説明

リチウム及びバナジウム酸化物の製造方法

本発明は、リチウム及びバナジウム酸化物の製造方法、及び過酸化水素を、リチウム前駆体の存在下で水性媒体中でV−αと、反応させることによって、前駆体ゲルを調製し、前記ゲルを酸化性雰囲気下で260℃〜580℃の範囲の温度で加熱処理することによって得られた製品に関する。式Li1+α(式中、0.1≦α≦0.25)の化合物は、二峰性分布を有し、第一区分の針の長さ(L)が10から50μmの範囲で、第二区分の針の長さ(L)が1〜10μmの範囲である、二峰正分布を有する針状形態粒子からなる。lが粒子の幅である場合、長さL及び厚みeは、それらの寸法は、4<L/l<100 及び 4<L/e<100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムバナジウム酸化物の製造方法、及び得られる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池中の活性陰極材料に用いられることが意図される材料に要求される主要な性質は、高い比エネルギー(平均のポテンシャルにより増加する容量の製品である)及び循環における長寿命である。材料Li1+α(式中、0.1≦α≦0.25)は、前記基準に合致し、多くの製造方法が先行技術において開示されている。
【0003】
特に、LiCO及びVからLi1+αが粉末形態で調整されることが知られている。
【0004】
Hammouら〔Electrochim. Acta, 13 (1988) 1719〕は、空気中で590℃で6時間、反応物質を反応させる、Li1+αの製造方法を開示している。しかし、この温度は融点に非常に近く、粉末焼結を引き起こし、複合電極を製造するために用いる前に粉砕する必要がある。
【0005】
米国特許第6136476号明細書には、粒子サイズを小さくし、粒子サイズ分布を均一にすることを目的とし、種々の方法を用いて反応物質を混合した後、反応物質を融点以下の温度、好ましくは350℃〜550℃に加熱する方法が開示されている。
【0006】
Chaloner-Giilら〔J. Electrohem. Soc., 147 (10), 3575-3578, (2000)〕は、連続工程:すなわち、反応物質混合物を粉砕し;空気中で585℃に16時間加熱し;冷却し、再粉砕し;585℃で16時間、第二の加熱をし、LiSと反応させることを含む方法を開示している。
【0007】
米国特許第5520903号明細書には、反応物質を粉砕して反応物質を混合し、粒子サイズを小さくし、混合物を圧縮して圧縮粉末を形成し、次いで圧縮混合物を580〜585℃の温度で加熱することを含む方法が開示されている。この場合、得られる生成物は、電極材料に用いられる前に粉砕する必要のある、共に結合した単結晶粒子の凝集体である。正直なところ、粉砕は遊離の粒子を与えるが、棒状形態単結晶形態の減少を引き起こし、粉砕された多結晶粒子が得られる。
【0008】
仏国第2831715号明細書には、1.5未満の密度及び正確な範囲内の粒子サイズを与える条件下で、化学量論的割合で前駆体をバウダーブレンドし、565℃〜585℃の温度で加熱し、30分〜10時間維持し、次いで得られた粉末を脱凝集することを含む方法が開示されている。
【0009】
一般に、Li1+αのを製造するための上記方法は、高温加熱処理のため冗長であり、粒子が相対的に粗く、これはリチウム電池用の正電極材料として用いるのに不都合である。
【0010】
ゲル化した前駆体を用いる他の方法も研究されている。
【0011】
G. Pistoiaら〔J. Electrochem. Soc., 137, 2365, (1990)〕は、α−VをLiOH水溶液に溶解し、窒素雰囲気下で50℃に加熱することにより、Li1+α(0.1≦α≦0.25)のゲル化前駆体を製造する方法を教示している。
【0012】
Jinggang Xieら〔Mat. Letters, 57, 2682, (2003〕LiOH・HO粉末を、予めバナジン酸の重縮合により製造されたVゲルに加えることにより、LiVゲルを製造する方法を教示している。H/Naイオン交換カラムに、メタバナジン酸ナトリウム(NaVo)溶液を通過させることにより、酸それ自体が得られる。完全な工程は、面倒で高価なイオン交換樹脂の使用を伴い、数10時間を超えて実施される、多くの工程を含む。
【0013】
