説明

リフタ用爪ロック機構

【課題】被搬送物を掛止可能な所定タイミングで掛止爪を回動させる回動駆動部を有した専用の爪回動機構が不要で、かつ掛止爪のロック操作およびロック解除操作を、常時、安定して行えるリフタ用爪ロック機構を提供する。
【解決手段】掛止爪69のロック体71と、ロック体71をロック位置まで回動させるロックストライカS1と、ロック体71をロック解除位置まで回動させる解除ストライカS2とを備える。これら全ての動作の駆動源を、油圧シリンダによるスライダ60の昇降力とした。この結果、パレットを掛止可能な所定のタイミングで掛止爪69を回動させる従来の回動駆動部を有した専用の爪回動機構が不要となる。掛止爪69のロック操作およびロック解除操作を、常時、安定して行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リフタ用爪ロック機構、詳しくは専ら掛止爪のロック操作およびその解除操作に使用されるアクチュエータを有さず、スライダの昇降力を駆動源とし、掛止爪を例えばパレットが掛止可能な爪先の突出状態でロック、および、その解除を行うリフタ用爪ロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリフタ用爪ロック機構として、例えば本願発明の特許出願人が先に特許出願し、その後、公開されたパレタイザに組み込まれたものが知られている(特許文献1)。
パレタイザは、門形の固定枠と、この固定枠の一部を構成する両側枠部をガイドレールにして、昇降駆動部により昇降される門形の昇降枠と、昇降枠の一部を構成する両昇降用側枠部にそれぞれ設けられ、複数のパレットを段積み状態のパレット群として両側方から掛止する一対の掛止爪とを備えている。各掛止爪は、両昇降用側枠部に対して、それぞれ水平軸を介して、両昇降用側枠部内の起立収納位置と、両昇降用側枠部の対向側より外方のフランジ掛止位置との間で回動可能に配設されている。
【0003】
従来のリフタ用爪ロック機構は、パレットに両掛止爪を掛止する爪掛止部材と、パレットから両掛止爪を離反させる爪掛止解除部材とを有している。爪掛止部材は、固定枠の両側枠部に配設され、かつリフタにより上昇中の両掛止爪が受け取り位置に配置された最下段のパレットを通過後に両掛止爪の一部にそれぞれ当接され、このときの当接圧で弾性変形しながら、両掛止爪の一部を乗り越えて2段目のパレットのフランジの高さに達するまでの間に、水平軸を中心にして両掛止爪をフランジ掛止位置までそれぞれ回動させる1対の弾性突起を具備している。爪掛止解除部材は、両掛止爪の元部に配設され、水平軸を中心にして、両掛止爪を自重により起立側へ回動させることで、両掛止爪を対応する起立収納位置に自動的に収納可能なウエイトを具備している。
【0004】
パレタイザの運転時、固定枠の両側枠部をガイドにして昇降駆動部により昇降枠を昇降させることで、両掛止爪が昇降する。また、両掛止爪は、それぞれの元部に配設されたウエイトにより、対応する水平軸を中心にして起立側へ回動し、両起立収納位置にそれぞれ自動的に収納される。最下段のパレットの分離後におけるパレット群の上昇時には、両掛止爪が受け取り位置の最下段のパレットを通過後、対応する掛止爪の一部に弾性突起がそれぞれ当接される。これにより、両弾性突起は、その当接圧により弾性変形しながら両掛止爪の一部を乗り越え、さらに両弾性突起が2段目のパレットのフランジの高さに達するまでの間に、両掛止爪を、対応する起立収納位置からフランジ掛止位置までそれぞれ回動させる。
【0005】
このように、昇降枠には両掛止爪を配設し、両掛止爪をウエイトによる自動起立構造とし、さらにリフタによる両掛止爪の上昇に伴い、両弾性突起を両掛止爪の一部に当接して両掛止爪を開方向に回動させる構造としたので、両掛止爪を所定タイミングで回動させる回動駆動部を有した専用の爪回動機構が不要となる。その結果、装置構成が簡単になるとともに、装置の低コスト化が図れる。
【特許文献1】特開2007−137550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のリフタ用爪ロック機構によれば、このように下段のパレットの分離後におけるパレット群の上昇時には、両掛止爪が受け取り位置の最下段のパレットを通過後、対応する掛止爪の一部に弾性突起がそれぞれ当接されていた。これにより、両弾性突起は、その当接圧により弾性変形しながら両掛止爪の一部を乗り越え、さらに両弾性突起が2段目のパレットのフランジの高さに達するまでの間に、両掛止爪を、対応する起立収納位置からフランジ掛止位置までそれぞれ回動させていた。
