子の結合を検出する手段
を備え
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、キット。
(12)糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段
を備え、
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、キット。
(13)糖尿病または糖尿病性腎症の診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段
を備え、
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、キット。
(14)前記RAGE分子は、RAGE143、RAGE1、RAGE223、RAGE226またはその改変体である、項目10〜13のいずれか1項に記載のキット。
(15)前記AGE分子は、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体である、項目10〜14のいずれか1項に記載のキット。
(16)OxLDL様活性を示す分子の検出または定量のためのキットであって、
(A)固定されたCTLD分子を有する固相および標識した変性LDL、または固定された変性LDLを有する固相および標識したCTLD分子;および
(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する手段
を備え、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、キット。
(17)前記CTLD分子は、CTLD14、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長、CTLDまたはその改変体である、項目16に記載のキット。
(18)前記変性LDLは、酸化LDL(OxLDL)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL、糖化LDL、アセチル化LDLまたはその改変体である、項目16または17に記載のキット。
(19)AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病性腎症の予備的な診断マーカー。
(20)AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断マーカー。
(21)AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病または糖尿病性腎症の診断マーカー。
(22)糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用。
(23)糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用。
(24)糖尿病または糖尿病性腎症の診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、使用。
【0015】
本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のCTLD分子を用いたアッセイによって、簡便性は顕著に上がっているといえる。従来の手法が、試料添加後に3段階も別の反応を行う必要があったのが、反応は試料添加の1段階のみであって、従来の手法のように強酸などの劇薬は一切使用しないという点で安全なアッセイが提供されたとも言える。
【0017】
また、CTLD分子を用いたアッセイによって、網羅性に関しても顕著な効果が発揮された。すなわち、変性LDLとは構造が異なる分子でCTLD14に認識されることが示されている分子(機能は明確ではないがHsp:分子シャペロンであるheat shock protein等)にまで拡張された。また従来の手法では捕捉できなかった分子も検出可能になり、網羅性は改善された。加えて、結合は弱いものの、 AGEsもCTLD14のリガンドとして認識することができる。従来の手法では、全く別の抗体(しかも特異性が低い)を準備して別個に反応を行う必要があった、本発明の手法では変性LDLと同時にリガンド様活性を示す分子として検出可能でとなった。
【0018】
本発明のRAGE分子を用いたアッセイでも顕著な効果を奏することがわかった。変性LDLおよび血糖値の管理に使われているヘモグロビン・エー・ワン・シー(HbA1c)についても、RAGEは認識するものの、R−AGEなどのAGEs(後期糖化反応生成物)と構造が異なることから、従来の手法では同時検出は困難であった。本発明の手法では、リガンド様活性を示す分子として同時に検出が可能となった。また、Lys−AGEのような低分子リガンドも同時に検出可能となったことから、網羅性についても、本発明のRAGE分子を用いたアッセイでは改善されているといえる。
【0019】
血糖値上昇の後にAGE様分子が上がり、その後飲水量が増加することから、飲水量が増加することが一つの糖尿病性腎症の指標であることから、「予測診断」が可能といえる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、RAGEを固定化した96穴プレートを用いて、クエルセチンを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図2】図2は、RAGEを固定化した96穴プレートを用いて、LOX−1阻害剤のモデルとしてOxLDLを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図3】図3は、RAGEを固定化した96穴プレートを用いて、LOX−1阻害剤のモデルとしてG−AGEを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図4】図4は、RAGEを固定化した96穴プレートを用いて、LOX−1阻害剤のモデルとしてR−AGEを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図5】図5に蛍光標識モデルリガンドとして水溶性色素Alexa546でラベルしたR−AGEを使用して行ったコントロール実験を示す。図5左に使用した細胞の位相差像を示し、図5中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図5右にリガンドを結合した細胞像を示す。図5右にある白い点が結合したリガンドである。
【図6】図6に図5と同様の順で行った実験の、クエルセチンの添加の場合の写真を示す。図6左に使用した細胞の位相差像を示し、図6中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図6右にリガンドに加えクエルセチンを加えた細胞像を示す。図6右に示すように、クエルセチン添加によりリガンドの結合が阻害されることが細胞における高感度観察で確認された。
【図7】図7は、図5と同様の順で、R−AGEの添加の場合の写真を示す。図7左に使用した細胞の位相差像を示し、図7中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図7右にリガンドに加えR−AGEを加えた細胞像を示す。図7右に示されるように、R−AGE添加によるリガンド結合の阻害を示す蛍光像が示される。
【図8】図8は、LOX−1を固定化した96穴プレートを用いて、クエルセチンを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図9】図9は、LOX−1を固定化した96穴プレートを用いて、OxLDLを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図10】図10は、LOX−1を固定化した96穴プレートを用いて、AcLDLを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図11】図11は、OxLDLを固定化した96穴プレートを用いて、OxLDLを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図12】図12は、OxLDLを固定化した96穴プレートを用いて、クエルセチンを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図13】図13は、CTLD分子としてCTLD14を固定した96穴プレートを用いて、変性LDLの例としてOxLDLを標識した例を用いてクエルセチンを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.5μg/アッセイ、2.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図14】図14は、LOX−1を蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現させた細胞を用い、OxLDLをコントロールリガンドとして用いたコントロール実験を示す。図14左に使用した細胞の位相差像を示し、図14中央にLOX−1(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図14右にリガンドを結合した細胞像を示す。図14右にある白い点が結合したリガンドである。
【図15】図15は、図14と同様の順で、クエルセチンを添加した場合の写真を示す。図15左に使用した細胞の位相差像を示し、図15中央にLOX−1(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図15右にリガンドに加えクエルセチンを加えた細胞像を示す。図15右に示すように、クエルセチン添加によりリガンドの結合が阻害されることが細胞における高感度観察で確認された。
【図16】図16は、実施例7において、高コレステロール・クリントン−シブルスキー齧歯類飼料、もしくは、正常食を与えたマウスの血清脂質濃度の測定結果を示す。総コレステロール量、HDLコレステロール量、LDLコレステロール量を比色定量法(和光純薬、大阪、日本)により測定した結果を示す。高コレステロール食群では、総コレステロール値がコントロール群に比べて有意に高く(図16−A)、さらに、コレステロールの中でもHDLコレステロール値には大きな差がない(図16−B,コントロール群 (69.7±3.4 mg/dl)vs. 高コレステロール食群(65.4±2.4 mg/dl))が、LDLコレステロール値では、コントロール群(47.5±4.0 mg/dl) vs.高コレステロール食群(112.9±4.9 mg/dl)と有意に高いことが確認され(図16−C)、高コレステロール食群では、高脂血症を発症していることが確認された。このことから、本実施例に用いた抗コレステロール食マウスは、高脂血症モデルマウスとして活用可能なことが示された。*は、正常食(コントロール食)に対する統計学的有意を示す(P<0.05)。
【図17】図17は、高脂血症モデルマウス(高コレステロール食群)と健常群マウス(コントロール)由来の血清のDiI標識AcLDLのLOX−1固定化プレートへの結合阻害活性を測定した結果である。高脂血症モデルマウス由来の血清は、30%の阻害活性を示したが、健常群由来の血清では、12%阻害に過ぎず、有意水準(P<0.05)で統計学的に有意な阻害活性が認められた(リガンド様活性を示す分子が存在することが示された)。LDLに関しても、高脂血症モデルマウス由来のLDLは、13%の阻害活性を示したが、健常群由来のLDLでは、3%阻害に過ぎず、有意水準(P<0.05)で統計学的に有意な阻害活性が認められた。*は、正常食(コントロール食)に対する統計学的有意を示す(P<0.05)。
【図18】図18は、高脂血症モデルマウス、ならびに、健常マウス由来のLDL中に、LDLの酸化に伴い生じる酸化LDL(リガンド活性を示す分子)に特徴的な構造である4−ヒドロキシ−2−ノネナール(HNE)が生成していることを抗HNEモノクローナル抗体との反応性により比色定量した結果である。健常マウス由来のLDLは、ほとんど反応しないが(OD≒0)、高脂血症モデルマウス由来のLDLは顕著な反応性を示し(OD=0.3)、有意水準(P<0.05)で統計学的に有意な差が認められた。このことから、高脂血症モデルマウス由来のLDLには、LOX−1のリガンド様活性を示す分子が統計学的に有意に存在していることが示され、図17において、示された阻害活性の結果と合わせて、本出願の手法により、リガンド様活性を示す分子が効率的に検出し得ることが示された。*は、正常食(コントロール食)に対する統計学的有意を示す(P<0.05)。
【図19】図19は、血糖値計による血糖値とグルコース測定キットによる血清中のグルコース濃度の相関を示すグラフである。
【図20】図20は、健常マウスとストレプトゾトシン投与により糖尿病を誘導させた糖尿病モデルマウスの血清中のグルコース濃度を測定した結果である。
【図21】図21は、血清中のグルコース濃度とクレアチン濃度の個体毎の相関を示す図である。
【図22】図22は、健常マウスとストレプトゾトシン投与により糖尿病を誘導させた糖尿病モデルマウスの血中クレアチン濃度を示す図である。本発明のRAGEのリガンド様活性を示す分子が検出された群において、後日、腎症発症の指標となる血中クレアチニン濃度が上昇することが確認された。
【図23】図23は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフのうち0日目のグラフである。
【図24】図24は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフのうち16日目のグラフである。
【図25】図25は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフのうち22日目のグラフである。
【図26】図26は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフのうち57日目のグラフである。
【図27】図27は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフのうち71日目のグラフである。
【図28】図28は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血清中のクレアチニン量」を経時的に測定し、個体毎の相関を示した71日目のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞または形容詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0022】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「受容体」とは、1個以上のリガンドと可逆的、かつ特異的に複合体化する1個以上の結合ドメインを備える生物学的な構造であって、ここで、この複合体化は生物学的な構造を有する。受容体は、完全に細胞の外部(細胞外の受容体)、細胞膜の中(しかし、受容体の部分を細胞外部の環境および細胞質ゾルに向けている)、または完全に細胞の中(細胞内の受容体)に存在し得る。これらはまた、細胞と独立的に機能し得る。細胞膜中の受容体は、細胞を、その境界の外部の空間と連絡(例えば、シグナル伝達)させ、そして細胞の内側および外側への分子およびイオンの輸送において機能させることを可能とする。本明細書において使用する場合、受容体は、受容体全長であっても、受容体のフラグメントであってもよい。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「レクチン様酸化低密度リポタンパク質(LDL)受容体1(Lectin−like Oxidized LDL receptor)」とは、LOX−1ともいわれ、(1)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号4に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(3)上記配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(5)配列番号3に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)上記配列番号3に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(7)上記配列番号3に示される核酸配列において1または数個のヌクレオチドの置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(8)上記配列番号3に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;および(9)上記配列番号3に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド、のうちの1つである。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。また、LOX−1としては、ヒトLOX−1(hLOX−1ともいう)、ウシLOX−1(b−LOX1ともいう)、ブタLOX−1、マウスLOX−1、ウサギLOX−1のような哺乳動物のLOX−1が挙げられるが、これらに限定されない。bLOX−1は、C型レクチンファミリーに属する273アミノ酸残基からなる分子量約50kDaの糖タンパク質であり、N末端が細胞質内にあり、C末端が細胞外に出ている細胞膜1回貫通型のII型膜タンパク質である。hLOX−1はまた、C型レクチンファミリーに属する273アミノ酸残基からなる約30kDaのII型膜タンパク質である。LOX−1は、構造的には、以下の4つのドメイン:N末端側の細胞質ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン、ネックドメイン、およびC型レクチン様ドメインからなる。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「C型レクチン様ドメイン」とは、「CTLD」ともいい、C型レクチンファミリーに属するメンバーの糖鎖認識部位と相同性を有する。CTLDは、このメンバー間で、種間で非常によく保存されており、6個のシステイン残基の位置は、完全に保存されている。また、CTLDは、LOX−1のリガンドを認識するための機能的ドメインであり、この中の6個のシステイン残基は、hLOX−1の3カ所の分子内ジスルフィド結合に関与している。従って、本発明の変異LOX−1−界面活性剤複合体は、配列番号4のアミノ酸配列において、144位、155位、172位、243位、256位、264位におけるシステインが保持されていることが好ましい。同様に、本発明のCTLD−界面活性剤複合体においても、配列番号4のアミノ酸配列における144位、155位、172位、243位、256位、264位におけるシステインに対応するアミノ酸が保持されていることが好ましい。この保存されたCTLDに加えて、hLOX−1および他の既知の種におけるネックドメインは、高い配列同一性を有している。また、hLOX−1における140位のシステインは、分子間ジスルフィド結合に関与し、hLOX−1の二量体を形成する。しかし、この140位のシステインは、変性LDLの認識に必須ではないので、発現された場合に、必ずしもこの140位のシステインが保持されている必要はなく、変異されていてもよい。さらに、hLOX−1では、183位のNと139位のNにおいて糖鎖が付加されている。糖鎖が付加されたhLOX−1の分子量は、50kDaである。通常hLOX−1はグリコシル化されているが、たとえグリコシル化されていなくても、グリコシル化された通常のhLOX−1と同様に、変性LDLを認識および結合できる。上記CTLDは、変性LDLを結合するのに必要十分な最小ドメインである。このLOX−1のC末端の4残基(LRAQ)は、リガンドの認識と取り込みに必須であり、C末端の7残基(KANLRAQ)がhLOX−1のフォールディングと輸送に必須である。hLOX−1のW150、R208、R229、R231、R248等がリガンド認識と取り込みに必須のアミノ酸である。LOX−1はまた、細胞膜から切断され、可溶性形態として放出され、健常者の血中にも存在することが報告されている。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「CTLD様ポリペプチド」とは、「CTLD」、「PR(Protease−Resistant(プロテアーゼ耐性))−CTLD」、「CTLD14」(CTLD+ネックドメインのC末端側の14アミノ酸を有するポリペプチド)、「PR−CTLD14」、「CTLD+ネック」(CTLD+ネックドメインを有するポリペプチド)、または「PR−CTLD+ネック」に包含される全てのポリペプチドまたはその変異体を包含する。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「CTLD分子」とは、CTLD様ポリペプチドの他、それらの任意の複合体を含むことが理解される。したがって、CTLD分子には、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長(S61〜Q273)、CTLD14(129−143)、CTLD(143−273)等も包含されることが理解される。
【0028】
本明細書において使用される場合、「複合体」とは、2以上の部分を含む任意の構成体を意味する。例えば、一方の部分がポリペプチドである場合は、他方の部分は、ポリペプチドであってもよく、それ以外の物質(例えば、糖、脂質、核酸、他の炭化水素等)であってもよい。本明細書において複合体を構成する2以上の部分は、共有結合で結合されていてもよくそれ以外の結合(例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力等)で結合されていてもよい。2以上の部分がポリペプチドの場合は、キメラポリペプチドとも称しうる。したがって、本明細書において「複合体」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子を含む。そのような複合体としては、例えば、糖脂質、糖ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書では、配列番号2のアミノ酸を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントであって、LOX−1に関する生物学的な活性を有する限り、それぞれの改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸分子も使用することができる。また、そのような核酸分子を含む複合体も使用することができる。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「CTLD」および「PR−CTLD」とは、代表的には、(1)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列において90位および107位以外のアミノ酸位置で1または数個の置換、付加および/または欠失を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(4)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(5)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)配列番号1に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号1に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)配列番号1に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列であって、該コードされるアミノ酸配列において90位および107位のアミノ酸は、配列番号2における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号1に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(10)上記配列番号1に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(11)上記配列番号1に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「CTLD14」および「PR−CTLD14」とは、(1)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号6に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号6に示されるアミノ酸配列において104位および121位以外のアミノ酸位置で1または数個の置換、付加および/または欠失を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(4)上記配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(5)上記配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)配列番号5に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号5に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)配列番号5に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列であって、該コードされるアミノ酸配列において104位および121位のアミノ酸は、配列番号6における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号5に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(10)上記配列番号5に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(11)上記配列番号5に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「CTLD+ネック」および「PR−CTLD+ネック」とは、(1)配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号8に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号8に示されるアミノ酸配列において172位および189位以外のアミノ酸位置で1または数個の置換、付加および/または欠失を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(4)上記配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(5)上記配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)配列番号7に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号7に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)配列番号7に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列であって、該コードされるアミノ酸配列において172位および189位位のアミノ酸は、配列番号6における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号7に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(10)上記配列番号7に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(11)上記配列番号7に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0032】
なお、上記CTLD様ポリペプチドは、天然型LOX−1の活性が保持されている限り、非天然アミノ酸を含んでいてもよいし、アミノ酸アナログ、アミノ酸誘導体などを含んでいてもよい。
【0033】
上記に示されるCTLD様ポリペプチド−界面活性剤複合体においても、システイン残基は、分子内ジスルフィド結合に関与しているので、本発明のCTLD様ポリペプチドにおいて、配列番号4のアミノ酸配列の144位、155位、172位、243位、256位、264位に対応するシステインが保持されていることが好ましい。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「リガンド」とは、特異的な受容体または受容体のファミリーに対する結合パートナーである。リガンドは、受容体に対する内因性のリガンドであるか、またはその代わりに、薬剤、薬剤候補、もしくは薬理学的手段のような受容体に対する合成リガンドであり得る。
【0035】
本明細書において使用される場合、「変性LDL」とは、LDLが体内で活性酸素、酸化的酵素、Fe3+などと接触すること、あるいは、血管内皮細胞やマクロファージなどによる細胞依存性化学変化によって発生する種々の分子修飾を有する任意のLDL改変体である。生体内に存在する変性LDLとしては、代表的には、酸化LDL(本明細書中、OxLDLといい、例としては完全酸化LDL(本明細書中F−OxLDLともいう)および部分酸化LDL(本明細書中M−OxLDLともいう)が挙げられる)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL(直径255nm以下のLDL)、糖化LDL、アセチル化LDLなどが挙げられるが、これらに限定されない。酸化LDLが異常値を示す場合、動脈硬化症、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作など)、大動脈瘤、腎梗塞、高脂血症などのような疾患が予想されるがこれらに限定されない(「今日の臨床検査 2007−2008」発行所 株式会社 南江堂、参照)。一般に使用される検査方法では、基準物質としては、MDA−LDL(正常範囲:10〜80ΜL)および酸化ホスファチジルコリン(正常範囲:8.4U/mL〜17.6U/mL)が使用されている。本明細書において「OxLDL様活性を示す分子」とは、少なくとも上述のOxLDLの活性(本明細書において「OxLDL様活性」という。)の一つを有する分子をいう。そのようなOxLDL様活性としては、LOX−1に対する結合活性(リガンド活性)を挙げることができるが、それに限定されない。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「後期糖化反応生成物(Advanced Glycation End Products)」とは、AGEともいわれ、糖尿病患者の生活の質を損ねる元凶である血管合併症として知られる糖尿病性血管障害の発症・進展に関与している。グルコースに代表される還元糖は、タンパク質、アミノ酸のアミノ基と非酵素的に反応して、シッフ塩基またはアマドリ転位化合物などの糖化生成物を形成する。ここまでの反応は可逆的であり、前期反応とよばれている。その後、さらに縮合、開裂、架橋形成などの複雑かつ不可逆的な反応を経て、後期糖化反応生成物を形成する。このような一連の反応は、グリケーションと称される。AGEはまた、このような過程を経て生成された構造物の総称である。生体中に存在するAGE構造としては、カルボキシメチルリジン(CML)、カルボキエチルリジン(CEL)、ペントシジン、ピラリン、イミダゾリン、メチルグリオキサール、クロスリンなどが挙げられるが、これに限定されない。血漿中に存在するアルブミン、イムノグロブリン、オボアルブミンなどが上記の糖化を受けた産物もAGEであり、AGEとして実験系に汎用されている。さらに、インビトロ実験系では、BSA(ウシ血清アルブミン)に糖化処理を施したもの、例えば、R−AGE(リボースにより糖化処理をしたBSA)、F−AGE(フルクトースにより処理をしたBSA);G−AGE(グルコースにより糖化処理をしたBSA)なども汎用されている。血糖コントロールの指標として用いられているヘモグロビンA1cはアマドリ転移化合物であるが、AGEに包含される。また、任意のタンパク質も、AGEに変換可能である。例えば、AGEに包含されるCMLアルブミンおよびCELアルブミンは、いずれもアルブミンが糖化を受けたAGEである。このようなAGE生成反応は、生体内において循環血液中、細胞外マトリクス、細胞内のいずれでも起こり得る。例えば、糖尿病患者の血管に存在するAGEとしては、:蛍光性で架橋構造を有するもの(ペントシジン、クロスリンなど)および蛍光も架橋もないもの(カルボキシメチルリジン、ピラリン、メチルグリオキサール(MG)−イミダゾロンなど)の2つに大別できる。AGEが異常値を示す場合、細小血管症(腎症、網膜症、神経症など)、大血管障害(虚血性心疾患、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症のような疾患が予想される。一般に使用される検査方法では、基準物質としては、ピラリン(正常範囲:血漿中23pmol/mL未満)、ペントシジン(正常範囲:血漿中0.00915〜0.0431μg/mL(ELISAで測定した場合))などが使用される(「今日の臨床検査 2007−2008」発行所 株式会社 南江堂、参照)。
【0037】
本明細書において「AGE分子」とは、上記AGEに含まれる任意の分子をいう。例えば、AGEとしては、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体あるいはそれらの複合体を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0038】
本明細書において「AGEs様活性を示す分子」とは、少なくとも上述のAGEの活性(本明細書において「AGEs様活性」という。)の一つを有する分子をいう。そのようなAGEs様活性としては、RAGEに対する結合活性(リガンド活性)を挙げることができるが、それに限定されない。
【0039】
本明細書において使用される場合、用語「AGE受容体(Receptor for AGE)」とは、RAGEともいわれ、(1)配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号10に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(3)上記配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(5)配列番号9に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)上記配列番号9に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(7)上記配列番号9に示される核酸配列において1または数個のヌクレオチドの置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(8)上記配列番号9に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;および(9)上記配列番号9に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド、のうちの1つである。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。RAGEはまた、1992年に、ウシ肺から同定され、AGEと結合するイムノグロブリンスーパーファミリーに属する、分子量約35kDaのI型膜タンパク質(糖鎖修飾を受けた完全なRAGEは、分子量55kDa)である。RAGEの細胞外ドメインは、1つのV型イムノグロブリンドメイン、続いて、2つのC型イムノグロブリンドメイン(C1領域およびC2領域)の、3つのイムノグロブリンフォールド構造を取るドメインが結合した構造を取っている。RAGEはまた、細胞膜1回貫通型のドメインおよび43アミノ酸の細胞質ドメインを含む。RAGEは、多様なクラスのリガンド(AGE、S100/カルグラニュリン、アンフォテリンおよびアミロイド−βペプチド)と相互作用する。Vドメインは、リガンド結合に必須の部位であり、細胞質ドメインは、RAGE媒介性細胞内シグナル伝達に必須である。RAGEはまた、各ドメイン内でジスルフィド結合を有するので、本発明の変異RAGE−界面活性剤複合体は、配列番号10のアミノ酸配列における38位、99位、144位、208位、259位および301位に対応するシステイン残基を保持していることが好ましい。RAGEは、正常組織および血管系においては低レベルでしか発現されない。しかし、この受容体は、そのリガンドが蓄積した場所においてアップレギュレートされる。RAGEの発現は、糖尿病血管系において内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、腎メサンギウム細胞および浸潤性単核食細胞で増加している。また、AGEが蓄積している動脈硬化巣のような病的部位においても、RAGEの発現が増加している。AGE−RAGE相互作用は、血管系ホメオスタシスにおいて重要な細胞の特性を変化させる。例えば、RAGEがAGEと結合した後、血管内皮細胞は、VCAM−1、組織因子、およびIL−6の発現、ならびに高分子へのそれらの透過性を増加させる。単核食細胞において、RAGEは、サイトカインおよび増殖因子の発現を活性化し、可溶性AGEに応じて細胞移動を誘導するのに対して、走触性は、固定リガンドで起こる。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE様ポリペプチド」とは、「RAGE8」、「mRAGE8」、「RAGE1」、「mRAGE1」、「RAGE2」、「mRAGE2」、「RAGE3」、「mRAGE3」、「RAGE4」、「mRAGE4」、「RAGE7」、「mRAGE7」、「RAGE143」、「mRAGE143」、「RAGE223」、「mRAGE223」、「RAGE226」および「mRAGE226」と称されるポリペプチドまたはこれらの変異体を包含する。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE分子」とは、RAGE様ポリペプチドの他、それらの任意の複合体を含むことが理解される。したがって、RAGE分子には、RAGE様ポリペプチド等、例えば、RAGE(全長)、RAGE細胞外領域(配列番号10の22−332位)、RAGE143、RAGE223、RAGE226等が包含されることが理解される。