説明

リニアアクチュエータ

【課題】往復駆動源による往復運動の一方向運動を累積させて直動運動を作り出す従来のリニアアクチュェータでは、外力が作用する方向に駆動しようとした時に外力によって勝手に出力軸が動いてしまい、正確な位置決めをすることが困難であった。また、その楔契合部は、点接触により接触面圧が大きく耐久上のネックになり易く、線接触により面圧低減を図ると部品形状が複雑になり低コスト化を阻害するという問題があった。
【解決手段】中間出力軸とこれによって駆動される最終出力軸とを設け、往復駆動源によって楔契合を介して中間出力軸を直動駆動し、その直動運動によって最終出力軸をロックしていた別の楔係合を解除したのちに中間出力軸で最終出力軸を駆動する構成とする。また、楔契合を構成する部品の形状を工夫して、全て回転体形状としながら互いに線接触を可能としたり、線接触の長さを大きくしたりした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用を初めとする各種機器の駆動源として活用されるリニアアクチュエータに係り、特に、軸方向の前後に駆動力を発生する往復駆動源で発生させた微小振幅の往復運動の一方向運動を累積させて直動運動を作り出すリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の変速ギアの組み合わせを切換えるためのシフトレバーを人手に代わって電動で駆動する自動変速装置(自動MT)や、エンジンのバルブのリフト量や開口期間を運転状態に応じて最適な状態にコントロールする可変動弁装置などの機器は、自動車の快適性向上と燃費改善の両立を実現するものであり、今後利用の拡大が期待されている。モータなどの回転駆動源により連続的に所定の動作を繰り返す他の一般的な機械とは異なり、それらの機器は周囲の状況に応じて最適位置に直接制御されるものであり、回転アクチュエータに代わって直動運動を出力とするリニアアクチュエータによって間欠的に駆動される場合が多い。
【0003】
したがって、前述の機器全体の性能がそれを駆動するリニアアクチュエータに支配されることになる。例えば、高速で応答するリニアアクチュエータがあればこれを用いた機器も高速で機能することが出来、小型高推力のリニアアクチュエータがあればこれを組み込んだ機器全体もコンパクトにまとめることが出来る。自動車において刻々変化する車速やエンジン負荷などの運転状況の急変に対して、変速比やバルブ動作などの制御対象の制御遅れを最小にして常に最適な状態に維持するには、特に前記の高速応答という特性が重要である。
【0004】
リニアアクチュエータとしては、従来、モータの回転運動からボールねじやウォームギアによって直動運動を作り出す構成のものが用いられてきたが、限られたモータトルクで直動の大推力を発生させるためには、モータを高速で回して出力を確保し、これを直動運動に変換する段階で減速して大推力を発生させるという考え方がとられている。したがって、直動の高速化を図るにはモータの高速回転化が必至となる。一方、リニアアクチュエータの高速性は、静止状態から所定のストロークだけ動くのに要する時間の短さで評価される。これは、従来のモータ駆動によるリニアアクチュエータでは、回転系を短時間で高速回転状態にする必要があるため、モータの出力が回転系の運動エネルギを増大させるのに消費されてしまうことを示している。言い換えると、リニアアクチュエータの始動時に大きな慣性抵抗が作用していると言える。従来タイプのリニアアクチュエータではこの慣性抵抗が高速化の障壁になると考えられる。
【0005】
この高速化の障壁を回避する手段としては、磁歪素子や電磁石を用いて軸方向の前後に駆動力を発生する往復駆動源によって発生させた微小振幅の往復運動から一方向運動のみを累積させて直動運動を作り出すリニアアクチュエータが従来知られている。一般に、往復駆動源は微小な振幅しか得られないものの大きな推力を発生させることが出来るので、高速で往復運動させた後に減速して推力を拡大させる必要がなく、慣性抵抗が小さくなることが期待できる。
【0006】
それらの事例として、特許文献1に記載されているように、一方の軸方向相対運動のみを許容する楔機構を用いて直動運動を発生させるものがある。これは、磁歪素子による微小な振幅の往復運動を行う往復運動部材を有し、これと直動運動を行う出力部材との間に一方の軸方向相対運動のみを許容する第1の楔機構を配し、更に前記出力部材と固定されたフレーム部材との間に一方の軸方向相対運動のみを許容する第2の楔機構を配し、その楔機構の組み合わせで往復運動の一方向運動を累積させて直動運動を発生させるものとして開示されている。この構成における楔機構は、駆動したい方向への出力部材の直動を許容し、駆動したい方向と逆方向への直動を阻止するものであり、出力部材を外力に抗して駆動する場合には、往復運動部材の微小振幅に対応した刻みの微小ストロークを累積させて直動運動を作り出すことが出来る。
【0007】
一方、特許文献2には、モータの回転運動からボールねじによって直動運動を作り出す構成の従来のリニアアクチュエータ本体部に、リニアクラッチと称される機構を組み合わせたものが開示されている。リニアクラッチは、出力部材に作用する外力で出力部材が勝手に直動運動してしまうのを防止する機能を持っているものである。特許文献2では、外力の作用している出力部材をある制卸位置に静止させておくために前記の機能を活用し、その間のモータ負荷を緩和しモータ発熱や消費電力増大を回避することを目的としている。このリニアクラッチは、出力部材を外力の作用する方向に駆動する場合に外力によって出力部材が勝手に直動運動してしまうのを防止する機能も有していると推定される。
【特許文献1】特開2005−33978号公報
【特許文献2】特開2007−32703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術によっては、リニアアクチュエータにより外力の作用している方向に出力軸を駆動する際に、外力の大きさによっては出力軸が勝手に直動運動してしまい、正確な位置制御ができない。また、特許文献2に記載の技術によっても、次に説明する理由でアクチュェータ本体部自体の正確な位置制御が困難となり、やはり外力の作用している方向に出力軸を駆動する際の正確な位置制御ができない。
【0009】
即ち、特許文献2に記載の構成において、外力の作用している方向に出力軸の駆動を開始する際には、アクチュエータ本体部の直動の駆動力によって、まずリニアクラッチ部の楔係合を解除する必要がある。出力軸には楔部材との接触部より外力をロックするためにその外力に見合った大きな摩擦力が作用していなければならず、楔部材は出力軸と外側の固定部材であるガイド管に大きな接触力で挟まれている筈である。したがって、最初にリニアクラッチ部の楔係合を解除するには、前記の大きな接触力で挟まれた楔部材を摩擦抵抗に逆らって押し出してやらねばならず、アクチュエータ本体部のモータは大きなトルクを発生して大きな直動運動の駆動力を発生させなければならない。ところが、これによって楔係合が解除されると同時に出力軸を外力の作用している方向に駆動するための駆動力は必要なくなり、次の瞬間にはアクチュエータ本体部の駆動力が過大となって大きな速度で直動運動を開始する。そのため、小さな距離だけ直動運動させたくても、モータトルクを減少させて再びリニアクラッチで静止させるまでの間に、大きな距離を直動運動してしまうことが避けられない。すなわち、制御位置の分解能が粗くなってしまい、アクチュエータ本体部自体の正確な位置制御が困難となることで、やはり外力の作用している方向への出力軸の正確な位置制御ができなくなる。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、まず、これ等の従来のリニアアクチュエータ構成に共通している外力が作用する方向へ出力軸を駆動して正確な位置決めを行うことが困難であるという点であり、本発明はその正確な位置決めを実現できる構成を提供することを目的としている。
