説明

リチウムイオン再充電可能電池セル

本発明は、リチウムイオン再充電可能電池セルに関し、前記セルは、集電体(10)のアノード、前記集電体に重なるシリコン系複合アノード層(14)及びリチウム含有金属酸化物系複合カソード層(16)、さらにそれに重なるカソード集電体(12)からなる。多孔性プラスチックスペーサ又はセパレータ(20)が前記アノード及びカソード層(14,16)の間に設けられ、液体電解質が含まれる。アノードでのシリコン材料は粒子状であり前記粒子はバインダにより接着性物内に保持されている。セルロース系バインダは、活性物質はシリコンの代わりにカーボンであるセルで使用され、シリコン系アノードで使用できないと信じられていた。本発明は、セルロース系バインダも活性物質がシリコン系であるセル中でも、キレート剤が組み合わされることで、使用できるという知見に基づくものである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン再充電可能電池セル及び特にかかるセルに用いるバインダに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン再充電可能電池セルは、現在、カーボン/グラファイト系アノードを用いている。図1に、前記グラファイト系アノード電極を含むリチウムイオン再充電可能電池セルが示される。電池は単一のセルを含んでいてもよいし、また2以上のセルを含んでいてもよい。
【0003】
電池セルは通常、アノードとして銅集電体10及びカソードとしてアルミニウム集電体12を含み、これらは負荷又は適切な充電電源に接続される。留意すべきは、用語「アノード」及び「カソード」は本明細書においては、これらの用語は負荷を横切って設けられる電池の内容において理解されるべきものである。即ち「アノード」は電池の負極であり「カソード」は電池の正極である、ということである。グラファイト系複合アノード層14は集電体10を覆い、リチウム含有金属酸化物系複合カソード層16は集電体12を覆う。多孔性プラスチックスペーサ又はセパレータ20が、前記グラファイト系複合アノード層14及びリチウム含有金属酸化物系複合カソード層16の間に設けられ、液体電解質材料が前記多孔性プラスチックスペーサ又はセパレータ20、複合アノード層14及び複合カソード層16内に分散される。ある場合には、前記多孔性スペーサ又はセパレータ20はポリマー電極材料と置き換えられ、かかる場合前記ポリマー電極材料は、前記複合アノード層14及び前記複合カソード層16内に存在する。
【0004】
電池セルが完全に充電される場合、リチウムはカソードのリチウム含有金属酸化物から、前記電解質を介してグラファイト系アノードへ移動し、そこでリチウムはグラファイトとの反応によりインタカレートされてリチウム炭素化合物、通常LiCを生成する。前記複合アノード層内の電気化学的活性材料である、グラファイトは最大の容量として372mAh/gを有する。
【0005】
グラファイトの代わりにシリコンが活性アノード材料として使用できることが知られている (例えば,Insertion Electrode Materials for Rechargeable Lithium Batteries,M.Winter,J.O.Besenhard,M.E.Spahr及びP.Novak in Adv.Mater.1998,10,No.10)。一般的に、シリコンは活性アノード材料としてリチウムイオン再充電可能電池セルとして用いられる場合に、現在使用されているグラファイトに比較して非常に高い容量を提供し得る、ということが考えられている。電気化学的セル内でリチウムと反応することで化合物Li21Siへ変換され、理論上は最大容量4200mAh/gを持ち、グラファイトと比較して非常に大きい。従って、リチウムイオン再充電可能電池セルにおいて、グラファイトをシリコンと置き換えると、単位当たりの質量及び単位容積当たりの貯蔵エネルギの非常に大きい増加が達成され得ることとなる。残念なことにLiイオンセルのシリコンアノード材料は、セルの充電及び放電状態の際にリチウムイオンがシリコン材料中に挿入され又は除去されることに伴い大きな容積変化(300%まで)を経るということである。この変化はカーボンアノードに容積変化に比較して非常に大きいものである。
【0006】
カーボンブラックはしばしばシリコンアノードに添加され電極内での導電性を増加させる。
【0007】
カーボンアノード及びシリコンアノードの両方において、前記アノード材料は粒子性であり粒子全体はバインダによりアノードに一緒に保持されている。カーボンアノードよりもシリコンアノードのためのバインダがより問題を起こすことが示された。というのはかかる大きな容積変化のために、放電の際にリチウムイオンが除去されることでシリコンアノードは縮小する場合において、個々のシリコン粒子はお互いに集電体と電気的接触を必ずしも再確立することがないという結果を生じるからである。従ってカーボンアノードの教示はシリコンアノードへは適用できるものではない。