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE8」および「mRAGE8」とは、(1)配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号12に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号12に示されるアミノ酸配列において、92位および95位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号12に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号12に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号11に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号11に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号11に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号11に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位および95位のアミノ酸配列は、配列番号12における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号11に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号11に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドのうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE1」および「mRAGE1」とは、(1)配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号14に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号14に示されるアミノ酸配列において、92位、95位、206位および250位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号14に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号13に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号13に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号13に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号13に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列であって、該コードされるアミノ酸配列において92位、95位、206位および250位のアミノ酸配列は、配列番号14における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号13に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号13に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0044】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE2」および「mRAGE2」とは、(1)配列番号16に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号16に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号16に示されるアミノ酸配列において、92位、95位および206位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号16に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号16に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号15に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号15に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号15に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号15に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位、95位および206位のアミノ酸配列は、配列番号16における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号15に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号15に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0045】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE3」および「mRAGE3」とは、(1)配列番号18に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号18に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号18に示されるアミノ酸配列において、92位、95位および206位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(374)上記配列番号18に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号18に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号17に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号17に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号17に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号17に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位、95位および206位のアミノ酸配列は、配列番号18における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号17に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号17に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0046】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE4」および「mRAGE4」とは、(1)配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号20に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号20に示されるアミノ酸配列において、14位、17位、128位および172位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号19に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号19に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号19に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号19に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において14位、17位、128位および172位のアミノ酸配列は、配列番号20における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号19に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号19に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0047】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE7」および「mRAGE7」とは、(1)配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号22に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号22に示されるアミノ酸配列において、92位および95位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号22に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号22に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号21に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号21に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号21に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号21に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位および95位のアミノ酸配列は、配列番号22における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号21に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号21に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0048】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE143」および「mRAGE143」とは、(1)配列番号24に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号24に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号24に示されるアミノ酸配列において、92位および95位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号24に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号24に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号23に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号23に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号23に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号23に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位および95位のアミノ酸配列は、配列番号24における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号23に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号23に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0049】
本発明において、RAGE143を使用することが好ましくありうる。理論に束縛されることは望まないが、RAGE143は、RAGE1同様の認識活性を有し、かつ、分子としての安定性が優れているからである。RAGE1、RAGE223,RAGE226なども使用することができるが、保存中に分解が生じやすく、実験期間中に反応性が変化する可能性があることから、分解を進行させない任意の方法を用いて使用することが好ましく、あるいは長時間のアッセイにおいてはRAGE143が好ましくありうる。RAGE143に限らず、RAGE1、RAGE223,RAGE226などでも同様の結果は得られることが理解される。
【0050】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE223」および「mRAGE223」とは、(1)配列番号26に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号26に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号26に示されるアミノ酸配列において、92位および95位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号26に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号26に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号25に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号25に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号25に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号25に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位および95位のアミノ酸配列は、配列番号26における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号25に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号25に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0051】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE226」および「mRAGE226」とは、(1)配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号28に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号28に示されるアミノ酸配列において、92位および95位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号28に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号28に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号27に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号27に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号27に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号27に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位および95位のアミノ酸配列は、配列番号28における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号27に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号27に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0052】
なお、上記RAGE様ポリペプチドは、天然型RAGEの活性が保持されている限り、非天然アミノ酸を含んでいてもよいし、アミノ酸アナログ、アミノ酸誘導体などを含んでいてもよい。
【0053】
上記のRAGE様ポリペプチドにおいても、分子内ジスルフィド結合を形成することは重要であるので、配列番号10のアミノ酸配列の38位、99位、144位、208位、259位および301位に対応するシステインは保持されていることが好ましい。
【0054】
本明細書において「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0055】
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。
【0056】
本明細書において「アミノ酸誘導体」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのようなアミノ酸誘導体およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。本明細書では、アミノ酸誘導体およびアミノ酸アナログは、アミノ酸と同じ生物学的機能を提供し得る限り代替として使用され得ることが理解される。
【0057】
本明細書において「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
【0058】
本明細書において「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
【0059】
本明細書において「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
【0060】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
【0061】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
【0062】
本明細書において、「対応する」アミノ酸とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸をいう。例えば、LOX−1においては、232位および249位におけるアミノ酸であり、RAGEにおいては、114位、117位、228位、272位におけるアミノ酸である。
【0063】
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子(例えば、LOX−1)に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、ヒトの遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(マウス、ラット、ブタ、ウサギ、モルモット、ウシ、ヒツジなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウサギ、モルモット、ウシ、ヒツジなど)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
【0064】
本明細書中で使用される「異種」とは、異なる配列または対応しない配列、あるいは異なる種由来の配列である、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列をいう。例えば、ヒトのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、マウスのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に対して異種であり、そしてヒトLOX−1の核酸配列またはアミノ酸配列は、ヒトアルブミンのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に対して異種である。
【0065】
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能が保持されているかどうかによって決定され得る。
【0066】
本明細書において「生物学的機能」とは、ある遺伝子またはそれに関する核酸分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、その遺伝子、核酸分子またはポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能をいい、これには、例えば、特異的な抗体の生成、酵素活性、抵抗性の付与等を挙げることができるがそれらに限定されない。本発明においては、例えば、LOX−1が変性LDLを認識する機能、RAGEがAGEを認識する機能などを挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において、生物学的機能は、「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。2つの因子が相互作用する場合、その生物学的活性は、その二分子との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。したがって、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。
【0067】
したがって、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が、挙げられる。
【0068】
本明細書において「相互作用」とは、2つの物質についていうとき、一方の物質と他方の物質との間で力(例えば、分子間力(ファンデルワールス力)、水素結合、疎水性相互作用など)を及ぼしあうこという。通常、相互作用をした2つの物質は、会合または結合している状態にある。
【0069】
本明細書中で使用される用語「結合」は、2つのタンパク質もしくは化合物または関連するタンパク質もしくは化合物の間、あるいはそれらの組み合わせの間での、物理的相互作用または化学的相互作用を意味する。結合には、イオン結合、非イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水性相互作用などが含まれる。物理的相互作用(結合)は、直接的または間接的であり得、間接的なものは、別のタンパク質または化合物の効果を介するかまたは起因する。直接的な結合とは、別のタンパク質または化合物の効果を介してもまたはそれらに起因しても起こらず、他の実質的な化学中間体を伴わない、相互作用をいう。
【0070】
本明細書において第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」とは、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して、第二の物質または因子以外の物質または因子(特に、第二の物質または因子を含むサンプル中に存在する他の物質または因子)に対するよりも高い親和性で相互作用することをいう。物質または因子について特異的な相互作用としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、リガンド−レセプター反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の両方が関係する場合、転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、物質または因子がともに核酸である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、物質または因子がともにタンパク質である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の物質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、転写因子と、その転写因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用が包含される。したがって、本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に相互作用する因子」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
【0071】
本明細書中で使用される「接触(させる)」とは、化合物を、直接的または間接的のいずれかで、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して物理的に近接させることを意味する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多くの緩衝液、塩、溶液などに存在し得る。接触とは、核酸分子またはそのフラグメントをコードするポリペプチドを含む、例えば、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、遺伝子チップ)などに化合物を置くことが挙げられる。
【0072】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用であることから、オルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0073】
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。
【0074】
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、リガンド分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0075】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0076】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
【0077】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、リガンド結合能において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0078】
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0079】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0080】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加および/または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わること、または取り除かれることをいう。このような置換、付加および/または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。基準となる核酸分子またはポリペプチドにおけるこれらの変化は、目的とする機能(例えば、AGEの認識能など)が保持される限り、この核酸分子の5’末端もしくは3’末端で生じ得るか、またはこのポリペプチドを示すアミノ酸配列のアミノ末端部位もしくはカルボキシ末端部位で生じ得るか、またはそれらの末端部位の間のどこにでも生じ得、基準配列中の残基間で個々に散在する。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、AGEの認識能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、15%以内、10%以内、5%以内、または150個以下、100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0081】
本明細書において使用される場合、用語「タグ配列」とは、受容体−リガンドのような特異的認識機構により分子を選別するための物質、より具体的には、特定の物質を結合するための結合パートナーの役割を果たす物質(例えば、ビオチン−アビジン、ビオチン−ストレプトアビジンのような関係を有する)をいう。よって、例えば、タグ配列が結合した特定の物質は、タグ配列の結合パートナーを結合させた基材を接触させることで、この特定の物質を選別することができる。このようなタグ配列は、当該分野で周知である。代表的なタグ配列としては、mycタグ、Hisタグ、HA、Aviタグなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本明細書において使用される場合、用語「検出剤」とは、広義には、目的の物質(例えば、変性LDL、AGEなど)を検出できるあらゆる因子をいう。
【0083】
本明細書において使用される場合、用語「固相」とは、本明細書中において「基板」および「基材」と互換的に使用され、本発明のデバイスが構築される材料をいう。抗体のような分子が固定され得る平面状の支持体をいう。本発明において表面プラズモン共鳴の原理を用いて検出する場合、固相は、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面に持つガラス基板の基材であることが好ましい。本発明において水晶発振子マイクロバランスの原理を用いて検出する場合は、周波数変換素子(例えば水晶発振子、表面弾性波素子)を固相として用い、直接受容体を結合させる。水晶板の片面はシリコーンで被覆し、もう一方の面は金電極を施したものを固相として用いる。本発明において酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)のような機構を使用する場合、一般に、固相(基材)としては、マイクロタイタープレートが使用される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。適切な基材としては、ビーズ、金粒子、プレート(例えば、マイクロタイタープレート)、試験管、チップ、磁性粒子、膜、繊維、スライドガラス、金属薄膜、フィルター、チューブ、ボール、ダイアモンド様炭素被膜ステンレスなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
固相および基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコーン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、アミロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)以下が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、PVDF膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。高密度のものを解析する場合は、ガラスなど硬度のあるものを材料として使用することが好ましい。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。
【0085】
本明細書において「チップ」は、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。本明細書において、受容体を固定化した固相を、受容体チップおよび/または受容体マイクロチップと呼ぶ。
【0086】
本明細書において使用される場合、用語「乾燥形態」とは、本発明で使用される成分を含む検出剤、デバイス、診断剤などにおいて、実質的に水分含量が低下している状態であることをいう。一般的には、「乾燥状態」は、風乾、減圧乾燥などの当該分野で周知の技術を用いて容易に達成することができる。
【0087】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecμlar Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecμlar Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecμlar Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecμlar Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecμlar Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecμlar Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecμlar Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecμlar Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecμlar Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecμlar Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0088】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0089】
本発明において用いられる配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドならびにそのフラグメントおよび改変体は、遺伝子工学技術を用いて生産することができる。
【0090】
本明細書において使用される場合、用語「標識」とは、特定の物質を検出するために、この物質に結合することが既知の物質に付加される分子をいう。標識としては、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
本明細書において使用される場合、用語「リフォールディング」とは、異常な折り畳みを有するためにその本来有する機能を失っているポリペプチドの異常な構造を解きほぐし、界面活性剤により再凝集を防ぎつつ、サイクロアミロースの包接能を活用してそのポリペプチドの本来の正しい構造に再折りたたみすることをいう。
【0092】
本明細書において使用される場合、用語「界面活性剤」とは、液体に溶解すると、溶液の表面張力を著しく減少させる物質をいう。界面活性剤は、溶液の中で臨海ミセル濃度を超えると、ミセルコロイドを形成する。界面活性剤は、親水性基と親油性基とを有するために、両親媒性化合物であり、二相界面で方向配位をして安定な層をなす。界面活性剤は、長鎖脂肪酸塩やドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のような陰イオン性界面活性剤、臭化セチルトリメチルアンモニウムのような陽イオン界面活性剤、さらに両性界面活性剤、TritonTMシリーズおよびTweenTMシリーズのような非イオン性界面活性剤に分けられる。適切な界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。
【0094】
(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)
1つの局面において、本発明は、AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法であって、(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、および(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるAGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法を提供する。
【0095】
この方法において、受容体分子であるRAGE分子またはそのリガンドであるAGE分子のいずれかを固相に固定し、他方の存在の元で、検出または定量の対象となるサンプルをアッセイしたところ、従来得られなかった感度の上昇、AGEs様活性を示す分子のスクリーニングの網羅性の上昇という効果が得られた。
【0096】
本発明の実施形態では、使用される固相としては、固定される分子、例えば、RAGE分子、AGE分子が固定されうる限り任意のものを利用することができる。1つの実施形態では、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)のような機構を使用する場合、一般に、固相(基材)としては、マイクロタイタープレートが使用される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。その材料としては、例えば、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。固相への固定方法は、当該分野において任意の公知の方法で実施することができる。例えば、好ましくは、固相表面上のシラノール基(SiOH)を介した結合反応、素材のマトリックスによる疎水性結合および修飾官能基によるイオン結合、マトリックスに含まれている芳香族環を介した結合反応を用いることができる。固相への固定後は、その固相は、乾燥させてもよく、湿潤状態で利用しても良い。乾燥させることによって保存がしやすくなる。
【0097】
本発明において、本発明のサンプルをAGE分子またはRAGE分子に接触させる手法としては、当該分野において公知の任意の手法を用いることができ、例えば、両者を溶液中で混合すること、あるいはその後インキュベートすることなど手法を用いることができるがこれらに限定されない。
【0098】
本発明において、AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する手法としては、当該分野において公知の任意の手法を用いることができ、例えば、いずれかの分子を標識(例えば、蛍光標識)した場合に、その標識を検出する任意の手法を利用することができることが理解される。ここで、上記結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるAGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示すものである。
【0099】
本発明において、AGE分子に対する該RAGE分子の結合の定量は、上記検出において、数値化する任意の手法によって、実現することができる。このような定量は相対的(レベル)でもよく、絶対量で表示してもよい。例えば、そのような手法としては、既知量のAGE分子およびRAGE分子について、検出対象となる標識の強度をプロットし、検量線を作成し、サンプルの検出データから外挿する手法が挙げられるがそれに限定されない。
【0100】
1つの実施形態では、本発明において用いられるRAGE分子は、RAGE143、RAGE1、RAGE223、RAGE226またはその改変体でありうる。1つの好ましい実施形態では、RAGE143が用いられる。長期保存に対して安定性が高いからであるが、これに限定されない。
【0101】
1つの実施形態では、本発明において用いられるAGE分子は、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体でありうる。
【0102】
(糖尿病性腎症の予備的な検出方法)
別の局面において、本発明は、糖尿病性腎症の予備的な検出方法(または、予測方法もしくは予備的診断方法)であって、(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、および(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法を提供する。このように、RAGE分子またはAGE分子を用いて被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示すことが示されたのは過去に例がなく、診断分野において顕著な進歩を示すものであるといえる。
【0103】
ここで、本発明の糖尿病性腎症の予備的な検出方法(または、予測方法もしくは予備的診断方法)において、AGE分子およびRAGE分子、接触、結合の検出、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0104】
本明細書において「被験体」とは、本発明の診断または検出の方法の対象となる生物(例えば、ヒトをいう。
【0105】
本明細書において「サンプル」とは、被験体等から得られた任意の物質をいい、例えば、体液(血液、唾液、尿、涙液等)が含まれる。好ましくは血液、尿、涙液を使用する。
【0106】
結合の阻害の存否またはレベルから、被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を判定する手法は以下のとおりである。被験体の病状にかかわらず、これからサンプルを調製する。RAGEの存在下で標識したAGE分子サンプルを37℃で1時間反応させた際に、標識下AGE分子の結合を阻害する活性を定量する。サンプルの代わりに緩衝液を添加した際の標識AGE結合量(標識が蛍光標識の場合は、蛍光光度計により測定される蛍光強度)を100%とし、結合を阻害する程度が大きい程、AGE様活性を示す分子の存在量が多く、罹患する可能性が高いと判定される。
【0107】
(糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出方法)
別の局面において、本発明は、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出方法(または、予測方法もしくは予備的診断方法)であって、(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる糖尿病に罹患した被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、および(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法を提供する。このように、RAGE分子またはAGE分子を用いて糖尿病に罹患した被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示すことが示されたのは過去に例がなく、診断分野において顕著な進歩を示すものであるといえる。
【0108】
ここで、本発明の糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出方法(または、予測方法もしくは予備的診断方法)において、AGE分子およびRAGE分子、接触、結合の検出、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0109】
結合の阻害の存否またはレベルから、糖尿病に罹患した被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を判定する手法は以下のとおりである。糖尿病に罹患した被験体からサンプルを調製する。RAGEの存在下で標識したAGE分子サンプルを37℃で1時間反応させた際に、標識下AGE分子の結合を阻害する活性を定量する。サンプルの代わりに緩衝液を添加した際の標識AGE結合量(標識が蛍光標識の場合は、蛍光光度計により測定される蛍光強度)を100%とし、結合を阻害する程度が大きい程、AGE様活性を示す分子の存在量が多く、罹患する可能性が高いと判定される。
【0110】
(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)
別の局面において、本発明は、糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法(または、診断方法)であって、(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、および(B)該固定化されたAGEもしくはその改変体に対する該RAGE分子または該AGEもしくはその改変体のリガンドの結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、工程を包含する、方法を提供する。このように、RAGE分子またはAGE分子を用いて糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを診断することができることが示されたのは過去に例がなく、診断分野において顕著な進歩を示すものであるといえる。
【0111】
ここで、本発明の糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法において、AGE分子およびRAGE分子、接触、結合の検出、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0112】
結合の阻害の存否またはレベルから、被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを判定する手法は以下のとおりである。糖尿病または糖尿病性腎症に罹患している疑いのあるあるいは検査の対象となる被験体からサンプルを調製する。RAGEの存在下で標識したAGE分子サンプルを37℃で1時間反応させた際に、標識下AGE分子の結合を阻害する活性を定量する。サンプルの代わりに緩衝液を添加した際の標識AGE結合量(標識が蛍光標識の場合は、蛍光光度計により測定される蛍光強度)を100%とし、結合を阻害する程度が大きい程、AGE様活性を示す分子の存在量が多く、罹患する可能性が高いと判定される。
【0113】
(OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法)
1つの局面において、本発明は、OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法であって、(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたCTLD分子の存在下で標識した変性LDLに接触させるか、または固相に固定された変性LDLの存在下で、標識したCTLD分子に接触させる工程、および(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法を提供する。
【0114】
この方法において、受容体分子であるCTLD分子またはそのリガンドである変性LDLのいずれかを固相に固定し、他方の存在の元で、検出または定量の対象となるサンプルをアッセイしたところ、従来得られなかった感度の上昇、OxLDL様活性を示す分子のスクリーニングの網羅性の上昇という効果が得られた。
【0115】
本発明の実施形態では、使用される固相としては、固定される分子、例えば、CTLD分子、変性LDLが固定されうる限り任意のものを利用することができる。1つの実施形態では、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)のような機構を使用する場合、一般に、固相(基材)としては、マイクロタイタープレートが使用される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。その材料としては、例えば、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。
【0116】