ゲル化前駆体からリチウムバナジウム酸化物を製造する種々の方法は、多くの工程を含み、そのいくつかは面倒である。更に、用いられる前駆体は、しばしば高価であり、それらの使用は、特にそれらの毒性のために扱いにくい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、簡単かつ迅速に、リチウムバナジウム酸化物Li1+αを製造する方法、及び前記方法により得られる製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の方法は、水性媒体中で、リチウム前駆体の存在下に過酸化水素をα−Vと反応させることにより前駆体ゲルを調製し、次いで前記ゲルを酸化性雰囲気中で260℃〜580℃の温度で加熱処理することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
リチウム前駆体は、LiOH・HO、LiCl、LiNO、又は例えば、アセチルアセトネートリチウム、酢酸リチウム、ステアリン酸リチウム、ギ酸リチウム、シュウ酸リチウム、クエン酸リチウム、乳酸リチウム、酒石酸リチウム及びピルビン酸リチウムから選択されるカルボン酸のリチウム塩から選択される。カルボン酸塩の中で、加熱処理の際のLi1+αの減少を回避するため、そのアニオンが短鎖を有する塩が好ましい。
【0017】
リチウム前駆体は、反応媒体に、粉末形態で、又は水溶液の形態で導入される。それは、α−Vと同時に過酸化物水溶液に導入されてもよい。それは、またα−Vの添加後に、すなわちゲルの形成中であるが、ゲル化終了前に過酸化物水溶液に導入されてもよい。ゲル形成の開始は、α−Vを過酸化物溶液に添加した3分後に観察される。ゲルは、約30分間熟成した後に完全に形成される。
【0018】
リチウム前駆体は、前もって粉砕せずに用いることができる市販の製品であってもよい。
【0019】
加熱処理の時間は約10分〜約10時間である。該時間が10分未満であると、最終化合物中に多少の残留水が残存する。10時間の時間はLi1+α粒子の最大サイズを得るのに十分である。
【0020】
反応媒体中の各Li前駆体及びα−Vの量は、好ましくは以下の通りである。
− 0.16モル/L<〔Li〕<0.55モル/L;
− 0.22モル/L<〔V〕<0.75モル/L;
− 1.15<〔V〕/〔Li〕<1.5。
【0021】
反応媒体中の過酸化水素濃度は10容量%〜50容量%である。
【0022】
〔V〕/〔Li〕の比が前記範囲であると、LiVのみを含むゲルが得られるが、過剰のV又は過剰のLi前駆体は、V又はLiVOのいずれかを更に含むゲルを与える。過剰に高濃度の反応物質は沸騰を引き起こし、過剰に低濃度のは沈殿を与えるかゲル化しない。
【0023】
本発明の方法によって得られる化合物は、式Li1+α(0.1≦α≦0.25)を満たし、二峰分布を有する針状粒子からなり、第一形態の針が10〜50μmの長さLを有し、第二形態の針が1〜10μmの長さLを有している。lが粒子の幅である場合、その長さL及びその厚みtは、これらの次元は、4<L/l<100及び4<L/t<100である。本発明の方法は、Li1+αを純粋な形態で得ることを可能にする。X−線回折分析により、不純物、特にVの痕跡がないことが確認される。
【0024】
本発明のLi1+α化合物は、本発明の他の主題を構成する、蓄電池の正電極の活性物質として有利に用いられる。
【0025】
1つの特定の実施態様において、本発明の正電極は、本発明の方法によって得られた、活性物質としてのLi1+α化合物;電子伝導を与える物質;機械的完全性を与えるバインダー;及び任意に、イオン伝導を与える化合物を含む混合物によって形成される。
【0026】
正電極の混合物中の活性物質の含有量は、好ましくは40〜90重量%であり、更に好ましくは80〜90重量%である。電子伝導を与える物質の含有量は、好ましくは5〜20重量%であり、特には10〜15重量%である。バインダーの含有量は、好ましくは5〜15重量%である。イオン伝導を与える化合物の含有量は、好ましくは15重量%未満であり、0であってもよい。
【0027】
正電極の混合物用バインダーは、非溶剤和ポリマーによって形成されてもよい。非溶剤和ポリマーは、ビニリデンフルオライドホモポリマー及びコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー、テトラフルオロエチレンホモポリマー及びコポリマー、N−ビニルピロリドンホモポリマー及びコポリマー、アクリロニトリルホモポリマー及びコポリマー、メタクリロニトリルホモポリマー及びコポリマーから選択される。ポリビニリデンフルオライドが特に好ましい。非溶剤和ポリマーは、イオン性官能基を輸送することができる。このようなポリマーの例としては、特定のものが、Nafion(登録商標)の名称で市販されているポリパーフルオロエーテルスルホネート塩、及びポリスチレンスルホネート塩が挙げられる。
