説明

リサイクル傘

【課題】傘の修理および構成部品の分別廃棄のための分解に際して、支え骨が下ろくろから容易に外れるようにする。
【解決手段】開傘時の下ろくろ6の中棒2における摺動上限を規定するストッパーピン15を、下ろくろ6の摺動上限を越えた上方への摺動を可能にすべく中棒2の外周面に対して出没可能に設けるとともに、下ろくろ6を、ストッパピン15を越えた上方位置において支え骨8の根元部が下ろくろ6から分離し得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製作時における組立てが容易であるのみでなく修理および廃棄に際しての分解が容易で、部材の再利用および材質別の分別を可能にしたリサイクル傘に関し、特に中棒の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の傘は、金属製部材(中棒、親骨,支え骨等)と、一般に合成樹脂(以下単に「樹脂」と呼ぶ)または木材、布からなる非金属製部材(手元、上ろくろ、下ろくろ、シート等)から構成されているが、各部材は恒久的にあるいは分解が極めて困難な状態で連結されている。
【0003】
また、支え骨の根元部を枢支した下ろくろが摺動自在に嵌装されている中棒の上部には、開傘時における下ろくろの摺動上限を規定するためのストッパーピンが固定されている。
【0004】
近時、環境汚染問題が特にクローズアップされている中、材質別の分別廃棄を義務付ける地方自治体も多くなってきたために、傘の金属製部材と非金属製部材との分別廃棄を容易にすることが要望されている。
【0005】
これに加えて、特にファッションの一部としての婦人用の高価な高級傘等に関しては、可能な限り迅速なかつ部品の交換を必要最小限に留めた修理が可能なことが要望されている。
【0006】
一方、使用上の便利さから、自動開き傘(ジャンプ傘とも言う)が多数販売されるようになってきた。典型的な自動開き傘の構成は、例えば特許文献1に開示されているように、手開き式傘と同様に、中棒の先端に固定されたた上ろくろと、中棒に摺動自在に嵌着されてその摺動動作により傘を開閉する下ろくろとに加えて、上ろくろと下ろくろとの間において中棒に摺動自在に嵌着された中ろくろを備えており、手開き式傘では下ろくろに枢支されている支え骨の根元部が上記中ろくろに枢支され、下ろくろには、支え骨の中間部に先端を枢着された細く短い受け骨の根元部が枢支されるようになっている。中ろくろと下ろくろとの間には強力なコイルばねが縮装され、中棒の手元の近接した位置には、中棒の外周面から突出する方向に付勢された態様で出没自在な留め金が設けられているとともに、この留め金を中棒内に没入させるための押しボタンが留め金と手元との間に設けられている。
【0007】
そして、下ろくろを手に持って手元側に引き寄せることにより傘を閉じると、受け骨および支え骨を介して中ろくろが下ろくろに接近せしめられることにより、コイルばねが圧縮され、その状態で傘は、下ろくろが留め金によって手元の近接した位置に係止された閉状態となる。
【0008】
この閉状態で押しボタンを押圧すると、留め金による係止を解除された下ろくろがコイルばねの弾発力で中ろくろとともに勢い良く中棒上を上ろくろに向かって摺動して傘が開くように構成されている。
【特許文献1】特開2006−325899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の傘は、修理または廃棄のための分解が困難な上にリサイクルも困難であった。特に、特許文献1に記載されているような自動開き傘においては、中ろくろと下ろくろとの間には強力なコイルばねが縮装されているため、このコイルばねの弾発力が完全に消勢された状態で分解できるようにしなければ、分解が困難であるばかりでなく、危険をも伴うものである。
【0010】
また、手開き式傘においても、下ろくろから支え骨をより容易に取り外すことが容易な中棒の構造が望まれている。
【0011】
上述の事情に鑑み、本発明の目的は、下ろくろまたは中ろくろから支え骨を取り外すことが容易かつ安全なリサイクル傘を提供することにある。
【0012】