固相への固定方法は、当該分野において任意の公知の方法で実施することができる。例えば、好ましくは、固相表面上のシラノール基(SiOH)による結合、素材のマトリックスによる疎水性結合および修飾官能基によるイオン結合、マトリックスに含まれている芳香族環を介した結合を用いることができる。固相への固定後は、その固相は、乾燥させてもよく、湿潤状態で利用しても良い。乾燥させることによって保存がしやすくなる。
【0117】
本発明において、本発明のサンプルをCTLD分子または変性LDLに接触させる手法としては、当該分野において公知の任意の手法を用いることができ、例えば、両者を溶液中で混合すること、あるいはその後インキュベートすることなど手法を用いることができるがこれらに限定されない。
【0118】
本発明において、CTLD分子に対する変性LDLの結合を検出する手法としては、当該分野において公知の任意の手法を用いることができ、例えば、いずれかの分子を標識(例えば、蛍光標識)した場合に、その標識を検出する任意の手法を利用することができることが理解される。ここで、上記結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるOxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示すものである。
【0119】
本発明において、CTLD分子に対する変性LDLの結合の定量は、上記検出において、数値化する任意の手法によって、実現することができる。このような定量は相対的(レベル)でもよく、絶対量で表示してもよい。例えば、そのような手法としては、既知量のCTLD分子および変性LDLについて、検出対象となる標識の強度をプロットし、検量線を作成し、サンプルの検出データから外挿する手法が挙げられるがそれに限定されない。
【0120】
1つの実施形態において、本発明において用いられるCTLD分子は、CTLD14、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長またはそれらの改変体でありうる。好ましくは、CTLD14を用いることができる。長期保存に対して安定性が高いからであるが、これに限定されない。
【0121】
1つの実施形態では、本発明において用いられる変性LDLは、酸化LDL(OxLDL)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL、糖化LDL、アセチル化LDLまたはその改変体でありうる。
【0122】
(AGEs様活性を示す分子の検出または定量のためのキット)
1つの局面において、本発明は、AGEs様活性を示す分子の検出または定量のためのキットを提供する。このキットは、(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する手段を備える。このキットにおいて、該結合の阻害の存否またはレベルは、AGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す。本発明のキットにおいて使用されうるRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0123】
(糖尿病または糖尿病性腎症の検出または診断のためのキットまたはマーカー)
別の局面において、本発明は、糖尿病性腎症の予備的な検出または診断(または、予測)のためのキットを提供する。ここで、このキットは(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および(B)該AGEに対する該RAGE分子の結合を検出する手段を備え、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す。本発明のキットにおいて使用されうるRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0124】
別の局面において、本発明は、AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病性腎症の予備的な診断マーカーを提供する。あるいは、本発明は、糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用を提供する。ここで、本発明の診断マーカーを測定した場合に、AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す。AGEs様活性またはAGEs様活性を示す分子は、本発明のAGE分子またはRAGE分子を利用した技術を用いて測定することができる。本発明の診断マーカーまたは使用において使用されうるAGEs様活性、AGEs様活性を示す分子、ならびにそれらに関連するRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)ならびに他の欄において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0125】
別の局面において、本発明は、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出または診断(または、予測)のためのキットを提供する。このキットは、(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段を備える。ここで、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す。本発明のこのキットにおいて使用されうるRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0126】
別の局面において、本発明は、AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断マーカーを提供する。あるいは、本発明は、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用を提供する。ここで、本発明の診断マーカーを測定した場合に、AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す。AGEs様活性またはAGEs様活性を示す分子は、本発明のAGE分子またはRAGE分子を利用した技術を用いて測定することができる。本発明の診断マーカーまたは使用において使用されうるAGEs様活性、AGEs様活性を示す分子、ならびにそれらに関連するRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病における糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)ならびに他の欄において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0127】
別の局面において、本発明は、糖尿病または糖尿病性腎症の検出または診断のためのキットを提供する。ここでこのキットは、(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段を備える。ここで、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す。本発明のこのキットにおいて使用されうるRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0128】
別の局面において、本発明は、AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病または糖尿病性腎症の診断マーカーを提供する。あるいは、本発明は、糖尿病または糖尿病性腎症の診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、使用を提供する。ここで、本発明の診断マーカーを測定した場合に、AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す。AGEs様活性またはAGEs様活性を示す分子は、本発明のAGE分子またはRAGE分子を利用した技術を用いて測定することができる。本発明の診断マーカーまたは使用において使用されうるAGEs様活性、AGEs様活性を示す分子、ならびにそれらに関連するRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)ならびに他の欄において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0129】
(OxLDL様活性を示す分子の検出または定量のためのキット)
別の局面において、本発明は、OxLDL様活性を示す分子の検出または定量のためのキットを提供する。このキットは、(A)固定されたCTLD分子を有する固相および標識した変性LDL、または固定された変性LDLを有する固相および標識したCTLD分子;および(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する手段を備える。ここで、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す。本発明のこのキットにおいて使用されうる変性LDL,CTLD分子、固相、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0130】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0131】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0132】
以下の実施例で用いた動物の取り扱いは、食品総合研究所において規定される基準を遵守した。なお、以下に製造例を記載するが、詳細な情報は、さらに非特許文献7を参酌することができることが理解される。
【0133】
(製造例1:CTLD様ポリペプチドの生成)
切断部位2箇所に変異を導入したCTLD様ポリペプチド(G232A/G249A;本例中、PR−CTLDともいう)をコードする核酸を、定法に従って生成した。定法に従って、この核酸を、シアン蛍光タンパク質(CFP)を融合させた哺乳動物用発現ベクターpECFP(Clontech,USA)に導入することによって、N末端にCFPが融合したPR−CTLDコード核酸を含むプラスミドを構築した。CHO細胞を10% FCSを補充したF12培地中、37℃において5%CO2加湿雰囲気下で培養した。1×104細胞/mlの密度で懸濁したCHO細胞400μlを、トランスフェクションを行う24時間前に、カバーガラス上に播種した。細胞を、LipofectAMINE試薬を用いて製造業者のプロトコルに従って、細胞をトランスフェクトし、48時間インキュベートし、CHO細胞に一過性発現させた。その後、この細胞を蛍光顕微鏡で観察したところ、CFPの蛍光によりCTLD様ポリペプチド発現細胞が確認できた。また、リガンドである変性LDLを蛍光色素である過塩素酸1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン(DiD;Molecμlar Probes,Eugene,OR)により標識し、この変性LDLをCTLD様ポリペプチド発現細胞に添加したところ、リガンドの認識能および取り込み能が確認できた。
【0134】
これらの結果から、PR−CTLD発現細胞は、明瞭なリガンド取り込み能を示し、プロテアーゼ耐性を付与するために行ったアミノ酸置換は、変性LDL認識能には何ら影響を与えていないことが示された。
【0135】
さらに、このPR−CTLDのプロテアーゼ感受性を検討したところ、2u(1uは、1mgの対象タンパク質を分解可能な濃度)のトロンビンで、0.02mgのPR−CTLDを18時間処理しても分解が起こらないことが確認され、プロテアーゼ耐性CTLD様ポリペプチド(PR−CTLD)を生成することに成功した。
【0136】
(製造例2:タグ配列付加CTLD様ポリペプチドの生成)
製造例1において生成したCTLD様ポリペプチド(PR−CTLD)に加えて、さらに、CTLD様ポリペプチドと同様のプロテアーゼ耐性変異を導入した長さの異なるタンパク質PR−CTLD14(ネック領域の14アミノ酸を含む、LOX−1のアミノ酸129位〜273位)を作成した。PR−CTLD14のアミノ酸配列には分子間S−S結合に関与するCysが含まれる。分子間S−S結合を形成しなくても認識能はあるが、細胞上で機能を発現する際には、一定以上の分子密度をとる必要がある(Xieら、DNA and Cell Biology 23(2):111−117(2004)およびMatsunagaら、Experimental Cell Research 313:1203−1214(2007))。そこで、高密度集積に寄与し得る構造として分子間S−S結合形成が可能なPR−CTLD14もまた、変性LDLを検出するアッセイ系を構築するのに使用することができる。
【0137】
発現させたプロテアーゼ耐性のCTLD様ポリペプチド(PR−CTLDおよびPR−CTLD14)を検出/評価系において活用する際には、有効な修飾が施されていることが望ましい。そこでこれらの分子のN末側に2種類のタグ(一つは大腸菌内でビオチン化を受ける配列AviTag(GLNDIFEAQKIEWHE(配列番号29))、他方はストレプトアビジンに直接認識される配列であるStreptag(AWRHPQFGG(配列番号30))またはStreptagII(WSHPQFEK(配列番号31))を付加した。ビオチンとストレプトアビジンの結合は非共有結合で最も強く(KD=10−15M)、ストレプトアビジンを介した固定化などへの発展に際しても有効である。しかし、ビオチン化のためには、培地中へのビオチンの添加、ビオチンリガーゼを共発現させる必要があるなどの手間が掛かる。そこで、結合の強さでは劣るが(KD=10−7M)、遺伝子配列上でタグを付加し大腸菌で発現させればストレプトアビジンへの結合が可能なStreptagII(WSHPQFEK(配列番号31))付加タンパク質も生成した。いずれもpET系ベクターの5’側に、タグ配列をコードする核酸配列を導入して発現用プラスミドとした(pET N−Avi、pET N−StII)。定法に従って、これらの発現ベクターそれぞれにPR−CTLDおよびPR−CTLD14を導入して、発現構築物を生成した。AviTag付加タンパク質のビオチン化のために、pET系ベクターと同一菌体内で保持可能なpAC系ベクターにビオチンリガーゼをコードしているBirA遺伝子を導入し、発現用プラスミドを作製した(BirA/pAC)。
【0138】
PR−CTLDおよびPR−CTLD14はともに、分子内S−S結合の形成が構造の安定化と機能に必須である。そこで発現宿主としてOrigami B(DE3)(Novagen,USA)を用いた。Origami B(DE3)は、チオレドキシンレダクターゼおよびグルタチオンレダクターゼ変異株であり、細胞質内に発現させたタンパク質のS−S結合形成を促進する性質がある。プロテアーゼ耐性CTLD様ポリペプチドにAviTagを付加する場合、AviTagおよび目的タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターと、BirA遺伝子を含む発現ベクターとで同時に形質転換させた。得られた形質転換宿主細胞を、カナマイシン(15μg/ml)、アンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml)を添加した(いずれも最終濃度)LB培地中で37℃で培養した。StreptagIIコード核酸を含む発現ベクターで形質転換した場合は、カナマイシン(15μg/ml)、アンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)を添加したLB培地中で37℃で培養した。PR−CTLDおよびPR−CTLD14の発現を、IPTGを添加することによって誘導した。
【0139】
予備実験として、PR−CTLDおよびPR−CTLD14を可溶性ポリペプチドとして発現するための温度条件および誘導時間を調べた。温度条件は、(1)37℃、(2)25℃および(3)20℃に設定した。誘導時間は、(A)2時間、(B)4時間、(C)8時間、(D)18時間、(E)24時間に設定した。まず、これらの宿主細胞を37℃で誘導し、誘導されたタンパク質の分子量を測定したところ、予想される分子量のタンパク質の誘導が確認されたが、100%が不溶性画分に回収された。この結果に鑑みて、誘導時間を変動させずに、誘導時の温度を25℃に下げたところ、わずかながら可溶性ポリペプチドとしての発現が確認された。さらに誘導時の温度を20℃にまで下げて、誘導時間の検討を行ったところ、可溶性ポリペプチドとして回収するためには、温度条件(3)および誘導時間(D)18時間〜(E)24時間、特に20〜24時間の誘導が適切であると結論付けられた。
【0140】
上記の形質転換細胞を37℃で12時間前培養した。本培養は、この前培養液を、20倍希釈になるように上記の各LB培地に添加し、25℃で旋回培養した。上記で得られた条件に基づいて、培養液の光学密度(A600)が約0.5に達したときに、培養温度を20℃に下げると同時に、1mM(最終濃度)IPTGを添加し、目的タンパク質の発現を誘導した。AviTag付加タンパク質を生成する場合は、誘導開始と同時に50μM(最終濃度)のビオチンを添加し、発現される目的タンパク質のビオチン化も同時に行わせた。誘導開始後20〜24時間後に12,000rpm×5分の遠心分離により菌体をペレット化して上清を廃棄し、適量のTBSで洗浄した。
【0141】
TBSに懸濁した菌体を、超音波破砕機にて破砕後、15,000rpm×30分の遠心分離により回収される上清を可溶性画分とした。発現された目的タンパク質の90%以上が不溶性画分に残った。目的タンパク質は、精製のためのHisタグがC末側に付加されているので、Ni−アガロースに結合させた後、イミダゾールにより溶出させ精製した。検出用として付加したAviTagも精製に利用可能であり、この場合は、streptavidin Mutein matrix(Roche)に吸着後、ビオチンにより溶出させた。StrepTagIIの場合、Strep−Tactin Sepharose(IBA,US)に吸着後、desthiobiotinにより溶出させた。PR−CTLDおよびPR−CTLD14とも、1L当たりの収量は、以下の表1に示すように、0.5mg未満であった。
【0142】
【表1】
【0143】
(製造例3:RAGE様分子)
切断部位4箇所に変異を導入したsRAGE1様ポリペプチド(R114Q/V117A/R228N/M272I;本例中、mRAGE1ともいう)を定法に従って生成した。この核酸を、定法に従って、シアン蛍光タンパク質(CFP)を融合させた哺乳動物用発現ベクターpECFP(Clontech,USA)またはpTarget(Promega)に導入することによって、N末端にCFPが融合したmRAGE1コード核酸を含むプラスミドを構築した。CHO細胞を10% FCSを補充したF12培地中、37℃において5%CO2加湿雰囲気下で培養した。1×104細胞/mlの密度で懸濁したCHO細胞400μlを、トランスフェクションを行う24時間前に、カバースリップ上に播種した。細胞を、LipofectAMINE試薬を用いて製造業者のプロトコルに従って、細胞をトランスフェクトし、48時間インキュベートし、CHO細胞に一過性発現させた。その後、この細胞を蛍光顕微鏡で観察したところ、CFPの蛍光によりmRAGE1発現細胞が確認できた。また、リガンドであるリボースにより糖化処理したBSA(R−AGE,製造法は製造例8を参照。)を蛍光色素であるAlexa633(Molecμlar Probe)により標識し、この標識糖化BSA(AGE分子)をmRAGE1発現細胞に添加したところ、リガンドの認識能および取り込み能が確認できた。
【0144】
mRAGE1発現細胞は、明瞭なリガンド取り込み能を示し、プロテアーゼ耐性の増大を狙ったアミノ酸置換は、リガンド認識能には影響を与えていないことが示された。
【0145】
さらに、そのプロテアーゼ感受性を検討したところ、天然型に比べ耐性が上昇していることが示され、プロテアーゼ耐性の上がったRAGE分子の作出に成功した。
【0146】
(製造例4:RAGEのリガンド認識能に必須の最小領域の決定)
本実施例では、miniRAGEを作製した。
【0147】
miniRAGEとして、GenBankアクセッション番号AB036432に示される配列に基づいて、以下のプライマー:
順方向プライマー(RAGE1、RAGE2、RAGE3、RAGE7、RAGE8、RAGE9、RAGE143、RAGE223およびRAGE226に共通)
5’−CTACATATGGCTCAAAACATCACAGC−3’(配列番号32)
逆方向プライマー
・RAGE1については、
5’−TTACTCGAGAGCCTGCAGTTGGCCC−3’(配列番号33)
・RAGE2については、
5’−TTACTCGAGACCAGACACGGGGCTG−3’(配列番号34)
・RAGE3については、
5’−TTACTCGAGAAGCTACTGCTCCACC−3’(配列番号35)
・RAGE7については、
5’−TTACTCGAGAAACACCAGCCGTGAGT−3’(配列番号36)・RAGE8については、
5’−TTACTCGAGAAATCTGGTAGACACGG−3’(配列番号37)・RAGE9については、
5’−TTACTCGAGACTTGGTCTCCTTTCC−3’(配列番号38)
・RAGE143については
5’−TTACTCGAGTCCCCACCTTATTGGG−3’(配列番号41)、・RAGE223については、
5’−TTACTCGAGCTGTGCGCAAGGCCCG−3’(配列番号42)
・RAGE226については、
5’−TTACTCGAGACTGGATGGGGGCTGTGC−3’(配列番号43)
を設計し、RAGE4については、順方向プライマー
5’−TCGCATATGGCAATGAACAGGAATGG−3’(配列番号39)逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAGCCTGCAGTTGGCCC−3’(配列番号40)
を設計し、RAGE2(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜250位)をコードするDNA、RAGE3(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜230位)をコードするDNA、RAGE4(天然型RAGEのアミノ酸配列101〜332位)をコードするDNA、RAGE7(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜137位)をコードするDNA、RAGE8(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜120位)をコードするDNA、RAGE9(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜112位)をコードするDNA、RAGE143(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜143位)をコードするDNA、RAGE223(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜223位)をコードするDNA、およびRAGE226(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜226位)をコードするDNAを得た。
【0148】
これらminiRAGEをコードするDNAを、制限酵素の認識配列を付加した特異的プライマーによりPCRにより増幅した後、pCR2.1(Invitrogen)をクローニング用ベクターとしてTAクローニングを行い、塩基配列を確認した。
【0149】
(2)タグ配列付加RAGE様ポリペプチドの生成
上記製造例において生成したRAGE様ポリペプチド(sRAGE1、mRAGE1、RAGE2〜RAGE8、RAGE143、RAGE223およびRAGE226)を検出/評価系において活用する際には、有効な修飾が施されていることが望ましい。そこでこれらの分子のN末側に2種類のタグ(一つは大腸菌内でビオチン化を受ける配列AviTag(GLNDIFEAQKIEWHE(配列番号29))、他方はストレプトアビジンに直接認識される配列であるStreptag(AWRHPQFGG(配列番号30)またはWSHPQFEK(配列番号31))を付加した。ビオチンとストレプトアビジンの結合は非共有結合で最も強く(KD=10−15M)、ストレプトアビジンを介した固定化などへの発展に際しても有効である。しかし、ビオチン化のためには、培地中へのビオチンの添加、ビオチンリガーゼを共発現させる必要があるなどの手間が掛かる。そこで、結合の強さでは劣るが(KD=10−7M)、遺伝子配列上でタグを付加し大腸菌で発現させればストレプトアビジンへの結合が可能なStreptagII(WSHPQFEK(配列番号31))付加タンパク質も生成した。いずれもpET系ベクターの3’側にタグ配列をコードする核酸配列を導入して、発現用プラスミドとした(pET C−Avi、pET C−StII)。定法に従って、これらの発現ベクターに、mRAGEおよびminiRAGEを導入して、発現構築物を生成した。AviTag付加タンパク質のビオチン化のために、pET系ベクターと同一菌体内で保持可能なpAC系ベクターにビオチンリガーゼをコードしているBirA遺伝子を導入したBirA/pACを作製した。
【0150】
RAGEは、CTLDと同様に、S−S結合の形成が構造の安定化と機能に必須である。そこで発現宿主としてOrigamiB(DE3)(Novagen,USA)を用いた。Origami B(DE3)は、チオレドキシンレダクターゼおよびグルタチオンレダクターゼ変異株であり、細胞質内に発現させたタンパク質のS−S結合形成を促進する性質がある。RAGE様ポリペプチド(sRAGE1、mRAGE1、RAGE2〜RAGE8、RAGE143、RAGE223およびRAGE226をまとめて「RAGE様ポリペプチド」と称する)にAviTagを付加する場合、AviTagおよびこのポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターと、BirA遺伝子を含む発現ベクターとで同時に形質転換させた。得られた形質転換宿主細胞を、カナマイシン(15μg/ml)、アンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml)を添加した(いずれも最終濃度)LB培地中で37℃で培養した。StreptagIIコード核酸を含む発現ベクターで形質転換した場合は、カナマイシン(15μg/ml)、アンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)を添加したLB培地中で37℃で培養した。RAGE様ポリペプチドの発現を、IPTGを添加することによって誘導した。
【0151】
予備実験として、RAGE様ポリペプチドを可溶性ポリペプチドとして発現するための温度条件および誘導時間を調べた。温度条件は、(1)37℃、(2)25℃および(3)20℃に設定した。誘導時間は、(A)18時間、(B)20時間、および(C)24時間に設定した。まず、これらの宿主細胞を37℃で誘導し、誘導されたタンパク質の分子量を測定したところ、大部分が不溶性画分に回収された。培養温度を25℃に下げるとsRAGEの場合、90%以上が可溶性ポリペプチドとして発現されたが、mRAGE1の場合は、20%程度しか可溶性ポリペプチドとして発現されなかった。各miniRAGEに関しては、欠損部分が長くなるほど可溶化率が下がる傾向が観察された。RAGE8およびRAGE9に関しては培養温度を下げても殆どが不溶性となり、可溶性ポリペプチドとして発現させるのは困難であった。上記の結果に鑑みて、培養温度を25℃に維持して、誘導時間の検討を行ったところ、誘導時間(A)18時間が適切であることが分かった。
【0152】
上記の形質転換細胞を37℃で12時間前培養した。本培養は、この前培養液を、20倍希釈になるように上記の各LB培地に添加し、25℃で旋回培養した。上記で得られた条件に基づいて、培養液の光学密度(A600)が約0.5に達したときに、1mM(最終濃度)IPTGを添加し、目的タンパク質の発現を誘導した。AviTag付加タンパク質を生成する場合は、誘導開始と同時に50μM(最終濃度)のビオチンを添加し、発現される目的タンパク質のビオチン化も同時に行わせた。誘導開始後18時間後に12,000rpm×5分の遠心分離により菌体をペレット化して上清を廃棄し、適量のTBSで洗浄した。
【0153】
TBSに懸濁した菌体を、超音波破砕機にて破砕後、15,000rpm×30分の遠心分離により回収される上清を可溶性画分とした。目的タンパク質は、精製のためのHisタグがC末側に付加されているので、Ni−アガロースに結合させた後、イミダゾールにより溶出させ精製した。検出用として付加したAviTagも精製に利用可能であり、この場合は、streptavidin Mutein matrix(Roche)に吸着後、ビオチンにより溶出させた。StrepTagIIの場合、Strep−Tactin Sepharose(IBA,US)に吸着後、desthiobiotinにより溶出させた。
【0154】
(3)RAGEのリガンド認識能に必須の最小領域の決定
上記のようにして溶出させた各MiniRAGEの発現効率、可溶性ポリペプチドとして発現する比率、収率などは以下の表2に示すとおりである。
【0155】
【表2−1】
【0156】
【表2−2】
【0157】
上記の結果から、RAGEのリガンド認識能に必須の最小領域は、RAGE8(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜120位)であることが分かった。
【0158】
(製造例5:LOX−1細胞外領域の調製法)
本製造例では、LOX−1細胞外領域の調製例を示す。なお、CTLD14、CTLDも同様に製造した。
【0159】
発現宿主をBL21(DE3)とし、100%近くを封入体として発現させた後、以下の2つの方法で調製した。
【0160】
1) サイクロアミロースによるリフォールディング(非特許文献7を参照。)
発現構築物とBirA遺伝子を含むベクターとで同時に形質転換させたBL21(DE3)、若しくは発現構築物で形質転換させたBL21(DE3)をアンピシリン(50μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml、発現構築物のみの場合は添加せず)を含む(いずれも最終濃度)LB培地で37℃で培養した。培養液の濁度(A600)が約0.5に達した時に1mM(最終濃度)IPTGを添加し目的蛋白質の発現を誘導した。目的タンパク質をビオチン化させる場合は、誘導開始と同時に50μM(最終濃度)のビオチンを添加し、ビオチン化も同時に行わせた。誘導開始後4時間後に、12,000rpm x 5分の遠心分離で菌体を回収し、TBSにて洗浄した。
【0161】
ついでTBSに懸濁した菌体を超音波破砕機にて破砕後、細胞破砕液の沈殿画分をTBSで洗浄し封入体とした。封入体を最終濃度40mMのDTTを含む6Mグアニジン塩酸塩溶液で室温にて1時間処理し、続いて70倍容量の0.1%CTAB(2mM DL−シスチンを含む)/TBS溶液を添加し、室温で1時間反応させた後、最終濃度で0.6%になるように、3%CA溶液を添加し、さらに室温で1時間反応させた。その反応溶液を15,000rpmで5分間遠心分離し、得られたた上清をリフォールディング溶液とした。精製はHisタグを使用したNi−アガロース精製によった。
【0162】
2)希釈透析法によるリフォールディングおよび精製(Vohra RS et al.(2007) Protein Expr. Purif. 52: 415−421を参照)
1)同様に得られた菌体を溶解緩衝液(lysis buffer)(10mM Tris,pH 7.8を含む1mg/mlリゾチーム,プロテアーゼインヒビターカクテル)に懸濁し、4℃で30分間反応させた後、10,000gで15分間遠心した。得られた沈殿(封入体)をVohraらの手法に準じてリフォールドした。
【0163】
100mgの封入体を2.2.mlの緩衝液A(Buffer A)(10mM Tris−HCl,pH7.8,6Mグアニジン塩酸塩、100mM NaH2PO4)に懸濁し、4℃で2時間反応させた。100,000×gで30分遠心した上清を可溶化封入体溶液とし、His tagを利用してCOSMOGEl His−Accept(ナカライ)に結合させ、FPLC(GE Healthcare)による10−100mMのイミダゾール濃度勾配により溶出させた。タンパク質のピークフラクションを6Mグアニジン塩酸塩を含む50mMTris(pH8.0)にて透析した。透析溶液に最終濃度で100mMのDTTを添加した後、タンパク質濃度を1mg/mlに調製した。続いて、グアニジン塩酸塩濃度を段階的に低下させた緩衝液にて14時間ずつの透析を繰り返し、リフォールド精製タンパク質を得た。
【0164】
(製造例6:RAGE調製法)
全てのRAGE分子に該当するRAGE様ポリペプチド(RAGE関連タンパク質)は本製造例に記載のとおりの以下の2つの手法で調製した。
【0165】
1)封入体として調製し、リフォールディングする手法
製造例5と同様の手法を用いた。なお、製造例5とは発現構築物が異なるため、培養時に添加する抗生物質の記載のみアンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml)に変更して用いた。
【0166】
2)可溶性タンパク質として発現させる手法(非特許文献7を参照)
製造例4に記載の情報に基づいて、発現構築物とBirA遺伝子を含むベクターとで同時に形質転換させたOrigami B(DE3)をアンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml)、を含む(いずれも最終濃度)LB培地で25℃で培養した。培養液の濁度(A600)が約0.5に達した時に1mM(最終濃度)IPTGと50μM(最終濃度)のビオチンを添加し、目的タンパク質の誘導と同時にビオチン化を行った。誘導開始後18時間後に、12,000rpm×5分の遠心分離で菌体を回収し、TBSにて洗浄した。菌体をTBSに懸濁し、超音波破砕機にて破砕後、15,000rpm×30分の遠心分離し、回収される上清を可溶性画分とした。目的タンパク質をC末側のHisタグによりNi−アガロースに結合させた後、イミダゾールにより溶出させた。目的タンパク質を含むピークフラクションをTBSにて透析後、N末に付加されたビオチンによりストレプトアビジンムテインマトリクス(Streptavidin Mutein matrix)(Roche)に結合させた後、ビオチンにより溶出させ得られた目的タンパク質を精製RAGEとした。
【0167】
(製造例7:酸化LDL調製法)
本製造例では、酸化LDLを調製した(非特許文献7を参照)。
【0168】
調製に際して、可能なものは全て滅菌し、可能な限り無菌的に操作した。ヒト血漿より調製したLDL(透析によりEDTAを除去)をPBS(−)により1mg/ml に調製し、最終濃度が5μMになるようにCuSO4を添加した。次いでこの溶液を、37℃で20時間反応させ、1mM EDTA(最終濃度)を添加して酸化反応を停止した。この溶液をTris−EDTA(50mM Tris−HCl,pH7.4,150mM NaCl,0.05%EDTA)に対して透析し、さらに無菌濾過後に0.02%NaN3(最終濃度)を添加し、酸化LDL溶液とした。
【0169】
(製造例8:AGE分子である糖化ウシ血清アルブミン(BSA)調製方法)
本製造例では、AGE分子として種々の糖化BSAを調製した(非特許文献7を参照)。
【0170】
糖化BSAは以下のように調製した。調製に際して可能なものは全て滅菌し、可能な限り無菌的に操作した。
【0171】
エタノールで洗浄したスパチュラを使用して、各糖(グルクトース4.51g、フルクトース4.51g、およびリボース3.75g)を秤量し、γ線滅菌済みのキャップ付きプラスチックチューブに入れた。各チューブに20mlの滅菌1M リン酸緩衝液(pH7.4)を無菌的に添加し、穏やかに転倒混和し溶液を混合した。最後に21mlのエンドトキシンフリーの蒸留水を添加し、0.22μmフィルタにより無菌濾過した後、12週間、遮光して37℃で反応させた。1週間に1回、無菌条件下で糖−BSA調製物80μlを取り出し、pHを確認し、さらに、反応液のpHを10N NaOH溶液(エンドトキシンフリー)でpH7.4に調製した。12週後に、滅菌PBSにて透析し、糖を完全に除去し、得られた反応液を糖化BSA(反応させた糖によって、リボース−BSA、グルコース−BSA、フルクトース−BSA)(本明細書では、それぞれ、リボース修飾AGE(リボースAGEまたはR−AGEとも称する。)、グルコース修飾AGE(グルコースAGEまたはG−AGEとも称する。)、フルクトース修飾AGE(フルクトース−AGEまたはF−AGEとも称する。)と称する。)とし、4℃で無菌的に保存した。
【0172】
(実施例1)
本実施例では、受容体であるRAGEを固定化した96穴プレートを用いて、リボース修飾AGE(R−AGE)をリガンドとして標識して用いて本発明のアッセイが機能するか確認した。
【0173】
(1)蛍光プレートリーダー測定
受容体(製造例6において製造したRAGE)を固定化した96穴プレート(ヌンク製)を調製した。
【0174】
この96穴プレートをプロテインフリーブロッティング緩衝液(Therm Scientific製)を用いて4℃で一晩ブロッキングした。
【0175】
活性測定対象分子(Sigma製のクエルセチン、上記製造例のように製造したOxLDL,G−AGE(製造例8のように調製した。),R−AGE(製造例8のように調製した。))を50μl/ウェルで、0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加した。蛍光標識リガンド(水溶性色素Alexa546(Molecμlar Probes)標識R−AGE(製造例8のように調製した。))を50μl/ウェルの容量で添加し、その後37℃、60分でインキュベートさせることによって反応を進行させた。次いで、緩衝液(Tris緩衝生理食塩水(TBS)(Tris/Tris−HCl 10 mM;NaCl 150mM)による洗浄を5分×2回、10分×3回行った。100μlの緩衝液(TBS)を添加し蛍光プレートリーダー(Wallac ARVO SX, Perkin Elmer製)で測定した。
【0176】
コントロールとして、蛍光標識モデルリガンドとして水溶性色素Alexa546(Molecμlar Probes)でラベルしたリボース修飾AGE(R−AGE)(製造例8にて調製)を使用して同様の実験を行った。なお、クエルセチン(Quercetin;Sigma製)は、糖尿病発症予防効果が報告されているフラボノイドであり、RAGE阻害剤のモデルとして使用した。
【0177】
(結果)
結果を以下の表3に示し、そのプロットを図1〜4(それぞれ、クエルセチン、OxLDL,G−AGE,R−AGE)に示す。
【0178】
【表3】
【0179】
図5に蛍光標識モデルリガンドとして水溶性色素Alexa546でラベルしたリボース修飾AGE(R−AGE)を使用して行ったコントロール実験を示す。図5左に使用した細胞の位相差像を示し、図5中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図5右にリガンドを結合した細胞像を示す。図5右にある白い点が結合したリガンドである。
【0180】
図6に図5と同様の順で、クエルセチンの添加の場合の写真を示す。図6左に使用した細胞の位相差像を示し、図6中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図6右にリガンドに加えクエルセチンを加えた細胞像を示す。図6右に示すように、クエルセチン添加によりリガンドの結合が阻害されることが細胞における高感度観察で確認された。
【0181】
図7には、図5と同様の順で、R−AGEの添加の場合の写真を示す。図7左に使用した細胞の位相差像を示し、図7中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図7右にリガンドに加えR−AGEを加えた細胞像を示す。図7右に示されるように、R−AGE添加によるリガンド結合の阻害を示す蛍光像が示される。
【0182】
(定量アッセイ)
次に、グルコース修飾AGE(G−AGE)(製造例8に記載のように製造したもの。)固定化プレートを使用して、Lys−AGE(グリセルアルデヒド修飾リジン:低分子AGEモデル)(0.09gのリジンを0.45gのDLグリセルアルデヒドを50mlの0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させ、遮光条件下、37℃で1週間反応させて調製した。)、およびリボース修飾AGE(R−AGE)(製造例8に記載のように製造したもの。)をそれぞれについて、0、0.25μg/アッセイおよび2.5μg/アッセイの量で用いて定量的アッセイを行った。
【0183】
その結果を表4に示す。
【0184】
【表4】
【0185】
(実施例2)
本実施例では、AGE分子としてR−AGEまたはG−AGE固定化96穴プレートを用いて本発明のアッセイが機能するか確認した。
【0186】
AGE分子として、グルコース修飾AGE(G−AGE)(製造例8に記載のように製造したもの。)、またはリボース修飾AGE(R−AGE)(製造例8に記載のように製造したもの。)を固定化した96穴プレート(ヌンク製)を調製した。
【0187】
この96穴プレートをプロテインフリーブロッティング緩衝液(Therm Scientific製)を用いて4℃で一晩ブロッキングした。
【0188】
活性測定対象分子(Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE:低分子AGEモデル)(0.09gのリジンを0.45gのDLグリセルアルデヒドを50mlの0.2M リン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させ、遮光条件下、37℃で1週間反応させて調製した。)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、またはリボース修飾AGE(R−AGE)、を50μl/ウェルで、0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.25μg/アッセイおよび2.5μg/アッセイの用量で添加した。
【0189】
ビオチン標識RAGE143(製造例6で調製)を50μl/ウェルの容量で添加し、その後37℃、60分でインキュベートさせることによって反応を進行させた。次いで、緩衝液(TBS)による洗浄を5分×2回、10分×3回行った。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン(streptavidin)を上記ウェル(100μl/ウェル)に添加し、室温で60分間反応させた。その後、緩衝液(TBS)で洗浄した。その後、発色基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を100μl/ウェル添加した。これを、室温でおよそ10分間おいて反応させ、1N 塩酸(HCl)を100μl/ウェル添加して反応を停止させた。その後450nmでの吸光度を測定した。
