説明

リステリア・モノサイトゲネスの存在を確認するための生化学的試験

本発明は、少なくとも1つのホスファチジルイノシトールホスホリパーゼC(PI−PLC)基質および少なくとも1つのα−マンノシダーゼ基質を含むことを特徴とする、L.モノサイトゲネスの存在を確認するための生化学的試験に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リステリア属、より詳細にはリステリア・モノサイトゲネス種の病原性細菌の同定に関する。
【背景技術】
【0002】
リステリア・モノサイトゲネスの単離と同定は、食品加工衛生および医学細菌学を監視するうえでの主要な問題である。リステリア属の細菌の中で、リステリア・モノサイトゲネス種だけがヒトに対して病原性であることが知られている。リステリア・モノサイトゲネスは、免疫を抑制している個人、小児または妊婦において、時として致死的なリステリア症を引き起こし得る(症例の25〜30%)。リステリア属のその他の種は、病原性ではないか、または動物に対してのみ病原性である。これは特にリステリア・イバノビ(Listeria ivanovii)に当てはまる。
【0003】
ほとんどの先進国では、過去数十年間にヒトのリステリア症の危険度は後退しているが、現代社会はますます高い安全性を要求しており、散発性症例は受け入れ得るが伝染病は容認しない。
【0004】
それゆえ、ヒトにおいて細菌の状態を診断する状況では、リステリア・モノサイトゲネスを、病原性ではないリステリア属のその他の種から明確に区別することが重要である。
【0005】
リステリア属は現在6つの種を含み、そのうちリステリア・モノサイトゲネスだけがヒトに対して病原性である。
【0006】
微生物は、食品起源の汚染後、ヒトにおいて重大な伝染病の原因となる。リステリア属の2つの種が主として食品(基本的に乳および乳製品)において単離されており、これらの種は非病原性リステリア・イノキュアおよび病原性リステリア・モノサイトゲネスである。
【0007】
これら2つの種は共通の生化学的特徴を有しているため、それらを識別することは困難である。たとえば、β溶血試験は、細菌による赤血球の溶解を引き起こす物質(リステリオリシン)の産生に関連するβ溶血活性を測定することに基づく。この試験はヒツジまたはウシ血液寒天培地で実施されるが、その反応はしばしば軽度である。それゆえ、この試験の信頼性は低く、主要な2つの種を区別する、すなわちL.モノサイトゲネス(陽性反応)をL.イノキュア(陰性反応)から識別することはできるが、病原性種に特異的ではない。
【0008】
CAMP試験は、先述のβ溶血試験に関連するもう1つの試験である。この試験は、5%の洗浄ヒツジ赤血球を含有するトリプチカーゼダイズ寒天培地で実施される。β溶血性黄色ブドウ球菌株CIP 5710を、試験するリステリア属株の培養物によって形成された画線に対して垂直に画線播種する。2つの帯域の接触部分におけるブドウ球菌溶血の強化は陽性反応を示す。実際に、CAMP試験は実施が困難な手法であり、溶血試験と同様に、必ずしも信頼性が高いわけではない。
【0009】
培養培地または同定培地を使用することも可能である。これに関して、出願人に許諾された特許文献1は、リステリア・モノサイトゲネス種をリステリア属のその他の細菌から識別するための細菌学的分析工程を述べている。この工程によれば、グリシンアミノペプチダーゼと呼ばれる酵素によって加水分解され得る発色性または発蛍光性基質を含有する反応培地が使用される。この非常に好都合な手法は、リステリア・モノサイトゲネス種がいかなるグリシンアミノペプチダーゼ酵素活性も有さない唯一の種であるという事実による難点を有する。リステリア・モノサイトゲネスの検出は陰性活性によって実施されるが、これは容易ではなく、陰性試験の使用は、突然変異体の場合またはその他の種がストレスを受け、正常な活性で応答しない場合は特異性を欠く。
【0010】
ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI−PLC)活性を明らかにすることにより、リステリア・モノサイトゲネスおよびリステリア・イバノビ種をその他のリステリア属から識別することが可能である。これは、PI−PLCが、リステリア・モノサイトゲネスおよびリステリア・イバノビのような特定種のリステリア属によって培養培地中に分泌されることが明らかにされたためである(非特許文献1)。これに関して、OAA寒天培地(Ottaviani Agosti Agar medium)は、リステリア属のすべての種の検出と、コロニーの周りのハロの出現を介したリステリア・モノサイトゲネスおよびリステリア・イバノビのPI−PLC活性の実証とを可能にするβ−グルコシダーゼ基質を使用する発色性培地である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第EP496680号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Leimeister−Wachter et al.,Mol.Microbiol.(1991)5(2),pp.361−366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
