説明

リソグラフィ装置及び物品の製造方法

【課題】原版に形成された複数のマークの位置を並行して検出するのに有利なリソグラフィ装置を提供する。
【解決手段】リソグラフィ装置は、複数の第1マークが形成された原版3を保持する保持体4と、第2マークが形成された基準板81を保持するステージ1と、前記第2マークに対する前記複数の第1マークそれぞれの位置を検出する検出系5と、を備え、前記第2マークは、前記保持体4により保持された原版3における前記複数の第1マーク及び転写されるべき回路パターンが形成された第1領域以上の大きさを有する第2領域にわたって形成され、前記第2マークに対する前記複数の第1マークそれぞれの位置を前記検出系5により並行して検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造におけるリソグラフィ技術はステッパーやスキャナーと呼ばれる露光装置を利用した方法が現在主流となっている。露光装置は、原版であるレチクルに光を照射し、投影光学系を通して感光材を塗ったウエハ上に先のレチクルパターンを転写する。露光装置では波長を短くすることや投影光学系の開口数(NA)を大きくすることなどで微細パターンの転写を推進している。
【0003】
他のリソグラフィ技術として、インプリント技術がある。インプリント技術は、ナノスケールの微細パターンの転写を可能にする技術であり、磁気記憶媒体や半導体デバイスの量産向けナノリソグラフィ技術の1つとして実用化されつつある。インプリント技術では、電子線描画装置等の装置を用いて微細パターンが形成されたテンプレートを原版としてシリコンウエハやガラスプレート等の基板上に微細パターンが形成される。この微細パターンは、基板上に樹脂を塗布し、その樹脂を介して基板にテンプレートのパターンを押し付けた状態でその樹脂を硬化させることによって形成される。
【0004】
現時点において実用化されているインプリント技術としては、熱サイクル法及び光硬化法がある。熱サイクル法では、熱可塑性の樹脂をガラス転移温度以上の温度に加熱し、樹脂の流動性を高めた状態で樹脂を介して基板にテンプレートを押し付ける。そして、冷却した後に樹脂からテンプレートを引き離すことによりパターンが形成される。光硬化法では、紫外線で硬化する樹脂を使用し、樹脂を介して基板にテンプレートを押し付けた状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、硬化した樹脂からテンプレートを引き離すことによりパターンが形成される。熱サイクル法は、温度制御による転写時間の増大及び温度変化による寸法精度の低下を伴うが、光硬化法には、そのような問題が存在しないため、現時点においては、光硬化法がナノスケールの半導体デバイスの量産において有利である。特許文献1には、光硬化法のインプリント装置が開示されている。特許文献1に記載のインプリント装置は、ウエハステージ、樹脂の塗布機構、テンプレートを保持するヘッド、光を照射する照明系及びアライメントマークの検出器を有する。
【0005】
ステッパーやスキャナーといった露光装置や、上述の光硬化法を用いたインプリント装置においても、ウエハとレチクルあるいはテンプレートとの位置合わせ(アライメント)が必要である。アライメントにはダイバイダイ方式とグローバルアライメント方式がある。現在露光装置において主流のアライメント方式は、グローバルアライメント方式である。グローバルアライメント方式では、ウエハ上のショット配列さらにはショット形状を計測した結果を元に統計処理から最適なウエハ座標を算出し、先のウエハ座標に合うようにレチクルとウエハ位置を同期させて露光する。
【0006】
グローバルアライメント方式には、2つの手法が存在する。1つ目の手法では、直接レチクルとウエハ上のアライメントマークを重ねて観察し、ウエハ上のアライメントマークに対してレチクルの位置や変形ずれを計測し、補正する。2つ目の方法では、レチクル上のアライメントマークと基準板上のアライメントマークとの観察から基準板に対するレチクルの位置や変形ずれを計測(キャリブレーション)する。そして、レチクルマークとは別にウエハマークのみ計測するオフアクシスアライメントを行うことで、ウエハ上のアライメントマークに対してレチクルの位置ずれおよび変形ずれ補正する。
【0007】
上記基準板に対してレチクルの位置や変形ずれを計測し補正する利点は、レチクル側のマークとウエハ側のマークとをそれぞれ個別の条件で計測できるため計測精度を上げられる点にある。また計測用ステージと露光用ステージをそれぞれ個別に持つツインステージ構成の露光装置では、ウエハ側のマークの計測に時間をかけてもスループットを落とさず計測精度を上げられる利点がある。
