説明

リチウム二次電池

【課題】リチウム二次電池の正極および負極において、活物質と導電材と結着剤とを混合した合材が充放電により膨張、収縮しても物理的応力を吸収できるように集電体を構成すること。
【解決手段】正極Aおよび負極Bと、正極Aおよび負極Bを電気的に絶縁するセパレータ2と、電解質とを備え、正極Aおよび負極Bは、複数の角柱形中空部が集積された構造の集電体3、6と、この集電体3、6の各角柱形中空部に充填された活物質と導電材と結着剤とを混合した合材とをそれぞれ有してなり、集電体3、6は、充放電時の合材の膨張、収縮に応じて角柱形中空部の形状が変形するように構成されたリチウム二次電池を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池に関し、さらに詳しくは、長寿命を図るための集電体を有するリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ポータブル機器用の電源として二次電池が経済性、省資源等の観点から多く使われている。二次電池には様々な種類があり、現在最も一般的なのものはニッケル−カドミウム電池であり、最近になってニッケル水素電池も普及してきている。さらに、正極材料としてリチウム酸コバルトLiCoO2、リチウム酸ニッケルLiNiO2、これらの固溶体Li(Co1-xNix)O2あるいはスピネル型構造を有するLiMn2O4等を用い、また負極材料としては黒鉛等の炭素材料を用い、また液体の有機化合物を溶媒とし、リチウム化合物を溶質とした電解液を用いたリチウム二次電池も、ニッケル水素電池よりも出力電圧が高く高エネルギー密度であるために主力になりつつある。
【0003】
通常、ポータブル機器等に用いられている1Ah程度の容量の二次電池は、それぞれ百数十ミクロン程度の厚みの正極板と負極板が、多孔性絶縁体のセパレータを介して向かい合っており、これを捲回あるいは積層したものが、金属製あるいは金属層を有する樹脂フィルムに電解質とともに封入されて構成されている。また、一般に正電極または負電極は、正極活物質または負極活物質と電子導電性を向上させるための導電材とを、結着剤にて集電体に接着することにより構成されている。また、正極板や負極板に用いられる集電体には、パンチング状、網状、ハニカム状、ラス状、格子状、エキスパンデッド状、スクリーン状、レース状といった形状のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−32006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウム二次電池は、前述のように出力電圧が高いこと、エネルギー密度が高いことに加えて、エネルギー効率(放電電力/充電電力)が高いことも知られており、これらの性質は電池としては好適なものであるが、いくつかの問題点があり、最も重要な問題はサイクルの繰り返しによる容量低下と負荷特性低下である。
【0005】
リチウム二次電池は、放電時に下記の反応により電子を外部回路に供給する。なお、下記の反応式においてLi1-xCoO2 は正極活物質であり、C6 は負極活物質である。
正極 Li1-xCoO2 + xLi + xe- → LiCoO2
負極 xLiC6 → C6 + xLi + xe-
【0006】
上記の反応が進行するのに伴い、正極活物質および負極活物質は体積減少(収縮)する。逆の充電時には上記と逆の反応が進行し、正極活物質および負極活物質は体積増加(膨張)する。つまり、リチウム二次電池においては充放電を繰り返すことにより、活物質の膨張収縮が繰り返され、その結果、密閉容器内部に封入された電極内には物理的応力が発生する。
この物理的応力により活物質と導電材との接触率が低下すると、電極内部の電流経路が断たれるために電極の抵抗率が上昇し、その結果、電池の負荷特性が低下する。
さらに、応力が繰り返し発生すると、最終的には活物質が完全に孤立して充放電に関与しなくなり、電池としての容量低下を招く。よって、充放電サイクルの繰り返しによる容量低下と負荷特性低下を抑制し、より長寿命のリチウム二次電池を提供するためには、前記膨張収縮に起因する活物質と導電剤との接触率低下を抑制し、内部抵抗上昇を抑制することが課題となる。
なお、前記特許文献1に記載の各種形状の集電体では、このような課題を解決することは検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、正極および負極において、活物質と導電材と結着剤とを混合した合材が充放電により膨張、収縮しても物理的応力を吸収できるように集電体を構成することにより、本発明をするに至った。