なお、以下の説明において、上部または上方は傘の石突き側を意味し、下部または下方は傘の手元側を意味するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によるリサイクル傘においては、支え骨の根元部を枢支して中棒に摺動自在に嵌装されたスライドろくろの開傘時における中棒上の摺動上限を規定するストッパーピンが、上記スライドろくろの上記摺動上限を越えた上方への摺動を可能にすべく上記中棒の外周面に対して出没可能に中棒に設けられてなることを特徴とするものである。
【0014】
上記スライドろくろは、手開き式傘の場合は下ろくろ、自動開き傘の場合は中ろくろである
上記スライドろくろが下ろくろの場合、この下ろくろは、支え骨枢支部材と、この支え骨枢支部材に分離可能に結合される下ろくろ本体とからなる。この下ろくろは、上記ストッパーピンよりも下方にあるときには、上記支え骨枢支部材と上記ろくろ本体とが分離不能になり、かつ前記ストッパーピンを越えて上方へ摺動された場合に、前記支え骨枢支部材と前記ろくろ本体とが分離可能になって、前記支え骨の根元部を解放し得るように構成されていることが好ましい。
【0015】
また、手元の中棒挿入孔に嵌挿される上記中棒の下端部に第2のストッパーピンが上記中棒の外周面に対して出没可能に設けられ、上記手元の中棒挿入孔の内周面に、中棒の外周面から突出した上記第2のストッパーピンに係合して中棒を手元の中棒挿入孔内に係止する凹部が形成されていることが好ましい。そして、この凹部に連通する、取外し用治具のピンの挿入可能な細孔が、手元の外周面に開口していることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、傘の分解時にスライドろくろを上記ストッパーピンよりも上方へ摺動させることにより、支え骨をスライドろくろから取り外すことが容易になり、自動開き傘においては、中ろくろをストッパーピンよりも上方へ摺動させることにより、下ろくろとの間に縮装されている強力なコイルばねの弾発力を消勢させることができるから、安全に傘を分解することができる。
【0017】
また、手開き式傘においても、下ろくろを、それが上記ストッパーピンよりも下方にあるときには、上記支え骨枢支部材と上記ろくろ本体とが分離不能になり、ストッパーピンを越えて上方へ摺動された場合に支え骨枢支部材とろくろ本体とが分離可能になるように構成しておくことにより、傘の使用時における支え骨枢支部材と下ろくろ本体との意図しない分離を防止することができる。
【0018】
さらに、手元の中棒挿入孔に嵌挿される上記中棒の下端部に第2のストッパーピンが上記中棒の外周面に対して出没可能に設けられ、上記手元の中棒挿入孔の内周面に、中棒の外周面から突出した上記第2のストッパーピンに係合して中棒を手元の中棒挿入孔内に係止する凹部が形成されていることにより、中棒に対する手元の取付けが容易になる。そして、上記凹部に連通する、取外し用治具のピンの挿入可能な細孔を、手元の外周面に開口させておくことにより、中棒から手元を取外すときには、上記治具のピンの先端で2のストッパーピンの頭を押して中棒内に没入させることにより、ワンタッチで中棒から手元を取外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明による傘の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明による傘の閉状態における全体構成を、一部を省略して示す概略図である。
【0020】
図1において、この手開き式傘1は、金属製の中棒(支柱)2と、この中棒2の上端部に嵌装固定された合成樹脂製の上ろくろ3と、この上ろくろ3に根元部を枢着された複数の金属製またはカーボンファイバ製の親骨4と、これら親骨4に沿って張架された布製または樹脂製の生地(シート)Sと、上ろくろ3を生地Sとともに中棒2に固定する陣笠5と、中棒2に摺動自在に嵌装された合成樹脂製の下ろくろ6と、この下ろくろ6に根元部を枢着されかつ先端部を親骨4の中間部の点Pにおいて枢着された複数の金属製またはカーボンファイバ製の支え骨8と、中棒2の下端部に固定された合成樹脂製または木製の手元10とを備えている。中棒2の上端には石突き14が嵌着されている。生地(シート)Sの周縁8箇所には、親骨4の先端部に取外し可能に嵌着される露先9が固定されている。
【0021】
