説明

リチウムイオン二次電池用セパレータ

【課題】本発明の課題は、ピンホールがなく、静電紡糸により得られた層と基材層との層間剥離性が優れ、耐熱性に優れると共に内部抵抗に優れたリチウムイオン二次電池用セパレータを提供することにある。
【解決手段】合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを必須成分として含有した基材層を有し、少なくとも片面に、静電紡糸法により得られた超極細繊維層が積層されていることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等のリチウムイオン二次電池に好適に使用できるリチウムイオン二次電池用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電子機器の普及及びその高性能化に伴い、高エネルギー密度を有する二次電池が望まれている。この種の電池として、有機電解液(非水電解液)を使用するリチウムイオン二次電池が注目されてきた。このリチウムイオン二次電池は、平均電圧として従来の二次電池であるアルカリ二次電池の約3倍である3.7V程度が得られることから高エネルギー密度となるが、アルカリ二次電池のように水系の電解液を用いることができないため、十分な耐酸化還元性を有する非水電解液を用いている。非水電解液は可燃性であるため、発火等の危険性があり、その使用において、安全性には細心の注意が払われている。発火等の危険に曝されるケースとしていくつか考えられるが、特に過充電が危険である。
【0003】
過充電を防止するために、現状の非水系二次電池では定電圧・定電流充電が行われ、電池に精密なIC(保護回路)が装備されている。この保護回路にかかるコストは大きく、非水系二次電池をコスト高にしている要因にもなっている。
【0004】
保護回路で過充電を防止する場合、当然保護回路がうまく作動しないことも想定され、本質的に安全であるとは言い難い。現状の非水系二次電池には、過充電時に保護回路が壊れ、過充電されたときに安全に電池を破壊する目的で、安全弁・PTC素子の装備、セパレータには熱ヒューズ機能を有する工夫がなされている。しかし、上記のような手段を装備していても、過充電される条件によっては、確実に過充電時の安全性が保証されているわけではなく、実際には非水系二次電池の発火事故は現在でも起こっている。
【0005】
セパレータとしては、ポリエチレン等のポリオレフィンからなるフィルム状の多孔質フィルムが多く使用されており、電池内部の温度が130℃近傍になった場合、溶融して微多孔を塞ぐことで、リチウムイオンの移動を防ぎ、電流を遮断させる熱ヒューズ機能(シャットダウン機能)があるが、何らかの状況により、さらに温度が上昇した場合、ポリオレフィン自体が溶融してショートし、熱暴走する可能性が示唆されている。そこで、現在、200℃近くの温度でも溶融及び収縮しない耐熱性セパレータが開発されている。
【0006】
そこで、不織布や織布へのフィラー粒子の含有、樹脂の表面塗工による多孔膜の形成等の複合化にて、耐熱性を持たせる例が報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、基材として用いられている不織布については、孔が大きく、表面の平滑性が低いため、表面塗工により複合化した際の表面のバラつきが大きく、また、フィラー粒子や樹脂等の複合化物の脱落を招きやすくなり、その結果、使用できる分野が限定されることや内部抵抗等の電池特性に劣るといった課題があった。
【0007】
また、静電紡糸法により紡糸された特定サイズの微細繊維からなる層を不織布のような網目構造シートの両面に積層する例が報告されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、このようなセパレータでは、網目構造シートの繊維間の大き過ぎる空隙を十分に目止めするために、静電紡糸法による微細繊維層の目付を重くする必要があり、その結果、内部抵抗が悪くなるといった課題があった。さらに、静電紡糸法により紡糸された微細繊維層と網目シートが十分に結合できないため、層間強度が不足し、実使用に耐えないといった課題もあった。
【0008】
また、静電紡糸法による低目付の微細繊維層と湿式不織布層とを重ね合わせた後に、加温加圧して両層を接着一体化する例が報告されている(例えば、特許文献3参照)。この方法では、強度の面から、静電紡糸法による低目付の微細繊維層を安定して得ることができないだけでなく、微細繊維層と湿式不織布層とが層間剥離しやすいといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2005−536857号公報
【特許文献2】特開2006−92829号公報
【特許文献3】国際公開第2006/049151号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ピンホールがなく、静電紡糸法により得られた層と基材層との層間剥離性が優れ、耐熱性に優れると共に内部抵抗に優れたリチウムイオン二次電池用セパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを必須成分として含有した基材層を有し、静電紡糸法により得た超極細繊維層が直接該基材層上に堆積して積層されてなることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータを見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータは、合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを必須成分として含有した耐熱性に優れた基材層を有し、該基材層の少なくとも片面に、静電紡糸法により得られた超極細繊維層が積層されていることを特徴とする。