【0008】
ポリビニリデンフロリド(PVDF)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)は、カーボン系アノードを用いるリチウムイオン再充電電池セルに最も普通に使用されるバインダであるが、他のバインダについてはこれまで示唆されて来なかった。例えばUS−5660948には、リチウムイオンセルのカーボンアノードでのエチレン−プロピレンジエンターポリマー、PVDF、エチレン−アクリル酸コポリマー及びエチレン酢酸ビニルコポリマーのバインダが開示されている。US−6399246には、ポリ(アクリル酸)はリチウムイオン電池セルのグラファイトアノードで良好な接着性を示さないことが教示されており、さらにポリアクリルアミドバインダの使用が請求されている。
【0009】
US−6620547には、リチウムがインターカレーションされるカーボンアノードを持ち、マトリックスポリマーの上に保持された遷移金属から形成されるカソードを持つリチウム二次セルが開示され、そのポリマーマトリックスには、ポリアクリレート、ポリ(アクリル酸)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニリデンフロリド)及びポリ(ビニルクロリド)などが含まれる。
【0010】
アノード製造の際にセルロースバインダの使用は、例えばUS20100085685に記載されている。
【0011】
US5260148には、バインダで共に保持されるリチウム塩から形成されるアノードが開示されており、該バインダは、澱粉、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ジアセチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチレングリコール、ポリ(アクリル酸)、ポリテトラフルオロエチレン及びポリ(ビニリデンフロリド)であり得る。
【0012】
上記のように、リチウムイオンセルのグラファイトアノードで最も普通のバインダはPVDF及びSBRであるけれども、これらは、シリコンアノードの比較的大きな容積変化により、シリコンアノード材料を連続する充電サイクルにわたり共に密着的に結合させるとができない。
【0013】
シリコン系で提案された一つの代替バインダはナトリウムカルボキシメチルセルロース(NaCMC)であり、これについては、(i)Journal of Applied Electrochemistry(2006)36:1099−1104(これは、活性成分がSi/C複合体の場合のアノードに関連する)及び(ii)Electrochemical and Solid State Letters,10(2)A17−A20(2007)、(iii)Electrochemical and Solid State Letters,8 (2)A100−A103(2005)を参照することができる。
【0014】
これらの文献には、ナトリウムCMCの使用により、ミクロンサイズの粉末シリコンアノード材料又はSi/C複合アノード材料を用いる場合に、「標準」PVDFバインダについてサイクル寿命が改良されることが示されている。
【0015】
従来、リチウム二次セルの製造に使用されてきたシリコンは、一般的に集積回路(IC)Siウェハを製造するためのものであり、高純度のものであった。しかし、かかるシリコンは非常に高価である。電極のコストをより下げる努力において、より低いグレードのシリコンの使用が試みられてきた。しかし得られる電極体は不安定であり、その結果得られるアノード材料は集電体にコーティングした場合に十分な集電体との接触が維持できず、電荷保持容量を失うまでの放電/充電の回数に限界がある。
【0016】
我々は次のことを見出した。即ち、安定性の欠如はNaCMCと相互作用するシリコン中のある不純物に帰するものであることである。引き続く文献調査により、この結論は強化された。というのはDie Angewandte Makromolekulare Chemie220(1994)123−132(Nr.3848)には、NaCMCの粘性がカルシウム及びアルミニウムイオンの存在で減少することが開示されているからである。
【0017】