【0190】
その結果を以下の表5に示す。いずれも、定量的に結合が阻害されることが理解される。
【0191】
【表5】
【0192】
(実施例3)
本実施例では、LOX−1受容体を固定させたプレートにおいて、そのリガンドと競合させたモデルを用い、蛍光標識モデルリガンドとして脂溶性色素DiIでラベルしたアセチル化LDLを使用して、本アッセイが機能するか確認した。
【0193】
LOX−1受容体(製造例5と同様に調製した。)を固定化した96穴プレート(ヌンク製)を調製した。
【0194】
この96穴プレートを、ブロッキング試薬N102(日本油脂製)を用いて4℃で一晩ブロッキングした。
【0195】
活性測定対象分子(Sigma製のクエルセチン、上記製造例のように製造したOxLDLおよびAcLDL)を50μl/ウェルの容量(最終的に、使用量は、0、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイ、5μg/アッセイとした。)で添加した。クエルセチン(Quercetin;Sigma製)は、OxLDLによる細胞障害を抑制する効果が報告されているフラボノイドであり、LOX−1阻害剤のモデルとして使用した。
【0196】
蛍光標識リガンドである脂溶性色素DiIでラベルしたアセチル化LDL(アセチル化LDL(Molecμlar Probe製)をPBS(−)にて透析し、無菌濾過後1ml(1mg/ml)当たり10μlのDiI/DMSO溶液(300mg/ml)を無菌的に添加し、遮光条件下で37℃、18時間反応させた。反応溶液1ml当たりに0.0834gのKBrを添加し溶解させた後、12℃で、105,000g×20時間の超遠心分離に供し、最上層画分を回収し、DiI標識AcLDLとした。)を50μl/ウェルの容量で添加し、その後37℃、60分でインキュベートさせることによって反応を進行させた。次いで、緩衝液(TBS)による洗浄を5分×2回、10分×3回行った。100μlの緩衝液(TBS)を添加し蛍光プレートリーダー(Wallac ARVO SX,Perkin Elmer製)で測定した。
【0197】
その結果を表6に示す。そのプロットを図8〜10(それぞれ、クエルセチン、OxLDL、AcLDL)に示す。図8〜10では、各図において、縦軸には、相対結合活性(%、添加量0のときの吸光度の数値を100%とする。)を示す。左からそれぞれ、0、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイ、5μg/アッセイを用いたときの相対結合活性が示される。
【0198】
【表6】
【0199】
(実施例4)
本実施例では、変性LDLの例としてOxLDLを固定させ、CTLD分子としてCTLD14を標識した例を用いて本発明が機能するか確認した。
【0200】
OxLDLを固定化した96穴プレート(ヌンク)を調製した。
【0201】
この96穴プレートをブロッキング試薬N102(日本油脂製)を用いて4℃で一晩ブロッキングした。
【0202】
活性測定対象分子(製造例5で製造したOxLDL、Sigma製のクエルセチン)を50μl/ウェルの容量(最終的に、使用量は、0、0.05μg/アッセイ、0.5μ
g/アッセイ、5μg/アッセイとした。)で添加した。
【0203】
ビオチン標識CTLD14(製造例6で調製)を50μl/ウェルの容量で添加し、その後37℃、60分でインキュベートさせることによって反応を進行させた。
【0204】
次いで、緩衝液(TBS)による洗浄を5分×2回、10分×3回行った。
【0205】
セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識したストレプトアビジンを上記ウェル(100μl/ウェル)に添加し、室温で60分間反応させた。その後、緩衝液(TBS)で洗浄した。その後、発色基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を100μl/ウェル添加した。これを、室温でおよそ10分間おいて反応させ、1N 塩酸(HCl)を100μl/ウェル添加して反応を停止させた。その後450nmでの吸光度を測定した。
【0206】
その結果を以下の表7に示し、そのプロットを図11〜12(それぞれOxLDL、クエルセチン)に示す。いずれも、定量的に結合が阻害されることが理解される。
【0207】
【表7】
【0208】
(実施例5)
本実施例では、CTLD分子としてCTLD14を固定させ、変性LDLの例としてOxLDLを標識した例を用いて本発明が機能するか確認した。
【0209】
製造例5のように調製したCTLD14を固定化した96穴プレート(15μg/ml, 50μl/ウェル)(ヌンク製)を調製した。
【0210】
この96穴プレートをブロッキング試薬N102(日本油脂製)を用いて4℃で一晩ブロッキングした。
【0211】
活性測定対象分子であるクエルセチン、クエルセチンの配糖体であるルチン(Sigma製)を50μl/ウェルの用量で添加した。
【0212】
次に、OxLDLを50μl/ウェルの用量で添加し、その後37℃、60分でインキュベートさせることによって反応を進行させた。次いで、緩衝液(TBS)による洗浄を5分×2回、10分×3回行った。
【0213】
セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識した抗ApoBを上記ウェルに100μl/ウェルで添加し、37℃で60分間反応させた。その後、緩衝液(TBS)で洗浄した(5分間×2、10分間×3)。再度緩衝液による洗浄を行って、発色基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を100μl/ウェル添加した。これを、室温でおよそ10分間おいて反応させ、1N 塩酸(HCl)を100μl/ウェル添加して反応を停止させた。その後450nmでの吸光度を測定した。
【0214】
その結果を以下の表8に示し、クエルセチンについてはそのプロットを図13に示す。クエルセチンは定量的に結合が阻害されるのに対してその配糖体であるルチンは阻害されないことが理解される。
【0215】
【表8】
【0216】
図14にLOX−1を蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現させた細胞を用い、OxLDLをコントロールリガンドとして用いたコントロール実験を示す。図14左に使用した細胞の位相差像を示し、図14中央にLOX−1(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図14右にリガンドを結合した細胞像を示す。図14右にある白い点が結合したリガンドである。
【0217】
図15に図14と同様の順で、クエルセチンを添加した場合の写真を示す。図15左に使用した細胞の位相差像を示し、図15中央にLOX−1(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図15右にリガンドに加えクエルセチンを加えた細胞像を示す。図15右に示すように、クエルセチン添加によりリガンドの結合が阻害されることが細胞における高感度観察で確認された。
【0218】
なお、ルチンの場合、細胞上での結合阻害が検出されず、マイクロプレート上での結果と一致した。
【0219】
(実施例6:糖尿病または糖尿病性腎症の診断または予測診断)
本実施例では、本発明のアッセイを用いて糖尿病または糖尿病性腎症の診断または予測診断を行なうことができるか確認した。
【0220】
本実施例では、糖尿病または糖尿病性腎症のモデル動物を作製し、このモデル動物から採血し、血糖値等の糖尿病および糖尿病性腎症のパラメータとなる値(例えば、腎症の症状の一つである飲水量の増加)、ならびに本発明で開発したAGEs様活性の測定を行い、これらを相関付けを行い糖尿病または糖尿病性腎症の診断または予測診断を行なうことができるかを判断した。詳細は以下のとおりである。
【0221】
まず、糖尿病または糖尿病性腎症のモデル動物として、ストレプトゾトシン(STZ)を投与したモデルを作製した(Am J Physiol Renal Physiol (2006) 290,F214−F222, J Endocrinology (1999) 162, 189−195)。投与日をゼロ日とし、1週間程度の間隔で採血し、血糖値、腎症の症状の一つである飲水量の増加、AGEs様活性の測定を行った。
【0222】
AGEs活性は実施例2と同様の手法で測定した。
【0223】
(結果)
以下の表9〜11に血糖値およびAGEs活性の測定結果を示す。測定値(%)は、AGEs活性を示す分子がゼロの時の測定値を100%として表示した。したがって表示されるAGEs様活性は、阻害率(測定値%の低下)で評価することになる。
【0224】
【表9】
【0225】
【表10】
【0226】
【表11】
【0227】
以上の結果をまとめたものを以下の表12に示す。
【0228】
【表12】
【0229】
したがって、糖尿病の指標の一つである血糖値は、16日目には上昇が観察された。この時点で、AGEs様活性の上昇(すなわち、阻害率(測定値%)の低下)も腎症の症状(飲水量の増加を含む)も観察されなかった。糖尿病の指標の一つである血糖値の上昇が観察された22日目には、AGEs様活性の上昇が観察され始めた。22日目の時点で腎症の症状(飲水量の増加を含む)は観察されなかった。
【0230】
26日目当たりから腎症の症状の一つである飲水量の増加が観察され始めた。
【0231】
したがって、AGEs様活性の上昇は、糖尿病の診断に使用しうるとともに、糖尿病性腎症の予備診断および診断に使用しうることが理解される。
【0232】
(実施例7:LDLを用いたLOX−1(CTLD14)へのリガンドの結合阻害)
本実施例では、上述の実施例において用いたAcLDLについて、LOX−1(CTLD14)へのリガンドの結合阻害が、確認できることを実証する。また、血清ではなくLDLに関しても確認が取れることを実証する。
【0233】
(方法)
マウス:C57BL/6 雄マウスは、チャールズ・リバー・ラボラトリー・ジャパン(横浜、日本)から4週齢で購入し、(独)農研機構・食品総合研究所内のSPF(Specific Pathogen Free)動物施設にて維持し、5週齢に達したものを用いた。6匹のマウスにAIN−93M(オリエンタル酵母)に与えコントロール群とし、16匹のマウスに高コレステロール食として高コレステロール・クリントン−シブルスキー齧歯類飼料(15.8% 脂肪、1.25%コレステロール、および、0.5% コール酸ナトリウム (D12109C, Research Diet Inc., New Brunswkc, NJ, USA)を16週間与えた。この動物実験は、「動物の愛護および管理に関する法律」、「実験動物の使用および保管ならびに苦痛の軽減に関する基準」等に基づいて作成された、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の動物実験等の指針、ならびに独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所(以下、食品総合研究所)の動物実験委員会における審査を受け承認されたものである。
【0234】
(血清脂質測定)
マウスは、イソフルラン軽麻酔のもと、全採血により屠殺した。各マウスの総コレステロール量(図16A)、HDLコレステロール量(図16B)、および、LDLコレステロール量(図16C)は、比色定量法(和光純薬、大阪、日本)により測定した。LDLは、高コレステロール食、および、正常食マウスの血清から、連続超遠心分離により分離した後、0.03mM EDTAを含むPBSで透析した。
【0235】
(マイクロプレートを用いた競合結合アッセイ)
50μlのリフォールドしたCTLD14 溶液(15μg/ml のCTLD14を含む)を96穴ウェルプレートの各ウェルに加え、14時間4℃で反応させた。タンパク質溶液を除いた後、200μlのTBSで洗浄し、続いてブロッキング溶液LN102 (NOF Corporation)200μlを加え、4℃で14時間反応しブロッキングを完了した。50μlのサンプル(TBSで希釈した血清、もしくはLDL)を各ウェルに添加し、続いて、50μlのDiI標識DiD−AcLDLを添加し、37℃で2時間反応させた。反応液を除去し、各ウェルを200μlのTBSで5回洗浄した後、100μlのTBSを添加し、蛍光プレートリーダー(Wallac Arvo SX, Perkin Elmer, Waltham MA, USA)により蛍光強度(励起波長:520nm,蛍光波長:550nm)を測定した。結果は、3回の独立した測定から得られた値を、サンプル無しのウェルから得られる蛍光強度を100%とした相対値(%)で表した(図17、A:血清、B:LDL)。
【0236】
(酵素結合イムノソルベントアッセイ)
正常食、もしくは、高コレステロール食群から調製したLDL 100μl(タンパク量で1〜100μg/ml)を96ウェルプレートの各ウェルに加え、4℃で14時間反応させた。LDL溶液を除いた後、各ウェルを200μlのTBSで洗浄し、続いてブロッキング溶液LN102 (NOF Corporation)200μlを加え、37℃で2時間反応しブロッキングした。抗HNE−ヒスチジンモノクローナル抗体(日本油脂, Tokyo, Japan)100μl(0.5μg/ml の抗体を含む)を各ウェルに添加し、37℃で2時間反応させた。抗体溶液を除いた後、TBSで5回洗浄し、100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウス抗体(Bio Rad)を添加し、37℃で1時間反応させた後、TBSで5回洗浄した。各ウェルに基質であるTMB溶液を100μl添加し、室温で発色させ、100μlの1N HClの添加により反応を停止した後、マイクロプレートリーダー(Wallac Arvo SX, Perkin Elmer)により450nmの吸光度を測定した。結果は、3回の独立した実験の平均で示した(図18,B−2)。
【0237】
(実施例8:糖尿病の進行状態の指標としての血清(血漿)中グルコース量)
実施例6で示したように、糖尿病発症の指標と成る血糖値は既に16日目で上昇が観察され、22日目に、AGEs様活性の上昇が観察された。しかし、腎症の症状(飲水量の増大など)は観察されなかったため、腎症の症状が出る前に、AGEs様活性が上昇することが示された。その後、経過を観察し(26日目頃から飲水量が多少は増えた)71日目に全採血を行い、腎症マーカーであるクレアチニン濃度を測定し、腎症が発症していることを確認した。同時に血清中のグルコース濃度も精密な測定法により測定した。ここで、71日目の採血の主眼は、クレアチニン量の測定であり、糖尿病発症の指標である血中のグルコース濃度は、以前から有意に高かったことが、実施例6に記載されている。
【0238】
本実施例では、実施例6までは、グルコース濃度を直接定量せずに血糖値計で簡便に測定していたのを、最終確認としてグルコース測定キットにより厳密に測定し、従来の簡便な測定法との相関を確認し、本発明の方法の厳密性を確認した。
【0239】
より詳細には、本実施例では、71日目に全採血を行い、その血清中のグルコース濃度を正確に測定するために、グルコースCII−テストワコーを用い、検量線は、製造業者の指示書に基づき作成して測定を行った。
【0240】
(使用したマウス)
実施例6までに使用していたマウス(Stz処理BALB/cマウス)を使用した。
【0241】
(測定方法および結果)
発色試薬は、発色剤1瓶(150ml用)を緩衝液(150ml)に溶解し調製した。血清、および標準液(ブランクは蒸留水)各2μlを96穴マイクロプレートに入れ(同一試料に関して3ウェルで測定)、続いて発色試薬300μlをそれぞれのウェルに加えよく混合した。37℃で5分間置いた後に、505nmと600nmにおける吸光度を測定し、両者の差を測定値とした。標準液から検量線を作成し、検量線から試料中のグルコース濃度を求めた。図19において、これらの測定結果を横軸に、従来の血糖値計による測定値を縦軸としてプロットした結果を示す。この図では、血糖値と上記グルコース測定キットとの相関が示される。また、血清中のグルコース濃度を正確に測定した場合もコントロール群およびストレプトゾトシン投与群での結果を図20に示す。
【0242】
これらの結果から、標準血清による検量線を作成から、各マウスの血清中のグルコース濃度を測定したところ、グルコースキットによる測定値と血糖値計による測定値間には相関があり(図19)、血清中のグルコース濃度を正確に測定した場合もコントロール群とストレプトゾトシン投与群での顕著な差は当然認められたが(図20)、経時的な変化を定量していた血糖値計による簡便な測定でも問題がないことが確認された。
【0243】
(実施例9:腎症の進行状態の指標としての血清(血漿)中クレアチニン量)
本実施例では、22日目に既にAGEs様活性が検出されていたが、その後、腎症に至ったのかを明らかにする目的で、全採血時に血清中のクレアチニン濃度の測定を行った。測定は、ラボアッセイクレアチニンTM(Jaffe法;和光純薬)を用いた。測定に際し、製造業者の指示書に基づき標準血清による検量線を作成し、サンプルのクレアチニン濃度を求めた。
【0244】
(使用したマウス)
実施例6までに使用していたマウス(Stz処理BALB/cマウス)を使用した。
【0245】
(測定方法および結果)
50μlの試料に除タンパク試薬300μlを加え混合し、室温で10分間放置した後、2,500rpmで10分間遠心分離した。除タンパクした試料、ならびに、検量線作成用標準液100μlを96ウェルマイクロプレートに添加した(同一試料に関して3ウェルずつ)。ブランク(標準液ゼロ)として、蒸留水100μlをウェルに添加した。続いて、ピクリン酸 50μlを入れ、さらに、0.75 mol/l 水酸化ナトリウム溶液を50μl添加し、よく混合し、25〜30℃で20分間放置した。その後、30分以内に、520nmの吸光度を測定した。血清中のグルコース濃度とクレアチン濃度の個体毎の相関を示したのが図21である。コントロール群は、グルコース濃度は200mg/dl以下、クレアチン濃度は、0.4〜0.7mg/dlの範囲にあるのに対して、Stz群は、グルコース濃度が400mg/dlを越え、さらに、グルコース濃度の高い個体においては、クレアチニン量も0.7mg/dl以上の値を示す個体が多かった(図21)。さらに、コントロール群とStz群のクレアチン濃度の平均値は、Stz群の方が有意に高かった(図22)。このことから、Stz群では、糖尿病発症に引き続き、腎症も発症したと考えられる。しかし、AGEs様活性が検出された22日目では、飲水量の増加を腎症発症の最も簡便な指標として測定したところ、腎症の発症を明確に捉えることはできなかった。
【0246】
したがって、22日目に既にAGEs様活性が検出されていたが、その後、腎症に至ったことが実証された。
【0247】
(実施例10:時系列のデータのまとめ)
これまでの実施例に加え、血糖値または血中グルコース濃度について、これまでのデータ(0日目、16日目、22日目)に加え、同様の実験を57日目および71日目のサンプルについても行い、データも採取し、時系列に沿って纏めたものを図23〜図27に示す(したがって、本実施例において提示するデータは、実施例1〜9に記載のものと一部重複する。)。
【0248】
詳細には、図23〜図27は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフであって、それぞれ0日目(図23)、16日目(図24)、22日目(図25)、57日目(図26)、71日目(図27)のものである。図中のAGEs様活性とは、Alexa546標識R−AGEの結合を100%阻害する濃度を100,全く阻害しない時の濃度を0として現した値であり、この値が高いほど、AGEs様活性を示す分子の含量が高いことを示す。0日目(図23参照)がStz投与開始日である。16日目(図24)には、Stz投与群の大半の個体で、血糖値の上昇が観察され、コントロール群に比べて有意に高い血糖値を示し始めており、糖尿病が既に誘導されていると考えられる。一方、AGEs様活性は、数個体で上昇が検出されたが、血糖値の顕著な上昇を示した個体とAGEs様活性の上昇を示した個体の相関は明瞭ではなかった。22日目(図25)になると、Stz群とコントロール群で血糖値の差が顕著になり、AGEs様活性の値も20以上を示す個体が増え、血糖値が高い個体ではAGEs様活性も高い傾向があるなど、発症群においてAGEs様活性が検出されている。糖尿病の発症に伴い、AGEs様活性を示す分子が生成されて来ていると考えられる。またこの段階では、飲水量の増大などの糖尿病腎症の発症を示す兆候は観察されず、腎症の兆候が現れる前に、AGEs様活性を示す分子が捉えられていると考えられる。
【0249】
57日目の採血の血清においては((図26)、Stz群で高い血清中のグルコース濃度が検出され、AGEs様活性も全般に高くなっていたが、グルコース濃度との相関は高くなかった。さらに、コントロール群のAGEs様活性も上昇しており、この回の採血結果からは糖尿病の進行に伴い、AGEs様活性を示す分子が顕著に蓄積されることが明瞭には示されなかった。
【0250】
71日目に当たる11月25日のStz群では、高グルコース濃度を示し、コントロール群とは有意な差を示した。さらに、AGEs様活性もコントロール群よりも高く、グルコース濃度、AGEs様活性共に高い個体も多かった。図28は、71日目の血清中のクレアチニン量を測定し、AGEs様活性との相関をみたものであるが、コントロール群に対し、Stz群では、クレアチニン濃度、AGEs様活性共に高い個体が多く観察された。クレアチニンは腎症のマーカーであるから、Stz群では糖尿病の進行に伴い腎症が発症していることが確認されたといえる。また、AGEs様活性は、既に22日目から検出されており、57日目の結果はコントロール値が異常値を示しているため、誤操作の可能性と判断されることから、腎症発症よりも早い段階で検出可能であり、AGEs様活性の測定は、腎症発症を早い時期に捉えるマーカーになり得ると言える。
【0251】
このようにコントロールマウスおよびStzマウスの血清中グルコース濃度、AGEs様活性の変化を経時的に追跡した結果、個体毎に両者の相関が示されたといえる。また、0日目から22日目までは、Stz群で血糖値、AGEs様活性が共に上昇する個体数が多いことが観察され、71日目でもその傾向は観察された。22日目の段階では、腎症発症の簡便な目安である飲水量の増大などは認められていなかったが、この時点で既にAGEs様活性の上昇がみられた。さらに、71日目では、腎症発症の指標となる血中クレアチニン量も測定したが、Stz群において、AGEs活性とクレアチニン濃度が共に高い個体が多いことも確認された。
【0252】
以上からAGEs様活性は糖尿病または糖尿病性腎症の診断のために使用することができ、また、糖尿病性腎症の予備的な診断(予測)、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断(予測)も可能であることが実証され、診断マーカーとして有用であることが実証された。
【0253】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0254】
CTLD様ポリペプチド−界面活性剤結合複合体およびRAGE様ポリペプチド−界面活性剤結合複合体は、糖尿病、動脈硬化、糖尿病性血管障害、糖尿病性腎症などの早期診断、機能性食品の予防効果評価、生活改善や投薬による治療効果の評価など様々な分野で活用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0255】
配列番号1:PR−CTLDまたはCTLDをコードする核酸配列
配列番号2:PR−CTLDまたはCTLDのアミノ酸配列
配列番号3:PR−Lox−1またはLox−1をコードする核酸配列
配列番号4:PR−Lox−1またはLox−1のアミノ酸配列
配列番号5:PR−CTLD14またはCTLD14をコードする核酸配列
配列番号6:PR−CTLD14またはCTLD14のアミノ酸配列
配列番号7:Lox−1のCTLD+ネックまたはPR−CTLD+ネックをコードする核酸配列
配列番号8:Lox−1のCTLD+ネックまたはPR−CTLD+ネックのアミノ酸配列
配列番号9:RAGEまたはmRAGEをコードする核酸配列
配列番号10:RAGEまたはmRAGEのアミノ酸配列
配列番号11:RAGE8またはmRAGE8をコードする核酸配列
配列番号12:RAGE8またはmRAGE8のアミノ酸配列
配列番号13:RAGE1またはmRAGE1をコードする核酸配列
配列番号14:RAGE1またはmRAGE1のアミノ酸配列
配列番号15:RAGE2またはmRAGE2をコードする核酸配列
配列番号16:RAGE2またはmRAGE2のアミノ酸配列
配列番号17:RAGE3またはmRAGE3をコードする核酸配列
配列番号18:RAGE3またはmRAGE3のアミノ酸配列
配列番号19:RAGE4またはmRAGE4をコードする核酸配列
配列番号20:RAGE4またはmRAGE4のアミノ酸配列
配列番号21:RAGE7またはmRAGE7をコードする核酸配列
配列番号22:RAGE7またはmRAGE7のアミノ酸配列
配列番号23:RAGE143またはmRAGE143をコードする核酸配列
配列番号24:RAGE143またはmRAGE143のアミノ酸配列
配列番号25:RAGE223またはmRAGE223をコードする核酸配列
配列番号26:RAGE223またはmRAGE223のアミノ酸配列
配列番号27:RAGE226またはmRAGE226をコードする核酸配列
配列番号28:RAGE226またはmRAGE226のアミノ酸配列
配列番号29:AviTag配列 GLNDIFEAQKIEWHE
配列番号30:Streptag配列 AWRHPQFGG
配列番号31:StreptagII配列 WSHPQFEK
配列番号32:順方向プライマー(RAGE1、RAGE2、RAGE3、RAGE7、RAGE8、RAGE9、RAGE143、RAGE223およびRAGE226に共通)5’−CTACATATGGCTCAAAACATCACAGC−3’
配列番号33:RAGE1逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAGCCTGCAGTTGGCCC−3’
配列番号34:RAGE2逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGACCAGACACGGGGCTG−3’
配列番号35:RAGE3逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAAGCTACTGCTCCACC−3’
配列番号36:RAGE7逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAAACACCAGCCGTGAGT−3’
配列番号37:RAGE8逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAAATCTGGTAGACACGG−3’
配列番号38:RAGE9逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGACTTGGTCTCCTTTCC−3’
配列番号39:RAGE4順方向プライマー
5’−TCGCATATGGCAATGAACAGGAATGG−3’
配列番号40:RAGE4逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAGCCTGCAGTTGGCCC−3’
配列番号41:RAGE143逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGTCCCCACCTTATTGGG−3’
配列番号42:AGE223逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGCTGTGCGCAAGGCCCG−3’
配列番号43:RAGE226逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGACTGGATGGGGGCTGTGC−3’
【技術分野】
【0001】
本発明は、AGEsまたはOxLDL等のリガンド様活性の新規検出技術および生活習慣病危険因子などの検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レクチン様酸化低密度リポタンパク質(LDL)受容体1(Lectin−like Oxidized LDL receptor:本明細書中以降、LOX−1ともいう)は、アテローム発生の原因となる酸化LDL(本明細書中以降、OxLDLともいう)のような変性LDLに対する特有のスカベンジャー受容体であり、1997年に、培養ウシ大動脈内皮細胞において初めて同定された。LOX−1は、他のスカベンジャー受容体と機能的には類似しているにもかかわらず、構造的には異なる独特の構造を有している。
【0003】
ウシLOX−1(bLOX−1)は、C型レクチンファミリーに属する273アミノ酸残基からなる分子量約50kDaの糖タンパク質であり、N末端が細胞質内にあり、C末端が細胞外に出ている細胞膜1回貫通型のII型膜タンパク質である。ヒトLOX−1(hLOX−1)はまた、C型レクチンファミリーに属する273アミノ酸残基からなる約30kDa(139位および183位の糖鎖付加により、分子量約40kDa)のII型膜タンパク質である。この受容体は、構造的には、以下の4つのドメイン:N末端側の細胞質ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン、ネックドメイン、およびC型レクチン様ドメイン(本明細書中以降、CTLDという)からなる。このCTLDは、種間で、特に、6個のシステイン残基の位置で高度に保存されており、LOX−1のリガンドを認識するための機能的ドメインである。このCTLD中の6個のシステイン残基は、hLOX−1の分子内ジスルフィド結合に関与している。この保存されたCTLDに加えて、hLOX−1および他の既知の種におけるネックドメインは、高い配列同一性を有している。また、Xieら(非特許文献1:Protein Expression and Prification 32:68−74(2003))によれば、CTLDが変性LDLを結合するのに十分な最小ドメインであり、たとえCTLDがグリコシル化されていなくても、変性LDLを認識および結合できることが明らかにされた。
【0004】
これまでの研究により、LOX−1は、血管内皮細胞のみならず、マクロファージおよび活性化血管平滑筋細胞において発現されており、構造的に関連性のない種々の高分子(変性LDL、細菌、老化赤血球、アポトーシスを受けた細胞、および血小板があげられる)を認識し、生体防御機構や炎症性機転などの種々の生命現象において重要な役割を果たしていること、そしてその発現は種々の条件下で、高脂血症、糖尿病、高血糖、高血圧症、高血圧性腎硬化症、動脈硬化、虚血再灌流傷害、血管バルーン傷害後のような病態;ならびに酸化LDL、アンジオテンシンII、エンドセリン、TNF−α、後期糖化反応生成物(AGE)、TGF−β、8−イソ−プロスタグランジンF2α、ズリ応力のような刺激によって、調節されていることが分かっている(非特許文献2:Folia Pharmacol.Jpn. 127,103−107(2006))。
【0005】
変性LDL測定に関しては、疾病の早期診断、機能性食品の予防効果評価、生活改善や投薬による治療効果の評価など様々な分野での活用が期待されている。これまで、ヒト血漿中の動脈硬化危険因子である変性LDLの測定には、モノクローナル抗体が用いられてきたが、特に変性LDLは分子の修飾構造は一定ではなく、意味のある分子種が明確でないなどの理由で、モノクローナル抗体による検出にも問題が多い。
【0006】
後期糖化反応生成物(Advanced Glycation End Products:本明細書中以降、AGEという)は、糖尿病患者の生活の質を損ねる元凶である血管合併症として知られる糖尿病性血管障害の発症・進展に関与している。血管合併症による眼、神経、腎臓の障害は、それぞれ糖尿病網膜症、神経症、腎症(あわせて三大合併症)とよばれており、糖尿病患者に特徴的な病態である。
【0007】
AGEを認識する受容体(Receptor for AGE:本明細書中以降、RAGEという)は、1992年に、ウシ肺から同定され、AGEと結合するイムノグロブリンスーパーファミリーに属する、分子量約35kDaのI型膜タンパク質(糖鎖修飾を受けた完全なRAGEは、分子量55kDa)である。RAGEの細胞外ドメインは、1つのV型イムノグロブリンドメイン、続いて、2つのC型イムノグロブリンドメイン(C1領域およびC2領域)の3つのイムノグロブリンフォールド構造を取るドメインが結合した構造を取っている。RAGEはまた、細胞膜1回貫通型のドメインおよび43アミノ酸の細胞内ドメインを含む。RAGEは、多様なクラスのリガンド(AGE、S100/カルグラニュリン(calgranμline)、アンホテリンおよびアミロイド−βペプチド(およびβ−シート原線維のクラス))と相互作用する。Vドメインは、リガンド結合に必須の部位であり、細胞内ドメインは、RAGE媒介性細胞内シグナル伝達に必須であることが示された(非特許文献3:Circ Res.2003;93:1159−1169)。
【0008】
RAGEは、正常組織および血管系においては低レベルでしか発現されない。しかし、この受容体は、そのリガンドが蓄積した場所においてアップレギュレートされる。例えば、糖尿病患者の血管では、RAGEの代表的リガンドとしては、以下のAGE構造体が挙げられる:(カルボキシメチル)リジン−タンパク質付加物(インビボで存在する主なAGE)、カルボキシエチル−リジン(CEL)タンパク質付加物、ペントシジン−付加物(コラーゲンおよび基底膜の不安定化に関連した糖尿病組織において見いだされる主要なAGE架橋物質)、ピラリン、イミダゾロン、メチルグリオキサール(他の範囲のAGEの形成の前駆体)、クロスリン、フルオロリンク、プロピリジン、アルグピリミジン、ベスパーリジン、グリオキサール誘導リジンダイマー、デオキシグルコサミン誘導リジンダイマーなど。RAGEの発現は、糖尿病血管系において内皮細胞、平滑筋細胞、および浸潤性単核食細胞で増加している。AGE−RAGE相互作用は、血管系ホメオスタシスにおいて重要な細胞の特性を変化させる。例えば、RAGEがAGEと結合した後、内皮細胞は、VCAM−1、組織因子、およびIL−6の発現、ならびに高分子へのそれらの透過性を増加させる。単核食細胞において、RAGEは、サイトカインおよび増殖因子の発現を活性化し、可溶性AGEに応じて細胞移動を誘導するのに対して、走触性は、固定リガンドで起こる(非特許文献4:J.Clin.Invest.108:949−955(2001))。
【0009】
本発明者らは、これまでに、LOX−1変異体−界面活性剤複合体およびRAGE変異体−界面活性剤複合体、ならびにこれらを用いて生活習慣病危険因子などを検出する方法を出願した(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−320489号公報
【特許文献2】特開2002−181820号公報
【特許文献3】特開2003−36499号公報
【特許文献4】特開2003−238404号公報
【特許文献5】特開2003−125786号公報
【特許文献6】特開2002−17353号公報
【特許文献7】特開2009−108037号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Protein Expression and Prification 32:68−74(2003)
【非特許文献2】Folia Pharmacol.Jpn. 127,103−107(2006)
【非特許文献3】Circ Res.2003;93:1159−1169
【非特許文献4】J.Clin.Invest.108:949−955(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らが提出した特許文献7では、特異的分子を用いていることから、その反応特異性に依拠せざるを得ず、OxLDL様分子およびRAGE分子について網羅的な検出ができないという点があり、これを克服することが困難であった。したがって、病変の検出においても、偽陰性の可能性を極小化できないと考えられることから、これを克服することを1つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明では、本発明者らは、OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法またはAGEs様活性を示す分子の検出または定量方法として、固相に固定されたRAGE143またはその改変体あるいは固相に固定されたCTLD14またはその改変体の存在下で、サンプルに標識したAGEまたは標識したOxLDLを接触させる工程を利用することによって、網羅的検出または定量を可能にした。
【0014】
したがって、本発明は、以下を提供する。
(1)AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法であって、
(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるAGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法。
(2)糖尿病性腎症の予備的な検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法。
(3)糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる糖尿病に罹患した被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法。
(4)糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該固定化されたAGEもしくはその改変体に対する該RAGE分子または該AGEもしくはその改変体のリガンドの結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、工程を包含する、方法。
(5)前記RAGE分子は、RAGE143、RAGE1、RAGE223、RAGE226またはその改変体である、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(6)前記AGE分子は、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体である、項目1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(7)OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法であって、
(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたCTLD分子の存在下で標識した変性LDLに接触させるか、または固相に固定された変性LDLの存在下で、標識したCTLD分子に接触させる工程、
および
(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法。
(8)前記CTLD分子は、CTLD14、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長、CTLDまたはそれらの改変体である、項目7に記載の方法。
(9)前記変性LDLは、酸化LDL(OxLDL)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL、糖化LDL、アセチル化LDLまたはその改変体である、項目7または8に記載の方法。
(10)AGEs様活性を示す分子の検出または定量のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する手段
を備え、該結合の阻害の存否またはレベルは、AGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、キット。
(11)糖尿病性腎症の予備的な診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該RAGE分子の結合を検出する手段
を備え
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、キット。
(12)糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段
を備え、
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、キット。
(13)糖尿病または糖尿病性腎症の診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段
を備え、
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、キット。
(14)前記RAGE分子は、RAGE143、RAGE1、RAGE223、RAGE226またはその改変体である、項目10〜13のいずれか1項に記載のキット。
(15)前記AGE分子は、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体である、項目10〜14のいずれか1項に記載のキット。
(16)OxLDL様活性を示す分子の検出または定量のためのキットであって、
(A)固定されたCTLD分子を有する固相および標識した変性LDL、または固定された変性LDLを有する固相および標識したCTLD分子;および
(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する手段
を備え、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、キット。
(17)前記CTLD分子は、CTLD14、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長、CTLDまたはその改変体である、項目16に記載のキット。
(18)前記変性LDLは、酸化LDL(OxLDL)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL、糖化LDL、アセチル化LDLまたはその改変体である、項目16または17に記載のキット。
(19)AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病性腎症の予備的な診断マーカー。
(20)AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断マーカー。
(21)AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病または糖尿病性腎症の診断マーカー。
(22)糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用。
(23)糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用。
(24)糖尿病または糖尿病性腎症の診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、使用。
【0015】