使用される手法にかかわりなく、一般に第二の培養培地を使用して、リステリア・モノサイトゲネスを確認するための試験を体系的に実施する必要があり、これには24時間のインキュベーション工程が必要とされる。これに関して、ALOA Confirmation(AES)またはCHROMagar Identification listeria(BBL)確認試験が挙げられ得る。それゆえ、全体では、リステリア・モノサイトゲネスの存在を同定し、確認するために48時間、すなわち、24時間のインキュベーションを必要とする第一培養培地の使用、および次いで、同じく24時間のインキュベーションを必要とする第二の確認工程からなる48時間が必要である。この48時間の期間は長く、できるだけ迅速に信頼し得る診断を提示するために、この期間を短縮することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、リステリア・モノサイトゲネス種をリステリア属のその他のすべての種から識別することを可能にする検出方法を提案することである。特に、本発明は、6時間未満で実施できるので非常に迅速な生化学的試験である、新規確認試験を提案する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の説明に進む前に、本発明の開示を容易にするために以下の定義を示す。
【0016】
「生化学的試験」という用語は、細菌の存在を明らかにする生物学的反応を実施するための試験を意味する。そのような試験は、特に、増殖工程を行わずに、播種材料を使用して直接実施することができる。その場合、検出されるのは、細菌懸濁液によって提供されるあらかじめ形成された酵素である。
【0017】
そのような試験は、特にAPI(登録商標)シリーズまたはVitek 2システムにおいて使用される。脱水形態で包装されたこれらの試験を、インキュベーション下で、分析する試料と接触させる。求める生化学的反応は、試験物の状態の変化(着色、蛍光の出現または消失)によって検出される。次に、直接または展開試薬の添加後に、試験物を目視的にまたは読み取り装置によって読み取る。
【0018】
API(登録商標)シリーズは、クプラ(cupules)中で、生化学的試験のストリップをデータベースと組み合わせた、数値的同定の確率法に基づく。試験の賢明な組み合わせにより、微生物群の特徴づけおよび種間での区別が行われる。
【0019】
Vitek 2システムは、64マイクロウエルカードを使用する、完全に自動化された同定およびアンチバイオグラムシステムである。手操作工程を排除することにより、自動化は、検査の時間を節約し、均質な分析手順を保証することを可能にし、それによって結果の信頼性を改善する。このシステムで実施される同定は、APIストリップと同様の確率法を利用する。読み取りの自動化は、実施される生化学的試験の動的読み取りを可能にするので、一般的なグラム陽性微生物について、およびリステリア・モノサイトゲネスについても、4〜8時間での同定を可能にする。
【0020】
本発明による生化学的試験は、PI−PLC基質およびα−マンノシダーゼ基質を含む、L.モノサイトゲネスの存在を確認するための試験であるが、無機塩、ペプトン、炭水化物、pH変動を制限するための1または複数の化合物、1または複数の酵素誘導物質も含み得る。
【0021】
「基質」という用語は、微生物の酵素活性または代謝活性に起因する検出可能なシグナルを直接または間接的に生成することができる何らかの分子を意味する。
【0022】
基質は、特に酵素基質、すなわち微生物の直接または間接的検出を可能にする生成物を生じるように酵素によって加水分解され得る基質であり得る。
【0023】
本発明に関して、この基質は、特にホスファチジルイノシトールホスホリパーゼC(PI−PLC)基質またはα−マンノシダーゼ基質である。
【0024】
この基質は、特に、明らかにされるべき酵素活性に特異的な第一部分と、本明細書の後述では標識部分と称する、標識として働く第二部分とを含有し得る。この標識部分は、発色性、発蛍光性、発光性等であり得、好ましくは、本発明において使用される基質は発色性である。特に、ホスファチジルイノシトールホスホリパーゼC(PI−PLC)基質の場合に特に適切なインドキシルおよびその誘導体に基づく基質、α−マンノシダーゼ基質の場合に特に適切なニトロフェノールおよび誘導体に基づく基質を挙げることができ、さらにはヒドロキシキノリンまたはエスクレチンまたはアリザリンまたはカテコールまたはアミノフェノールに基づく基質ならびにナフトールおよびそれらの誘導体に基づく基質も挙げられる。発蛍光性標識については、クマリン類の誘導体、特にウンベリフェロン、ナフトール、レゾルフィンまたはフルオレセインが挙げられる。