かくして、本発明によれば、正極および負極と、該正極および負極を電気的に絶縁するセパレータと、電解質とを備え、前記正極および負極は、複数の角柱形中空部が集積された構造の集電体と、この集電体の各角柱形中空部に充填された活物質と導電材と結着剤とを混合した合材とをそれぞれ有してなり、前記集電体は、前記合材の熱による膨張、収縮に応じて角柱形中空部の形状が変形するように構成されたリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のリチウム二次電池によれば、集電体は、前記合材の熱による膨張、収縮に対応して角柱形中空部の形状が変形するように構成されているため、充電に伴う合材の体積膨張時には各中空部がそれに追随して大きくなり、正極および負極にかかる物理的応力が緩和される。その結果、合材内の活物質と導電材との接触点が応力により破壊されることが無く(接触状態が維持され)、充放電サイクルを繰り返しても内部抵抗の上昇および容量低下が抑制され、長寿命化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のリチウム二次電池は、図1に示すように、正極Aおよび負極Bと、該正極Aおよび負極Bを電気的に絶縁するセパレータ2と、電解質とを備え、前記正極Aおよび負極Bは、複数の角柱形中空部が集積された構造の集電体3、6と、この集電体3、6の各角柱形中空部に充填された活物質と導電材と結着剤とを混合した合材とをそれぞれ有してなり、前記集電体3、6は、前記合材の熱による膨張、収縮に応じて角柱形中空部の形状が変形するように構成されたことを特徴とする。
つまり、正極および負極の集電体は、前記合材を保持するための変形可能な角柱形中空部を密に集積して構成されている。
なお、図1は、本発明の一例として挙げた基本的な構造の角型リチウム二次電池を示し、符合50は本発明の実施形態のリチウム二次電池、符合4および5は正極板および負極板、符合4a、4bは正極板4および負極板5からそれぞれ延出した正極端子および負極端子、符合7は樹脂製シートからなる電池容器を示している。
以下、本発明のリチウム二次電池の各構成要素について説明する。なお、本発明は以下の実施形態および実施例に限定されるものではない。
【0010】
(集電体)
図2は正極の集電体3を厚さ方向から見た状態を示す部分的な平面図である。集電体3は、複数枚(図2では5枚)の金属板11と、細長い複数枚の金属板11を重ね合わせた状態で相互に結合する複数の結合部12とを有し、複数の結合部12は等間隔で厚さ方向に平行に延び、対向する1対の金属板11、11間である一の段における結合部12が、隣接する他の段における隣接する結合部12、12間の中間に位置し、図3の状態の最外層の2枚の金属板11、11を図2の矢符a、b方向(平面方向)に引き離すことにより、複数の角柱形中空部13が形成されたものである。なお、負極については、正極とは異なる点を主に説明する。
【0011】
正極Aおよび負極Bの集電体3、6の金属板11の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス、チタン、銅、ニッケル等が挙げられるが、電気化学的安定性を考慮すると、正極用にはアルミニウムまたはアルミニウム合金、負極用には銅またはニッケルが好ましい。
金属板11の厚さとしては、10μmより薄いと物理的な構造を維持できず、また1mmより厚いと、一定サイズのリチウム二次電池における集電体3の中空部13の容積が減少し、中空部13への活物質の充填量が低下して電池容量が低下するため、10μm〜1mmが好ましい。
【0012】
上述のように構成された集積体3は、重ね合わせた金属板11、11同士を接着剤もしくは溶接により結合させて結合部12を形成することができる。この結合部12の幅と厚みは任意に設定可能であるが、例えば幅Wは1〜10mm、厚みTは1mm以下とすることができる。結合部12が接着剤からなる場合、その材料としては、化学的に安定し、適当な溶媒には溶解するが電解質には侵食されない熱可塑性樹脂が好ましく、例えば低融点ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂が挙げられる。
【0013】
図1に示す集電体3は平面方向から見た状態であり、金属板11の幅および中空部13の長さに相当する集電体3の厚さTは、対極までの距離が長くなると内部抵抗が上昇するため5mm以下が好ましく、1〜3mmがさらに好ましい。正極Aは、集電体3の角柱形中空部13の一方の開口をセパレータ2へ対向させ、他方の開口を正極板本体4へ対向させて配置されている。負極Bも同様である。
【0014】
次に、集電体3の角柱形中空部13の形状について説明する。