本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のCTLD分子を用いたアッセイによって、簡便性は顕著に上がっているといえる。従来の手法が、試料添加後に3段階も別の反応を行う必要があったのが、反応は試料添加の1段階のみであって、従来の手法のように強酸などの劇薬は一切使用しないという点で安全なアッセイが提供されたとも言える。
【0017】
また、CTLD分子を用いたアッセイによって、網羅性に関しても顕著な効果が発揮された。すなわち、変性LDLとは構造が異なる分子でCTLD14に認識されることが示されている分子(機能は明確ではないがHsp:分子シャペロンであるheat shock protein等)にまで拡張された。また従来の手法では捕捉できなかった分子も検出可能になり、網羅性は改善された。加えて、結合は弱いものの、 AGEsもCTLD14のリガンドとして認識することができる。従来の手法では、全く別の抗体(しかも特異性が低い)を準備して別個に反応を行う必要があった、本発明の手法では変性LDLと同時にリガンド様活性を示す分子として検出可能でとなった。
【0018】
本発明のRAGE分子を用いたアッセイでも顕著な効果を奏することがわかった。変性LDLおよび血糖値の管理に使われているヘモグロビン・エー・ワン・シー(HbA1c)についても、RAGEは認識するものの、R−AGEなどのAGEs(後期糖化反応生成物)と構造が異なることから、従来の手法では同時検出は困難であった。本発明の手法では、リガンド様活性を示す分子として同時に検出が可能となった。また、Lys−AGEのような低分子リガンドも同時に検出可能となったことから、網羅性についても、本発明のRAGE分子を用いたアッセイでは改善されているといえる。
【0019】
血糖値上昇の後にAGE様分子が上がり、その後飲水量が増加することから、飲水量が増加することが一つの糖尿病性腎症の指標であることから、「予測診断」が可能といえる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、RAGEを固定化した96穴プレートを用いて、クエルセチンを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図2】図2は、RAGEを固定化した96穴プレートを用いて、LOX−1阻害剤のモデルとしてOxLDLを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図3】図3は、RAGEを固定化した96穴プレートを用いて、LOX−1阻害剤のモデルとしてG−AGEを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図4】図4は、RAGEを固定化した96穴プレートを用いて、LOX−1阻害剤のモデルとしてR−AGEを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図5】図5に蛍光標識モデルリガンドとして水溶性色素Alexa546でラベルしたR−AGEを使用して行ったコントロール実験を示す。図5左に使用した細胞の位相差像を示し、図5中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図5右にリガンドを結合した細胞像を示す。図5右にある白い点が結合したリガンドである。
【図6】図6に図5と同様の順で行った実験の、クエルセチンの添加の場合の写真を示す。図6左に使用した細胞の位相差像を示し、図6中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図6右にリガンドに加えクエルセチンを加えた細胞像を示す。図6右に示すように、クエルセチン添加によりリガンドの結合が阻害されることが細胞における高感度観察で確認された。
【図7】図7は、図5と同様の順で、R−AGEの添加の場合の写真を示す。図7左に使用した細胞の位相差像を示し、図7中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図7右にリガンドに加えR−AGEを加えた細胞像を示す。図7右に示されるように、R−AGE添加によるリガンド結合の阻害を示す蛍光像が示される。
【図8】図8は、LOX−1を固定化した96穴プレートを用いて、クエルセチンを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図9】図9は、LOX−1を固定化した96穴プレートを用いて、OxLDLを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図10】図10は、LOX−1を固定化した96穴プレートを用いて、AcLDLを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図11】図11は、OxLDLを固定化した96穴プレートを用いて、OxLDLを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図12】図12は、OxLDLを固定化した96穴プレートを用いて、クエルセチンを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図13】図13は、CTLD分子としてCTLD14を固定した96穴プレートを用いて、変性LDLの例としてOxLDLを標識した例を用いてクエルセチンを0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.5μg/アッセイ、2.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加したときの、相対結合活性(%、クエルセチン無添加を100%とする。)を示す。
【図14】図14は、LOX−1を蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現させた細胞を用い、OxLDLをコントロールリガンドとして用いたコントロール実験を示す。図14左に使用した細胞の位相差像を示し、図14中央にLOX−1(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図14右にリガンドを結合した細胞像を示す。図14右にある白い点が結合したリガンドである。
【図15】図15は、図14と同様の順で、クエルセチンを添加した場合の写真を示す。図15左に使用した細胞の位相差像を示し、図15中央にLOX−1(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図15右にリガンドに加えクエルセチンを加えた細胞像を示す。図15右に示すように、クエルセチン添加によりリガンドの結合が阻害されることが細胞における高感度観察で確認された。
【図16】図16は、実施例7において、高コレステロール・クリントン−シブルスキー齧歯類飼料、もしくは、正常食を与えたマウスの血清脂質濃度の測定結果を示す。総コレステロール量、HDLコレステロール量、LDLコレステロール量を比色定量法(和光純薬、大阪、日本)により測定した結果を示す。高コレステロール食群では、総コレステロール値がコントロール群に比べて有意に高く(図16−A)、さらに、コレステロールの中でもHDLコレステロール値には大きな差がない(図16−B,コントロール群 (69.7±3.4 mg/dl)vs. 高コレステロール食群(65.4±2.4 mg/dl))が、LDLコレステロール値では、コントロール群(47.5±4.0 mg/dl) vs.高コレステロール食群(112.9±4.9 mg/dl)と有意に高いことが確認され(図16−C)、高コレステロール食群では、高脂血症を発症していることが確認された。このことから、本実施例に用いた抗コレステロール食マウスは、高脂血症モデルマウスとして活用可能なことが示された。*は、正常食(コントロール食)に対する統計学的有意を示す(P<0.05)。
【図17】図17は、高脂血症モデルマウス(高コレステロール食群)と健常群マウス(コントロール)由来の血清のDiI標識AcLDLのLOX−1固定化プレートへの結合阻害活性を測定した結果である。高脂血症モデルマウス由来の血清は、30%の阻害活性を示したが、健常群由来の血清では、12%阻害に過ぎず、有意水準(P<0.05)で統計学的に有意な阻害活性が認められた(リガンド様活性を示す分子が存在することが示された)。LDLに関しても、高脂血症モデルマウス由来のLDLは、13%の阻害活性を示したが、健常群由来のLDLでは、3%阻害に過ぎず、有意水準(P<0.05)で統計学的に有意な阻害活性が認められた。*は、正常食(コントロール食)に対する統計学的有意を示す(P<0.05)。
【図18】図18は、高脂血症モデルマウス、ならびに、健常マウス由来のLDL中に、LDLの酸化に伴い生じる酸化LDL(リガンド活性を示す分子)に特徴的な構造である4−ヒドロキシ−2−ノネナール(HNE)が生成していることを抗HNEモノクローナル抗体との反応性により比色定量した結果である。健常マウス由来のLDLは、ほとんど反応しないが(OD≒0)、高脂血症モデルマウス由来のLDLは顕著な反応性を示し(OD=0.3)、有意水準(P<0.05)で統計学的に有意な差が認められた。このことから、高脂血症モデルマウス由来のLDLには、LOX−1のリガンド様活性を示す分子が統計学的に有意に存在していることが示され、図17において、示された阻害活性の結果と合わせて、本出願の手法により、リガンド様活性を示す分子が効率的に検出し得ることが示された。*は、正常食(コントロール食)に対する統計学的有意を示す(P<0.05)。
【図19】図19は、血糖値計による血糖値とグルコース測定キットによる血清中のグルコース濃度の相関を示すグラフである。
【図20】図20は、健常マウスとストレプトゾトシン投与により糖尿病を誘導させた糖尿病モデルマウスの血清中のグルコース濃度を測定した結果である。
【図21】図21は、血清中のグルコース濃度とクレアチン濃度の個体毎の相関を示す図である。
【図22】図22は、健常マウスとストレプトゾトシン投与により糖尿病を誘導させた糖尿病モデルマウスの血中クレアチン濃度を示す図である。本発明のRAGEのリガンド様活性を示す分子が検出された群において、後日、腎症発症の指標となる血中クレアチニン濃度が上昇することが確認された。
【図23】図23は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフのうち0日目のグラフである。
【図24】図24は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフのうち16日目のグラフである。
【図25】図25は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフのうち22日目のグラフである。
【図26】図26は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフのうち57日目のグラフである。
【図27】図27は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフのうち71日目のグラフである。
【図28】図28は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血清中のクレアチニン量」を経時的に測定し、個体毎の相関を示した71日目のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞または形容詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0022】
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「受容体」とは、1個以上のリガンドと可逆的、かつ特異的に複合体化する1個以上の結合ドメインを備える生物学的な構造であって、ここで、この複合体化は生物学的な構造を有する。受容体は、完全に細胞の外部(細胞外の受容体)、細胞膜の中(しかし、受容体の部分を細胞外部の環境および細胞質ゾルに向けている)、または完全に細胞の中(細胞内の受容体)に存在し得る。これらはまた、細胞と独立的に機能し得る。細胞膜中の受容体は、細胞を、その境界の外部の空間と連絡(例えば、シグナル伝達)させ、そして細胞の内側および外側への分子およびイオンの輸送において機能させることを可能とする。本明細書において使用する場合、受容体は、受容体全長であっても、受容体のフラグメントであってもよい。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「レクチン様酸化低密度リポタンパク質(LDL)受容体1(Lectin−like Oxidized LDL receptor)」とは、LOX−1ともいわれ、(1)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号4に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(3)上記配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号4に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(5)配列番号3に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)上記配列番号3に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(7)上記配列番号3に示される核酸配列において1または数個のヌクレオチドの置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(8)上記配列番号3に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;および(9)上記配列番号3に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド、のうちの1つである。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。また、LOX−1としては、ヒトLOX−1(hLOX−1ともいう)、ウシLOX−1(b−LOX1ともいう)、ブタLOX−1、マウスLOX−1、ウサギLOX−1のような哺乳動物のLOX−1が挙げられるが、これらに限定されない。bLOX−1は、C型レクチンファミリーに属する273アミノ酸残基からなる分子量約50kDaの糖タンパク質であり、N末端が細胞質内にあり、C末端が細胞外に出ている細胞膜1回貫通型のII型膜タンパク質である。hLOX−1はまた、C型レクチンファミリーに属する273アミノ酸残基からなる約30kDaのII型膜タンパク質である。LOX−1は、構造的には、以下の4つのドメイン:N末端側の細胞質ドメイン、疎水性膜貫通ドメイン、ネックドメイン、およびC型レクチン様ドメインからなる。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「C型レクチン様ドメイン」とは、「CTLD」ともいい、C型レクチンファミリーに属するメンバーの糖鎖認識部位と相同性を有する。CTLDは、このメンバー間で、種間で非常によく保存されており、6個のシステイン残基の位置は、完全に保存されている。また、CTLDは、LOX−1のリガンドを認識するための機能的ドメインであり、この中の6個のシステイン残基は、hLOX−1の3カ所の分子内ジスルフィド結合に関与している。従って、本発明の変異LOX−1−界面活性剤複合体は、配列番号4のアミノ酸配列において、144位、155位、172位、243位、256位、264位におけるシステインが保持されていることが好ましい。同様に、本発明のCTLD−界面活性剤複合体においても、配列番号4のアミノ酸配列における144位、155位、172位、243位、256位、264位におけるシステインに対応するアミノ酸が保持されていることが好ましい。この保存されたCTLDに加えて、hLOX−1および他の既知の種におけるネックドメインは、高い配列同一性を有している。また、hLOX−1における140位のシステインは、分子間ジスルフィド結合に関与し、hLOX−1の二量体を形成する。しかし、この140位のシステインは、変性LDLの認識に必須ではないので、発現された場合に、必ずしもこの140位のシステインが保持されている必要はなく、変異されていてもよい。さらに、hLOX−1では、183位のNと139位のNにおいて糖鎖が付加されている。糖鎖が付加されたhLOX−1の分子量は、50kDaである。通常hLOX−1はグリコシル化されているが、たとえグリコシル化されていなくても、グリコシル化された通常のhLOX−1と同様に、変性LDLを認識および結合できる。上記CTLDは、変性LDLを結合するのに必要十分な最小ドメインである。このLOX−1のC末端の4残基(LRAQ)は、リガンドの認識と取り込みに必須であり、C末端の7残基(KANLRAQ)がhLOX−1のフォールディングと輸送に必須である。hLOX−1のW150、R208、R229、R231、R248等がリガンド認識と取り込みに必須のアミノ酸である。LOX−1はまた、細胞膜から切断され、可溶性形態として放出され、健常者の血中にも存在することが報告されている。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「CTLD様ポリペプチド」とは、「CTLD」、「PR(Protease−Resistant(プロテアーゼ耐性))−CTLD」、「CTLD14」(CTLD+ネックドメインのC末端側の14アミノ酸を有するポリペプチド)、「PR−CTLD14」、「CTLD+ネック」(CTLD+ネックドメインを有するポリペプチド)、または「PR−CTLD+ネック」に包含される全てのポリペプチドまたはその変異体を包含する。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「CTLD分子」とは、CTLD様ポリペプチドの他、それらの任意の複合体を含むことが理解される。したがって、CTLD分子には、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長(S61〜Q273)、CTLD14(129−143)、CTLD(143−273)等も包含されることが理解される。
【0028】
本明細書において使用される場合、「複合体」とは、2以上の部分を含む任意の構成体を意味する。例えば、一方の部分がポリペプチドである場合は、他方の部分は、ポリペプチドであってもよく、それ以外の物質(例えば、糖、脂質、核酸、他の炭化水素等)であってもよい。本明細書において複合体を構成する2以上の部分は、共有結合で結合されていてもよくそれ以外の結合(例えば、水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力等)で結合されていてもよい。2以上の部分がポリペプチドの場合は、キメラポリペプチドとも称しうる。したがって、本明細書において「複合体」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子を含む。そのような複合体としては、例えば、糖脂質、糖ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書では、配列番号2のアミノ酸を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントであって、LOX−1に関する生物学的な活性を有する限り、それぞれの改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸分子も使用することができる。また、そのような核酸分子を含む複合体も使用することができる。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「CTLD」および「PR−CTLD」とは、代表的には、(1)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列において90位および107位以外のアミノ酸位置で1または数個の置換、付加および/または欠失を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(4)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(5)上記配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)配列番号1に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号1に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)配列番号1に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列であって、該コードされるアミノ酸配列において90位および107位のアミノ酸は、配列番号2における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号1に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(10)上記配列番号1に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(11)上記配列番号1に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「CTLD14」および「PR−CTLD14」とは、(1)配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号6に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号6に示されるアミノ酸配列において104位および121位以外のアミノ酸位置で1または数個の置換、付加および/または欠失を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(4)上記配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(5)上記配列番号6に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)配列番号5に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号5に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)配列番号5に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列であって、該コードされるアミノ酸配列において104位および121位のアミノ酸は、配列番号6における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号5に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(10)上記配列番号5に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(11)上記配列番号5に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「CTLD+ネック」および「PR−CTLD+ネック」とは、(1)配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号8に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号8に示されるアミノ酸配列において172位および189位以外のアミノ酸位置で1または数個の置換、付加および/または欠失を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(4)上記配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(5)上記配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)配列番号7に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号7に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)配列番号7に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列であって、該コードされるアミノ酸配列において172位および189位位のアミノ酸は、配列番号6における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型LOX−1の活性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号7に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型LOX−1の活性を示すポリペプチド;(10)上記配列番号7に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(11)上記配列番号7に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0032】
なお、上記CTLD様ポリペプチドは、天然型LOX−1の活性が保持されている限り、非天然アミノ酸を含んでいてもよいし、アミノ酸アナログ、アミノ酸誘導体などを含んでいてもよい。
【0033】
上記に示されるCTLD様ポリペプチド−界面活性剤複合体においても、システイン残基は、分子内ジスルフィド結合に関与しているので、本発明のCTLD様ポリペプチドにおいて、配列番号4のアミノ酸配列の144位、155位、172位、243位、256位、264位に対応するシステインが保持されていることが好ましい。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「リガンド」とは、特異的な受容体または受容体のファミリーに対する結合パートナーである。リガンドは、受容体に対する内因性のリガンドであるか、またはその代わりに、薬剤、薬剤候補、もしくは薬理学的手段のような受容体に対する合成リガンドであり得る。
【0035】
本明細書において使用される場合、「変性LDL」とは、LDLが体内で活性酸素、酸化的酵素、Fe3+などと接触すること、あるいは、血管内皮細胞やマクロファージなどによる細胞依存性化学変化によって発生する種々の分子修飾を有する任意のLDL改変体である。生体内に存在する変性LDLとしては、代表的には、酸化LDL(本明細書中、OxLDLといい、例としては完全酸化LDL(本明細書中F−OxLDLともいう)および部分酸化LDL(本明細書中M−OxLDLともいう)が挙げられる)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL(直径255nm以下のLDL)、糖化LDL、アセチル化LDLなどが挙げられるが、これらに限定されない。酸化LDLが異常値を示す場合、動脈硬化症、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作など)、大動脈瘤、腎梗塞、高脂血症などのような疾患が予想されるがこれらに限定されない(「今日の臨床検査 2007−2008」発行所 株式会社 南江堂、参照)。一般に使用される検査方法では、基準物質としては、MDA−LDL(正常範囲:10〜80ΜL)および酸化ホスファチジルコリン(正常範囲:8.4U/mL〜17.6U/mL)が使用されている。本明細書において「OxLDL様活性を示す分子」とは、少なくとも上述のOxLDLの活性(本明細書において「OxLDL様活性」という。)の一つを有する分子をいう。そのようなOxLDL様活性としては、LOX−1に対する結合活性(リガンド活性)を挙げることができるが、それに限定されない。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「後期糖化反応生成物(Advanced Glycation End Products)」とは、AGEともいわれ、糖尿病患者の生活の質を損ねる元凶である血管合併症として知られる糖尿病性血管障害の発症・進展に関与している。グルコースに代表される還元糖は、タンパク質、アミノ酸のアミノ基と非酵素的に反応して、シッフ塩基またはアマドリ転位化合物などの糖化生成物を形成する。ここまでの反応は可逆的であり、前期反応とよばれている。その後、さらに縮合、開裂、架橋形成などの複雑かつ不可逆的な反応を経て、後期糖化反応生成物を形成する。このような一連の反応は、グリケーションと称される。AGEはまた、このような過程を経て生成された構造物の総称である。生体中に存在するAGE構造としては、カルボキシメチルリジン(CML)、カルボキエチルリジン(CEL)、ペントシジン、ピラリン、イミダゾリン、メチルグリオキサール、クロスリンなどが挙げられるが、これに限定されない。血漿中に存在するアルブミン、イムノグロブリン、オボアルブミンなどが上記の糖化を受けた産物もAGEであり、AGEとして実験系に汎用されている。さらに、インビトロ実験系では、BSA(ウシ血清アルブミン)に糖化処理を施したもの、例えば、R−AGE(リボースにより糖化処理をしたBSA)、F−AGE(フルクトースにより処理をしたBSA);G−AGE(グルコースにより糖化処理をしたBSA)なども汎用されている。血糖コントロールの指標として用いられているヘモグロビンA1cはアマドリ転移化合物であるが、AGEに包含される。また、任意のタンパク質も、AGEに変換可能である。例えば、AGEに包含されるCMLアルブミンおよびCELアルブミンは、いずれもアルブミンが糖化を受けたAGEである。このようなAGE生成反応は、生体内において循環血液中、細胞外マトリクス、細胞内のいずれでも起こり得る。例えば、糖尿病患者の血管に存在するAGEとしては、:蛍光性で架橋構造を有するもの(ペントシジン、クロスリンなど)および蛍光も架橋もないもの(カルボキシメチルリジン、ピラリン、メチルグリオキサール(MG)−イミダゾロンなど)の2つに大別できる。AGEが異常値を示す場合、細小血管症(腎症、網膜症、神経症など)、大血管障害(虚血性心疾患、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症のような疾患が予想される。一般に使用される検査方法では、基準物質としては、ピラリン(正常範囲:血漿中23pmol/mL未満)、ペントシジン(正常範囲:血漿中0.00915〜0.0431μg/mL(ELISAで測定した場合))などが使用される(「今日の臨床検査 2007−2008」発行所 株式会社 南江堂、参照)。
【0037】
本明細書において「AGE分子」とは、上記AGEに含まれる任意の分子をいう。例えば、AGEとしては、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体あるいはそれらの複合体を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0038】
本明細書において「AGEs様活性を示す分子」とは、少なくとも上述のAGEの活性(本明細書において「AGEs様活性」という。)の一つを有する分子をいう。そのようなAGEs様活性としては、RAGEに対する結合活性(リガンド活性)を挙げることができるが、それに限定されない。
【0039】
本明細書において使用される場合、用語「AGE受容体(Receptor for AGE)」とは、RAGEともいわれ、(1)配列番号10に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号10に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(3)上記配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(5)配列番号9に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(6)上記配列番号9に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(7)上記配列番号9に示される核酸配列において1または数個のヌクレオチドの置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(8)上記配列番号9に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;および(9)上記配列番号9に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド、のうちの1つである。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。RAGEはまた、1992年に、ウシ肺から同定され、AGEと結合するイムノグロブリンスーパーファミリーに属する、分子量約35kDaのI型膜タンパク質(糖鎖修飾を受けた完全なRAGEは、分子量55kDa)である。RAGEの細胞外ドメインは、1つのV型イムノグロブリンドメイン、続いて、2つのC型イムノグロブリンドメイン(C1領域およびC2領域)の、3つのイムノグロブリンフォールド構造を取るドメインが結合した構造を取っている。RAGEはまた、細胞膜1回貫通型のドメインおよび43アミノ酸の細胞質ドメインを含む。RAGEは、多様なクラスのリガンド(AGE、S100/カルグラニュリン、アンフォテリンおよびアミロイド−βペプチド)と相互作用する。Vドメインは、リガンド結合に必須の部位であり、細胞質ドメインは、RAGE媒介性細胞内シグナル伝達に必須である。RAGEはまた、各ドメイン内でジスルフィド結合を有するので、本発明の変異RAGE−界面活性剤複合体は、配列番号10のアミノ酸配列における38位、99位、144位、208位、259位および301位に対応するシステイン残基を保持していることが好ましい。RAGEは、正常組織および血管系においては低レベルでしか発現されない。しかし、この受容体は、そのリガンドが蓄積した場所においてアップレギュレートされる。RAGEの発現は、糖尿病血管系において内皮細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、腎メサンギウム細胞および浸潤性単核食細胞で増加している。また、AGEが蓄積している動脈硬化巣のような病的部位においても、RAGEの発現が増加している。AGE−RAGE相互作用は、血管系ホメオスタシスにおいて重要な細胞の特性を変化させる。例えば、RAGEがAGEと結合した後、血管内皮細胞は、VCAM−1、組織因子、およびIL−6の発現、ならびに高分子へのそれらの透過性を増加させる。単核食細胞において、RAGEは、サイトカインおよび増殖因子の発現を活性化し、可溶性AGEに応じて細胞移動を誘導するのに対して、走触性は、固定リガンドで起こる。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE様ポリペプチド」とは、「RAGE8」、「mRAGE8」、「RAGE1」、「mRAGE1」、「RAGE2」、「mRAGE2」、「RAGE3」、「mRAGE3」、「RAGE4」、「mRAGE4」、「RAGE7」、「mRAGE7」、「RAGE143」、「mRAGE143」、「RAGE223」、「mRAGE223」、「RAGE226」および「mRAGE226」と称されるポリペプチドまたはこれらの変異体を包含する。
【0041】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE分子」とは、RAGE様ポリペプチドの他、それらの任意の複合体を含むことが理解される。したがって、RAGE分子には、RAGE様ポリペプチド等、例えば、RAGE(全長)、RAGE細胞外領域(配列番号10の22−332位)、RAGE143、RAGE223、RAGE226等が包含されることが理解される。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE8」および「mRAGE8」とは、(1)配列番号12に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号12に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号12に示されるアミノ酸配列において、92位および95位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号12に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号12に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号11に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号11に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号11に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号11に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位および95位のアミノ酸配列は、配列番号12における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号11に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号11に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドのうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE1」および「mRAGE1」とは、(1)配列番号14に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号14に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号14に示されるアミノ酸配列において、92位、95位、206位および250位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号14に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号14に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号13に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号13に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号13に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号13に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列であって、該コードされるアミノ酸配列において92位、95位、206位および250位のアミノ酸配列は、配列番号14における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号13に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号13に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0044】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE2」および「mRAGE2」とは、(1)配列番号16に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号16に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号16に示されるアミノ酸配列において、92位、95位および206位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号16に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号16に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号15に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号15に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号15に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号15に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位、95位および206位のアミノ酸配列は、配列番号16における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号15に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号15に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0045】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE3」および「mRAGE3」とは、(1)配列番号18に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号18に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号18に示されるアミノ酸配列において、92位、95位および206位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(374)上記配列番号18に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号18に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号17に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号17に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号17に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号17に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位、95位および206位のアミノ酸配列は、配列番号18における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号17に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号17に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0046】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE4」および「mRAGE4」とは、(1)配列番号20に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号20に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号20に示されるアミノ酸配列において、14位、17位、128位および172位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号19に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号19に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号19に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号19に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において14位、17位、128位および172位のアミノ酸配列は、配列番号20における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号19に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号19に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0047】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE7」および「mRAGE7」とは、(1)配列番号22に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号22に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号22に示されるアミノ酸配列において、92位および95位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号22に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号22に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号21に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号21に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号21に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号21に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位および95位のアミノ酸配列は、配列番号22における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号21に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号21に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0048】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE143」および「mRAGE143」とは、(1)配列番号24に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号24に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号24に示されるアミノ酸配列において、92位および95位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号24に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号24に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号23に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号23に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号23に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号23に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位および95位のアミノ酸配列は、配列番号24における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号23に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号23に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0049】
