説明

リサイクル用捺染品、リサイクル用捺染品の脱色方法および捺染品のリサイクル方法

【課題】リサイクル可能な捺染品、その脱色方法および捺染品のリサイクル方法を提供する。
【解決手段】アゾ系分散染料、ベンゾジフラノン系分散染料、フタルイミド系分散染料などの分散染料で捺染されたポリエステル系繊維布帛にて構成されるリサイクル用捺染品を、アルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液にて処理し、この脱色捺染品をケミカルリサイクルもしくはマテリアルリサイクルの原料として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル用捺染品、リサイクル用捺染品の脱色方法及び捺染品のリサイクル方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、強度、加工性、耐薬品性、耐光性、染色性などの面からPETボトルをはじめ、繊維、フィルム等として広く用いられている。 このような状況のもとで、近年においては、環境問題より、循環型社会をめざし、ポリエステルを用いた製品のリサイクルが、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、ケミカルリサイクルなどの観点から様々なものが検討されている。 例えば、ポリエステル系繊維製品では、リサイクルを行うためのシステムを検討したもの(特許文献1)や回収されたポリエステル系繊維製品を用いたケミカルリサイクル時の工程トラブルを防ぎ、安定して高純度の有効成分を回収する方法(特許文献2)などが知られている。
【0003】
しかしながら、上記のようなリサイクルにおいて、従来、先行されていたPETボトルのリサイクルを参考に検討されているものが多いが、ポリエステル系繊維製品はほとんどのものが顔料や分散染料によって着色されており、色を除去しなければならないといった問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−308077号公報
【特許文献2】特開2004−300115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、従来から、ポリエステル繊維製品では苛性ソーダ−とハイドロサルファイトを用いた還元脱色が行われており、この方法にて脱色したものを用いてケミカルリサイクル等を試みているが、ケミカルリサイクルの観点からは十分な脱色がされていなかった。 また、繊維製品を従来の方法で脱色し、消費者の好みの色に染め直すことの検討も行われたが、濃色への染め替えは可能であるが、淡色をはじめとする様々な色への染め直しができるほど十分な脱色ができないといった問題があった。 特に、ポリエステル系繊維布帛に、顔料を含むバインダー樹脂をスクリーン捺染(顔料プリント)にて付与し柄等を付与した捺染品は、脱色は困難であった。
【0006】
また、さらなる脱色の手段として、苛性ソーダとハイドロサルファイトを用いて還元脱色を行った後、蓚酸や酢酸またはギ酸と亜塩素酸ソーダを用いて酸化脱色を行うという、還元脱色と酸化脱色を組み合わせた脱色の検討も行われた。 しかしながら、酸化脱色を行う場合、一般的に染色加工に用いられているステンレス製の加工機では、加工機が腐食してしまう。そこで、チタンメッキ製の加工機が必要であるが価格が高価であり、酸化脱色を行わずに、脱色することが望まれている。
【0007】
さらに、分散染料や顔料またバインダー樹脂を溶かすことのできる有機溶剤を用いて脱色することも検討されてはいるけれども、これに用いられる有機溶剤は人体や環境に対する悪影響が懸念され、また脱色時間も非常に長く、1日1バッチ程度しか脱色処理を行うことができず、好ましい方法ではない。 したがって、本発明では、酸化脱色を行わなくとも、また有機溶剤を用いた脱色を行わなくとも、リサイクル可能なリサイクル用捺染品、その脱色方法およびその捺染品のリサイクル方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものであり、本発明は、例えば、下記の構成(1)〜(14)からなる。
【0009】
(1)分散染料で捺染されたポリエステル系繊維布帛にて構成されたことを特徴とするリサイクル用捺染品。
(2)前記分散染料がアゾ系分散染料、ベンゾジフラノン系分散染料およびフタルイミド系分散染料から選ばれる少なくとも1種を含む、前記(1)に記載のリサイクル用捺染品。
(3)前記アゾ系分散染料が、モノアゾ型、ジスアゾ型、チアゾール型、チオフェンアゾ型およびピロリドンアゾ型分散染料から選ばれる少なくとも1種を含む、前記(2)に記載のリサイクル用捺染品。
(4)前記ポリエステル系繊維布帛にリン酸エステル系難燃剤も含む、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のリサイクル用捺染品。
(5)前記ポリエステル系繊維布帛のアルカリ剤、還元剤、および非イオン界面活性剤を含む脱色用処理液による脱色処理後の分散染料で捺染されていた箇所の色と前記ポリエステル系繊維製品が捺染される前の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色とを比較した色差ΔEが13以下である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のリサイクル用捺染品。
【0010】
(6)リサイクル用捺染品を構成する分散染料で捺染されたポリエステル系繊維布帛を、アルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液にて処理するリサイクル用捺染品の脱色方法。
(7)前記還元剤が、ハイドロサルファイトおよび二酸化チオ尿素を含む、前記(6)に記載のリサイクル用捺染品の脱色方法。
(8)前記非イオン系界面活性剤が、脂肪酸エチレンオキサイド付加物である、前記(6)または(7)に記載のリサイクル用捺染品の脱色方法。
(9)前記脱色用処理液が、さらにキレート剤を含む、前記(6)〜(8)のいずれかに記載のリサイクル用捺染品の脱色方法。
(10)前記脱色用処理液に、さらにアニオン系界面活性剤を含む、前記(6)〜(9)のいずれかに記載のリサイクル用捺染品の脱色方法。
(11)前記アニオン系界面活性剤が、硫酸化油である、前記(10)に記載のリサイクル用捺染品の脱色方法。
【0011】