図2では結合部12を説明するために幅Wに比して厚みTを大きく図示しているため、集電体3の内方に位置する角柱形中空部13(2〜4層目の金属板11にて形成された角柱形中空部13)の平面視形状は8角形に見え、外方に位置する角柱形中空部13(1〜2層目および4〜5層目の金属板11にて形成された角柱形中空部13)は平面視7角形に見える。しかし、実際は結合部12の厚みTは上述のように小さいため、図4に示すように角柱形中空部13の平面視形状は、集電体3の内方に位置するものは6角形であり、外方に位置するものは5角形である。なお、図2および4では、角柱形中空部13に充填される合材を図示省略している。
【0015】
本発明において、平面視6角形の6角柱形中空部13は、その6つ内角のうち、対向する第1の内角の角度θ1と、対向する第2の内角θ2と、対向する第3の内角θ3とを有し、前記角度θ1と角度θ2は異なり、前記角度θ2と角度θ3は実質的に等しくなっている。
この6角柱形中空部13は、中空部13に合材が充填された状態において、第1の内角の角度θ1は、120°<θ1<180°または0°<θ1<120°を満たし、好ましくは120°<θ1<150°または90°<θ1<120°であり、さらに好ましくは120°<θ1<130°または110°<θ1<120°である。その理由を以下に説明する。
【0016】
図5は、6角柱形中空部13における第1の内角の角度θ1と中空部容積との関係を示すグラフであって、角度θ1が120°のときの中空部容積を1とし、角度θ1の変化による容積変化を表している。このグラフの結果は、下記の条件で試作した集電体に基いて得た結果である。
結合部12の厚みt:0.05mm
結合部12の幅W:1mm
集電体の幅:3mm
6角柱形中空部13の一辺(長辺)の長さL:1mm
角度θ1を変化させたときの中空部容積は、中空部13の断面積と集電体の幅との積によって算出することができる。中空部13の断面積は、接合部12の厚み部分に対応する四角形領域R1と、四角形領域R1を挟む両側の各台形領域を2つの直角三角形領域R2と1つの四角形領域R3にそれぞれ分割し、以下の式によって各領域R1〜R3を求め、それらの和によって算出することができる。
R1の断面積={2*cos(θ1/2)+1}*0.05
R2の断面積=sin(θ1/2)*cos(θ1/2)/2
R3の断面積=1*sin(θ1/2)
中空部の断面積=R1の断面積+4×(R2の断面積)+2×(R3の断面積)
なお、角度θ1が180°を超える6角柱形中空部も作製可能であるが、実質的にそのような6角柱形中空部を作製することは困難であるので図5では省略した。
【0017】
図5から、6角柱形中空部の場合、第1の内角の角度θ1が120°のとき最も容積が大きいことがわかる。したがって、角度θ1を120°よりも大きいかまたは小さくすれば、6角柱形中空部に充填された合材(特に活物質)が膨張しても、第1の内角の角度θ1が小さくなるか大きくなるように中空部の形状が変形することにより、中空部の容積が大きくなるので、中空部内部に充填された活物質内部に物理適応力がかかることはない。これに対し、第1の内角の角度θ1が120°の場合、合材の膨張しても中空部の容積はそれ以上大きくならないため、活物質内部に物理的応力がかかって活物質と導電材との接触点が破壊され、サイクル特性の劣化や電池寿命が短くなる。
一方、合材(特に活物質)に収縮が生じた場合には、第1の内角の角度θ1が大きくなるか小さくなることにより、充填された合材全体の収縮に応じて中空部の容積が減少するので中空部内部に充填された活物質内部に物理適応力がかかることはない。
【0018】
このように、本発明によれば、正極Aおよび負極Bの集電体3、6の各中空部13内に充填された合材の膨張、収縮によって生じる集電体3、6への応力が緩和されるため、活物質と導電材の接触点が応力により破壊されることが無く、充放電サイクルを繰り返しても内部抵抗が上昇したり容量が低下することのない長寿命のリチウム二次電池が得られる。
上述したように、集電体の6角柱形中空部13は、中空部13に合材が充填された状態において、第1の内角の角度θ1は、120°<θ1<180°または0°<θ1<120°であればよいが、電池容量をできるだけ大きくするためには中空部13の容積はできるだけ大きい方が好ましく、そのため120°<θ1<150°または90°<θ1<120°が好ましく、特に120°<θ1<130°または110°<θ1<120°が好ましい。
【0019】
また、集電体3の角柱形中空部13の角柱形の一辺の長さLは、特に限定されるものではないが、一辺の長さが5mm以上であると、中空部13に充填した活物質から集電体3までの距離が大きくなり、電極の内部抵抗上昇し易く電池の負荷特性が低下し易いため、5mmまでが好ましく、1〜3mmがさらに好ましい。
【0020】
(正極活物質)
正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属複合硫化物、リチウム遷移金属複合窒化物、リン酸リチウム遷移金属化合物などが使用できる。
【0021】
(負極活物質)