【0008】
インプリント装置におけるグローバルアライメントでも同様で、テンプレートの位置や形状をウエハに対してあるいは基準板に対して計測し、補正を行う2つのグローバルアライメントの方法がある。同様に、インプリント装置においても、基準板に対してテンプレートを計測し補正する方法では計測精度、スループットの点で利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4185941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ステッパーやスキャナーの場合、予め基準板上に複数の基準マークが配置され、対するレチクル側のマークは前記複数の基準マークと重なり合う位置に通常配置されている。そうすることで、レチクル側の複数のマークを同時に観察し、計測時間や計測精度が上げられるように配慮されている。更にこれらレチクル側のキャリブレーション用のマークを実素子エリアの外に配置しておけば、露光時には照明光を遮光してレチクル側のマークをウエハ上に転写されないようにできる。そのためそのように決められた位置にレチクル側のマークを配置することが有効である。
【0011】
しかしながらインプリント装置の場合、インプリントする領域は通常テンプレートデザインで決まっており、先のインプリント領域の全てのパターンはウエハに全てインプリントされる。デバイスの大きさが同じ事はありえないため、テンプレート側のキャリブレーション用のマークをテンプレートの何処か特定の固定位置に設けることは難しい。
【0012】
そこでデバイス毎のデザインで決まっているスクライブ領域内にマークを配置する必要がある。しかし、そのスクライブ領域もデバイスによっても異なり、また、同じデバイスでも前工程に形成したパターンと干渉を避けるため、マーク位置をずらすケースもある。そのため、キャリブレーション用のマークをテンプレートの特定位置に固定することは困難である。よって、基準板に形成する基準マークの位置もテンプレート側のマークの可変配置に対応させる必要がある。
【0013】
本発明は、原版に形成された複数のマークの位置を並行して検出するのに有利なリソグラフィ装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、基板上に塗布された感光性材料に照射系から原版を介して光を照射して前記原版のパターンを前記基板のショット領域に転写するリソグラフィ装置であって、複数の第1マークが形成された原版を保持する保持体と、第2マークが形成された基準板を保持するステージと、前記第2マークに対する前記複数の第1マークそれぞれの位置を検出する検出系と、を備え、前記第2マークは、前記保持体により保持された原版における前記複数の第1マーク及び転写されるべき回路パターンが形成された第1領域以上の大きさを有する第2領域にわたって形成され、前記第2マークに対する前記複数の第1マークそれぞれの位置を前記検出系により並行して検出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原版に形成された複数のマークの位置を並行して検出するのに有利なリソグラフィ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】インプリント装置を示した図
【図2】検出器の一例を示した図
【図3】検出器の他の一例を示した図
【図4】実施形態1のマーク、基準マークを示した図
【図5】実施形態1の検出器を説明する図
【図6】実施形態2のマーク、基準マークを示した図
【図7】実施形態3のマーク、基準マークを示した図
【図8】実施形態3の検出器を説明する図
【図9】実施形態4の基準板を示した図
【図10】キャリブレーションのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
リソグラフィ装置における基準マークを用いたテンプレートキャリブレーションを行いグローバルアライメントする方式についてインプリント装置の概略図である図1を用いて説明する。
【0018】