このように、弾性突起を採用していたので、例えば経時的な弾性突起の劣化(硬化)などにより、弾性突起の弾性力が低下した場合には、掛止爪のロック操作およびロック解除操作を安定して行うことができなかった。
【0007】
この発明は、被搬送物を掛止可能な所定タイミングで掛止爪を回動させる回動駆動部を有した専用の爪回動機構が不要で、かつ掛止爪のロック操作およびロック解除操作を、常時、安定して行うことができるリフタ用爪ロック機構を提供することを目的としている。
また、この発明は、掛止爪を堅固にロックすることができるリフタ用爪ロック機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、被搬送物を掛止する掛止爪が、軸線が水平な回動軸を中心にして、前記被搬送物の掛止位置と前記掛止爪の収納位置との間で出し入れ自在に取り付けられたスライダを、昇降駆動部によりガイドレールに沿って昇降させるリフタに搭載され、かつ、前記掛止爪を前記収納位置へ付勢する爪収納ばねのばね力に抗して、前記掛止爪を前記掛止位置でロックおよびそのロックを解除するリフタ用爪ロック機構において、軸線が水平な別の回動軸を中心にして回動自在に前記スライダに設けられ、ロック位置まで回動されることで前記掛止爪を前記掛止位置にロックするロック体と、前記ガイドレールに設けられ、前記スライダの昇降に伴って前記ロック体に当接し、前記爪収納ばねのばね力に抗して、前記ロック体を前記ロック位置まで回動させるロックストライカと、前記ガイドレールに設けられ、前記スライダの昇降に伴って前記ロック位置のロック体に前記ロックストライカの当接方向とは反対方向から当接し、前記ロック体を、前記爪収納ばねのばね力によって前記収納位置へ収納可能なロック解除位置まで回動させる解除ストライカとを備えたリフタ用爪ロック機構である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、掛止爪のロック時には、昇降駆動部によりスライダがガイドレールに沿って上昇または下降中、ロック体がロックストライカに当接する。その後もスライダが同一方向への移動(上昇または下降)を継続することで、ロック体が別の回動軸を中心にしてロック位置まで除々に回動する。その途中、ロック体が掛止爪に当接し、さらに爪収納ばねのばね力に抗して、ロック体が回動軸を中心にして掛止爪を掛止位置まで回動させるとともに、ロック体がロック位置に達することで、掛止爪の掛止位置でのロック状態が保持(ロック)される。その後は、スライダの移動をさらに継続することで、所定タイミングで被搬送物が掛止爪に掛止される。
【0010】
ロック解除時には、昇降駆動部によりスライダがガイドレールに沿って上昇または下降中、ロック体がロックストライカの当接方向とは反対方向から解除ストライカに当接する。その後もスライダが同一方向への移動を継続することで、別の回動軸を中心にして、ロック体が爪収納ばねのばね力により収納位置へ収納可能なロック解除位置まで回動され、掛止爪のロック状態が解除される。
これら全ての作動は、リフタに設けられた昇降駆動部により行われる。そのため、被搬送物を掛止可能な所定のタイミングで掛止爪を回動させる従来の回動駆動部を有した専用の爪回動機構が不要で、掛止爪のロック操作およびロック解除操作を、常時、安定して行うことができる。
【0011】
リフタの種類としては、例えばパレタイザ用のリフタの他、各種の物品搭載用リフタを採用することができる。
被搬送物としては、例えばパレット、ボックス、所定のワークなど、リフタの用途により適宜選択される。
被搬送物の素材としては、例えば各種の合成樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート、ウレタン樹脂、PEEK、ポリ塩化ビニルなど)、各種の金属(鉄、鋼、アルミニウム、銅、青銅、黄銅など)、各種のセラミックス(石英、シリカ、ガラスなど)、各種の木(杉、松、檜、樫、桐など)を採用することができる。
【0012】
被搬送物の形状としては、例えば平面視して、矩形状、円形状、楕円形状などを採用することができる。その他、任意の形状のものでもよい。
被搬送物は1つでも、2つまたは3つ以上の被搬送物を段積み状態とする被搬送物群でもよい。
被搬送物がパレットの場合、被搬送物の段積み状態とは、2つ以上のパレットを、それぞれの開口部を上に向けて重ね合わせた状態をいう。各パレットは、同一形状で同一大きさのものが段積みし易い。
