説明

リボヌクレアーゼに基づく治療のための組成物及び方法

本発明は、概して、ヒトリボヌクレアーゼと水溶性ポリマーとのコンジュゲート、該コンジュゲートを含む組成物、並びにそれらの使用方法に関する。特に本発明は、(例えば血清半減期及び薬物動態プロフィール、インビボ生物活性、安定性を増加させるため、並びに/あるいはインビボにおけるタンパク質に対する宿主免疫応答を低減するための)ヒトリボヌクレアーゼと1又は複数の水溶性ポリマーとのコンジュゲートの組成物、並びに疾患(例えば癌)の治療、処置及び/又は予防における該コンジュゲートの使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み入れられる、2007年10月8日出願の米国仮出願第60/978,257号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の説明
本発明は、国立衛生研究所による助成(助成番号CA73808)の政府支援を受けてなされたものであり、政府は本発明の一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、概して、リボヌクレアーゼ(例えばRNase 1及びRNase A)と水溶性ポリマーとのコンジュゲート、該コンジュゲートを含む組成物、並びにそれらの使用方法に関する。特に本発明は、リボヌクレアーゼと1又は複数の水溶性ポリマーとのコンジュゲートの組成物、並びに疾患(例えば癌)の分析、治療及び/又は予防における該コンジュゲートの使用方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
「癌」は一般的に、身体の隣接組織又は他の部分へ広がることができる、制御されない異常な細胞増殖により引き起こされる100を超える疾患の群の一つを指す。癌細胞は、中で癌細胞が一塊になっている固形腫瘍を形成するか、又は白血病のように分散した細胞として存在することができる。正常細胞は通常、成熟に達するまで、及びその後、損傷又は死滅細胞と置き換わるために必要な場合にのみ分裂する。癌細胞は、それらが際限なく分裂し、ついには隣接細胞を押しのけて身体の他の部分へ広がるため、「悪性」と呼ばれることが多い。一つの器官から別の器官へ、又は身体の一つの部分から別の部分へ広がる癌細胞の傾向によって、過剰増殖するが身体の他の器官又は部分へは広がらない良性腫瘍細胞とは区別される。悪性癌細胞は、最終的に、血流又はリンパ系を介して、転移し、身体の他の部分へ広がり、そこで、増加して新しい腫瘍を形成することができる。この種の腫瘍進行が、癌を死に至る病とさせている。癌の診断及び治療に大きな進歩があったとはいえ、多くの人々が毎年癌で死亡しており、典型的には、その死は従来の治療に抵抗性である転移及び癌によるものである。
【0005】
大抵の薬物による癌治療は、分裂している細胞に対して選択性の化学療法剤(例えば、細胞毒性剤)に依存する。しかしながら、特定の癌は、既存の化学療法剤に応答しない。従って、医学界内と一般人の間の両方で、癌処置のための新規な化学療法剤の開発が非常に必要とされ、望まれている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、薬物動態学、薬物動力学、及び/又は免疫原性の低減に関する臨床的性質を向上させるための、リボヌクレアーゼ(例えばRNase 1及びRNase A)と水溶性ポリマーとのコンジュゲーションに関する。いくつかの実施形態において、本発明は、リボヌクレアーゼ(例えばRNase 1及びRNase A)とポリ(アルキレンオキシド)(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))とのコンジュゲーションに関する。本発明は、利用されるRNaseの種類によって限定されるものではない。実際、本発明の組成物及び方法において任意のRNaseを用いることができ、RNaseには、ヒト膵臓リボヌクレアーゼ(例えば、RNase 1、RNase 2、RNase 3、RNase 4、RNase 5、RNase 6、RNase 7、RNase 8、RNase 9、RNase 10、RNase 11、RNase 12及びRNase 13)、及びウシ膵臓リボヌクレアーゼ(例えば、RNase A)が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明は、リボ核酸分解(ribonucleolytic)活性又は他の所望の機能(例えば、癌細胞の死滅)を保持しながらインビボにおける循環半減期を増加させるためのRNase 1のポリマーコンジュゲーションを提供する。従って、そのように修飾されたRNase 1は、癌を処置するために(例えば治療的又は予防的に)用いることが可能である(例えば、非修飾RNase 1より低下した用量及び/又は少ない投与頻度で)。いくつかの実施形態において、RNase 1は天然RNase 1である。他の実施形態において、1又は複数のアミノ酸が改変されている。例えば、いくつかの実施形態において、RNase 1はアミノ酸89にグリシンからシステインへの変更(G89C)を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、本発明は、リボ核酸分解活性又は他の所望の機能(例えば、癌細胞の死滅)を保持しながらインビボにおける循環半減期を増加させるための、ウシリボヌクレアーゼ(例えば、リボヌクレアーゼA(RNase A))のポリマーコンジュゲーションを提供する。いくつかの実施形態において、RNase Aは天然RNaseである。他の実施形態において、1又は複数のアミノ酸が改変されている。例えば、いくつかの実施形態において、RNase Aはアミノ酸88にグリシンからシステインへの変更(G88C)を含む。他の実施形態において、RNase Aは、複数のアミノ酸の変更を含み、例えばRNase A変異体、すなわちD38R/R39D/N67R/G88C RNase Aである。
【0009】
いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼは、リボヌクレアーゼインヒビター(RI)からの回避に関与するタンパク質の領域において水溶性ポリマーにコンジュゲートされている。いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼは、RIからの回避に関与しないタンパク質の領域(例えば、リボヌクレアーゼとRIとの結合に影響を及ぼさない領域)において水溶性ポリマーにコンジュゲートされている。このように、機構の理解が本発明を実施するのに必要ではなく、かつ本発明はいかなる特定の作用機構にも限定されるものではないが、いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーとリボヌクレアーゼとのコンジュゲーションは、たとえそのコンジュゲーションがリボヌクレアーゼのRIからの回避を助けるものではないにしても、生物活性(例えば、癌細胞の死滅)を保持するコンジュゲートを生じるものである。
【0010】
生物活性(例えば、リボ核酸分解活性及び/又は癌細胞を死滅させる潜在能力)を保持しながら循環半減期を増加させることに加えて、ポリマーコンジュゲーションにより得られる他の利点には、抗体結合の減少、効力(例えば、癌細胞の死滅又は増殖阻止についての効力)の増加、免疫原性の減少、及び循環器系表面への結合の低下が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0011】
いくつかの実施形態において、本発明は、単量体、二量体及び三量体の合成リボヌクレアーゼであって、そのリボヌクレアーゼの1又は複数が水溶性ポリマーにコンジュゲートされているリボヌクレアーゼを提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼのコンジュげーションは、所望の活性を低減するが、所与の用途のために十分な活性を保持しているものである。例えば、いくつかの実施形態において、コンジュゲートされていないリボヌクレアーゼと比較して、コンジュゲーション後に、RNase活性の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、又はそれ以上が保持される。
【0013】
本発明は、本発明のリボヌクレアーゼコンジュゲートの被験体への投与の経路又は種類によって限定されるものではない。実際、様々な投与経路が有用であると考えられ、点眼、経口、経皮及び/又は局所、経鼻、肺投与(例えば、吸入器によって)、粘膜(例えば、膣又は鼻の粘膜)、直腸、耳経由、注射(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内、腫瘍へ直接など)などが挙げられるが、それに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、1又は複数の他の化学療法剤(例えば、抗癌剤)を、本発明のRNaseコンジュゲートと共投与する。本発明は、共投与される化学療法剤の種類に限定されるものではない。実際、様々な化学療法剤が、本発明の組成物との共投与に有用であると考えられ、小分子、核酸(例えばsiRNA)、ペプチド、タンパク質、及びリポペプチド(例えば、宿主において癌細胞に接触すると、様々な技術(例えば、アポトーシスを誘導する)のいずれかによって、宿主細胞若しくは組織を損傷することなく、又は有害な宿主応答を誘発することなく、その細胞を死滅させることができる)が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0014】
本発明は、リボヌクレアーゼがコンジュゲートしている水溶性ポリマーの種類によって限定されるものではない。例えば、水溶性ポリマーには、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリオキシエチル化ポリオール、及びポリ(ビニルアルコール)が挙げられるが、それに限定されるものではない。ポリ(アルキレンオキシド)には、PEG、ポロキサマー、及びポロキサミンが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明は、利用されるコンジュゲーションの種類によって限定されるものではない。いくつかの実施形態において、ポリ(アルキレンオキシド)は、マレイミド基を介して遊離チオール基にコンジュゲートしている。いくつかの実施形態では、アミド結合が遊離アミノ基と共に生成される(例えば、ポリ(アルキレンオキシド)の活性エステル(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)から形成される)。いくつかの実施形態において、エステル結合は、コンジュゲーション後、コンジュゲート内に残存する。いくつかの実施形態において、結合は、リボヌクレアーゼ分子に存在するリシン残基を通じて生じる。いくつかの実施形態において、コンジュゲーションは、短時間作用型の分解性結合によって生じる。本発明は、利用される分解性結合の種類によって限定されるものではない。実際、様々な結合が本発明に有用であると考えられ、エステル結合、炭酸エステル結合、カルバメート結合、スルフェート結合、ホスフェート結合、アシルオキシアルキルエーテル結合、アセタール結合、及びケタール結合を含む生理学的に開裂可能な結合が挙げられるが、それに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、RNaseは、米国特許第4,424,311号;同第5,672,662号;同第6,515,100号;同第6,664,331号;同第6,737,505号;同第6,894,025号;同第6,864,350号;同第6,864,327号;同第6,610,281号;同第6,541,543号;同第6,515,100号;同第6,448,369号;同第6,437,025号;同第6,432,397号;同第6,362,276号;同第6,362,254号;同第6,348,558号;同第6,214,966号;同第5,990,237号;同第5,932,462号;同第5,900,461号;同第5,739,208号;同第5,446,090号、及び同第6,828,401号;並びにWO 02/02630号及びWO 03/031581号に記載された方法、試薬及び/又は結合のいずれかを利用してPEGにコンジュゲートしており、それらの特許出願のそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられる。いくつかの実施形態において、本発明のコンジュゲートは、第三者(例えば、NEKTAR, San Carlos, CA)により作製される。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、開裂した時に、ポリマー又は結合のどの部分もRNase分子上に残存しないような、ポリマーとリボヌクレアーゼとの間の結合に存在する開裂可能な結合を含む。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、開裂した時に、ポリマー又は結合のほんの一部がRNase分子上に残存するような、ポリマー自体に存在する開裂可能な結合を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、PEG-リボヌクレアーゼコンジュゲートは、コンジュゲーション後精製される。本発明は、利用される精製過程の種類によって限定されるものではない。実際、様々な過程を利用することができ、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及び当技術分野において周知の他の方法が挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明は、利用されるPEG分子の種類によって限定されるものではない。実際、様々なPEG分子が、本発明のリボヌクレアーゼ分子へのコンジュゲーションに有用であると考えられ、限定されるものではないが、線状若しくは直鎖状PEG、又は分枝状PEGが挙げられ、約1,000Da〜約500,000Daの分子量を有してよいが(例えば、いくつかの実施形態において、10,000〜50,000Daである)、リボヌクレアーゼ分子にコンジュゲートさせるPEG分子は、より大きくても(例えば、500,000Daより大きい)、より小さくても(例えば、1,000Da未満)よい。
【0016】
本発明はまた、本発明のリボヌクレアーゼコンジュゲートを含む組成物(例えば医薬調製物)(例えば、薬学的に許容される担体を含む)の有効量を被験体(例えば哺乳動物)に投与することによる、被験体(例えば哺乳動物)における癌の予防的若しくは治療的な処置方法、又は癌の研究若しくは特性決定のための方法を提供する。本発明は、処置対象の癌の種類によって限定されるものではない。実際、様々な癌が、本発明のリボ核酸分解性コンジュゲートにより処置可能である(例えば、死滅又は増殖阻害される)と考えられ、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、聴神経腫、腺癌、血管肉腫、星状細胞種、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨起源の腫瘍、骨肉腫、脳腫瘍、乳癌、気管支原生癌、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、結腸癌、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、胎生期癌、内皮肉腫、上衣細胞腫、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、線維肉腫、神経膠腫、重鎖病、血管芽細胞腫、肝臓癌、ホジキンリンパ腫、平滑筋肉腫、白血病、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管内皮腫、リンパ管肉腫、髄様癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、乏突起膠腫、骨原性肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭癌、乳頭腺癌、松果体腫、真性赤血球増加症、急性前骨髄球性白血病、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、非小細胞肺癌、横紋筋肉腫、肉腫、脂腺癌、精上皮腫、小細胞肺癌、扁平上皮癌、胃癌、滑膜腫、汗腺癌、精巣腫瘍、子宮癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0017】
いくつかの実施形態において、本発明は、RNase又はRNase類似体(例えば、非天然のRNase)にコンジュゲートしたポリエチレングリコール(PEG)を含む組成物であって、該コンジュゲートが分解性結合(例えば、エステル結合)を含み、RNase又はRNase類似体の核酸分解活性の少なくとも一部が保持されている、上記組成物を提供する。いくつかの実施形態において、分解性結合によってポリエチレングリコールにコンジュゲートされたRNase又はRNase類似体は、コンジュゲートされていないRNase又はRNase類似体より長いインビボ半減期を有する(例えば、RNase-PEGコンジュゲートとリボヌクレアーゼインヒビター(RI)との間の親和性の減少による)。いくつかの実施形態において、RNase又はRNase類似体は、RNAを分解する能力がある(例えば、リボヌクレアーゼの酵素活性による)。いくつかの実施形態において、RNase又はRNase類似体をポリエチレングリコールへコンジュゲートすることにより、コンジュゲートされていないRNase又はRNase類似体について達成できる濃度よりもRNase又はRNase類似体のより高い血清中濃度が可能になる。いくつかの実施形態において、RNase又はRNase類似体は、組換えRNase又はRNase類似体である。いくつかの実施形態において、RNaseは、天然由来である。いくつかの実施形態において、組換えRNaseは、(例えばジスルフィド結合に関与しないシステイン残基上に)遊離チオールを有する。
