説明

リネン工場におけるドレン廃熱回収装置、及び同回収方法

【課題】リネン工場において発生するドレンを回収して、連続洗濯機用の熱源として有効に利用する。
【解決手段】複数の仕上ロール14A、14Bから排出されるドレンをフラッシュタンク4に導いて収納し、減圧すると該ドレンから蒸気が発生する。発生した蒸気を連続洗濯機11に供給する。これによって、連続洗濯機の所要蒸気量の約1/5が節約される。不足分の蒸気は、ボイラ18から減圧弁24、電磁弁15、および逆止弁17を介して供給する。フラッシュタンク4内で蒸発しなかった液状のドレンは、熱水として利用するため、スチームトラップ9を介してボイラタンク22に送り込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リネン工場で発生するドレンに含まれている熱量を、連続洗濯機用の加熱蒸気として利用することによって有効に回収するように改良した廃熱回収装置、及び廃熱回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エネルギー資源に恵まれない我が国においては、古来、各種の形で廃熱利用が研究され実用化されてきた。
特に最近、石油の輸入が困難になってエネルギー単価が上昇したので、廃熱利用の研究がいっそう活発になっている。
廃熱回収は、今後とも重要な研究課題であるが、一口に廃熱と言うものの、その種類は実に多い。
本発明は高温排水を適用の対象とするものであるが、後に詳述するごとく、高温排水の形態は多種多様である。従って、既知の廃熱回収技術を異なる技術分野に応用することは当業者といえども容易なことではない。
【0003】
図4は公知の廃熱回収技術を示す。これは、非特許文献1として挙げた株式会社ミヤワキ編集頒布の技術資料、第5章第3節「廃熱の回収利用」に掲載されている配管系統図である。
(A)はボイラプラントでの低圧蒸気回収装置であって、低圧蒸気が高温熱交換器3の熱交換パイプを流通した後、スチームトラップ9を経てフラッシュタンク4に送り込まれる。該高温熱交換器3では図示のごとく冷風が熱交換パイプに接触して熱風となり、図外のボイラへ送給される。
フラッシュタンク4内へ送入されたドレンは該フラッシュタンクの下半部に溜まって水室を形成し、該ドレンから発生した蒸気はフラッシュタンク4の上半部を満たして蒸気室を形成する。
高温熱交換器3の空気流路出口付近には温度センサ7が設けられていて、電磁弁15を介してボイラ燃焼用空気の温度制御が行なわれる。
蒸気室内の蒸気は低温熱交換器5へ送られ、保有熱量を熱交換して回収される。
水室内のドレン(熱水)は低温給水加熱器6へ送られ、保有熱量を熱交換して回収される。
【0004】
図4(B)は蒸気式空気予熱器での再蒸発蒸気の利用装置であって、高温熱交換器3の熱交換パイプ3aを流通した蒸気は空気と熱交換して凝縮し、フラッシュタンク4へ送り込まれる。
フラッシュタンク4内で発生した蒸気は高温熱交換器3の予熱パイプ3bに流通させて保有熱量を空気流に与えた後、低温熱交換器5に送給される。
フラッシュタンク下半部の水室に溜まったドレン(熱水)は、低温給水加熱器6へ送られ、保有熱量を熱交換して回収される。
高温熱交換器3の空気流路出口付近には温度センサ7が設けられていて、電磁弁15を介してボイラ燃焼用空気の温度制御が行なわれる。
フラッシュタンク4内の圧力を圧力センサ10で検出し、該フラッシュタンクの耐圧強度に応じ、電磁弁15を介して圧力制御が行なわれている。
【0005】
本発明が適用の対象とする「リネン工場におけるドレンの廃熱回収」に関しては、別段の公知技術は見当たらない。詳細は次のとおりである。
キーワードを「連続洗濯機+廃熱(排熱)+回収(利用)」として検索しても、「連続洗濯機+省エネ」として検索しても該当する公知発明は無かった。
キーワードを「洗濯機+省エネ」として検索すると37件(実質)ヒットしたが、
超音波洗濯やオゾン漂白などの特殊洗濯技術に関するものが4件
運転状態や作動工程の制御であって、熱力学的要素をふくまないものが7件有り、
その他は家庭用の電気洗濯機に関するものであって、連続洗濯機を適用対象とするものではなかった。