【0013】
昇降駆動部としては、例えば油圧シリンダ、油圧モータ、電動シリンダ、電動モータなどを採用することができる。
リフタによる被搬送物の昇降機構としては、例えばシリンダ機構、ねじ送り機構、スライダ・クランク機構、四節機構、パンタグラフ機構、カム機構、ラチェット機構、鎖伝動機構などを採用することができる。
掛止爪により掛止される被搬送物が段積み状態のものの場合、分離手段を用いて、最下段の被搬送物(例えばパレット)のみを2段目以降の被搬送物から分離することができる。
【0014】
ガイドレールは、リフタに1本でも、2本以上形成してもよい。また、ガイドレールの長さ方向は、垂直方向でも、垂直に対して斜め方向でもよい。
スライダの形状は任意である。例えば門形の枠体、6面箱体などを採用することができる。
爪収納ばねとしては、例えば板ばね、弦巻ばねなどを採用することができる。
掛止爪の使用本数は、被搬送物を掛止可能であれば1本でも、2本以上でもよい。
【0015】
ロック体の形状は任意である。例えば、板形状、ブロック形状などを採用することができる。
ロックストライカおよび解除ストライカの素材としては、例えば各種の金属(鉄、ステンレスなど)、各種の合成樹脂(ABS樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレンなど)、各種のセラミックスなどを採用することができる。
ガイドレール上において、ロックストライカと解除ストライカとは上下方向に離間されている。
ロック解除位置とは、解除ストライカがロック体に当接することで、爪収納ばねのばね力も相まって掛止爪がロック解除され、収納位置へ収納可能な位置である。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記ロック体の先端部には、前記掛止爪に押し当てられる爪押しローラが、前記別の回動軸と平行な他の回動軸を中心にして回動自在に取り付けられ、前記掛止爪のロック位置を、前記別の回動軸の軸線を含む仮想の垂直面より、前記スライダの被搬送物側の面に近い位置とした請求項1記載のリフタ用爪ロック機構である。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、昇降駆動部によりスライダがガイドレールに沿って上昇または下降中、ロック体がロックストライカに当接する。その後も、スライダが同一方向への移動を継続することで、ロック体が別の回動軸を中心にしてロック位置まで除々に回動する。その途中、爪押しローラが掛止爪に当接し、その後は、爪押しローラが掛止爪の当接面を爪先方向へ転動しながら、爪収納ばねのばね力に抗して、ロック体が掛止爪を掛止位置まで回動させる。このとき、爪押しローラによる掛止爪のロック位置は、別の回動軸の軸線を含む仮想の垂直面より掛止爪の爪先方向の所定位置である。この回動位置まで爪押しローラが達していれば、このように爪押しローラが掛止爪の当接面を転動することでロック体による掛止爪のロックが解除され易い状態において、爪収納ばねのばね力の作用により、掛止爪が回動軸を中心にして収納位置へ向かって回動しようとしても(引き戻されようとしても)、爪押しローラが掛止爪の堅固な楔となり、掛止爪の収納位置への回動を確実に阻止することができる。すなわち、掛止爪の回動軸の軸線とロック体の別の回動軸の軸線とが互いに平行に離反しているので、爪収納ばねのばね力が作用する掛止爪の回転力により、ロック体をロック位置から外せる限界位置は、別の回動軸の軸線方向から視たとき、別の回動軸を中心とした他の回動軸の回動軌跡と、別の回動軸の軸線を含む仮想の垂直面とが交わる位置となる。これにより、爪押しローラがスライダの被搬送物側の面に近くなれば、掛止爪の回転力がロック体をロックする力として作用することになる。
【0018】
「別の回動軸の軸線を含む仮想の垂直面より、スライダの被搬送物側の面に近い位置」とは、別の回動軸の軸線方向から視たとき、別の回動軸の軸線(点)を含む仮想の垂直面(線)と、スライダの被搬送物側の面(線)とで仕切られた領域の所定位置をいう。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された発明によれば、掛止爪を掛止位置にロックするロック体と、ロック体をロック位置まで回動させるロックストライカと、ロック体をロック解除位置まで回動させる解除ストライカとを備え、これら全ての部材の動作が、昇降駆動部によるスライダの昇降力を駆動源として行われるように構成したので、被搬送物を掛止可能な所定のタイミングで掛止爪を回動させる従来の回動駆動部を有した専用の爪回動機構が不要で、かつ掛止爪のロック操作およびロック解除操作を、常時、安定して行うことができる。