【0018】
本発明は、RNase分子に結合する水溶性ポリマー(例えば、PEG)の数によって限定されるものではない。いくつかの実施形態において、単一の水溶性ポリマーがRNase分子に結合している。いくつかの実施形態において、2個、3個、4個、5個、又はそれ以上の水溶性ポリマー(例えば、PEG)がRNase分子に結合している。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、RNase又はRNase類似体の分子あたり1個〜約4個のポリマー分子を含む。いくつかの実施形態において、RNaseコンジュゲート又はRNase類似体コンジュゲートは、コンジュゲーションの度合いが混在している(例えば、集団のRNaseメンバーにコンジュゲートされた様々な数の水溶性ポリマーを有するRNaseコンジュゲートの集団)。いくつかの実施形態において、RNaseコンジュゲート又はRNase類似体コンジュゲートは、分画されたコンジュゲートである(例えば、RNase分子の大部分(例えば、50%より多い;60%より多い;70%より多い;80%より多い;90%より多い;95%より多い;97%より多い;又はそれ以上)が、同数(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、又はそれ以上)の水溶性ポリマーを有する、RNaseコンジュゲートの集団)。
【0019】
いくつかの実施形態において、1個、2個、3個、又はそれ以上のポリマーが、オリゴマー化されたリボヌクレアーゼにコンジュゲートしている。本発明は、オリゴマー内に存在するリボヌクレアーゼ分子(例えば、RNase)の数によって限定されるものではない。実際、2個、3個、4個、5個、6個、又はさらに多くのリボヌクレアーゼ(例えば、RNase)のオリゴマーが含まれるがそれに限定されるものではない、様々なオリゴマーを1又は複数の水溶性ポリマーにコンジュゲートすることができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明は、RNase又はRNase類似体のリボ核酸分解活性の少なくとも一部が保持されている、RNase又はRNase類似体にコンジュゲートされたポリエチレングリコール(PEG)と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物(例えば、癌の処置用)を提供する。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、分解性結合(例えば、エステル結合)を含む。いくつかの実施形態において、ポリマーにコンジュゲートされたRNase又はRNase類似体は、コンジュゲートされていないRNase又はRNase類似体より免疫原性が低い。いくつかの実施形態において、ポリマーにコンジュゲートされたRNase又はRNase類似体は、コンジュゲートされていないRNase又はRNase類似体より高い半減期及び血清中濃度を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明は、RNase又はRNase類似体のリボ核酸分解活性の少なくとも一部が保持されている、RNase又はRNase類似体にコンジュゲートされたマレイミド化合物と薬学的に許容される担体とを含む組成物(例えば、癌の処置用)及び方法を提供する。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、分解性結合(例えば、エステル結合)を含む。いくつかの実施形態において、ポリマーにコンジュゲートされたRNase又はRNase類似体は、コンジュゲートされていないRNase又はRNase類似体より免疫原性が低い。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明は、複数のコンジュゲートを含み、必ずではないが好ましくは、それぞれがRNaseに共有結合した1〜3個の水溶性ポリマーを有するコンジュゲートを含む組成物を提供する。ここで、各水溶性ポリマーは、好ましくは、5,000ダルトンより大きく約100,000ダルトンまでの範囲の公称平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、コンジュゲートの水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)である。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)である。いくつかの実施形態において、本発明は、単一の水溶性ポリマーを含む(例えば、モノPEG付加されている)複数のRNaseを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、複数のRNaseは、RNaseの単量体、二量体、三量体、及び/又はより高次の複合体(すなわち、オリゴマー)を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、本発明は、水溶性ポリマーに共有結合したRNaseを含む複数のコンジュゲートを生じるのに十分な条件下で、1又は複数の活性化された水溶性ポリマーをRNaseとコンジュゲートさせるステップを含む、ポリマーコンジュゲートの調製方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、コンジュゲーション条件下でRNase 1をポリマー試薬とコンジュゲートさせるステップを含む、水溶性ポリマー-RNaseコンジュゲートの調製方法を提供する。本発明は、RNaseを水溶性ポリマーにコンジュゲートするために利用される方法によって限定されるものではない。実際、様々な化学作用を用いることができ、マレイミド-チオールコンジュゲーションが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0024】
同様に、本発明は、コンジュゲーションに用いられるポリマーの種類によって限定されるものではない。実際、様々なポリマーを用いることができ、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、ポリ(アクリロイルモルホリン)、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、それに限定されるものではない。しかしながら、いくつかの実施形態においては、ポリ(エチレングリコール)誘導体などのポリ(アルキレンオキシド)が本発明においてポリマーとして用いられる。いくつかの実施形態において、本発明のコンジュゲートを作製するために、活性化された水溶性ポリマーとRNaseとをコンジュゲートさせる。水溶性ポリマーの活性化は、得られるポリマーが、pH、温度などの適切な条件下でRNaseがポリマーに共有結合するような共有結合を形成する限り、技術分野で公知の任意の方法によって達成され得る(例えば、活性化された水溶性ポリマーをRNaseとコンジュゲートさせるステップは、活性化された水溶性ポリマーがRNaseの所望の位置に共有結合を形成するのに十分な条件下で実行することができる)。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】PEG-RNase Aコンジュゲートを生成するために使用されるmPEG-マレイミド及びmPEG2-マレイミドの化学的構造及び物理的特性を示す。製造業者NEKTARによって提供されるPEGの分子量に基づいて、反復エチレングリコール単位について質量42Da(-CH2CH2O-)を用いて、nの値を測定した。
【図2】野生型RNase A、RNase A(G88R RNase A)の変種及び3つのPEG-RNase Aコンジュゲートについて、リボ核酸分解活性(kcat/KM)及びリボヌクレアーゼインヒビター(Kd)の結合親和性を示す。PEG-RNaseコンジュゲートは、小さく、蛍光標識された基質に対して酵素活性を有する。PEG-G88C RNase Aコンジュゲートは、野生型RNase Aと同程度に強力にリボヌクレアーゼインヒビターと結合しない。
【図3】大きな非標識RNA基質であるポリ(C)に対するPEG-RNase Aコンジュゲート及び野生型RNase Aのリボ核酸分解活性を示す。全てのRNaseは、この基質に対して活性である。
【図4】本発明の例示的なPEGコンジュゲートしたRNaseが、インビボで腫瘍容積を減少させる効果を示す。DU145細胞(ヒト前立腺癌細胞株)をマウスに移植した。腫瘍が測定可能となった後、2kDa mPEG-G88C RNase Aで週に2回、腹腔内投与処置を開始した(15mg/kg体重)。移植後20日後、実験期間の間、週に数回、腫瘍容積を測定した。A)は、時間経過とともに腫瘍容積が減少することを示し、B)は、時間経過とともに動物の平均体重に反映されるように、処置の毒性欠如を示す。TGI(腫瘍増殖阻害)。
【図5】本発明の例示的なPEGコンジュゲートしたRNase、20kDa mPEG2-G88C RNase Aの薬物動態活性及びインビボ効果を証明する。A)経時的な血清における酵素活性のパーセンテージ、B)DU145異種移植片腫瘍の腫瘍容積を減少させるコンジュゲートの効果、及びC)異種移植片研究の間の動物の平均体重。異種移植片研究において、DU145細胞をマウスに移植した。腫瘍が測定可能になった後、20kDa mPEG2-G88C RNase A(75mg/kg体重)又はドセタキセル(8mg/kg体重)で週に1回の処置を開始した。実験の経過の間中、腫瘍容積を定期的に測定した。
【図6】ヒトRNase 1 G89C変異体のチオ特異的PEG付加の例示的な方法を示す。A)は、マレイミドを介したPEG分子へのRNase内のチオールの結合を示し、B)は、ヨードアセトアミド基を介したPEGへのRNase内のチオールの結合を示す。
【図7】様々なPEG-RNaseコンジュゲートのサイズの差を示す。A)PEG-RNase Aコンジュゲート(各1μg)のSDS PAGE(4〜15% Tris-HCl)分析。レーン1及び6:Kaleidoscopeの予備染色標準(BIORAD)。レーン2:G88R RNase A。レーン3〜5:2kDa-mPEGマレイミド、20kDa-mPEGマレイミド(直鎖状)及び20kDa-mPEG2マレイミド(分枝状)でそれぞれ修飾されたG88C RNase A。レーン7〜9: G88C RNase Aについて既に記載されたのと同じPEG試薬で修飾されたA19C RNase A。レーン10:20kDa mPEG (直鎖状)-D38R/R39D/N67R/G88C RNase A。標準の分子量(ミオシン、β-ガラクトシダーゼ、ウシ血清アルブミン、炭酸脱水酵素、大豆トリプシンインヒビター、リゾチーム及びアプロチニン)は、Tris-HClゲルに対する計算分子量(kDa)である。ゲルを、クマシーブルーR-250で染色し、留置し、ヨウ化バリウムを用いてPEGを染色した(Skoog, 1979, Vox. Sang. 37:345-349; Kurfurst, 1992, Anal. Biochem. 200:244-248)。B)は、Superdex G200ゲル濾過カラムからのクロマトグラムを示す。試料は、(右から左へのピーク)野生型RNase A、ヒトRNase 1のトリマー(三量体)、並びに5kDa-mPEGマレイミド、20kDa-mPEGマレイミド(直鎖状)及び60kDa-mPEG2マレイミド(分枝状)で修飾されたG89C RNase 1である。
【図8】ヒトK-562細胞のインビトロ増殖に対する本発明のPEG付加ヒトリボヌクレアーゼの効果を示す。2つのRNase変異体(G88R RNase A及びD38R/R39D/N67R/G88R RNase A)も示す。
【図9】PEG-RNase 1コンジュゲートの薬物動態活性及びインビボ効果を示す。A)経時的な血清における酵素活性のパーセンテージとして、薬物動態を測定し、B)A549異種移植片腫瘍の腫瘍容積を減少させる、60kDa mPEG2-G89C RNase 1コンジュゲート及びシスプラチンの効果、C)異種移植片研究の間の動物の平均体重。異種移植片研究において、A549肺癌細胞をマウスに移植した。腫瘍が測定可能になった後、60kDa mPEG2-G89C RNase 1(75mg/kg体重)又はシスプラチン(6mg/kg体重)で週に1回の処置を開始した。腫瘍容積を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書に用いられる場合、「被験体」という用語は、本発明の方法又は組成物により処置されるべき個体(例えば、ヒト、動物、又は他の生物体)を指す。被験体には、哺乳動物(例えば、マウス、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が挙げられ、最も好ましくは、ヒトが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明の関連において、「被験体」という用語は、一般的に、癌の処置を受けるであろう、又は癌の処置を受けている個体を指す。本明細書に用いられる場合、「被験体」及び「患者」という用語は、特に断りのない限り交換可能に用いられる。
【0027】
本明細書に用いられる場合、「診断される」という用語は、疾患(例えば、癌)の、その徴候及び症状(例えば、従来の治療に対する抵抗性)、又は遺伝学的分析、病理学的分析、組織学的分析などによる認識を指す。
【0028】
本明細書に用いられる場合、「インビトロ」という用語は、人工的環境、及び人工的環境内で起こる過程又は反応を指す。インビトロ環境には、試験管及び細胞培養が挙げられるが、それに限定されるものではない。「インビボ」という用語は、天然環境(例えば、動物又は細胞)、及び自然環境内で起こる過程又は反応を指す。
【0029】
本明細書に用いられる場合、「有効量」という用語は、有益な結果又は所望の結果(例えば、癌細胞の死滅又は増殖阻害)をもたらすのに十分な組成物(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたRNaseを含む組成物)の量を指す。有効量は、1回又は複数回の投与、塗布、又は投薬で投与することができ、特定の製剤又は投与経路に限定されるものではない。
【0030】
本明細書に用いられる場合、「投与」という用語は、薬物、プロドラッグ、医薬組成物、若しくは他の薬剤、又は生理学的系(例えば、被験体にインビボで、インビトロ若しくはエクスビボの細胞、組織及び器官)への治療的処置(例えば、本発明の組成物)を与える行為を指す。ヒト身体への例示的な投与経路は、眼(点眼)、口(経口)、皮膚(経皮)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、粘膜(例えば、口腔粘膜又は頬)、直腸、耳、注射による(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内など)などによるものであり得る。
【0031】
本明細書に用いられる場合、「共投与」という用語は、被験体に対して、少なくとも2つの作用物質を投与すること又は治療を施すことを指す。いくつかの実施形態において、2又はそれ以上の作用物質又は治療の共投与は同時である。他の実施形態において、第一作用物質/治療は、第二作用物質/治療の前に投与される。当業者は、用いられる様々な作用物質又は治療の処方及び/又は投与経路が変わることを理解している。共投与の適切な用量については、当業者が容易に決定することができる。いくつかの実施形態において、作用物質又は治療を共投与する場合、それぞれの作用物質又は治療は、それらの単独での投与に適切であるものより低い用量で投与される。従って、作用物質若しくは治療の共投与が、有害(例えば、毒性)である可能性のある作用物質の必要用量を低下させる実施形態において、又は処置の標的(例えば、癌細胞)が、1若しくは複数の作用物質の単独投与での処置に対して感受性がより低く(例えば、抵抗性に)なってきている(例えば、1若しくは複数の他の作用物質と組み合わせると、そのような処置の標的が感受性の増加を示す(例えば、非抵抗性である))場合に、共投与は特に望ましい。
【0032】
本明細書に用いられる場合、「毒性」という用語は、その毒物の投与前の同じ細胞又は組織と比較した、被験体、細胞又は組織への任意の損傷作用又は有害作用を指す。
【0033】
「結合」又は「リンカー」という用語は、ポリマーセグメント及びRNaseの末端、又はRNaseの求電子基若しくは求核基などの相互連結部分を連結するために任意で用いられる原子又は原子の集合を指すために本明細書で用いられる。いくつかの実施形態において、本発明のリンカーは、加水分解に安定であってもよく、又は分解性(例えば、生理学的加水分解性若しくは酵素分解性)結合を含んでもよい。
【0034】