【0011】
次に、特許文献2の「磁歪式アクチュエータ」に用いられている第1の楔機構や第2の楔機構、及び、特許文献1の「電動リニアアクチュエータ」に用いられているリニアクラッチは、楔部材として球体を用いている場合には楔係合時の部品間の接触形態が点接触となって大きなヘルツ応力が発生する構成となっており、楔部材としてローラを用いた場合には楔部材を介して楔契合する内外周の部品は多角柱や多角錐形状となって製造しにくい形状となっている。
【0012】
本発明が解決しようとする次の課題は、前記の従来の楔機構においてはヘルツ応力の増大による耐久性低下と部品形状の制約による製造コストの上昇のいずれかが避けられないという点であり、本発明はヘルツ応力の低減と部品形状の単純化により耐久性向上と製造コストの低減を同時に実現できる楔機構を提供することを目的としている。
【0013】
つまり本発明は、その楔機構を用いてリニアアクチュエータを構成し、外力が作用する方向へ出力軸を駆動しても正確な位置決めを実現できると同時に、耐久性に優れ低コストでもあるリニアアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記課題を解決するため、第1に、往復駆動源と、これにより往復運動を行う往復運動部材と、該往復運動部材から駆動力を与えられて軸方向に移動する中間出力軸と、前記往復運動部材及び前記中間出力軸の間に構成された第一楔結合機構部と、前記中間出力軸を介して駆動力を与えられ軸方向に移動する最終出力軸と、該最終出力軸及び固定部材の間に構成された第二楔係合機構部とを有し、前記第二楔係合機構部は、前記最終出力軸に対する前記中間出力軸の相対的な微少変位を許容し、該最終出力軸に対する中間出力軸の相対的な微少変位によって前記最終出力軸が前記固定部材に対して前記相対的微少変位方向に移動可能となる構成であることを特徴とする。
【0015】
この請求項1の発明によると、最終出力軸に対する中間出力軸の軸方向相対変位によって第二楔係合機構における一方の楔係合が阻止されてその楔係合が解除される。中間出力軸の相対変位で解除する構成例としては、中間出力軸で直接楔部材を楔係合状態から押し出す構成が考えられる。その場合、中間出力軸の変位によって楔部材が押し出されて解除される楔係合は、その時の中間出力軸の変位方向に向かって楔部材周囲の空間の半径方向寸法が大きくなる楔係合である。したがって、その楔係合は、最終出力軸が直動部材の変位方向に移動するのをロックしていた楔係合でもある。すなわち、請求項1の発明によれば、第一楔係合機構を介して中間出力軸を駆動すると、その方向のロックが解除されて最終出力軸が同方向に移動できる状態となる。ここまでは、最終出力軸に作用している外力の方向が前記中間出力軸の駆動方向と同じ方向であっても反対方向であっても共通である。この先の動作を異なる外力の方向毎に説明する。
【0016】
まず、最終出力軸に作用している外力の方向が中間出力軸の駆動方向と反対の方向の場合を考える。この場合、ロックが解除されて最終出力軸が移動出来るようになった方向と逆方向に外力が作用しており、ロック解除直後の最終出力軸は第二楔係合機構における他の一方の楔係合によって外力方向の変位を阻止されて動かない。その後に中間出力軸が第一楔係合機構部を介して更に駆動されて最終出力軸に接触すると、中間出力軸が最終出力軸を押し、外力に逆らってこれを駆動する。両者は一体で事前にロックが解除されている方向に変位し、中間出力軸の位置決め精度と同じ精度で出力軸を位置決めすることが出来る。
【0017】
次に、出力軸に作用している外力の方向が中間出力軸の駆動方向と同じ方向の場合を考える。この場合、最終出力軸の移動に対するロックが解除された方向に外力が作用しているので、最終出力軸は中間出力軸に駆動されなくても外力によってその方向に移動する。しかし、この最終出力軸の移動によって中間出力軸はロックを解除した時と逆方向に相対変位することになるので、一度解除されたロックが再び作用するようになる。この結果、最終出力軸はロックを解除する際の中間出力軸変位量に対応した微少量だけ外力方向に移動し、再びロックされて静止する。すなわち、最終出力軸は中間出力軸を介して往復駆動源に駆動されるのではないが、その変位は中間出力軸の変位に連動し、これと無関係に勝手に変位することは乃至たがつて、往復駆動源によって駆動される中間出力軸の位置決め精度で最終出力軸の位置決めを行うことができる。本発明における中間出力軸は、往復駆動源の振幅に応じた微小軸方向変位を累積させて直動運動を作るので、前記微小軸方向変位を分解能とした位置決めを行うことができる。したがって、往復駆動源の振幅を十分小さくすることで外力が作用する方向に出力軸を高精度で位置決めすることが出来る。
【0018】
結局、請求項1の発明によれば、往復駆動装置と楔係合機構を用いて一方の軸方向変位のみを累積させて直動運動を作り出すリニアアクチュエータにおいて、外力に逆らう方向だけでなく外力の方向にも高精度の位置決めが可能となる。
【0019】
本発明は、第2に、前記第1のリニアアクチュエータにおいて、前記中間出力軸と前記最終出力軸は、軸方向に所定のガタを有して連結され、前記中間出力軸が前記最終出力軸に対して前記所定のガタの範囲で微少な相対変位をしている間に、前記最終出力軸が前記固定部材に対して前記相対変位方向に移動可能となる構成であることを特徴とする。
【0020】
この請求項2に記載の発明によれば、必ず中間出力軸によって駆動したい方向への最終出力軸ロックを解除してから中間出力軸が最終出力軸に接触してこれを駆動するようになる。この順序が逆になるとロック状態の最終出力軸によって中間出力軸の移動が阻止されてしまい、中間出力軸によって最終出力軸のロック解除が出来なくなる。請求項2に記載の発明は、これを回避して直動運動を確実に作り出すために機能する。
【0021】
本発明は、第3に、前記第1及び第2のリニアアクチュエータにおいて、前記第一楔結合機構部は前記中間出力軸と共に軸方向に移動せず、前記第二楔係合機構部は前記最終出力軸と共に軸方向に移動することを特徴とする。
【0022】
この請求項3に記載の発明によれば、第一楔係合機構部を中間出力軸と共に軸方向に移動しない楔係合機構とすることで、往復駆動源を固定部材とすることが可能になり、これへ電力などの動力を供給することが容易になる。また、第二楔係合機構部を最終出力軸と共に軸方向に移動する楔係合機構とすることで、直動運動を行う中間出力軸によって最終出力軸のロック解除を行わせることが常に可能になる。
【0023】
本発明は、第4に、前記第1乃至第3のリニアアクチュエータにおいて、前記第一楔結合機構部及び前記第二楔係合機構部は、いずれも、2部品間の一方向への相対運動をロックする楔係合と、前記一方向とは逆向きの他方向への2部品間の相対運動をロックする楔係合とを有し、それら2方向の楔係合のいずれか一方を阻止することで前記2部品間の片方の軸方向への相対運動のみを許容するワンウェイ機能を有することを特徴とする。
【0024】
この請求項4に記載の発明によれば、リニアアクチュエータを軸方向の前後両方向に駆動することが可能になる。
【0025】
本発明は、第5に、前記第4のリニアアクチュエータにおいて、外部からの指令によって動作し、前記第一楔結合機構部の楔係合の一方を阻止する楔係合阻止アクチュエータ部を有することを特徴とする。
【0026】