基材層では、フィブリル化したリヨセル繊維が合成樹脂短繊維と絡み合い、適度な空隙を有することで、静電紡糸法により得られた極細繊維が、基材層の空隙内のフィブリル化したリヨセル繊維と絡み合うことができ、基材層と超極細繊維層との層間剥離が起きにくくなる。さらに、基材層では、フィブリル化したリヨセル繊維が合成樹脂短繊維と絡み合い、緻密な構造となることで、静電紡糸法により得られた超極細繊維層が薄膜であっても内部短絡を生じることがないので、結果、内部抵抗に優れる特徴を有する。すなわち、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータでは、耐熱性に優れると共に、静電紡糸法により得られた超極細繊維層と基材層との層間強度が強く、内部抵抗に優れる特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータについて詳説する。本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータは、合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを必須成分として含有した基材層と、該基材層の少なくとも片面に、静電紡糸法により得られた超極細繊維層とを有する積層不織布からなる。基材層に使われる合成樹脂短繊維を構成する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリビニルケトン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、フラン系樹脂、尿素系樹脂、アニリン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。このうち、耐熱性に優れるポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂からなる繊維を使用することが好ましい。
【0014】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系、ポリトリメチレンテレフタレート系、ポリエチレンナフタレート系、ポリブチレンナフタレート系、ポリエチレンイソフタレート系等が挙げられる。これらの中でも、リチウムイオン二次電池用セパレータに使用する場合には、耐熱性に優れているポリエチレンテレフタレート系が好ましい。
【0015】
アクリル系樹脂としては、アクリロニトリル100%の重合体からなるもの、アクリロニトリルに対して、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体、酢酸ビニル等を共重合させたもの等が挙げられる。
【0016】
合成樹脂短繊維は、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる繊維(複合繊維)であっても良い。また、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータに含まれる合成樹脂短繊維は、1種でも良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0017】
合成樹脂短繊維として、バインダーとして機能する熱融着性短繊維を使用しても良い。熱融着性短繊維は、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型の複合繊維または単繊維等が挙げられるが、均一性を得るという点から、特に単一成分タイプであることが好ましく、特に、未延伸ポリエステル系短繊維を使用することが好ましい。また、均一でかつ高強度を得るという点から、芯鞘型ポリエステル系短繊維を使用することが好ましい。
【0018】
合成樹脂短繊維の繊度は、0.007〜0.8dtexが好ましく、0.02〜0.6dtexがより好ましく、0.04〜0.3dtexがさらに好ましい。合成樹脂短繊維の繊度が0.8dtexを超えた場合、厚さ方向における繊維本数が少なくなるため、必要とされる緻密性が確保できなくなる場合がある。合成樹脂短繊維の繊度が0.007dtex未満の場合、繊維の安定製造が困難になる場合がある。
【0019】
合成樹脂短繊維の繊維長としては、1mm以上7mm以下が好ましく、1mm以上5mm以下がより好ましく、1mm以上3mm以下がさらに好ましい。繊維長が7mmを超えた場合、地合不良となることがある。一方、繊維長が1mm未満の場合には、基材層の機械的強度が低くなって、静電紡糸法により得た超極細繊維層を積層する際に基材層が破損する場合がある。
【0020】
フィブリル化したリヨセル繊維の「リヨセル」とは、ISO規格及び日本のJIS規格に定める用語で「セルロース誘導体を経ずに、直接、有機溶剤に溶解させて紡糸して得られるセルロース繊維」のことである。
【0021】
リヨセル繊維は、通常のパルプ繊維と同様に、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、顔料等の分散や粉砕に使用するボールミル、ダイノミル等の叩解・分散設備でフィブリル化が可能である。これらの分散設備を用いて、最適にフィブリル化したリヨセル繊維を用いることが望ましい。
【0022】