本発明において、RAGE143を使用することが好ましくありうる。理論に束縛されることは望まないが、RAGE143は、RAGE1同様の認識活性を有し、かつ、分子としての安定性が優れているからである。RAGE1、RAGE223,RAGE226なども使用することができるが、保存中に分解が生じやすく、実験期間中に反応性が変化する可能性があることから、分解を進行させない任意の方法を用いて使用することが好ましく、あるいは長時間のアッセイにおいてはRAGE143が好ましくありうる。RAGE143に限らず、RAGE1、RAGE223,RAGE226などでも同様の結果は得られることが理解される。
【0050】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE223」および「mRAGE223」とは、(1)配列番号26に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号26に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号26に示されるアミノ酸配列において、92位および95位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号26に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号26に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号25に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号25に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号25に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号25に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位および95位のアミノ酸配列は、配列番号26における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号25に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号25に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0051】
本明細書において使用される場合、用語「RAGE226」および「mRAGE226」とは、(1)配列番号28に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;(2)上記配列番号28に示されるアミノ酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含むポリペプチド;(3)上記配列番号28に示されるアミノ酸配列において、92位および95位以外のアミノ酸位置で1または数個のアミノ酸の置換、付加および/または欠失を含むアミノ酸配列を含み、かつ天然型RAGEの活性を示すポリペプチド;(4)上記配列番号28に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する変異体を含むポリペプチド;(5)上記配列番号28に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する変異体を含むポリペプチド;(6)配列番号27に示される核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(7)上記配列番号27に示される核酸配列に対して相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(8)上記配列番号27に示される核酸配列において1または数個の置換、付加および/または欠失を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;(9)上記配列番号27に示される核酸配列と相補的な核酸配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドであって、該コードされるアミノ酸配列において92位および95位のアミノ酸配列は、配列番号28における対応するアミノ酸を保持し、かつ天然型RAGEの活性を示す、ポリペプチド;(10)上記配列番号27に示される核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド;および(11)上記配列番号27に示される核酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有する核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチド、のうちの1つによって示される。上記の同一性または相同性は、配列分析用ツールであるBLAST(NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行))を用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。ストリンジェントな条件は配列に依存して変化し、このような条件の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0052】
なお、上記RAGE様ポリペプチドは、天然型RAGEの活性が保持されている限り、非天然アミノ酸を含んでいてもよいし、アミノ酸アナログ、アミノ酸誘導体などを含んでいてもよい。
【0053】
上記のRAGE様ポリペプチドにおいても、分子内ジスルフィド結合を形成することは重要であるので、配列番号10のアミノ酸配列の38位、99位、144位、208位、259位および301位に対応するシステインは保持されていることが好ましい。
【0054】
本明細書において「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0055】
本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。
【0056】
本明細書において「アミノ酸誘導体」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのようなアミノ酸誘導体およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。本明細書では、アミノ酸誘導体およびアミノ酸アナログは、アミノ酸と同じ生物学的機能を提供し得る限り代替として使用され得ることが理解される。
【0057】
本明細書において「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
【0058】
本明細書において「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
【0059】
本明細書において「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
【0060】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。
【0061】
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
【0062】
本明細書において、「対応する」アミノ酸とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸をいう。例えば、LOX−1においては、232位および249位におけるアミノ酸であり、RAGEにおいては、114位、117位、228位、272位におけるアミノ酸である。
【0063】
本明細書において、「対応する」遺伝子とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子(例えば、LOX−1)に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、ヒトの遺伝子に対応する遺伝子は、他の動物(マウス、ラット、ブタ、ウサギ、モルモット、ウシ、ヒツジなど)においても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウサギ、モルモット、ウシ、ヒツジなど)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
【0064】
本明細書中で使用される「異種」とは、異なる配列または対応しない配列、あるいは異なる種由来の配列である、ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列をいう。例えば、ヒトのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、マウスのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に対して異種であり、そしてヒトLOX−1の核酸配列またはアミノ酸配列は、ヒトアルブミンのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に対して異種である。
【0065】
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または下限としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。本明細書において有用なフラグメントの長さは、そのフラグメントの基準となる全長タンパク質の機能のうち少なくとも1つの機能が保持されているかどうかによって決定され得る。
【0066】
本明細書において「生物学的機能」とは、ある遺伝子またはそれに関する核酸分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、その遺伝子、核酸分子またはポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能をいい、これには、例えば、特異的な抗体の生成、酵素活性、抵抗性の付与等を挙げることができるがそれらに限定されない。本発明においては、例えば、LOX−1が変性LDLを認識する機能、RAGEがAGEを認識する機能などを挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において、生物学的機能は、「生物学的活性」によって発揮され得る。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。2つの因子が相互作用する場合、その生物学的活性は、その二分子との間の結合およびそれによって生じる生物学的変化、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。したがって、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。
【0067】
したがって、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が、挙げられる。
【0068】
本明細書において「相互作用」とは、2つの物質についていうとき、一方の物質と他方の物質との間で力(例えば、分子間力(ファンデルワールス力)、水素結合、疎水性相互作用など)を及ぼしあうこという。通常、相互作用をした2つの物質は、会合または結合している状態にある。
【0069】
本明細書中で使用される用語「結合」は、2つのタンパク質もしくは化合物または関連するタンパク質もしくは化合物の間、あるいはそれらの組み合わせの間での、物理的相互作用または化学的相互作用を意味する。結合には、イオン結合、非イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水性相互作用などが含まれる。物理的相互作用(結合)は、直接的または間接的であり得、間接的なものは、別のタンパク質または化合物の効果を介するかまたは起因する。直接的な結合とは、別のタンパク質または化合物の効果を介してもまたはそれらに起因しても起こらず、他の実質的な化学中間体を伴わない、相互作用をいう。
【0070】
本明細書において第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」とは、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して、第二の物質または因子以外の物質または因子(特に、第二の物質または因子を含むサンプル中に存在する他の物質または因子)に対するよりも高い親和性で相互作用することをいう。物質または因子について特異的な相互作用としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、リガンド−レセプター反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の両方が関係する場合、転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、物質または因子がともに核酸である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、物質または因子がともにタンパク質である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の物質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、転写因子と、その転写因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用が包含される。したがって、本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に相互作用する因子」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
【0071】
本明細書中で使用される「接触(させる)」とは、化合物を、直接的または間接的のいずれかで、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して物理的に近接させることを意味する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多くの緩衝液、塩、溶液などに存在し得る。接触とは、核酸分子またはそのフラグメントをコードするポリペプチドを含む、例えば、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、遺伝子チップ)などに化合物を置くことが挙げられる。
【0072】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用であることから、オルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0073】
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。このような塩基配列の改変法としては、制限酵素などによる切断、DNAポリメラーゼ、Klenowフラグメント、DNAリガーゼなどによる処理等による連結等の処理、合成オリゴヌクレオチドなどを用いた部位特異的塩基置換法(特定部位指向突然変異法;Mark Zoller and Michael Smith,Methods in Enzymology,100,468−500(1983))が挙げられるが、この他にも通常分子生物学の分野で用いられる方法によって改変を行うこともできる。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。
【0074】
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、リガンド分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0075】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0076】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
【0077】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、リガンド結合能において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0078】
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0079】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0080】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加および/または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わること、または取り除かれることをいう。このような置換、付加および/または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。基準となる核酸分子またはポリペプチドにおけるこれらの変化は、目的とする機能(例えば、AGEの認識能など)が保持される限り、この核酸分子の5’末端もしくは3’末端で生じ得るか、またはこのポリペプチドを示すアミノ酸配列のアミノ末端部位もしくはカルボキシ末端部位で生じ得るか、またはそれらの末端部位の間のどこにでも生じ得、基準配列中の残基間で個々に散在する。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、AGEの認識能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、15%以内、10%以内、5%以内、または150個以下、100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0081】
本明細書において使用される場合、用語「タグ配列」とは、受容体−リガンドのような特異的認識機構により分子を選別するための物質、より具体的には、特定の物質を結合するための結合パートナーの役割を果たす物質(例えば、ビオチン−アビジン、ビオチン−ストレプトアビジンのような関係を有する)をいう。よって、例えば、タグ配列が結合した特定の物質は、タグ配列の結合パートナーを結合させた基材を接触させることで、この特定の物質を選別することができる。このようなタグ配列は、当該分野で周知である。代表的なタグ配列としては、mycタグ、Hisタグ、HA、Aviタグなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本明細書において使用される場合、用語「検出剤」とは、広義には、目的の物質(例えば、変性LDL、AGEなど)を検出できるあらゆる因子をいう。
【0083】
本明細書において使用される場合、用語「固相」とは、本明細書中において「基板」および「基材」と互換的に使用され、本発明のデバイスが構築される材料をいう。抗体のような分子が固定され得る平面状の支持体をいう。本発明において表面プラズモン共鳴の原理を用いて検出する場合、固相は、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面に持つガラス基板の基材であることが好ましい。本発明において水晶発振子マイクロバランスの原理を用いて検出する場合は、周波数変換素子(例えば水晶発振子、表面弾性波素子)を固相として用い、直接受容体を結合させる。水晶板の片面はシリコーンで被覆し、もう一方の面は金電極を施したものを固相として用いる。本発明において酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)のような機構を使用する場合、一般に、固相(基材)としては、マイクロタイタープレートが使用される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。適切な基材としては、ビーズ、金粒子、プレート(例えば、マイクロタイタープレート)、試験管、チップ、磁性粒子、膜、繊維、スライドガラス、金属薄膜、フィルター、チューブ、ボール、ダイアモンド様炭素被膜ステンレスなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
固相および基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコーン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、アミロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)以下が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、PVDF膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。高密度のものを解析する場合は、ガラスなど硬度のあるものを材料として使用することが好ましい。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。
【0085】
本明細書において「チップ」は、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。本明細書において、受容体を固定化した固相を、受容体チップおよび/または受容体マイクロチップと呼ぶ。
【0086】
本明細書において使用される場合、用語「乾燥形態」とは、本発明で使用される成分を含む検出剤、デバイス、診断剤などにおいて、実質的に水分含量が低下している状態であることをいう。一般的には、「乾燥状態」は、風乾、減圧乾燥などの当該分野で周知の技術を用いて容易に達成することができる。
【0087】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecμlar Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecμlar Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecμlar Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecμlar Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecμlar Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecμlar Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecμlar Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecμlar Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecμlar Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecμlar Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0088】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0089】
本発明において用いられる配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドならびにそのフラグメントおよび改変体は、遺伝子工学技術を用いて生産することができる。
【0090】
本明細書において使用される場合、用語「標識」とは、特定の物質を検出するために、この物質に結合することが既知の物質に付加される分子をいう。標識としては、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
本明細書において使用される場合、用語「リフォールディング」とは、異常な折り畳みを有するためにその本来有する機能を失っているポリペプチドの異常な構造を解きほぐし、界面活性剤により再凝集を防ぎつつ、サイクロアミロースの包接能を活用してそのポリペプチドの本来の正しい構造に再折りたたみすることをいう。
【0092】
本明細書において使用される場合、用語「界面活性剤」とは、液体に溶解すると、溶液の表面張力を著しく減少させる物質をいう。界面活性剤は、溶液の中で臨海ミセル濃度を超えると、ミセルコロイドを形成する。界面活性剤は、親水性基と親油性基とを有するために、両親媒性化合物であり、二相界面で方向配位をして安定な層をなす。界面活性剤は、長鎖脂肪酸塩やドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のような陰イオン性界面活性剤、臭化セチルトリメチルアンモニウムのような陽イオン界面活性剤、さらに両性界面活性剤、TritonTMシリーズおよびTweenTMシリーズのような非イオン性界面活性剤に分けられる。適切な界面活性剤としては、ポリオキシエチレン系界面活性剤、イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。
【0094】
(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)
1つの局面において、本発明は、AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法であって、(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、および(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるAGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法を提供する。
【0095】
この方法において、受容体分子であるRAGE分子またはそのリガンドであるAGE分子のいずれかを固相に固定し、他方の存在の元で、検出または定量の対象となるサンプルをアッセイしたところ、従来得られなかった感度の上昇、AGEs様活性を示す分子のスクリーニングの網羅性の上昇という効果が得られた。
【0096】
本発明の実施形態では、使用される固相としては、固定される分子、例えば、RAGE分子、AGE分子が固定されうる限り任意のものを利用することができる。1つの実施形態では、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)のような機構を使用する場合、一般に、固相(基材)としては、マイクロタイタープレートが使用される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。その材料としては、例えば、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。固相への固定方法は、当該分野において任意の公知の方法で実施することができる。例えば、好ましくは、固相表面上のシラノール基(SiOH)を介した結合反応、素材のマトリックスによる疎水性結合および修飾官能基によるイオン結合、マトリックスに含まれている芳香族環を介した結合反応を用いることができる。固相への固定後は、その固相は、乾燥させてもよく、湿潤状態で利用しても良い。乾燥させることによって保存がしやすくなる。
【0097】
本発明において、本発明のサンプルをAGE分子またはRAGE分子に接触させる手法としては、当該分野において公知の任意の手法を用いることができ、例えば、両者を溶液中で混合すること、あるいはその後インキュベートすることなど手法を用いることができるがこれらに限定されない。
【0098】
本発明において、AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する手法としては、当該分野において公知の任意の手法を用いることができ、例えば、いずれかの分子を標識(例えば、蛍光標識)した場合に、その標識を検出する任意の手法を利用することができることが理解される。ここで、上記結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるAGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示すものである。
【0099】
本発明において、AGE分子に対する該RAGE分子の結合の定量は、上記検出において、数値化する任意の手法によって、実現することができる。このような定量は相対的(レベル)でもよく、絶対量で表示してもよい。例えば、そのような手法としては、既知量のAGE分子およびRAGE分子について、検出対象となる標識の強度をプロットし、検量線を作成し、サンプルの検出データから外挿する手法が挙げられるがそれに限定されない。
【0100】
1つの実施形態では、本発明において用いられるRAGE分子は、RAGE143、RAGE1、RAGE223、RAGE226またはその改変体でありうる。1つの好ましい実施形態では、RAGE143が用いられる。長期保存に対して安定性が高いからであるが、これに限定されない。
【0101】
1つの実施形態では、本発明において用いられるAGE分子は、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体でありうる。
【0102】
(糖尿病性腎症の予備的な検出方法)
別の局面において、本発明は、糖尿病性腎症の予備的な検出方法(または、予測方法もしくは予備的診断方法)であって、(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、および(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法を提供する。このように、RAGE分子またはAGE分子を用いて被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示すことが示されたのは過去に例がなく、診断分野において顕著な進歩を示すものであるといえる。
【0103】
ここで、本発明の糖尿病性腎症の予備的な検出方法(または、予測方法もしくは予備的診断方法)において、AGE分子およびRAGE分子、接触、結合の検出、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0104】
本明細書において「被験体」とは、本発明の診断または検出の方法の対象となる生物(例えば、ヒトをいう。
【0105】
本明細書において「サンプル」とは、被験体等から得られた任意の物質をいい、例えば、体液(血液、唾液、尿、涙液等)が含まれる。好ましくは血液、尿、涙液を使用する。
【0106】
結合の阻害の存否またはレベルから、被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を判定する手法は以下のとおりである。被験体の病状にかかわらず、これからサンプルを調製する。RAGEの存在下で標識したAGE分子サンプルを37℃で1時間反応させた際に、標識下AGE分子の結合を阻害する活性を定量する。サンプルの代わりに緩衝液を添加した際の標識AGE結合量(標識が蛍光標識の場合は、蛍光光度計により測定される蛍光強度)を100%とし、結合を阻害する程度が大きい程、AGE様活性を示す分子の存在量が多く、罹患する可能性が高いと判定される。
【0107】
(糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出方法)
別の局面において、本発明は、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出方法(または、予測方法もしくは予備的診断方法)であって、(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる糖尿病に罹患した被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、および(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法を提供する。このように、RAGE分子またはAGE分子を用いて糖尿病に罹患した被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示すことが示されたのは過去に例がなく、診断分野において顕著な進歩を示すものであるといえる。
【0108】
ここで、本発明の糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出方法(または、予測方法もしくは予備的診断方法)において、AGE分子およびRAGE分子、接触、結合の検出、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0109】
結合の阻害の存否またはレベルから、糖尿病に罹患した被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を判定する手法は以下のとおりである。糖尿病に罹患した被験体からサンプルを調製する。RAGEの存在下で標識したAGE分子サンプルを37℃で1時間反応させた際に、標識下AGE分子の結合を阻害する活性を定量する。サンプルの代わりに緩衝液を添加した際の標識AGE結合量(標識が蛍光標識の場合は、蛍光光度計により測定される蛍光強度)を100%とし、結合を阻害する程度が大きい程、AGE様活性を示す分子の存在量が多く、罹患する可能性が高いと判定される。
【0110】
(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)
別の局面において、本発明は、糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法(または、診断方法)であって、(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、および(B)該固定化されたAGEもしくはその改変体に対する該RAGE分子または該AGEもしくはその改変体のリガンドの結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、工程を包含する、方法を提供する。このように、RAGE分子またはAGE分子を用いて糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを診断することができることが示されたのは過去に例がなく、診断分野において顕著な進歩を示すものであるといえる。
【0111】
ここで、本発明の糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法において、AGE分子およびRAGE分子、接触、結合の検出、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0112】
結合の阻害の存否またはレベルから、被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを判定する手法は以下のとおりである。糖尿病または糖尿病性腎症に罹患している疑いのあるあるいは検査の対象となる被験体からサンプルを調製する。RAGEの存在下で標識したAGE分子サンプルを37℃で1時間反応させた際に、標識下AGE分子の結合を阻害する活性を定量する。サンプルの代わりに緩衝液を添加した際の標識AGE結合量(標識が蛍光標識の場合は、蛍光光度計により測定される蛍光強度)を100%とし、結合を阻害する程度が大きい程、AGE様活性を示す分子の存在量が多く、罹患する可能性が高いと判定される。
【0113】
(OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法)
1つの局面において、本発明は、OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法であって、(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたCTLD分子の存在下で標識した変性LDLに接触させるか、または固相に固定された変性LDLの存在下で、標識したCTLD分子に接触させる工程、および(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法を提供する。
【0114】
この方法において、受容体分子であるCTLD分子またはそのリガンドである変性LDLのいずれかを固相に固定し、他方の存在の元で、検出または定量の対象となるサンプルをアッセイしたところ、従来得られなかった感度の上昇、OxLDL様活性を示す分子のスクリーニングの網羅性の上昇という効果が得られた。
【0115】
本発明の実施形態では、使用される固相としては、固定される分子、例えば、CTLD分子、変性LDLが固定されうる限り任意のものを利用することができる。1つの実施形態では、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)のような機構を使用する場合、一般に、固相(基材)としては、マイクロタイタープレートが使用される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。その材料としては、例えば、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。
【0116】
固相への固定方法は、当該分野において任意の公知の方法で実施することができる。例えば、好ましくは、固相表面上のシラノール基(SiOH)による結合、素材のマトリックスによる疎水性結合および修飾官能基によるイオン結合、マトリックスに含まれている芳香族環を介した結合を用いることができる。固相への固定後は、その固相は、乾燥させてもよく、湿潤状態で利用しても良い。乾燥させることによって保存がしやすくなる。