(12)前記(1)に記載したリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を前記(6)に記載した脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品を捺染および/または染色するステップ5を含む捺染品のリサイクル方法。
(13)前記(1)に記載したリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を前記(6)に記載の脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品をケミカルリサイクルの原料とし、ケミカルリサイクルを行うステップ5を有する捺染品のリサイクル方法。
(14)前記(1)に記載したリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を前記(6)に記載の脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品をマテリアルリサイクルの原料とし、マテリアルリサイクルを行うステップ5を有する捺染品のリサイクル方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリサイクル用捺染品を用いれば、バインダー樹脂を用い顔料等がポリエステル系繊維布帛に付与されていないため、脱色処理により、染料をポリエステル系繊維布帛から容易に脱色することが可能となり、リサイクル可能な捺染品を提供することができる。 また、本発明のリサイクル用捺染品は、捺染にて文字や絵を付与する際に、顔料をバインダー樹脂を用いポリエステル系繊維布帛に固定する必要がないため、風合いの柔かい捺染品を提供することができる。
【0013】
本発明の脱色方法にて脱色処理することにより、酸化処理に耐え得るチタンメッキ製の装置を用いなくとも、従来の染色加工で用いられている装置により短時間で脱色処理することができ、また人体や環境に対して有害な有機溶剤を用いる必要性もないので、安価で、安全にリサイクル可能な捺染品を提供することができる。
【0014】
さらに、本発明のリサイクル用捺染品と本発明の脱色方法を用いたリサイクル方法を用いれば、従来に比べ、低コストで、安全に、捺染品のリサイクルを行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の好ましい態様について説明するが、本発明は、これらの態様のみに限定されるものではなく、その精神と実施の範囲内において様々な変更がなされ得ることを理解されたい。
【0016】
本発明において、ポリエステル系繊維布帛とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートやポリ乳酸などのポリエステルを用いて得られる繊維布帛を挙げることができる。再生ポリエステルを含むものであってもよい。 また、上記のポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルの他に綿、麻、羊毛などの天然繊維やナイロン、アクリルなどの合成繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維を含んでいてもよいが、リサイクル時の分別やケミカルリサイクル時に得られる成分の純度の観点からは、ポリエステルのみからなるものが好ましい。
【0017】
また、ポリエステル系繊維布帛は、織物、編物、不織布などを用いることができる。また、ポリエステル系繊維布帛は、ブラウス、シャツ、パンツ、シーツ、布団カバー、布団、スキーウエアー、ジャンパー、カーテン等に縫製されていてもよい。 さらに、これらのポリエステル系繊維布帛には、撥水加工、制電加工、吸水加工、抗菌防臭加工、難燃加工、柔軟加工等の一般的なポリエステル系繊維布帛に行われている各種付帯加工が施されていてもよい。 また、本発明の目的を阻害しない範囲で、ポリエステル系繊維布帛に地染めが施されていてもよい。
【0018】
難燃加工を行う場合に用いる難燃剤としては、リン酸エステル系難燃剤が好ましく用いられる。リン酸エステル系難燃剤を用いると、ハロゲン系難燃剤のようにバインダー樹脂を用いなくとも、パデイング法等でポリエステル系繊維布帛表面に難燃剤を付与させた後、110〜200℃の熱処理をおこなう、また、浴中吸尽法等で120〜140℃の浴中でポリエステル系繊維布帛に難燃剤を吸尽させるなどして、ポリエステル系繊維布帛にリン酸エステル系難燃剤を含む、難燃性を有するリサイクル用の捺染品を得ることができる。 また、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)は、上記パディング法や吸尽法にてポリエステル系繊維布帛に、難燃剤を付与できるが、リサイクル時の環境への配慮の観点より好ましくはない。
【0019】
バインダー樹脂を用いて、ハロゲン系難燃剤をポリエステル系繊維布帛に付与した場合、脱色処理では、難燃剤の除去が困難な場合があったり、脱色処理によりに環境に対し懸念のあるデカブロムジフェニルエーテル、HBCD等のハロゲン系の難燃剤や三酸化アンチモンなどを含む廃液が排出されてしまうおそれがある。また、ハロゲン系難燃剤がリサイクル用捺染品に残留した場合は、ケミカルリサイクル時にこれらのものを除去することは困難であり、ケミカルリサイクルの妨げになる。リン酸エステル系難燃剤を用いれば、脱色時に難燃剤の除去が容易であるともに、難燃剤が残留した場合においても、容易にケミカルリサイクル時に除去できるなど、ケミカルリサイクルが問題なく実施可能となる。 上記の難燃加工は、捺染前でも捺染後でもおこなうことが可能であるが、好ましくは捺染前におこなうと堅牢度および工程の簡略化の観点より好ましい。
【0020】
本発明のリサイクル用捺染品は、分散染料で捺染されたポリエステル系繊維布帛にて構成されているのであるが、分散染料としては、アゾ系分散染料、ベンゾジフラノン系分散染料およびフタルイミド系分散染料から選ばれる少なくとも1種を含むとよい。 顔料等を含むバインダー樹脂で捺染したものは、顔料、バインダーの残留などリサイクルの観点からは好ましくなく、本発明では、バインダー樹脂を用いず、分散染料で捺染されたポリエステル系繊維布帛にてリサイクル用捺染品を構成する。
【0021】