本明細書に用いられる場合、「分解性結合」という用語は、ポリマーに関して用いられる場合、生理学的に開裂可能な結合(例えば、加水分解され得る(例えば、インビボで)、又は他の方法で可逆的である(例えば、酵素的開裂による)結合)を含むコンジュゲートを指す。そのような生理学的に開裂可能な結合には、エステル結合、炭酸エステル結合、カルバメート結合、スルフェート結合、ホスフェート結合、アシルオキシアルキルエーテル結合、アセタール結合、及びケタール結合が挙げられるが、それに限定されるものではない(例えば、全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,838,076号参照)。同様に、コンジュゲートは、ポリマーとRNaseとの間の結合に存在する開裂可能な結合を含んでもよいか、又はポリマー自体に存在する開裂可能な結合を含んでもよい(例えば、開裂した時に、ポリマーのほんの一部がRNase分子上に残存するようなもの)(例えば、米国特許出願第20050158273号及び第20050181449号参照、それぞれは全体として参照により本明細書に組み入れられる)。例えば、エステル結合を含むPEGポリマーは、PEG-RNaseコンジュゲートを生成するためのRNaseへのコンジュゲーションに利用することができる(例えば、Kuzlowski et al., Biodrugs, 15, 419-429 (2001)参照)。本発明の分解性結合を含むコンジュゲートは、ポリマーを含まない(例えば、完全に又は部分的に含まない)RNaseを生じる(例えば、インビボで結合の加水分解後)能力がある。
【0035】
「生理学的に開裂可能な」又は「加水分解性」又は「分解性」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち、加水分解する)結合である。水中で加水分解する結合の傾向は、2つの中心原子を連結する結合の一般的な種類にだけでなく、これらの中心原子に結合している置換基にも依存すると考えられる。適当な加水分解に不安定な又は弱い結合には、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、及びオリゴヌクレオチドが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0036】
「酵素分解性結合」とは、1又は複数の酵素による分解を受けやすい結合を意味する。
【0037】
「加水分解に安定な」結合(linkage)又は結合(bond)は、水中で実質的に安定である(すなわち、生理学的条件下でかなりの程度まで長時間に渡って加水分解を受けない)化学結合(例えば、典型的には、共有結合)を指す。加水分解に安定な結合の例には、炭素-炭素結合(例えば、脂肪鎖における)、エーテル、アミド、ウレタンなどが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0038】
本明細書に用いられる場合、「医薬組成物」という用語は、組成物をインビトロ、インビボ又はエクスビボでの診断的又は治療的な使用に特に適するものにさせる、不活性又は活性な担体との活性物質の組み合わせ(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたRNase)を指す。
【0039】
本明細書に用いられる場合、「薬学的に許容される」又は「薬理学的に許容される」という用語は、被験体に投与された場合、有害反応(例えば、毒性反応、アレルギー性反応、又は免疫学的反応)を実質的に生じない組成物を指す。
【0040】
本明細書に用いられる場合、「局所的」という用語は、本発明の組成物の、皮膚表面並びに粘膜細胞及び粘膜組織(例えば、歯槽粘膜、頬粘膜、舌粘膜、咀嚼粘膜、膣粘膜、又は鼻粘膜、並びに空洞器官又は体腔を裏打ちする他の組織及び細胞)への塗布を指す。
【0041】
本明細書に用いられる場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、標準的な薬学的担体のいずれかを指し、リン酸緩衝生理食塩水、水、乳液(例えば、油/水又は水/油乳液など)、及び様々な種類の湿潤剤、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、ラウリル硫酸ナトリウム、等張性吸収遅延剤、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム)などが挙げられるが、それに限定されるものではない。組成物はまた、安定剤及び保存剤を含んでもよい。担体、安定剤、及び補助剤の例は、当技術分野において記載されている(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Martin, Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th Ed., Mack Publ. Co., Easton, Pa. (1975)参照)。
【0042】
本明細書に用いられる場合、「非ヒト動物」という用語は、すべての非ヒト動物を指し、齧歯類、非ヒト霊長類、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、トリなどの脊椎動物が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0043】
本明細書に用いられる場合、「キット」という用語は、材料を送達するための任意の送達システムを指す。反応材料(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたRNaseを含む組成物)に関連して、そのような送達システムは、一つの場所から別の場所への反応試薬及び/又は補助材料(例えば、材料を用いるための書面の使用説明書など)の貯蔵、輸送、又は送達を可能にするシステムを含む。例えば、キットは、関連した反応試薬及び/又は補助材料を含む1又は複数の閉鎖容器(例えば、箱)を含む。本明細書に用いられる場合、「部材(fragmented)キット」という用語は、それぞれが全キット構成要素の下位区分(subportion)を含む2又はそれ以上の別々の容器を含む送達システムを指す。容器は、意図されたレシピエントへ一緒に又は別々に送達されてもよい。例えば、第一の容器は、特定用途のための、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたRNaseを含む組成物を含むことができ、一方、第二の容器は第二の薬剤(例えば、第二の化学療法剤)を含む。実際、それぞれが全キット構成要素の下位区分を含む2又はそれ以上の別々の容器を含む任意の送達システムが、「部材キット」という用語に含まれる。対照的に、「複合キット」は、特定用途に必要とされる反応材料の構成要素の全部を単一の容器に(例えば、所望の構成要素のそれぞれを収容する単一の箱に)含む送達システムを指す。「キット」という用語は、部材キット及び複合キットの両方を含む。
【0044】
発明の詳細な説明
哺乳動物細胞において、ウシ膵臓リボヌクレアーゼ(RNase A)及びヒト膵臓リボヌクレアーゼ(例えばRNase 1)などの膵臓型リボヌクレアーゼは、RNAのリボヌクレオチドへの分解を触媒する分泌型酵素である。それらの活性は、遍在性のサイトゾルタンパク質であるリボヌクレアーゼインヒビタータンパク質(RI)に結合することにより阻害される。RIは、内因性の膵臓型RNaseに高親和性で結合し、それらの活性を中和し、それにより細胞(例えば、正常細胞又は癌細胞)に対して無毒性にする。リボ核酸分解活性が阻害される場合、細胞RNAは損傷を受けず、細胞は生存可能なままである。正常細胞において、リボ核酸分解活性は堅固に制御されるが、リボ核酸分解活性が制御されない場合には、リボ核酸分解活性は細胞RNAを破壊し、細胞の死に至る。
【0045】
リボヌクレアーゼを、ヒト細胞、特に癌細胞に対して毒性にするためにいくつかの手法が用いられている。第一の手法は、ヒトに対して進化的に遠く、かつヒトRIタンパク質によって阻害されないリボヌクレアーゼを選択することである。例えば、カエル(ヒョウガエル(Rana pipiens))リボヌクレアーゼ(ONCONASE)は、ヒト細胞に置かれた場合、ヒトRIによる有意な阻害を示さず、それにより活性を保ち(例えば、RNAを分解し)、細胞死へと導く。
【0046】
第二の手法は、組換えDNA技術を利用して、RIによって有意に阻害されず、従ってサイトゾルにおいて高レベルのリボ核酸分解活性を発揮する、哺乳動物リボヌクレアーゼ変異体を作製する。これらの操作型酵素は、酵素がRIとの会合及び結合を回避するため、癌細胞内で高レベルのリボ核酸分解活性を発揮するが、本発明はこの作用機構に限定されるものではなく、この作用機構の理解は本発明の実施に必要ではない。この制御されていない活性は、特に、癌細胞に対して致死性であり得る。このタンパク質/酵素操作手法は、哺乳動物タンパク質のウシRNase A及びRNase 1で実証されており、例えば米国特許第5,389,537号及び同第6,280,991号に記載され、それらの特許の開示は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0047】
哺乳動物(例えば、ヒト)の膵臓リボヌクレアーゼは、約14kDaの分子量を有する低分子タンパク質である。これらのタンパク質は、腎臓を介して非常に迅速に排出される。従って、それらの効力(例えば、それらのリボ核酸分解活性)及び安全性プロフィールを授ける特徴に有意には影響を及ぼすことなく、リボヌクレアーゼの薬物動態プロフィールを向上させることが望ましい。この目的を達成するために、機構の理解は本発明を実施するのに必要ではなくかつ本発明はいかなる特定の作用機構にも限定されないが、ヒトリボヌクレアーゼの水溶性ポリマーへのコンジュゲーションは、いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼによるRIの回避により、リボヌクレアーゼの効力及び薬物動態を向上させる。
【0048】
本発明は、これらのタンパク質の酵素活性の損失又は他の所望の性質(例えば、癌細胞を死滅させる能力及び/又はオリゴマー形成能力)の喪失がなく、リボヌクレアーゼを修飾する方法、並びにそのような修飾リボヌクレアーゼを含む組成物を提供する。従って、いくつかの実施形態において、本発明は、非修飾RNaseと比較して、インビボで細胞(例えば、癌細胞)への毒性がより強い修飾リボヌクレアーゼ(例えば、水溶性ポリマーにコンジュゲートされたRNase又はRNase類似体)を提供する。いくつかの実施形態において、修飾リボヌクレアーゼは、非癌性細胞と比較して癌性細胞への毒性がより強く、特定の腫瘍を標的にすることが可能である。いくつかの実施形態において、修飾リボヌクレアーゼは、ほとんど副作用を示さず、ヒト免疫応答を刺激しないか又は非修飾RNaseより免疫応答への刺激は少ない。従って、本発明は、リボ核酸分解活性の検出可能な量(例えば、1%より多い;5%より多い;10%より多い;20%より多い;30%より多い;40%より多い;50%より多い;60%より多い;70%より多い;80%より多い;90%より多い;95%より多い;97%より多い)を維持しながら(例えば、それにより細胞(例えば、癌細胞)特異的毒性又は腫瘍増殖阻害活性をもたらす)、低免疫原性及び低副作用を示す、野生型又は変異型のリボヌクレアーゼに由来する修飾リボヌクレアーゼを提供する。
【0049】
「ヒトリボヌクレアーゼ」及び「hRNase」という用語及び機能的同義語は、野生型ヒトリボヌクレアーゼ(例えば、ヒト膵臓リボヌクレアーゼ(例えば、RNase 1、RNase 2、RNase 3、RNase 4、RNase 5、RNase 6、RNase 7、RNase 8、RNase 9、RNase 10、RNase 11、RNase 12及びRNase 13))、並びに任意のヒトRNase突然変異体若しくは変異体、任意の組換え酵素若しくは関連酵素、又はインビボ及びインビトロでリボ核酸分解活性若しくは他の所望の性質(例えば、癌細胞の死滅、RNAの分解能力)を保持する、RNaseの任意の合成形態又は断片を含む。変異体は、そのタンパク質の翻訳後プロセシングにより(例えば、生産株に存在する酵素によるか又は製造過程の任意の段階で導入される酵素若しくは試薬によって)、あるいは構造遺伝子の突然変異により、作製してもよい。突然変異には、部位欠失、挿入、ドメイン除去、及び置換の突然変異が含まれる。本発明はRNase 1を例として説明することが多いが、他のヒトリボヌクレアーゼを同様に使用できることを理解されたい。
【0050】
「RNase類似体」という用語は、野生型ではないRNaseの任意の形態を含むと定義される。本発明において企図されるRNase及びRNase類似体を、組換え発現させてもよく(例えば、細胞培養物、若しくはマウスなどの高等組換え種から得る、又は、哺乳動物細胞宿主、昆虫、細菌、酵母、爬虫類、真菌などにおいて発現させる)、あるいは合成により構築してもよい。これは、合成ペプチド及びポリペプチド、又はその酵素活性に関与するRNaseポリペプチドの部分の組換え発現、又はキメラタンパク質を含むより大きなタンパク質若しくはポリペプチドの一部としての組換え発現を含む。
【0051】
従って、RNaseの活性形態のみを含む、組換え又は合成により製造されたRNase調製物を用いることができる。均一なRNase及び均一で完全に活性なRNase (例えば、発現した野生型タンパク質又はその類似体から調製される組成物を含む)の組換え発現は、記載されている(例えば、米国特許出願公開第2005/0261232号参照、その開示は全体として参照により本明細書に組み入れられる)。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明は、疾患、特に癌及びウイルス感染を予防、処置、又は治療するのにRNase類似体を利用する。組成物はまた、診断用途(例えば、薬物スクリーニング又は癌の特性決定に関連)及び研究用途にも用いられる。いくつかの実施形態において、RNaseは、それらが送達される細胞に対して毒性であるように操作される(例えば、組換えDNA技術(例えば、RNase 1類似体の遺伝子操作)によって)。従って、いくつかの実施形態において、RNase自体は(例えば、水溶性ポリマーとの共有結合コンジュゲーションに加えて)、RNaseの天然インヒビターに対して感受性がより低いように、及び/又は宿主免疫系を回避するように、操作される。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明は、リボ核酸分解活性又は他の所望の機能(例えば、癌細胞の死滅)を保持しながら、インビボにおける循環半減期を増加させるためのウシリボヌクレアーゼ(例えば、RNase A)のポリマーコンジュゲーションを提供する。いくつかの実施形態において、RNase Aは、リボヌクレアーゼインヒビター(RI)からの回避に関与するそのタンパク質の領域において、水溶性ポリマーへコンジュゲートしている。いくつかの好ましい実施形態において、RNase Aは、RIからの回避に関与しないそのタンパク質の領域(例えば、RNase AのRIへの結合に影響を及ぼさない領域)において、水溶性ポリマーにコンジュゲートしている。RIからの回避に関与しない領域の例には、1位、19位、49位、75位、又は113位のアミノ酸残基を含む領域が挙げられるが、それに限定されるものではない。従って、機構の理解が本発明を実施するのに必要ではなく、かつ本発明はいかなる特定の作用機構にも限定されないが、いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーのRNase Aへのコンジュゲーションは、たとえコンジュゲーションがリボヌクレアーゼのRIからの回避を助けないとしても、生物活性(例えば、癌細胞の死滅)を有するコンジュゲートを作出する。
【0054】
いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼはヒトリボヌクレアーゼである。いくつかの実施形態において、本発明は、水溶性ポリマーのコンジュゲーションのためにRNase 1における特有の官能基の組み込みを利用する。例えば、いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーへのコンジュゲーションに遊離チオール基を供給するために、システイン分子をRNase 1の中へと操作する(例えば、リボ核酸分解活性又は他の所望の機能(例えば、癌細胞を死滅させる能力)の損失を伴わずに)。遊離チオール基は、RNaseの他の所に見出されず、それにより、均一なコンジュゲーションを生じる能力を提供する。他の実施形態において、組換えDNA技術を利用して、直交性官能基を有する非天然アミノ酸を、対象となるRNase 1へ組み込むために修飾されたコドン又は新規コドンを供給する(例えば、リボ核酸分解活性の損失を伴わずに)。
【0055】
好ましい実施形態において、ヒトリボヌクレアーゼ(例えば、RNase 1)における修飾(例えば、欠失、突然変異、及び/又は水溶性ポリマーへのコンジュゲーション)に望ましい残基は、リボヌクレアーゼの三次構造及び/又は安定性の崩壊を避けるように選択される。いくつかの実施形態において、これらの残基は、そのタンパク質の表面上にある(例えば、溶媒(例えば、水又は緩衝液)に通常曝される残基)。例えば、いくつかの実施形態において、修飾される残基の種類には、結晶構造において不規則に見えるアミノ酸、リボヌクレアーゼインヒビタータンパク質に接触する残基、及び三次構造(例えば、αヘリックス及びβシート)に関与しないアミノ酸、構造(例えば、αヘリックス及びβシート)間のループ領域のアミノ酸、並びにタンパク質の末端(N末端及びC末端)近くのアミノ酸が挙げられるが、それに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、追加のアミノ酸残基がN末端又はC末端のいずれかに付加される(例えば、RNase類似体を作製するために、及び/又は水溶性ポリマーのコンジュゲーションのために)。
【0056】
いくつかの実施形態において、リボヌクレアーゼは、水溶性ポリマーに結合場所(例えば、アミノ酸の側鎖内の原子へ)を提供するために、例えばシステインなどの1又は複数のアミノ酸残基を含むように修飾される。アミノ酸残基を付加するための技術は当業者に周知である(例えば、March, Advanced Organic Chemistry: Reactions Mechanisms and Structure, 4th Ed.(New York: Wiley-Interscience, 1992)参照)。
【0057】