また、この傘1の閉状態において、下ろくろ6を手元10に近接した位置に係止するためと、下ろくろ6を傘1の開状態に保つためとに用いられる金属製留め金(はじき)12,13が、中棒2の外周面から突出する方向にばね付勢された態様で中棒2に出没自在に設けられている。さらに、中棒2には、下ろくろ6の摺動動作の上限を規定する押しボタン式ストッパーピン15が中棒2の外周面から突出する方向にばね付勢された態様で中棒2に出没自在に設けられている。
【0022】
図2は、図1の傘1の上端部の分解正面図である。なお、図2においては、一対の上ろくろ位置決め孔16を備えた中棒2が、その軸線の周りで90°回転した状態で示されている。上ろくろ3は、上ろくろ本体18と、親骨枢支ディスク20と、親骨外れ防止ナット22とによって構成されている。上ろくろ3の上には生地Sを介して陣笠5が螺着される。
【0023】
図3A〜図3Dは上ろくろ本体18を示し、図3Aは平面図、図3Bは正面図、図3Cは底面図、図3Dは図3Aの3D−3D線に沿う断面図である。
【0024】
この上ろくろ本体18は、中棒2の上ろくろ位置決め穴16に係入される互いに対向する一対の突起24,24を内周面に備えた中棒挿通孔26と、親骨4の根元部を収容するための上下に貫通する8個の親骨収容溝28を、ほぼ45°の角間隔を保ってほぼ等間隔に放射状に周縁に形成した円板状のフランジ30とを同軸的に備えた円筒体からなり、フランジ30の上方には、環状の親骨枢支ディスク20が嵌着される円筒部31が連接され、さらにこの円筒部31の上方には、雄ねじ32が上端まで形成されているとともに、この上端から軸線を含む面に沿って下方へ延びる一対の割溝34,34が設けられている。
【0025】
上ろくろ本体18の内周面に形成されている上記一対の突起24,24は、図3Aおよび図3Cから明らかなように、上記割り溝34,34および軸線を含む面に対して軸線上で直交する面上にあり、かつ上記円筒部31からフランジ30に亘る内周面に形成されている。そして上記割り溝34,34は、上ろくろ本体18の上端から軸線と平行に下方へ向かってフランジ30を通過してフランジ30の下方まで延びている。
【0026】
フランジ30には、一つの同心円上に整列する8個のディスク位置決め孔36が、隣接する親骨収容溝28,28の間の位置においてフランジ30を貫通して形成されている。
【0027】
図4A〜図4Dは親骨枢支ディスク20を示し、図4Aは平面図、図4Bは正面図、図4Cは底面図、図4Dは図4Aの4D−4D線に沿った断面図である。
【0028】
上ろくろ本体18のフランジ30上に添接可能に構成された親骨枢支ディスク20は、上ろくろ本体18のフランジ30とほぼ同径の外径と、上ろくろ本体18の円筒部31に嵌着可能な内径の軸孔37とを備えて環状に構成され、フランジ30の親骨収容溝28に対応する上下に貫通する8個の親骨収容溝38を備えている。またその底面には、フランジ30の8個のディスク位置決め孔36に嵌合する8本の位置決め突起40を備え、この親骨枢支ディスク20がフランジ30上に添接されると、双方の親骨収容溝28,38が一致するように構成されている。
【0029】
親骨枢支ディスク20の上面には、親骨4の根元部に形成された突軸44(図5A)を枢支するための突軸枢支溝42が、各親骨収容溝38の両側に親骨収容溝38と直交するように形成されている。また、親骨枢支ディスク20の上面の軸孔37の周囲には突縁46が形成されている。
【0030】
図5Aは、親骨4の根元部を示す底面図、図5Bは親骨4の根元部が親骨枢支ディスク20に枢支された状態を示す平面図である。親骨4の根元部4aは、上記親骨収容溝28,38内に挿入可能なように平に潰されるとともに、枢軸となる突軸44が一体に形成されている。そして、突軸44を備えた全ての親骨4の根元部4aを、図5Bに示すように親骨枢支ディスク20の上面に開口する親骨収容溝38および突軸枢支溝42に取り付けると、図5Bに示す状態となる。
【0031】
図6A,図6Bは親骨外れ防止ナット22の断面図および底面図を示し、その軸孔47の内周面には、上ろくろ本体18の円筒部31の雄ねじ32に螺着される雌ねじ48を備え、かつ底面の軸孔47の周囲には、親骨枢支ディスク20の突縁46に嵌着される環状凹部50を備えている。この親骨外れ防止ナット22は、図5Bに示すようにすべての親骨4の根元部4aを取り付けた親骨枢支ディスク20に上方から嵌着することによって、親骨4の外れ防止して、上ろくろ3に対する親骨4の取り付け作業を容易にする機能を有する。