本発明に用いられるアゾ系分散染料は、モノアゾ型、ジスアゾ型、チアゾールアゾ型、チオフェンアゾ型およびピロリドンアゾ型分散染料から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。また、アルキルエステル基を有するものも好ましく用いられる。 より具体的には、C.I.Disperse Yellow 3、C.I.Disperse Yellow 126、C.I.Disperse Yellow 163、C.I.Disperse Yellow 226、C.I.Disperse Orange 30、C.I.Disperse Red 54、C.I.Disperse Red 65、C.I.Disperse Red 73、C.I.Disperse Red 179、C.I.Disperse Red 278、C.I.Disperse Red 356、C.I.Disperse Violet 12、C.I.Disperse Blue 79、C.I.Disperse Blue 125、C.I.Disperse Blue 148、C.I.Disperse Blue 165、C.I.Disperse Blue 183、C.I.Disperse Green 9、C.I.Disperse Yellow 60、C.I.Disperse Red 58、C.I.Disperse Yellow 7、C.I.Disperse Yellow 23、C.I.Disperse Orange 29、C.I.Disperse Orange 13、C.I.Disperse Red 141などが挙げられる。
【0022】
また、ベンゾジフラノン系分散染料としては、C.I.Disperse Red 356などが挙げられる。 また、フタルイミド系分散染料としては、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製のTerasil WW Red WW−DS、Terasil WW Red WW−FS、Terasil WW Red−3BS、Terasil WW Red WW−BFS 200%、Terasil WW Violet WW−2RS、Terasil WW Blue WW−2GS、Terasil WW Navy WW−GSN、Terasil WW Black WW−KSNなどが挙げられる。 さらに、アゾ系分散染料、ベンゾジフラノン系分散染料、フタルイミド系分散染料以外に、キノン系分散染料等であっても、下記の脱色処理において色の残り具合が問題にならない程度の染料であれば、併用してもよい。
【0023】
上記分散染料で捺染されたポリエステル系繊維布帛は、フラットスクリーン捺染機やロータリースクリーン捺染機等を用いて、上記分散染料を含む捺染糊(以下、色糊ともいう)を任意の柄や文字に印捺し、得ることができる。また、色糊は、ポリエステル系繊維布帛全面に印捺しても、また、部分的に印捺してもよい。 捺染糊に用いる糊剤としては、澱粉系、海藻系、繊維素系およびこれらの誘導体等を用いることができ、発色後のソーピングにて、ポリエステル系繊維布帛から、これらの糊剤が除去できるものをもちいればよい。
【0024】
またこれらの捺染糊は、エマルジョン糊またはソリューション糊いずれの状態にて用いられてもよい。ただし、糊剤の除去性、風合の観点からは、エマルジョン糊またはエマルジョン糊とソリューション糊を配合したハーフエマルジョン糊をもちいるとよい。 色糊を印捺した後、ポリエステル系繊維布帛を乾熱または湿熱により、150℃〜200℃の温度で、1分から60分間発色処理をおこなう。次に、公知の方法にてソーピングを行い、糊剤や未染着の分散染料を除去する。
【0025】
色糊中の染料濃度は、淡色から濃色のいずれでもよく、色糊に対して、市販されている染料濃度で0.001〜15質量%であってよい。 さらに、捺染柄の色相は、赤、青、黄、グリーン、黒等任意の色であってよい。 また、分散染料の捺染は、転写捺染機やインクジェット捺染機等を用いることも可能であるが、これらでの捺染時にバインダーやインク受容層が形成されている場合には、印捺後のソーピングにより、ポリエステル系繊維布帛からバインダーやインク受容層が除去できるものをもちいる必要がある。本発明のリサイクル用捺染品は、前記の分散染料で捺染されたポリエステル系繊維布帛にて構成される。リサイクル用捺染品の形態は、織物、編物などの布帛状であっても、ブラウス、シャツ、パンツ、シーツ、布団カバー、布団、スキーウエアー、ジャンパー、カーテン等、ポリエステル系繊維布帛を縫製したものであってもよい。
【0026】
また、前記ポリエステル系繊維布帛の下記の如き脱色処理後の分散染料で捺染されていた箇所の色と前記ポリエステル系繊維布帛が捺染される前の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色とを比較した色差ΔEは、13以下であるのが好ましく、10以下であるのがより好ましく、さらに好ましくは6以下がよい。 色差ΔEが13以下であれば、ケミカルリサイクルをおこなうことが可能である。また、マテリアルリサイクルを行う場合も、用途の幅を広げることができる。色差ΔEは数値が小さいほど捺染前の白色の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色に近い。 ここで、色差ΔEは、CIE1976LAB ΔE=√(ΔL+Δa+Δb)、光源D65、10°視野にて求めたものであり、分光光度計としては倉敷紡績株式会社製COLOR−7X 拡散/8°、6インチ積分球、色彩管理システム AUCOLOR−NF2を用いた。 なお、捺染前のポリエステル系繊維布帛に地染(蛍光増白処理も含む)が施されてる場合には、地染が施される前の白生地と脱色処理後の分散染料で捺染されていた箇所の色の色差ΔEを求める。
【0027】
本発明のリサイクル用捺染品の脱色方法は、アルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液にて処理することを特徴とする。
【0028】
ここで、アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。 これらのアルカリ剤は、0.5〜100g/lの濃度、特に1〜10g/lの濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この水溶液の濃度が0.5g/l未満であると脱色効果が十分でないことがあり、100g/lを超えるとポリエステル系繊維を溶かしてしまう可能性がある。
【0029】
有用な還元剤としては、ハイドロサルファイト、二酸化チオ尿素、亜鉛スルホキシレート・ホルムアルデヒド、ナトリウムスルホキシレート・ホルムアルデヒドなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、ハイドロサルファイトと二酸化チオ尿素とを併用するのが