【非特許文献1】株式会社ミヤワキ編集頒布の技術資料、第5章第3節「廃熱の回収利用」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4に示した公知技術は先人の技術的思想の遺産であって、その「ドレンをフラッシュタンクに収容して、発生する蒸気の保有熱量を回収する」という基本は大いに尊重する。 しかしながら、次の2点について改良の必要が有る。
イ.発生した蒸気を、再度、低温給水加熱器に供給して該蒸気の保有熱量を回収しているので、高温熱交換器と低温熱交換器とを設置しなければならず、設備全体を大形大重量化させている。
ロ.このままリネン工場に適用することは困難である(次の段落で詳しく説明する)。
【0007】
加熱用熱源として蒸気を使用するプラントにおいては、必然的にドレンが発生するので、誰しも「このドレンを回収して、加熱用蒸気として再利用したい」という願望を抱く。
しかしながら、一口にドレンと言い加熱用蒸気と言っても、その物理量(温度・圧力・流量)は様々であり、机上論では達成できない。
例えばリネン工場で試行してみると、ドレンや蒸気の逆流を生じたり、温度バランスが狂ったりして、有効な廃熱利用は容易でない。
【0008】
図5(A)はリネン工場における機械配置を模式的に描いた側面図である。
符号11を付して示したのは、リネン工場の主力機器たる連続洗濯機であって、洗濯物を矢印a方向へ移送しながら連続的に予洗→洗濯→すすぎを行ない、矢印bのように次工程の脱水機12へ送り出す。脱水された洗濯物は矢印cのように乾燥機13へ送られ、更に矢印dのように仕上ロール14に送り込まれてプレス仕上げされる。
上記の連続洗濯機11、乾燥機13、及び仕上ロール14に対して加熱用の蒸気が送給されており、加熱の役目を終えた蒸気はドレンになって、若しくはドレンと蒸気との気水混合流になって排出される。
【0009】
排出されたドレンは顕熱を持っているので、これを回収して工場内の他機器に供給することは、アイデアとして提案することは容易であるが、具体的な方策は簡単でない。その理由の一つは、リネン工場における機器のレイアウトが図5(A)のように直線的な1次元配列ではないことである。
(A)の側面図に描かれた配置を平面図で表すと(B)のようになる(これは典型的な1例である)。
1基の連続洗濯機11に対して1基の脱水機12と、2基のタオル用乾燥機13A1,13A2と、1基のシーツ用乾燥機13Bと、2基の仕上ロール14が配列されている。
前記のタオル用乾燥機は、タオルなどの洗濯物を完全に乾かす機能を有しており、また
前記のシーツ用乾燥機は、シーツなどの洗濯物を「ほぐされて、適宜の湿りを残した状態」まで乾かす機能を有している。
例えば連続洗濯機11内では、タオルもシーツも矢印aのように搬送しながら洗濯され、矢印bのように脱水機12へ送られる。
脱水機12で脱水された洗濯物の内、タオル類は、矢印c1,c2のようにタオル用乾燥機13A1,13A2に送られ、製品として搬出(矢印e1、e2)される。
脱水機12で脱水された洗濯物の内、シーツ類は、矢印c3のようにシーツ用乾燥機13Bに送られ、適宜に湿った状態で矢印d1,d2のように仕上ロール14Bに送り込まれ、製品として搬出(矢印e3、e4)される。
【0010】
このように構成されているリネン工場におけるドレンの廃熱回収を行なうには、1基の連続洗濯機と、3基の乾燥機と、2基の仕上ロールとを含む蒸気系統を念頭に置いて、その温度バランス、圧力バランス、及び流量バランスを崩さないように留意しなければならない。
迂闊にドレンを回収して他の機器に供給すると、工場全体の稼働バランスを崩したり、4基の同類機器の中の一部分だけの廃熱回収に終わったりする。
【0011】
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたものであって、その目的は、工場全体の稼働バランスを崩すことなく、かつ、並列に配置されている同類機器全部のドレン廃熱を安全,確実に回収して、主力機器である連続洗濯機の蒸気消費量を節減し得る廃熱回収装置及び廃熱回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の目的を達成するため、リネン工場の各種機器を接続している蒸気系統について、その温度分布と温度バランス、圧力分布と圧力バランス、及び流量分布と流量バランスを詳細に調査研究して、次の知見を得た。