インプリント装置は、ステージ(ウエハステージ)1を駆動させながら、オフアクシススコープ9により、ウエハステージ1に搭載された基板上(ウエハ2上)の複数のショット領域に形成されたアライメントマーク(不図示)を計測する。インプリント装置は、計測した複数のアライメントマークを統計処理してウエハ2上の全ショット配列をマッピングし、その後アライメント計測は行わずにインプリント処理を行う。オフアクシススコープ9は、原版(テンプレート)3を保持するヘッド4の外に配置されている。そのため、ヘッド4内に配置された検出器(スコープ)5とは異なり、オフアクシススコープ9は、十分にスペースがあるため大きな光学系を構成することができる。そこで、オフアクシススコープ9は、一般に、照明可変σ、波長選択、高レンズ開口、高倍率で明視野、暗視野切り換えなどプロセス対応力のある光学系となっている。
【0019】
グローバルアライメント方式では、テンプレート3の中心とオフアクシススコープ9中心の距離(ベースライン)を常にキャリブレーションする必要がある。キャリブレーションを行うために、テンプレート3を保持する保持体(ヘッド)4に構成されたスコープ5は、ウエハステージ1上の基準マーク81とテンプレート3上のマーク31の相対位置をスコープ5で測定する。その後、オフアクシススコープ9下へ基準マーク81を移動し、オフアクシススコープ9で基準マーク81を測定する。これらにより、テンプレート3とオフアクシススコープ9の相対位置(所謂ベースライン量)が計測できる。
【0020】
上記キャリブレーションにおいて、原版上(テンプレート3上)の異なる場所に複数のマーク(第1マーク)31が形成され、基準マーク81もマーク31に対応して複数配置されている。スコープ5は、それら複数のマーク31,81を全て同時に観察できるよう配置させておく。するとウエハステージ1上の基準マーク81とテンプレート3のマーク31の相対位置をスコープ5で測定する際、同時に複数の基準マーク81に対する複数のマーク31の誤差を計測できるため、ベースラインだけでなく、テンプレート3の変形量も計測可能である。これらをもとに、インプリント装置は、グローバルアライメント結果をテンプレート3下へ反映し、インプリント処理を行う。スコープ5、ウエハステージ1、感光性材料(樹脂)をウエハ2に塗布する塗布機構7、更にテンプレートの変形を補正する駆動機構21は、制御部10によって制御される。
【0021】
次に、インプリント装置は、ウエハステージ1を駆動して、ウエハ2の第1のショット領域を塗布機構(ディスペンサー)7の下の塗布開始位置に移動させる。制御部10は、ウエハステージ1をスキャンさせつつ第1のショット領域に樹脂を塗布する。ウエハステージ1を駆動して第1のショット領域をテンプレート3の直下に移動させ、押印工程を開始する。押印工程において、ノズル20は酸素をパージするためにガスを放出し、テンプレート3とウエハ2との間の空間をガスで満たした状態とする。充填終了後、露光工程更には離型工程を行い、第2のショット領域へ移動し、前記工程を繰り返す。
【0022】
ここでウエハステージ1上の基準マーク81とテンプレート3上のマーク31との位置計測について詳細に説明する。制御部10は、ウエハステージ1を駆動し基準マーク81とテンプレート3上のマーク31を近接させ、スコープ5により両マークを同時に観察し、位置ずれ量を計測する。この時テンプレート3上のマーク31と基準マーク81との相対位置関係からモアレ縞が発生する。モアレ縞を発生させるには一般にラインアンドスペースを使用する。マーク31のピッチ(周期)をP1、基準マーク81のピッチをP2とすると、モアレ縞のピッチP3は式1で得られる。ただしP1<P2である。
1/P3=(1/P1)−(1/P2)・・・(1)
マーク31と基準マーク81の相対位置ずれ量をΔXとした時、モアレ縞P3のシフト量は周期Paの位相差に比例する。また、マーク31のピッチP1と基準マーク81のピッチP2との関係を反対にしてやるとやはり同じピッチのモアレ縞が発生するが、シフトする方向が逆になる。異なる2セットのマークを同時に観察することによってモアレ縞の相対シフト量Sは、式2で与えられる。ただしPa=(P1+P2)/2である。
S=2・(ΔX/Pa)・P3・・・(2)
これらの式1、式2におけるピッチP1、P2を適当に選択することで、実際のテンプレート3のマーク31と基準マーク81の相対位置ずれ量を拡大して精度良く計測する事が可能となる。以上、基準マーク81を用いてテンプレート3のキャリブレーションを行うグローバルアライメント方式のインプリント装置を例に述べた。
【0023】