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータの基材層に用いるフィブリル化したリヨセル繊維は、変法濾水度が0〜250mlであることが好ましく、0〜160mlがさらに好ましい。変法濾水度が250mlを超える場合は、微細化処理が不十分であり、繊維の分割が十分に進まず、繊維径が太いまま残る割合が多くなるため、基材層に大きな貫通孔ができ、静電紡糸法により得られた超極細繊維層が裏抜けしてしまうことがある。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータの基材層に用いるフィブリル化したリヨセル繊維の長さ加重平均繊維長は、0.20〜2.00mmがより好ましく、0.40〜1.60mmがさらに好ましい。長さ加重平均繊維長が0.20mm未満だと、基材層からフィブリル化したリヨセル繊維が脱落することや毛羽立ちにより静電紡糸法により得られた超極細繊維層に破れが生じることがあり、一方、2.00mmより長いと、基材層の繊維が絡まりやすく、地合むらや厚みむらが生じることがある。
【0023】
本発明における変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網(PULP AND PAPER RESEARCH INSTITUTE OF CANADA製)を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度を意味し、特に断りのない限り、単に「変法濾水度」と表記する。本発明における溶剤紡糸セルロース繊維の長さ加重平均繊維長は、繊維にレーザー光を当てて得られる偏向特性を利用して求めることができ、市販の繊維長測定器を用いて測定することができる。
【0024】
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータの基材層において、合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維との含有質量比率は、90/10〜20/80が好ましく、80/20〜30/70がより好ましく、70/30〜40/60がさらに好ましい。フィブリル化したリヨセル繊維の含有比率が10質量%未満の場合、十分な耐熱性が得られないことや、緻密性や均一性が向上しないことがある。また、フィブリル化したリヨセル繊維の含有比率が80質量%を超えると、静電紡糸法により得た超極細繊維層を積層する際に基材が破損することがある。
【0025】
なお、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータの基材層は、合成樹脂短繊維と変法濾水度が0〜250mlで、且つ、長さ加重平均繊維長が0.20〜2.00mmのフィブリル化したリヨセル繊維以外の繊維を含有しても良い。例えば、天然セルロース繊維、天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物、溶剤紡糸セルロースの短繊維、合成樹脂からなるフィブリッド、パルプ化物、フィブリル化物、無機繊維、変法濾水度が250ml超のフィブリル化したリヨセル繊維、長さ加重平均繊維長が0.20mm未満または2.00mm超のフィブリル化したリヨセル繊維が挙げられる。天然セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物の変法濾水度は0〜400mlが好ましい。無機繊維としては、ガラス、アルミナ、シリカ、セラミックス、ロックウールが挙げられる。無機繊維を含有する場合は、リチウムイオン二次電池用セパレータの耐熱寸法安定性や突刺強度が向上するため好ましい。
【0026】
基材層の目付は、3.0〜30.0g/mが好ましく、5.0〜20.0g/mがより好ましく、6.0〜16.0g/mがさらに好ましい。30.0g/mを超えると、基材だけでセパレータの大半を占めることになり、静電紡糸法により得た超極細繊維層との積層化による効果を得られ難くなり、3.0g/m未満であると、十分な強度を得ることが難しくなり、超極細繊維層との積層化後の表面に大きなバラつきが発生しやすくなることがある。なお、目付はJIS P 8124(紙及び板紙−坪量測定法)に規定された方法に基づく坪量を意味する。
【0027】
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータに用いられる静電紡糸法とは、原料ポリマーを溶解または溶融したポリマー原液に高電圧を印加すると、チャージしたポリマー原液が分裂して、アースをとったターゲットに極細繊維が堆積され、超極細繊維層が形成されることを利用した方法である。有機溶媒溶液をポリマー原液として用いた場合には、有機溶媒は繊維形成と微細化の段階で容易に蒸発して除かれて、また、溶融液をポリマー原液として用いた場合には、溶融温度以下に冷却されて、ポリマー原液供給部より、一定間隔で離れて設置された捕集ベルトまたは捕集シート上に配置した基材層上に堆積する。ポリマー原液を紡糸空間へ供給するポリマー原液供給部としては、一般的な紡糸ノズルを複数使用する方法を採用しても良いし、紡糸ノズルを使用しない方法を採用しても良い。
【0028】
静電紡糸法により得られる極細繊維のポリマーとしては、溶液化可能か、溶融化可能なものであれば特に限定されず、使用可能である。このようなポリマーとして、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル系樹脂及びポリ乳酸系樹脂などの溶融または適正溶媒に溶解可能な様々なポリマーが適用可能であり、これらの共重合体及び混合物なども使用可能である。なお、前記ポリマー原液に合成樹脂などのエマルジョンまたは有機物若しくは無機物の粉末を混合して用いることもできる。これらの中でも、リチウムイオン二次電池用セパレータに使用する場合には、耐熱性に優れているポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、セルロース、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系樹脂が好ましく、さらには、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂が好ましい。