イ.標準的な稼働状態において、2基の仕上ロールから排出されるドレンの圧力を、連続洗濯機の加熱に必要な程度に減圧すると、再沸騰してフラッシュ蒸気を発生し、その量は該連続洗濯機の所要蒸気量の約1/5に相当する(減圧してあるから、連続洗濯機へ供給するについて別段の不具合を生じない)。
ロ.標準的な稼働状態において、3基の乾燥機から排出されるドレンの圧力を、連続洗濯機の加熱に必要な程度に減圧すると、再沸騰してフラッシュ蒸気を発生し、その量は該連続洗濯機の所要蒸気量の約3/10に相当する(減圧してあるから、連続洗濯機へ供給するについて別段の不具合を生じない)。
ハ.上記を総合して、(エネルギー勘定としては)2基の仕上ロールから排出されるドレンから得られるフラッシュ蒸気と、3基の乾燥機から排出されるドレンから得られるフラッシュ蒸気とを連続洗濯機に供給することによって、蒸気源(ボイラ)から連続洗濯機に供給すべき蒸気量を1/2に節減できることになる。
上記のイ項,ロ項,及びハ項が本発明の理論的な原理である。しかし、これを実際の機械装置に適用するには、補助機器の選定、接続、及び運用について技術的な創作を必要とし、当業者といえども容易には実施できない。
【0013】
本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1を参照して説明すると次の通りである。この[課題を解決するための手段]の欄は、図面との対照が容易なように括弧書きで図面符号を付記してあるが、この括弧付き符号は本発明の構成を図面のとおりに限定するものではない。
仕上ロール14A、及び仕上ロール14Bは、先に図5(B)について説明したとおり、1基の連続洗濯機と協働するよう並列に配設された2基の仕上ロールである。
それぞれの仕上ロールで発生したドレンをフラッシュタンク4に送り込み、安全弁20によって「連続洗濯機11に適正な圧力(例えば0.3メガパスカル)」に減圧すると、
該フラッシュタンク4内でフラッシュ蒸気が発生する。その量は、連続洗濯機の所要蒸気量の約1/5(例えば100キログラム)に相当する。
フラッシュタンク4内で発生した蒸気と、ボイラ18で発生した蒸気とを合流させて連続洗濯機に供給することにより、連続洗濯機の所要蒸気量は見かけ上4/5に減少して、省エネ効果がえられる。
【0014】
請求項1に係る発明装置の構成は、(図1参照)、
リネン工場を構成している複数の仕上ロール機(14A、14B)から排出されるドレンを送給されるフラッシュタンク(4)が設けられていて、
上記フラッシュタンクの蒸気室(内部空間の上部)と連続洗濯機(11)とが、逆止弁(17)及び電磁弁(16)を介して連続洗濯機に接続されるとともに、
ボイラ(18)で発生した蒸気が減圧弁(24)を介して上記連続洗濯機に供給され、
かつ、前記フラッシュタンクの水室(内部空間の下部)が、スチームトラップ(9)及びバイパス弁(21)を介してボイラタンク(22)に接続されるとともに、
フラッシュタンク内の水位を検出する水位センサ(19)、及び該水位センサの検出信号を入力されて前記電磁弁(16)を開閉制御する自動制御装置(23)が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明に係る装置の構成は、
(図2参照)リネン工場を構成している複数の乾燥機(13A,13B)から排出されるドレンを送給されるフラッシュタンク(4)が設けられていて、
上記フラッシュタンクの蒸気室(内部空間の上部)と連続洗濯機(11)とが、逆止弁(17)及び電磁弁(16)を介して連続洗濯機(11)に接続されるとともに、
ボイラ(18)で発生した蒸気が減圧弁(24)を介して上記連続洗濯機に供給され、
かつ、前記フラッシュタンクの水室(内部空間の下部)が、スチームトラップ(9)及びバイパス弁(21)を介してボイラタンク(22)に接続されるとともに、