好ましい。 これらの還元剤は、1〜100g/lの濃度、特に1〜30g/lの濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この濃度が1g/l未満であると脱色が十分でないことがあり、100g/lを超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利である。
【0030】
有用な非イオン界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミドなどが挙げられる。これらのうちでは脂肪酸エチレンオキサイド付加物が好ましく、不飽和脂肪酸エチレンオキサイド付加物がより好ましい。より具体的には、ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル、ポリエチレングリコールオレイン酸ジエステルが挙げられる。
【0031】
これらの非イオン系界面活性剤は、0.1〜100g/lの濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この濃度が0.1g/l未満であると脱色が十分でないことがあり、100g/lを超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利であり、脱色処理中に多量の泡が発生したりする可能性がある。
【0032】
さらに、本発明で用いる脱色用処理液はキレート剤を含んでいてもよい。有用なキレート剤としては、縮合リン酸塩としてピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダなど、アミノカルボン酸型としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)など、オキシカルボン酸型としてグルコン酸など、ホスホン酸型としてヒドロキシエチリデンジホスホン酸など、ポリカルボン酸型としてポリアクリル酸ソーダ、ポリマレイン酸ソーダなどが挙げられる。これらのうちではエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が好ましく、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上の組み合わせで用いてもよい。 これらのキレート剤は、0.01〜1g/lの濃度の水溶液として用いるのが好ましい。この濃度が0.01g/l未満であると脱色が十分でないことがあり、1g/lを超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利である。
【0033】
また、脱色用処理液はアニオン系界面活性剤を含んでいてもよい。アニオン系界面活性剤としては、セッケン、高級アルコール硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩などが挙げられる。より好ましくは硫酸化油であり、さらに好ましくは硫酸化ひまし油である。 これらのアニオン系界面活性剤は0.01〜50g/lの濃度の水溶液として用いられるのが好ましい。この濃度が0.01g/l未満であると脱色が十分でないことがあり、50g/lを超えても脱色効果にさほど差がなく、コスト的に不利である。
【0034】
また、脱色用処理液は染色時にもちいられることがあるキャリアーを含むとさらに脱色効果の向上がされる。具体的には、比較的低分子量の安息香酸アルキル、サリチル酸アルキル、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、安息香酸ベンジル、ジベンジルエーテル、N−ブチルフタルイミド、クロロベンゼン、ジフェニル誘導体などが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を併用されてもよい。脱色性や臭いの観点からは、安息香酸ベンジル、N−ブチルフタルイミドが好ましく、これらを併用するのがより好ましい。 これらの芳香族化合物は脱色性の観点からは、0.1〜100g/lの濃度の水溶液として用いことができる。
【0035】
しかしながら、本発明の脱色方法では、安全性の観点より上記のキャリヤーを用いないことが好ましい。上記の本発明の好ましい染料と好ましい脱色方法を用いれば、キャリヤーを用いなくとも捺染されたポリエステル系繊維布帛を、ケミカルリサイクルに用いる原料としては充分使用できるレベルにまでに脱色し、リサイクル用捺染品を提供することができる。
【0036】
また、脱色処理は、110〜145℃、特に120〜140℃で、10〜180分間行われるのが好ましい。この温度が110℃を下まわると十分脱色ができないことがあり、また145℃を超えるとポリエステル系繊維布帛が脆化してしまうことがある。 また、脱色処理されるリサイクル用捺染品と脱色処理液の浴比は、リサイクル用捺染品の捺染された濃度と捺染面積によっても変わるが、1:5〜1:500程度がよい。浴比が1:5を下まわると十分な脱色が得られないことがあり、1:500を超えても脱色効果にさほど差がみられないため、コスト的に不利である。
【0037】
また、脱色処理に用いる装置としては、通常ポリエステル系繊維製品の染色や精練処理に用いられる高圧液流染色装置やドラム型の高圧ロータリーワッシャ−などリサイクル用捺染品の形態に応じ適宜選択して用いることができ、上記の処理条件で処理できるものであれば特に限定されるものではない。 また、脱色処理は、必要に応じて、上記の処理を2回以上繰り返して行ってもよい。 脱色処理後は、乾燥前に水洗を行うのが好ましい。
【0038】
次に、本発明のリサイクル方法について説明を行う。
【0039】
染め直しによる再利用 本発明のリサイクル方法は、本発明のリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品を捺染および/または染色するステップ5を含む捺染品のリサイクル方法である。
【0040】
ステップ1においては、前記分散染料で任意の柄等をポリエステル系繊維布帛に捺染し、また、ポリエステル系繊維布帛を用途等に応じ捺染の前または捺染の後にブラウスやジャケット、スキーウエアー、ユニホーム、カーテン、布団カバー、布団、シーツ、カーテン等の繊維製品に縫製などを行い、本発明のリサイクル用捺染品を製造する。このステップ1において、本発明のリサイクル用ポリエステル系繊維製品であることが容易に分かるように管理するため、リサイクル用ポリエステル系繊維製品にバーコード等を付したタグなどの識別表示を付与し、データベースに入力しておくとよい。
【0041】