この請求項5に記載の発明によれば、リニアアクチュエータの駆動方向を選択して切換えることが可能になる。
【0027】
本発明は、第6に、前記第5のリニアアクチュエータにおいて、前記楔係合阻止アクチュエータ部は、前記第一楔結合機構部における一方の楔係合を阻止し、他方の楔係合を許容する状態と、前記一方の楔係合を許容し、前記他方の楔係合を阻止する状態と、両方の楔結合を許容する状態の3つの状態を選択できる構成であり、外部からの動力供給を遮断した時に両方の楔結合を許容する状態となることを特徴とする。
【0028】
この請求項6に記載の発明によれば、例えば動力源としての電源を切断しても中間出力軸を第一楔係合機構部によって両軸方向にロックして固定できる。第二楔係合機構部による最終出力軸の両軸方向のロックは、中間出力軸が相対的に移動して来ない限り解除されない。この結果、リニアアクチュエータを所定の位置に維持するための動力が不要になる。またその際の各楔係合部のガタが無くなり、振動などによって楔係合部に衝撃力が作用することも回避できる。
【0029】
本発明は、第7に、前記第1のリニアアクチュエータにおいて、前記第一楔結合機構部及び第2楔係合機構部以外の楔係合機構部を有しないことを特徴とする。
【0030】
この請求項7に記載の発明によれば、楔係合機構部として、第一及び第二の楔係合機構部のみを備えるので、外力が作用した場合にも、その方向に拘わらず高精度の位置決めが可能なリニアアクチュエータを必要最小限の楔係合機構部で構成することができ、低コスト化が図れる。
【0031】
本発明は、第8に、前記第1のリニアアクチュエータにおいて、前記中間出力軸と前記固定部材との間に構成された第三楔係合機構部を有し、該第三楔係合機構部は、前記中間出力軸と前記固定部材の一方向への相対運動をロックする楔係合と、前記一方向とは逆向きの他方向への前記中間出力軸と前記固定部材の相対運動をロックする楔係合とを有し、それらの楔係合の一方は、外部からの指令によって動作する楔係合阻止アクチュエータ部にて阻止されることを特徴とする。
【0032】
この請求項8に記載の発明によれば、往復運動部材から第一楔係合機構部を介して中間出力軸に作用する反駆動方向の摩擦力などによって中間出力軸が反駆動方向へ戻る可能性を第三楔係合機構部が完全に排除する。第三楔係合機構部を利用して中間出力軸の移動方向を一方向のみ許容することが出来るためである。請求項8に記載の発明により、リニアアクチュエータとしての応答速度低下要因を確実に排除出来る。
【0033】
本発明は、第9に、前記第1のリニアアクチュエータにおいて、前記第二楔結合機構部は、前記固定部材に形成された内周円筒面と前記最終出力軸に形成された軸方向傾斜面との間に、輪郭線に前記内周円筒面の半径と略同一の曲率半径を有する部分をもつ回転体の楔部材を配置し、前記軸方向傾斜面にもその傾斜方向に直角な断面の輪郭線として前記内周円筒面の半径と略同一の曲率半径を有する部分をもつことを特徴とする。
【0034】
この請求項9に記載の発明によれば、第二楔係合機構部における部品間の接触形態を点接触でなく全て線接触にすることが出来、耐久性を向上させることが出来る。
【0035】
本発明は、第10に、前記第1のリニアアクチュエータにおいて、前記第二楔係合機構部は、前記固定部材に形成された内周円筒面と前記最終出力軸に形成された外周球面との間に、輪郭線に前記内周円筒面の半径と略同一の曲率半径を有する部分と前記外周球面の球半径と略同一の曲率半径を有する部分の両方をもつ回転体の楔部分を配置したことを特徴とする。
【0036】
この請求項10に記載の発明によれば、第二楔係合機構部における部品間の接触形態を全て線接触として、点接触をなくすることが出来ると同時に、第二楔係合機構部の主要構成部品の形状を全て加工の容易な回転体形状とすることが可能になり、耐久性向上と低コスト化とを同時に実現することが出来る。
【0037】
本発明は、第11に、前記第1のリニアアクチュェータにおいて、前記第一楔結合機構部は、前記往復動部材に形成された内周球面と前記最終出力軸に形成された外周円筒面との間に、輪郭線に前記内周球面の球半径と略同一の曲率半径を有する部分と前記外周円筒面の円筒半径と略同一の曲率半径を有する部分の両方をもつ回転体の楔部分を配置したことを特徴とする。
【0038】
この請求項11に記載の発明によれば、第一楔係合機構部における部品間の接触形態を全て線接触として、点接触をなくすることが出来ると同時に、第一楔係合機構部の主要構成部品の形状を全て加工の容易な回転体形状とすることが可能になり、耐久性向上と低コスト化を同時に実現することが出来る。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、往復駆動装置と楔係合機構を用いて一方の軸方向変位のみを累積させて直動運動を作り出すリニアアクチュエータにおいて、外力に逆らう方向だけでなく外力の方向にもアクチュエータ自身の動作で最終出力軸の変位を指定することが可能となるので、外力の方向にも高精度の位置決めが出来るリニアアクチュエータを提供することができる。また、そのリニアアクチュエータを構成する直動の一方向クラッチ機構における接触面圧の低減と構成部品形状の単純化を同時に実現できるので、機器の高耐久化、小型化、低コスト化を図ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
〈実施例1〉
以下、本発明の実施例1に係るるリニアアクチュエータを図1乃至図12により説明する。
【0041】
図1は実施例1に係るリニアアクチュエータの側断面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図1のB−B断面、図4は図1のC−C断面、図4は図1のD−D断面である。図6乃至図8はいずれも実施例1において円周方向に配置された保持部材と駆動ローラの展開図であり、図6は出力軸を停止させた状態で保持する場合の保持部材位置を示す図、図7は出力軸を図1の右方向に駆動する場合の保持部材位置を示す図、図8は出力軸を図1の左方向に駆動する場合の保持部材位置を示す図である。図9は最終出力軸が外力に逆らって外力と反対方向に中間出力軸によって駆動されるメカニズムを説明する図であり、図10は最終出力軸が中間出力軸の動きに連動しながら外力によって外力と同方向に駆動されるメカニズムを説明する図である。
【0042】
図1において、往復駆動装置1は、磁歪素子2、コイル3などで構成されている。磁歪素子2の軸方向の一端(図の右側)は固定部材であるケーシング4に当接しており、他の一端は第1バネホルダ5、往復動部材6、第2バネホルダ7が皿バネ8により付勢されて当接している。皿バネ8は、第2バネホルダ7と固定部材であるリアエンド9の間に配置されて前記の付勢力を発生している。往復動部材6は、第1バネホルダ5と第2バネホルダ7によって軸方向に挟まれているが、半径方向には滑って移動することが可能である。この結果、往復動部材6は、コイル3への通電の断続に伴う磁歪素子2の伸縮によって軸方向に往復運動を行う。
【0043】
固定部材であるリアエンド9とフロントエンド10には、それぞれ内周円筒面を有する軸支持部9A、10Aが形成されており、それらによって中間出力軸11の外周円筒面11Aと最終出力軸12の外周円筒面12aがそれぞれ軸方向に滑動可能な状態で半径方向に支持されている。中間出力軸11は、中心部に穴部11bが形成された中空軸であり、これに最終出力軸12の一部が挿入されて十分スパンの長い第1嵌入部12bと第2嵌入部12cとで穴部11bと嵌合している。また、第2嵌入部12cには、スラスト伝達ピン13が貫通して固定されており、その両端部は中間出力袖11のスラスト伝達穴11cの内部に所定の軸方向ガタを持って突出している。これらの構成により、中間出力軸11と最終出力軸12とは、前記の軸方向ガタだけ軸方向に相対変位する以外はほぼ一体の軸部材として振るまい、それぞれは軸支持部9a、10aにおいてそれぞれの一箇所が支持されているだけであるが全体として2箇所で半径方向に安定に支持されている。