フラッシュタンク内の水位を検出する水位センサ(19)、及び該水位センサの検出信号を入力されて前記電磁弁(16)を開閉制御する自動制御装置(23)が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明に係る装置の構成は、
(図3参照)リネン工場を構成している複数の仕上ロール機(14A、14B)から排出されるドレンを送給される第1のフラッシュタンク(4)、及び、前記と同じリネン工場を構成している複数の乾燥機(13A、13B)から排出されるドレンを送給される第2のフラッシュタンク(4′)が設けられていて、
上記第1のフラッシュタンク(4)の蒸気室(内部空間の上部)と連続洗濯機(11)とが、逆止弁(17)及び電磁弁(16)を介して接続されるとともに、前記第2のフラッシュタンク(4′)の蒸気室と連続洗濯機とが、逆止弁(17)及び電磁弁(16)を介して接続されており、
ボイラ(18)で発生した蒸気が減圧弁(24)を介して前記連続洗濯機に供給され、
かつ、前記第1,第2双方のフラッシュタンク(4,4′)それぞれの水室(内部空間の下部)が、それぞれのスチームトラップ(9)及びバイパス弁(21)を介して同一のボイラタンク(22)に接続されるとともに、
第1,第2双方のフラッシュタンク(4,4′)それぞれの水室内の水位を検出するそれぞれの水位センサ(19)及び双方の水位センサの検出信号を入力されて前記双方の電磁弁(16)を個別に開閉制御する自動制御装置(23)が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明に係る発明方法の構成は、
(図3参照) リネン工場を構成している複数の仕上ロール機(14A、14B)及び/又は複数の乾燥機(13A、13B)から排出されるドレンをフラッシュタンク(4,4′)に回収し、
該フラッシュタンク内で発生した蒸気を、電磁弁(16)を介して連続洗濯機(11)に供給するとともに、
ボイラ(18)で発生させた蒸気の圧力を、前記フラッシュタンク内で発生した蒸気の圧力と同程度に減圧して前記連続洗濯機に供給し、
かつ、前記フラッシュタンク内の水位を検出(19)して、検出した水位が所定値に達したとき、
前記電磁弁(16)を閉塞することによって、フラッシュタンク内のドレンを連続洗濯機に流入させないことを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る発明方法の構成は、前記請求項4に記載した発明方法の構成要件に加えて、
フラッシュタンク内で発生した蒸気とボイラで発生させた蒸気とを合流させて、連続洗濯機が必要とする加熱蒸気を供給し、
かつ、ボイラで発生させた蒸気の圧力を、フラッシュタンク内発生蒸気の圧力程度まで減圧するとともに、
ボイラ発生蒸気の管路、及びフラッシュタンク内発生蒸気の管路に逆止弁を設けて、蒸気の逆流を防止することを特徴とする。
【0019】
請求項6に係る発明方法の構成は、前記請求項4または請求項5に記載した発明方法の構成要件に加えて、
(図3参照)フラッシュタンク(4,4′)の中で蒸気を発生させた残りのドレン熱水をボイラタンク(22)に貯溜し、ドレンの保有熱量をボイラ給水として利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明装置を適用すると、リネン工場に配設されている複数基の仕上ロール機から排出されるドレンをフラッシュタンクに送り込んで、蒸気を発生させ、この蒸気を連続洗濯機へ送給することにより、該連続洗濯機が必要とする蒸気量の約1/5を節約することができる。
【0021】
請求項2の発明装置を適用すると、リネン工場に配設されている複数基の乾燥機から排出されるドレンをフラッシュタンクに送り込んで、蒸気を発生させ、この蒸気を連続洗濯機へ送給することにより、該連続洗濯機が必要とする蒸気量の約3/10を節約することができる。
【0022】
請求項3の発明装置を適用すると、リネン工場に配設されている複数基の仕上ロール機及び複数基の乾燥機から排出されるドレンをフラッシュタンクに送り込んで、蒸気を発生させ、この蒸気を連続洗濯機へ送給することにより、該連続洗濯機が必要とする蒸気量の約1/2を節約することができる。
【0023】