本発明は、本明細書に記載されたリボヌクレアーゼに施される修飾の種類によって限定されるものではない。いくつかの実施形態において、本発明のリボヌクレアーゼは、デキストラン、糖質、アルブミン、キャリアタンパク質、及び抗体(例えば、リボヌクレアーゼの半減期を延ばすために用いられる非ターゲティング抗体)を含む群より選択される1又は複数の部分の結合によって修飾される。
【0058】
いくつかの実施形態において、その側鎖が溶媒(例えば、緩衝液又は水)と接触可能な三次構造におけるアミノ酸が、三次構造を妨害することなく修飾される。しかしながら、βシート内に位置している場所でジスルフィドを形成するシステイン残基(例えば、Cys84)を記載する文献報告によって明らかなように、三次構造内のすべての変化が良くないとは限らない。
【0059】
いくつかの実施形態において、修飾された場合に、酵素活性及び/若しくは基質結合性を破壊するか又は有意に阻害するRNase内のアミノ酸は、修飾の標的にならない。いくつかの実施形態において、修飾された場合に、酵素活性及び/若しくは基質結合性を破壊するか又は有意に阻害するRNase内のアミノ酸が、特異的に修飾の標的になる。
【0060】
本発明は、本明細書に記載されたヒトリボヌクレアーゼへのコンジュゲーションに利用される水溶性ポリマーの種類によって限定されるものではない。実際、任意の生体適合性の水溶性ポリマーを用いてもよい。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマーは、非ペプチド性、無毒性、非天然、及び生体適合性である。水溶性ポリマーは、ポリマーの単独での使用に関係したか、又は生体組織に関連して(例えば、患者への投与)別の物質に関係した有益な効果が、例えば医師などの臨床医によって評価されるいかなる有害な作用をも上回る場合には、生体適合性とみなされる。非免疫原性に関して、ポリマーは、インビボでのポリマーの意図された用途が望ましくない免疫応答(例えば、抗体の形成)を生じない場合、又は免疫応答が生じ、臨床医の評価としてそのような応答が臨床的に有意若しくは重要であるとは判断されない場合には、非免疫原性とみなされる。従って、いくつかの好ましい実施形態において、水溶性ポリマーは生体適合性かつ非免疫原性である。
【0061】
本発明の水溶性ポリマーは、ヒトリボヌクレアーゼに結合した場合、ポリマーが生理学的環境などの水性環境で沈殿しないように選択される。いくつかの実施形態において、ポリマーは、ヒトリボヌクレアーゼタンパク質へのコンジュゲーションの方法に基づいて選択される。例えば、還元的アルキル化を利用する方法のために選択されるポリマーは、重合の程度が制御できるように単一の反応性アルデヒドを有するべきである。ポリマーは、分枝状であってもよいし又は非分枝状であってもよい。好ましくは、最終生成物の調製物の治療用途について、ポリマーは薬学的に許容されるものである。ポリマー/タンパク質コンジュゲートが治療的に用いられるかどうかというような考慮、並びに、もしそうであれば、望ましい用量、循環時間、タンパク質分解に対する抵抗性、及び他の考慮に基づいて、当業者は望ましいポリマーを選択することができると考えられる。例えば、これらは、当技術分野において周知の方法を用いて、コンジュゲートのリボ核酸分解活性についてインビトロでアッセイすることにより確認することができる。
【0062】
水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)などのポリ(アルキレングリコール)、エチレングリコールとプロピレングリコールなどのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、及び前述のいずれかの組み合わせを含む群より選択してもよいが、それに限定されるものではない。
【0063】
ポリマーは、直鎖状(例えば、アルコキシPEG又は二官能性PEG)でも分枝状でもよい。さらに、ポリマーは、多分岐型(例えば、フォーク型PEG、又はポリオールコアに結合したPEG)、樹状型であってもよく、かつ/又は分解性結合を含んでもよい。ポリマーの内部構造は、いくつかの異なるパターン(例えば、限定されるものではないが、ホモポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマー、及びブロックトリポリマーを含むパターン)のいずれかで構成できると考えられる。
【0064】
さらに、ポリマーを、リボヌクレアーゼ内の所望の残基に結合するのに適切な、適した活性化基で「活性化」してもよい。「活性化」ポリマーは、リボヌクレアーゼとの反応のための反応基を有するポリマーを指す。本発明で有用である(例えば、水溶性ポリマーをヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートするために)と考えられる活性化ポリマー、及びそれらのタンパク質へのコンジュゲーションの方法の例は、当技術分野において公知であり、Zalipsky, Bioconjugate Chem 6, 150-165 (1995); Kinstler et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 477-485 (2002);及びRoberts et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 459-476 (2002)に詳細に記載されており;それぞれはすべての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0065】
ポリマーは任意の分子量であってよい。例えば、ポリエチレングリコールについて、好ましい分子量は、約2kDa〜約150kDaである(「約」という用語は、ポリエチレングリコールの調製において、多分散性(平均又は記載の値とは異なるメンバーを含むポリマーのバッチ内の個々のポリマー分子の分布)でありうることを示す)。所望の治療プロフィール(例えば、望まれる徐放の持続期間、生物活性に関してもしあればその効果、取り扱いやすさ、抗原性の程度又は欠如、及び本発明の治療用組成物(例えば、RNase 1タンパク質又は類似体を含む)へのポリエチレングリコールの他の公知の効果)に応じて他のサイズを用いてもよい。例えば、図2〜9は、癌性腫瘍の治療に有用性が見出された異なる分子量のPEG付加RNaseの例を示している。
【0066】
ポリエチレングリコール(PEG)が水溶性ポリマーとして利用される場合、PEGは、その末端の1つが不活性基でキャッピングされてもよい。例えば、PEG分子は、mPEGとも呼ばれるモノメトキシ-PEGであってもよく、それは、ポリマーの一方の末端がメトキシ(すなわち、-OCH3)基であり、他方の末端が化学修飾され得る官能基(例えば、ヒドロキシル)であり、標的タンパク質(例えば、ヒトリボヌクレアーゼ)上の反応基へのコンジュゲーションに用いられる、PEGの形態である。いくつかの実施形態において、米国特許出願公開第2004/0235734号に記載されたPEGポリマーが用いられる。
【0067】
いくつかの実施形態において、PEGポリマーは、1又は複数の弱い又は分解性の結合を含んでもよい。例えば、PEGポリマーは、エステル結合(例えば、経時的に(例えば、患者内に存在する場合)加水分解しうる)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、分解性結合を含むPEGポリマーの加水分解は、2又はそれ以上の断片(例えば、親分子より低い分子量の断片)を生じる。
【0068】
本発明は、分解性結合の種類によって限定されるものではない。実際、PEGポリマーは、炭酸結合;イミン結合;リン酸エステル結合;ヒドラゾン結合;アセタール結合;オルトエステル結合;アミド結合;ウレタン結合;ペプチド結合;及びオリゴヌクレオチド結合を含む様々な分解性結合の1又は複数を含むことができるが、それに限定されるものではない。
【0069】
ポリマー自体の内部に1又は複数の分解性結合を含有することによって、本発明のコンジュゲートの薬物動態特性を制御する機構を追加することが企図される。例えば、いくつかの実施形態において、投与される際はコンジュゲートの酵素活性はない又はわずかであるが、結合が分解する(例えば、加水分解する)ような条件に曝された場合に酵素のリボ核酸分解活性が活性化される、本発明のRNase-PEGコンジュゲートを患者に投与してもよい。従って、いくつかの実施形態において、PEG分子内の分解性結合を、コンジュゲートの特異性及び効力を高めるために用いることができる。
【0070】
本発明のコンジュゲートがポリマー(例えば、PEG)とヒトリボヌクレアーゼタンパク質との間に結合を含んでもよいことが企図される。いくつかの実施形態において、結合は安定な結合(例えば、アミド結合、カルバメート結合、アミン結合、チオエーテル/スルフィド結合、又はカルバミド結合)である。いくつかの実施形態において、結合は、加水分解で分解可能である(例えば、RNaseの放出(例えば、ポリマー(例えば、PEG)の一部もRNase 1上に残存することなく)を可能にするために)。本発明は、利用される分解性結合の種類によって限定されるものではない。実際、カルボン酸エステル、リン酸エステル、チオールエステル、無水物、アセタール、ケタール、アシロキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチド、及びオリゴヌクレオチドを含むがそれに限定されるものではない、様々な結合が本明細書で企図される。これらの結合は、RNaseタンパク質(例えば、C末端カルボキシル基、若しくはアミノ酸側鎖のヒドロキシル基で)及び/又はポリマーのいずれかの修飾により調製してもよい(例えば、当技術分野における公知の方法を用いて)。
【0071】
水溶性ポリマー(例えば、PEG)のリボヌクレアーゼタンパク質分子に対する割合は様々であってもよく、反応混合物におけるそれらの濃度も同様である。一般的に、最適な比率(例えば、過剰な未反応タンパク質又はポリマーがない又はわずかである場合の反応(例えば、ポリマーが1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の部位にコンジュゲートする)の効率に関して)を決定することができる(例えば、選択されたポリマー(例えば、PEG)の分子量、利用されるコンジュゲーション化学作用、標的の対象部位の数などを用いて)。例えば、いくつかの実施形態において、非特異的コンジュゲーション反応(例えば、PEG付加反応)を行い、その後で、精製(各RNaseにコンジュゲートしたポリマー(例えば、PEG)の数に基づいてRNaseを分離する)を行うことができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートは組成物内に存在する。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は複数のコンジュゲートを含み、各タンパク質がそのタンパク質に共有結合した1〜3個の水溶性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、組成物は複数のコンジュゲートを含み、各タンパク質がそのタンパク質に結合した1個、2個、3個、4個、5個、6個、又はそれ以上のポリマーを含む。いくつかの実施形態において、組成物はコンジュゲートの集団を含み、コンジュゲートの大部分(例えば、65%より多い、70%より多い、75%より多い、80%より多い、85%より多い、90%より多い、95%より多い、97%より多い、98%より多い、99%より多い)が、同数(例えば、1個、2個、3個、又はそれ以上)のポリマー(例えば、PEG分子)に共有結合している。いくつかの実施形態において、1個、2個、3個、又はそれ以上のポリマーが、オリゴマー化されたリボヌクレアーゼにコンジュゲートしている。本発明は、オリゴマー内に存在するリボヌクレアーゼ分子の数によって限定されるものではない。実際、2個、3個、4個、5個、6個の、又はさらに多いリボヌクレアーゼのオリゴマーを含むがそれに限定されるものではない、様々なオリゴマーを、1又は複数の水溶性ポリマーにコンジュゲートしてもよい。いくつかの実施形態において、本発明は、単一の水溶性ポリマーを含む(例えば、モノPEG付加されている)複数のRNaseを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、複数のRNaseは、RNaseの単量体、二量体、三量体、及び/又はより高次の複合体(すなわち、オリゴマー)を含む。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明の修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマー-RNaseコンジュゲート)は、酵素(例えば、リボ核酸分解)活性の重要な部分を保持する。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、非修飾(例えば、コンジュゲートされていない)リボヌクレアーゼの酵素活性の約1%〜約95%を有する。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、非修飾リボヌクレアーゼより高い活性を有する。いくつかの実施形態において、修飾ヒトリボヌクレアーゼは、リボ核酸分解活性を有する非修飾の親リボヌクレアーゼの活性に対して、約1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、100%、又はそれ以上を有する(例えば、当業者に周知のインビトロアッセイで測定した場合)。
【0074】
他の好ましい実施形態において、本発明の修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマー-RNaseコンジュゲート)は、別の所望の性質(例えば、リボ核酸分解活性以外の(例えば、癌細胞を死滅させる能力))の重要な部分を保持する。機構の理解は本発明を実施するのに必要ではなく、かつ本発明は任意の特定の作用機構に限定されるものではないが、いくつかの実施形態において、修飾ヒトリボヌクレアーゼタンパク質(例えば、水溶性ポリマー-RNaseコンジュゲート)は、ヒトリボヌクレアーゼタンパク質の他の特性により、リボ核酸分解活性の非存在下で(例えば、非修飾リボヌクレアーゼの70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満)、標的細胞(例えば、癌細胞又は微生物若しくはウイルスに感染した細胞)を死滅させる能力がある。
【0075】
本発明は、水溶性ポリマーを本発明のヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートするために利用される方法によって限定されるものではない。多数の種類の化学作用が当技術分野において公知であり、本発明の組成物の作製に用いることができる。これらの方法は詳細に記載されている(例えば、Zalipsky, Bioconjugate Chem 6, 150-165 (1995); Kinstler et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 477-485 (2002);及びRoberts et al., Advanced Drug Delivery Reviews 54, 459-476 (2002)参照)。いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の活性化ポリマーをヒトリボヌクレアーゼにコンジュゲートするのに有用な、コンジュゲーション化学作用を利用する。
【0076】
いくつかの実施形態において、PEG-リボヌクレアーゼコンジュゲートは、コンジュゲーション後、精製される。本発明は、利用される精製過程の種類によって限定されるものではない。実際、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及び当技術分野において周知の他の方法を含むがそれに限定されるものではない、様々な過程を利用することができる。
【0077】
例えば、いくつかの実施形態において、水溶性ポリマー-RNaseコンジュゲートを精製して、1又は複数の異なる種類のコンジュゲート(例えば、単一ポリマーに共有結合したコンジュゲート)を得ることができる。いくつかの実施形態において、コンジュゲーション反応の生成物を精製して、(例えば、平均して)ヒトリボヌクレアーゼあたり概して1個、2個、3個、4個、又はそれ以上のポリマー(例えば、PEG)を得る。いくつかの実施形態において、異なる数のポリマーに共有結合したリボヌクレアーゼを分離/分画するために、又はコンジュゲートされていないタンパク質から、若しくはコンジュゲートされていないポリマーからコンジュゲートを分離するために、ゲル濾過クロマトグラフィーが用いられる。ゲル濾過カラムは当技術分野において周知であり、多数の供給元から入手できる(例えば、Amersham Biosciences, Piscataway, NJからのSUPERDEX及びSEPHADEXカラム)。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、癌を処置するために患者へ投与される。従って、いくつかの実施形態において、本発明は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートを含む組成物を投与することを含む、癌を処置する方法を提供する。
【0079】