【0028】
正電極の混合物用バインダーは、更に溶剤和ポリマーであってもよい。例えば、それは、ポリエチレンオキサイドをベースとし、ネットワークを形成しているか又は形成しなくていもよい、直線、くし型又はブロック構造のポリエーテル;エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド又はアリルグリシジルエーテル単位を含むコポリマー;ポリホスファゼン;イソシアネートによって架橋されたポリエチレングリコールをベースとする架橋されたネットワーク;オキシエチレン/エピクロロヒドリンコポリマー;重縮合によって得られたネットワーク、及び架橋性基の取り込みを許容する輸送基(carrying group)から選択される。
【0029】
正電極の混合物用バインダーは、更に溶剤和ポリマー/非溶剤和ポリマー配合物であってもよい。
【0030】
正電極を構成する混合物に、1以上の非プロトン性極性化合物を加えてもよい。これらの化合物は、直鎖状又は環状炭酸塩、直鎖状又は環状エーテル、直鎖状又は環状エステル、直鎖状又は環状スルホン、スルファミド及びニトリルから選択される。
【0031】
正電極を構成する混合物中の電子伝導特性を与える化合物は、好ましくは、高電位において電解質の酸化を触媒しないカーボンブラックである。多くの市販のカーボンブラックがこの条件を満たす。特に、ケメタルによって販売されている、化合物Ensagri Super S(登録商標)が挙げられる。
【0032】
正電極を構成する混合物中のイオン伝導を与える化合物は、好ましくはリチウム塩、有利には、LiClO、LiPF、LiAsF、LiBF、LiRSO、LiCHSO、リチウムビス(パーフルオロアルキル)スルホンイミド、リチウムビス(パーフルオロスルホニル)メチド及びリチウムトリス(パーフルオロスルホニル)メチドから選択される。
【0033】
本発明の複合性正電極は、得られる混合物をコレクタとして供給される金属ディスク(例えばアルミニウムディスク)上で広げることにより、活性物質と、適当な溶剤中のバインダー溶液中のカーボンブラックとを混合し、次いで溶剤を蒸発させることによって製造される。前記溶剤は用いられるバインダーに従って選択される。
【0034】
本発明の正電極は、その構成成分を押出成型することによっても製造される。
【0035】
このようにして形成された電極は、溶剤に溶解されたリチウム塩を含む電解質で分離された正電極及び負電極を含む電池中で用いることができる。このような電池の動作は、電極間の電解質を通るリチウムイオンの可逆的な流れによって影響される。本発明の主題の1つは、電解質が溶剤に溶解されたリチウム塩を含む電池であって、正電極が、本発明の方法によって製造されたLi1+α化合物を活性物質として含む電池である。電池の組み立ての際に、Li1+α酸化物(0.1≦α≦0.25)が正電極を形成するために用いられ、このようにして形成された電池は充電された状態にある。
【0036】
本発明の電池において、電解質は、溶剤に溶解された、少なくとも1種のリチウム塩を含む。塩の例としては、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiRSO、LiCHSO、LiN(RSO、LiC(RSO、及びLiCF(RSOが挙げられる(式中、Rは、1〜8個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基、又はフッ素原子を表す。)
【0037】
電解質の溶剤は、直鎖又は環状炭酸塩、直鎖又は環状エーテル、直鎖又は環状エステル、直鎖又は環状スルホン、スルファミド及びニトリルから選択される、1以上の非プロトン性極性化合物からなる。溶剤は、好ましくは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルエチルカーボネートから選択される、少なくとも2種の炭酸塩からなる。
【0038】