請求項4の発明方法を適用すると、リネン工場に配設されている複数基の仕上ロール機及び/又は複数基の乾燥機から排出されるドレンをフラッシュタンクに送り込んで、蒸気を発生させ、この蒸気を連続洗濯機へ送給することにより、該連続洗濯機が必要とする蒸気量を節減することができる。
【0024】
請求項5の発明方法を、前記請求項4の発明方法に併せて適用すると、前記請求項4の発明方法を、安全かつ円滑に実施することができる。
【0025】
請求項6の発明方法を、前記請求項4又は請求項5の発明方法に併せて適用すると、
仕上ロール機や複数基の乾燥機から排出されるドレンが保有していた熱量を、蒸気として連続洗濯機に供給するのみでなく、蒸気を発生させた後に残る熱水の顕熱をも、ボイラ給水の温度上昇という形で有効に利用することができ、言うなればドレン保有熱量の完全利用を可能ならしめる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は本発明装置に係る第1の実施形態(請求項1に対応)を示す模式的な蒸気・制御系統図である。
リネン工場にはボイラ18が設けられていて、工場内の各機器に対し約0.8メガパスカルの蒸気を供給している。
本例のリネン工場には、1基の連続洗濯機11と2基の仕上ロール14A、14Bとが配設されている(その他の機器は図示を省略したが、工場の全貌は前掲の図5のごとくである)。
【0027】
4基の仕上ロールは、それぞれボイラ18から約0.8メガパスカルの蒸気を供給されてプレスロールを加熱している。それぞれの仕上ロールからはドレンが排出される。これらのドレンは、フラッシュタンク4に送り込まれる。
上記フラッシュタンク4内の圧力は、安全弁20によって0.3メガパスカルに制御されている。
0.8メガパスカルの蒸気から発生したドレンは、フラッシュタンク4内で0.3メガパスカルに減圧されてフラッシュ蒸気を発生する。
【0028】
フラッシュタンク4内で発生した蒸気は、電磁弁16及び逆止弁17を介して連続洗濯機11に供給される。該連続洗濯機における蒸気の役目は洗濯液の加熱であるから、0.3メガパスカルに減圧されたフラッシュ蒸気で充分である。
蒸気の質について不満は無いが、その再蒸発する流量は仕上ロール2基合計で毎時100キログラムであって、連続洗濯機の蒸気所要量毎時500キログラムに比して不足である。
なお、本例においては仕上ロール1基あたり毎時500キログラムの蒸気をボイラ18から供給され、2基で1000キログラム/時の蒸気を供給されるとともに、ほぼ同量の
ドレンを発生している。
【0029】
前記1000キログラム/時のドレンをフラッシュタンク4内に導いて0.3メガパスカルに減圧すると、ドレン量の約10%、すなわち約100キログラム/時の蒸気が発生する。
この蒸気量は、連続洗濯機11の蒸気消費量の1/5強に相当する。従って、この実施形態を実施することにより、ボイラ18から連続洗濯機へ供給すべき蒸気量が4/5に節減される。
(注)連続洗濯機の蒸気所要量500キログラム/時の内、100キログラム/時をフラッシュタンクから補うので、ボイラから直接供給すべき蒸気量は4/5(=0.8)で足りる。上記の「4/5に節減される」とは、運転状態の変動を考慮しても、なお余裕をもって達成し得る目標である。
気化しない残り90%のドレン、約900キログラム/時は、スチームトラップ9を介して取り出し、ボイラタンク22に蓄える。これにより、ボイラタンク内のボイラ用給水が昇温して省エネ効果が得られる。
【0030】
上述のように、連続洗濯機11の所要蒸気量の1/5をフラッシュタンク4から供給しても、これだけでは連続洗濯機を稼働させるに足りないので、ボイラ18からの蒸気を併せて連続洗濯機に供給する。
この場合、蒸気の圧力バランスを保つため減圧弁24を設けて、約0.8メガパスカルの蒸気を0.3メガパスカル(フラッシュタンク4で発生する蒸気の圧力と同じ)に減圧するとともに、
ボイラ18と連続洗濯機11との間にも、フラッシュタンク4と連続洗濯機11との間にも逆止弁17を設けて逆流を防止する。
既設のリネン工場に本発明を適用して改造する場合、安全を期するため特に前記逆止弁17の設置が重要である。
【0031】