【0020】
特に、請求項2に記載の発明によれば、爪押しローラがロック体の先端部に回動自在に取り付けられ、また掛止爪のロック位置を、別の回動軸の軸線を含む仮想の垂直面より、スライダの被搬送物側の面に近い位置としたので、爪押しローラが掛止爪の当接面を転動してロック体による掛止爪のロックが解除され易い状況下で、爪収納ばねのばね力の作用により、掛止爪が回動軸を中心にして収納位置へ向かって回動しても、爪押しローラが掛止爪の堅固な楔となり、掛止爪の収納位置への回動を確実に阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。なお、ここでは説明の都合上、被搬送物であるパレットの搬出方向をパレタイザの前方向、その反対方向を後方向、その搬出方向と直交する一方向を右方向、その他方向を左方向とする。
【実施例1】
【0022】
図1において、10はこの発明の実施例1に係るリフタ用爪ロック機構で、図2および図3に示すパレタイザPに搭載されている。まず、パレタイザPを説明する。
図2および図3において、パレタイザPは、同一形状、同一大きさの複数のパレット11を、段積み状態のパレット群11Aとして格納するパレット格納部12と、パレット格納部12に設けられ、1台のみの油圧シリンダ(昇降駆動部)13を有し、チェーン式動力伝達部を介してパレット群11Aを昇降させるリフタ14と、パレット群11Aから、最下段のパレット11のみを分離する前記リフタ用爪ロック機構10とを備えている。
【0023】
以下、パレタイザPの構成を具体的に説明する。
パレタイザPは、四隅の裏側にキャスタ19が配設された手押し式の台車20を本体とする。台車20の左右側には、前部より後部が高くなった台形状の側板21が立設されている。台車20のうち、両側板21により区画された空間の前部が、前記パレット格納部12を構成している。両側板21の後部には、前記リフタ14が設けられている。
両側板21の前後方向の中間部には、ロッドを上向きにした前記油圧シリンダ13がそれぞれ立設されている。各ロッドの先端部には、軸線が左右方向へ向いた回転軸にスプロケット50が軸支されている。スプロケット50には、前記リフタ14へ動力を伝達するチェーン式動力伝達部のチェーンが架け渡されている。
【0024】
前記リフタ14は、両側板21の後部において、前後方向に離間された一対の垂直なガイドレール51を有している。両ガイドレール51は、左右方向へ平行に離間した一対の側板52を横板53(図5)により平面視してコの字形に連結した枠部材で、互いの開口側を対峙させて配置されている。ガイドレール51の両側板52のうち、パレタイザPの外側に配置される側板52の元部には、後述するロックストライカS1の高さ位置を調整する上下方向に長い第1の高さ調整長孔54と、後述する解除ストライカS2の高さ位置を調整する上下方向に長い第2の高さ調整長孔55とが、側板25の元側の辺へ向かって順に形成されている。両ストライカS1,S2は、2本のビス56により側板52にそれぞれ螺着される。ロックストライカS1の方が、解除ストライカS2より上方に配置される。ロックストライカS1は、第1の高さ調整長孔54に沿って高さ位置が調整され、解除ストライカS2は第2の高さ調整長孔55に沿って高さ位置が調整される。
【0025】
両ガイドレール51間には、前記リフタ用爪ロック機構10が搭載されたスライダ60が、垂直方向へ昇降自在に収納されている。
図1,図4〜図6に示すように、スライダ60は、平行に離間した一対の側枠板61と、両側枠板61の上端部を連結する水平な上枠板62とにより構成された側面視して下向きコの字形の枠体である。上枠板62の長さ方向の両端部のうち、両ストライカS1,S2との対峙側の部分には、両ストライカS1,S2が通過する平面視して矩形状の通過口63がそれぞれ形成されている。また、上枠板62の長さ方向の中間部には、一方のチェーン式動力伝達部のチェーンの先端部が連結されている。チェーンの元部は、前記油圧シリンダ13のロッドの先端に連結されている(図2)。
【0026】