【0044】
往復動部材6に形成された内周球面6aと外周円筒面11aの間には、図2及び図3に輪郭形状を示す駆動ローラ14、15が楔部材として組み込まれて第一楔係合機構部を形成している。駆動ローラ14、15は、図1に示される断面B−B、断面C−Cの位置で内周球面6aと外周円筒面11aの両方に較触するが、断面B−B、断面C−Cの位置が内周球面6aの球心に対して軸方向に変位した位置であることにより楔係合を行う。内周球面6aにおける駆動ローラ14との接触位置と、駆動ローラ15との接触位置はいずれも軸方向に傾斜しており、その傾斜方向は互いに逆方向である。一方、外周円筒面11aは、どこにおいても軸方向に傾斜のない非傾斜面である。駆動ローラ14、15は、軸方向に向かって半径方向隙間の変化する傾斜面と、非傾斜面に挟まれてそれぞれ楔係合し、中間出力軸11が往復動部材6に対して一方の軸方向に相対変位するのをロックするが、そのロックする軸方向は互い逆である。すなわち、第一楔係合機構部は、両方の軸方向にロックできる楔係合構造を有している。駆動ローラ14、15の外周面の輪郭線は、それぞれ図2及び図3に示すように、内周球面6aの大円半径と略同一の曲率半径を有する輪郭部分14a、15aと、外周円筒面11aの軸直角断面半径と略同一の曲率半径を有する輪郭部分14t、15bとを有しており、それぞれの曲率半径部分が各々、略同一曲率の内周球面6aと外周円筒面11aに実質的に線接触の形態で接触する。
【0045】
図2及び図3に示すように、駆動ローラ14、15は、図1のB−B断面、C−C断面の各断面において、円周方向に3個ずつ配置されて組み込まれている。これらの駆動ローラ14、15は、保持部材16によって、それらの所定の位置に配置される。図2及び図3に示す保持部材16の円周方向規制部16aが3個のローラ14と3個のローラ15を円周方向に所定の間隔で配置する役目を果たしている。保持部材16は、筒状の部材の軸方向一端からローラ14を挿入する切欠部を三箇所形成し、それらの切欠部の間に軸方向他端からローラ15を挿入する別の切欠部を三箇所形成したものである。各保持部材16の6箇所の円周方向規制部16aの隣り合った2つは、図1に示される両側の軸方向規制部16bによって連結され、全体として一体化されている。
【0046】
保持部材16の左側の軸方向規制部16bには、連結ピン17を介して磁性体で形成されたディスク18が連結されている。ディスク18のフロント側面に対向してコイルとコの字形状の磁性体より構成されるコイル部組19がブラケット20を介してリアエンド9に固定されており、ディスク18のリア側面に対向して同様のコイル部組21がやはりブラケット20を介してリアエンド9に固定されている。またディスク18はバネ22によりストッパ部材23を介してリア側に付勢され、バネ24により直接フロント側にも付勢されている。ストッパ部材23はディスク18と共にバネ22によってリア側に付勢されるが、その変位はストッパ部材23がコイル部組19に当接することで制限される。また、バネ22はバネ24に比べてより大きな付勢力を発生する仕様となっている。連結ピン17とディスク18とコイル部組19、21とストッパ部材23とバネ22,24により楔係合阻止アクチュエータ部が形成され、後述するように保持部材16を駆動して第一楔係合機構部における両方向の楔係合の一方を外部からの指令によって選択的に阻止する機能を果たす。駆動ローラ14と第1バネホルダ5との間及び駆動ローラ15と第2バネホルダ7との間には、ロックバネ25が組み込まれており、各駆動ローラを楔係合させる方向に常に付勢している。
【0047】
前記の楔係合阻止アクチュエータ部は、コイル部組19にもコイル部組21にも通電しない状態では、バネ22の付勢力がバネ24の付勢力よりも大きいため、ディスク18は図1の左方向に移動しようとするが、ストッパ部材23がコイル部組19に当接するためその所定位置で静止する。この時、連結ピン17を介してディスク18と一体で連動する保持部材16もそれ自身の所定の位置で静止する。図6においては、保持部材16における左右の軸方向規制部16b間の軸方向距離Lを十分大きく設定し、各部品の軸方向位置精度を管理することで楔係合状態にある駆動ローラ14,15が、いずれも隣接する軸方向規制部16bに接触せず、若干の間隔を有して左右の軸方向規制部16b間に収まっている。この時、駆動ローラ14、15はいずれも軸方向規制部16bに阻止されずにロックバネ25の付勢力により内周球面6aと外周円筒面11aの間で楔係合状態となり、往復動部材6に対する中間出力軸11の軸方向相対移動を両方向でロックする。
【0048】
図7はコイル部組19のみに通電してディスク18を吸引し保持部材16をフロント側に移動させた場合を示している。ここでは、コイル部組19方向への磁気吸引力とバネ24の付勢力の合計がバネ22の付勢力よりも大きくなることで、ディスク18がコイル部組19の方向に吸引される。保持部材16のフロント側への移動によって軸方向規制部16bが駆動ローラ14と接触して楔係合状態から押し出している(白矢印)。この状態では、軸方向規制部16bと接触した駆動ローラ14は、内周球面6aと外周円筒面11aの間での楔係合を阻止され、軸方向規制部16bとの間隔が図8の状態より更に大きくなった駆動ローラ15は、内周球面6aと外周円筒面11aの間で確実に楔係合を行える。この時、往復動部材6に対する中間出力軸11の軸方向相対移動は、図1における右方向をロックされ、左方向への移動のみが許容されたワンウェイ状態となる。
【0049】
図8はコイル部組21のみに通電してディスク18を吸引し保持部材16をリア側に移動させた場合を示している。ここでは、コイル部組21方向への磁気吸引力がバネ22の付勢力に勝ることでディスク18がコイル部組21の方向に吸引される。保持部材16のリア側移動によって軸方向規制部16bが駆動ローラ15と接触して楔係合状態から押し出している(白矢印)。この状態では、軸方向規制部16bと接触した駆動ローラ15は、内周球面6aと外周円筒面11aの間での楔係合を阻止され、軸方向規制部16bとの間隔が図8の状態より更に大きくなった駆動ローラ14は、内周球面6aと外周円筒面11aの間で確実に楔係合を行える。この時、往復働部材6に対する中間出力軸11の軸方向相対移動は図1における左方向をロックされ、右方向への移動が許容されて、図9の場合と逆のワンウェイ状態となる。
【0050】
最終出力軸12に形成された外周球面12dと軸方向固定部材26に形成された内周円筒面26aとの間には、図4及び図5に輪郭形状を示す整流ローラ27,28が楔部材として組み込まれて第二楔係合機構部を形成している。軸方向固定部材26は、そのフランジ部分26aが、ケーシング4とフロントエンド10によって微小な隙間を有して挟まれており、軸方向には実質的に固定されているが、半径方向には動きを拘束されていない。整流ローラ27,28は、図1に示される断面D−Dの位置で外周球面12dと内周円筒面26bの両方に接触するが、断面D−Dの位置が外周球面12dの球心に対して軸方向に変位した位置であることにより楔係合を行う。外周球面12dにおける整流ローラ27との接触位置と整流ローラ28との接触位置は、いずれも軸方向に傾斜しており、その傾斜方向は互いに逆方向である。一方、内周円筒面26bは、どこにおいても軸方向に傾斜していない非傾斜面である。
【0051】