【0032】
なお、親骨外れ防止ナット22の代わりに、上ろくろ本体18の円筒部31の根元に比較的きつく嵌着される親骨外れ防止リングを用いてもよい。
【0033】
以上のような構成を有する上ろくろ本体18および親骨枢支ディスク20を備えた上ろくろ3を中棒2に取り付ける場合には、先ず上ろくろ本体18の突起24,24と、中棒2の上ろくろ位置決め孔16,16との方位を整合させた態様で上ろくろ本体18を上方から中棒2に挿入するが、突起24,24が中棒2に当接すると、割溝34,34が突起24,24よりも下方まで延びていることにより、上ろくろ本体18が弾性的に開いて中棒2の外周面における突起24,24の摺動が許容され、突起24,24が上ろくろ位置決め孔16,16に係入した時点で、上ろくろ本体18は元の状態に復帰する。
【0034】
次に、上方から中棒2に挿入した親骨枢支ディスク20を上ろくろ本体18の円筒部31に嵌着し、親骨枢支ディスク20の位置決め突起40を上ろくろ本体18のフランジ30の位置決め孔36に嵌合させた状態で、親骨枢支ディスク20にすべての親骨4の根元部を枢支させた後、親骨枢支ディスク20の上方に露出する雄ねじ32に親骨外れ防止ナット22を螺着して親骨枢支ディスク20の上面に蓋をする。
【0035】
図7A,図7Bは陣笠と呼ばれる固定部材5の断面図および底面図を示し、この陣笠5は、その中棒2に挿通する軸孔51の中間部に、上ろくろ本体18の雄ねじ32に嵌着される雌ねじ52を備え、かつその底面に、親骨外れ防止ナット22を収容する凹部53を備えている。そして、中棒2が挿通される中心孔(図示せず)を備えた生地Sを親骨外れ防止ナット22上に被せた後、陣笠5を上ろくろ本体18の雄ねじ32の上端部に螺着することにより、上ろくろ3が中棒2に強固に固定される。
【0036】
次に、中棒2に摺動自在に嵌装される下ろくろ6は、図8A〜図8Eに示す支え骨枢支部材54と、この支え骨枢支部材54の下側に連結される、図9A〜図9Dに示すような下ろくろ本体56とから構成されている。
【0037】
図8Aは支え骨枢支部材54の平面図、図8Bは正面図、図8Cは側面図、図8Dは底面図、図8Eは図8Aの8E−8E線に沿った断面図である。
【0038】
中棒2が通る軸孔57を備えた支え骨枢支部材54は、支え骨8の根元部を収容するための上下に貫通する8個の支え骨収容溝58を軸孔57の周囲に約45°の角間隔を保ってほぼ等間隔に放射状に形成した比較的厚い環状の支え骨枢支ディスク部60と、このディスク部60の下面から同軸的に一体に垂設された、ディスク部60よりも小径の連結用円筒部62とから構成されている。ディスク部60の下面には、図5Aに示した親骨4の場合と同様に支え骨8の根元部に形成された突軸65(図11A,図11B参照)を枢支するための、突軸枢支溝42と同様の上下方向に細長く延びる突軸枢支溝64が、各支え骨収容溝58の両側に支え骨収容溝58と直交するように形成されている。
【0039】
支え骨枢支部材54は、下ろくろ本体56に対してバヨネット式(差込みソケット式)に係止されて下ろくろ本体56と一体化されるように構成されており、そのため、支え骨枢支部材54の連結用円筒部62の外周面の下端には、放射方向に突出する一対の係合突起66,66が、図8Dから特に明らかなように、支え骨枢支部材54の軸線に対して対称的位置に、かつ底面図で見て隣接する二つの支え骨収容溝58の中間に位置するように、すなわち支え骨収容溝58に対して角度22.5°だけ位相がずれた関係で突設されている。そして、これら係合突起66,66の上面は、図8Bから明らかなように、浅い凹面66aを形成している。
【0040】
図9Aは下ろくろ本体56の平面図、図9Bはその正面図、図9Cは図9Bの9C−9Cに沿った断面図、図9Dは図9Aの9D−9Dに沿った断面図、図10は下ろくろの正面図である。
【0041】
上記支え骨枢支部材54の軸孔57と同径の軸孔67を有し、かつ傘1の開閉操作時の掴み部となる細長い円筒部71を備えた下ろくろ本体56は、支え骨枢支部材54のディスク部60とほぼ同径のフランジ70を上端に備え、上面中央には、支え骨枢支部材54の円筒部62を取り外し可能に嵌着させる円筒状凹部72が同軸的に開口している。円筒部71の周壁には、「はじき」と呼ばれる留め金12を出没させる細長い開口部76が形成されている。
【0042】