次に、本発明に係る検出器(スコープ)5に関して詳細を述べる。図2は、ウエハステージ1に保持された基準板8、テンプレート3およびスコープ5によりモアレアライメントを行う際の説明図である。基準板8の上には、基準マーク(第2マーク)81が形成されている。テンプレート3上には複数のマーク(第1マーク)31が形成されている。複数のマーク31はテンプレート3の任意な位置に形成することができる。そのため、基準マーク81は、ヘッド4が保持可能な最大サイズのテンプレート3における複数のマーク31及び転写されるべき回路パターンが形成された全領域以上(第1領域以上)の大きさを有する領域(第2領域)にわたって形成されている。そのため、基準マーク81に対する複数のマーク31それぞれの位置を並行して検出することが可能である。したがって、複数のマーク31のテンプレート3上における形成位置に拘らず、テンプレート3をウエハステージ1に対して移動させずに、複数のマーク31それぞれの位置を検出することが可能となる。複数のマーク31の位置の検出タイミングは同時でなくても、重複していれば、検出時間を短縮しうる。基準マーク81は、例えば、基準板8の表面に平行でかつ互いに直交する第1軸(x軸)及び第2軸(Y軸)にそれぞれ沿う第1方向及び第2方向の双方に周期を有する格子パターンを含むマークである。スコープ5は、照明系51から照射された光が引き回しファイバー53を介して、光学系54を経由してマーク31および基準マーク81を照明する。マーク31及び基準マーク81により回折した光は光学系54により撮像素子52上でモアレ縞を結像し観察することができる。このときマーク31の配置に対応して駆動系によりスコープ5全体が移動可能になっている。複数のスコープ5,5は、複数のマーク31それぞれの基準マーク81に対する位置を検出する検出系を構成している。
【0024】
スコープ5は、図3に示されるように、照明系51と光学系54の光軸とが分けられた構成でも良い。この場合、照明系51から照射された光がテンプレート3のマーク31および基準板8の基準マーク81を照明する。マーク31及び基準マーク81により回折した光は光学系54により撮像素子52でモアレ縞を結像し、結像されたモアレ縞は観察することができる。このとき、マーク31の配置に対応して駆動系によりスコープ5全体が移動可能になっている。次に上記構成のスコープ5を用いて、マーク31がテンプレート3のどの位置に配置された場合でも基準マーク81を使ってテンプレートのキャリブレーションを行う方法について述べる。
【0025】
[実施形態1]
実施形態1では、図4に示されるように、基準マーク81が1つ形成され、テンプレート3のマーク(第1マーク)31,31’及びスコープ5,5’がX、Y方向のずれを検出するためそれぞれ2個構成されている。基準マーク81は、X方向(第1方向)の周期とY方向(第2方向)の周期とが同一である千鳥格子状の繰り返しパターンでマークが形成されていている。またその大きさはインプリントする全領域をカバーしている。本実施形態では、基準マーク81は、例えば26x33mmのインプリント領域をカバーしている。基準マーク81の周期は、図5に示す様に、スコープ5がLittrow配置をとるように設計される。すなわち、スコープ5は、スコープ5から出射されてマーク31を透過し、基準マーク81で回折され反射され、マーク31を再度透過した光を検出する。図4で示す様に、基準マーク81の回折光は例えば±1次の2光束になっている。
【0026】
テンプレート3のマークは、第1方向(X方向)に整列されたラインアンドスペースからなるマーク31と第2方向(Y方向)に整列されたラインアンドスペースのマーク31’とを含む。マーク31の長手方向は基準マーク81の面からなる面内で、基準マーク81の戻り光束と平行に配置している。そのため、基準マーク81で回折した±1次の2光束はマーク31でそれぞれ回折されスコープ5に入射するよう設計されている(位置ずれの計測方向)。もう一方のスコープ5’に関しても同様である。以上より、マーク31がテンプレート3のどのような位置に配置されていても基準マーク81及びマーク31により回折した光束はスコープ5で結像し、そのモアレ縞を観察することができる。したがって、マーク31の配置に関係なく、テンプレート3のキャリブレーションが可能となる。
【0027】
[実施形態2]
実施形態2では、図6に示されるように、基準マーク81が1つ形成され、テンプレート3のマーク31,31’及びスコープ5,5’がX、Y方向のずれを検出するためそれぞれ2個構成されている。基準マーク81は、X方向(第1方向)の周期とY方向(第2方向)の周期とが互いに異なる千鳥格子状の繰り返しパターンでマークが形成されていている。またその大きさはインプリントする領域をカバーしている。基準マーク81の周期は、図5に示す様に、スコープ5,5’がそれぞれLittrow配置をとるように設計される。