セルロース系特にCMC系電極を製造する際に低グレード冶金シリコンを使用することは従って問題がある。というのはシリコン中に存在する金属性不純物がセルロース特にCMCバインダと作用し、電極内の安定性を失わせるからでる。本発明はこの問題を解消するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記問題に対処することに加えて、本発明の目的はバインダを提供することであり、このバインダは、異なる純度を持つ粒子シリコン材料を十分に結合するものであり、特に該シリコン粒子が比較的安価な「低グレード」シリコンが再充電可能なリチウムイオンセルのアノード材料である。例えば、シリコンの比較的安価な物は Silgrain J230シリコン粉末であり、これは平均粒子直径4.5μmであり、Silgrain HQ製品の一つを含み、これはノルウェーのエルケム(Elkem)から入手可能であり、次の不純物を含むものである。
アルミニウム 0.12 %まで
鉄(鉄三価) 0.05 %まで
カルシウム 0.02%まで
チタン 0.005%まで
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くべきことに次のことが見出された。ナトリウムカルボキシメチルセルロース(NaCMC)(及び他のセルロース系バインダ、特に例えば他のアルカリ金属などの他のカチオンを含むカルボキシメチルセルロース)は、キレート剤、通常2座及び/又は3座キレート剤をアノード材料に導入することで、再充電可能なリチウムイオンセルのアノードの低グレード(純度99.90未満)シリコンのためのバインダとして全部又は部分的に使用することができる、ということである。4座、5座及び6座のキレート座位などの他の多座キレート座位も使用され得る。本発明は高純度シリコン(純度99.90%以上)にもまた使用可能である。
【0020】
本発明の第一の側面はリチウムイオン再充電可能電池セルのための電極を提供するものであり、前記電極は;
基板例えば集電体;
前記電極で活性物質を形成するシリコン粒子;
セルロース系バインダ;及び
2価及び/又は3価などの前記金属不純物に結合可能な少なくともキレート剤を含み、前記バインダは前記シリコン粒子と混合され前記基板に接着する接着性物を形成する、電極である。
【0021】
このバインダは、電極構造に含まれることに適することが知られた全てのセルロースバインダであり得る。かかるバインダの例はUS20100085685に開示され、メチルセルロース,セルローススルファート,メチルエチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース及びメチルヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。他の適切なセルロースバインダには、アニオン性カルボキシメチルセルロース例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロースが含まれ得る。
【0022】
電極のシリコンは全ての適切な形でもよい。粒子状シリコンは好ましくは、粒子、ファイバ、シート状、ピラー状又はリボン状粒子(WO2008/139157に記載)又はピラー化粒子などの形状である。ファイバは、WO2007/083152,WO2007/083155及びWO2009/010758に開示された技術を用いて製造され得る。ピラー化粒子は、WO2009/010758に開示された技術を用いて表面がエッチングされたシリコン粒子である。ファイバはピラー化粒子からピラーを剥がして(例えば超音波を用いて)製造され得る。
【0023】
コストの理由で、本発明で使用されるシリコンは、少なくとも99.99%又は少なくとも99.999%の純度を持つ高純度(従ってより高価)のシリコンよりもむしろ、99.80%以下例えば99.7%の純度を持つより安価なシリコンが好ましい。しかしながら、問題を生じる不純物のレベルは、シリコンの表面領域により部分的に決定されると信じられているが、なぜならより大きな表面領域は表面の不純物の存在で増加を導くからである。従って、上記問題に煩わされる純度レベルと煩わされない純度レベルを切り分ける正確な点を与えることは不可能である。他のファクタもまた作用している可能性がある。
【0024】
それにもかかわらず、シリコン材料の純度は、リチウムをインターカレーションするために十分なシリコンが存在することを保証するために一般的に95.00%よりも大きく、好ましくは98%よりも高い。シリコンは広い範囲の不純物を含み、主に鉄、アルミニウム、カルシウム、チタン、リン及びホウ素、酸素及び/又は炭素である。それぞれの量は約0.2%までの量であるが一般的には以下の表に示される範囲である。
【0025】
バッチ分析からのSilgrainHQ(J230グレードが属するブランド)の化学分析値
分析値 Si Fe Al Ca Ti
重量% 重量% 重量% 重量% 重量%
最大値 99,7 0,05 0,12 0,02 0,003