前述のごとく、フラッシュタンク4から約900キログラム/時のドレンが、スチームトラップ9を経て取り出されるので、該スチームトラップ9は大容量の機器となり、しかも、ほとんど液体の水ばかりを通していることになる。
そこで、スチームトラップが小形の機器で足りるようにバイパス弁21を設けてスチームトラップ9の流量を軽減することが望ましい。
前記の安全弁20は、フラッシュタンク4の内圧が耐圧限度に達しないように保護する役目と、ドレンを調圧してフラッシュ蒸気を発生させる役目とを兼ねている。
【0032】
前記フラッシュタンク4の中で、ドレンから発生した蒸気は内部空間の上部に集まって蒸気室を形成し、ドレンは内部空間の下部に溜まってドレン室を形成する。この場合、蒸気室とドレン室との間に仕切り板は無い。譬えていえば、油圧シリンダのボトム室とヘッド室とのように自然に形成されている区域の便宜的な呼び名である。
フラッシュタンク4内の水面が上昇し過ぎると、液体のままのドレンが連続洗濯機11に流入する危険を生じる(重大事故は招かないが…)。
そこで、フラッシュタンク4の中に水位センサ19を設けてある。該水位センサの検出信号は自動制御装置23に入力され、予め与えられているプログラムに従って電磁弁16を開閉制御する。
【0033】
前記自動制御装置23は、フラッシュタンク4からの蒸気流量を規制する電磁弁16を絞れば、その分だけ電磁弁15を開いてボイラ18からの蒸気流量を増加させ、連続洗濯機11の所要蒸気量を確保する。
本発明を実施する場合、前記の自動制御装置23は必ずしも「ドレン回収専用の独立した制御回路」であることを要しない。リネン工場の全体を制御している自動制御装置に、ドレン回収用のプログラムを与えることができれば、それでも良い。
また本発明の応用例として、フラッシュタンク4から取り出した液状のドレンを、ボイラタンク22以外の機器に与えても良い。
【0034】
図2は本発明装置に係る第2の実施形態(請求項2に対応)を示す模式的な蒸気・制御系統図である。
前掲の図1を参照して先に説明した第1の実施形態が、2基の仕上ロールで発生したドレンを回収する機構であったのに比して、第2の実施形態(図2)は4基の歓送機で発生したドレンを回収する機構である。
両者の基本的な原理は同様である。同一の符号を付した部材は同様ないし類似の構成部材であるから詳細な説明を省略する。
【0035】
3基の乾燥機13A1,13A2、13Bのそれぞれからは、3基合計で150キログラム/時のドレンが発生する。これをフラッシュタンク4′に導いて収納し、0.3メガパスカルに減圧して蒸気を発生させる。
発生した蒸気は、電磁弁16及び逆止弁17を介して連続洗濯機11に供給する。
該連続洗濯機は500キログラム/時の蒸気を必要とするので、不足分350キログラム/時の蒸気はボイラ18から供給する。
上記ボイラ18からの蒸気は、減圧弁24によって0.3メガパスカルに減圧し、電磁弁15及び逆止弁17を介して連続洗濯機に供給する。
【0036】
フラッシュタンク4内で蒸気を発生させて残った液状のドレンは、スチームトラップ9及びバイパス弁21の並列管路を介して取り出し、ボイラタンク22に貯溜する。
フラッシュタンク4内の水位を水位センサ19で検出し、自動制御装置23で水位を制御することにより、ドレンが連続洗濯機へ流入することを防いでいる。
上記の自動制御装置23は、水位が上がり過ぎれば電磁弁16を絞る。これによって、フラッシュタンク4から連続洗濯機11へ送られる蒸気の流量が制限され、タンク内水位が低下する。
上記のように、フラッシュタンク4から連続洗濯機11へ送られる蒸気の流量が制限された分だけ、電磁弁15を開いてボイラ18からの蒸気流量を増加させ、連続洗濯機に供給される蒸気流量の合計を一定に保つ。
【0037】
図3は本発明装置に係る第3の実施形態(請求項3に対応)を示す模式的な蒸気・制御系統図である。
この第3の実施形態の基本的な構成は、仕上ロールのドレンを回収する第1の実施形態と、乾燥機のドレンを回収する第2の実施形態とを、同一のリネン工場に適用したものに相当する。
前掲の図1及び図2と同一の符号を付したものは、前記の実施形態におけると同様ないし類似の構成部材である。