水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートを含む組成物の用量は、被験体の年齢、体重、及び全身状態、並びに処置対象の状態(例えば、癌)の重症度、及び投与されるポリマー-リボヌクレアーゼコンジュゲートの種類に依存して異なってもよい。有効量(例えば、治療有効量)は当業者に公知である。一般的に、治療有効量は、1回又は複数回の用量で患者に投与される、1日あたり約0.001mg〜約500mg(例えば、0.01mg〜100mg)の範囲であるが、本発明は、利用される用量によって限定されるものではない(例えば、0.001mg未満又は500mgより多い量が1回又は複数回の用量で患者に投与される場合がある)。あるいは、用量は、週に1回若しくは複数回、又は月に1回若しくは複数回、又は前述の用量のいずれかの組み合わせで与えられてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、1又は複数の他の薬剤と共投与される。いくつかの実施形態において、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートを含む組成物が別の薬剤(例えば、抗癌剤)と共投与される場合、薬剤の一方又は両方のより少ない用量を、治療的恩恵を損なうことなく、患者へ投与することができる(例えば、それにより、望ましくない副作用を減少させるか、又は薬物抵抗性の可能性を低減する)ことが想定される。本発明は、癌の処置に限定されるものではない。実際、本発明の組成物は、本発明の組成物及び方法を用いて恩恵を受けることができる(例えば、治療又は予防することができる)任意の状態又は疾患を処置するために、被験体に投与してもよい。本発明は、癌、腫瘍発生の処置、及び転換した表現型の予防のための治療法及び医薬組成物を提供する。
【0081】
いくつかの実施形態において、本発明は癌の治療を提供する。いくつかの実施形態において、治療は、癌の処置のための水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートを提供する。
【0082】
いくつかの実施形態において、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートは、癌患者において、全身的に又は局所的に投与され、腫瘍細胞を死滅させる、腫瘍細胞増殖及び血管新生を阻害する、並びに/又は腫瘍細胞死を誘導することができる。それらは、静脈内、髄腔内、腹腔内及び経口的に投与することが可能である。さらに、それらは、単独で、又は抗増殖性薬物若しくは他の抗癌剤と組み合わせて、投与することが可能である。
【0083】
組み合わせを企図する場合、本発明が組み合わせの特定の性質によって限定されることは意図されない。本発明は、単純な混合物及び化学的ハイブリッドとしての組み合わせを企図する。
【0084】
本発明が治療用調製物の特定の性質によって限定されることは意図されない。例えば、そのような組成物は、生理学的に許容できる液体、ゲル、又は固体の担体、希釈剤、補助剤、及び賦形剤と共に供給することができる。
【0085】
これらの治療用調製物は、他の治療剤と同様の方法で、家畜についてなどの獣医学用途、及びヒトにおける臨床用途として、哺乳動物に投与することができる。一般的に、治療有効性に必要とされる用量は、使用の種類及び投与方法、加えて個体宿主の個別的要求によって異なると考えられる。
【0086】
そのような組成物は、典型的には、液体溶液若しくは液体懸濁液として、又は固形に調製される。癌のための経口製剤は、通常、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような、結合剤、増量剤、担体、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、及び賦形剤などの通常用いられる添加剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性製剤、又は粉末の形態を取り、典型的には1%〜95%、好ましくは2%〜70%の活性成分を含む。水溶性ポリマーを含む医薬組成物に用いられる特定の賦形剤、抗菌剤、抗酸化剤、及び界面活性剤は、全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2004/0235734号に記載されている。
【0087】
組成物はまた、液体溶液又は液体懸濁液のいずれかなどの注射可能物質として調製することができる。注射前の液体の溶液又は懸濁液に適した固形を調製してもよい。
【0088】
本発明の組成物は、生理学的に許容及び適合できる希釈剤又は賦形剤と混合されることが多い。適した希釈剤及び賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなど、及びそれらの組み合わせである。加えて、必要に応じて、組成物は、湿潤剤又は乳化剤、安定剤又はpH緩衝剤などの少量の補助剤を含んでもよい。
【0089】
局所投与などの他の投与方法に適する追加の製剤には、軟膏、チンキ、クリーム、ローション、及び場合によっては、坐剤が挙げられる。軟膏及びクリームについて、伝統的な結合剤、担体、及び賦形剤には、例えば、ポリアルキレングリコール又はトリグリセリドが含まれてもよい。
【0090】
本発明の方法は、インビトロ又はインビボで実施することができる。例えば、癌(例えば、前立腺癌、肺癌、胃癌、乳癌、結腸癌、及び/又は膵臓癌)を処置するための水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートとの併用に有用である化合物についてスクリーニングするため;癌の処置に関する化合物の効力を評価するため;あるいは化合物が癌と戦う機構(例えば、化合物がそのように戦うのは、アポトーシスを誘導することによるのか、分化を誘導することによるのか、増殖を減少させることによるのかどうかなど)を研究するため、本発明の方法をインビトロで用いることができる。例えば、いったん化合物が癌細胞の血管新生及び/又は増殖及び/又は死滅(例えば、アポトーシスを引き起こす)を阻害するように水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートと組み合わせて働く化合物であると同定されたならば、当業者は、その化合物が癌細胞の死滅/アポトーシスを誘導する程度、並びに/あるいは癌細胞の血管新生及び/又は増殖を減少させる程度を評価するためにインビトロで本発明の方法を適用することができる。あるいは、当業者は、化合物が機能するのは、アポトーシスを誘導することによるのか、増殖及び/若しくは血管新生を減少させることによるのか、又はこれらの方法の組み合わせによるのかを決定するために、本発明の方法を適用することができる。
【0091】
あるいは、本発明の方法を、癌(例えば、限定されるものではないが、前立腺癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、及び結腸癌が挙げられる)を処置するためにインビボで用いることができる。例えば、癌細胞がヒト被験体に存在する場合に、本発明の方法をインビボで実行する場合、治療有効量の化合物をヒト被験体に投与することにより(例えば、治療用物質(例えば、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートを含む)を腫瘍へ直接注射することによるか、又は全身投与により)、接触させることができる。
【0092】
本発明は、その別の態様において、前立腺癌、肺癌、胃癌、乳癌、膵臓癌、結腸癌、又は他の癌などの癌を処置する方法に関する。本方法は、癌細胞の血管新生、増殖を阻害する、及び/又は癌細胞の死を引き起こすのに有効な化合物の量を被験体に投与することを含む。
【0093】
本発明は、処置される癌の種類によって限定されるものではない。実際、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、聴神経腫、腺癌、血管肉腫、星状細胞種、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨起源の腫瘍、骨肉腫、脳腫瘍、乳癌、気管支原生癌、癌腫、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、結腸癌、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、胎生期癌、内皮肉腫、上衣細胞腫、上皮癌、食道癌、ユーイング腫瘍、線維肉腫、神経膠腫、重鎖病、血管芽細胞腫、肝臓癌、ホジキンリンパ腫、平滑筋肉腫、白血病、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管内皮腫、リンパ管肉腫、髄様癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、乏突起膠腫、骨原性肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭癌、乳頭腺癌、松果体腫、真性赤血球増加症、急性前骨髄球性白血病、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、脂腺癌、精上皮腫、小細胞肺癌、扁平上皮癌、胃癌、滑膜腫、汗腺癌、精巣腫瘍、子宮癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、及びウィルムス腫瘍を含むがそれに限定されるものではない様々な癌を、本発明の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートを含む組成物を用いて処置することができる。
【0094】
水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートを含む組成物を投与してもよい、適した被験体には、例えば、ラット、マウス、ネコ、イヌ、サル、及びヒトなどの哺乳動物が挙げられる。適したヒト被験体には、例えば、癌(例えば、前立腺癌、肺癌、胃癌、膵臓癌、結腸癌、及び乳癌)に罹るリスクがあると以前に決定されている者、及び癌に罹っていると診断されている者が挙げられる。
【0095】
癌に罹るリスクがあると決定された被験体において、本発明の組成物は、癌細胞が発生した場合には、好ましくは、癌細胞の血管新生、増殖を減少させる、及び/又は癌細胞の死滅(例えば、アポトーシス)を誘導するのに有効な条件下で、被験体に投与される。
【0096】
本明細書における組成物は、所望の用途に適切な、任意の適した剤形に形成することができる。適した剤形の例には、経口、非経口、又は局所用の剤形が挙げられる。
【0097】
経口用途に適した剤形には、錠剤、分散性粉末、顆粒、カプセル、懸濁液、シロップ、及びエリキシル剤が挙げられる。錠剤用の不活性な希釈剤及び担体には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、及びタルクが挙げられる。錠剤はまた、デンプン及びアルギン酸などの造粒剤及び崩壊剤;デンプン、ゼラチン、及びアラビアゴムなどの結合剤;並びに、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及びタルクなどの平滑剤を含んでもよい。錠剤は、コーティングしなくてもよいし、崩壊及び吸収を遅らせるために公知の技術によってコーティングしてもよい。カプセルに用いることができる不活性な希釈剤及び担体には、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、及びカオリンが挙げられる。懸濁液、シロップ、及びエリキシル剤は、慣用の増粘剤、例えば、メチルセルロース、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム;レシチン及びステアリン酸ポリオキシエチレンなどの湿潤剤;エチル-p-ヒドロキシベンゾエートなどの保存剤を含んでもよい。
【0098】
非経口投与に適した剤形には、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液などが挙げられる。それらはまた、使用直前に滅菌した注射可能な媒質に溶解又は懸濁することができる滅菌した固体組成物の形態で製造してもよい。それらは、当技術分野において公知の懸濁剤又は分散剤を含んでもよい。非経口投与の例は、脳室内投与、脳内投与、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、直腸投与、及び皮下投与である。
【0099】
水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートに加えて、医薬組成物は、他の活性物質、特に、癌の処置に有用であると同定されている活性物質を含むことができる。これらの活性物質は、複数の種類の癌を処置するのにも有用であるような広範囲に渡る抗癌剤であり得るか、又はより特異的であってもよい(例えば、そのもう一つの活性物質が特定の種類の癌(例えば、腺癌)を処置するのに有用であるが、第二の種類の癌(例えば、口腔扁平上皮癌)を処置するのに有用ではない場合)。そのもう一つの活性物質はまた、それらの抗癌性質に加えて非抗癌性の薬理学的性質を有し得る。例えば、もう一つの活性物質は、抗炎症性を有することができるか、あるいはそのような抗炎症性がなくてもよい。
【0100】
本発明に従って投与される水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートを含む組成物の実際の好ましい量は、製剤化された特定の組成物及び投与方法によって異なってもよいことが理解されると考えられる。組成物の作用を改変し得る多くの因子(例えば、体重、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、被験体の状態、薬物組み合わせ及び薬物反応感度、並びに重症度)を、当業者は考慮することができる。投与は、最大耐容量内で連続的に、又は周期的に実施することができる。所与の一連の条件に対する最適な投与速度については、従来の用量投与試験を用いて当業者が確認することができる。
【0101】
幅広い範囲の治療剤が本発明と共に用いられる。例えば、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートと共投与できる任意の治療剤は、本発明での使用に適している。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態は、有効量の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲート(並びにその鏡像異性体、誘導体、及び薬学的に許容される塩)と、少なくとも1つの抗癌剤(例えば、化学療法薬などの従来の抗癌剤及び/又は放射線治療)を被験体に投与することを提供する。
【0103】
本発明と共に用いるのに適した抗癌剤には、アポトーシスを誘導する薬剤、核酸損傷を誘発する/引き起こす薬剤、核酸合成を阻害する薬剤、微小管形成に影響を及ぼす薬剤、及びタンパク質合成又は安定性に影響を及ぼす薬剤が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0104】
本発明の組成物及び方法に用いるのに適した抗癌剤のクラスには、限定されるものではないが、以下が挙げられる:1)微小管阻害剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びビンデシンなど)、微小管安定剤(例えば、パクリタキセル(Taxol)及びドセタキセルなど)を含むアルカロイド、及びエピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド(VP-16)及びテニポシド(VM-26)など)及びトポイソメラーゼIを標的にする作用物質(例えば、カンプトテシン及びイシリノテカン(CPT-11)など)などのトポイソメラーゼ阻害剤を含む、クロマチン機能阻害剤;2)ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、及びブスルファン(Myleran)など)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、ロムスチン、及びセムスチンなど)、及び他のアルキル化剤(例えば、ダカルバジン、ヒドロキシメチルメラミン、チオテパ、及びマイトマイシンなど)を含む、共有結合性DNA結合剤(アルキル化剤);3)核酸阻害剤(例えば、ダクチノマイシン(Actinomycin D)など)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(Daunomycin及びCerubidine)、ドキソルビシン(Adriamycin)、及びイダルビシン(Idamycin)など)、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン(Mitoxantrone)などのアントラサイクリン類似体など)、ブレオマイシン(Blenoxane)など、及びプリカマイシン(Mithramycin)などを含む、非共有結合性DNA結合剤(抗腫瘍抗生物質);4)抗葉酸剤(例えば、メトトレキセート、Folex、及びMexateなど)、プリン代謝拮抗物質(例えば、6-メルカプトプリン(6-MP,Purinethol)、6-チオグアニン(6-TG)、アザチオプリン、アシクロビル、ガンシクロビル、クロロデオキシアデノシン、2-クロロデオキシアデノシン(CdA)、及び2'-デオキシコフォルマイシン(Pentostatin)など)、ピリミジンアンタゴニスト(例えば、フルオロピリミジン(例えば、5-フルオロウラシル(Adrucil)、5-フルオロデオキシウリジン(FdUrd)(Floxuridine)など))、及びシトシンアラビノシド(例えば、Cytosar(ara-C)及びフルダラビンなど)を含む、代謝拮抗物質;5)L-アスパラギナーゼを含む酵素、及びヒドロキシウレアなど;6)抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェンなど)などのグルココルチコイド、非ステロイド抗アンドロゲン剤(例えば、フルタミドなど)、及びアロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール(Arimidex)など)を含む、ホルモン;7)白金化合物(例えば、シスプラチン及びカルボプラチンなど);8)抗癌薬、毒素、及び/又は放射性核種などとコンジュゲートしたモノクローナル抗体;9)生物学的応答調節物質(例えば、インターフェロン(例えば、IFN-αなど)及びインターロイキン(例えば、IL-2など)など);10)養子免疫治療;11)造血成長因子;12)腫瘍細胞分化を誘導する作用物質(例えば、オールトランスレチノイン酸など);13)遺伝子治療技術;14)アンチセンス治療技術;15)腫瘍ワクチン;16)腫瘍転移に向けられる治療(例えば、バチマスタット(Batimistat)など);並びに17)血管新生の他の阻害剤。