【0025】
本発明によれば、基質は、好ましくは、
・インドキシル(3−インドキシル、5−ブロモ−3−インドキシル、4−クロロ−3−インドキシル、5−ヨード−3−インドキシル、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル、5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル、6−ブロモ−3−インドキシル、6−クロロ−3−インドキシル、6−フルオロ−3−インドキシル、4,6−ジクロロ−3−インドキシル、6,7−ジクロロ−3−インドキシル、4,6,7−トリクロロ−3−インドキシル、5−ブロモ−4−クロロ−N−メチル−3−インドキシル、N−メチル−3−インドキシル等)、
・ニトロフェノール(オルト−ニトロフェノール、パラ−ニトロフェノール等)
に基づく基質から選択される。
【0026】
好ましくは、PI−PLC基質は発色性基質である。好ましくは、PI−PLC基質はインドリル−ホスファチジル−ミオ−イノシトールであり、好ましくは5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルミオイノシトールリン酸(X−インドリル−ホスファチジル−ミオ−イノシトール)である。
【0027】
好ましくは、α−マンノシダーゼ基質は発色性または発蛍光性基質である。好ましくは、α−マンノシダーゼ基質は発色性基質である。好ましくは、α−マンノシダーゼ基質はマンノピラノシダーゼ基質である。好ましくは、マンノピラノシダーゼ基質は4−ニトロフェニル−α−D−マンノピラノシドである。
【0028】
好ましくは、PI−PLC基質の濃度は5〜0.1g/l、好ましくは1.5〜0.5g/lである。
【0029】
好ましくは、α−マンノシダーゼ基質の濃度は2〜0.1g/l、好ましくは1〜0.5g/lである。
【0030】
「反応培地」という用語は、代謝の発現および/または微生物の増殖のために必要なすべての成分を含有する培地を意味する。反応培地は、固形、半固形または液体であり得る。「固形培地」という用語は、たとえばゲル化培地を意味する。寒天培地は微生物を培養するための微生物学における従来のゲル化剤であるが、ゼラチンまたはアガロースを使用することも可能である。いくつかの製剤が市販されており、たとえばコロンビア寒天培地、トリプチカーゼダイズ寒天培地、マッコンキー寒天培地、サブロー寒天培地または、より一般的には、the Handbook of Microbiological Media(CRC Press)に記載されているものが挙げられる。
【0031】
反応培地は、アミノ酸、ペプトン、炭水化物、ヌクレオチド、無機物、ビタミン、たとえば抗生物質、酵素、界面活性剤、緩衝剤、リン酸塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩、金属塩のような活性分子、酵素活性または代謝活性等を検出するための1または複数の基質のような、1または複数の成分を組み合わせて含有し得る。
【0032】
培地はまた、着色剤も含有し得る。表示のために、着色剤として、エバンスブルー、ニュートラルレッド、ヒツジ血液、ウマ血液、たとえば酸化チタンのような乳白剤、ニトロアニリン、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン等が挙げられ得る。
【0033】
リステリア属を検出するために、工業的に一般に使用されている従来の選択培地であるパルカム培地およびオックスフォード培地に特に言及する。これらは、リステリア・モノサイトゲネスの研究および計数の国際規格ISO11290−1および11290−2に記載されている。あるいは、検出に加えて、L.モノサイトゲネスの仮同定を可能にするOAA培地のような発色性培地が挙げられる。
【0034】
「生物学的試料」という用語は、生物学的液体標本に由来する臨床試料、または何らかのタイプの食品に由来する食品試料を意味する。それゆえ、この試料は、液体または固体であり得、限定を伴わずに、血液、脳脊髄液または胎盤の臨床試料、水からまたは乳もしくは果汁のような飲料由来の食品試料、ヨーグルト、肉、卵、野菜、マヨネーズ、チーズ、魚由来の食品試料、または動物飼料に由来する食品試料が挙げられる。
【0035】