【0038】
本例のリネン工場には、元来、1基の連続洗濯機11と、1基のボイラ18と、2基の仕上ロール14A、14Bと、3基の乾燥機13A1,13A2、13Bとが設けられていた。
本実施形態においては、上記2基の仕上ロールに対応せしめて1基のフラッシュタンク4を設置するとともに、3基の乾燥機に対応せしめて1基のフラッシュタンク4′を設置してある。
自動制御装置23は、フラッシュタンク4の蒸気管路とフラッシュタンク4′の蒸気管路とに共用されている。
本実施形態において、2個のフラッシュタンク4、4′を合体せしめて、1個のフラッシュタンクを設けることも可能であり、本発明の技術的範囲に属する。しかし、制御の容易さや運転の安定性を考慮すると、本図3のように2個のフラッシュタンク4、4′を設けることが望ましい。
【0039】
本実施形態においては、2基の仕上ロール14A、14Bから0.3メガパスカルの蒸気100キログラム/時が回収され、3基の乾燥機13A1,13A2、13Bからも0.3メガパスカルの蒸気150キログラム/時が回収される。
両者を合計すると、連続洗濯機11の所要蒸気流量500キログラム/時の1/2以上を賄い得る。
リネン工場の運転状態が一定不変ではなく若干変動することも考慮して、不足分の蒸気はボイラ18から供給する。
フラッシュタンク4及び同4′からの蒸気が0.3メガパスカルに制御されていることにバランスさせて、ボイラ18からの蒸気を電磁弁15で0.3メガパスカルに調圧して合流させる。
【0040】
次に、前記実施形態の応用例について説明する。
洗濯物をほぐして、湿ったままで排出するシーツ用乾燥機(13B)は、蒸気圧約3メガパスカルでも使用することができる(その次の工程で、仕上ロールによって完全に乾燥されるから不具合を生じない)。
このような場合でも、前記の実施形態におけると同様にして蒸気消費量の節減が可能である。
【0041】
平均的な規模のリネン工場における連続洗濯機の蒸気消費を金額に換算すると、年間約600万円である。
前記第1の実施形態(図1)又は第2の実施形態(図2)によって蒸気量の3/10を節減すれば年間約180万円の運転コスト低減になり、
前記第3の実施形態(図3)によって蒸気量の1/2を節減すれば年間約300万円の運転コスト低減になる。
企業としての立場から見たとき、年間300万円のコスト低減は貴重な経済的効果である。
しかし、燃料資源の節約という国家的な見地に立てば、その効果は一層貴重というべきである。
更に、二酸化炭素の排出量減少という国際的な立場から見れば、本発明の効果は極めて貴重である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るリネン工場におけるドレン廃熱回収装置の第1の実施形態(請求項1に対応)を示し、模式的に描いた断面図に配管系統シンボルマーク及び制御系統シンボルマークを付記した図である。
【図2】本発明に係るリネン工場におけるドレン廃熱回収装置の第2の実施形態(請求項2に対応)を示し、模式的に描いた断面図に配管系統シンボルマーク及び制御系統シンボルマークを付記した図である。
【図3】本発明に係るリネン工場におけるドレン廃熱回収装置の第3の実施形態(請求項3に対応)を示し、模式的に描いた断面図に配管系統シンボルマーク及び制御系統シンボルマークを付記した図である。
【図4】廃熱利用に関する公知例を描いた模式図である。
【図5】リネン工場における機器の配置、及び洗濯物の搬送経路を描いた模式的な平面図である。
【符号の説明】
【0043】
3…高温熱交換器
3a…熱交換パイプ
3b…予熱パイプ
4…フラッシュタンク
5…低温熱交換器
6…低温給水加熱器
7…温度センサ
8…開閉弁
9…スチームトラップ
10…圧力センサ
11…連続洗濯機
12…脱水機
13A1、13A2…タオル用の乾燥機
13B1,13B2…シーツ用の乾燥機
14…仕上ロール
14A,14B…仕上ロール
15、16…電磁弁
17…逆止弁
18…ボイラ
19…水位センサ
20…安全弁
21…バイパス弁
22…ボイラタンク
23…自動制御装置