【0105】
好ましい実施形態において、本発明は、有効量の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートと、細胞を死滅させる(例えば、アポトーシスを誘導する)、及び/又は癌細胞増殖を阻止する少なくとも1つの従来の抗癌剤とを被験体へ投与することを提供する。いくつかの好ましい実施形態において、被験体は、転移を特徴とする疾患を有する。さらに他の好ましい実施形態において、本発明は、水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲート及びタキサン(例えば、ドセタキセル)の有効量を、Bcl-2ファミリータンパク質(例えば、Bcl-2及び/又はBcl-XL)の過剰発現を特徴とする疾患を有する被験体への投与を提供する。
【0106】
タキサン(例えば、ドセタキセル)は、抗癌化学療法剤の有効なクラスである。(例えば、K.D. Miller and G.W. Sledge, Jr. Cancer Investigation, 17:121-136 (1999)参照)。本発明は、任意の特定の機構に限定するつもりはないが、タキサン媒介性の細胞死は、細胞間の微小管安定化、引き続いてアポトーシス経路の誘導を通じて進行すると考えられる(例えば、S. Haldar et al., Cancer Research, 57:229-233 (1997)参照)。
【0107】
いくつかの他の実施形態において、具体的には、シスプラチン及びタキソールを、本発明の水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲートと共に用いることが企図される。シスプラチン及びタキソールは、腫瘍細胞にアポトーシスを誘導する明確な作用を有する(例えば、Lanni et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 94:9679 (1997); Tortora et al., Cancer Research 57:5107 (1997);及びZaffaroni et al., Brit. J. Cancer 77:1378 (1998)参照)。しかしながら、これらを始めとする化学療法剤での処置は、有意な毒性を負うことなく達成することは困難である。現在用いられている薬剤は、一般的に、水難溶性で、極めて有毒であり、罹患細胞だけでなく正常細胞にも影響を及ぼす用量で与えられる。例えば、発見された最も有望な抗癌化合物の一つであるパクリタキセル(タキソール)は、水に難溶性である。パクリタキセルは、B16黒色腫、L1210白血病、MX-1乳腺腫瘍、及びCS-1結腸腫瘍異種移植片などの幅広い種類の腫瘍モデルにおいて優れた抗腫瘍活性を示している。しかしながら、パクリタキセルの低い水溶解度は、ヒト投与にとって問題である。従って、現在用いられているパクリタキセル製剤は、その薬物を可溶化するためのクレマフォア(cremaphor)を必要とする。ヒト臨床用量範囲は、200〜500mgである。この用量は、エタノール:クレマフォアの1:1溶液に溶解され、静脈内に与えられる1リットルの液体へ希釈される。現在用いられているクレマフォアは、ポリエトキシル化ヒマシ油である。それは、クレマフォア混合物に溶解し、大容量の水性ビヒクルで希釈することにより注入で与えられる。直接投与(例えば、皮下)は、局所的毒性及び低レベルの活性を生じる。
【0108】
癌治療関連で日常的に用いられる任意の薬剤が本発明に用いられる。開示された水溶性ポリマー-ヒトリボヌクレアーゼコンジュゲート組成物との投与に適した従来の抗癌剤には、アドリアマイシン、5-フルオロウラシル、エトポシド、カンプトテシン、メトトレキセート、アクチノマイシン-D、マイトマイシンC、又はより好ましくは、シスプラチンが挙げられるが、それに限定されるものではない。これらの薬剤を、本明細書に記載した免疫療法剤とそれを組み合わせることによって、併用治療用組成物又はキットとして調製し、用いてもよい。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態において、水溶性ポリマー-リボヌクレアーゼコンジュゲートを含む治療的処置はさらに、DNA損傷を促進するために核酸(例えば、DNA)を直接的に架橋結合する1又は複数の薬剤を含む(例えば、相乗的又は追加的な治療特性を有する薬剤の組み合わせをもたらす)。例えば、シスプラチン及び他のDNAアルキル化剤などの薬剤を用いることができる。シスプラチンは、癌を処置するのに広く用いられており、3週間ごとに5日間、20mg/m2の有効な用量が計3コースで臨床適用に用いられる。本発明の組成物は、任意の適した方法によって送達することができ、その方法には、静脈内注射、皮下注射、腫瘍内注射、腹腔内注射、又は局所(例えば、粘膜表面へ)が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0110】
DNAを損傷する薬剤はまた、DNA複製、有糸分裂、及び染色体分配を妨げる化合物を含む。そのような化学療法化合物には、ドキソルビシンとしても知られているアドリアマイシン、エトポシド、ベラパミル、ポドフィロトキシンなどが挙げられるが、それに限定されるものではない。これらの化合物は、新生物の処置のための臨床設定に広く用いられ、静脈内へ、21日間隔でアドリアマイシン25〜75 mg/m2から、エトポシド35〜50 mg/m2までの範囲の用量で、静脈内のボーラス注入で投与されるか、又は静脈内用量の二倍量を経口で投与される。
【0111】
核酸前駆体及びサブユニットの合成及び忠実性を乱す薬剤もまた、DNA損傷をもたらし、本発明に化学療法剤として用いられる。いくつかの核酸前駆体が開発されている。特に有用なのは、広範な試験を受けており、かつ容易に入手できる薬剤である。従って、5-フルオロウラシル(5-FU)などの薬剤は、新生物組織によって優先的に使われ、このことによりこの薬剤は新生物細胞へのターゲティングに対し特に有用となっている。送達される用量は、3〜15mg/kg/日の範囲であり得るが、病期、治療への細胞の被適用性(amenability)、薬剤に対する抵抗性の量を含む様々な因子によって他の用量が大幅に異なる場合がある。
【0112】
好ましい実施形態において、本発明に用いられる抗癌剤(例えば、本明細書で考察された抗血管新生因子)は、抗癌効果の忠実性を損なうことなく、被験体、組織又は細胞へ送達することができるように水溶性ポリマー-リボヌクレアーゼコンジュゲートとの共投与を受け入れられるものである。白金複合体、ベラパミル、ポドフィロトキシン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロソウレア、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチナム、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びメトトレキセート、並びに他の類似した抗癌剤などの癌治療剤のより詳細な説明について、当業者は、かなり多数の教育的なマニュアルを参照する。それらのマニュアルには、Physician's Desk reference及びGoodman and Gilman's 「Pharmaceutical Basis of Therapeutics」ninth edition, Hardman et al.編, 1996が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0113】
いくつかの実施形態において、薬物は、光開裂性リンカーでリボヌクレアーゼへ結合している。例えば、本発明と共に用いられるいくつかのヘテロ二官能性の光開裂性リンカーが記載されている(例えば、Ottl et al., Bioconjugate Chem., 9:143 (1998)参照)。これらのリンカーは水溶性でも有機可溶性でもあり得る。それらは、アミン又はアルコールと反応することができる活性化エステル、及びチオール基と反応することができるエポキシドを含む。その2つの基の間に、3,4-ジメトキシ6-ニトロフェニル光異化性基があり、近紫外光(365nm)に曝されると、無傷の形態でアミン又はアルコールを放出する。従ってそのようなリンカーを用いて本発明の組成物に連結している場合、治療剤は、標的領域に近紫外光を暴露することによって、生物学的に活性のある形態か又は活性化可能な形態で放出され得る。
【0114】
光開裂性リンカーに代わるものは、酵素開裂性リンカーである。いくつかの酵素開裂性リンカーが、有効な抗腫瘍コンジュゲートとして実証されており、ドキソルビシンなどの癌治療用物質を水溶性ポリマーに適切な短いペプチドリンカーで結合させることにより、調製することができる(例えば、Vasey et al., Clin. Cancer Res., 5:83 (1999)参照)。リンカーは細胞の外側で安定であるが、いったん細胞内に入ると、チオールプロテアーゼにより切断される。好ましい実施形態において、コンジュゲートPK1が用いられる。光開裂性リンカー手法に代わるものとして、Gly-Phe-Leu-Glyなどの酵素分解性リンカーを用いてもよい。
【0115】
本発明は、治療技術の性質によって限定されるものではない。例えば、本発明と共に用いられる他のコンジュゲートには、BNCTのためのコンジュゲートしたホウ素ダスターの使用(例えば、Capala et al., Bioconjugate Chem., 7:7 (1996)参照)、放射性同位元素の使用、及びリシンなどの毒素のコンジュゲーションが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0116】
抗菌治療剤もまた、本発明の治療剤として水溶性ポリマー-リボヌクレアーゼコンジュゲートと組み合わせて用いることができる。微生物の機能を奪うか、阻害するか、又は別の方法で弱毒化することができる任意の薬剤、加えてそのような活性を有すると考えられる任意の薬剤を用いてもよい。抗菌剤には、単独又は組み合わせて用いられる、天然及び合成の抗生物質、抗体、阻害タンパク質、アンチセンス核酸、膜破壊剤などが挙げられるが、それに限定されるものではない。実際、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤などが含まれるがそれには限定されるものではない、任意の種類の抗生物質を用いてもよい。
【0117】
なおさらなる実施形態において、本発明のもう一つの構成要素は、水溶性ポリマー-リボヌクレアーゼコンジュゲートが、特定の細胞型(例えば、腫瘍細胞)を特異的に標的にすることができるターゲティング剤と会合することである。一般的に、ターゲティング剤は、ターゲティング剤の細胞表面部分との相互作用を通じて新生物細胞を標的にし、受容体依存性エンドサイトーシスによってその細胞の中へ取り込まれる。
【0118】
標的細胞(例えば、腫瘍細胞)の表面上に位置することが知られている任意の部分が本発明と共に用いられる。例えば、そのような部分に対する抗体が、その部分を含む細胞表面へ本発明の組成物を標的化する。あるいは、ターゲティング部分は、細胞表面上に存在する受容体に対するリガンドであってもよく、又はその逆でもよい。同様に、ビタミンもまた、特定の細胞へ本発明の治療用物質を標的にするのに用いてもよい。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態において、ターゲティング部分はまた、例えば腫瘍特異的抗原など、ターゲティング剤(リガンド)が結合する受容体を発現していることに特徴付けられる特定の腫瘍を同定するための作用物質として機能してもよい。その腫瘍特異的抗原には、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、チロシナーゼ、ras、シアリルルイス抗原、erb、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、MN、gp100、gp75、p97、プロテイナーゼ3、ムチン、CD81、CID9、CD63が挙げられるが、それに限定されるわけではなく、CD53、CD38、CO-029、CA125、GD2、GM2及びO-アセチルGD3、M-TAA、M-fetal、又はM-urinaryが本発明と共に用いられる。あるいは、ターゲティング部分は、腫瘍抑制因子、サイトカイン、ケモカイン、腫瘍特異的受容体リガンド、受容体、アポトーシスの誘導因子、又は分化誘導剤であってもよい。
【0120】
ターゲティングを企図される腫瘍抑制タンパク質には、p16、p21、p27、p53、p73、Rb、ウィルムス腫瘍(WT-1)、DCC、神経線維腫症1型(NF-1)、フォンヒッペル・リンダウ(VHL)病腫瘍抑制因子、Maspin、Brush-1、BRCA-1、BRCA-2、多発性腫瘍抑制因子(MTS)、ヒト黒色腫のgp95/p97抗原、腎細胞癌関連G250抗原、KS 1/4 汎癌腫(pan-carcinoma)抗原、卵巣癌抗原(CA125)、前立腺特異的抗原、黒色腫抗原gp75、CD9、CD63、CD53、CD37、R2、CD81、CO029、TI-1、L6、及びSASが挙げられるが、それに限定されるものではない。もちろん、これらは単に例示的な腫瘍抑制因子であり、本発明を、腫瘍抑制因子として当業者に知られているか又は知られるようになる任意の他の作用物質と関連して用いてもよいことが構想される。
【0121】
本発明の好ましい実施形態において、ターゲティングは、癌遺伝子(例えば、bcl-2及び/又はbcl-XL)によって発現される因子に向けられる。これらには、Srcファミリーのメンバーなどの膜結合型及び細胞質型の両方のチロシンキナーゼ、Mosなどのセリン/トレオニンキナーゼ、血小板由来成長因子(PDDG)などの成長因子及び受容体、rasファミリーを含む低分子量GTPアーゼ(Gタンパク質)、サイクリン依存性プロテインキナーゼ(cdk)、c-myc、N-myc、及びL-mycを含むmycファミリーメンバーのメンバー、並びにbcl-2及びファミリーメンバーが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0122】
本発明に関連して用いられる受容体及びそれらの関連リガンドには、葉酸受容体、アドレナリン受容体、成長ホルモン受容体、黄体ホルモン受容体、エストロゲン受容体、上皮成長因子受容体、線維芽細胞成長因子受容体などが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0123】
本発明のターゲティング態様に用いられるホルモン及びそれらの受容体には、成長ホルモン、プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、黄体ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、甲状腺刺激ホルモン、レプチン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アンジオテンシンI、アンジオテンシンII、α-エンドルフィン、αメラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)、コレシストキニン、エンドセリンI、ガラニン、胃抑制ペプチド(GIP)、グルカゴン、インスリン、アミリン、リポトロピン、GLP-1(7-37)ニューロフィジン、及びソマトスタチンが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0124】