ステップ2では、リサイクル用捺染品をユーザーが使用する。一般の繊維製品と同様の流通においてユーザーが使用することが可能であるが、次のステップ3での回収の容易性からは、繊維製品は、企業、病院、ホテルなどで使用されるユニホーム、カーテン、布団、シーツなどであるのが好ましい。 ステップ3では、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収する。回収時に、ステップ1にて識別表示を付与していれば、本発明のリサイクル用捺染品と他の繊維製品が混入していた場合においても、容易に識別できる。また、ステップ3では、リサイクル用捺染品が企業、病院、ホテルなどで使用されるユニホーム、カーテン、布団、シーツなどであれば、他の繊維製品の混入も防ぎやすく、また多少他の製品が混入していたとしても容易に識別が可能である。
【0042】
ステップ4では、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色する。この脱色処理により、ポリエステル系繊維布帛の脱色処理後の分散染料で捺染されていた箇所の色とポリエステル系繊維布帛が捺染される前の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色とを比較した色差ΔEが13以下であると、次のステップ5の捺染および/または染色にて着色できる色の範囲が広がるので好ましい。 ステップ5では、脱色されたリサイクル用捺染品を捺染および/または染色する。 以上のような方法にてリサイクルを行えば、従来、古着として使用した場合には流行色と異なったり、色あせたりしていたことにより、使用を避けていたユーザーであっても、任意の流行色や色あせのない綺麗な色に染め直して使用できるようになり、リサイクルがより推進される。
【0043】
ケミカルリサイクル 本発明のリサイクル方法は、本発明のリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品をケミカルリサイクルの原料とし、ケミカルリサイクルを行うステップ5を含むリサイクル方法である。
【0044】
ステップ1においては、前記分散染料で任意の柄等をポリエステル系繊維布帛に捺染し、また、ポリエステル系繊維布帛を用途等に応じ捺染の前または捺染の後にブラウスやジャケット、スキーウエアー、ユニホーム、カーテン、布団カバー、シーツ等の繊維製品に縫製などを行い、本発明のリサイクル用捺染品を製造する。このステップ1において、本発明のリサイクル用ポリエステル系繊維製品であることが容易に分かるように管理するため、リサイクル用ポリエステル系繊維製品にバーコード等を付したタグなどの識別表示を付与し、データベースに入力しておくとよい。
【0045】
ステップ2では、リサイクル用捺染品をユーザーが使用する。一般の繊維製品と同様の流通においてユーザーが使用することが可能であるが、次のステップ3での回収の容易性からは、繊維製品は、企業、病院、ホテルなどで使用されるユニホーム、カーテン、布団、シーツなどであるのが好ましい。 ステップ3では、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収する。回収時に、ステップ1にて識別表示を付与していれば、本発明のリサイクル用捺染品と他の繊維製品が混入していた場合においても、容易に識別できる。また、ステップ3では、リサイクル用捺染品が企業、病院、ホテルなどで使用されるユニホーム、カーテン、布団、シーツなどであれば、他の繊維製品の混入も防ぎやすく、また多少他の製品が混入していたとしても容易に識別が可能である。
【0046】
ステップ4では、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色する。この脱色処理により、ポリエステル系繊維布帛の脱色処理後の分散染料で捺染されていた箇所の色とポリエステル系繊維布帛が捺染される前の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色とを比較した色差ΔEが13以下であると、次のステップ5において得られる構成モノマーに不純物が少ないものが容易に得られ、好ましい。 ステップ5では、ケミカルリサイクルのステップにて、ポリエステル系繊維布帛の構成モノマーに分離生成され、再利用することができ、リサイクルがより推進される。
【0047】
マテリアルリサイクル また、本発明のリサイクル方法は、本発明のリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品をマテリアルリサイクルの原料とし、マテリアルリサイクルを行うステップ5を含むリサイクル方法である。
【0048】
ステップ1においては、前記分散染料で任意の柄等をポリエステル系繊維布帛に捺染し、また、ポリエステル系繊維布帛を用途等に応じ捺染の前または捺染の後にブラウスやジャケット、スキーウエアー、ユニホーム、カーテン、布団カバー、シーツ等の繊維製品に縫製などを行い、本発明のリサイクル用捺染品を製造する。このステップ1において、本発明のリサイクル用ポリエステル系繊維製品であることが
容易に分かるように管理するため、リサイクル用ポリエステル系繊維製品にバーコード等を付したタグなどの識別表示を付与し、データベースに入力しておくとよい。
【0049】
ステップ2では、リサイクル用捺染品をユーザーが使用する。一般の繊維製品と同様の流通においてユーザーが使用することが可能であるが、次のステップ3での回収の容易性からは、繊維製品は、企業、病院、ホテルなどで使用されるユニホーム、カーテン、布団、シーツなどであるのが好ましい。 ステップ3では、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収する。回収時に、ステップ1にて識別表示を付与していれば、本発明のリサイクル用捺染品と他の繊維製品が混入していた場合においても、容易に識別できる。また、ステップ3では、リサイクル用捺染品が企業、病院、ホテルなどで使用されるユニホーム、カーテン、布団、シーツなどであれば、他の繊維製品の混入も防ぎやすく、また多少他の製品が混入していたとしても容易に識別が可能である。
【0050】