【0029】
上記ポリマーを溶液化させるときの溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、(a)揮発性の高いアセトン、エタノール、メタノール、イソプロパノール、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,プロパノール、4−ジオキサン、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、塩化メチレン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸など、(b)揮発性が相対的に低いN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジオキソラン、エチルメチルカーボネート、メチルプロピオネート、2−メチルテトラヒドロフランなどがある。なお、揮発性の高い溶媒と相対的に低い揮発性を有する溶媒とを混合した混合溶媒を用いれば、溶媒の揮発性を増加させることやポリマー原液の粘度を低下させることができ、ポリマー原液供給部材からの吐出量を増加させて、静電紡糸法による微細繊維層の生産性を向上させることができる。
【0030】
超極細繊維層の目付は、0.1〜15.0g/mが好ましく、0.3〜10.0g/mがより好ましく、0.3〜8.0g/mがさらに好ましい。15.0g/mを超えると、超極細繊維層の比率が高くなり、内部抵抗が悪くなることがあり、0.1g/m未満であると、基材層の空隙を埋めきれずに、短絡が発生しやすくなることがある。
【0031】
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータの基材層と超極細繊維層とを積層する方法は、特に限定するものではないが、静電紡糸法により得た超極細繊維層を、直接、基材層シート上に堆積させて積層する方法が好ましい。一旦、静電紡糸法により得た極細繊維からなるシートを製造し、この超極細繊維層シートと基材層シートとを接着剤を介して貼り合わせる方法や、超極細繊維層または基材層に熱溶融性樹脂からなる繊維を使用し、両層を熱溶融性樹脂の融点以上で加熱加圧するなどして積層する方法もあるが、これらの積層方法では、基材層と超極細繊維層との剥離強度に劣ることがある。
【0032】
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータの厚みは、特に限定されるものではないが、3〜50μmが好ましく、6〜40μmがより好ましく、8〜30μmがさらに好ましい。50μmを超えると膜厚が厚くなりすぎてしまい、内部抵抗が劣ることがあり、3μm未満であると、セパレータの強度が低くなりすぎて、電池に組み込む際に破損することがある。なお、厚みはJIS B 7502に規定された方法により測定した値、つまり、5N荷重時の外側マイクロメーターにより測定された値を意味する。また、本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータの目付は、3.1〜40.0g/mが好ましく、5〜30.0g/mがより好ましく、6〜20g/mがさらに好ましい。40.0g/mを超えると、膜厚が厚くなりすぎることや、緻密性が密になりすぎ、内部抵抗が悪くなることがあり、3.1g/m未満であると、十分な強度を得ることが難しくなり、短絡も発生しやすくなり、セパレータとしての実使用に適しないことがある。
【0033】
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータにおいて、基材層となるシートの製造方法としては、繊維ウェブを形成し、繊維ウェブ内の繊維を接着・融着・絡合させる方法を用いることができる。得られた不織布は、そのまま使用しても良いし、複数枚からなる積層体として使用することもできる。繊維ウェブの製造方法としては、例えば、カード法、エアレイ法等の乾式法、抄紙法等の湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法等がある。このうち、湿式法によって得られるウェブは、均一かつ緻密であり、リチウムイオン二次電池用セパレータとして好適に用いることができる。さらに、複数層構造を有する基材層を製造する場合、湿式法による抄き合わせ法を用いることにより、各複数層間での剥離がない一体となった基材層を製造することができる。湿式法による抄き合わせ法とは、繊維を水中に分散して均一な抄紙スラリーとし、この抄紙スラリーを円網、長網、傾斜式等のワイヤーを少なくとも2つ以上を有する抄紙機を用いて、繊維ウェブを得る方法である。
【0034】
本発明のリチウムイオン二次電池用セパレータには更なる複合化を行っても良く、この複合化としては、特に限定されるものではないが、多孔質フィルムとの積層、フィラー粒子の含浸または表面塗工、ポリマー樹脂の含浸または表面塗工等が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における部や百分率は、断りのない限り、すべて質量によるものである。
【0036】
〔フィブリル化リヨセル繊維の作製〕