【0028】
テンプレート3のマーク31はラインアンドスペースからなるマークで、その長手方向は基準マーク81面からなる面内で、基準マーク81の戻り光束と平行に配置している。そのため、基準マーク81で回折した2光束はマーク31でそれぞれ回折されスコープ5に入射するよう設計されている。もう一方のスコープ5’に関しても同様であるが、スコープ5’の配置が90°異なるため、Littrow角に関しては基準マーク81の周期が異なる。そのためスコープ5’の照射角度および受光角度も周期にあわせスコープ5とは異なる角度になっている。
【0029】
2つのスコープ5,5’の照射角度、受光角度に違いを設けるのは次のような理由による。複数のマーク31,31’のそれぞれに対し、対応する複数のスコープ5,5’が移動して同時に観察する。その場合、マーク31,31’間の距離が近いとスコープ5,5’同士が干渉してしまう。そのため、マーク31,31’の配置に制限を加える必要がある。しかしながらスコープ5,5’の照射角度、受光角度に違いを設け、スコープ5,5’同士の干渉範囲を緩和させることで、マーク31,31’の配置における制限を緩和させることができる。
【0030】
位置ずれの計測方向については、スコープ5,5’に2光束が入射するようマーク31,31’のラインアンドスペースのピッチ(周期)を調整して設計されている。以上より、複数のマーク31,31’がテンプレート3のどのような位置に配置されていても基準マーク81及びマーク31,31’により回折した光束はスコープ5,5’で結像し、そのモアレ縞を観察することができる。したがって、複数のマーク31,31’の配置位置に関係なく、テンプレート3のキャリブレーションが可能となる。また、本実施形態はスコープ5,5’のメカ的な干渉を避ける上で有効である。
【0031】
[実施形態3]
実施形態3では、図7のように、基準マーク81が1つ形成され、テンプレート3のマーク31,31’及びスコープ5,5’がX、Y方向のずれを検出するためそれぞれ2個構成されている。基準マーク81は、XとY方向に等しい周期(ピッチ)の千鳥格子状の繰り返しパターンでマークが形成されていている。その大きさはインプリントする領域をカバーしている。実施形態3では、テンプレート3に形成される複数のマーク31,31’もXとY方向に周期(ピッチ)を持つ千鳥格子状のマークである。
【0032】
XとY方向のいずれか1つのスコープ5に着目する。そうすると、図8に示す様に、Littrow面内で、マーク31に照射された光束は回折する。このとき、回折光±1次の一方は最終的にスコープ5により受光されないため、0次と-1次光の2光束のみ図8に示している。同様に0次光と-1次光の2光束は基準マーク81でそれぞれ回折を起こす。その回折光の一部が入射角と同じ角度で戻るようマーク31のLittrow方向に回折する千鳥格子の一方の周期と基準マーク81の周期を設計している。
【0033】
基準マーク81の周期とマーク31の位置ずれの計測方向に回折する千鳥格子の他方の周期を選んで設計することで、回折光がスコープ5に入射するように設計されている。もう一方のスコープ5’に関しても同様である。但し、実施形態2のようにスコープ5のメカ的な干渉を避けるために、マーク31のLittrow方向に回折する方向の千鳥格子の一方の周期を変えることも可能である。以上より複数のマーク31,31’がテンプレート3のどの位置に配置されていても基準マーク81及びマーク31,31’により回折した光束はスコープ5,5’で結像し、そのモアレ縞を観察することができる。したがって、マーク31の配置に関係なく、テンプレート3のキャリブレーションが可能となる。
【0034】
本実施形態で、基準マーク81の千鳥格子マークの周期をX,Yそれぞれ異なるサイズにし、X方向とY方向のマーク31,31’をそれぞれ独立に前記基準マーク81のX,Y方向の周期に合わせて設計してもよい。その場合、X,Y方向のマーク31,31’の周期はそれぞれ異ならせることができる。
【0035】