凹部72の周縁の2箇所には、支え骨枢支部材54を下ろくろ本体56に組み付ける際に、支え骨枢支部材54の係合突起66,66の上方からの挿入を許容する垂直方向の係合溝74,74が、フランジ70の上面から凹部72の底面72aまで上下方向に刻設され、さらに各係合溝74の下端からは、支え骨枢支部材54が下ろくろ本体56に対して図9Aの時計方向(図9Cの反時計方向)に約22.5°だけ回動し得るように係合突起66の通路となる水平方向の係合溝75が、下ろくろ本体56の周壁を貫通して外部に開口する態様で、凹部72の底面72aとフランジ70の下面との間に形成されている。すなわち、図9Dに示すように、互いに連通する垂直方向の係合溝74と水平方向の係合溝75とが鉤型の、すなわち軸孔67の内側から見てL字型の係合溝78を形成しており、各係合突起66が各水平方向の係合溝75の終端の壁面77に当接しかつ係合突起66を水平方向の係合溝75から外部に露出させた状態で、下ろくろ本体56側のL字型の係合溝78,78と、支え骨枢支部材54側の係合突起66,66とによる、支え骨枢支部材54と下ろくろ本体56とのバヨネット式の係合が達成されることになる(図10図参照)。
【0043】
さらに、図9Bおよび図9Cから明らかなように、下ろくろ本体56のフランジ70の下面の2箇所には、上述のようにバヨネット式の係合が達成された時点で、各係合突起66の凹面66aにそれぞれ係合する放射方向に延びる突条79が形成されて、下ろくろ本体56と支え骨枢支部材54とが所定の相対的位置関係をもって確実に係止されるように構成されている。
【0044】
さらに、下ろくろ本体56のフランジ70の上面には、支え骨8の根元部の介入を許容する8個の比較的浅い支え骨介入溝80が、軸孔57の周囲に約45°の角間隔を保ってほぼ等間隔に放射状に形成されている。これら8個の支え骨介入溝80のうちの対向する一対は、垂直方向の溝74,74と整合しており、支え骨枢支部材54側の支え骨収容溝58とは角度約22.5°だけ位相がずれた関係にある。そして、下ろくろ本体56の垂直方向の係合溝74,74を支え骨枢支部材54の係合突起66,66に合わせて、下ろくろ本体56を下方から支え骨枢支部材54に嵌合させ、次いで、支え骨枢支部材54に対して下ろくろ本体56を図9Aの時計方向(図9Cの反時計方向)に回動させてバヨネット式の係止が達成された時点で、図10に示すように、支え骨枢支部材54側の支え骨収容溝58が下ろくろ本体56側の支え骨介入溝80とが整合することになる。
【0045】
上記支え骨枢支部材54側の支え骨収容溝58に加えて、下ろくろ本体56側にも支え骨介入溝80を形成した理由は下記の通りである。すなわち、傘1が組み立てられた状態では、図11Aに示すように、上下方向に細長く延びる突軸枢支溝64に枢支された突軸65が突軸枢支溝64の下部に降下して支え骨8の根元部の一部が支え骨介入溝80内に係入することになって、支え骨8の根元部がストッパとして機能することにより、突起66,66の凹面66aと突条79との係合と相俟って、下ろくろ本体56に対する支え骨枢支部材54の係合を脱する方向への意図しない相対的回動が阻止される。
【0046】
一方、傘1の分解時には、生地(シート)Sを外された傘骨がお猪口状態にされるので(図23参照)に示されているように、支え骨8が上方に引かれ、図11Bに示すように、突軸枢支溝64内の突軸65が突軸枢支溝64内を上方へ移動して、支え骨8の根元部が支え骨介入溝80から上方へ脱出する。したがって、支え骨枢支部材54に対する下ろくろ本体56の係合を脱する方向への相対的回動が可能になる。
【0047】
図12は、中棒2の要部を示す正面図であり、従来の傘と同様に、中棒2の外周面から突出する方向にばね付勢された態様で中棒2に出没自在に設けられ上下一対の金属製留め金(はじき)12,13を備えていることに加えて、下ろくろ6の摺動動作の上限を規定するとともに傘分解時の下ろくろ6の通過を許容する上方の押しボタン式ストッパーピンピン15と、手元90を取外し可能に中棒2に固定するための押しボタン式ストッパーピン17とが、同じく中棒2の外周面から突出する方向にばね付勢された態様で中棒2に出没自在に設けられている。さらに、中棒2の下端には、傘1の手元9を持ったときの中棒2のガタつきを防止するための手元押しばね19が内装されている。なお、理解を容易にするために、図12においては、一対の留め金12,13および一対のストッパーピン15,17がすべて同一平面上に存在するように描いてある。
