説明

リモコン信号受信装置および電気機器

【課題】二種類のリモコン信号の受信、およびリモコン信号の伝送に関わる後段側の受信ポート数を一つとすることが可能であり、更に双方のリモコン信号が合成された信号やノイズが合成されたリモコン信号が後段側に送出されることを極力防止し、何れのリモコン信号をも後段側へ適切に送出することが容易となるリモコン信号受信装置を提供する。
【解決手段】第1リモコン信号を受信する第1受信部と、第2リモコン信号を受信する第2受信部と、これらの受信部の何れか一方を、後段側へ切替可能に接続し、リモコン信号の伝送を可能とするセレクタと、当該切替を制御する切替制御部と、を備え、該切替制御部は、第2リモコン信号の状態を監視して、第2リモコン信号が到来している期間に対応した特定期間を検出するものであり、該特定期間において第2受信部が前記後段側へ継続的に接続されるように、前記制御を行うリモコン信号受信装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモコン信号を受信するリモコン信号受信装置、およびこれを備えた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの種類の電気機器は、無線信号を利用したリモートコントロール(本願では「リモコン」と略記する)による動作制御が可能となっている。このような電気機器の本体側には、通常、リモコン信号の受信ポートを有した信号処理装置(マイコンなど)が備えられており、当該信号処理装置は、適宜受信したリモコン信号に基づいて自機の各部を制御する。これにより当該電気機器は、離れた場所からのリモコン操作が可能となっており、ユーザにとって利便性が高いものとなっている。
【0003】
またリモコン操作が可能である電気機器としては、2種類の異なる周波数帯によるリモコン信号をそれぞれ受信するものが考案されている。このような電気機器としては、一例として、赤外線によるリモコン信号(IRリモコン信号)だけでなく、例えば2.4GHzの電波によるリモコン信号(RFリモコン信号)を受信するものが挙げられる。
【0004】
当該電気機器によれば、ユーザは状況に応じて、IRリモコン信号を用いるリモコン装置(IR仕様リモコン装置)と、RFリモコン信号を用いるリモコン装置(RF仕様リモコン装置)を使い分けることができる。なお周知の通り、一般的に高い周波数の信号であるほど、情報の伝送速度は向上するが、伝送媒体の直進性は高くなり、信号の伝送が障害物などに遮られ易くなる傾向にある。
【0005】
このような2種類のリモコン信号を扱う電気機器の構成について、信号処理装置が有する受信ポートの二つが、リモコン信号の入力に利用される形態(形態A)、および、OR回路の採用により、リモコン信号の入力に利用される受信ポートが一つとされた形態(形態B)の、二通りの形態を例に挙げて、以下に簡潔に説明する。
【0006】
先ず、形態Aが採用された電気機器の構成について説明する。図8は、形態Aが採用された電気機器の構成図である。本図に示すように、当該電気機器は、機器本体101、IR仕様リモコン装置102、およびRF仕様リモコン装置103を備えている。また機器本体101は、IRリモコン信号受信部111、RFリモコン信号受信部112、および信号処理装置116などを有している。
【0007】
IRリモコン信号受信部111は、IR仕様リモコン装置102から送信されるIRリモコン信号の受信が可能なように形成されている。IRリモコン信号受信部111は、受信したIRリモコン信号を後段側(本形態では、信号処理装置116が有する受信ポートの一つ)に送出する。
【0008】
RFリモコン信号受信部112は、RF仕様リモコン装置103から送信される、RFリモコン信号の受信が可能なように形成されている。RFリモコン信号受信部112は、受信したRFリモコン信号を後段側(本形態では、信号処理装置116が有する受信ポートの、別の一つ)に送出する。なおIRリモコン信号およびRFリモコン信号は、図10の(A)に示すように、振幅がHレベルとLレベルの何れかとなる信号(ここでは一例として、負論理の信号となっている。
【0009】
信号処理装置116は、IC化されたマイコンなどとして形成されている。信号処理装置116は、前段側から送出されてきたIRリモコン信号またはRFリモコン信号に基づいて、ユーザによるリモコン操作の内容を判別し、判別の結果に従って、機器本体101の各部を制御する。なお、IRリモコン信号とRFリモコン信号が同時期に送出されてきたときは、例えば一方のリモコン信号が優先され、他方のリモコン信号の内容は無視されるようになっている。
【0010】