本実施形態ではLittrow方向の回折光の角度を基準マーク81とテンプレート3のマーク31による2つの回折光の角度の和で実現させている。それと同時に計測方向に関しても、X方向、Y方向どちらにも基準マーク81とマーク31による2つの回折光の角度の和で所望のモアレ像を形成させるよう設計している。そのメリットは様々あるが、設計上のメリットとしてはマーク製造誤差を小さく設計できることにある。モアレ像を形成させるには2つの異なるマークピッチの差が重要で、その差に製造上の誤差が発生すると計測精度を低下させる原因となる。当然ピッチが小さくなれば製造誤差がピッチに与える影響も大きくなり、モアレ計測誤差も大きくなる。そのためマークピッチの制限が設計に加わってくる。本実施形態のように基準マーク81とマーク31による2つの回折光の角度の和で実現させることで、ピッチ制約を回避することが可能になる。また、このことは、光学やメカ制約条件が変更されてもマークピッチ変更で対応できるため設計自由度が広がる。
【0036】
[実施形態4]
基準マーク81を使ったテンプレート3のキャリブレーションについて、図10を用いて説明する。また基準マーク81および粗検出用基準マーク(第3マーク)101を構成した基準板8を図9に示す。粗検出用基準マーク(第3マーク)101は、テンプレート3を基準板8に対して位置決めするためのマークである。基準マーク81はテンプレート3のマーク群31を全て同時に計測できるだけの広い領域を有している。但し基準マーク81とマーク群31の中心位置をあらかじめある範囲の誤差内に押さえられていないと、ピッチ誤差が生じる。これは回折格子を使用する場合には常に生じる問題で、ピッチの半分よりも大きな位置誤差は判別がつかない。そのためキャリブレーション計測する前にあらかじめ基準マーク81とマーク群31の中心位置を半ピッチより小さく追い込んでおかなければならない。もしくはその補正量を装置側に返して、キャリブレーション時に反映させなければならない。
【0037】
粗検出用基準マーク101はX方向、Y方向の検出マークが夫々1つづつ構成され、それらの検出精度は先の半ピッチよりも小さな粗い精度のマークである。その代わり検出範囲は設計上テンプレートおよび基準マーク81の相対ずれ量よりも広い範囲を計測できるマークである。粗検出用基準マーク101と基準マーク81との違いは、粗検出用基準マーク101はモアレ形成用のマーク以外にLittrow角に戻る回折ピッチのマークを有する(不図示)。粗検出用基準マーク101は、単なるラインアンドスペースでできた小さなマークでそのピッチはLittrow角に回折光が戻る大きさである。そのため、粗検出用基準マーク101は、解像はしないがぼんやりとマークの輪郭が観察でき、ラフな位置ずれ観察が可能である。あるいは、粗検出用基準マーク101は、モアレ形成用のマークを有しているが、マーク31とほぼ同じくらいの大きさで、しかも基準マーク81よりも高周波なモアレ像を形成するようにマークピッチを設計されている。そのため粗検出用基準マーク101では、計測精度は出ないが計測レンジが大幅に広く設計されている。
【0038】
続いて基準マーク81を使用したテンプレート3のキャリブレーションのフローを説明する。インプリント装置上にロードされたテンプレート3の1つのマーク31に対し、粗検出用基準マーク101のマークが重なり合うようウエハステージ1を駆動させる。両マークの位置ずれ計測を行い、テンプレート3の次のマーク31’に対して粗検出用基準マーク101のマークが重なり合うようウエハステージ1を駆動させ、両マークの位置ずれ計測を行う。同様に計測すべき全てのマークについて位置ずれを計測する。その後、テンプレート3と基準マーク81との位置ずれ及びテンプレート3の変形量を制御部10で算出し、ウエハステージ1及びテンプレート3の変形を補正する駆動機構21(図1)で補正する。
【0039】
その後基準マーク81の中心とテンプレート3のマーク群31の中心が重なるようウエハステージ1を駆動し、引き続き精密計測を行う。同時にテンプレート3の複数のマーク31と基準マーク81との位置ずれ計測を行う。先と同様変形量を制御部10で算出し、ウエハステージ1およびテンプレート3の変形を補正する駆動機構21で補正する。あるいは補正量を装置側にフィードバックし、キャリブレーションを終了する。
【0040】
実施形態例1〜4では、リソグラフィ装置として、原版(テンプレート)を感光性材料に押し付けて型を介して照射系から光を感光性材料に照射することによって感光性材料を硬化させるインプリント処理を行うインプリント装置を使用した。しかし、リソグラフィ装置は、原版(レチクル)のパターンを投影光学系により基板のショット領域に投影して原版のパターンをショット領域に転写する露光装置であってもよい。また、実施形態1〜4では、基準板8に形成する基準マーク81として原版の転写領域全域に広がる千鳥格子パターンを使用した。しかし、基準マーク81として、原版側マークと同じぐらいの大きさのマークが、原版の転写領域以上の大きさを有する領域全体にわたって多数形成された構成とすることも可能である。