ステップ4では、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色する。この脱色処理により、ポリエステル系繊維布帛の脱色処理後の分散染料で捺染されていた箇所の色とポリエステル系繊維布帛が捺染される前の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色とを比較した色差ΔEが13以下であると、次のステップ5において、任意の色への着色が容易となり、好ましい。 ステップ5では、マテリアルリサイクルのステップにて、ポリエステルをモノマーに分解せずに、成形して、繊維、綿、トレーなどの種々の製品とするマテリアルリサイクルを行うことができる。この本発明により得られる製品は、染料による汚染が少ないため、従来着色されていることによって制限されていた用途においても使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。 なお、本実施例における堅牢度、難燃性能は以下の方法により測定をおこなった。1)耐光堅牢度 JIS L0842:1996 第3露光法2)水堅牢度 JIS L0846:1996 なお、添付布は綿とナイロンを用いた。3)昇華堅牢度 JIS L0850:1994 電気アイロン法(B法)乾燥試験に準じて試験をおこなった。添付布は、白綿布に変えてナイロン(JIS L0803:1998 単一繊維布(1))を用いた。また、温度は180℃にておこなった。4)難燃性能 JIS L1091 A−1法(ミクロバーナー法)とJIS L1091 D法(コイル法)にて評価をおこなった。ミクロバーナー法においては、1分間加熱、着炎後3秒加熱ともに残炎が3秒以内、残塵が5秒以内、炭化面積が30cm2以内のとき合格とし、これらの条件に満たないときを不合格とした。コイル法においては、接炎回数が3回以上のものを合格とした。
【0052】
以下の実施例に記載の元糊とは以下のものをもちいた。

元糊
セルパールSL100(グアガム系糊剤、安達糊料(株)製) 10質量%
レデューサ 50質量%
水 40質量%

レデューサ

ターペン 70質量%
乳化剤 20質量%
水 10質量%
【0053】
(実施例1) ポリエステルタフタ(ポリエチレンテレフタレート、タテ糸83デシテックス/72フィラメント、ヨコ糸83デシテックス/72フィラメント、密度 タテ114本/2.54cm、ヨコ92本/2.54cm)をポリエステル系繊維布帛として用いた。 次に、芳香族リン酸エステル系難燃剤を含む水分散液をパディング法でポリエステル系繊維布帛表面に付与し、120℃にて乾燥後、180℃にて30秒間熱処理を行った。 ポリエステル系繊維布帛に対しフラットスクリーン捺染機を用い、下記4色の色糊を用いストライプ模様に印捺した。
【0054】
色糊1
元糊 60質量%
分散染料Dianix YELLOW 7GL200% 1質量%
(ピロリドンアゾ型、C.I.Disperse Yellow 126、ダイスタージャパン(株)製)
水 39質量%
【0055】
色糊2
元糊 60質量%
分散染料Palanil Dark Blue 3RT 2質量%
(ニトロベンゾチアゾールアゾ型、C.I.Disperse Blue 148,ダイスタージャパン(株)製)
水 38質量%
【0056】
色糊3
元糊 60質量%
分散染料Kayalon Polyester Rubine BLS200
3質量%
(ニトロベンゼンチアゾールアゾ型、C.I.Disperse Red 179、日本化薬(株)製)
水 37質量%
【0057】
色糊4
元糊 60質量%
分散染料Dianix Green CC 2質量%
(チオフェンアゾ型、C.I.Disperse Green 9、ダイスタージャパン(株)製)
水 38質量%
【0058】
色糊を印捺した後、190℃にて3分間熱処理をおこない発色させた。次に、連続ソーピング機を用い80℃で10分間ソーピングし、乾燥を行った。
【0059】
次に、帯電防止剤ナイスポールFL(日華化学製)の0.5%水溶液を用いてパディング処理し、帯電防止加工を行い、その後、150℃、30秒間仕上セットをおこない、分散染料で捺染されたポリエステル系繊維布帛を得た。 次に、得られたポリエステル系繊維布帛を作業服に縫製し、リサイクル用捺染品を得た。得られたリサイクル用捺染品は、いずれの色も耐光堅牢度4級以上、水堅牢度 変退色4−5級 汚染4−5級(綿、ナイロンとも)、昇華堅牢度 4−5級、難燃性能(着色のある部分、ない部分ともに) ミクロバーナー法 合格 コイル法 合格 であり、顔料を含むバインダー樹脂を用い捺染した捺染品の性能と同等であり、かつ、風合の柔かいものが得られた。
【0060】
次に、得られたリサイクル用捺染品を使用した後、回収した。 ボタンをリサイクル用捺染品から取外し、リサイクル用捺染品を高圧ロータリーワッシャーにて下記脱色処理液を用い、常温より2℃/分にて昇温しながら140℃まで昇温を行い、140℃にて40分間の脱色処理を1回行った(浴比1:50)。
【0061】
脱色処理液
苛性ソーダ 3g/l
ハイドロサルファイト 5g/l
二酸化チオ尿素 2g/l
ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル 10g/l
硫酸化ひまし油 1g/l
キレート剤(DTPA) 0.1g/l
水 残量
【0062】
水洗、乾燥後、脱色されたリサイクル用捺染品は、捺染されていた個所はわずかに色を有している程度にまで脱色された。 次に、ポリエステル系繊維布帛の脱色処理後の分散染料で捺染されていた箇所の色とポリエステル系繊維布帛が捺染される前の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色(白生地)とを測定し、色差ΔEを求めたところ、色糊1の箇所4.58、色糊2の箇所 5.12、色糊3の箇所5.58、色糊4の箇所4.72であった。
【0063】
次に、脱色されたリサイクル用捺染品を粉砕し、ケミカルリサイクル処理を行った。その結果、従来の溶剤脱色処理されたものとほぼ同等の着色問題のないテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールが回収された。 上記のように本発明のリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品をケミカルリサイクルの原料とし、ケミカルリサイクルを行うステップ5を有するリサイクル方法により、一度捺染品として使用したポリエステルを容易にケミカルリサイクルすることができる。
【0064】
また、別途、脱色されたリサイクル用捺染品を、分散染料Palanil Dark Blue 3RT 1%omf、130℃にて30分間、高圧ドラム型染色機を用い染色をおこなった。得られた作業服は、均一に染色されており、脱色前に捺染されていた柄は、確認できない程度であった。 上記のように本発明のリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品を捺染および/または染色するステップ5を含む捺染品のリサイクル方法により、一度捺染品として使用したポリエステルを容易に染め直してリサイクルすることができる。