加えて、本発明は、ターゲティング剤として用いられるビタミン(脂溶性ビタミン及び非脂溶性ビタミンの両方)が、ビタミンの受容体を有するか、又は別な方法でこれらのビタミンを取り込む細胞を標的にするのに用いてもよいことを企図する。この態様に特に好ましいのは、ビタミンD及びその類似体、ビタミンE、ビタミンAなどの脂溶性ビタミン、又はビタミンCなどの水溶性ビタミンである。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態において、癌細胞の任意の数のターゲティング基を水溶性ポリマー-リボヌクレアーゼコンジュゲートと会合する。従って、ターゲティング基と会合した水溶性ポリマー-リボヌクレアーゼコンジュゲートは、癌細胞の標的化に対して特異的である(すなわち、癌細胞に結合して、健康な細胞には結合しない可能性がはるかに高い)。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態において、ターゲティング基は、水溶性ポリマー-リボヌクレアーゼに、短い結合(例えば、直接結合)、中位の結合(例えば、Pierce Chemical Companyから販売されているSPDPなどの小分子二官能性リンカーを用いて)、又は長い結合(例えば、Shearwater Polymersから販売されているPEG二官能性リンカー)のいずれかで会合している(例えば、共有結合又は非共有結合で)。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態において、ターゲティング剤は、抗体、又は抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fabユニット)である。例えば、多くの癌(乳房HER2腫瘍を含む)の表面上に見い出されるよく研究された抗原は、糖タンパク質p185であり、それはもっぱら悪性細胞にだけ発現している(Press et al., Oncogene 5:953 (1990))。組換えヒト化抗HER2モノクローナル抗体(rhuMabHER2)は、HER2を過剰発現している乳癌細胞の増殖を阻害することが正に示されており、(従来の化学療法剤と併用して)進行乳癌の処置について第III相臨床試験で評価中である(Pegrarn et al., Proc. Am. Soc. Clin. Oncol., 14:106 (1995))。Parkらは、rhuMabHER2のFabフラグメントを小さい単層リポソームへ結合させており、その後、それに化学療法剤ドキソルビシン(dox)を負荷し、HER2を過剰発現している腫瘍の異種移植片へ標的化させることができる(Park et al., Cancer Lett., 118:153 (1997)及びKirpotin et al., Biochem., 36:66 (1997))。これらのdox負荷「免疫リポソーム」は、それに対応する、標的にされていないdox負荷リポソーム又は遊離doxと比較して、腫瘍に対する細胞毒性の増加、及び遊離doxと比較して全身毒性の減少を示した。
【0128】
いくつかの実施形態において、ターゲティング剤は抗体様部分である。いくつかの抗体様部分は、本発明に有用であると考えられ、それらには、アンキリン、アビマー、及びリポカリンが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0129】
抗体は、様々な生物学的標的(例えば、病原体、腫瘍細胞、正常組織)上の抗原又は免疫原(例えば、腫瘍、組織、又は病原体特異的抗原)のターゲティングを可能にするように作製することができる。そのような抗体には、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリーが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0130】
いくつかの好ましい実施形態において、抗体は、腫瘍特異的エピトープ(例えば、TAG-72(Kjeldsen et al., Cancer Res. 48:2214-2220 (1988);米国特許第5,892,020号;同第5,892,019号;及び同第5,512,443号);ヒト癌抗原(米国特許第5,693,763号;同第5,545,530号;及び同第5,808,005号);骨癌細胞由来のTP1及びTP3抗原(米国特許第5,855,866号);腺癌細胞由来のトムゼン-フリーデンライヒ(Thomsen-Friedenreich)(TF)抗原(米国特許第5,110,911号);ヒト前立腺癌由来の「KC-4抗原」(米国特許第4,708,930号及び同第4,743,543号);ヒト結腸直腸癌抗原(米国特許第4,921,789号);嚢胞腺癌由来のCA125抗原(米国特許第4,921,790号);ヒト乳癌由来のDF3抗原(米国特許第4,963,484号及び同第5,053,489号);ヒト乳房腫瘍抗原(米国特許第4,939,240号);ヒト黒色腫のp97抗原(米国特許第4,918,164号);癌腫又はオロソムコイド関連抗原(CORA)(米国特許第4,914,021号);ヒト扁平上皮肺癌と反応するが、ヒト小細胞肺癌とは反応しないヒト肺癌抗原(米国特許第4,892,935号);ヒト乳癌の糖タンパク質におけるT及びTnハプテン(Springer et al., Carbohydr. Res. 178:271-292 (1988));名付けられたMSA乳癌糖タンパク質(Tjandra et al., Br. J. Surg. 75:811-817 (1988));MFGM乳癌抗原(Ishida et al., Tumor Biol. 10:12-22 (1989));DU-PAN-2膵臓癌抗原(Lan et al., Cancer Res. 45:305-310 (1985));CA125卵巣癌抗原(Hanisch et al., Carbohydr. Res. 178:29-47 (1988));YH206肺癌抗原(Hinoda et al., Cancer J., 42:653-658 (1988)))を認識する。前述の参考文献のそれぞれは、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【0131】
乳癌について、細胞表面は、葉酸、EGF、FGF、並びに腫瘍関連抗原MUC1、cMet受容体、及びCD56(NCAM)に対する抗体(又は抗体フラグメント)で標的化されてもよい。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態において、ターゲティング剤は、好ましくは、核酸(例えば、RNA又はDNA)である。いくつかの実施形態において、核酸ターゲティング剤は、特定の核酸(例えば、染色体DNA、mRNA、又はリボソームRNA)と塩基対形成することによりハイブリダイズするように設計される。他の実施形態において、核酸は、リガンド又は生物学的標的と結合する。以下のタンパク質と結合する核酸が同定されている:逆転写酵素、HIVのRev及びTatタンパク質(Tuerk et al., Gene, 137(1):33-9 (1993));ヒト神経成長因子(Binkley et al., Nuc. Acids Res., 23(16):3198-205 (1995));及び血管内皮成長因子(Jellinek et al., Biochem., 83(34):10450-6 (1994))。リガンドと結合する核酸は、好ましくは、SELEX手法(例えば、米国特許第5,475,096号;同第5,270,163号;及び同第5,475,096号;並びにPCT公開公報WO 97/38134号、同WO 98/33941号、及び同WO 99/07724号参照、それらのすべては参照により本明細書に組み入れられる)によって同定されるが、多くの方法が当技術分野において公知である。
【0133】
実験
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい実施形態及び態様を実証し、さらに例証するために提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0134】
マレイミドPEG化合物を用いたウシG88C RNase AのPEG付加
強陽イオン交換樹脂溶出緩衝液(0〜0.5M NaClを含有する50mM NaOAc、pH5.0)の、5-チオ(2-ニトロ安息香酸)-保護リボヌクレアーゼを含有するタンパク質溶液のpHを、10% (容積/容積)10×PBS及び/又は1.0M Tris-HCl、pH8.0を添加することによって、5.0から7.4〜8.0に調節した。5倍モル過剰のDTTを室温で5分間以上かけて添加することによって、保護基を除去すると、5-チオ(2-ニトロ安息香酸)の遊離を示す、黄色の変化がすぐに生じた(Ellman, 1958, Arch. Biochem. Biophys. 74:443-450)。EDTA(2mM)を含有する100mMリン酸ナトリウム、pH6.0で平衡化したHITRAP脱塩カラムを用いて、DTT及び塩をリボヌクレアーゼから除去した。10倍モル過剰のマレイミド誘導体化mPEG又はmPEG2をEDTA(2mM)を含有する少量の100mMリン酸ナトリウム、pH6.0に溶解し、50〜250μMリボヌクレアーゼを含有する溶液に添加した。PEG付加反応を光から保護し、室温で2時間又は4℃で一晩継続させた。反応を50mM NaOAc、pH5.0で約6倍希釈によって終了させ、同じ緩衝液で平衡化したHITRAP SP HP陽イオン交換カラムに適用した。PEG付加及び非修飾RNase A変異体を50 mM NaOAc、pH5.0中のNaCl(0〜0.4M)の直線勾配でカラムから別々に溶出した。RNase Aの全てのPEG付加変異体をSDS-PAGE(図7A)により試験し、≧98%均質で、微量の非修飾リボヌクレアーゼしか含有せず、遊離PEGを含まないことがわかった。タンパク質を濃縮し、1×PBSに対して十分に透析した。PEG付加したRNase A変異体のタンパク質濃度を非修飾リボヌクレアーゼについて測定した。PEG部分の存在は、いずれの定量方法(例えば、紫外分光法又はBCAアッセイ)も妨げないことがわかった。
【0135】
20kDa mPEG2-G88C RNase Aの第2バッチを調製した。簡単に説明すると、約66mgの20kDa mPEG2-N-ヒドロキシスクシンイミドを、100mM NaClを含有する2mLの0.2M NaHCO3緩衝液、pH8.1に溶解し、20倍モル過剰のN-(2-アミノエチル)マレイミドトリフルオロ酢酸塩(Antczak et al., 2001, Bioorg. Med. Chem. 9:2843-2848に既に記載されているように、内部で合成した)と室温で30分間反応させ、光から保護した。次いで、1×DPBS(Invitrogen)で平衡化したHITRAP脱塩カラムに粗反応物をアプライし、初期無塩PEG含有画分を採取することによって、マレイミド誘導体化mPEG2を過剰N-(2-アミノエチル)マレイミドから分離した。次に、この20kDa mPEG2-マレイミドを上記と同じ方法でG88C RNase Aと反応させた。この方法で調製した20kDa mPEG2-G88C RNase Aは、市販の20kDa mPEG2-マレイミドで調製したコンジュゲートと同じ挙動をした。mPEG-マレイミド(2kDa)は、SunBio, Inc.(Anyang City, South Korea)からのものであった。mPEG-マレイミド(20kDa)及びmPEG2-マレイミド(20kDa)は、Nektar Therapeutics(Huntsville, AL)からのものであった。
【実施例2】
【0136】
マレイミドPEGを用いたRNase 1(G89C RNase 1)のPEG付加
ウシRNase A又はヒトRNase 1とPEGとのコンジュゲート間の大きな相違は、タンパク質における標的アミノ酸残基である。ヒトRNase 1は、ウシRNase Aにおいて修飾されるG88Cではなく、G89Cで修飾される。PEG及びヒトRNase 1コンジュゲートは、PEG-ウシRNase Aコンジュゲートと同じ実験条件下で生成した。
【実施例3】
【0137】
PEG付加したRNase変異体の分析及び特性決定
ゲル濾過分析
1mLのゲル濾過緩衝液中のタンパク質1mgをHILOAD 26/60 Superdex G200ゲル濾過カラムにアプライし、NaCl(100mM)及びNaN3(0.05%)を含有する50mM NaOAc緩衝液(pH5.0)を用いて流速4mL/分で溶出した。製造業者のガイドラインにしたがって、ゲル濾過標準を調製し、同じカラムを用いて分離した。ヒトRNaseコンジュゲートに関する結果を示す(図7B)。
【0138】
リボヌクレアーゼインヒビター結合のアッセイ
hRIに対するPEG付加RNase A変異体の親和性を、既に記載されたようなリボヌクレアーゼインヒビター結合アッセイ(Lavis et al., Anal. Chem., 79:6775-6782 (2007))を用いることによって、測定した(図2)。陰性対照は、競合リボヌクレアーゼを含有せず、陽性対照は、5μMの最終濃度でRNase Aを含有した。陽性対照及び陰性対照の蛍光強度は、RNase Aのフルオロフォア標識したG88R変異体に対するKd値1.4nMに基づいて(Rutkoski et al., 2005)、結合DEF-RNaseが0%(IF(free))及び84.6%をそれぞれ表す。全てのDEF-RNaseが結合しているときの予想される蛍光強度(IB(bound))は、線形回帰を介して容易に外挿される。よって、結合した割合(fB)は、等式1を用いて計算できる:
【数1】

【0139】
競合リボヌクレアーゼの濃度に対してfBをプロットし、Wang (1995, FEBS Lett. 360: 111-114; Roehrl et al., 2004, Biochem. 43: 16056-16066)によって記載された2つの異なるリガンドの完全な競合結合に関する数式にデータを当てはめることによって、Kd値を計算した。
【0140】
触媒活性のアッセイ
6-FAM-dArUdAdA-6-TAMRA。開裂時に約180倍の蛍光増加(λex=493nm及びλem=515nm)を示す、高感度蛍光基質6-FAM-dArUdAdA-6-TAMRA(20nM)(Kelemen et al.,1999, Nucl. Acids Res. 27:3696-3701)を開裂する能力をアッセイすることにより、RNase A及びPEG付加変異体のリボ核酸分解活性(図2)を測定した。アッセイを、NaCl(0.10M)を含有する0.10M MES-NaOH緩衝液(pH6.0)2.0ml中、周囲温度で実施した。アッセイ緩衝液を調製するために使用されるMESを、陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製し、微量のオリゴマービニルスルホン(OVS)酸を除去した。オリゴマービニルスルホン酸は、商業用緩衝液合成の副産物であり、RNase Aの強力なインヒビターであることが示されている(Smith et al., 2003, J. Biol. Chem. 278:20934-20938)。kcat/KMの値は、等式:
【数2】

【0141】
を用いて得た。式中、△I/△tは、リボヌクレアーゼをキュベットに添加したとき、6-FAM-dArUdAdA-6-TAMRA基質の開裂によって生じる初期反応速度を表す。I0及びImaxは、それぞれ、酵素を添加する前の蛍光強度及び過剰の野生型RNase Aによって基質が完全開裂した後の蛍光強度である。ONCONASE(ONC)の活性値は、基質6-FAM-dArUdGdA-6-TAMRA(50nM)を用いて、NaCl(0.010M)を含有するOVSを含まない20mM MES-NaOH緩衝液(pH6.0)2.0mlにおいて室温で測定した(Lee & Raines, 2003, Biochem. 42:11443-11450)。
【0142】
Poly(C)。Poly(C)(268nmで1ヌクレオチド当たりε=6,200M-1cm-1)は、濃色性であり、UV吸収の増加によって(250nmで△ε=2,380M-1cm-1)、この基質のリボヌクレアーゼ触媒開裂のモニターが可能になる(del Cardayre & Raines, 1994, Biochem. 33:6031-6037)。アッセイは、室温でNaCl(0.10M)を含有する0.10M MES-NaOH緩衝液(pH6.0)、poly(C)(10μMから1.5mM)及び酵素(RNase A及びそのPEG付加変異体について2nM)において実施した。kcat及びKMの値は、GraphPad Prism(GraphPad Software Inc., San Diego, CA)を用いて、ミカエリス-メンテン式に初期速度データを当てはめた後に得た(図3)。
【実施例4】
【0143】
細胞毒性のアッセイ
野生型RNase A、ランピルナーゼ(オンコナーゼ(Onconase)及びONCとも呼ばれる)、G88R RNase A及びPEG-RNaseコンジュゲートのIC50値(図8)を、既に記載されているように(Leland et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. 98: 10407-10412)、リボヌクレアーゼの存在下でK-562細胞の細胞DNAへの[メチル-3H]チミジンの取り込みを測定することによって、測定した。全ての細胞毒性アッセイを3連で少なくとも3回繰り返した。各データ点は、3以上の実験値の平均(±SE)を表す。IC50値は、等式:
【数3】

【0144】
を用いて、非線形回帰を用いて曲線をシグモイド用量反応曲線に当てはめることによって計算した。等式3において、yは、4-h[メチル-3H]チミジンパルス後の総DNA合成であり、hは、曲線の傾きである。
【実施例5】
【0145】
PEG-RNaseコンジュゲートの薬物動態の測定
血清試料のリボヌクレアーゼ活性を、96ウェルプレート(NUNC96ウェル非処理ブラック96ウェルプレート)において、100mM Tris-HCl(pH7.0)、100mM NaCl及び100μg mL-1アセチル化BSA(Sigma)からなる緩衝液中の蛍光基質5'6-FAM-ArUAA-3'TAMRA(Integrated DNA Technologies)を用いてアッセイした。各ウェルに160μLの緩衝液、次いで10μLの希釈前血清(1:10,000)、次いで30μLの1.33μM 5'6-FAM-ArUAA-3'TAMRAを導入した。Tecan Safireプレートリーダーを用いて、それぞれ490nmの励起波長及び525nmの発光波長で蛍光をモニターした。RNase Aのコンジュゲート(図5A)及びRNase 1のコンジュゲート(図9A)について、結果を示す。
【実施例6】
【0146】
ウシRNase AのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)直鎖状20k mPEGでのPEG付加
NHS mPEGを乾燥粉末として、RNase A(50mM HEPES、5mM CaCl2、5mM MgCl2、pH7.5)へ、RNase:PEGの3つの異なる比1:1、1:3及び1:10で加えた。反応混合物を、時折ボルテックスしながら室温で1時間、その後、ボルテックスせずに4℃で一晩、インキュベートした。