整流ローラ27,28は、軸方向に向かって半径方向隙間の変化する傾斜面と非傾斜面に挟まれてそれぞれ楔係合して最終出力軸12が軸方向固定部材26に対して一方の軸方向に相対変位するのをロックするが、そのロックする軸方向は互い逆である。すなわち第二楔係合機構部は両方の軸方向にロックできる楔係合を有している。整流ローラ27,28の外周面の輪郭線は、それぞれ図4及び図5に示すように、外周球面12dの大円半径と略同一の曲率半径を有する輪郭部分27a,28aと、内周円筒面26bの軸直角断面半径と略同一の曲率半径を有する輪郭部分27b、28bとを有しており、それぞれの曲率半径部分が各々、略同一曲率の外周球面12dと内周円筒面26bに実質的に線接触の形態で接触する。
【0052】
整流ローラ27,28は、図1のD−D断面において、図4及び図5に示すように、円周方向に3個ずつ配置されて組み込まれている。これらの整流ローラ27,28は、中間出力軸11に一体に形成されたローラ保持部によって、それらの所定の位置に配置される。ローラ保持部は図4及び図5に示に示される円周方向規制部11dと、図1に示される軸方向規制部11eとから形成されており、円周方向規制部11dが3個の整流ローラ27と3個の整流ローラ28を円周方向に所定の間隔で配置する役目を果たしている。ローラ保持部は、中間出力軸11端部の2重円筒部分に円周方向に配置された6個のポケットを加工することにより形成されている。軸方向現制部11eは、整流ローラ27,28の軸方向に隣接した部分であり、図1のように最終出力軸12に固定されたスラスト伝達ピン13が中間出力軸11のスラスト伝達穴11cの中央位置近傍にある時、整流ローラ27,28のいずれとも隙間を有して接触せず、整流ローラ27,28がロックバネ29によって軸方向に付勢され、外周球面12dと内周円筒面26aの間で楔係合することを阻止しないように構成されている。この時、最終出力軸12は、軸方向固定部材26に対して左右の軸方向にロックされて動けない。また、この時の軸方向規制部11eと整流ローラ27との軸方向隙間及び軸方向規制部11eと整流ローラ28との軸方向隙間は、いずれもその時のスラスト伝達ピン13とスラスト伝達穴11cとの軸方向隙間より小さく設定してある。この結果、中間出力軸11が最終出力軸12に対して軸方向に相対変位すると、スラスト伝達穴11cの側面がスラスト伝達ピン13に接触して軸方向駆動力を伝達する前に、必ず軸方向規制部11eが整流ローラ27、28の一方に接触してこれを押し出し、その楔係合を阻止するようになる。本実施例においては、中間出力軸11が最終出力軸12に対して図1の右方向に相対変位すると、まず軸方向規制部11eが整流ローラ28を押し出してその楔係合を解除する。整流ローラ28による楔係合は、外周球面12dと内周円筒面26aとの間の中間出力軸11の相対変位方向である右方向に向かって半径方向隙間が増大する部分における楔係合であるので、中間出力軸11の相対変位によって解除が可能である。また、その楔係合は最終出力軸12が軸方向固定部材26に対して中間出力軸11の相対変位方向と同じ右方向に変位するのをロックしていた楔係合であるので、これが解除されることで最終出刀軸12も中間出力軸11の相対変位方向と同じ右方向に変位することが可能になる。同様にして、中間出力軸11が最終出力軸12に対して図1の左方向に相対変位すると、中間出力軸11と最終出力軸12とが直接接触する前にその方向のロックが解除され、最終出力軸12も中間出力軸11の相対変位方向と同じ左方向に変位することが可能になる。
【0053】
以上の構成のリニアアクチュエータにおいて、まず中間出力軸11が直動運動を発生し、これによって最終出力軸が直動運動を行うメカニズムを以下に説明する。
【0054】
まず、中間出力軸11が直動運動を行うメカニズムは次の通りである。コイル3の通電を断続せず、コイル部組19にもコイル部組21にも通電しない状態では、往復動部材6は静止した状態であり、これに対して両方向にロックされている中間出力軸11は静止したままである。最終出力軸12に外部から軸方向力が作用しても第二楔係合機構部によって遮断されて中間出力軸11を動かすことはない。次に、コイル3の通電を断続しコイル部組21のみに通電した状態では、往復動部材6が往復運動を行い、これに対する中間出力軸11の軸方向相対移動は、図1における左方向をロックされ、右方向を許容された状態となる。このため、中間出力軸11は往復動部材6が往路において右方向に移動している間は、これと共に右方向に移動し、往復動部材6が復路において左方向に移動している間は、相対運動が可能なために慣性力で右方向への移動を継続しようとする。その間、駆動ローラ14との相対運動によって中間出力軸11には、図の左方向の摩擦力が作用するが、最終出力軸12に外部から作用する軸方向力は第二楔係合機構部によって遮断されて、中間出力軸11には伝わらない。前記の摩擦力が慣性力に対して十分小さければ、中間出力軸11は復路においても実際に右方向への移動を継続するか、左方向に方向転換したとしても、その左方向移動距離は往路における右方向移動距離に比べて小さくなる。この結果、往路と復路の合計により必ず右方向への移動を行う。最後に、コイル3の通電を断続しコイル部組19のみに通電した状態では、前記において左右を交換した同様のメカニズムにより中間出力軸11は必ず左方向への移動を行う。つまり、中間出力軸11は外部からの指令により静止状態に保つことも、図1の右方向に駆動することも、図1の左方向に駆動することも出来る。
【0055】
次に、中間出力軸11の直動運動によって最終出力軸12が直動運動を行うメカニズムは次の通りである。
【0056】
コイル3の通電を断続せず、コイル部組19にもコイル部組21にも通電しない状態では、中間出力軸11が静止したままであり、最終出力軸12は第二楔係合機構部によって両方向にロックされて静止状態を維持する。
【0057】
コイル3の通電を断続し、コイル部組21のみに通電した状態での動作状況を、最終出力軸12に作用している外力の方向が異なる2つのケースに分け、図9と図10を用いて説明する。
【0058】
図9はコイル3の通電断続とコイル部組21のみへの通電によって中間出力軸11が移動する右方向と逆の左方向に外力が作用している場合を示している。中間出力軸11が右方向に移動することで、第二掛係合機構部の楔係合は、両方向ロックを示す図9(a)の状態から、一部の楔係合が解除されて最終出力軸12の右方向移動が可能となった図9(b)の状態にまず変化する。この時、外力が左方向に作用しているが、最終出力軸12は第二楔係合機構部の解除されていない楔係合のおかげで左方向に動かされることはない。その後、中間出力軸11のスラスト伝達穴11cの内周面が最終出力軸12に固定されたスラスト伝達ピン13に接触し、外力に逆らって最終出力軸12を駆動する図9(c)の状態となる。これ以降、中間出力軸11と最終出力軸12は実質的に一体で右方向に駆動されるため、最終出力軸12は微小振幅の累積により直動する中間出力軸11と同じ位置決め精度で位置決めすることが出来る。
【0059】
中間出力軸11の位置決め精度は、往復駆動装置1の往復振幅を小さくすることで高精度にすることが出来るので、最終出力軸12の位置決め精度も高精度にすることが可能である。
【0060】