電解質の溶剤は、更に溶媒和ポリマーを含んでもよい。溶媒和ポリマーの例としては、ポリエチレンオキサイドをベースとし、ネットワークを形成しているか、又は形成しなくてもよい、直鎖、くし型又はブロック構造のポリエーテル;エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド又はアリルグリシジルエーテル単位を含むコポリマー;ポリホスファゼン;イソシアネートによって架橋されたポリエチレングリコールをベースとする、架橋されたネットワーク;仏国97/12952号明細書に開示されたようなオキシエチレン/エピクロロヒドリンコポリマー;及び重縮合によって得られたネットワーク、及び架橋性基の取り込みを許容する輸送基(carrying group)から選択される。また、特定のブロックがレドックス特性を有する官能基を輸送する、ブロックコポリマーが挙げられる。
【0039】
電解質の溶剤は、更に、前述した非プロトン性極性化合物及び溶媒和ポリマーから選択される、極性非プロトン性液状化合物の混合物であってもよい。極性非プロトン性化合物の含有量の低い可塑化電極、又は極性非プロトン性化合物の含有量の高いゲル化電極を有することが好ましいかどうかに依存し、液状溶剤を、2〜98容量%含んでいてもよい。電解質のポリマー溶剤が、イオン性官能基を輸送する場合、リチウム塩は任意である。
【0040】
また、電解質の溶剤は、前述したような極性非プロトン性化合物、又は前述したような溶媒和ポリマー、及び硫黄、酸素、窒素及びフッ素から選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む単位を含有する非溶媒和極性ポリマーの混合物であってもよい。このような非溶媒和ポリマーは、アクリロニトリルホモポリマー及びコポリマー、ビニリデンフルオライドホモポリマー及びコポリマー、及びN−ビニルピロリドンホモポリマー及びコポリマーから選択されてもよい。非溶媒和ポリマーは、更にイオン性置換基、及び特にポリパーフルオロエーテルスルホネート塩(例えば前述したNafion(登録商標))、又はポリスチレンスルホネート塩であってもよい。
【0041】
他の実施態様においては、本発明の電池の電解質は、通常、「Lisicon」物質と呼ばれる化合物、すなわち、LiXO−LiYO固溶体(X=Si又はGe又はTi;Y=P又はAs又はV)、LiXO−LiAO固溶体(X=Si又はGe又はTi;A=Mo又はS)、LiXO−LiZO固溶体(X=Si又はGe又はTi;Z=Al又はGa又はCr)、LiXO−LiBXO固溶体(X=Si又はGe又はTi;B=Ca又はZn)、LiO−GeO−P、LiO−SiO−P、LiO−B−LiSO、LiF−LiS−P、LiO−GeO−V、又はLiO−P−PON固溶体から選択される無機伝導固体であってもよい。
【0042】
もちろん、本発明の電池の電解質は、更にこのタイプの材料として、通常に用いられる添加物、特に可塑剤、充填材、他の塩等を含んでいてもよい。
【0043】
電池の負電極は、以下の合金:種々のマトリックス、特に酸素−含有マトリックス又は金属(例えばCu、Ni、Fe、Fe−C)マトリックス中の、β−LiAl、γ−LiAl、Li−Pb(例えばLiPb)、Li−Cd−Pb、Li−Sn、Li−Sn−Cd、Li−Sn、又はLi−Al−Mnから選択される、リチウム金属又はリチウム合金からなってもよい。
【0044】
電池の負電極は、更にバインダー、及び低酸化還元電位で可逆的にリチウムイオンを挿入することのできる物質(以下、挿入物質と呼ぶ)を含有する、予備的工程の間にリチウム化される混合物からなっていてもよい。挿入物質は、天然又は合成の炭素含有物質から選択される。これらの炭素含有物質は、例えば、石油コークス、グラファイト、グラファイトウィスカー、炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチコークス又はニードルコークスから選択される。挿入物質は、更に、例えばLiMoO、LiWO、LiFe、LiTi12及びLiTiO等の酸化物、又は例えばLiMo及びLiTiS等のスルフィド、又は酸硫化物であってもよい。また、非晶質バナジン酸塩(例えばLiNiVO)、窒化物(例えばLi2.6−XCo0.4N、Li2+XFeN及びLi7+XMnN)、ホスフィド(例えばLi9−XVP)、ひ化物(例えばLi9−XVAs)及び可逆的な分解を受ける酸化物(例えばCoO、CuO、CuO)等の、低電位で可逆的にリチウムを貯蔵するための化合物を用いることが可能である。前記バインダーは、負電極の動作範囲において電気化学的に安定である、有機バインダーである。具体例として、ポリビニリデンフルオライドホモポリマー、又はエチレン−プロピレン−ジエンコポリマーが挙げられる。ポリビニリデンフルオライドが特に好ましい。複合性負電極は、炭素含有化合物を、非プロトン性極性溶剤中のバインダー溶液に導入し、得られた混合物をコレクタとして供給される銅ディスクに広げ、次いで、窒素雰囲気下、加熱して溶剤を蒸発させることによって製造される。