上述した形態Aの電気機器によれば、IRリモコン信号とRFリモコン信号の何れをも扱うことが可能である。しかし形態Aでは、信号処理装置116が有する受信ポートの二つがリモコン信号の入力に利用されるため、他の用途に割当て可能な受信ポートの数が、二つ分も減ってしまう。
【0011】
特に、例えばICのピン数の制限やソフトウェア処理の制限のために、リモコン信号の入力に利用できる受信ポートが一つしか準備されていない場合には、形態Aを採用することはできない。また形態Aによれば、二つの受信ポートの各々についてリモコン信号の監視などを行う必要があり、信号処理装置116におけるソフトウェア処理の負担が、比較的重くなってしまう。この点、形態Bが採用された電気機器によれば、これらの問題が解消されるようになっている。
【0012】
次に、形態Bが採用された電気機器の構成について説明する。図9は、形態Bが採用された電気機器の構成図である。本図に示すように、当該電気機器は、機器本体101、IR仕様リモコン装置102、およびRF仕様リモコン装置103を備えている。また機器本体101は、IRリモコン信号受信部111、RFリモコン信号受信部112、信号処理装置116、およびOR回路117などを有している。なお、IRリモコン信号受信部111、およびRFリモコン信号受信部112の構成、ならびに、IRリモコン信号およびRFリモコン信号の形式については、形態Aのものと同様である。
【0013】
OR回路117は、入力側が、IRリモコン信号受信部111およびRFリモコン信号受信部112に接続され、出力側が、信号処理装置116が有する受信ポートの一つに接続されている。これによりOR回路117は、IRリモコン信号およびRFリモコン信号が入力され、これらの論理和の信号を生成して、当該受信ポートに送出する。
【0014】
信号処理装置116は、OR回路117から送出されてきた論理和の信号を、リモコン信号として受取る。これにより信号処理装置116は、IRリモコン信号が到来しているときにはIRリモコン信号を受取り、RFリモコン信号が到来しているときにはRFリモコン信号を受取るようになっている。信号処理装置116は、受取った何れかの種類のリモコン信号に基づいて、ユーザによるリモコン操作の内容を判別し、判別の結果に従って、機器本体101の各部を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平4−299694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した形態Bの電気機器によれば、信号処理装置116が有する受信ポートの一つがリモコン信号の伝送に用いられるだけであるため、他の用途に割当て可能な受信ポートの数を、出来るだけ減らさないようにすることが可能である。また、リモコン信号の伝送に利用できる受信ポートが一つしか準備されていない場合であっても、形態Bを採用することは可能である。
【0017】
しかしながら、IR仕様リモコン装置102とRF仕様リモコン装置103が同時に操作され、各受信部(111、112)によって、IRリモコン信号とRFリモコン信号が同時期に受信されることが想定される。この場合、形態Bによれば、OR回路117によって双方のリモコン信号が合成された信号が生成され、信号処理装置116に送出されることで、機器本体101に誤動作の生じるおそれがある。
【0018】
また形態Bによれば、IRリモコン信号が送信されていなくても、蛍光灯などから発せられる赤外線ノイズがIRリモコン信号受信部111において誤って受信され、OR回路117に入ってしまう事態が起こりうる。特に、IRリモコン信号受信部111に一般的なAGC[Automatic Gain Control]機能(受ける赤外線の強度に応じて、ゲインを増減させる機能)が採用されている場合には、IRリモコン信号を受信していない時にゲインが増大されるため、このような事態が生じ易くなる。
【0019】
赤外線ノイズが入ってしまうと、RF仕様リモコン装置103が操作される際に、OR回路117によって赤外線ノイズが合成されたリモコン信号が生成され、信号処理装置116に送出されることで、機器本体101に誤動作の生じるおそれがある。例えば、図10の(A)に示す状態のRFリモコン信号が受信される場合に、図10の(B)に示す状態の赤外線ノイズがOR回路117に入っていると、図10の(C)に示すように、赤外線ノイズが合成されたリモコン信号が生成されてしまう。
【0020】