【0041】
[物品の製造方法]
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したリソグラフィ装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを転写(形成)する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを転写された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを転写された基板を加工する他の処理を含みうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に塗布された感光性材料に照射系から原版を介して光を照射して前記原版のパターンを前記基板のショット領域に転写するリソグラフィ装置であって、
複数の第1マークが形成された原版を保持する保持体と、
第2マークが形成された基準板を保持するステージと、
前記第2マークに対する前記複数の第1マークそれぞれの位置を検出する検出系と、
を備え、
前記第2マークは、前記保持体により保持された原版における前記複数の第1マーク及び転写されるべき回路パターンが形成された第1領域以上の大きさを有する第2領域にわたって形成され、
前記第2マークに対する前記複数の第1マークそれぞれの位置を前記検出系により並行して検出する、
ことを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項2】
前記第2マークは、前記基準板の表面に平行でかつ互いに直交する第1軸及び第2軸にそれぞれ沿う第1方向及び第2方向の双方に周期を有する格子パターンを含み、
前記複数の第1マークは、前記第1方向に整列されたラインアンドスペースのマークと前記第2方向に整列されたラインアンドスペースのマークとを含み、
前記第2マークの前記第1方向の周期と前記第2方向の周期とは同一である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項3】
前記第2マークは、前記基準板の表面に平行でかつ互いに直交する第1軸及び第2軸にそれぞれ沿う第1方向及び第2方向の双方に周期を有する格子パターンを含み、
前記複数の第1マークは、前記第1方向に整列されたラインアンドスペースのマークと前記第2方向に整列されたラインアンドスペースのマークとを含み、
前記第2マークの前記第1方向の周期と前記第2方向の周期とは互いに異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記複数の第1マーク及び前記第2マークは、前記基準板の表面に平行でかつ互いに直交する第1軸及び第2軸にそれぞれ沿う第1方向及び第2方向の双方に周期を有する格子パターンを含む、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記検出系は、前記複数の第1マークにそれぞれ対応する複数の検出器を含み、各検出器は、当該検出器から出射されて対応する第1マークを透過し、前記第2マークで反射され、前記対応する第1マークを再度透過した光を検出するように配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載のリソグラフィ装置。
【請求項6】
前記基準板には、前記原版を前記基準板に対して位置決めするための前記第1領域より小さい第3マークがさらに形成されている、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のリソグラフィ装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パタ−ンを形成された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−89575(P2012−89575A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232787(P2010−232787)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】