24…減圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リネン工場を構成している複数の仕上ロール機から排出されるドレンを送給されるフラッシュタンクが設けられていて、
上記フラッシュタンクの蒸気室と連続洗濯機とが、逆止弁及び電磁弁を介して連続洗濯
機に接続されるとともに、
ボイラで発生した蒸気が減圧弁を介して上記連続洗濯機に供給され、
かつ、前記フラッシュタンクの水室が、スチームトラップ及びバイパス弁を介してボイラタンクに接続されるとともに、
フラッシュタンク内の水位を検出する水位センサ、及び該水位センサの検出信号を入力されて前記電磁弁を開閉制御する自動制御装置が設けられていることを特徴とする、リネン工場におけるドレン廃熱回収装置。
【請求項2】
リネン工場を構成している複数の乾燥機から排出されるドレンを送給されるフラッシュタンクが設けられていて、
上記フラッシュタンクの蒸気室と連続洗濯機とが、逆止弁及び電磁弁を介して連続洗濯
機に接続されるとともに、
ボイラで発生した蒸気が減圧弁を介して上記連続洗濯機に供給され、
かつ、前記フラッシュタンクの水室が、スチームトラップ及びバイパス弁を介してボイラタンクに接続されるとともに、
フラッシュタンク内の水位を検出する水位センサ、及び該水位センサの検出信号を入力されて前記電磁弁を開閉制御する自動制御装置が設けられていることを特徴とする、リネン工場におけるドレン廃熱回収装置。
【請求項3】
リネン工場を構成している複数の仕上ロール機から排出されるドレンを送給される第1のフラッシュタンク(4)、及び、同リネン工場を構成している複数の乾燥機から排出されるドレンを送給される第2のフラッシュタンク(4′)が設けられていて、
上記第1のフラッシュタンクの蒸気室と連続洗濯機とが、逆止弁及び電磁弁を介して接続されるとともに、前記第2のフラッシュタンクの蒸気室と連続洗濯機とが、逆止弁及び電磁弁を介して接続されていて、
ボイラで発生した蒸気が減圧弁を介して前記連続洗濯機に供給され、
かつ、前記第1,第2双方のフラッシュタンクそれぞれの水室が、それぞれのスチームトラップ及びバイパス弁を介して同一のボイラタンクに接続されるとともに、
第1,第2双方のフラッシュタンクそれぞれの水室内の水位を検出するそれぞれの水位センサ、及び双方の水位センサの検出信号を入力されて前記双方の電磁弁を個別に開閉制御する自動制御装置が設けられていることを特徴とする、リネン工場におけるドレン廃熱回収装置。
【請求項4】
リネン工場を構成している複数の仕上ロール機、及び/又は複数の乾燥機から排出されるドレンをフラッシュタンクに回収し、
上記フラッシュタンク内で発生した蒸気を、電磁弁を介して連続洗濯機に供給するとともに、
ボイラで発生させた蒸気の圧力を、前記フラッシュタンク内発生蒸気の圧力と同程度に減圧して前記連続洗濯機に供給し、
かつ、前記フラッシュタンク内の水位を検出し、検出した水位が所定値に達したとき、
前記電磁弁を閉塞することによって、フラッシュタンク内のドレンを連続洗濯機に流入させないことを特徴とする、リネン工場におけるドレン廃熱回収方法。
【請求項5】
フラッシュタンク内で発生した蒸気とボイラで発生させた蒸気とを合流させて、連続洗濯機が必要とする加熱蒸気を供給し、
かつ、ボイラで発生させた蒸気の圧力を、フラッシュタンク内発生蒸気の圧力程度まで減圧するとともに、
ボイラ発生蒸気の管路、及びフラッシュタンク内発生蒸気の管路に逆止弁を設けて、蒸気の逆流を防止することを特徴とする、請求項4に記載したリネン工場におけるドレン廃熱回収方法。
【請求項6】
フラッシュタンクの中で蒸気を発生させた残りのドレン熱水をボイラタンクに貯溜し、ドレンの保有熱量をボイラ給水として利用することを特徴とする、請求項4または請求項5に記載したリネン工場におけるドレン廃熱回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−198038(P2009−198038A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38200(P2008−38200)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)