【0117】
本発明において、本発明のサンプルをCTLD分子または変性LDLに接触させる手法としては、当該分野において公知の任意の手法を用いることができ、例えば、両者を溶液中で混合すること、あるいはその後インキュベートすることなど手法を用いることができるがこれらに限定されない。
【0118】
本発明において、CTLD分子に対する変性LDLの結合を検出する手法としては、当該分野において公知の任意の手法を用いることができ、例えば、いずれかの分子を標識(例えば、蛍光標識)した場合に、その標識を検出する任意の手法を利用することができることが理解される。ここで、上記結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるOxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示すものである。
【0119】
本発明において、CTLD分子に対する変性LDLの結合の定量は、上記検出において、数値化する任意の手法によって、実現することができる。このような定量は相対的(レベル)でもよく、絶対量で表示してもよい。例えば、そのような手法としては、既知量のCTLD分子および変性LDLについて、検出対象となる標識の強度をプロットし、検量線を作成し、サンプルの検出データから外挿する手法が挙げられるがそれに限定されない。
【0120】
1つの実施形態において、本発明において用いられるCTLD分子は、CTLD14、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長またはそれらの改変体でありうる。好ましくは、CTLD14を用いることができる。長期保存に対して安定性が高いからであるが、これに限定されない。
【0121】
1つの実施形態では、本発明において用いられる変性LDLは、酸化LDL(OxLDL)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL、糖化LDL、アセチル化LDLまたはその改変体でありうる。
【0122】
(AGEs様活性を示す分子の検出または定量のためのキット)
1つの局面において、本発明は、AGEs様活性を示す分子の検出または定量のためのキットを提供する。このキットは、(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する手段を備える。このキットにおいて、該結合の阻害の存否またはレベルは、AGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す。本発明のキットにおいて使用されうるRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0123】
(糖尿病または糖尿病性腎症の検出または診断のためのキットまたはマーカー)
別の局面において、本発明は、糖尿病性腎症の予備的な検出または診断(または、予測)のためのキットを提供する。ここで、このキットは(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および(B)該AGEに対する該RAGE分子の結合を検出する手段を備え、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す。本発明のキットにおいて使用されうるRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0124】
別の局面において、本発明は、AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病性腎症の予備的な診断マーカーを提供する。あるいは、本発明は、糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用を提供する。ここで、本発明の診断マーカーを測定した場合に、AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す。AGEs様活性またはAGEs様活性を示す分子は、本発明のAGE分子またはRAGE分子を利用した技術を用いて測定することができる。本発明の診断マーカーまたは使用において使用されうるAGEs様活性、AGEs様活性を示す分子、ならびにそれらに関連するRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)ならびに他の欄において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0125】
別の局面において、本発明は、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出または診断(または、予測)のためのキットを提供する。このキットは、(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段を備える。ここで、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す。本発明のこのキットにおいて使用されうるRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0126】
別の局面において、本発明は、AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断マーカーを提供する。あるいは、本発明は、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用を提供する。ここで、本発明の診断マーカーを測定した場合に、AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す。AGEs様活性またはAGEs様活性を示す分子は、本発明のAGE分子またはRAGE分子を利用した技術を用いて測定することができる。本発明の診断マーカーまたは使用において使用されうるAGEs様活性、AGEs様活性を示す分子、ならびにそれらに関連するRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病における糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)ならびに他の欄において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0127】
別の局面において、本発明は、糖尿病または糖尿病性腎症の検出または診断のためのキットを提供する。ここでこのキットは、(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段を備える。ここで、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す。本発明のこのキットにおいて使用されうるRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0128】
別の局面において、本発明は、AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病または糖尿病性腎症の診断マーカーを提供する。あるいは、本発明は、糖尿病または糖尿病性腎症の診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、使用を提供する。ここで、本発明の診断マーカーを測定した場合に、AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す。AGEs様活性またはAGEs様活性を示す分子は、本発明のAGE分子またはRAGE分子を利用した技術を用いて測定することができる。本発明の診断マーカーまたは使用において使用されうるAGEs様活性、AGEs様活性を示す分子、ならびにそれらに関連するRAGE分子、固相、AGE分子、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法)、(糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法)ならびに他の欄において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0129】
(OxLDL様活性を示す分子の検出または定量のためのキット)
別の局面において、本発明は、OxLDL様活性を示す分子の検出または定量のためのキットを提供する。このキットは、(A)固定されたCTLD分子を有する固相および標識した変性LDL、または固定された変性LDLを有する固相および標識したCTLD分子;および(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する手段を備える。ここで、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す。本発明のこのキットにおいて使用されうる変性LDL,CTLD分子、固相、標識、接触、結合の検出技術または手段等は、結合のレベルの算出等は、(OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法)において説明される任意の実施形態が利用されうることが理解される。
【0130】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0131】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0132】
以下の実施例で用いた動物の取り扱いは、食品総合研究所において規定される基準を遵守した。なお、以下に製造例を記載するが、詳細な情報は、さらに非特許文献7を参酌することができることが理解される。
【0133】
(製造例1:CTLD様ポリペプチドの生成)
切断部位2箇所に変異を導入したCTLD様ポリペプチド(G232A/G249A;本例中、PR−CTLDともいう)をコードする核酸を、定法に従って生成した。定法に従って、この核酸を、シアン蛍光タンパク質(CFP)を融合させた哺乳動物用発現ベクターpECFP(Clontech,USA)に導入することによって、N末端にCFPが融合したPR−CTLDコード核酸を含むプラスミドを構築した。CHO細胞を10% FCSを補充したF12培地中、37℃において5%CO2加湿雰囲気下で培養した。1×104細胞/mlの密度で懸濁したCHO細胞400μlを、トランスフェクションを行う24時間前に、カバーガラス上に播種した。細胞を、LipofectAMINE試薬を用いて製造業者のプロトコルに従って、細胞をトランスフェクトし、48時間インキュベートし、CHO細胞に一過性発現させた。その後、この細胞を蛍光顕微鏡で観察したところ、CFPの蛍光によりCTLD様ポリペプチド発現細胞が確認できた。また、リガンドである変性LDLを蛍光色素である過塩素酸1,1’−ジオクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチルインドカルボシアニン(DiD;Molecμlar Probes,Eugene,OR)により標識し、この変性LDLをCTLD様ポリペプチド発現細胞に添加したところ、リガンドの認識能および取り込み能が確認できた。
【0134】
これらの結果から、PR−CTLD発現細胞は、明瞭なリガンド取り込み能を示し、プロテアーゼ耐性を付与するために行ったアミノ酸置換は、変性LDL認識能には何ら影響を与えていないことが示された。
【0135】
さらに、このPR−CTLDのプロテアーゼ感受性を検討したところ、2u(1uは、1mgの対象タンパク質を分解可能な濃度)のトロンビンで、0.02mgのPR−CTLDを18時間処理しても分解が起こらないことが確認され、プロテアーゼ耐性CTLD様ポリペプチド(PR−CTLD)を生成することに成功した。
【0136】
(製造例2:タグ配列付加CTLD様ポリペプチドの生成)
製造例1において生成したCTLD様ポリペプチド(PR−CTLD)に加えて、さらに、CTLD様ポリペプチドと同様のプロテアーゼ耐性変異を導入した長さの異なるタンパク質PR−CTLD14(ネック領域の14アミノ酸を含む、LOX−1のアミノ酸129位〜273位)を作成した。PR−CTLD14のアミノ酸配列には分子間S−S結合に関与するCysが含まれる。分子間S−S結合を形成しなくても認識能はあるが、細胞上で機能を発現する際には、一定以上の分子密度をとる必要がある(Xieら、DNA and Cell Biology 23(2):111−117(2004)およびMatsunagaら、Experimental Cell Research 313:1203−1214(2007))。そこで、高密度集積に寄与し得る構造として分子間S−S結合形成が可能なPR−CTLD14もまた、変性LDLを検出するアッセイ系を構築するのに使用することができる。
【0137】
発現させたプロテアーゼ耐性のCTLD様ポリペプチド(PR−CTLDおよびPR−CTLD14)を検出/評価系において活用する際には、有効な修飾が施されていることが望ましい。そこでこれらの分子のN末側に2種類のタグ(一つは大腸菌内でビオチン化を受ける配列AviTag(GLNDIFEAQKIEWHE(配列番号29))、他方はストレプトアビジンに直接認識される配列であるStreptag(AWRHPQFGG(配列番号30))またはStreptagII(WSHPQFEK(配列番号31))を付加した。ビオチンとストレプトアビジンの結合は非共有結合で最も強く(KD=10−15M)、ストレプトアビジンを介した固定化などへの発展に際しても有効である。しかし、ビオチン化のためには、培地中へのビオチンの添加、ビオチンリガーゼを共発現させる必要があるなどの手間が掛かる。そこで、結合の強さでは劣るが(KD=10−7M)、遺伝子配列上でタグを付加し大腸菌で発現させればストレプトアビジンへの結合が可能なStreptagII(WSHPQFEK(配列番号31))付加タンパク質も生成した。いずれもpET系ベクターの5’側に、タグ配列をコードする核酸配列を導入して発現用プラスミドとした(pET N−Avi、pET N−StII)。定法に従って、これらの発現ベクターそれぞれにPR−CTLDおよびPR−CTLD14を導入して、発現構築物を生成した。AviTag付加タンパク質のビオチン化のために、pET系ベクターと同一菌体内で保持可能なpAC系ベクターにビオチンリガーゼをコードしているBirA遺伝子を導入し、発現用プラスミドを作製した(BirA/pAC)。
【0138】
PR−CTLDおよびPR−CTLD14はともに、分子内S−S結合の形成が構造の安定化と機能に必須である。そこで発現宿主としてOrigami B(DE3)(Novagen,USA)を用いた。Origami B(DE3)は、チオレドキシンレダクターゼおよびグルタチオンレダクターゼ変異株であり、細胞質内に発現させたタンパク質のS−S結合形成を促進する性質がある。プロテアーゼ耐性CTLD様ポリペプチドにAviTagを付加する場合、AviTagおよび目的タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターと、BirA遺伝子を含む発現ベクターとで同時に形質転換させた。得られた形質転換宿主細胞を、カナマイシン(15μg/ml)、アンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml)を添加した(いずれも最終濃度)LB培地中で37℃で培養した。StreptagIIコード核酸を含む発現ベクターで形質転換した場合は、カナマイシン(15μg/ml)、アンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)を添加したLB培地中で37℃で培養した。PR−CTLDおよびPR−CTLD14の発現を、IPTGを添加することによって誘導した。
【0139】
予備実験として、PR−CTLDおよびPR−CTLD14を可溶性ポリペプチドとして発現するための温度条件および誘導時間を調べた。温度条件は、(1)37℃、(2)25℃および(3)20℃に設定した。誘導時間は、(A)2時間、(B)4時間、(C)8時間、(D)18時間、(E)24時間に設定した。まず、これらの宿主細胞を37℃で誘導し、誘導されたタンパク質の分子量を測定したところ、予想される分子量のタンパク質の誘導が確認されたが、100%が不溶性画分に回収された。この結果に鑑みて、誘導時間を変動させずに、誘導時の温度を25℃に下げたところ、わずかながら可溶性ポリペプチドとしての発現が確認された。さらに誘導時の温度を20℃にまで下げて、誘導時間の検討を行ったところ、可溶性ポリペプチドとして回収するためには、温度条件(3)および誘導時間(D)18時間〜(E)24時間、特に20〜24時間の誘導が適切であると結論付けられた。
【0140】
上記の形質転換細胞を37℃で12時間前培養した。本培養は、この前培養液を、20倍希釈になるように上記の各LB培地に添加し、25℃で旋回培養した。上記で得られた条件に基づいて、培養液の光学密度(A600)が約0.5に達したときに、培養温度を20℃に下げると同時に、1mM(最終濃度)IPTGを添加し、目的タンパク質の発現を誘導した。AviTag付加タンパク質を生成する場合は、誘導開始と同時に50μM(最終濃度)のビオチンを添加し、発現される目的タンパク質のビオチン化も同時に行わせた。誘導開始後20〜24時間後に12,000rpm×5分の遠心分離により菌体をペレット化して上清を廃棄し、適量のTBSで洗浄した。
【0141】
TBSに懸濁した菌体を、超音波破砕機にて破砕後、15,000rpm×30分の遠心分離により回収される上清を可溶性画分とした。発現された目的タンパク質の90%以上が不溶性画分に残った。目的タンパク質は、精製のためのHisタグがC末側に付加されているので、Ni−アガロースに結合させた後、イミダゾールにより溶出させ精製した。検出用として付加したAviTagも精製に利用可能であり、この場合は、streptavidin Mutein matrix(Roche)に吸着後、ビオチンにより溶出させた。StrepTagIIの場合、Strep−Tactin Sepharose(IBA,US)に吸着後、desthiobiotinにより溶出させた。PR−CTLDおよびPR−CTLD14とも、1L当たりの収量は、以下の表1に示すように、0.5mg未満であった。
【0142】
【表1】
【0143】
(製造例3:RAGE様分子)
切断部位4箇所に変異を導入したsRAGE1様ポリペプチド(R114Q/V117A/R228N/M272I;本例中、mRAGE1ともいう)を定法に従って生成した。この核酸を、定法に従って、シアン蛍光タンパク質(CFP)を融合させた哺乳動物用発現ベクターpECFP(Clontech,USA)またはpTarget(Promega)に導入することによって、N末端にCFPが融合したmRAGE1コード核酸を含むプラスミドを構築した。CHO細胞を10% FCSを補充したF12培地中、37℃において5%CO2加湿雰囲気下で培養した。1×104細胞/mlの密度で懸濁したCHO細胞400μlを、トランスフェクションを行う24時間前に、カバースリップ上に播種した。細胞を、LipofectAMINE試薬を用いて製造業者のプロトコルに従って、細胞をトランスフェクトし、48時間インキュベートし、CHO細胞に一過性発現させた。その後、この細胞を蛍光顕微鏡で観察したところ、CFPの蛍光によりmRAGE1発現細胞が確認できた。また、リガンドであるリボースにより糖化処理したBSA(R−AGE,製造法は製造例8を参照。)を蛍光色素であるAlexa633(Molecμlar Probe)により標識し、この標識糖化BSA(AGE分子)をmRAGE1発現細胞に添加したところ、リガンドの認識能および取り込み能が確認できた。
【0144】
mRAGE1発現細胞は、明瞭なリガンド取り込み能を示し、プロテアーゼ耐性の増大を狙ったアミノ酸置換は、リガンド認識能には影響を与えていないことが示された。
【0145】
さらに、そのプロテアーゼ感受性を検討したところ、天然型に比べ耐性が上昇していることが示され、プロテアーゼ耐性の上がったRAGE分子の作出に成功した。
【0146】
(製造例4:RAGEのリガンド認識能に必須の最小領域の決定)
本実施例では、miniRAGEを作製した。
【0147】
miniRAGEとして、GenBankアクセッション番号AB036432に示される配列に基づいて、以下のプライマー:
順方向プライマー(RAGE1、RAGE2、RAGE3、RAGE7、RAGE8、RAGE9、RAGE143、RAGE223およびRAGE226に共通)
5’−CTACATATGGCTCAAAACATCACAGC−3’(配列番号32)
逆方向プライマー
・RAGE1については、
5’−TTACTCGAGAGCCTGCAGTTGGCCC−3’(配列番号33)
・RAGE2については、
5’−TTACTCGAGACCAGACACGGGGCTG−3’(配列番号34)
・RAGE3については、
5’−TTACTCGAGAAGCTACTGCTCCACC−3’(配列番号35)
・RAGE7については、
5’−TTACTCGAGAAACACCAGCCGTGAGT−3’(配列番号36)・RAGE8については、
5’−TTACTCGAGAAATCTGGTAGACACGG−3’(配列番号37)・RAGE9については、
5’−TTACTCGAGACTTGGTCTCCTTTCC−3’(配列番号38)
・RAGE143については
5’−TTACTCGAGTCCCCACCTTATTGGG−3’(配列番号41)、・RAGE223については、
5’−TTACTCGAGCTGTGCGCAAGGCCCG−3’(配列番号42)
・RAGE226については、
5’−TTACTCGAGACTGGATGGGGGCTGTGC−3’(配列番号43)
を設計し、RAGE4については、順方向プライマー
5’−TCGCATATGGCAATGAACAGGAATGG−3’(配列番号39)逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAGCCTGCAGTTGGCCC−3’(配列番号40)
を設計し、RAGE2(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜250位)をコードするDNA、RAGE3(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜230位)をコードするDNA、RAGE4(天然型RAGEのアミノ酸配列101〜332位)をコードするDNA、RAGE7(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜137位)をコードするDNA、RAGE8(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜120位)をコードするDNA、RAGE9(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜112位)をコードするDNA、RAGE143(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜143位)をコードするDNA、RAGE223(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜223位)をコードするDNA、およびRAGE226(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜226位)をコードするDNAを得た。
【0148】
これらminiRAGEをコードするDNAを、制限酵素の認識配列を付加した特異的プライマーによりPCRにより増幅した後、pCR2.1(Invitrogen)をクローニング用ベクターとしてTAクローニングを行い、塩基配列を確認した。
【0149】
(2)タグ配列付加RAGE様ポリペプチドの生成
上記製造例において生成したRAGE様ポリペプチド(sRAGE1、mRAGE1、RAGE2〜RAGE8、RAGE143、RAGE223およびRAGE226)を検出/評価系において活用する際には、有効な修飾が施されていることが望ましい。そこでこれらの分子のN末側に2種類のタグ(一つは大腸菌内でビオチン化を受ける配列AviTag(GLNDIFEAQKIEWHE(配列番号29))、他方はストレプトアビジンに直接認識される配列であるStreptag(AWRHPQFGG(配列番号30)またはWSHPQFEK(配列番号31))を付加した。ビオチンとストレプトアビジンの結合は非共有結合で最も強く(KD=10−15M)、ストレプトアビジンを介した固定化などへの発展に際しても有効である。しかし、ビオチン化のためには、培地中へのビオチンの添加、ビオチンリガーゼを共発現させる必要があるなどの手間が掛かる。そこで、結合の強さでは劣るが(KD=10−7M)、遺伝子配列上でタグを付加し大腸菌で発現させればストレプトアビジンへの結合が可能なStreptagII(WSHPQFEK(配列番号31))付加タンパク質も生成した。いずれもpET系ベクターの3’側にタグ配列をコードする核酸配列を導入して、発現用プラスミドとした(pET C−Avi、pET C−StII)。定法に従って、これらの発現ベクターに、mRAGEおよびminiRAGEを導入して、発現構築物を生成した。AviTag付加タンパク質のビオチン化のために、pET系ベクターと同一菌体内で保持可能なpAC系ベクターにビオチンリガーゼをコードしているBirA遺伝子を導入したBirA/pACを作製した。
【0150】
RAGEは、CTLDと同様に、S−S結合の形成が構造の安定化と機能に必須である。そこで発現宿主としてOrigamiB(DE3)(Novagen,USA)を用いた。Origami B(DE3)は、チオレドキシンレダクターゼおよびグルタチオンレダクターゼ変異株であり、細胞質内に発現させたタンパク質のS−S結合形成を促進する性質がある。RAGE様ポリペプチド(sRAGE1、mRAGE1、RAGE2〜RAGE8、RAGE143、RAGE223およびRAGE226をまとめて「RAGE様ポリペプチド」と称する)にAviTagを付加する場合、AviTagおよびこのポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターと、BirA遺伝子を含む発現ベクターとで同時に形質転換させた。得られた形質転換宿主細胞を、カナマイシン(15μg/ml)、アンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml)を添加した(いずれも最終濃度)LB培地中で37℃で培養した。StreptagIIコード核酸を含む発現ベクターで形質転換した場合は、カナマイシン(15μg/ml)、アンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)を添加したLB培地中で37℃で培養した。RAGE様ポリペプチドの発現を、IPTGを添加することによって誘導した。
【0151】
予備実験として、RAGE様ポリペプチドを可溶性ポリペプチドとして発現するための温度条件および誘導時間を調べた。温度条件は、(1)37℃、(2)25℃および(3)20℃に設定した。誘導時間は、(A)18時間、(B)20時間、および(C)24時間に設定した。まず、これらの宿主細胞を37℃で誘導し、誘導されたタンパク質の分子量を測定したところ、大部分が不溶性画分に回収された。培養温度を25℃に下げるとsRAGEの場合、90%以上が可溶性ポリペプチドとして発現されたが、mRAGE1の場合は、20%程度しか可溶性ポリペプチドとして発現されなかった。各miniRAGEに関しては、欠損部分が長くなるほど可溶化率が下がる傾向が観察された。RAGE8およびRAGE9に関しては培養温度を下げても殆どが不溶性となり、可溶性ポリペプチドとして発現させるのは困難であった。上記の結果に鑑みて、培養温度を25℃に維持して、誘導時間の検討を行ったところ、誘導時間(A)18時間が適切であることが分かった。
【0152】
上記の形質転換細胞を37℃で12時間前培養した。本培養は、この前培養液を、20倍希釈になるように上記の各LB培地に添加し、25℃で旋回培養した。上記で得られた条件に基づいて、培養液の光学密度(A600)が約0.5に達したときに、1mM(最終濃度)IPTGを添加し、目的タンパク質の発現を誘導した。AviTag付加タンパク質を生成する場合は、誘導開始と同時に50μM(最終濃度)のビオチンを添加し、発現される目的タンパク質のビオチン化も同時に行わせた。誘導開始後18時間後に12,000rpm×5分の遠心分離により菌体をペレット化して上清を廃棄し、適量のTBSで洗浄した。
【0153】
TBSに懸濁した菌体を、超音波破砕機にて破砕後、15,000rpm×30分の遠心分離により回収される上清を可溶性画分とした。目的タンパク質は、精製のためのHisタグがC末側に付加されているので、Ni−アガロースに結合させた後、イミダゾールにより溶出させ精製した。検出用として付加したAviTagも精製に利用可能であり、この場合は、streptavidin Mutein matrix(Roche)に吸着後、ビオチンにより溶出させた。StrepTagIIの場合、Strep−Tactin Sepharose(IBA,US)に吸着後、desthiobiotinにより溶出させた。
【0154】
(3)RAGEのリガンド認識能に必須の最小領域の決定
上記のようにして溶出させた各MiniRAGEの発現効率、可溶性ポリペプチドとして発現する比率、収率などは以下の表2に示すとおりである。
【0155】
【表2−1】
【0156】
【表2−2】
【0157】
上記の結果から、RAGEのリガンド認識能に必須の最小領域は、RAGE8(天然型RAGEのアミノ酸配列23〜120位)であることが分かった。
【0158】
(製造例5:LOX−1細胞外領域の調製法)
本製造例では、LOX−1細胞外領域の調製例を示す。なお、CTLD14、CTLDも同様に製造した。
【0159】
発現宿主をBL21(DE3)とし、100%近くを封入体として発現させた後、以下の2つの方法で調製した。
【0160】
1) サイクロアミロースによるリフォールディング(非特許文献7を参照。)
発現構築物とBirA遺伝子を含むベクターとで同時に形質転換させたBL21(DE3)、若しくは発現構築物で形質転換させたBL21(DE3)をアンピシリン(50μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml、発現構築物のみの場合は添加せず)を含む(いずれも最終濃度)LB培地で37℃で培養した。培養液の濁度(A600)が約0.5に達した時に1mM(最終濃度)IPTGを添加し目的蛋白質の発現を誘導した。目的タンパク質をビオチン化させる場合は、誘導開始と同時に50μM(最終濃度)のビオチンを添加し、ビオチン化も同時に行わせた。誘導開始後4時間後に、12,000rpm x 5分の遠心分離で菌体を回収し、TBSにて洗浄した。
【0161】
ついでTBSに懸濁した菌体を超音波破砕機にて破砕後、細胞破砕液の沈殿画分をTBSで洗浄し封入体とした。封入体を最終濃度40mMのDTTを含む6Mグアニジン塩酸塩溶液で室温にて1時間処理し、続いて70倍容量の0.1%CTAB(2mM DL−シスチンを含む)/TBS溶液を添加し、室温で1時間反応させた後、最終濃度で0.6%になるように、3%CA溶液を添加し、さらに室温で1時間反応させた。その反応溶液を15,000rpmで5分間遠心分離し、得られたた上清をリフォールディング溶液とした。精製はHisタグを使用したNi−アガロース精製によった。
【0162】
2)希釈透析法によるリフォールディングおよび精製(Vohra RS et al.(2007) Protein Expr. Purif. 52: 415−421を参照)
1)同様に得られた菌体を溶解緩衝液(lysis buffer)(10mM Tris,pH 7.8を含む1mg/mlリゾチーム,プロテアーゼインヒビターカクテル)に懸濁し、4℃で30分間反応させた後、10,000gで15分間遠心した。得られた沈殿(封入体)をVohraらの手法に準じてリフォールドした。
【0163】
100mgの封入体を2.2.mlの緩衝液A(Buffer A)(10mM Tris−HCl,pH7.8,6Mグアニジン塩酸塩、100mM NaH2PO4)に懸濁し、4℃で2時間反応させた。100,000×gで30分遠心した上清を可溶化封入体溶液とし、His tagを利用してCOSMOGEl His−Accept(ナカライ)に結合させ、FPLC(GE Healthcare)による10−100mMのイミダゾール濃度勾配により溶出させた。タンパク質のピークフラクションを6Mグアニジン塩酸塩を含む50mMTris(pH8.0)にて透析した。透析溶液に最終濃度で100mMのDTTを添加した後、タンパク質濃度を1mg/mlに調製した。続いて、グアニジン塩酸塩濃度を段階的に低下させた緩衝液にて14時間ずつの透析を繰り返し、リフォールド精製タンパク質を得た。
【0164】
(製造例6:RAGE調製法)
全てのRAGE分子に該当するRAGE様ポリペプチド(RAGE関連タンパク質)は本製造例に記載のとおりの以下の2つの手法で調製した。
【0165】
1)封入体として調製し、リフォールディングする手法
製造例5と同様の手法を用いた。なお、製造例5とは発現構築物が異なるため、培養時に添加する抗生物質の記載のみアンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml)に変更して用いた。
【0166】
2)可溶性タンパク質として発現させる手法(非特許文献7を参照)
製造例4に記載の情報に基づいて、発現構築物とBirA遺伝子を含むベクターとで同時に形質転換させたOrigami B(DE3)をアンピシリン(50μg/ml)、テトラサイクリン(12.5μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml)、を含む(いずれも最終濃度)LB培地で25℃で培養した。培養液の濁度(A600)が約0.5に達した時に1mM(最終濃度)IPTGと50μM(最終濃度)のビオチンを添加し、目的タンパク質の誘導と同時にビオチン化を行った。誘導開始後18時間後に、12,000rpm×5分の遠心分離で菌体を回収し、TBSにて洗浄した。菌体をTBSに懸濁し、超音波破砕機にて破砕後、15,000rpm×30分の遠心分離し、回収される上清を可溶性画分とした。目的タンパク質をC末側のHisタグによりNi−アガロースに結合させた後、イミダゾールにより溶出させた。目的タンパク質を含むピークフラクションをTBSにて透析後、N末に付加されたビオチンによりストレプトアビジンムテインマトリクス(Streptavidin Mutein matrix)(Roche)に結合させた後、ビオチンにより溶出させ得られた目的タンパク質を精製RAGEとした。
【0167】
(製造例7:酸化LDL調製法)
本製造例では、酸化LDLを調製した(非特許文献7を参照)。
【0168】
調製に際して、可能なものは全て滅菌し、可能な限り無菌的に操作した。ヒト血漿より調製したLDL(透析によりEDTAを除去)をPBS(−)により1mg/ml に調製し、最終濃度が5μMになるようにCuSO4を添加した。次いでこの溶液を、37℃で20時間反応させ、1mM EDTA(最終濃度)を添加して酸化反応を停止した。この溶液をTris−EDTA(50mM Tris−HCl,pH7.4,150mM NaCl,0.05%EDTA)に対して透析し、さらに無菌濾過後に0.02%NaN3(最終濃度)を添加し、酸化LDL溶液とした。
【0169】
(製造例8:AGE分子である糖化ウシ血清アルブミン(BSA)調製方法)
本製造例では、AGE分子として種々の糖化BSAを調製した(非特許文献7を参照)。
【0170】
糖化BSAは以下のように調製した。調製に際して可能なものは全て滅菌し、可能な限り無菌的に操作した。
【0171】
エタノールで洗浄したスパチュラを使用して、各糖(グルクトース4.51g、フルクトース4.51g、およびリボース3.75g)を秤量し、γ線滅菌済みのキャップ付きプラスチックチューブに入れた。各チューブに20mlの滅菌1M リン酸緩衝液(pH7.4)を無菌的に添加し、穏やかに転倒混和し溶液を混合した。最後に21mlのエンドトキシンフリーの蒸留水を添加し、0.22μmフィルタにより無菌濾過した後、12週間、遮光して37℃で反応させた。1週間に1回、無菌条件下で糖−BSA調製物80μlを取り出し、pHを確認し、さらに、反応液のpHを10N NaOH溶液(エンドトキシンフリー)でpH7.4に調製した。12週後に、滅菌PBSにて透析し、糖を完全に除去し、得られた反応液を糖化BSA(反応させた糖によって、リボース−BSA、グルコース−BSA、フルクトース−BSA)(本明細書では、それぞれ、リボース修飾AGE(リボースAGEまたはR−AGEとも称する。)、グルコース修飾AGE(グルコースAGEまたはG−AGEとも称する。)、フルクトース修飾AGE(フルクトース−AGEまたはF−AGEとも称する。)と称する。)とし、4℃で無菌的に保存した。
【0172】
(実施例1)
本実施例では、受容体であるRAGEを固定化した96穴プレートを用いて、リボース修飾AGE(R−AGE)をリガンドとして標識して用いて本発明のアッセイが機能するか確認した。
【0173】
(1)蛍光プレートリーダー測定
受容体(製造例6において製造したRAGE)を固定化した96穴プレート(ヌンク製)を調製した。
【0174】
この96穴プレートをプロテインフリーブロッティング緩衝液(Therm Scientific製)を用いて4℃で一晩ブロッキングした。
【0175】
活性測定対象分子(Sigma製のクエルセチン、上記製造例のように製造したOxLDL,G−AGE(製造例8のように調製した。),R−AGE(製造例8のように調製した。))を50μl/ウェルで、0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイおよび5μg/アッセイの用量で添加した。蛍光標識リガンド(水溶性色素Alexa546(Molecμlar Probes)標識R−AGE(製造例8のように調製した。))を50μl/ウェルの容量で添加し、その後37℃、60分でインキュベートさせることによって反応を進行させた。次いで、緩衝液(Tris緩衝生理食塩水(TBS)(Tris/Tris−HCl 10 mM;NaCl 150mM)による洗浄を5分×2回、10分×3回行った。100μlの緩衝液(TBS)を添加し蛍光プレートリーダー(Wallac ARVO SX, Perkin Elmer製)で測定した。
【0176】
コントロールとして、蛍光標識モデルリガンドとして水溶性色素Alexa546(Molecμlar Probes)でラベルしたリボース修飾AGE(R−AGE)(製造例8にて調製)を使用して同様の実験を行った。なお、クエルセチン(Quercetin;Sigma製)は、糖尿病発症予防効果が報告されているフラボノイドであり、RAGE阻害剤のモデルとして使用した。
【0177】
(結果)
結果を以下の表3に示し、そのプロットを図1〜4(それぞれ、クエルセチン、OxLDL,G−AGE,R−AGE)に示す。
【0178】
【表3】
【0179】
図5に蛍光標識モデルリガンドとして水溶性色素Alexa546でラベルしたリボース修飾AGE(R−AGE)を使用して行ったコントロール実験を示す。図5左に使用した細胞の位相差像を示し、図5中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図5右にリガンドを結合した細胞像を示す。図5右にある白い点が結合したリガンドである。
【0180】
図6に図5と同様の順で、クエルセチンの添加の場合の写真を示す。図6左に使用した細胞の位相差像を示し、図6中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図6右にリガンドに加えクエルセチンを加えた細胞像を示す。図6右に示すように、クエルセチン添加によりリガンドの結合が阻害されることが細胞における高感度観察で確認された。
【0181】
図7には、図5と同様の順で、R−AGEの添加の場合の写真を示す。図7左に使用した細胞の位相差像を示し、図7中央にRAGE(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図7右にリガンドに加えR−AGEを加えた細胞像を示す。図7右に示されるように、R−AGE添加によるリガンド結合の阻害を示す蛍光像が示される。
【0182】
(定量アッセイ)
次に、グルコース修飾AGE(G−AGE)(製造例8に記載のように製造したもの。)固定化プレートを使用して、Lys−AGE(グリセルアルデヒド修飾リジン:低分子AGEモデル)(0.09gのリジンを0.45gのDLグリセルアルデヒドを50mlの0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させ、遮光条件下、37℃で1週間反応させて調製した。)、およびリボース修飾AGE(R−AGE)(製造例8に記載のように製造したもの。)をそれぞれについて、0、0.25μg/アッセイおよび2.5μg/アッセイの量で用いて定量的アッセイを行った。
【0183】
その結果を表4に示す。
【0184】
【表4】
【0185】
(実施例2)
本実施例では、AGE分子としてR−AGEまたはG−AGE固定化96穴プレートを用いて本発明のアッセイが機能するか確認した。
【0186】
AGE分子として、グルコース修飾AGE(G−AGE)(製造例8に記載のように製造したもの。)、またはリボース修飾AGE(R−AGE)(製造例8に記載のように製造したもの。)を固定化した96穴プレート(ヌンク製)を調製した。
【0187】
この96穴プレートをプロテインフリーブロッティング緩衝液(Therm Scientific製)を用いて4℃で一晩ブロッキングした。
【0188】
活性測定対象分子(Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE:低分子AGEモデル)(0.09gのリジンを0.45gのDLグリセルアルデヒドを50mlの0.2M リン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させ、遮光条件下、37℃で1週間反応させて調製した。)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、またはリボース修飾AGE(R−AGE)、を50μl/ウェルで、0μg/アッセイ(100%のコントロール)、0.25μg/アッセイおよび2.5μg/アッセイの用量で添加した。
【0189】
ビオチン標識RAGE143(製造例6で調製)を50μl/ウェルの容量で添加し、その後37℃、60分でインキュベートさせることによって反応を進行させた。次いで、緩衝液(TBS)による洗浄を5分×2回、10分×3回行った。セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン(streptavidin)を上記ウェル(100μl/ウェル)に添加し、室温で60分間反応させた。その後、緩衝液(TBS)で洗浄した。その後、発色基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を100μl/ウェル添加した。これを、室温でおよそ10分間おいて反応させ、1N 塩酸(HCl)を100μl/ウェル添加して反応を停止させた。その後450nmでの吸光度を測定した。