図10はコイル3の通電断続とコイル部組21のみへの通電によって中間出力軸11が移動する右方向と同方向に外力が作用している場合を示している。中間出力軸11が右方向に移動することで第二楔係台機構部の楔係合は両方向ロックを示す図10(a)の状態から、一部の楔係合が解除されて最終出力軸12の右方向移動が可能となった図10(b)の状態に変化するが、この部分は図9の場合と同じである。しかし、図10では中間出力軸11のスラスト伝達穴11cの内周面が最終出力軸12に固定されたスラスト伝達ピン13に接触しなくても、図10(b)の状態から最終出力軸12は外力によって右方向への移動を開始して図10(c)の状態となる。その結果、中間出力軸11と最終出力軸12の軸方向の相対的な位置関係は、第二楔係合機構部の楔係合が両方向ロックとなる図10(a)の状態に戻り、最終出力軸12は停止してそれ以上外力によって勝手に右方向に移動することはない。その間に最終出力軸12が移動する距離は、図10(a)の状態から図10(b)にかけて整流ローラ28が楔係合状態から押し出された距離に等しく、中間出力11の右方向移動量に等しい。すなわち、図10のように外力の方向に最終出力軸を動かして位置決めする場合にも、その位置決め精度は中間出力11の位置決め精度と同等になり、やはり高精度にすることが可能である。
【0061】
図9と図10から、外力の方向に無関係に最終出力軸を右方向に駆動して高精度な位置決めが可能であることが分かる。
【0062】
コイル3の通電を断続しコイル部組19のみに通電した状態では、コイル3の通電を断続しコイル部組21のみに通電した場合のメカニズムの左右を交換した同様のメカニズムにより、外力の方向に無関係に最終出力軸を左方向に駆動しても高精度な位置決めが可能であることが容易に類推出来る。
【0063】
結局、本実施例によれば、往復駆動源を用いて出力軸を直動駆動するリニアアクチュエータであって、外力に逆らって駆動する場合も外力の方向に駆動する場合も高精度の位置決めができるリニアアクチュエータが得られる。また、その重要な構成要素である楔係合機構における構成部品間の接触形態を面圧増大の抑制のため線接触として耐久性を確保し、前記構成部品形状を加工性に優れた回転体形状として低コスト化を実現できる。
【0064】
〈実施例2〉
本発明の実施例2に係るリニアアクチュエータを、図11乃至図16により説明する。図11は実施例2に係るリニアアクチュエータの側断面図、図12は図11における最終出力軸の外周凹面傾斜溝32dの形状を説明するための外観図、図13乃至図16はそれぞれ図11のE−E断面、F−F断面、G−G断面、H−H断面である。
【0065】
実施例2は、実施例1における第一楔係合機構部と第二楔係合機構部の構成部品の形状だけを変更したものあり、その他の構成や機能は実施例1と共通である。以下、前記の変更点とその効果についてのみ説明する。
【0066】
駆動ローラ33、34の外周輪郭は、実施例1では2種類の曲率半径の部分で構成されていたのに対して、往復動部材6の内周球面6aの大円半径と略同一の曲率半径を有する単一の曲率半径部分で形成され、より単純な形状になっている。これに伴い中間出力軸31の外周には、図13及び図14に示されるように、駆動ローラ33,34の各々が当接する各位置に中心軸と平行に伸びる外周凹面溝31aが形成してある。そして、その部分の図13及び図14に示された軸直角断面における曲率半径は、駆動ローラ33,34の外周輪郭の曲率半径と略同一にしてある。この結果、駆動ローラ33,34は、それぞれ、内周球面6aとも外周凹面溝31aともローラの全幅に亘って実質的に線接触で接触することになり、実施例1の場合より更に第一楔係合機構部の接触面圧を抑制し、耐久性が向上する。
【0067】
整流ローラ36,37の外周輪郭も、実施例1では2種類の曲率半径の部分で構成されていたのに対して、軸方向固定部材26の内周円筒面26aの半径と略同一の曲率半径を有する単一の曲率半径部分で形成され、より単純な形状になっている。これに伴い、最終出力軸32の外周には、図15及び図16に示されるように整流ローラ36,37の各々が当接する各位置に軸方向に傾斜した外周凹面傾斜溝32dが形成してある。そして、その部分の図15及び図16に示された傾斜方向に直角な断面における曲率半径は、整流ローラ36,37の外周輪郭の曲率半径と略同一にしてある。この結果、駆動ローラ36,37は、それぞれ、内周円筒面26aとも外周凹面傾斜溝32dともローラの全幅に亘って実質的に線接触で接触することになり、実施例1の場合より更に第二楔係合機構部の接触面圧を抑制し、耐久性が向上する。
【0068】
このように実施例2によれば、各楔契合部の部品間接触面圧を更に低減して耐久性を向上させることができる。
【0069】
〈実施例3〉
以下、本発明の実施例3に係るリニアアクチュエータを、図17乃至図20により説明する。
【0070】
図17は実施例3に係るリニアアクチュエータの側断面図で、図18乃至図20はいずれも実施例3において円周方向に配置された保持部材と駆動ローラの展開図で、保持器の位置の制御による出力軸の駆動方向切掛えを比較説明する図であり、図18は出力軸を停止させた状態で保持する場合の保持部材位置を示す図、図19は出力軸を図17の右方向に駆動する場合の保持部材位置を示す図、図20は出力軸を図17の左方向に駆動する場合の保持部材位置を示す図である。
【0071】
実施例3は実施例1及び実施例2に対して、第一楔係合機構部と第二楔係合機構部の他に第三楔係合機構部を設け、往復駆動装置としての磁歪素子2の代わりに電磁ソレノイドを用いていることが主な特徴である。以下、前記2つの実施例との相違点とその効果についてのみ説明する。
【0072】
図17において、往復駆動装置38は、固定鉄心39、フレーム40、コイル41、可動鉄心42及び板バネ43などで構成されている。可動鉄心42には、板バネ43と往復動部材44とがナット45により共締で固定されている。コイル41への通電を断続することで、可動鉄心42が固定鉄心39との間の磁気吸引力と板バネ43による復元力によって往復駆動され、往復動部材44に往復動を与える。なお、実施例1や実施例2における往復駆動装置1のように、磁歪素子を用いた往復駆動装置と実施例3における往復駆動装置38のように電磁ソレノイドを用いた往復駆動装置とを互いに入れ替えても、それぞれの実施例はほぼ同様の機能を発揮することができる。本発明においては、往復駆動装置を有することが必要であるが、その形式については拘らない。
【0073】
中間出力軸49の外周凹面溝49aと往復動部材44の内周球面44bの間には、駆動ローラ50,51や保持部材54の円周方向規制部54a、軸方向規制部54bなどで第1楔係合機構部が構成されており、最終出力軸68の外周球面68aと固定部材48の内周円筒面48eの間には整流ローラ69,70や中間出力軸49の円周方向規制部(図示せず)や軸方向規制部49cなどで第2楔係合機構部が構成されている。この第2楔係合機構部を中心とした中間出力軸49と最終出力軸68との連結構成は、実施例1や実施例2の場合と同様であり、外力が作用する方向の如何に関わらず中間出力軸49の直動に連動して最終出力軸68が直動するメカニズムも、実施例1や実施例2の場合と同様である。
【0074】
実施例3においては、更に、中間出力軸49の外周凹面溝49aと固定部材48の内周球面48bの間に、駆動ローラ52,53や保持部材54の円周方向規制部54c、軸方向規制部54dなどで第3楔係合機構部が構成されており、ここが実施例1や実施例2の場合と異なる点である。
【0075】
実施例3における保持部材54は、前記の円周方向規制部54a,54c及び軸方向規制部54b,54dが形成されていて、第1楔係合機構部の保持部材と第3楔係合機構部の保持部材を兼ねている。保持部材54は、連結ピン58によってスライド部材59に固定されている。更に、スライド部材59の右方向端部付近には磁性体で作られたディスク60が固定されている。スライド部材59は、また、付勢バネ61により図中右方向に付勢されている。ディスク60の左側には「コ」の字形の磁性体ケース62のなかに収められたコイル63が固定部材48のノーズ部48dに固定されており、コイル63に通電することでディスク60と磁性体ケース62で磁気回路を形成し、ディスク60を左方向に吸引することができる。