【0065】
(実施例2) 色糊(3色の色糊、ストライプ模様)及び脱色処理液として下記のものを用い、また、脱色処理の温度を135℃とした以外は、リサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色するステップ4、脱色されたリサイクル用捺染品をケミカルリサイクルの原料とし、ケミカルリサイクルを行うステップ5も含め実施例1と同様にした。(染め直しは実施していない。)
【0066】
色糊1
元糊 60質量%
分散染料Dispersol Red CBN 3質量%
(ベンゾジフラノン系、C.I.Disperse Red 356、ダイスタージャパン(株)製)
水 37質量%
【0067】
色糊2
元糊 60質量%
分散染料Dispersol Black FD95 5質量%
(アゾ系分散染料配合品、(株)ニッカファインテクノ製)
水 35質量%
【0068】
色糊3
元糊 60質量%
分散染料Terasil WW Blue WW−2GS 3質量%
(フタルイミド系、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製)
水 37質量%
【0069】
脱色処理液
苛性ソーダ 3g/l
ハイドロサルファイト 5g/l
二酸化チオ尿素 2g/l
ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル 10g/l
キレート剤(DTPA) 0.1g/l
キレート剤(NTA) 0.1g/l
水 残量
【0070】
得られたリサイクル用捺染品は、いずれの色も耐光堅牢度4級以上、水堅牢度 変退色4−5級 汚染4−5級(綿、ナイロンとも)、昇華堅牢度 4−5級、難燃性能(着色の有る部分、ない部分ともに) ミクロバーナー法 合格 コイル法 合格 であり、顔料を含むバインダー樹脂を用い捺染した捺染品の性能と同等であり、かつ、風合の柔かいものが得られた。
【0071】
脱色されたリサイクル用捺染品は、捺染されていた個所はわずかに色を有している程度にまで脱色された。 次に、ポリエステル系繊維布帛の脱色処理後の分散染料で捺染されていた箇所の色とポリエステル系繊維布帛が捺染される前の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色(白生地)とを測定し、色差ΔEを求めたところ、色糊1の箇所7.39、色糊2の箇所8.78、色糊3の箇所7.88であった。
【0072】
次に、脱色されたリサイクル用捺染品を粉砕し、ケミカルリサイクル処理を行った。その結果、従来の溶剤脱色処理されたものとほぼ同等の着色問題のないテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールが回収された。 上記のように本発明のリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色するステップ4、脱色されたリサイクル用捺染品をケミカルリサイクルの原料とし、ケミカルリサイクルを行うステップ5を有するリサイクル方法により、一度捺染品として使用したポリエステルを容易にケミカルリサイクルすることができる。
【0073】
(実施例3)脱色処理液として下記のものを用い、また、難燃加工をおこなわなかった以外は、リサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色するステップ4も含め実施例1と同様にし、リサイクル用捺染品を得、脱色を行った。
【0074】
脱色処理液
苛性ソーダ 3g/l
ハイドロサルファイト 5g/l
二酸化チオ尿素 2g/l
ポリエチレングリコールオレイン酸モノエステル 10g/l
硫酸化ひまし油 1g/l
キレート剤(DTPA) 0.1g/l
ポリアクリル酸ソーダ 0.1g/l
水 残量
【0075】
得られたリサイクル用捺染品は、いずれの色も耐光堅牢度4級以上、水堅牢度 変退色4−5級 汚染4−5級(綿、ナイロンとも)、昇華堅牢度 4−5級、難燃性能(着色の有る部分、ない部分ともに) ミクロバーナー法 合格 コイル法 合格 であり、顔料を含むバインダー樹脂を用い捺染した捺染品の性能と同等であり、かつ、風合の柔かいものが得られた。
【0076】
脱色されたリサイクル用捺染品は、捺染されていた個所はわずかに色を有している程度にまで脱色された。 次に、ポリエステル系繊維布帛の脱色処理後の分散染料で捺染されていた箇所の色とポリエステル系繊維布帛が捺染される前の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色(白生地)とを測定し、色差ΔEを求めたところ、色糊1の箇所4.32、色糊2の箇所5.03、色糊3の箇所5.51、色糊4の箇所4.70であった。
【0077】
次に、マテリアルリサイクルするため、脱色されたリサイクル用捺染品を粉砕し、溶融させ、青色顔料を添加し、そのままトレーに成形した。得られたトレーは、ややくすみは見られるものの、問題のないレベルのブルーのトレーであった。 上記のように本発明のリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を本発明の脱色方法により脱色するステップ4、脱色されたリサイクル用捺染品をマテリアルリサイクルの原料とし、マテリアルリサイクルを行うステップ5を有するリサイクル方法により、一度捺染品として使用されたポリエステルをトレー等にマテリアルリサイクルすることが可能である。
【0078】
(比較例1) ポリエステルタフタ(ポリエチレンテレフタレート、タテ糸83デシテックス/72フィラメント、ヨコ糸83デシテックス/72フィラメント、密度 タテ114本/2.54cm、ヨコ92本/2.54cm)をポリエステル系繊維布帛として用いた。 ポリエステル系繊維布帛に対しフラットスクリーン捺染機を用い、下記4色の色糊を用いストライプ模様にて印捺した。 色糊を印捺した後、140℃にて2分間乾燥を行った。
【0079】
次に、帯電防止剤ナイスポールFL(日華化学製)の0.5%水溶液を用いてパディング処理し、帯電防止加工を行い、その後、150℃、30秒間仕上セットをおこない、顔料を含されたポリエステル系繊維布帛を得た。 次に、得られたポリエステル系繊維布帛を作業服に縫製し、捺染品を得た。
【0080】
色糊1
バインダーFRU−5NN(ウレタン樹脂、林化学工業(株)製) 69質量%
ノンネンSM−18 25質量%
(ハロゲン系難燃剤+アンチモン系難燃剤、丸菱油化工業(株)製)
Ryudye W Blue FF2R 4質量%
(顔料、大日本インキ化学工業(株)製)