スライダ60の両側枠板61の側板21側の辺には、上下方向に長い取り付け板64がそれぞれ直交して連結されている。両取り付け板64の両ストライカ側の面には、上下方向に長い一対の離間した側板65の一端部間を、幅狭な底板66により平面視してコの字形に連結した支持ブラケット67がそれぞれ固定されている。各底板66のうち、その長さ方向の両端部を除く全域には、上下方向に長い矩形状の開口部68がそれぞれ形成されている。これらの開口部68は、掛止爪69の爪先(先部)の出し入れ口である。両取り付け板64のうち、開口部68に対峙する部分には、開口部68と同じ形状で同じサイズの別の開口部70がそれぞれ形成されている。
両ガイドレール51および側板21のうち、各開口部70と対峙する部分には、スライダ60の昇降に伴い、両掛止爪69の爪先を昇降させるスライド孔21a,51aが、両ガイドレール51および側板21の上下方向の略全長にわたってそれぞれ形成されている。
【0027】
支持ブラケットの両側板65の上下方向の中間部付近には、両側板65の他端側の辺から一端側の辺付近まで切欠された切欠部65aがそれぞれ形成されている。これにより、両側板65は、それぞれが側面視して略矩形状の板片を構成する、上部とこれより面積が大きい下部とに2分割される。前記両側板65の上部間には、長さ方向の中間部にロック体71が装着された別の回動軸72が横架されている。また、両側板65の下部間には、長さ方向の中間部に掛止爪69が装着された回動軸73が横架されている。回動軸73の一端部には、弦巻状の爪収納ばね74が装着されている。爪収納ばね74の一端部は一方の側板65に掛止され、爪収納ばね74の他端部は掛止爪69に掛止されている。掛止爪69は、先部が上側縁に向かって徐々に先細化した略曲玉形状の厚肉な鋼鉄板である。
【0028】
次に、図1,図4〜図6を参照して、リフタ用爪ロック機構10を詳細に説明する。
図1および図4に示すように、リフタ用爪ロック機構10は、パレット11を掛止する掛止爪69が、軸線が水平な回動軸73を中心にして、パレット11の掛止位置と掛止爪69の収納位置との間で出し入れ自在に取り付けられたスライダ60を、油圧シリンダ13によりガイドレール51に沿って昇降させるリフタ14に搭載され、かつ、回動軸73を中心にして掛止爪69を収納位置へ付勢する爪収納ばね74のばね力に抗して、掛止爪69を掛止位置でロックおよびそのロックを解除するものである。
【0029】
具体的には、リフタ用爪ロック機構10は、軸線が水平な別の回動軸72を中心にして回動自在にスライダ60に設けられ、ロック位置まで回動されることで掛止爪69を掛止位置にロックするロック体71と、ガイドレール51に設けられ、スライダ60の昇降に伴ってロック体71に当接し、爪収納ばね74のばね力に抗して、ロック体71をロック位置まで回動させるロックストライカS1と、ガイドレール51に設けられ、スライダ60の昇降に伴ってロック位置のロック体71にロックストライカS1の当接方向とは反対方向から当接し、ロック体71を、爪収納ばね74のばね力によって収納位置へ収納可能なロック解除位置まで回動させる解除ストライカS2とを備えている。また、ロック体71の先端部には、掛止爪69に押し当てられる爪押しローラ75が、別の回動軸72と平行な他の回動軸76を中心にして回動自在に取り付けられている。掛止爪69のロック位置は、別の回動軸72の軸線を含む仮想の垂直面Xより、スライダ60のパレット側の面(側板21側の面)に近い位置としている(図1および図5)。
【0030】
前記ロック体71は、金属製でかつ同じサイズの2枚の台形板77の各コーナを、前記別の回動軸72および他の回動軸76を含む4本の軸体により、平行な離間状態で連結したものである。別の回動軸72は、両台形板77の長尺な下辺部の一方のコーナに横架されている。他の回動軸76は、両台形板77の下辺部の他方のコーナに横架されている。両台形板77の短尺な上辺部の一方のコーナには、先部が一方の台形板77から外方に突出した長尺な解除操作軸78が横架されている。解除操作軸78の先部には、解除ストライカS2が当接されるロック解除ローラ79が軸支されている。また、両台形板77の上辺部の他方のコーナには、ロック操作軸80が横架されている。ロック操作軸80の長さ方向の中間部には、ロックストライカS1が当接されるロックローラ81が軸支されている。
【0031】
両ストライカS1,S2は、先部の両コーナが斜めにカットされて法面となった厚肉な金属板である。ロックストライカS1より解除ストライカS2の方が大型で、かつガイドレール51の内部空間への突出幅が大きい。