【0076】
スライド部材59の右方向には、スライド部材64が配置されており、ディスク60の右側には、「コ」の字形の磁性体ケース65のなかに収められたコイル66がノーズ部48dに固定されている。スライド部材64は、付勢バネ61よりも大きな付勢力を持つ付勢バネ67によって図中の左方向に付勢されているが、ノーズ部48dに固定された磁性体ケース65に当接して左方向への移動を制限される。コイル66に通電することでディスク66と磁性体ケース65で磁気回路を形成し、ディスク66を右方向に吸引することができる。
【0077】
図17は、前記のコイル63にもコイル66にも通電されていない状態を示している。この時、ディスク60には磁気吸引力がどちらの軸方向にも作用しないので、スライド部材59とスライド部材64はそれらの付勢バネの力関係によって、その軸方位置が定められる。スライド部材59とスライド部材64は付勢バネ61と付勢バネ67によって反対方向から付勢され、互いに押付け合うが、付勢バネ67の付勢力のほうが大きいため全体として左方向に移動し、スライド部材64が磁性体ケース65に当接して止まる。ディスク60は、この時に磁性体ケース62と磁性体ケース65のほぼ中間位置に来るようにスライド部材59に固定されている。
【0078】
図18はその時の保持部材54と各駆動ローラ50〜53の位置関係を示している。図18においては、第1楔係合機構部の駆動ローラ50,51と、これに隣接する軸方向規制部54bとの間には、いずれも隙間が形成されており、駆動ローラ50と駆動ローラ51がいずれも外周凹面溝49aと内周球面44bに接触して楔係合出来ることを示している。第3楔係合機構部の駆動ローラ52,53も、軸方向規制部54dとの間に隙間が形成されており、外周凹面溝49aと内周球面48bに接触して楔係合が出来る状態となっている。
【0079】
コイル41への通電の断続をしなければ、往復動部材44は静止状態となる。更に、コイル63にもコイル66にも通電しなければ、中間出力軸49はその静止状態の往復動部材44に対して第1楔係合掛構部により両方向ロック状態となり、固定部材48に対しても第3楔係合機構部により両方向ロック状態となる。この結果、中間出力軸49は静止状態に保持される。
【0080】
なお、中間出力軸49を静止状態に保持するためには、図18のように駆動ローラ50〜52の全てが隣接する軸方向規制部54bあるいは軸方向規制部54dとの間に隙間16を有する必要は無く、中間出力軸49の左方向の移動をロックする駆動ローラ50,52の少なくとも1つと、右方向の移動をロックする駆動ローラ51,53の少なくとも1つにおいて、軸方向規制部との間に隙間を有すれば良い。
【0081】
コイル63に通電すると、ディスク60が磁性体ケース62に接触するまで吸引されて左方向に移動し、保持部材54と各駆動ローラ50〜53の位置関係は図19のようになる。第1楔係合機構部においては、駆動ローラ51が軸方向規制部54bに接触して押し出され、楔係合が出来なくなって、中間出力軸49が往復動部材44に対して右方向にのみ相対移動出来る状態となる。第3楔係合機構部においても、駆動ローラ53が軸方向規制部54dに接触して押し出され、楔係合が出来なくなって、中間出力軸49が固定部材48に対して右方向にのみ相対移動が出来る状態となる。この状態でコイル41への通電の断続すると、往復動部材44が第1楔係合機構部を介して中間出力軸49を間欠的に右方向へ駆動する。
【0082】
その際に、第3楔係合機構部は、中間出力軸49が往復動部材44といっしょに左方向に戻るのを確実に阻止し、駆動したい右方向への移動量の一部が失われるのを防止する。
【0083】
コイル66に通電すると、保持部材54と各駆動ローラ50〜53の位置関係は図20のようになる。第1楔係合機構部においては、駆動ローラ50が軸方向規制部54bに接触して押し出され、楔係合が出来なくなって、中間出力軸49が往復動部材44に対して左方向にのみ相対移動出来る状態となる。第3楔係合機構部においても、駆動ローラ52が軸方向規制部54dに接触して押し出され、楔係合が出来なくなって、中間出力軸49が固定部材48に対して左方向にのみ相対移動が出来る状態となる。この状態でコイル41への通電の断続すると、往復動部材44が第1楔係合機構部を介して中間出力軸49を間欠的に左方向へ駆動する。その際に、第3楔係合機構部は中間出力軸49が往復動部材44といっしょに右方向に戻るのを確実に阻止し、駆動したい左方向への移動量の一部が失われるのを防止する。
【0084】
実施例1や実施例2においては、往復駆動装置の駆動周波数が小さく中間出力軸が直動し続けようとする慣性力が小さい場合や、直動方向が鉛直方向であり中間出力軸に大きな重力が作用する場合には、中間出力軸が逆戻りして駆動量の一部が失われる可能性を完全には排除できないが、実施例3では、第3楔除合機構部を有していることによって前記の中間出力軸49の逆戻りをほぼ完全に排除できる。これに伴い、中間出力軸49によって最終出力軸68を効率的に駆動することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施例1に係るリニアアクチュエータの側断面図である。
【図2】図1のA−A断面である。
【図3】図1のB−B断面である。
【図4】図1のC−C断面である。
【図5】図1のD−D断面である。
【図6】実施例1に係るリニアアクチュエータの出力軸を停止させた状態で保持する場合の保持部材位置を示す図である。
【図7】実施例1に係るリニアアクチュエータの出力軸を図1の右方向に駆動する場合の保持部材位置を示す図である。
【図8】実施例1に係るリニアアクチュエータの出力軸を図1の左方向に駆動する場合の保持部材位置を示す図である。
【図9】最終出力軸が外力に逆らって外力と反対方向に中間出力軸によって駆動されるメカニズムの説明図である。
【図10】最終出力軸が中間出力軸の動きに連動しながら外力によって外力と同方向に駆動されるメカニズムの説明図である。
【図11】実施例2に係るリニアアクチュエータの側断面図である。
【図12】実施例2に係るリニアアクチュエータの外周凹面傾斜溝の形状を示す説明図である。
【図13】図11のE−E断面図である。
【図14】図11のF−F断面図である。
【図15】図11のG−G断面図である。
【図16】図11のH−H断面図である。
【図17】実施例3に係るリニアアクチュエータの側断面図である。
【図18】実施例3に係るリニアアクチュエータの出力軸を停止させた状態で保持する場合の保持部材位置を示す図である。
【図19】実施例3に係るリニアアクチュエータの出力軸を図17の右方向に駆動する場合の保持部材位置を示す図である。