負極活物質としては、電気化学的にリチウムを挿入/脱離し得る材料が好ましい。高エネルギー密度電池を構成するためには、リチウムの挿入/脱離する電位が金属リチウムの析出/溶解電位に近いものが好ましい。その典型例は、粒子状(鱗片状、塊状、繊維状、ウィスカー状、球状、粉砕粒子状など)の天然もしくは人造黒鉛である。メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ粉末、等方性ピッチ粉末などを黒鉛化して得られる人造黒鉛を使用してもよい。また、非晶質炭素を表面に付着させた黒鉛粒子も使用できる。あるいはリチウム遷移金属酸化物やリチウム遷移金属窒化物、遷移金属酸化物や、酸化シリコン等も使用可能である。これらの中でも還元雰囲気での熱処理によって組成や構造が変化しにくいものが好ましく、具体的には炭素材料が好ましい。
【0022】
(導電材)
導電材としては黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、導電性金属酸化物等の化学的に安定なものが使用可能であり、必要であるならば複数の種類を混合して使用しても良い。合材中の導電材の混合比は、正極活物質または負極活物質100重量部に対して1〜50重量部とすることができるが、この範囲に限定されるものではない。
【0023】
(結着剤)
結着剤にはポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ポリマー等を用いることができる。合材中の結着剤の混合比は、正極活物質または負極活物質100重量部に対して1〜50重量部とすることができるが、この範囲に限定されるものではない。
【0024】
(正極板、負極板およびそれらの電極端子)
正極板4および正極端子4aの材料は正極用集電体3と同じ金属材料を用いることができ、負極板5および負極端子4bの材料は負極用集電体6と同じ金属材料を用いることができる。なお、正極および負極端子4a、4bは、予め正極および負極板4、5に溶接にて接続されていることが好ましい。また、正極および負極板4、5を省略し、正極および負極端子4a、4bを正極用集電体3および負極用集電体6に直接溶接してもよい。
【0025】
(電解質)
電解質には、例えば有機電解液、ゲル状電解質、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を用いることができ、中でも有機電解液が好ましい。有機電解液は、使用する正極および負極活物質との組み合わせに最適なものを選択することが好ましく、以下のような正極活物質/電解液(塩:溶媒)/負極活物質の組み合わせを挙げることができる。
LiFePO4/LiPF6・エチレンカーボネート+ジエチルカーボネート/黒鉛の組み合わせ、LiCoO2/LiPF6:プロピレンカーボネート+ジエチルカーボネート/Li−Cの組み合わせなど。
【0026】
(セパレータ)
セパレータ7の材質としては、電解質中に含まれる有機溶媒に対して溶解したり膨潤しないものが好ましく、具体的にはポリエステル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、エーテル系ポリマー、あるいはガラスなどの無機材料が挙げられ、具体的にはポリエチレンあるいはポリプロピレンから形成された多孔質材料あるいは不織布を用いることができる。セパレータ7の厚さとしては0.005〜0.1mmとすることができる。
【0027】
次に、リチウム二次電池の作製について説明する。
集電体3は、上述のように矢符a、b方向への金属板11、11間の引き延ばし幅を制御することにより、中空部13の第1の内角の角度θ1を制御することができる。あるいは、一旦金属板11、11間を引き延ばした後に、第1の内角が任意の角度になるように後から調整することもできる。なお、負極用集電体6も同様である。
【0028】
前記活物質、導電材および結着剤は、それぞれ所定量を混合して合材を作製し、合材は集電体3の全ての中空部13に隙間無く充填される。このとき、集電体3を正極板4上に載置し、上方に開口した中空部13に合材を充填してもよい。また、溶媒を添加してペースト状に合材を作製してもよい。合材のペースト化の溶媒としては、特に限定されないが、結着剤を溶解できるものが好ましく、例えばN−メチルピロリドン、アセトン、アルコール等の有機溶媒のほかに水も使用可能である。また、ペースト状の合材の粘度は、自重で中空部13から漏れ出ない粘度範囲が好ましく、例えば20〜100Pa・sである。
合材に溶媒を添加してペースト化した場合、合材を集電体3に担持させた後、溶媒を除去するために合材の乾燥を行うことが好ましい。乾燥は大気中で行っても、減圧下で行なってもよい。好ましくは、乾燥時間短縮のために80℃程度の温度下で乾燥させる。なお、負極用集電体6の各中空部13にも同様にして負極活物質と導電材と結着剤の合材が充填される。
【0029】