ダブルディスクリファイナーを用いて、フィブリル化していないリヨセル単繊維(繊維径15μm、繊維長4mm、コートルズ社製)を50回繰り返し処理して、フィブリル化リヨセル繊維を得た。フィブリル化リヨセル繊維の変法濾水度は100ml、長さ加重平均繊維長は0.78mmであった。なお、変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度0.1%にした以外はJIS P8121に準拠して測定した変法濾水度を意味する。また、本発明におけるフィブリル化リヨセル繊維の長さ加重平均繊維長は、繊維にレーザー光を当てて得られる偏向特性を利用して求めた数値であり、市販の繊維長測定器を用いて測定することができる。
【0037】
〔ポリマー原液Aの調製〕
ポリビニルアルコール(重合度1,900、ケン化度94.0〜96.0モル%)を純水に溶かして濃度10質量%の静電紡糸用ポリマー原液Bを調製した。
〔ポリマー原液Bの調製〕
ポリフッ化ビニリデン(質量平均分子量300,000)をN,N−ジメチルホルムアルデヒドに溶かして、濃度10質量%の静電紡糸用ポリマー原液Aを調製した。
〔ポリマー原液Cの調製〕
ホモポリアクリルニトリル(質量平均分子量350,000)をジメチルホルムアルデヒドに溶かして、濃度10質量%の静電紡糸用ポリマー原液Cを調製した。
【0038】
(実施例1)
基材層(1)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.1g/m、厚さ25μmの不織布を製造し、基材層(1)とした。次に、基材層(1)の片面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(1)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Aを噴霧し、厚みが約4μmの超極細繊維層を形成させた。この状態では、結晶化度が低く、水に可溶なため、次いで、熱処理(150℃、3min)を行い、さらにスーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付13.2g/m、厚さ21μm)とした。
【0039】
(実施例2)
基材層(1)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.1g/m、厚さ25μmの不織布を製造し、基材層(1)とした。次に、基材層(1)の片面に、静電紡糸法(印加電圧15kV、紡糸口と基材層(1)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Bを噴霧し、厚みが約3μmの超極細繊維層を形成させた後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.5g/m、厚さ20μm)とした。
【0040】
(実施例3)
基材層(1)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.1g/m、厚さ25μmの不織布を製造し、基材層(1)とした。次に、基材層(1)の片面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(1)間の距離10cm)を用いてポリマー原液Cを噴霧し、厚みが約3μmの超極細繊維層を形成させた後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.9g/m、厚さ20μm)とした。
【0041】
(実施例4)
基材層(2)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmのアクリル系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.3g/m、厚さ26μmの不織布を製造し、基材層(2)とした。次に、基材層(2)の片面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(2)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Aを噴霧し、厚みが約4μmの超極細繊維層を形成させた。この状態では、結晶化度が低く、水に可溶なため、次いで、熱処理(150℃、3min)を行った後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付13.5g/m、厚さ20μm)とした。
【0042】
(実施例5)
基材層(2)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmのアクリル系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.3g/m、厚さ26μmの不織布を製造し、基材層(2)とした。次に、基材層(2)の片面に、静電紡糸法(印加電圧15kV、紡糸口と基材層(2)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Bを噴霧し、厚みが約3μmの超極細繊維層を形成させた後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.4g/m、厚さ19μm)とした。
【0043】
(実施例6)
基材層(2)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmのアクリル系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.3g/m、厚さ26μmの不織布を製造し、基材層(2)とした。次に、基材層(2)の片面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(2)間の距離10cm)を用いてポリマー原液Cを噴霧し、厚みが約3μmの超極細繊維層を形成させた後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.7g/m、厚さ19μm)とした。