【図20】実施例3に係るリニアアクチュエータの出力軸を図17の左方向に駆動する場合の保持部材位置を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1…往復駆動装置、2…磁歪素子、3…コイル、4…ケーシング、5…第1バネホルダ、6…往復動部材、6a…内周球面、7…第2バネホルダ、8…皿バネ、9‥・リアエンド、9a…軸支持部、10…フロントエンド、10a…軸支持部、11‥中間出力軸、11a…外周円筒面、11b…穴部、11c…スラスト伝達穴、11d‥・円周方向規制部、11e…軸方向規制部、12…最終出力軸、12a…外周円筒面、12b…第1嵌入部、12c…第2嵌入部、12d‥・外周球面、13…スラスト伝達ピン、14・‥駆動ローラ、14a…輪郭部分、14b…輪郭部分、15…駆動ローラ、15a…輪郭部分、15b…輪郭部分、16…保持部材、16a・‥円周方向規制部、16b…軸方向規制部、17‥連結ピン、18…ディスク、19…コイル部組、20…ブラケット、21‥・コイル部組、22‥・バネ、23…ストッパ部材、24…バネ、25…ロックバネ、26…軸方向固定部材、26a…内周円筒面、27…整流ローラ、27a…輪郭部分、27b…輪郭部分、28…整流ローラ、28a…輪郭部分、28b…輪郭部分、29…ロックバネ、30…リアエンド、30a…軸支持部、31…中間出力軸、31a…外周凹面溝、31b・‥穴部、31c…スラスト伝達穴、31d・‥円周方向規制部、31e…軸方向規制部、32…最終出力軸、32a・‥外周円筒面、32b…第1嵌入部、32c…第2嵌入部、32d…外周凹面傾斜溝、33…駆動ローラ、33a…輪郭部分、34…駆動ローラ、34a…輪郭部分、35…保持部材、35a…円周方向規制部、35b‥・軸方向規制部、36…整流ローラ、36a‥・輪郭部分、37…整流ローラ、37a…輪郭部分、38…往復駆動装置、39…固定鉄心、40…フレーム、41…コイル、42…可動鉄心、43…イタバネ、44…往復動部材、44a…リング部、44b…内周球面、45…ナット、46…ケーシング、47…外周ナット、48…固定部材、48a…リング部、48b…内周球面、48c…穴部、48d…ノーズ部、48e…内周円筒面、49…中間出力軸、49a…外周凹面溝、49b…スラスト伝達穴、49c…軸方向規制部、50…駆動ローラ、51…駆動ローラ、52…駆動ローラ、53…駆動ローラ、54…保持部材、54a…円周方向規制部、54b…軸方向規制部、54c…円周方向規制部、54=d…軸方向規制部、55…ロックバネ、56…ロックバネ、57…ロックバネ、58…連結ピン、59…スライド部材、60…ディスク、61…付勢バネ、62…磁性体ケース、63…コイル、64…スライド部材、65…磁性体ケース、66…コイル、67…付勢レヾネ、68…最終出力軸、68a…外周球面、69…整流ローラ、70…整流ローラ、71…スララスト伝達ピン、72…ロックバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復駆動源と、これにより往復運動を行う往復運動部材と、該往復運動部材から駆動力を与えられて軸方向に移動する中間出力軸と、前記往復運動部材及び前記中間出力軸の間に構成された第一楔結合機構部と、前記中間出力軸を介して駆動力を与えられ軸方向に移動する最終出力軸と、該最終出力軸及び固定部材の間に構成された第二楔係合機構部とを有し、前記第二楔係合機構部は、前記最終出力軸に対する前記中間出力軸の相対的な微少変位を許容し、該最終出力軸に対する中間出力軸の相対的な微少変位によって前記最終出力軸が前記固定部材に対して前記相対的微少変位方向に移動可能となる構成であることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記中間出力軸と前記最終出力軸は、軸方向に所定のガタを有して連結され、前記中間出力軸が前記最終出力軸に対して前記所定のガタの範囲で微少な相対変位をしている間に、前記最終出力軸が前記固定部材に対して前記相対変位方向に移動可能となる構成であることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記第一楔結合機構部は前記中間出力軸と共に軸方向に移動せず、前記第二楔係合機構部は前記最終出力軸と共に軸方向に移動することを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記第一楔結合機構部及び前記第二楔係合機構部は、いずれも、2部品間の一方向への相対運動をロックする楔係合と、前記一方向とは逆向きの他方向への2部品間の相対運動をロックする楔係合とを有し、それら2方向の楔係合のいずれか一方を阻止することで前記2部品間の片方の軸方向への相対運動のみを許容するワンウェイ機能を有することを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載のリニアアクチュエータにおいて、
外部からの指令によって動作し、前記第一楔結合機構部の楔係合の一方を阻止する楔係合阻止アクチュエータ部を有することを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記楔係合阻止アクチュエータ部は、前記第一楔結合機構部における一方の楔係合を阻止し、他方の楔係合を許容する状態と、前記一方の楔係合を許容し、前記他方の楔係合を阻止する状態と、両方の楔結合を許容する状態の3つの状態を選択できる構成であり、外部からの動力供給を遮断した時に両方の楔結合を許容する状態となることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項7】
請求項1に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記第一楔結合機構部及び第2楔係合機構部以外の楔係合機構部を有しないことを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項8】
請求項1に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記中間出力軸と前記固定部材との間に構成された第三楔係合機構部を有し、該第三楔係合機構部は、前記中間出力軸と前記固定部材の一方向への相対運動をロックする楔係合と、前記一方向とは逆向きの他方向への前記中間出力軸と前記固定部材の相対運動をロックする楔係合とを有し、それらの楔係合の一方は、外部からの指令によって動作する楔係合阻止アクチュエータ部にて阻止されることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項9】
請求項1に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記第二楔結合機構部は、前記固定部材に形成された内周円筒面と前記最終出力軸に形成された軸方向傾斜面との間に、輪郭線に前記内周円筒面の半径と略同一の曲率半径を有する部分をもつ回転体の楔部材を配置し、前記軸方向傾斜面にもその傾斜方向に直角な断面の輪郭線として前記内周円筒面の半径と略同一の曲率半径を有する部分をもつことを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項10】
請求項1に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記第二楔係合機構部は、前記固定部材に形成された内周円筒面と前記最終出力軸に形成された外周球面との間に、輪郭線に前記内周円筒面の半径と略同一の曲率半径を有する部分と前記外周球面の球半径と略同一の曲率半径を有する部分の両方をもつ回転体の楔部分を配置したことを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項11】
請求項1に記載のリニアアクチュェータにおいて、
前記第一楔結合機構部は、前記往復動部材に形成された内周球面と前記最終出力軸に形成された外周円筒面との間に、輪郭線に前記内周球面の球半径と略同一の曲率半径を有する部分と前記外周円筒面の円筒半径と略同一の曲率半径を有する部分の両方をもつ回転体の楔部分を配置したことを特徴とするリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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