本発明は上述した問題に鑑み、互いに周波数帯が異なる二種類のリモコン信号の受信が可能であり、かつ、リモコン信号の伝送に関わる後段側の受信ポートの数を一つとすることが可能でありながらも、双方のリモコン信号が合成された信号やノイズが合成されたリモコン信号が後段側に送出されることを極力防止し、双方のリモコン信号を後段側へ適切に送出することが容易となるリモコン信号受信装置の提供を目的とする。また当該リモコン信号受信装置を備えた電気機器の提供をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明に係るリモコン信号受信装置は、電気機器本体に備えられ、リモコン操作の内容を表すリモコン信号を受信して後段側に伝送する、リモコン信号受信装置であって、所定の第1周波数帯による前記リモコン信号である、第1リモコン信号を受信する第1受信部と、第1周波数帯とは異なる第2周波数帯による前記リモコン信号である、第2リモコン信号を受信する第2受信部と、第1受信部と第2受信部の何れか一方を、前記後段側へ切替可能に接続することで、該後段側への前記リモコン信号の伝送を可能とするセレクタと、該セレクタにおける接続の切替を制御する切替制御部と、を備え、該切替制御部は、第2リモコン信号の状態を監視することにより、第2リモコン信号が到来している期間に対応した特定期間を検出するものであり、該特定期間において第2受信部が前記後段側へ継続的に接続されるように、前記制御を行う構成とする。
【0022】
本構成によれば、第1受信部と第2受信部が設けられており、セレクタによって、第1受信部と第2受信部の何れか一方が、後段側(例えば電気機器本体における信号処理回路)に接続される。そのため、互いに周波数帯が異なる二種類のリモコン信号を受信し、リモコン信号の伝送に関わる後段側の受信ポートの数を、一つとすることが可能となる。
【0023】
また本構成によれば、第1受信部と第2受信部の一方のみが後段側に接続されるため、双方のリモコン信号が合成された信号やノイズが合成されたリモコン信号が後段側に送出されることを、極力防止することが可能となる。更に本構成によれば、検出される特定期間において、第2受信部が後段側へ継続的に接続される。そのため、例えば特定期間を除く期間においては第1受信部が後段側へ接続されるようにすることで、双方のリモコン信号を後段側へ適切に送出することが可能となる。
【0024】
また、第2リモコン信号は、前記リモコン操作の種類ごとに予め設定されている信号パターンに従って、所定の第1状態と第2状態が交互に繰り返される形態とされることにより、前記リモコン操作の内容を表すものである、上記構成に係るリモコン信号受信装置において、前記信号パターンの各々は、第2状態が所定の基準時間を超えて続かないように設定されており、前記切替制御部は、第2リモコン信号が第1状態であること、および、第2リモコン信号が第2状態に遷移してから前記基準時間が経過していないことの、少なくとも一方の条件が満たされている期間を、前記特定期間として検出する構成としてもよい。
【0025】
本構成によれば、第2リモコン信号の状態の監視結果に基づいて、特定期間を適切に検出することが可能となる。
【0026】
また上記構成において、前記切替制御部は、前記基準時間に基づいて時定数が設定された時定数回路を備えており、該時定数回路を用いて、前記特定期間を検出する構成としてもよい。本構成によれば、特定期間を検出するための装置を容易に形成することが可能となる。
【0027】
また上記構成としてより具体的には、前記切替制御部は、前記特定期間を除く全ての期間において、第1受信部が前記後段側へ継続的に接続されるように、前記制御を行う構成としてもよい。
【0028】
また上記構成としてより具体的には、第1リモコン信号は、赤外線を伝送媒体とするリモコン信号であってもよい。なお赤外線は、リモコン信号の伝送媒体として一般的に採用されているが、先述した通り、蛍光灯などから発せられる赤外線ノイズの問題があることも知られている。この点本構成によれば、このような赤外線ノイズの問題を極力解消することが可能である。
【0029】
また本発明に係る電気機器は、上記構成に係るリモコン信号受信装置を備えた電気機器本体と、該リモコン信号受信装置に、第1リモコン信号を送信する第1リモコン装置と、該リモコン信号受信装置に、第2リモコン信号を送信する第2リモコン装置と、を備えた構成とする。本構成によれば、上記構成のリモコン信号受信装置に係る利点を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
上述した通り、本発明に係るリモコン信号受信装置によれば、第1受信部と第2受信部が設けられており、セレクタによって、第1受信部と第2受信部の何れか一方が、後段側に接続される。そのため、互いに周波数帯が異なる二種類のリモコン信号を受信し、リモコン信号の伝送に関わる後段側の受信ポートの数を、一つとすることが可能となる。