【0044】
(実施例7)
基材層(3)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmのポリプロピレン系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.1g/m、厚さ24μmの不織布を製造し、基材層(3)とした。次に、基材層(3)の片面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(3)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Aを噴霧し、厚みが約4μmの超極細繊維層を形成させた。この状態では、結晶化度が低く、水に可溶なため、次いで、熱処理(150℃、3min)を行った後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付13.4g/m、厚さ21μm)とした。
【0045】
(実施例8)
基材層(3)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmのポリプロピレン系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.1g/m、厚さ24μmの不織布を製造し、基材層(3)とした。次に、基材層(3)の片面に、静電紡糸法(印加電圧15kV、紡糸口と基材層(3)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Bを噴霧し、厚みが約3μmの超極細繊維層を形成させた後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.6g/m、厚さ20μm)とした。
【0046】
(実施例9)
基材層(3)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmのポリプロピレン系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.1g/m、厚さ24μmの不織布を製造し、基材層(3)とした。次に、基材層(3)の片面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(3)間の距離10cm)を用いてポリマー原液Cを噴霧し、厚みが約3μmの超極細繊維層を形成させた後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.5g/m、厚さ20μm)とした。
【0047】
(実施例10)
基材層(4)用として、繊度0.06dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたPET系短繊維10部、繊度0.1dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたPET系短繊維を10部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維を40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.1g/m、厚さ24μmの不織布を製造し、基材層(4)とした。次に、基材層(4)の片面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(4)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Aを噴霧し、厚みが約4μmの超極細繊維層を形成させた。この状態では、結晶化度が低く、水に可溶なため、次いで、熱処理(150℃、3min)を行った後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付13.1g/m、厚さ21μm)とした。
【0048】
(比較例1)
繊度0.1dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させた後、スーパーカレンダー処理を行い、目付10.1g/m、厚さ17μmの不織布を製造し、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.1g/m、厚さ20μm)とした。
【0049】
(比較例2)
繊度0.1dtex、繊維長3mmのアクリル系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させた後、スーパーカレンダー処理を行い、目付10.3g/m、厚さ16μmの不織布を製造し、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付11.8g/m、厚さ21μm)とした。
【0050】
(比較例3)
繊度0.1dtex、繊維長3mmのポリプロピレン系短繊維20部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部、上記の方法で作製したフィブリル化リヨセル繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させた後、スーパーカレンダー処理を行い、目付10.1g/m、厚さ17μmの不織布を製造し、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.0g/m、厚さ20μm)とした。
【0051】
(比較例4)