最小値 99,6 0,03 0,09 0,01 0,001
典型値 99,6 0,04 0,11 0,02 0,0021
シリコン粒子は結晶性、例えば単結晶又は多結晶であり得る。多結晶粒子は全ての数の結晶を含む、例えば2以上である。
【0026】
シリコンアノードを持つ再充電可能なセル内の他の材料が金属性不純物を生じさせる場合にも、本発明はまた適用され得る。例えば、前記アノードの導電性を増加させるためのシリコンアノードに存在する全てのカーボンブラックである。カーボンブラックは通常鉄などの不純物を含み、該鉄は2価又は3価である得る。シリコンは適切には、前記電極の活性物質の20から100%の範囲で含まれる。他の活性物質もまた含まれ得る。シリコンとの組み合わせで使用され得る他活性物質の例には、グラファイト及びハードカーボンが挙げられる。用語「活性物質」とは、(リチウムイオン電池において)以下の物質を意味する。即ち、前記電池の充電及び放電のサイクルそれぞれの間に、その構造にリチウムイオンを挿入でき、その構造からリチウムイオンを放出できる、ものである。本発明の第一の側面のひとつの実施態様では、前記電極は20から100%のシリコンを含み、かつ0から80%のグラファイト及びハードカーボン又はその混合物から選択される活性物質を含む。好ましくは活性物質は、60から97重量%シリコン及び3から40重量%のグラファイト又はハードカーボン又はそれらの混合物を含む。
【0027】
上記のアノード材料は、上記の活性物質(例えば、シリコン及び場合によりグラファイト及び/又はハードカーボン)及び導電性材料を適切に含む。適切な導電性材料には、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック;カーボンファイバ(カーボンナノチューブを含む)などの導電性ファイバが挙げられる。
【0028】
アノード材料は、バインダと共に接着性物を形成し、これは基板、例えば集電体に接着する;即ち、この接着性物は一般的に前記集電体と電気的接触を可能とする。
【0029】
前記接着性物は適切に、50から95%の活性物質を、好ましくは60から90%、特に好ましくは70から80%含む。
【0030】
前記接着性物は適切に、10から30%の導電性カーボンを、好ましくは8から20%、特に好ましくは12から14%含む。
【0031】
前記接着性物は適切に、2から20重量%のバインダを、好ましくは8から15重量%、特に好ましくは8から12重量%含む。12%のバインダ含有量が最も好ましい。2−12重量、例えば5−10重量%の範囲の含有量もまた含まれる。
【0032】
キレート剤は好ましくは、Fe3+及びAl3+などの3価イオン例えば及び/又はCa2+及びTi2+などの2価イオンをキレートするために適するものである。好ましいキレート剤としてはデフェロキサミンメシレートが挙げられ、これはFe3+及びAl3+をキレートするために適している。またEDTA(エチレンジアミン四酢酸)が挙げられ、これはCa2+及びCo2+をキレートするために適する汎用2価キレート剤である。またナトリウムヘキサメタホソファート(SHMP)が挙げられ、これは水及び食品産業で使用される分散剤および隔離剤として使用されるものである。
【0033】
キレート剤はアノード材料(シリコン及び場合により他の活性又は導電性材料)と組み合わされる。得られるキレート剤/アノード材料混合物はセルロースバインダと組み合わされて接着性物を形成し、これは基板に接着する。又はキレート剤の溶液中に活性物質のスラリーを活性材料中の不純物が許容レベルまで到達するまで既定時間混合し;その後活性物質をスラリーから分離し、洗浄し、乾燥されて、接着性物を形成するためにセルロースバインダと混合される。前者の場合に、キレート剤は電極構造に含まれることとなり、一方後者の場合(他の場合)には含まれないことは、理解されるべきである。
【0034】
シリコン及び場合により導電性材料を含む活性物質は通常キレート剤の水溶液と共にスラリーを形成し12時間攪拌される。得られる混合物はその後20分間遠心分離して活性物質、場合による導電性材料とを分離する。活性物質および場合による導電性材料は脱イオン水で3回洗浄(100gSiに対して1L)する。最終分離はブフナー漏斗で行う。得られる生成物中のシリコンは通常純度99%(>99%)を超える。
【0035】
どちらの場合でも、アノードに存在するキレート剤(アノード材料を調製するために使用されるスラリーとして、又はプロセス後に得られる乾燥複合電極のいずれか)の量は、実質的に全てのカチオン性不純物と結合するために十分な量であるべきである。キレート剤と不純物の価数との価数の一致は一般的に必要とされる。
【0036】