水 2質量%
【0081】
色糊2
バインダーFRU−5NN(ウレタン樹脂、林化学工業(株)製) 69質量%
ノンネンSM−18 25質量%
(ハロゲン系難燃剤+アンチモン系難燃剤、丸菱油化工業(株)製)
New Lacqutimine A275 Yellow 4質量%
(顔料、大日精化工業(株)製)
水 2質量%
【0082】
色糊3
バインダーFRU−5NN(ウレタン樹脂、林化学工業(株)製) 69質量%
ノンネンSM−18 25質量%
(ハロゲン系難燃剤+アンチモン系難燃剤、丸菱油化工業(株)製)
Ryudye W Red FFGR 4質量%
(顔料、大日本インキ化学工業(株)製)
水 2質量%
【0083】
色糊4
バインダーFRU−5NN(ウレタン樹脂、林化学工業(株)製) 69質量%
ノンネンSM−18 25質量%
(ハロゲン系難燃剤+アンチモン系難燃剤、丸菱油化工業(株)製)
Ryudye W Black RC 6質量%
(顔料、大日本インキ化学工業(株)製)
【0084】
得られた捺染品は、いずれの色も耐光堅牢度4級以上、水堅牢度 変退色4−5級 汚染4−5級(綿、ナイロンとも)、昇華堅牢度 4−5級であり、難燃性能 着色部のみ合格、着色部以外不合格(ミクロバーナー法、コイル法とも)であり、風合の硬いものが得られた。
【0085】
次に、得られた捺染品を使用した後、回収した。回収した捺染品を実施例1と同様にし、脱色処理をおこなった。脱色された捺染品の捺染されていた個所はかなり色が残っていた。 次に、ポリエステル系繊維布帛の脱色処理後の顔料で捺染されていた箇所の色とポリエステル系繊維布帛が捺染される前の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色(白生地)とを測定し、色差ΔEを求めたところ、色糊1の箇所33.88、色糊2の箇所39.28、色糊3の箇所32.51、色糊4の箇所34.65であった。 脱色後の顔料の残留が多いため色が濃く、ケミカルリサイクルの原料には用いることはできなかった。
【0086】
以上の実施例のように、本発明のリサイクル用捺染品は、優れた堅牢度を有しながら、風合いが柔かく、かつ、捺染品として使用後、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルをおこなうことができる。また、比較例の顔料をバインダー樹脂で固定した捺染品は、風合が硬く、また、充分な脱色ができないため、ケミカルリサイクルの原料としてはもちいることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば捺染品のリサイクルを容易に行うことができるので、本発明は産業上有利に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散染料で捺染されたポリエステル系繊維布帛にて構成されたことを特徴とするリサイクル用捺染品。
【請求項2】
前記分散染料がアゾ系分散染料、ベンゾジフラノン系分散染料およびフタルイミド系分散染料から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のリサイクル用捺染品。
【請求項3】
前記アゾ系分散染料が、モノアゾ型、ジスアゾ型、チアゾール型、チオフェンアゾ型およびピロリドンアゾ型分散染料から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項2に記載のリサイクル用捺染品。
【請求項4】
前記ポリエステル系繊維布帛にリン酸エステル系難燃剤も含む、請求項1〜3のいずれかに記載のリサイクル用捺染品。
【請求項5】
前記ポリエステル系繊維布帛のアルカリ剤、還元剤、および非イオン界面活性剤を含む脱色用処理液による脱色処理後の分散染料で捺染されていた箇所の色と前記ポリエステル系繊維布帛が捺染される前の未捺染ポリエステル系繊維布帛の色とを比較した色差ΔEが13以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のリサイクル用捺染品。
【請求項6】
リサイクル用捺染品を構成する分散染料で捺染されたポリエステル系繊維布帛を、アルカリ剤、還元剤および非イオン系界面活性剤を含む脱色用処理液にて処理するリサイクル用捺染品の脱色方法。
【請求項7】
前記還元剤が、ハイドロサルファイトおよび二酸化チオ尿素を含む、請求項6に記載のリサイクル用捺染品の脱色方法。
【請求項8】
前記非イオン系界面活性剤が、脂肪酸エチレンオキサイド付加物である、請求項6または7に記載のリサイクル用捺染品の脱色方法。
【請求項9】
前記脱色用処理液が、さらにキレート剤を含む、請求項6〜8のいずれかに記載のリサイクル用捺染品の脱色方法。
【請求項10】
前記脱色用処理液に、さらにアニオン系界面活性剤を含む、請求項6〜9のいずれかに記載のリサイクル用捺染品の脱色方法。
【請求項11】
前記アニオン系界面活性剤が、硫酸化油である、請求項10に記載のリサイクル用捺染品の脱色方法。
【請求項12】
請求項1に記載したリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を請求項6に記載した脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品を捺染および/または染色するステップ5を含む捺染品のリサイクル方法。
【請求項13】
請求項1に記載したリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を請求項6に記載の脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品をケミカルリサイクルの原料とし、ケミカルリサイクルを行うステップ5を有する捺染品のリサイクル方法。
【請求項14】
請求項1に記載したリサイクル用捺染品を製造するステップ1、リサイクル用捺染品をユーザーが使用するステップ2、ユーザーが使用したリサイクル用捺染品を回収するステップ3、回収したリサイクル用捺染品を請求項6に記載の脱色方法により脱色するステップ4、および脱色されたリサイクル用捺染品をマテリアルリサイクルの原料とし、マテリアルリサイクルを行うステップ5を有する捺染品のリサイクル方法。

【公開番号】特開2009−68127(P2009−68127A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235185(P2007−235185)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】