【0048】
図13は、中棒2に押しボタン式ストッパーピン15を取り付けた状態を示す断面図で、図14(A)は押しボタン式ストッパーピン15の平面図、図14(B)は側面図、図14(C)は図14(B)の14C−14C線に沿った断面図、図14(D)は図14(B)の14D−14Dに沿った断面図である。
【0049】
この押しボタン式ストッパーピン15は、中棒2内に軸線方向に挿入されて所定位置において中棒2にカシメ付けられる円筒状の筺体15aと、筺体15a内の円筒状空間内に挿入されるピン本体15bおよびコイルバネ15cとからなり、ピン本体15bはその背面にフランジ15dを一体に備え、このフランジ15dと中棒2の内壁面との間に縮装されたコイルバネ15cによって付勢されたピン本体15bが、中棒2に形成された小孔2aから弾性的に出没し得るように構成されている。
【0050】
なお、ばねの作用で自動的に開くように構成された、所謂ジャンプ傘においては、上ろくろと下ろくろとの間において中棒に摺動自在に嵌着された中ろくろを備えており、手開き式傘では下ろくろ6に枢支されている支え骨8の根元部が上記中ろくろに枢支され、下ろくろには、支え骨の中間部に先端を枢着された細く短い受け骨の根元部が枢支されるようになっている。そして傘が開くときに中ろくろがピン本体15bに当接する衝撃が手開き傘よりも大きいため、図15に示すように、中棒2の両側に突出する一対のピン本体15b,15bを備えたストッパーピン15′を用いて、衝撃を分散させることが好ましい。図16(A)は一対のピン本体15bを備えたストッパーピン15′の、図14(C)に対応する断面図、図16(B)は図14(D)に対応する断面図である。
【0051】
図17(A)および(B)は、中棒が木製である場合に適応した押しボタン式ストッパーピン15″の側面図および断面図、図18はこのストッパーピン15″が中棒2′内に装着された状態を示す断面図である。この押しボタン式ストッパーピン15″は、中棒2′に対しその軸線と直交する方向に形成した円筒状の孔82に嵌着されるように構成された円筒状の筺体15a′内の空間に、上述と同様の構成を有するフランジ付きピン本体15bおよびコイルばね15cが内蔵されている。この場合、筺体15a′は前面が壁面で閉塞されかつ後面が開放されてコ字状の断面形状を有しており、その前壁と中棒2′との間にコイルばね15cが縮装されている。前壁には、ピン本体15bを弾性的に出没させる小孔15eが同心的に開けられている。
【0052】
図19は、中棒2の下端部とともに示す手元10の一部を断面とした正面図である。この手元10は、木またはプラスチックで形成され、その中軸挿入孔には、中棒2の外径よりも若干小径の内径を有して中棒2の挿入を許容する金属製のスリーブ90が同軸的に嵌着されている。
【0053】
中棒2の下端から所定の距離をおいて中棒2に装着された押しボタン式ストッパーピン17は、図13および図14を参照して説明した押しボタン式ストッパーピン15と同一構成を有するので、図19においては、図13における符号15a〜15dをそれぞれ17a〜17dに代えるのみに留めて、重複する説明は省略するが、スリーブ90には、中棒2の下端部がスリーブ90内の所定位置まで挿入された場合に、中棒2のピン本体17bを突出させている小孔に合致して、ピン本体17bが係入する係止孔92が形成されており、これによって、中棒2の下端部が手元10に固定される。
【0054】
また、上記スリーブ90に形成された係止孔92の位置に対応する手元10の部位には、係止孔92とほぼ同心的にアクセス用の細孔93が形成されており、中棒2から手元10を外すときには、ピン94aを備えた治具94を用い、そのピン94aの先端でピン本体17bをコイルばね17cの付勢力に抗して押圧して、ピン本体17bを係止孔92から退去させることにより、中棒2の下端部を手元10から引き抜くことができる。
【0055】
図20は、傘1の手元10を持ったときの中棒2のガタつきを防止するために、中棒2の下端に装着された手元押しばね19の拡大図を示し、このばね19は金属パイプ94内に固定されており、この金属パイプ94を中棒2内部の所定位置にカシメ付けることにより、手元押しばね19が中棒2に固定されるように構成されている。