具体的なロックストライカS1の突出幅は、掛止爪69が掛止位置に配置されたとき、ロック体71および掛止爪69にロックストライカS1の先端が接触しない幅である。また、解除ストライカS2の突出幅は、掛止爪69が収納位置に配置されたとき、掛止爪69に解除ストライカS2の先端が接触しない幅である。なお、掛止爪69が収納位置に配置されたとき、ロック体71は掛止爪69により押し込まれ、ガイドレール51の両側板52のうち、パレタイザPの内側に配置される側板52の近くに、ロックローラ81が配置される。また、掛止爪69が掛止位置に配置されたとき、パレタイザPの内側に配置される側板52からロック体71までの最短距離と、この側板から掛止爪69までの最短距離とは、略同じになる。
【0032】
次に、図1〜図6を参照して、実施例1のリフタ用爪ロック機構10が搭載されたパレタイザPの作動を説明する。
図2および図3に示すように、パレタイザPは、パレット格納部12において、最下段のパレット11のフランジが両掛止爪69により掛止されたパレット群11Aを、リフタ14に搭載された油圧シリンダ13のロッドの突出没入により昇降させ、その途中でリフタ用爪ロック機構10により、パレット群11Aから最下段のパレット11のみを分離する。
【0033】
以下、リフタ用爪ロック機構10によるパレット群11Aから最下段のパレット11のみの分離操作を説明する。
まず油圧シリンダ13のロッドを突出させ、リフタ14において、一対のスライダ60を、対応する両ガイドレール51に沿って徐々に下降させる。これにより、両掛止爪69により最下段のパレット11のフランジが掛止されたパレット群11Aが徐々に下降し、パレット群11Aは台車20上に載置される。その後も、ロッドの突出は若干のストローク量だけ継続される。これにより、両掛止爪69はパレット11のフランジの掛止が解除される高さ位置まで下降される。このとき、両掛止爪69は、解除ストライカS2のロック解除ローラ79への当接により、収納位置に配置されているものとする(図1の実線)。
【0034】
次に、油圧シリンダ13のロッドを引き込ませ、一対のスライダ60を、対応する両ガイドレール51に沿って徐々に上昇させる(図5)。その途中、ロック解除ローラ79が解除ストライカS2を通過し、その後、ロックローラ81がロックストライカS1に当接する。その後も、スライダ60が同一方向への移動を継続することで、ロック体71が別の回動軸72を中心にしてロック位置まで除々に回動する。その途中、爪押しローラ75が掛止爪69に当接し、その後は、爪押しローラ75が掛止爪69の当接面を爪先方向へ転動しながら、爪収納ばね74のばね力に抗して、ロック体71が掛止爪69を掛止位置まで回動させる(図1の二点鎖線)。これにより、掛止爪69の爪先が外方へ突出してロック体71によりロックされる。このとき、上述したようにロックストライカS1は解除ストライカS2より上方に配置されているので、掛止爪69は1段目のパレット11のフランジを通過して突出される。その結果、両掛止爪69により2段目のパレット11のフランジが掛止される。その後も一対のスライダ60を上昇させることで、2段目以上のパレット11が持ち上げられ、最下段のパレット11のみが分離されて台車20上に残される。
【0035】
このとき、爪押しローラ75による掛止爪69のロック位置は、別の回動軸72の軸線を含む仮想の垂直面Xより掛止爪69の爪先方向の所定位置である。この回動位置まで爪押しローラ75が達していれば、このように爪押しローラ75が掛止爪69の当接面を転動することでロック体71による掛止爪69のロックが解除され易い状態において、爪収納ばね74のばね力の作用により、掛止爪69が回動軸を中心にして収納位置へ向かって回動し(引き戻され)ようとしても、爪押しローラ75が掛止爪69の堅固な楔となり、掛止爪69の収納位置への回動を確実に阻止することができる。すなわち、掛止爪69の回動軸73の軸線とロック体71の別の回動軸72の軸線とが互いに平行に離反しているので、爪収納ばね74のばね力が作用する掛止爪69の回転力により、ロック体71をロック位置から外せる限界位置は、別の回動軸72の軸線方向から視たとき、別の回動軸72を中心とした他の回動軸76の回動軌跡と、別の回動軸72の軸線を含む仮想の垂直面Xとが交わる位置となる。それより、爪押しローラ75がスライダ60の被搬送物側の面に近くなれば、掛止爪69の回転力がロック体71をロックする力として作用することになる。
【0036】