【0031】
また本発明に係るリモコン信号受信装置によれば、第1受信部と第2受信部の一方のみが後段側に接続されるため、双方のリモコン信号が合成された信号やノイズが合成されたリモコン信号が後段側に送出されることを、極力防止することが可能となる。更に本発明に係るリモコン信号受信装置によれば、検出される特定期間において、第2受信部が後段側へ継続的に接続される。そのため、例えば特定期間を除く期間においては第1受信部が後段側へ接続されるようにすることで、各種類のリモコン信号を後段側へ適切に送出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る電気機器の構成図である。
【図2】各種操作に対応した信号パターンに関する説明図である。
【図3】切替制御回路の動作内容に関する説明図である。
【図4】切替制御回路の動作内容に関する説明図である。
【図5】第1形態に係る切替制御回路の構成図である。
【図6】第2形態に係る切替制御回路の構成図である。
【図7】第3形態に係る切替制御回路の構成図である。
【図8】従来の形態Aに係る電気機器の構成図である。
【図9】従来の形態Bに係る電気機器の構成図である。
【図10】形態Bに係る電気機器の動作内容に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態について、二つのリモコン装置、およびリモコン信号受信装置を備えた電気機器本体を有する、電気機器を例に挙げて以下に説明する。
【0034】
図1は、当該電気機器の構成図を表している。本図に示すように当該電気機器9は、電気機器本体1(以下、「機器本体1」と略記することがある)、IR仕様リモコン装置2、およびRF仕様リモコン装置3を備えている。IR仕様リモコン装置2およびRF仕様リモコン装置3は、何れも、ユーザのリモコン操作(ボタン操作等)を受付けるユーザインターフェースを有しており、何らかのリモコン操作がなされたときに、このリモコン操作に応じたリモコン信号を生成し、機器本体1に向けて送出するものである。
【0035】
なお電気機器9の種類としては、例えばテレビ放送受像機が挙げられるが、これに限定されるものではなく、種々の電気機器が該当し得る。またリモコン操作の種類も、電気機器9の種類に応じて任意に設定しておくことが可能である。例えばテレビ放送受像機である場合、電源のON/OFFの切替指示、受信チャンネルの切替指示、および音量の切替指示などに対応したリモコン操作を、予め設定しておくことが可能である。
【0036】
またIR仕様リモコン装置2は、赤外線による(赤外線を伝送媒体とした)リモコン信号である、IRリモコン信号を生成して送出する仕様となっている。一方、RF仕様リモコン装置3は、2.4GHzの電波による(2.4GHzの電波を伝送媒体とした)リモコン信号である、RFリモコン信号を生成して送出する仕様となっている。なお伝送媒体の周波数帯については、他のものが採用されていても構わない。
【0037】
IRリモコン信号およびRFリモコン信号の何れも、図2に示すように、振幅が所定のHレベル(Highレベル)と所定のLレベル(Lowレベル)の何れかの状態となる信号となっている。本実施形態でのリモコン信号は、一例として、負論理(Low Active)の信号であるものとして説明するが、正論理(High Active)としても構わない。なおリモコン信号の形式などについての詳細は、改めて説明する。
【0038】
また機器本体1は、リモコン信号受信装置5、および信号処理装置6などを備えている。またリモコン信号受信装置5は、IRリモコン信号受信部11、RFリモコン信号受信部12、セレクタ13、および切替制御回路14などから形成されている。
【0039】
IRリモコン信号受信部11は、赤外線を検出する素子(フォトダイオードなど)を有しており、到来したIRリモコン信号を受信して、後段側のセレクタ13に送出する。またIRリモコン信号受信部11は、AGC回路を有しており、入ってくる赤外線の強度に応じて、自動的にゲインが調整されるようになっている。
【0040】
RFリモコン信号受信部12は、2.4GHz帯の電波を検出する素子を有しており、到来したRFリモコン信号を受信して、後段側のセレクタ13および切替制御回路14に送出する。またRFリモコン信号受信部12は、AGC回路を有しており、入ってくる2.4GHz帯の電波の強度に応じて、自動的にゲインが調整されるようになっている。
【0041】