これに関して、本発明は、少なくとも1つのホスファチジルイノシトールホスホリパーゼC(PI−PLC)基質および少なくとも1つのα−マンノシダーゼ基質を含むことを特徴とする、L.モノサイトゲネスの存在を確認するための生化学的試験に関する。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態によれば、PI−PLC基質はインドリル−ホスファチジル−ミオ−イノシトール、好ましくは5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルミオイノシトールリン酸である。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態によれば、α−マンノシダーゼ基質はマンノピラノシダーゼ基質、好ましくは4−ニトロフェニル−α−D−マンノピラノシドである。
【0038】
本発明の好ましい一実施形態によれば、試験はまた、特にα−グリセロリン酸マグネシウムまたはウシ血清アルブミンのような、1または複数のPI−PLC活性化物質を含む。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態によれば、PI−PLC基質の濃度は5〜0.1g/l、好ましくは1.5〜0.5g/lである。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態によれば、α−マンノシダーゼ基質の濃度は2〜0.1g/l、好ましくは1〜0.5g/lである。
【0041】
本発明はまた、L.モノサイトゲネスの存在を確認するための、前述の生化学的試験、すなわち前記で定義した、ホスファチジルイノシトールホスホリパーゼC(PI−PLC)基質および少なくとも1つのα−マンノシダーゼ基質を含む生化学的試験の使用に関する。
【0042】
本発明による試験は、API(登録商標)シリーズまたはVitek(登録商標)システムにおける同定装置を生み出すための単一ユニットとしての使用または一連の生化学的試験と組み合わせた使用に特に適している。現在、APIストリップまたはVitekシステムでのL.モノサイトゲネスの同定は、いくつかの単一生化学的試験の一連の陽性または陰性結果を結びつけることによって確立される反応プロフィールを利用する。本発明による試験は、試験の回数を低減するためにそのような装置に好都合に組み込むことができる。
【0043】
本発明はまた、リステリア・モノサイトゲネスを同定するための方法であって、
a)リステリア属を検出するための反応培地を提供する工程、
b)試験する生物学的試料を培地に播種する工程、
c)インキュベートする工程、
d)リステリア属の存在を明らかにする工程、
e)前記で定義した、ホスファチジルイノシトールホスホリパーゼC(PI−PLC)基質および少なくとも1つのα−マンノシダーゼ基質を含む、本発明による生化学的試験によってL.モノサイトゲネスの存在を確認する工程
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0044】
微生物の播種は、当業者に公知の播種手法のいずれかによって実施できる。播種する工程は、検出を所望する酵素活性のために最適な温度で実施することができ、当業者は検出しようとする酵素活性に応じて前記温度を容易に選択することが可能である。工程d)は、目視検査によってまたは比色定量法もしくは蛍光定量法によって実施できる。
【0045】
リステリア属を検出するために、特に、コロニーの青色着色(β−グルコシダーゼ活性)によってリステリア属の種を検出することが可能なOAA培地(bioMerieux、参照番号43641)が挙げられる。
【0046】
本発明はまた、リステリア・モノサイトゲネスを同定するための方法であって、
a)リステリア属を検出するための生化学的試験または生化学的試験の組み合わせを提供する工程、
b)リステリア属の存在を明らかにする工程、
c)前記で定義した、ホスファチジルイノシトールホスホリパーゼC(PI−PLC)基質および少なくとも1つのα−マンノシダーゼ基質を含む本発明による生化学的試験によって、L.モノサイトゲネスの存在を確認する工程
を含むことを特徴とする方法に関する。
【0047】
リステリア属を検出するために、特に形態学とグラム反応が挙げられ、これらを、エスクリンおよびカタラーゼに関する試験およびキシロース、ラムノース、マンニトール、リボースまたはα−メチル−D−マンノシドのような糖類の発酵に関する試験と組み合わせる。
【0048】
以下の実施例は説明のために提示するものであり、いかなる意味においても限定を意図しない。これらの実施例により、本発明をより明瞭に理解することが可能となる。
【実施例1】
【0049】
A)本発明による生化学的試験
本発明による生化学的試験は以下の成分をg/l単位で含む。
トリス緩衝液 37.5
ペプトン抽出物 2.5
酵母抽出物 0.25
α−グリセロリン酸マグネシウム 1.25
ウシ血清アルブミン 7.5
X−ミオ−イノシトール−1−リン酸 2