【0056】
また、図12を参照すると、中棒2の下端に切欠き95が形成されているが、この切欠き95は、手元10の中棒挿通孔の底に形成された突起(図示は省略)と係合して、中棒2の軸線周りの回動を阻止する機能を有する。
【0057】
次に親骨4に対する生地(シート)の取付け構造について図21および図22を参照して説明する。図21は生地Sの部分的裏面図、図22(A)は図21のA部の拡大図、図22(B)は生地Sのループ状片96に親骨を挿通した状態を示す図21のA部の拡大図である。
【0058】
本実施の形態においては、8本の親骨4が上ろくろ3を中心にして取り付けられる生地Sの裏面の親骨4との接触部に、各親骨4が遊びなく挿通される得るループ状片96が予め生地Sに縫い込まれている。
【0059】
生地Sに対するループ状片96の取付け位置は、親骨4の両端のほぼ中間に対応する位置で、かつ親骨4に対する支え骨8の枢支点P(図1参照)よりも先端側に設定される。そして、親骨4に対する生地(シート)Sの取付けに際しては、親骨4の組付けに先立って8本の親骨4を所謂「お猪口」状態にすることにより、各親骨4の露先側からそれぞれループ状片96を親骨4に挿入することができ、これによって生地Sと8本の親骨4とを容易に結合することができる。
【0060】
次に、上述のような構成を有する傘1の、修理または廃棄に際しての好ましい分解手順について説明する。
【0061】
(1)先ず、傘1を開いた状態で、押しボタン式ストッパーピン15のピン本体15bを押して下ろくろ6の上方への通過を可能にし、図23に示すように、下ろくろ6を上ろくろ3の近傍まで上方へ摺動させて、親骨4を支え骨8とともに「お猪口」状態にする。これによって、図11Bに示すように支え骨8の根元部が下ろくろ本体56の支え骨介入溝80から上方へ脱出し、支え骨枢支部材54に対する下ろくろ本体56の相対回動が可能になる。
【0062】
(2)支え骨枢支部材54を片方の手の指で抑え、他方の手の指で下ろくろ本体56を摘んで、下方から見て反時計方向へ回動させ、次いで下方へ引いて、下ろくろ本体56を支え骨枢支部材54から外し、すべての支え骨8の根元部を支え骨枢支部材54から外す。
【0063】
(2)陣笠5を緩む方向に回して上ろくろ本体18の円筒状部分31から外して中棒2から抜き取り、次いで親骨外れ防止ナット22を円筒状部分31から外して、すべての親骨4の根元部を親骨枢支ディスク20から外して、親骨4を生地Sおよび支え骨8とともに中棒2から取り去る。この際、すべての露先9を親骨4の先端から外すとともに、生地Sのループ状片96を各親骨4の先端側に抜くことにより、生地Sを親骨4から外す。
【0064】
(3)親骨枢支ディスク20、上ろくろ本体18、支え骨枢支部材54および下ろくろ本体56を中棒2から上方へ抜き去る。
【0065】
(4)図20に示すような治具94を用いて、そのピン94aの先端でピン本体17bをコイルばね17cの付勢力に抗して押圧して、ピン本体17bを係止孔92から退去させ、中棒2の下端部を手元10から引き抜く。
【0066】
このようにして、傘1を完全に分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明によるリサイクル傘の実施形態の閉状態における全体構成を、一部を省略して示す概略図
【図2】傘の上端部の分解正面図
【図3A】上ろくろ本体の平面図
【図3B】上ろくろ本体の正面図
【図3C】上ろくろ本体の底面図
【図3D】図3Aの3D−3D線に沿う断面図
【図4A】親骨枢支ディスクの平面図
【図4B】親骨枢支ディスクの正面図
【図4C】親骨枢支ディスクの底面図
【図4D】図4Aの4D−4D線に沿った断面図
【図5A】親骨の根元部の底面図
【図5B】親骨の根元部が親骨枢支ディスクに枢支された状態を示す平面図
【図6A】親骨外れ防止ナットの断面図
【図6B】親骨外れ防止ナットの底面図
【図7A】陣笠の断面図
【図7B】陣笠の底面図
【図8A】支え骨枢支部材の平面図
【図8B】図8Aの支え骨枢支部材の正面図
【図8C】図8Aの支え骨枢支部材の側面図
【図8D】図8Aの支え骨枢支部材の底面図
【図8E】図8Aの8E−8E線に沿った断面図
【図9A】下ろくろ本体の平面図
【図9B】図9Aの下ろくろ本体の正面図
【図9C】図9Bの9C−9C線に沿った断面図
【図9D】図9Aの9D−9D線に沿った断面図