【0045】
固体電解質を含む本発明の電池は、それぞれ、本発明の正電極の材料及びそのカレントコレクタ、固体電解質及び負電極、及びおそらくそのカレントコレクタを含む、層の連続の形態をとっていてもよい。
【0046】
液体電解質を含む本発明の電池は、それぞれ、本発明の正電極の材料及びそのカレントコレクタ、液体電解質を吸収するセパレータ、及び負電極を構成する材料、及びおそらくそのカレントコレクタを含む、層の連続の形態をとっていてもよい。
【0047】
本発明を以下の実施例によってより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
(LiOH・HOからLi1+αの調製)
1リットルビーカー中の25mlの30%H水溶液に、粉末形態のLiOH・HO及びα−Vを加えることにより、Li1+α化合物を調製した。
【0049】
ゲル化前駆体の調製工程の際に、α−V及びLiOH・HOを加える時期、及びモル/lで表したV溶液の濃度〔V〕を変化させることによって、いくつかの試料を調製した。種々の試みの特定の条件を以下の表に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
試料1bは、形成工程におけるゲルへのLiOH・HOの添加に対応する。試料1cは、既に形成されたゲルへのLiOH・HOの添加に対応する。
【0052】
得られた各ゲル試料について、580℃の空気中での10時間の加熱処理を行った。図1は、JEOL JSM 6400F走査型電子顕微鏡を用いて得られた、アニーリング後の試料1bの顕微鏡写真を示す。それは、得られた生成物が、二峰性分布を有する次元の針状結晶体を含むことを示している。
【0053】
実施例2
3種類の試料を調製するために、それぞれ、LiOH・HOをLiCl(試料2a)、LiNO(試料2b)及び酢酸リチウム(試料2c)に置換し、実施例1を繰り返した。
【0054】
リチウム塩を3分後に加えるために、0.22モル/lのVを含む30容量%過酸化物水溶液を用いた。各ケースにおいて、約30分後に、LiVゲルが得られた。
【0055】
各ゲル化前駆体試料に対して、実施例1と同様の加熱処理を行った。
【0056】
実施例3
実施例1及び2における加熱処理後に得られたLiVゲルを、正電極のための活性物質として用い、研究室において、以下のタイプのSwagelok電池の性能特性を室温で操作して試験した。
Li/(EC+DMC+LiPF)液体電解質/(Li1+X+炭素+バインダー)
【0057】
種々の試料について得られた結果を図2に示した。
【0058】
既に形成されたゲルに対するリチウム前駆体の遅れた添加によるJinggang Xie製品に対応するカーブ1cは最悪の結果を示す−サイクリングの間、製品の容量は変化しないままであるが、約130mAh/gの低レベルのままである。
【0059】
カーブ2aは、本発明の方法によって得られた化合物に対応し、サイクリングにおいて安定でない。
【0060】
提案された方法によって調製された化合物から得られた、カーブ1a、1b、2a及び2bの場合において、配送された容量は同じであり、それぞれ3.7V及び2Vの間の1Li/2.5時間及び1Li/5時間の放電/荷電の下において約180mAh/gであることに注目すべきである。これらの結果は、Pistonia技術によって得られた結果と同じである(カーブ3)。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】走査型電子顕微鏡によるアニーリング後の試料の顕微鏡写真を示す。
【図2】実施例3における試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中で、リチウム前駆体の存在下に過酸化水素をα−Vと反応させることにより前駆体ゲルを調製し、ついで、前記ゲルを酸化性雰囲気中で260℃〜580℃の温度で加熱処理することを特徴とするLi1+α化合物の製造方法。
【請求項2】