ステンレス製ドラム式コレクター表面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(3)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Aを噴霧し、厚みが22μmの超極細繊維層を形成させた。この状態では、結晶化度が低く、水に可溶なため、次いで、熱処理(150℃、3min)を行った後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.2g/m、厚さ18μm)とした。
【0052】
(比較例5)
ステンレス製ドラム式コレクター表面に、静電紡糸法(印加電圧15kV、紡糸口と基材層(3)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Bを噴霧し、厚みが22μmの超極細繊維層を形成させた後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.5g/m、厚さ17μm)とした。
【0053】
(比較例6)
ステンレス製ドラム式コレクター表面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(3)間の距離10cm)を用いてポリマー原液Cを噴霧し、厚みが24μmの超極細繊維層を形成させた後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付13.2g/m、厚さ19μm)とした。
【0054】
(比較例7)
基材層(5)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmの配向結晶化させたポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維60部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付9.9g/m、厚さ25μmの不織布を製造し、基材層(5)とした。次に、基材層(5)の片面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(5)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Aを噴霧し、厚みが約4μmの超極細繊維層を形成させた。この状態では、結晶化度が低く、水に可溶なため、次いで、熱処理(150℃、3min)を行った後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付12.7g/m、厚さ21μm)とした。
【0055】
(比較例8)
基材層(6)用として、繊度0.1dtex、繊維長3mmのアクリル系短繊維60部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.2g/m、厚さ26μmの不織布を製造し、基材層(6)とした。次に、基材層(6)の片面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(6)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Aを噴霧し、厚みが約4μmの超極細繊維層を形成させた。この状態では、結晶化度が低く、水に可溶なため、次いで、熱処理(150℃、3min)を行った後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付13.2g/m、厚さ21μm)とした。
【0056】
(比較例9)
基材層(7)用として、繊度0.08dtex、繊維長3mmのポリプロピレン系短繊維60部、繊度0.2dtex、繊維長3mmの未延伸PET系熱融着性短繊維40部を一緒に混合し、パルパーの水中で離解させ、アジテーターによる撹拌のもと、均一な抄造用スラリー(1%濃度)を調製した。この抄造用スラリーを円網抄紙機による湿式法を用いて抄き上げ、120℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系熱接着性短繊維を接着させて不織布強度を発現させ、目付10.0g/m、厚さ26μmの不織布を製造し、基材層(7)とした。次に、基材層(7)の片面に、静電紡糸法(印加電圧12kV、紡糸口と基材層(7)間の距離15cm)を用いてポリマー原液Aを噴霧し、厚みが約4μmの超極細繊維層を形成させた。この状態では、結晶化度が低く、水に可溶なため、次いで、熱処理(150℃、3min)を行った後、スーパーカレンダー処理を行い、リチウムイオン二次電池用セパレータ(目付13.1g/m、厚さ21μm)とした。
【0057】
<評価>
実施例及び比較例で得られたリチウムイオン二次電池用セパレータについて、下記の評価を行い、各評価結果を表1に示した。
【0058】
[ピンホールの評価]
リチウムイオン二次電池用セパレータから200mm×200mmの試験片を50枚採取し、各試験片の表面を目視で観察し、ピンホールの有無を測定することにより、次の2段階で評価した。
○;全試験片においてピンホールが観察されない。
×;全試験片のうち、2枚以上においてピンホールが観察される。
【0059】
[突刺強度の評価]
リチウムイオン二次電池用セパレータから50mm×200mmの試験片を採取し、試験片を卓上型材料試験機(商品名:STA−1150、(株)オリエンテック製)に据え付けた40mmφの固定枠に装着し、先端に丸み(曲率1.6)をつけた直径1.0mmの金属針((株)オリエンテック製)を試料面に対して直角に50mm/分の一定速度で貫通するまで降ろした。この時の最大荷重(g)を計測し、これを突刺強度とした。1試料について5ヶ所以上突刺強度を測定し、全測定値の中で最も小さい突刺強度について、50g以上であれば○、20g以上50g未満であれば△、20g未満であれば×で表した。
【0060】
[層間剥離性の評価]