【0147】
SDS PAGEで分析すると、1:1のRNase:PEG反応は、主に未反応のRNase及び1:1のRNase:PEGコンジュゲートを有した。1:1、1:2及び1:3のRNase:PEGのRNase:PEGコンジュゲートは、1:3及び1:10のRNase:PEG反応についての主な生成物である。
【実施例7】
【0148】
RNaseのアルデヒド直鎖状30k mPEGでのPEG付加
アルデヒドmPEGを、RNase A(50mM HEPES、pH5.0、20mM NaCNBH3)へ3つの異なる比1:2、1:4及び1:8のRNase:PEGで加えた。反応混合物を、ゆっくり撹拌しながら4℃で一晩インキュベートした。SDS-PAGEで分析すると、1:1、1:2及び1:3のRNase:PEGのコンジュゲートが、コンジュゲーション反応のそれぞれに様々な程度で存在していた。1:1及び1:2のRNase:PEGコンジュゲートは、1:4のRNase:PEGの反応混合物中におおよそ等しい量で存在する。
【0149】
1:4のRNase:PEG反応混合生成物を一晩透析し(20mM 酢酸Na、pH5.0)、陽イオン交換カラムに流した(SP-Sepharose fast flow; Pharmacia;20mM酢酸ナトリウム、1M NaCl、pH5.0で溶出した)。画分を収集し、PEGの存在について試験した(50mL H2O中1g NaI+0.5g I2)。2組のPEG含有種がカラム上で分離され、カラム上の2つの別々のピークとして示された。第二ピークからの4つの画分を混合し、比較のためにRNase Aの試料と共にSDS-PAGEを行った。半精製した試料は、RNaseに対して様々な数のPEGを有する多様なコンジュゲートを含む。従って、いくつかの実施形態において、本発明は、コンジュゲートの集団がコンジュゲーションの程度が混合している(例えば、コンジュゲートの集団には、1:1、1:2、1:3のRNase:PEGの比、及び/又はRNaseの分子あたり3個より多いPEG分子を有するコンジュゲートが存在する)、RNase:PEGコンジュゲートを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、コンジュゲートの集団は、同数のPEG分子にコンジュゲートしたRNase分子を主に含む(例えば、集団におけるRNase分子の50%より多く、60%より多く、70%より多く、80%より多く、90%より多く、95%より多く、97%より多く、98%より多く、又はそれ以上が、同数のPEG分子(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、又はそれ以上のPEG分子)にコンジュゲートしている)集団を作製するために精製することができる(例えば、本明細書に記載の方法を用いて)。
【実施例8】
【0150】
ヒトRNase 1のブチルアルデヒドmPEGでのPEG付加
野生型膵臓リボヌクレアーゼ1のPEG付加を、ブチルアルデヒドmPEG(例えば、直鎖状30kDa、分枝状40kDa、又は分枝状60kDa)で行った。PEG:RNaseの1:3比を用いて、反応を、3つの異なるpH条件で行った。用いた緩衝液は、クエン酸(0.1Mクエン酸、0.15M NaCl、pH5又はpH6)及びリン酸ナトリウム(0.1M NaH2PO4、0.15M NaCl、pH7.0)であった。
【0151】
12ミリグラムのブチルアルデヒド直鎖状30kDa mPEGを、pH5.0のクエン酸中RNase 1(9.86mg/mL溶液の203μl)に加えた。反応物を一晩インキュベートした。水素化シアノホウ素ナトリウム(1M NaOH中5M溶液の2μl;Aldrich)を加え、反応物を30分間、インキュベートした。Tris-HCl(1M溶液の10μl)を反応物に加え、反応物を室温でさらに30分間、インキュベートした。その他の反応については、異なるpH(緩衝液の選択によって調節される)及び異なるmPEGを用いて同じ条件下で行った。
【0152】
各反応混合物、加えて野生型RNase 1の対照、及び分子量ラダーを含むSDS-PAGEを行った。試料をすべて(分子量ラダーを除く)、90℃で5分間、加熱し、12% BisTris CRITERION XTゲル(BioRad)上へローディングした。ゲルをXTMES緩衝液(BioRad)を用いて200Vで50分間、泳動した。希釈緩衝液は、PBS、pH7.44であり、ローディング緩衝液は、50%試料緩衝液、40%脱イオン水、及び10%還元剤であった。
【0153】
記載された反応条件下で、反応の完了度(反応の完了時点におけるポリマーにコンジュゲートしたRNase 1タンパク質のパーセンテージ)は、pH5.0>pH6.0>pH7.0の順番に従う。30kDa及び40kDa mPEGを利用する反応は、60kDa mPEGを用いる反応よりさらに完了度が高かった(例えば、より多くのRNase:PEGコンジュゲートを含んだ)。反応はそれぞれ、単一のRNaseへの単一のPEGのコンジュゲートの多数集団を含んだ。
【0154】
いくつかの実施形態において、本発明は、コンジュゲートの集団がコンジュゲーションの程度が混合している(例えば、コンジュゲートの集団には、1:1、1:2、1:3のRNase:PEGの比、及び/又はRNaseの分子あたり3個より多いPEG分子を有するコンジュゲートが存在する)、ヒトRNase:PEGコンジュゲートを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、コンジュゲートの集団が同数のPEG分子にコンジュゲートしたRNase分子を含む、ヒトRNase:PEGコンジュゲートを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、コンジュゲートの集団は、コンジュゲート集団をさらに精製するために(例えば、同数のPEG分子にコンジュゲートしたRNase分子を主に含む集団(例えば、集団におけるRNase分子の50%より多く、60%より多く、70%より多く、80%より多く、90%より多く、95%より多く、97%より多く、98%より多く、又はそれ以上が、同数のPEG分子(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、又はそれ以上のPEG分子)にコンジュゲートしている)を作製するために)、精製することができる(例えば、本明細書に記載された方法を用いて)。
【実施例9】
【0155】
RNase 1とブチルアルデヒド直鎖状30kD及び分枝状40kD mPEGとのコンジュゲートのスケールアップ製造及び精製
PEG対RNase 1の1:1比を以下の反応に用いた。0.1Mクエン酸、0.15M NaCl、pH5中10.28mg/mLのRNase 1を含む溶液の8ミリリットルを、30kDa mPEG(164.5mg)又は40kDa mPEG(219.4mg)のいずれかに加え、4℃で一晩インキュベートした。
【0156】
水素化シアノホウ素ナトリウム(1M NaOH中5Mの80μl)を加え、混合物を室温で30分間、インキュベートした。Tris(1M、pH7の400μl)を加え、溶液を室温で30分間インキュベートした。
【0157】
各反応物を、5% 20mM Tris酢酸、2.0M NaCl、pH8.0の40mLで希釈し、1M NaOHの約600μlの滴下によりpHを約8へ調整した。反応物を陰イオン交換カラムに流し、通過画分を収集した。
【0158】
SDS PAGE(BioRad XT Gel)を、出発物質及び精製生成物を特性決定するために用いた。ランニング緩衝液はXTMESであり、希釈緩衝液はPBSであり、ローディング緩衝液はXTであった。分子量マーカーを除くすべての試料を、90℃で5分間加熱した。ゲルを125Vで1.5時間泳動した。
【0159】
9.2℃において溶液のpHは8.45であり、約300μlの酢酸で10.1℃においてpHを5.01へ調整した。溶液を、20mM Tris酢酸、pH5.0中で平衡化した陽イオン交換カラムへ導入し、Tris酢酸緩衝液中の塩化ナトリウム勾配で溶出して、コンジュゲート及び野生型RNase 1のベースライン分離を達成した。
【0160】
SDS PAGE(BioRad XT Gel)を、出発物質及び精製生成物を特性決定するために用いた。ランニング緩衝液はXTMESであり、希釈緩衝液はPBSであり、ローディング緩衝液はXTであった。分子量マーカーを除くすべての試料を、90℃で5分間加熱した。ゲルを125Vで1.5時間泳動した。
【0161】
カラム画分の純度を、少なくとも95%純度の画分をプールするためにSDS-PAGEによって分析した。各試料におけるタンパク質の濃度を、280nmでのε1cm0.1%=0.174の吸光減衰係数を用いて測定した。濃度は2.06mg/mLであった。最終容量は62mLであり、127mgの収量を示した。
【実施例10】
【0162】
非小細胞肺癌の異種移植片モデルにおけるPEG:RNase 1コンジュゲートの特性決定
非小細胞肺癌細胞株(A549)由来の細胞を、9個のT175フラスコ中、F12K培地及び10%ウシ胎児血清において細胞がコンフルエントになるまで増殖させた。4.5×106個の細胞(100μl中)を4〜5週齢の雄ホモ接合(nu/nu)ヌードマウス(Harlan, Madison WI)の右後方脇腹へ注射した。処置を開始する前に、腫瘍を≧75mm3の平均サイズまで増殖させた。適切なサイズの腫瘍を有する各腫瘍型の動物を、ビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水、PBS)で毎週処置される1組の動物を含む処置群へ分けた。ビヒクル及び試験薬物を腹腔内注射によってすべてに投与した。各動物の体重を、処置中、週2回測定した。腫瘍については、カリパスを用いて週2回測定した。腫瘍容積(mm3)については、楕円球形についての以下の式を用いることにより決定した:
【数4】

【0163】
腫瘍増殖阻害率(%)については、以下の式を用いて計算した。
【数5】

【0164】
図9(B及びC)に示されるように、60 kDa mPEG2 G89C RNase 1コンジュゲートは、A549肺癌細胞を有する異種移植片マウスにおける腫瘍容積を低減した。それにより癌腫瘍を処置するための本発明のコンジュゲートの有用性及び効力が実証された。この効力は、癌の承認薬であるシスプラチンと同様である。
【実施例11】
【0165】
前立腺癌の異種移植片モデルにおけるPEG:RNase Aコンジュゲートの特性決定
前立腺癌細胞(DU145)を、5〜6週齢の雄ホモ接合(nu/nu)ヌードマウス(Harlan)の右後方脇腹へ移植した。処置を開始する前に、腫瘍を≧75mm3の平均サイズまで増殖させた。適切なサイズの腫瘍を有する各腫瘍型の動物を、処置群へ分けた。全ての試験化合物をPBS(薬物ビヒクル)で希釈し、現在の研究で最大頻度のスケジュールでビヒクル(PBS)で処置した1つの動物群を陰性対照とした。異種移植片モデルにおける全てのRNase処置は、腹腔内注射により投与した。全ての薬物による処置は、実験期間全体において行った(例えば6週間の実験では、1週間に1回の投与で、結果的に合計6回の投与)。腫瘍をカリパスを用いて週2回測定した。腫瘍容積(mm3)は式4を用いて決定し、腫瘍増殖阻害率(%)は式5を用いて決定した。
【0166】
図4及び5に示されるように、PEG-RNase Aコンジュゲートは、インビボにおいてDU145ヒト前立腺癌細胞を有する異種移植片マウスにおける腫瘍容積を低減した。図4は2 kDa mPEG G88C RNase A (15mg/kg 2回/週)を用いた処置に関し、図5は20 kDa mPEG2 G88C RNase Aコンジュゲート(75 mg/kg 1回/週)を利用している。コンジュゲートの毒性作用は、対照と同様である。図5に示す結果はさらに、既知の化学療法剤であるドセタキセルと比較した、前立腺癌の治療に対するRNase Aコンジュゲートの効果を実証しており、それらが対照と比較して同様のレベルまで腫瘍容積を低減することができる。それにより癌腫瘍を治療するための本発明のコンジュゲートの有用性及び効力が実証された。
【0167】
上記の明細書で言及されたすべての刊行物及び特許は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本発明の記載された組成物及び方法の様々な改変及びバリエーションは、当業者にとって明らかであると考えられる。本発明は特定の好ましい実施形態に関して記載されているが、特許請求の範囲に記載の本発明が、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことは理解されるはずである。実際、当業者にとって明らかである、本発明を実施するための記載された実施形態の様々な改変は、本発明の範囲内にあることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の水溶性ポリマーにコンジュゲートしたリボヌクレアーゼを含む組成物であって、該リボヌクレアーゼが生物活性を保持する、組成物。
【請求項2】
1又は複数の水溶性ポリマーがポリエチレングリコールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
生物活性がリボ核酸分解活性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
生物活性が腫瘍増殖阻害である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
コンジュゲーションがリボヌクレアーゼへの水溶性ポリマーの共有結合を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ポリエチレングリコールが直鎖状である、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
ポリエチレングリコールが2kDa〜150kDaの分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
リボヌクレアーゼがヒトリボヌクレアーゼ1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
リボヌクレアーゼがウシリボヌクレアーゼAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
被験体の処置方法であって、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたヒトリボヌクレアーゼを含む組成物を被験体に投与することを含み、該リボヌクレアーゼが生物活性を保持する、上記方法。
【請求項11】
癌の治療のための組成物を該被験体に投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被験体の処置が、ポリエチレングリコールにコンジュゲートした変異体ヒトリボヌクレアーゼ1を含む組成物を該被験体に投与することを含む、癌を有する被験体を処置することを含み、該ヒトリボヌクレアーゼ1がG89C変異を含み、該癌に関連した腫瘍増殖が阻害される条件下で該組成物が投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ポリエチレングリコールが、モノメトキシ-ポリエチレングリコール-マレイミドであり、該モノメトキシ-ポリエチレングリコール-マレイミドが5〜60kDaの分子量を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
RNase 1モノメトキシ-ポリエチレングリコールコンジュゲートが2つのメトキシ-ポリエチレングリコール分子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
被験体の処置方法であって、水溶性ポリマーにコンジュゲートしたウシリボヌクレアーゼを含む組成物を被験体に投与することを含み、該リボヌクレアーゼが生物活性を保持する、上記方法。
【請求項16】
癌の治療のための組成物を該被験体に投与する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該処置が、ポリエチレングリコールにコンジュゲートした変異体ウシリボヌクレアーゼAを含む組成物を被験体に投与することを含む、癌を有する被験体を処置することを含み、該ウシリボヌクレアーゼAがG88C変異を含み、該癌に関連した腫瘍増殖が阻害される条件下で該組成物が投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ポリエチレングリコールが、モノメトキシ-ポリエチレングリコール-マレイミドであり、該モノメトキシ-ポリエチレングリコール-マレイミドが5〜60kDaの分子量を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
RNase Aモノメトキシ-ポリエチレングリコールコンジュゲートが2つのメトキシ-ポリエチレングリコール分子を含む、請求項18に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2010−540681(P2010−540681A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528987(P2010−528987)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/079141
【国際公開番号】WO2009/048909
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510098940)クインテッセンス バイオサイエンシズ,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】