前記リチウム前駆体が、LiOH・HO、LiCl、LiNO又はカルボン酸のリチウム塩から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カルボン酸のリチウム塩が、アセチルアセトネートリチウム、酢酸リチウム、ステアリン酸リチウム、ギ酸リチウム及びシュウ酸リチウムから選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リチウム前駆体が、粉末形態で反応媒体に導入されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記リチウム前駆体が、α−Vと同時に水溶液中に導入されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
α−Vの添加後、ゲル化が終了する前に、前記リチウム前駆体が反応媒体に導入されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱処理の時間が10分〜10時間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
反応媒体中のLi前駆体及びα−Vそれぞれの量が、好ましくは以下の通りであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
・0.16モル/L<〔Li〕<0.55モル/L;
・0.22モル/L<〔V〕<0.75モル/L;
・1.15<〔V〕/〔Li〕<1.5。
【請求項9】
反応媒体中の過酸化水素濃度が10容量%〜50容量%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
二峰性分布を有し、幅l、長さL及び厚みtが以下の通りであることを特徴とする針状粒子からなる、式Li1+α(式中、0.1<α<0.25)の化合物。
・第一形態の針が10〜50μmの長さLを有する;
・第二形態の針が1〜10μmの長さLを有する;
・4<L/l<100 及び 4<L/t<100。
【請求項11】
活性物質として、請求項10に記載の式Li1+α化合物を含むことを特徴とするリチウム電池用正電極。
【請求項12】
更に、
・機械的完全性を与えるバインダー:
・電子伝導を与える物質;および
・任意に、イオン伝導を与える化合物
を含むことを特徴とする請求項11に記載の正電極。
【請求項13】
・活性物質の含有量が40〜90重量%であり;
・バインダーの含有量が5〜15重量%であり;
・電子伝導を与える物質の含有量が5〜20重量%であり;
・イオン伝導を与える化合物の含有量が15重量%未満であることを特徴とする請求項12に記載の正電極。
【請求項14】
電子伝導を与える物質がカーボンブラックであることを特徴とする請求項12に記載の正電極。
【請求項15】
前記バインダーが、非溶剤和ポリマー、溶剤和ポリマー又は2者の混合物によって形成されることを特徴とする請求項12に記載の電極。
【請求項16】
前記バインダーが、更に非プロトン性極性化合物を含むことを特徴とする請求項15に記載の電極。
【請求項17】
前記イオン伝導を与える化合物が、LiClO、LiPF、LiAsF、LiBF、LiRSO、LiCHSO、リチウムビス(パーフルオロアルキル)スルホンイミド、リチウムビス(パーフルオロスルホニル)メチド及びリチウムトリス(パーフルオロスルホニル)メチドから選択されるリチウム塩であることを特徴とする請求項12に記載の電極。
【請求項18】
溶剤に溶解されたリチウム塩を含む、電解質によって分離された正電極及び負電極を含む電池であって、
前記正電極が請求項11〜17のいずれか1項に記載の電極であることを特徴とする電池。

【図2】
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【図1】
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【公表番号】特表2007−524563(P2007−524563A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553615(P2006−553615)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000357
【国際公開番号】WO2005/090237
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(505337065)
【出願人】(503434139)ソントル ナショナル ド ラ ルシェルシュ ションティフィーク (20)
【Fターム(参考)】