4−ニトロフェニル−α−D−マンノピラノシド 2.25
最終pH=7。
溶液20μlがプラスチック支持体に沈着した後、試験物を40℃の温度で24時間脱水した。
脱塩水50μlで再水和し、コロニーを添加した後、または0.5McFに等しい不透明度を有する細菌懸濁液50μlで再水和した後、37℃±2℃にて4〜6時間で反応を得ることに関して試験物を評価した。
【0050】
B)試験の読み取りと解釈
37℃±1℃で試験物を4時間および6時間インキュベートした後、試験物の着色を読み取り、以下の表に従って解釈した。

【0051】
C)本発明による試験の有効性確認
本発明による試験を、最初に、あらかじめOAA培地(参照番号43641)で培養しておいたリステリア属の90の純株に0.5McFarlandの播種材料を使用して評価した。リステリア属の6つの種を以下のように分けた:L.モノサイトゲネス(30株)、L.イバノビ(20株)(亜種であるL.イバノビ・ロンドニエンシス(L.ivanovii spp londoniensis)およびL.イバノビ・イバノビ(L.ivanovii spp ivanovii)の10株を含む)、L.グレイ(L.grayii)(10株)、L.シーリゲリ(Listeria seeligeri)(10株)、L.ウエルシュメリ(L.welshimeri)(10株)、L.イノキュア(10株)。4時間目以降、OAA培地上にハロを呈するL.モノサイトゲネス株の80%(25/25)が陽性の緑色着色を示した。6時間のインキュベーション後、これらの菌株すべてが予想された緑色の着色を示した。24時間後、反応は安定であり、37℃±0.2℃で72時間のインキュベーションまで安定なままであった。L.モノサイトゲネス以外の種に属する60菌株のいずれもが緑色着色を示さなかった。試験は、それゆえ、6時間で100%の感受性を示し、リステリア属内で100%の特異性を示した。
【0052】
本発明による試験の有効性を、純株由来のまたは食品マトリックスに由来する菌株由来のコロニーの播種材料に関しても評価した。後者の場合、AFNOR(BIO 12−14)短期プロトコールによって推奨されるように、1/2フレイザーブロスでのプレエンリッチメント後にマトリックスを検査した。この工程は、マトリックスの処理に関連するストレスを受けた可能性がある細菌株の再生を可能にする。
【0053】
純株に関する検査
OAA培地で35℃±2℃にて24時間培養した50のL.モノサイトゲネス株を、滅菌水50μlで再水和した本発明による生化学的試験物中に1コロニーの割合で播種した。35℃±2℃でインキュベートした試験物は、OAA培地で特徴的なコロニー(ハロを有する青色コロニー)を示した菌株の94%について4時間目で陽性であった。6時間後、すべてのL.モノサイトゲネス株が、本発明による生化学的試験物上で陽性(緑色)と検出された。
【0054】
マトリックスに関する検査
22の食品マトリックス上のL.モノサイトゲネスに関する検査を、AFNOR(BIO 12−14)短期プロトコールに従って、すなわちマトリックス/ストマッカー25g、1/2フレイザーでのエンリッチメント(24時間−30℃)で実施した。このエンリッチメント段階後、1/2フレイザーブロス0.1mlをOAA培地に播種した。次に、培地を35℃±2℃で24時間インキュベートした。培地の各々を確認し、推定上の特徴的なL.モノサイトゲネスコロニー(ハロを有する青色)が認められた場合、前記コロニーを本発明による試験物の播種のために採取した。前記試験物は、培地懸濁液(70/700)50μlであらかじめ再水和した。
【0055】
試験した22のマトリックスのうち、11は24時間後にOAA培地で細菌増殖を示した。6つのマトリックスはL.モノサイトゲネス種の特徴的なコロニー(ハロを有する青色)を示した。
【0056】
本発明による試験は、4時間で、6つの推定菌株がL.モノサイトゲネス種に属することを確認した。6つの菌株のL.モノサイトゲネス種としての同定は、他の同定ツール(リステリアAPIストリップ、Vitek GPカードおよび16S配列決定による)によって確認された。
【0057】
その他5つのマトリックスは、L.モノサイトゲネス以外のリステリア属または他の微生物で汚染されていた。これらすべての場合に、これらのマトリックスの各々の1つのコロニーに関して実施した本発明の試験は陰性反応を示した。
【実施例2】
【0058】
本発明による試験の有効性を、以下の分類で試験した250の純株に関しても確認した。
・L.モノサイトゲネス、様々な血清型および起源の150株
・リステリア属、50株:L.グレイ1株、L.イノキュア11株、L.イバノビ26株(L.イバノビ・イバノビ6株、L.イバノビ・ロンドニエンシス7株を含む)、L.シーリゲリ5株、L.ウエルシュメリ7株。
・他の属、50株:バチルス属、乳酸杆菌属、ブドウ球菌属、エンテロコッカス属。