正極板4と重ねた正極用集電体3と負極板5に重ねた負極用集電体6とでセパレータ2を挟んで積層し電極群を作製する。図1の場合、正極と負極が1枚ずつの2層構造であるが、正極および負極の少なくとも一方が2枚以上異なる極性側に重なって3層以上積層されてもよい。
この様にして作製した電極群を、電池容器7の内部に挿入し、正極端子4aおよび負極端子4bを電池容器7の外部に導出する。その後に、正・負電極A、Bおよびセパレータ2を外気より遮断するために電池容器7を密閉しする。封口の方法は角型電池の場合は金属性の封口板と呼ばれる蓋を開口部に取りつけ、溶接を行うことにより密封できる。これらの方法以外に接着剤で密封したり、ガスケットなどを介してボルトなどで固定してもよい。また、金属箔に熱可塑性樹脂を貼り付けたラミネート膜にて封止してもよい。封入時に電解質注入用の開口部を設けておくこともできる。なお、円筒型の電池の場合、電池容器の開口部に樹脂製のパッキンを有する蓋をはめ込み、容器をかしめることによって密封を行うのが普通である。
その後、電池容器7に電解質を注入し、電池容器7の開口部を封止して二次電池の作製を完了する。なお、封止の前に通電し発生したガスを電池容器7内から取り除くのもよい。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
正極を下記の手順で作製した。
正極活物質として200gのLiFePO4と、導電材として10gのアセチレンブラックと、結着剤として10gのポリビニリデンフルオライドとを混合し、これにN-メチル-2-ピロリドンを150ml加えて混錬装置を用いて混錬を行って正極用合材を作製した。
使用した正極用集電体はアルミニウム製で、長さ10cm、幅10cm、厚さ1mmであり、中空部の一辺の長さは1.5mm、中空部の第1の内角の角度θ1は125°である。また、正極用集電体には幅5mm、厚さ100μmのアルミニウム製正極端子が予め溶接されている。この正極用集電体の各中空部内にペースト化した正極用合材を充填し、合材を充填した集電体を乾燥機中で60℃、12時間放置し溶媒を除去した。
【0031】
負極を下記の手順で作製した。
負極活物質として200gの天然黒鉛と、結着剤として10gのポリビニリデンフルオライドとを混合し、これにN-メチル-2-ピロリドンを150ml加えて混錬装置を用いて混錬を行って負極用合材を作製した。
使用した負極用集電体は材質が銅製である以外は、正極用集電体と同様の構成であり、この負極用集電体には幅5mm、厚さ100μmのニッケル製負極端子が予め溶接されている。この負極用集電体の各中空部内にペースト化した負極用合材を充填し、合材を充填した集電体を乾燥機中で60℃、12時間放置し溶媒を除去した。
【0032】
その後、水分を除去するために正極および負極を150℃、0.01MPa以下の圧力下で12時間乾燥を行った。
これ以降の作業は全て露点温度が-80℃以下のアルゴン雰囲気ドライボックス内にて行った。
厚さ50μmの多孔質ポリエチレン製のセパレータを介して正極と負極を対向させ、それを厚さ50μmのアルミニウム箔に厚さ50μmの低融点ポリエチレンフィルムを溶着してなるラミネートフィルム袋(電池容器)内に挿入し、ラミネートフィルム袋内に電解液を注入し開口部を熱溶着にて封止してリチウム二次電池を完成させた。なお、電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを容量比1:1で混合した溶媒に塩としてLiPF6を1.0mol/l溶解させたものを用いた。
【0033】
完成したリチウム二次電池を、電池の電圧が4.0Vになるまで1Aの定電流で充電を行い、それ以降は4.0Vの定電圧充電を2時間行って充電を完了させた。その後、1Aで電池電圧が2.5Vになるまで放電を行った。その時の放電容量をこの電池の初期容量とした。実施例1の初期容量は10.3Ahであった。
次に、電池の電圧が4.0Vになるまで5時間率の定電流で充電を行い、それ以降は4.0Vの定電圧充電を2時間行って充電を完了させ、5時間率で放電を行うことを1サイクルとし、これを100サイクル繰り返した。実施例1の100サイクル後の放電容量は9.8Ahであり、初期容量に対する容量比で示されるサイクル特性は95.2%であった。ここで5時間率とは、電池の定格容量に対して5時間で全容量を放電する電流値を意味する。
【0034】
(実施例2)
正極用集電体および負極用集電体の中空部の第1の内角の角度θ1を175°にしたこと以外は実施例1と同様の手順で実施例2のリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様の方法で実施例2の電池の初期容量と100サイクル後の放電容量を比較することで、サイクル特性を測定した。実施例2において、初期容量は10.5Ah、100サイクル後の放電容量は10.1Ah、サイクル特性は96.3%であった。