ロック解除時には、油圧シリンダ13のロッドを突出させ、一対のスライダ60を、対応する両ガイドレール51に沿って徐々に下降させる(図6)。その途中、ロック解除ローラ79が解除ストライカS1に当接する。その後も、スライダ60が下降を継続することで、別の回動軸72を中心にして、ロック体71が爪収納ばね74のばね力により収納位置へ収納可能なロック解除位置まで回動され、その直後、爪収納ばね74のばね力により掛止爪69のロック状態が解除される。解除された両掛止爪69は、収納位置に収納される(図1の実線)。
以上説明した全ての装置作動は、1台の油圧シリンダ13により行われる。そのため、受け渡し位置に達したパレットを所定の高さ位置まで持ち上げる別のリフタを必要とした従来のパレタイザよりも装置構成が簡素化し、装置も小型化する。その結果、コスト低下が図れるとともに、装置の設置スペースを縮小することができる。しかも、掛止爪69を所定タイミングで回動させため、従来装置の場合には必要であった回動駆動部を有する専用の爪回動機構が不要となる。その結果、装置構成がさらに簡単になるとともに、装置コストもさらに低下させることができ、しかも掛止爪69のロック操作およびロック解除操作を、常時、安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施例1に係るリフタ用爪ロック機構の使用状態を示す要部拡大断側面図である。
【図2】この発明の実施例1に係るリフタ用爪ロック機構が組み込まれたパレタイザの斜視図である。
【図3】この発明の実施例1に係るリフタ用爪ロック機構が組み込まれたパレタイザの正面図である。
【図4】この発明の実施例1に係るリフタ用爪ロック機構の使用状態を示す要部拡大横断面図である。
【図5】この発明の実施例1に係るリフタ用爪ロック機構の掛止爪の突出状態を示す要部拡大斜視図である。
【図6】この発明の実施例1に係るリフタ用爪ロック機構の掛止爪の収納途中の状態を示す要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10 リフタ用爪ロック機構、
11 パレット(被搬送物)、
13 油圧シリンダ(昇降駆動部)、
14 リフタ、
51 ガイドレール、
60 スライダ、
69 掛止爪、
71 ロック体、
72 別の回動軸、
73 回動軸、
74 爪収納ばね、
75 爪押しローラ、
S1 ロックストライカ、
S2 解除ストライカ、
X 仮想の垂直面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を掛止する掛止爪が、軸線が水平な回動軸を中心にして、前記被搬送物の掛止位置と前記掛止爪の収納位置との間で出し入れ自在に取り付けられたスライダを、昇降駆動部によりガイドレールに沿って昇降させるリフタに搭載され、かつ、前記掛止爪を前記収納位置へ付勢する爪収納ばねのばね力に抗して、前記掛止爪を前記掛止位置でロックおよびそのロックを解除するリフタ用爪ロック機構において、
軸線が水平な別の回動軸を中心にして回動自在に前記スライダに設けられ、ロック位置まで回動されることで前記掛止爪を前記掛止位置にロックするロック体と、
前記ガイドレールに設けられ、前記スライダの昇降に伴って前記ロック体に当接し、前記爪収納ばねのばね力に抗して、前記ロック体を前記ロック位置まで回動させるロックストライカと、
前記ガイドレールに設けられ、前記スライダの昇降に伴って前記ロック位置のロック体に前記ロックストライカの当接方向とは反対方向から当接し、前記ロック体を、前記爪収納ばねのばね力によって前記収納位置へ収納可能なロック解除位置まで回動させる解除ストライカとを備えたリフタ用爪ロック機構。
【請求項2】
前記ロック体の先端部には、前記掛止爪に押し当てられる爪押しローラが、前記別の回動軸と平行な他の回動軸を中心にして回動自在に取り付けられ、
前記掛止爪のロック位置を、前記別の回動軸の軸線を含む仮想の垂直面より、前記スライダの被搬送物側の面に近い位置とした請求項1記載のリフタ用爪ロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−102142(P2009−102142A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276791(P2007−276791)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(396008934)松本工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】