【図10】下ろくろ正面図
【図11A】通常の状態における下ろくろと支え骨との位置関係を示す断面図
【図11B】傘を分解するときの下ろくろと支え骨との位置関係を示す断面図
【図12】中棒の要部の正面図
【図13】中棒に装着された押しボタン式ストッパーピンピンの断面図
【図14】(A)は図13のストッパーピンの平面図、(B)は側面図、(C)は(B)の14C−14C線に沿った断面図、(D)は(B)の14D−14D線に沿った断面図
【図15】ストッパーピンの変形を示す断面図
【図16】(A)は図15のストッパーピンの図14(C)に対応する断面図、(B)は図14(D)に対応する断面図
【図17】(A)はストッパーピンのさらなる変形を示す断面図、(B)はその側面図
【図18】図17に示すストッパーピンが木製の中棒内に装着された状態を示す断面図
【図19】中棒の下端部が手元に挿入された状態を示す部分的断面図
【図20】中棒の下端に装着されるコイルばねの正面図
【図21】生地の部分的裏面図
【図22】(A)は図21のA部の拡大図、(B)は生地のループ状片に親骨を挿通した状態を示す図21のA部の拡大図
【図23】傘を分解するときの傘骨の状態を示す概略図
【符号の説明】
【0068】
1 傘
2 中棒
3 上ろくろ
4 親骨
6 下ろくろ
8 支え骨
10 手元
15,17 押ボタン式ストッパーピン
18 上ろくろ本体
20 親骨枢支ディスク
22 親骨外れ防止ナット
24 係合突起
28,38 親骨収容溝
30,70 フランジ
42,64 突軸枢支溝
54 支え骨枢支部材
56 下ろくろ本体
66 係合突起
74,75,78 係合溝
80 支え骨介入溝
90 スリ−ブ
96 ループ状片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支え骨の根元部を枢支して中棒に摺動自在に嵌装されたスライドろくろの開傘時における中棒上の摺動上限を規定するストッパーピンが、前記スライドろくろの前記摺動上限を越えた上方への摺動を可能にすべく前記中棒の外周面に対して出没可能に該中棒に設けられてなることを特徴とするリサイクル傘。
【請求項2】
前記スライドろくろが、手開き式傘の下ろくろであることを特徴とする請求項1記載のリサイクル傘。
【請求項3】
前記下ろくろは、支え骨枢支部材と、該支え骨枢支部材に分離可能に結合される下ろくろ本体とからなり、該下ろくろが前記ストッパーピンよりも下方にあるときには、前記支え骨枢支部材と前記ろくろ本体とが分離不能になり、前記ストッパーピンを越えて上方へ摺動された場合に、前記支え骨枢支部材と前記ろくろ本体とが分離可能になって、前記支え骨の根元部を解放し得るように構成されてなることを特徴とする請求項2記載のリサイクル傘。
【請求項4】
前記スライドろくろが、開傘時に、下ろくろとの間に縮装されているばねの作用で摺動されて前記ストッパーピンに衝接する自動開き傘の中ろくろであることを特徴とする請求項1記載のリサイクル傘。
【請求項5】
手元の中棒挿入孔に嵌挿される前記中棒の下端部に第2のストッパーピンが前記中棒の外周面に対して出没可能に設けられ、前記手元の中棒挿入孔の内周面に、前記中棒の外周面から突出した前記第2のストッパーピンに係合して前記中棒を前記手元の中棒挿入孔内に係止する凹部が形成されてなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のリサイクル傘。
【請求項6】
前記手元の中棒挿入孔の内周面に形成された前記凹部に連通する、取外し用治具のピンの挿入可能な細孔が、前記手元の外周面に開口してなることを特徴とする請求項5記載のリサイクル傘。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−136362(P2009−136362A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313020(P2007−313020)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(598133687)三鈴精工株式会社 (12)
【出願人】(500052071)ユームカンパニー株式会社 (11)
【出願人】(506392078)ムーンバット株式会社 (5)
【Fターム(参考)】