キレート剤はそれ自体Liイオンセル中の電気化学的環境に安定である必要がある。例えば、リチウムイオン自体のような電解質中に存在するような他の種と相互作用しないということである。
【0037】
本発明はまた、第二の側面において、電極の製造方法に関し、次のステップ:
(a)例えば集電体である基板を準備するステップ;
(b)シリコン及び場合により導電性材料を含む活性物質を準備するステップ;
(c)前記活性物質と及び場合による導電性と、キレート剤とを混合するステップ;
(d)前記活性物質と及び場合による導電とを含むステップ(c)の生成物とセルロースバインダとを混合して接着性物を形成するステップ;
(e)ステップ(d)で形成された前記接着性物を例えば集電体である前記基板に適用するステップ、を含む。
【0038】
前記基板は好ましくは、銅集電体である。活性物質は適切に、シリコン及び場合により、グラファイト又はハードカーボン又はそれらの混合物などの他の活性材物質を含むことができる。適切な導電性材料には、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック;カーボンファイバー(カーボンナノチューブを含む)などの導電性ファイバが挙げられる。
【0039】
適切なキレート剤の例は、上で開示されている。キレート剤は通常溶液状態で供給され、シリコン及び存在する全ての導電性材料を含む活性物質はそこに分散されスラリーを形成する。得られるスラリーはその後セルロースバインダと組み合わされて接着性物を形成し、これは例えば集電体などの前記基板上に適用されることができる。
【0040】
本発明の第二の側面の好ましい実施態様では、シリコン及び場合により導電性材料を含む活性物質はステップ(c)及び(d)の間でキレート剤から分離される。キレート剤を含む溶液は捨てられ、活性物質及び場合による導電性材料は洗浄れ、ステップ(d)で前記バインダと混合される前に乾燥される。
【0041】
ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液の調製
ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液中の2つの冶金グレードシリコン粉末の溶液を調製した。
【0042】
溶液A
冶金グレードシリコン粉末(ノルウェーのElkemから入手のSilgrain HQ(J230)、平均粒子サイズ4.5μm)を20重量部を、分子量700,000のナトリウムカルボキシメチルセルロースを1%含む水溶液中に分散させた。
【0043】
溶液B
冶金グレードシリコン粉末(ノルウェーのElkemから入手のSilgrain HQ(J230)、平均粒子サイズ4.5μm)を20重量部を、分子量700,000のナトリウムカルボキシメチルセルロースを1%と、ナトリウムヘキサメタホスフェートを1%とを含む水溶液中に分散させた。ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液の、シリコン粉末を添加する前と後の粘度を決定した。結果を以下表1にまとめた。
【0044】
【表1】

ナトリウムヘキサメタホスフェートを含むナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液の粘度はナトリウムヘキサメタホスフェートを含まない場合に比較して、ずっと減少することが分かる。これは、ナトリウムヘキサメタホスフェートを含むナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液は、ナトリウムヘキサメタホスフェートを含まないナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液に比べてシリコン分散物がより安定であることを意味する。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン再充電可能電池セルのための電極であり、記電極は;
例えば集電体である基板;
前記電極で活性物質を形成するシリコン粒子;
セルロース系バインダ;及び
2価及び/又は3価などの前記金属不純物に結合可能な少なくともキレート剤を含み、前記バインダは前記シリコン粒子と混合され前記基板に接着する接着性物を形成する、電極。
【請求項2】
請求項1に記載の電極であり、前記バインダが例えばナトリウムカルボキシメチルセルロースであるアニオン性カルボキシメチルセルロースである、電極。
【請求項3】