【0059】
使用した菌株は、国際コレクション由来の菌株または食品マトリックスもしくは環境から単離した菌株のいずれかである。これらの菌株の同定は、検査の前に実験室によって確立されたものであり、指示同定(reference identification)であるとみなされる。リステリア属株はAPIリステリア同定ストリップによって同定された。
【0060】
純株に関する検査
純株に関して得られた結果を以下に示す。

【0061】
37℃で24時間インキュベートしたOAA寒天培地を使用して、試験した150株から149のリステリア・モノサイトゲネス株が、6時間目以降、本発明による試験によって確認された。24時間までインキュベーションを延長しても結果に変化はなかった。
【0062】
50のリステリア属株がOAA培地から発生した。
【0063】
26のL.イバノビ株だけが、OAA寒天培地で特徴的なコロニーを示した。本発明による試験を使用して検査したこれらの単離物すべてが、6時間目および24時間目に陰性結果を生じた。
【0064】
試験した50の他の属の菌株のうち、12の株が、特徴的なコロニーを示さずにOAA培地で発生した。これらの単離物に関して実施した本発明による試験は陰性であった。
【0065】
4時間のインキュベーション後の試験を読み取ったところ、148の単離物を検出することが可能であった。それゆえ、本発明による試験を用いて、4時間目以降に陽性結果(緑色)を得ることが可能である。陰性結果は6時間目以降に得ることができる。結果は、OAA培地での48時間の培養後も不変であった。
【0066】
同等の結果がOAA以外の培養培地(TSA(トリプチカーゼダイズ寒天培地)および血液寒天培地)で得られた。本発明による試験により、6時間でL.モノサイトゲネスの存在を確認することが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのホスファチジルイノシトールホスホリパーゼC(PI−PLC)基質および少なくとも1つのα−マンノシダーゼ基質を含むことを特徴とする、リステリア・モノサイトゲネスの存在を確認するための生化学的試験。
【請求項2】
PI−PLC基質がインドリル−ホスファチジル−ミオ−イノシトールである、請求項1に記載の生化学的試験。
【請求項3】
インドリル−ホスファチジル−ミオ−イノシトールが5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルミオイノシトールリン酸である、請求項2に記載の生化学的試験。
【請求項4】
PI−PLC基質の濃度が5〜0.1g/lである、請求項1から3のいずれか一項に記載の生化学的試験。
【請求項5】
α−マンノシダーゼ基質がマンノピラノシダーゼ基質である、請求項1から4のいずれか一項に記載の生化学的試験。
【請求項6】
マンノピラノシダーゼ基質がp−ニトロフェニルマンノピラノシドである、請求項5に記載の生化学的試験。
【請求項7】
α−マンノシダーゼ基質の濃度が2〜0.1g/l、好ましくは1〜0.5g/lである、請求項1から6のいずれか一項に記載の生化学的試験。
【請求項8】
L.モノサイトゲネスの存在を確認するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の生化学的試験の使用。
【請求項9】
リステリア・モノサイトゲネスを同定するための方法であって、
a)リステリア属を検出するための反応培地を提供するステップ、
b)試験する生物学的試料を培地に播種するステップ、
c)インキュベートするステップ、
d)リステリア属の存在を明らかにするステップ、
e)請求項1から7のいずれか一項に記載の生化学的試験によってリステリア・モノサイトゲネスの存在を確認するステップ
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
リステリア・モノサイトゲネスを同定するための方法であって、
a)リステリア属を検出するための生化学的試験または生化学的試験の組み合わせを提供するステップ、
b)リステリア属の存在を明らかにするステップ、
c)請求項1から7のいずれか一項に記載の生化学的試験によってリステリア・モノサイトゲネスの存在を確認するステップ
を含むことを特徴とする方法。

【公表番号】特表2011−500097(P2011−500097A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531564(P2010−531564)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051946
【国際公開番号】WO2009/056762
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【Fターム(参考)】