【0190】
その結果を以下の表5に示す。いずれも、定量的に結合が阻害されることが理解される。
【0191】
【表5】
【0192】
(実施例3)
本実施例では、LOX−1受容体を固定させたプレートにおいて、そのリガンドと競合させたモデルを用い、蛍光標識モデルリガンドとして脂溶性色素DiIでラベルしたアセチル化LDLを使用して、本アッセイが機能するか確認した。
【0193】
LOX−1受容体(製造例5と同様に調製した。)を固定化した96穴プレート(ヌンク製)を調製した。
【0194】
この96穴プレートを、ブロッキング試薬N102(日本油脂製)を用いて4℃で一晩ブロッキングした。
【0195】
活性測定対象分子(Sigma製のクエルセチン、上記製造例のように製造したOxLDLおよびAcLDL)を50μl/ウェルの容量(最終的に、使用量は、0、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイ、5μg/アッセイとした。)で添加した。クエルセチン(Quercetin;Sigma製)は、OxLDLによる細胞障害を抑制する効果が報告されているフラボノイドであり、LOX−1阻害剤のモデルとして使用した。
【0196】
蛍光標識リガンドである脂溶性色素DiIでラベルしたアセチル化LDL(アセチル化LDL(Molecμlar Probe製)をPBS(−)にて透析し、無菌濾過後1ml(1mg/ml)当たり10μlのDiI/DMSO溶液(300mg/ml)を無菌的に添加し、遮光条件下で37℃、18時間反応させた。反応溶液1ml当たりに0.0834gのKBrを添加し溶解させた後、12℃で、105,000g×20時間の超遠心分離に供し、最上層画分を回収し、DiI標識AcLDLとした。)を50μl/ウェルの容量で添加し、その後37℃、60分でインキュベートさせることによって反応を進行させた。次いで、緩衝液(TBS)による洗浄を5分×2回、10分×3回行った。100μlの緩衝液(TBS)を添加し蛍光プレートリーダー(Wallac ARVO SX,Perkin Elmer製)で測定した。
【0197】
その結果を表6に示す。そのプロットを図8〜10(それぞれ、クエルセチン、OxLDL、AcLDL)に示す。図8〜10では、各図において、縦軸には、相対結合活性(%、添加量0のときの吸光度の数値を100%とする。)を示す。左からそれぞれ、0、0.05μg/アッセイ、0.5μg/アッセイ、5μg/アッセイを用いたときの相対結合活性が示される。
【0198】
【表6】
【0199】
(実施例4)
本実施例では、変性LDLの例としてOxLDLを固定させ、CTLD分子としてCTLD14を標識した例を用いて本発明が機能するか確認した。
【0200】
OxLDLを固定化した96穴プレート(ヌンク)を調製した。
【0201】
この96穴プレートをブロッキング試薬N102(日本油脂製)を用いて4℃で一晩ブロッキングした。
【0202】
活性測定対象分子(製造例5で製造したOxLDL、Sigma製のクエルセチン)を50μl/ウェルの容量(最終的に、使用量は、0、0.05μg/アッセイ、0.5μ
g/アッセイ、5μg/アッセイとした。)で添加した。
【0203】
ビオチン標識CTLD14(製造例6で調製)を50μl/ウェルの容量で添加し、その後37℃、60分でインキュベートさせることによって反応を進行させた。
【0204】
次いで、緩衝液(TBS)による洗浄を5分×2回、10分×3回行った。
【0205】
セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識したストレプトアビジンを上記ウェル(100μl/ウェル)に添加し、室温で60分間反応させた。その後、緩衝液(TBS)で洗浄した。その後、発色基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を100μl/ウェル添加した。これを、室温でおよそ10分間おいて反応させ、1N 塩酸(HCl)を100μl/ウェル添加して反応を停止させた。その後450nmでの吸光度を測定した。
【0206】
その結果を以下の表7に示し、そのプロットを図11〜12(それぞれOxLDL、クエルセチン)に示す。いずれも、定量的に結合が阻害されることが理解される。
【0207】
【表7】
【0208】
(実施例5)
本実施例では、CTLD分子としてCTLD14を固定させ、変性LDLの例としてOxLDLを標識した例を用いて本発明が機能するか確認した。
【0209】
製造例5のように調製したCTLD14を固定化した96穴プレート(15μg/ml, 50μl/ウェル)(ヌンク製)を調製した。
【0210】
この96穴プレートをブロッキング試薬N102(日本油脂製)を用いて4℃で一晩ブロッキングした。
【0211】
活性測定対象分子であるクエルセチン、クエルセチンの配糖体であるルチン(Sigma製)を50μl/ウェルの用量で添加した。
【0212】
次に、OxLDLを50μl/ウェルの用量で添加し、その後37℃、60分でインキュベートさせることによって反応を進行させた。次いで、緩衝液(TBS)による洗浄を5分×2回、10分×3回行った。
【0213】
セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識した抗ApoBを上記ウェルに100μl/ウェルで添加し、37℃で60分間反応させた。その後、緩衝液(TBS)で洗浄した(5分間×2、10分間×3)。再度緩衝液による洗浄を行って、発色基質3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を100μl/ウェル添加した。これを、室温でおよそ10分間おいて反応させ、1N 塩酸(HCl)を100μl/ウェル添加して反応を停止させた。その後450nmでの吸光度を測定した。
【0214】
その結果を以下の表8に示し、クエルセチンについてはそのプロットを図13に示す。クエルセチンは定量的に結合が阻害されるのに対してその配糖体であるルチンは阻害されないことが理解される。
【0215】
【表8】
【0216】
図14にLOX−1を蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現させた細胞を用い、OxLDLをコントロールリガンドとして用いたコントロール実験を示す。図14左に使用した細胞の位相差像を示し、図14中央にLOX−1(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図14右にリガンドを結合した細胞像を示す。図14右にある白い点が結合したリガンドである。
【0217】
図15に図14と同様の順で、クエルセチンを添加した場合の写真を示す。図15左に使用した細胞の位相差像を示し、図15中央にLOX−1(蛍光タンパク質との融合タンパク質として強制発現)発現細胞の蛍光を示し、図15右にリガンドに加えクエルセチンを加えた細胞像を示す。図15右に示すように、クエルセチン添加によりリガンドの結合が阻害されることが細胞における高感度観察で確認された。
【0218】
なお、ルチンの場合、細胞上での結合阻害が検出されず、マイクロプレート上での結果と一致した。
【0219】
(実施例6:糖尿病または糖尿病性腎症の診断または予測診断)
本実施例では、本発明のアッセイを用いて糖尿病または糖尿病性腎症の診断または予測診断を行なうことができるか確認した。
【0220】
本実施例では、糖尿病または糖尿病性腎症のモデル動物を作製し、このモデル動物から採血し、血糖値等の糖尿病および糖尿病性腎症のパラメータとなる値(例えば、腎症の症状の一つである飲水量の増加)、ならびに本発明で開発したAGEs様活性の測定を行い、これらを相関付けを行い糖尿病または糖尿病性腎症の診断または予測診断を行なうことができるかを判断した。詳細は以下のとおりである。
【0221】
まず、糖尿病または糖尿病性腎症のモデル動物として、ストレプトゾトシン(STZ)を投与したモデルを作製した(Am J Physiol Renal Physiol (2006) 290,F214−F222, J Endocrinology (1999) 162, 189−195)。投与日をゼロ日とし、1週間程度の間隔で採血し、血糖値、腎症の症状の一つである飲水量の増加、AGEs様活性の測定を行った。
【0222】
AGEs活性は実施例2と同様の手法で測定した。
【0223】
(結果)
以下の表9〜11に血糖値およびAGEs活性の測定結果を示す。測定値(%)は、AGEs活性を示す分子がゼロの時の測定値を100%として表示した。したがって表示されるAGEs様活性は、阻害率(測定値%の低下)で評価することになる。
【0224】
【表9】
【0225】
【表10】
【0226】
【表11】
【0227】
以上の結果をまとめたものを以下の表12に示す。
【0228】
【表12】
【0229】
したがって、糖尿病の指標の一つである血糖値は、16日目には上昇が観察された。この時点で、AGEs様活性の上昇(すなわち、阻害率(測定値%)の低下)も腎症の症状(飲水量の増加を含む)も観察されなかった。糖尿病の指標の一つである血糖値の上昇が観察された22日目には、AGEs様活性の上昇が観察され始めた。22日目の時点で腎症の症状(飲水量の増加を含む)は観察されなかった。
【0230】
26日目当たりから腎症の症状の一つである飲水量の増加が観察され始めた。
【0231】
したがって、AGEs様活性の上昇は、糖尿病の診断に使用しうるとともに、糖尿病性腎症の予備診断および診断に使用しうることが理解される。
【0232】
(実施例7:LDLを用いたLOX−1(CTLD14)へのリガンドの結合阻害)
本実施例では、上述の実施例において用いたAcLDLについて、LOX−1(CTLD14)へのリガンドの結合阻害が、確認できることを実証する。また、血清ではなくLDLに関しても確認が取れることを実証する。
【0233】
(方法)
マウス:C57BL/6 雄マウスは、チャールズ・リバー・ラボラトリー・ジャパン(横浜、日本)から4週齢で購入し、(独)農研機構・食品総合研究所内のSPF(Specific Pathogen Free)動物施設にて維持し、5週齢に達したものを用いた。6匹のマウスにAIN−93M(オリエンタル酵母)に与えコントロール群とし、16匹のマウスに高コレステロール食として高コレステロール・クリントン−シブルスキー齧歯類飼料(15.8% 脂肪、1.25%コレステロール、および、0.5% コール酸ナトリウム (D12109C, Research Diet Inc., New Brunswkc, NJ, USA)を16週間与えた。この動物実験は、「動物の愛護および管理に関する法律」、「実験動物の使用および保管ならびに苦痛の軽減に関する基準」等に基づいて作成された、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の動物実験等の指針、ならびに独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所(以下、食品総合研究所)の動物実験委員会における審査を受け承認されたものである。
【0234】
(血清脂質測定)
マウスは、イソフルラン軽麻酔のもと、全採血により屠殺した。各マウスの総コレステロール量(図16A)、HDLコレステロール量(図16B)、および、LDLコレステロール量(図16C)は、比色定量法(和光純薬、大阪、日本)により測定した。LDLは、高コレステロール食、および、正常食マウスの血清から、連続超遠心分離により分離した後、0.03mM EDTAを含むPBSで透析した。
【0235】
(マイクロプレートを用いた競合結合アッセイ)
50μlのリフォールドしたCTLD14 溶液(15μg/ml のCTLD14を含む)を96穴ウェルプレートの各ウェルに加え、14時間4℃で反応させた。タンパク質溶液を除いた後、200μlのTBSで洗浄し、続いてブロッキング溶液LN102 (NOF Corporation)200μlを加え、4℃で14時間反応しブロッキングを完了した。50μlのサンプル(TBSで希釈した血清、もしくはLDL)を各ウェルに添加し、続いて、50μlのDiI標識DiD−AcLDLを添加し、37℃で2時間反応させた。反応液を除去し、各ウェルを200μlのTBSで5回洗浄した後、100μlのTBSを添加し、蛍光プレートリーダー(Wallac Arvo SX, Perkin Elmer, Waltham MA, USA)により蛍光強度(励起波長:520nm,蛍光波長:550nm)を測定した。結果は、3回の独立した測定から得られた値を、サンプル無しのウェルから得られる蛍光強度を100%とした相対値(%)で表した(図17、A:血清、B:LDL)。
【0236】
(酵素結合イムノソルベントアッセイ)
正常食、もしくは、高コレステロール食群から調製したLDL 100μl(タンパク量で1〜100μg/ml)を96ウェルプレートの各ウェルに加え、4℃で14時間反応させた。LDL溶液を除いた後、各ウェルを200μlのTBSで洗浄し、続いてブロッキング溶液LN102 (NOF Corporation)200μlを加え、37℃で2時間反応しブロッキングした。抗HNE−ヒスチジンモノクローナル抗体(日本油脂, Tokyo, Japan)100μl(0.5μg/ml の抗体を含む)を各ウェルに添加し、37℃で2時間反応させた。抗体溶液を除いた後、TBSで5回洗浄し、100μlの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウス抗体(Bio Rad)を添加し、37℃で1時間反応させた後、TBSで5回洗浄した。各ウェルに基質であるTMB溶液を100μl添加し、室温で発色させ、100μlの1N HClの添加により反応を停止した後、マイクロプレートリーダー(Wallac Arvo SX, Perkin Elmer)により450nmの吸光度を測定した。結果は、3回の独立した実験の平均で示した(図18,B−2)。
【0237】
(実施例8:糖尿病の進行状態の指標としての血清(血漿)中グルコース量)
実施例6で示したように、糖尿病発症の指標と成る血糖値は既に16日目で上昇が観察され、22日目に、AGEs様活性の上昇が観察された。しかし、腎症の症状(飲水量の増大など)は観察されなかったため、腎症の症状が出る前に、AGEs様活性が上昇することが示された。その後、経過を観察し(26日目頃から飲水量が多少は増えた)71日目に全採血を行い、腎症マーカーであるクレアチニン濃度を測定し、腎症が発症していることを確認した。同時に血清中のグルコース濃度も精密な測定法により測定した。ここで、71日目の採血の主眼は、クレアチニン量の測定であり、糖尿病発症の指標である血中のグルコース濃度は、以前から有意に高かったことが、実施例6に記載されている。
【0238】
本実施例では、実施例6までは、グルコース濃度を直接定量せずに血糖値計で簡便に測定していたのを、最終確認としてグルコース測定キットにより厳密に測定し、従来の簡便な測定法との相関を確認し、本発明の方法の厳密性を確認した。
【0239】
より詳細には、本実施例では、71日目に全採血を行い、その血清中のグルコース濃度を正確に測定するために、グルコースCII−テストワコーを用い、検量線は、製造業者の指示書に基づき作成して測定を行った。
【0240】
(使用したマウス)
実施例6までに使用していたマウス(Stz処理BALB/cマウス)を使用した。
【0241】
(測定方法および結果)
発色試薬は、発色剤1瓶(150ml用)を緩衝液(150ml)に溶解し調製した。血清、および標準液(ブランクは蒸留水)各2μlを96穴マイクロプレートに入れ(同一試料に関して3ウェルで測定)、続いて発色試薬300μlをそれぞれのウェルに加えよく混合した。37℃で5分間置いた後に、505nmと600nmにおける吸光度を測定し、両者の差を測定値とした。標準液から検量線を作成し、検量線から試料中のグルコース濃度を求めた。図19において、これらの測定結果を横軸に、従来の血糖値計による測定値を縦軸としてプロットした結果を示す。この図では、血糖値と上記グルコース測定キットとの相関が示される。また、血清中のグルコース濃度を正確に測定した場合もコントロール群およびストレプトゾトシン投与群での結果を図20に示す。
【0242】
これらの結果から、標準血清による検量線を作成から、各マウスの血清中のグルコース濃度を測定したところ、グルコースキットによる測定値と血糖値計による測定値間には相関があり(図19)、血清中のグルコース濃度を正確に測定した場合もコントロール群とストレプトゾトシン投与群での顕著な差は当然認められたが(図20)、経時的な変化を定量していた血糖値計による簡便な測定でも問題がないことが確認された。
【0243】
(実施例9:腎症の進行状態の指標としての血清(血漿)中クレアチニン量)
本実施例では、22日目に既にAGEs様活性が検出されていたが、その後、腎症に至ったのかを明らかにする目的で、全採血時に血清中のクレアチニン濃度の測定を行った。測定は、ラボアッセイクレアチニンTM(Jaffe法;和光純薬)を用いた。測定に際し、製造業者の指示書に基づき標準血清による検量線を作成し、サンプルのクレアチニン濃度を求めた。
【0244】
(使用したマウス)
実施例6までに使用していたマウス(Stz処理BALB/cマウス)を使用した。
【0245】
(測定方法および結果)
50μlの試料に除タンパク試薬300μlを加え混合し、室温で10分間放置した後、2,500rpmで10分間遠心分離した。除タンパクした試料、ならびに、検量線作成用標準液100μlを96ウェルマイクロプレートに添加した(同一試料に関して3ウェルずつ)。ブランク(標準液ゼロ)として、蒸留水100μlをウェルに添加した。続いて、ピクリン酸 50μlを入れ、さらに、0.75 mol/l 水酸化ナトリウム溶液を50μl添加し、よく混合し、25〜30℃で20分間放置した。その後、30分以内に、520nmの吸光度を測定した。血清中のグルコース濃度とクレアチン濃度の個体毎の相関を示したのが図21である。コントロール群は、グルコース濃度は200mg/dl以下、クレアチン濃度は、0.4〜0.7mg/dlの範囲にあるのに対して、Stz群は、グルコース濃度が400mg/dlを越え、さらに、グルコース濃度の高い個体においては、クレアチニン量も0.7mg/dl以上の値を示す個体が多かった(図21)。さらに、コントロール群とStz群のクレアチン濃度の平均値は、Stz群の方が有意に高かった(図22)。このことから、Stz群では、糖尿病発症に引き続き、腎症も発症したと考えられる。しかし、AGEs様活性が検出された22日目では、飲水量の増加を腎症発症の最も簡便な指標として測定したところ、腎症の発症を明確に捉えることはできなかった。
【0246】
したがって、22日目に既にAGEs様活性が検出されていたが、その後、腎症に至ったことが実証された。
【0247】
(実施例10:時系列のデータのまとめ)
これまでの実施例に加え、血糖値または血中グルコース濃度について、これまでのデータ(0日目、16日目、22日目)に加え、同様の実験を57日目および71日目のサンプルについても行い、データも採取し、時系列に沿って纏めたものを図23〜図27に示す(したがって、本実施例において提示するデータは、実施例1〜9に記載のものと一部重複する。)。
【0248】
詳細には、図23〜図27は、コントロールマウスとストレプトゾトシン(Stz)投与により糖尿病を誘導したマウス由来の血清の「Alexa546標識R−AGEのRAGE固定化プレートへの結合阻害活性」、ならびに、「血糖値または血中グルコース濃度」を経時的に測定し、個体毎の相関を示したグラフであって、それぞれ0日目(図23)、16日目(図24)、22日目(図25)、57日目(図26)、71日目(図27)のものである。図中のAGEs様活性とは、Alexa546標識R−AGEの結合を100%阻害する濃度を100,全く阻害しない時の濃度を0として現した値であり、この値が高いほど、AGEs様活性を示す分子の含量が高いことを示す。0日目(図23参照)がStz投与開始日である。16日目(図24)には、Stz投与群の大半の個体で、血糖値の上昇が観察され、コントロール群に比べて有意に高い血糖値を示し始めており、糖尿病が既に誘導されていると考えられる。一方、AGEs様活性は、数個体で上昇が検出されたが、血糖値の顕著な上昇を示した個体とAGEs様活性の上昇を示した個体の相関は明瞭ではなかった。22日目(図25)になると、Stz群とコントロール群で血糖値の差が顕著になり、AGEs様活性の値も20以上を示す個体が増え、血糖値が高い個体ではAGEs様活性も高い傾向があるなど、発症群においてAGEs様活性が検出されている。糖尿病の発症に伴い、AGEs様活性を示す分子が生成されて来ていると考えられる。またこの段階では、飲水量の増大などの糖尿病腎症の発症を示す兆候は観察されず、腎症の兆候が現れる前に、AGEs様活性を示す分子が捉えられていると考えられる。
【0249】
57日目の採血の血清においては((図26)、Stz群で高い血清中のグルコース濃度が検出され、AGEs様活性も全般に高くなっていたが、グルコース濃度との相関は高くなかった。さらに、コントロール群のAGEs様活性も上昇しており、この回の採血結果からは糖尿病の進行に伴い、AGEs様活性を示す分子が顕著に蓄積されることが明瞭には示されなかった。
【0250】
71日目に当たる11月25日のStz群では、高グルコース濃度を示し、コントロール群とは有意な差を示した。さらに、AGEs様活性もコントロール群よりも高く、グルコース濃度、AGEs様活性共に高い個体も多かった。図28は、71日目の血清中のクレアチニン量を測定し、AGEs様活性との相関をみたものであるが、コントロール群に対し、Stz群では、クレアチニン濃度、AGEs様活性共に高い個体が多く観察された。クレアチニンは腎症のマーカーであるから、Stz群では糖尿病の進行に伴い腎症が発症していることが確認されたといえる。また、AGEs様活性は、既に22日目から検出されており、57日目の結果はコントロール値が異常値を示しているため、誤操作の可能性と判断されることから、腎症発症よりも早い段階で検出可能であり、AGEs様活性の測定は、腎症発症を早い時期に捉えるマーカーになり得ると言える。
【0251】
このようにコントロールマウスおよびStzマウスの血清中グルコース濃度、AGEs様活性の変化を経時的に追跡した結果、個体毎に両者の相関が示されたといえる。また、0日目から22日目までは、Stz群で血糖値、AGEs様活性が共に上昇する個体数が多いことが観察され、71日目でもその傾向は観察された。22日目の段階では、腎症発症の簡便な目安である飲水量の増大などは認められていなかったが、この時点で既にAGEs様活性の上昇がみられた。さらに、71日目では、腎症発症の指標となる血中クレアチニン量も測定したが、Stz群において、AGEs活性とクレアチニン濃度が共に高い個体が多いことも確認された。
【0252】
以上からAGEs様活性は糖尿病または糖尿病性腎症の診断のために使用することができ、また、糖尿病性腎症の予備的な診断(予測)、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断(予測)も可能であることが実証され、診断マーカーとして有用であることが実証された。
【0253】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0254】
CTLD様ポリペプチド−界面活性剤結合複合体およびRAGE様ポリペプチド−界面活性剤結合複合体は、糖尿病、動脈硬化、糖尿病性血管障害、糖尿病性腎症などの早期診断、機能性食品の予防効果評価、生活改善や投薬による治療効果の評価など様々な分野で活用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0255】
配列番号1:PR−CTLDまたはCTLDをコードする核酸配列
配列番号2:PR−CTLDまたはCTLDのアミノ酸配列
配列番号3:PR−Lox−1またはLox−1をコードする核酸配列
配列番号4:PR−Lox−1またはLox−1のアミノ酸配列
配列番号5:PR−CTLD14またはCTLD14をコードする核酸配列
配列番号6:PR−CTLD14またはCTLD14のアミノ酸配列
配列番号7:Lox−1のCTLD+ネックまたはPR−CTLD+ネックをコードする核酸配列
配列番号8:Lox−1のCTLD+ネックまたはPR−CTLD+ネックのアミノ酸配列
配列番号9:RAGEまたはmRAGEをコードする核酸配列
配列番号10:RAGEまたはmRAGEのアミノ酸配列
配列番号11:RAGE8またはmRAGE8をコードする核酸配列
配列番号12:RAGE8またはmRAGE8のアミノ酸配列
配列番号13:RAGE1またはmRAGE1をコードする核酸配列
配列番号14:RAGE1またはmRAGE1のアミノ酸配列
配列番号15:RAGE2またはmRAGE2をコードする核酸配列
配列番号16:RAGE2またはmRAGE2のアミノ酸配列
配列番号17:RAGE3またはmRAGE3をコードする核酸配列
配列番号18:RAGE3またはmRAGE3のアミノ酸配列
配列番号19:RAGE4またはmRAGE4をコードする核酸配列
配列番号20:RAGE4またはmRAGE4のアミノ酸配列
配列番号21:RAGE7またはmRAGE7をコードする核酸配列
配列番号22:RAGE7またはmRAGE7のアミノ酸配列
配列番号23:RAGE143またはmRAGE143をコードする核酸配列
配列番号24:RAGE143またはmRAGE143のアミノ酸配列
配列番号25:RAGE223またはmRAGE223をコードする核酸配列
配列番号26:RAGE223またはmRAGE223のアミノ酸配列
配列番号27:RAGE226またはmRAGE226をコードする核酸配列
配列番号28:RAGE226またはmRAGE226のアミノ酸配列
配列番号29:AviTag配列 GLNDIFEAQKIEWHE
配列番号30:Streptag配列 AWRHPQFGG
配列番号31:StreptagII配列 WSHPQFEK
配列番号32:順方向プライマー(RAGE1、RAGE2、RAGE3、RAGE7、RAGE8、RAGE9、RAGE143、RAGE223およびRAGE226に共通)5’−CTACATATGGCTCAAAACATCACAGC−3’
配列番号33:RAGE1逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAGCCTGCAGTTGGCCC−3’
配列番号34:RAGE2逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGACCAGACACGGGGCTG−3’
配列番号35:RAGE3逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAAGCTACTGCTCCACC−3’
配列番号36:RAGE7逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAAACACCAGCCGTGAGT−3’
配列番号37:RAGE8逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAAATCTGGTAGACACGG−3’
配列番号38:RAGE9逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGACTTGGTCTCCTTTCC−3’
配列番号39:RAGE4順方向プライマー
5’−TCGCATATGGCAATGAACAGGAATGG−3’
配列番号40:RAGE4逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGAGCCTGCAGTTGGCCC−3’
配列番号41:RAGE143逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGTCCCCACCTTATTGGG−3’
配列番号42:AGE223逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGCTGTGCGCAAGGCCCG−3’
配列番号43:RAGE226逆方向プライマー
5’−TTACTCGAGACTGGATGGGGGCTGTGC−3’
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法であって、
(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるAGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法。
【請求項2】
糖尿病性腎症の予備的な検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法。
【請求項3】
糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる糖尿病に罹患した被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法。
【請求項4】
糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該固定化されたAGEもしくはその改変体に対する該RAGE分子または該AGEもしくはその改変体のリガンドの結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、工程を包含する、方法。
【請求項5】
前記RAGE分子は、RAGE143、RAGE1、RAGE223、RAGE226またはその改変体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記AGE分子は、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法であって、
(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたCTLD分子の存在下で標識した変性LDLに接触させるか、または固相に固定された変性LDLの存在下で、標識したCTLD分子に接触させる工程、
および
(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法。
【請求項8】
前記CTLD分子は、CTLD14、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長、CTLDまたはそれらの改変体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記変性LDLは、酸化LDL(OxLDL)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL、糖化LDL、アセチル化LDLまたはその改変体である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
AGEs様活性を示す分子の検出または定量のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する手段
を備え、該結合の阻害の存否またはレベルは、AGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、キット。
【請求項11】
糖尿病性腎症の予備的な診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該RAGE分子の結合を検出する手段
を備え、
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、キット。
【請求項12】
糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段
を備え、
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、キット。
【請求項13】
糖尿病または糖尿病性腎症の診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段
を備え、
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、キット。
【請求項14】
前記RAGE分子は、RAGE143、RAGE1、RAGE223、RAGE226またはその改変体である、請求項10〜13のいずれか1項に記載のキット。
【請求項15】
前記AGE分子は、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体である、請求項10〜14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項16】
OxLDL様活性を示す分子の検出または定量のためのキットであって、
(A)固定されたCTLD分子を有する固相および標識した変性LDL、または固定された変性LDLを有する固相および標識したCTLD分子;および
(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する手段
を備え、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、キット。
【請求項17】
前記CTLD分子は、CTLD14、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長、CTLDまたはその改変体である、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記変性LDLは、酸化LDL(OxLDL)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL、糖化LDL、アセチル化LDLまたはその改変体である、請求項16または17に記載のキット。
【請求項19】
AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病性腎症の予備的な診断マーカー。
【請求項20】
AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断マーカー。
【請求項21】
AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病または糖尿病性腎症の診断マーカー。
【請求項22】
糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用。
【請求項23】
糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用。
【請求項24】
糖尿病または糖尿病性腎症の診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、使用。
【請求項1】
AGEs様活性を示す分子の検出または定量方法であって、
(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該サンプルにおけるAGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法。
【請求項2】
糖尿病性腎症の予備的な検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法。
【請求項3】
糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる糖尿病に罹患した被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、工程を包含する、方法。
【請求項4】
糖尿病または糖尿病性腎症の検出方法であって、
(A)糖尿病性腎症の検出の対象となる被験体からのサンプルを、固相に固定されたRAGE分子の存在下で標識したAGE分子に接触させるか、または固相に固定されたAGE分子の存在下で、標識したRAGE分子に接触させる工程、
および
(B)該固定化されたAGEもしくはその改変体に対する該RAGE分子または該AGEもしくはその改変体のリガンドの結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、工程を包含する、方法。
【請求項5】
前記RAGE分子は、RAGE143、RAGE1、RAGE223、RAGE226またはその改変体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記AGE分子は、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
OxLDL様活性を示す分子の検出または定量方法であって、
(A)検出または定量の対象となるサンプルを、固相に固定されたCTLD分子の存在下で標識した変性LDLに接触させるか、または固相に固定された変性LDLの存在下で、標識したCTLD分子に接触させる工程、
および
(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する工程であって、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、工程を包含する、方法。
【請求項8】
前記CTLD分子は、CTLD14、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長、CTLDまたはそれらの改変体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記変性LDLは、酸化LDL(OxLDL)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL、糖化LDL、アセチル化LDLまたはその改変体である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
AGEs様活性を示す分子の検出または定量のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGE分子に対する該RAGE分子の結合を検出する手段
を備え、該結合の阻害の存否またはレベルは、AGEs様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、キット。
【請求項11】
糖尿病性腎症の予備的な診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該RAGE分子の結合を検出する手段
を備え、
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、キット。
【請求項12】
糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段
を備え、
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、キット。
【請求項13】
糖尿病または糖尿病性腎症の診断のためのキットであって、
(A)固定されたRAGE分子を有する固相および標識したAGE分子、または固定されたAGE分子を有する固相および標識したRAGE分子;および
(B)該AGEに対する該分子の結合を検出する手段
を備え、
該結合の阻害の存在またはレベルは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、キット。
【請求項14】
前記RAGE分子は、RAGE143、RAGE1、RAGE223、RAGE226またはその改変体である、請求項10〜13のいずれか1項に記載のキット。
【請求項15】
前記AGE分子は、Lys−AGE(グルタルアルデヒド修飾リジン修飾AGE)、グルコース修飾AGE(G−AGE)、リボース修飾AGE(R−AGE)、フルクトース修飾AGE(F−AGE)またはそれらの改変体である、請求項10〜14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項16】
OxLDL様活性を示す分子の検出または定量のためのキットであって、
(A)固定されたCTLD分子を有する固相および標識した変性LDL、または固定された変性LDLを有する固相および標識したCTLD分子;および
(B)該変性LDLに対する該CTLD分子の結合を検出する手段
を備え、該結合の阻害の存否またはレベルは、OxLDL様活性を示す分子の存在もしくは存在レベルを示す、キット。
【請求項17】
前記CTLD分子は、CTLD14、LOX−1全長、LOX−1細胞外領域全長、CTLDまたはその改変体である、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記変性LDLは、酸化LDL(OxLDL)、マロンジアルデヒド化LDL(MDA−LDL)、アクロレイン修飾LDL、ノネナール修飾LDL、クロトンアルデヒド(CRA)修飾LDL、4−ヒドロキシノネナール(HNE)修飾LDL、ヘキサノイル(HEL)修飾LDL、小粒子LDL、糖化LDL、アセチル化LDLまたはその改変体である、請求項16または17に記載のキット。
【請求項19】
AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病性腎症の予備的な診断マーカー。
【請求項20】
AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断マーカー。
【請求項21】
AGEs様活性を示す分子を含む、糖尿病または糖尿病性腎症の診断マーカー。
【請求項22】
糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用。
【請求項23】
糖尿病における糖尿病性腎症の予備的な診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が将来糖尿病性腎症に罹患することまたはその可能性を示す、使用。
【請求項24】
糖尿病または糖尿病性腎症の診断の指標とするための、被験体中のAGEs様活性の使用であって、該AGEs様活性が標準値に比べて高いことは、該被験体が糖尿病または糖尿病性腎症に罹患していることを示す、使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−122994(P2012−122994A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251881(P2011−251881)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、農林水産省、「食品・農産物の表示の信頼性確保と機能性解析のための基盤技術の開発」委託研究;科学技術振興機構、重点地域研究開発推進プログラム(シーズ発掘試験);文部科学省科学研究費補助金、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)」
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度、農林水産省、「食品・農産物の表示の信頼性確保と機能性解析のための基盤技術の開発」委託研究;科学技術振興機構、重点地域研究開発推進プログラム(シーズ発掘試験);文部科学省科学研究費補助金、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)」
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】
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