請求項1に記載の電極であり、前記シリコンが純度95−99.990重量%、例えば98−99.80重量%である、電極。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電極であり、前記アノード材料が、少なくとも次の不純物、鉄、アルミニウム及びカルシウムを含み、前記鉄が2価又は3価又はその両方であり、それらの不純物が、前記電極の乾燥重量に対して、それぞれ少なくとも0.001%例えば少なくとも0.01%である、電極。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電極であり、前記少なくともひとつのキレート剤が、2座、3座及び/又は多座キレート剤を含む、電極。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電極であり、前記少なくともひとつのキレート剤が、デフェロキサミンメシレート、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び/又はナトリウムヘキサメタホスファフェートを含む、電極。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電極であり、全ての所与の価数を持つキレート剤に関して、前記キレート剤の含有量が、対応する価数を持つ前記電極中の全ての不純物を実質的に結合するために十分である、電極。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電極であり、シリコン及びバインダを含む前記混合物がまた、導電性カーボンを含む、電極。
【請求項9】
請求項7に記載の電極であり、前記導電性カーボンが金属性不純物例えば鉄を含み、前記鉄が2価、3価又は両方である、電極。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電極であり、前記活性物質が、20から100%シリコン及び例えばグラファイト及び/又はハードカーボンである活性カーボンを0から80%含む、電極。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電極であり、前記接着性物が50から95%活性物質を含む、電極。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電極であり、前記接着性物が5から20重量%含まれる、電極。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の電極であり、前記接着性物が10から30%導電性カーボンを含む、電極。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の電極であり、前記電極物中の前記粒子状シリコンが、ピラー粒子、粉末粒子、リボン又はファイバ形状である、電極。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電極を含む、リチウムイオン再充電可能電池セル。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載のセルを含む装置。
【請求項17】
電極を製造する方法であり、前記方法は次のステップ:
(a)例えば集電体である基板を準備するステップ;
(b)シリコン及び場合により導電性材料を含む活性物質を準備するステップ;
(c)前記活性物質と及び場合による導電性と、キレート剤とを混合するステップ;
(d)前記活性物質と及び場合による導電とを含むステップ(c)の生成物とセルロースバインダとを混合して接着性物を形成するステップ;
(e)ステップ(d)で形成された前記接着性物を例えば集電体である前記基板に適用するステップ、を含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であり、さらにシリコン及び場合による導電性材料を含む前記活性物質をステップ(c)及び(d)の間に前記キレート剤から分離するステップを含む、方法。

【公表番号】特表2012−527069(P2012−527069A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510356(P2012−510356)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000922
【国際公開番号】WO2010/130975
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509040226)ネグゼオン・リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】Nexeon Ltd
【住所又は居所原語表記】136 Milton Park,Abingdon,Oxfordshire OX14 3SB,United Kingdom
【Fターム(参考)】