セレクタ13は、前段側が、IRリモコン信号受信部11およびRFリモコン信号受信部12に、後段側が、信号処理装置6の受信ポートの一つに接続されている。セレクタ13は、信号処理装置6を、IRリモコン信号受信部11およびRFリモコン信号受信部12の何れか一方に、切替可能に接続する。より具体的には、セレクタ13は、切替制御回路14から受取っている切替制御信号がHレベルであるときは、IRリモコン信号受信部11を信号処理装置6に接続させ、Lレベルであるときは、RFリモコン信号受信部12を信号処理装置6に接続させる。
【0042】
これによりセレクタ13は、切替制御信号に従って、IRリモコン信号とRFリモコン信号の一方を選択し、選択された方のリモコン信号(以下、便宜的に「選択リモコン信号」と称することがある)を、信号処理装置6に送出する機能を有しているといえる。
【0043】
切替制御回路14は、RFリモコン信号受信部12から送出されてきたRFリモコン信号に基づいて、切替制御信号を生成し、セレクタ13に送出する。なお切替制御回路14の動作や構成等については、改めて詳細に説明する。
【0044】
信号処理装置6は、一つまたは複数の受信ポートを有するICのマイコン等によって形成されている。信号処理装置6は、受信ポートを介して受取った選択リモコン信号に基づいて、ユーザによるリモコン操作の内容を判別し、当該判別の結果に従って、機器本体1の各部を制御する。
【0045】
次に、電気機器9が取扱うリモコン信号の形式について説明する。機器本体1および各リモコン装置(2、3)には、リモコン操作の種類ごとに、リモコン信号をどのような形態とするかを決定するための信号パターンが登録されている。より具体的には、当該信号パターンの各々は、Hレベルの状態(振幅がHレベルに維持される状態)である期間とLレベルの状態(振幅がLレベルの状態に維持される状態)である期間が、交互に繰り返されるタイミングや回数を特定するものとなっている。
【0046】
例えば「操作A」を表す信号パターンは、図2の上段に示すようにHレベルの期間とLレベルの期間が交互に繰り返される内容となっており、「操作B」を表す信号パターンは、図2の下段に示すようにHレベルの期間とLレベルの期間が交互に繰り返される内容となっている。なお各信号パターンにおいては、Hレベルの状態が、所定の基準時間Tst(後述する、遅延時間に相当する時間)を越えて続かないように設定されている。例えば図2を参照すれば、Hレベルの各期間(Ta1〜Ta3、Tb1〜Tb4)は、基準時間Tstより短くなるように設定されている。
【0047】
各リモコン装置(2、3)は、ユーザによってあるリモコン操作がなされたとき、そのリモコン操作に対応する信号パターンに従ってリモコン信号を生成し、機器本体1に送信することとなる。これにより、IRリモコン信号およびRFリモコン信号は、何れかの信号パターンに従った形態となる。そして機器本体1(信号処理装置6)は、受信したリモコン信号が何れの信号パターンに対応しているかを解析し、リモコン操作の内容を判別することとなる。
【0048】
なお信号パターンは、両方のリモコン装置(2、3)に共通となっている。そのため信号処理装置6は、リモコン操作の内容を判別するにあたり、受取った選択リモコン信号が何れのリモコン装置から送信されたものかを判別する必要はない。
【0049】
次に、切替制御回路14の動作について説明する。切替制御回路14は、RFリモコン信号の状態を継続的に検出する。そして切替制御回路は、現時点が、RFリモコン信号がLレベルの状態であること、および、RFリモコン信号がHレベルの状態に遷移してから基準時間Tstが経過していないこととの、少なくとも一方の条件が満たされている期間(便宜上、「特定期間」と称する)に属するか否かを検出する。
【0050】
そして切替制御回路14は、現時点が特定期間に属している場合には、Lレベルの切替制御信号を生成してセレクタ13に送出し、現時点が特定期間に属していない場合には、Hレベルの切替制御信号を生成してセレクタ13に送出するように動作する。そのため図3の上段に示すように、RFリモコン信号として一つのパルスが到来するケースを仮定すると、図3の下段に示すような形態の切替制御信号が生成されることになる。
【0051】
つまり、RFリモコン信号がLレベルの状態に遷移した時には、すぐにLレベルに遷移し、その後RFリモコン信号がHレベルの状態に遷移した時には、基準時間Tstだけ遅延してHレベルに遷移するように、切替制御信号が生成される。このことから切替制御回路14は、RFリモコン信号について立ち上がりを遅延させたものを、切替制御信号として生成する回路(基準時間Tstを遅延時間とした、立ち上がり遅延回路)と見ることもできる。
【0052】