【0035】
(実施例3)
正極用集電体および負極用集電体の中空部の第1の内角の角度θ1を115°にしたこと以外は実施例1と同様の手順で実施例3のリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様の方法で実施例3の電池の初期容量と100サイクル後の放電容量を比較することで、サイクル特性を測定した。実施例3において、初期容量は10.9Ah、100サイクル後の放電容量は10.0Ah、サイクル特性は91.3%であった。
【0036】
(比較例1)
正極用集電体および負極用集電体の中空部の第1の内角の角度θ1を120°にしたこと以外は実施例1と同様の手順で比較例1のリチウム二次電池を作製し、実施例1と同様の方法で比較例1の電池の初期容量と100サイクル後の放電容量を比較することで、サイクル特性を測定した。比較例1において、初期容量は10.9Ah、100サイクル後の放電容量は7.1Ah、サイクル特性は65.3%であった。
【0037】
実施例1〜3及び比較例1のサイクル特性についてまとめたものを表1に示す。実施例1〜3の電池はサイクル特性も良好であることがわかる。これは充放電に伴う活物質の膨張収縮により生じる電極内部の応力が緩和され、活物質と導電材と集電体との接触が100サイクルを経過しても初期の状態を保っているためであると考えられる。
【0038】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のリチウム二次電池の一実施形態の全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明における集電体を説明する厚さ方向から見た図である。
【図3】図2の集電体を広げる前の状態を示す厚さ方向から見た図である。
【図4】図2の集電体の角柱形中空部の形状を説明する図である。
【図5】図2の集電体の角柱形中空部における第1の内角の角度と中空部容積との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
2 セパレータ
3 正極用集電体
4 正極板
4a 正極端子
5 負極板
5a 負極端子
6 負極用集電体
7 電池容器
12 結合部
13 角柱形中空部(6角柱形中空部)
A 正極
B 負極
L 角柱形中空部の一辺の長さ
T 集電体の厚さ
t 結合部の厚さ
w 結合部の幅
θ1 第1の内角の角度
θ2 第2の内角の角度
θ3 第3の内角の角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極と、該正極および負極を電気的に絶縁するセパレータと、電解質とを備え、前記正極および負極は、複数の角柱形中空部が集積された構造の集電体と、この集電体の各角柱形中空部に充填された活物質と導電材と結着剤とを混合した合材とをそれぞれ有してなり、前記集電体は、充放電時の前記合材の膨張、収縮に応じて角柱形中空部の形状が変形するように構成されたことを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項2】
前記複数の角柱形中空部は、6角柱形中空部を有し、前記6角柱形中空部における6つ内角のうち、対向する第1の内角の角度θ1と、対向する第2の内角θ2と、対向する第3の内角θ3とを有し、前記角度θ1と角度θ2は異なり、前記角度θ2と角度θ3は等しい請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記角度θ1は、120°<θ1<180°または0°<θ1<120°を満たす請求項2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記集電体が、複数枚の金属板と、前記複数枚の金属板を重ね合わせた状態で相互に結合する複数の結合部とを有し、
前記複数の結合部は等間隔で同一方向に延び、対向する1対の金属板間である一の段における結合部が、隣接する他の段における隣接する結合部間の中間に位置し、
最外層の2枚の金属板を引き離すことにより複数の角柱形中空部が形成された請求項1〜3のいずれか1つに記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記正極および負極は、それらの集電体の角柱形中空部の一方の開口を前記セパレータへ対向させて配置されている請求項4に記載のリチウム二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−299639(P2007−299639A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126603(P2006−126603)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】