基材層と超極細繊維層とを構成している繊維同士がお互いの内層まで十分に入り込んでいるかを目視で観察し、また、超極細繊維層を手で擦ることによって、次の2段階で評価した。
○;お互いの内層まで繊維同士が十分に入り込み、手で擦っても層間剥離が生じない。
×;お互いの内層まで繊維が入り込まず、手で擦ると容易に層間剥離が生じる。
【0061】
[耐熱性の評価]
リチウムイオン二次電池用セパレータを、150℃の恒温槽に入れ、40分間加熱処理を行い、各リチウムイオン二次電池用セパレータの収縮率を測定して耐熱性を評価した。収縮率の測定は、以下のようにして行った。50mm×50mmのシートサンプルを切り出し、サンプルのCD辺をクリップで固定して耐熱ガラス板に挟んで、150℃の恒温槽内に40分間保管した後に取り出し、シートサンプルの長さを測定し、試験前の長さと比較して、長さの減少割合の百分率を収縮率とした。値が5%未満となるものを○、5%以上8%未満となるものを△、8%以上となるものを×として、耐熱性の評価とした。また、従来公知のリチウムイオン二次電池用セパレータである厚さ20μmのポリエチレン製微多孔膜について、耐熱性の評価を行ったところ、ポリエチレン製微多孔膜は溶融収縮し、収縮率は30%以上であった。
【0062】
実施例及び比較例で得られたリチウムイオン二次電池用セパレータの電気特性を評価するため、以下のような電極及び電池を作製し、測定を行った。
【0063】
<正極の作製>
正極活物質であるコバルト酸リチウム75質量部、導電助剤であるアセチレンブラック15質量部、及びバインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量部をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に均一に混合して、正極剤ペーストを作製した。このペーストを厚さ22μmのアルミニウム箔上に塗工し、乾燥、カレンダー処理を行って、厚さ97μmの正極を作製した。
【0064】
<負極の作製>
負極活物質である黒鉛95質量部と、バインダーであるPVdF5質量部とを、NMPを溶剤として、均一になるように混合して、負極剤ペーストを作製した。この負極剤ペーストを厚さ24μmの銅箔上に塗工し、乾燥、カレンダー処理を行って厚さ92μmの負極を作製した。
【0065】
<電池の作製>
実施例及び比較例のリチウムイオン二次電池用セパレータを介して、上記のようにして得られた正極と負極とを重ね合わせ、ラミネートフィルム外装材内に装填し、電解質として1mol/LのLiBFを溶解させたエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(体積比1/1)溶液を注入し、真空封止を行ってリチウムイオン二次電池を作製した。
【0066】
[内部抵抗の評価]
作製したリチウムイオン二次電池の内部抵抗を交流インピーダンス法により、振幅10mV、周波数10kHzの条件で測定した。内部抵抗値が1.35Ω未満であれば○、1.35Ω以上1.55Ω未満であれば△、1.55Ω以上であれば×で表した。
【0067】
[放電容量維持率の評価]
作製したリチウムイオン二次電池について、1Cでの定電流充電(4.1Vまで)と4.1Vでの定電圧充電を行い、1Cで3.0Vまでの定電流放電を繰り返し実施し、1回目に対する100回目の放電容量の比を百分率(%)で求め、これを放電容量維持率とした。放電容量維持率が90%以上であれば○、80%以上90%未満であれば△、60%未満であれば×で表した。
【0068】
【表1】

【0069】
実施例1〜10で得られたリチウムイオン二次電池用セパレータは、合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを含有する基材層と静電紡糸法により得られた超極細繊維層とを有する不織布からなっており、両層間は容易に剥離せず、また、ピンホール欠点がないと共に、150℃における耐熱性に優れるだけでなく、電池特性が極めて優れるという結果が得られた。
【0070】
一方、比較例1〜3で得られたリチウムイオン二次電池用セパレータは、基材層からのみ構成されるため、ピンホール欠点が生じており、リチウムイオン二次電池用セパレータとしては不適なものであった。比較例4〜6で得られたリチウムイオン二次電池用セパレータは、静電紡糸法により得られた超極細繊維層のみから構成されるため、突刺強度と共に、電池特性も劣る結果となった。また、比較例7〜9で得られたリチウムイオン二次電池用セパレータは、基材層にフィブリル化したリヨセル繊維を含有していないため、超極細繊維層との繊維間の絡み合いが弱く、剥離性が劣ると共に、電池特性も実施例より大きく劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の活用例としては、リチウムイオン二次電池やリチウムイオンポリマー二次電池等のリチウムイオン二次電池用セパレータに好適に用いられ、その他にはリチウムイオンキャパシタ用セパレータとしても用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂短繊維とフィブリル化したリヨセル繊維とを必須成分として含有した基材層を有し、静電紡糸法により得た超極細繊維層が直接該基材層上に堆積して積層されてなることを特徴とするリチウムイオン二次電池用セパレータ。

【公開番号】特開2011−249008(P2011−249008A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117504(P2010−117504)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】