上述したように切替制御回路14は、特定期間においては、RFリモコン信号受信部12が信号処理装置6へ継続的に接続されるように、セレクタ13を制御する一方、特定期間以外においては、IRリモコン信号受信部11が信号処理装置6へ継続的に接続されるように、セレクタ13を制御する。例えば先述した操作Aを表すRFリモコン信号(図2を参照)が到来した場合、切替制御回路14は、図4に示すように特定期間に応じた切替制御信号を生成し、セレクタ13を制御することになる。
【0053】
ここで図4からも明らかなように、上述した特定期間は、RFリモコン信号の到来が検出された時点から、少なくともこのRFリモコン信号の到来が完了するまでの期間を、全て含んだ期間となっている。このように特定期間は、RFリモコン信号が機器本体1に到来している期間に対応している。
【0054】
また先述したように、各信号パターンにおいては、Hレベルの状態が基準時間Tstを越えて続かないように設定されている。そのため、RFリモコン信号の到来が完了する前に特定期間が途切れるといった事態は、回避されるようになっている。なお基準時間Tstは、各信号パターンにおけるHレベルの状態が続く期間よりも、十分に長くしておくことが望ましい。
【0055】
切替制御回路14は、上述したように動作する。そのため、ユーザがIR仕様リモコン装置2のみを使ってリモコン操作を行った状況(すなわち、機器本体1にIRリモコン信号が到来し、RFリモコン信号は到来しない状況)では、IRリモコン信号受信部11が、信号処理装置6に接続される。これにより信号処理装置6は、リモコン操作の情報を適切に受取り、当該リモコン操作に従って、機器本体1の各部を制御することが可能となっている。
【0056】
また、ユーザがRF仕様リモコン装置3のみを使ってリモコン操作を行った状況(すなわち、機器本体1にRFリモコン信号が到来し、IRリモコン信号は到来しない状況)では、RFリモコン信号受信部12が、信号処理装置6に接続される。これにより信号処理装置6は、リモコン操作の情報を適切に受取り、当該リモコン操作に従って、機器本体1の各部を制御することが可能となっている。
【0057】
なおこの状況において、例えば蛍光灯が発する赤外線ノイズが機器本体1に到来していても、この赤外線ノイズは選択リモコン信号に合成されない。そのため、このようなノイズの合成されたリモコン信号が信号処理装置6に送出されて、機器本体1が誤動作を生じることは、未然に防がれる。
【0058】
また、ユーザが両方のリモコン装置(2、3)を使って、同時期にリモコン操作を行った状況(すなわち機器本体1に、IRリモコン信号とRFリモコン信号の両方の信号が、同時期に到来する状況)では、IRリモコン信号受信部11が、信号処理装置6に接続される。これにより信号処理装置6は、RF仕様リモコン装置3を使ったリモコン操作の情報を適切に受取り、当該リモコン操作に従って、機器本体1の各部を制御することが可能である。つまりこの状況では、RF仕様リモコン装置3を使ったリモコン操作が優先され、IR仕様リモコン装置2を使ったリモコン操作は、機器本体1の制御に影響を及ぼさない。
【0059】
このようにリモコン信号受信装置5によれば、双方のリモコン信号が同時期に到来しても、これらのリモコン信号が合成されて信号処理装置6に送出されるといった事態は発生せず、一方のリモコン信号のみが信号処理装置6に送出される。そのため、双方のリモコン信号が合成された信号が信号処理装置6に送出されて、機器本体1が誤動作を生じることは、未然に防がれる。
【0060】
次に、切替制御回路14の具体的な回路構成について、第1形態から第3形態までの3通りの形態を挙げて説明する。なおこれらの形態は一例であり、上述した動作もしくはこれと同趣旨の動作が実現可能となっている限り、他の形態が採用されても構わない。
【0061】
まず第1形態の切替制御回路14について説明する。図5は、当該切替制御回路14の構成図である。本図に示すように、切替制御回路14は、電源PW、コンパレータCOMP、抵抗器(R1、R2)、トランジスタ(Q1、Q2)、インバータINV1、およびコンデンサC1などを有している。なお抵抗器R1は、定電流回路が代用されても構わない。
【0062】
コンパレータCOMPは、反転入力端子に、RFリモコン信号受信部12からRFリモコン信号が入力され、非反転入力端子に、参照電圧Vcが入力される。コンパレータCOMPの出力端子は、トランジスタQ2のベースに接続されている。なおコンパレータCOMPは、電源PWから駆動電力の供給を受けている。トランジスタQ2は、コレクタがインバータINV1の入力側に接続され、エミッタは接地されている。
【0063】
抵抗器R1は、一端が電源PWに接続され、他端がインバータINV1の入力側に接続されている。コンデンサC1は、一端がインバータINV1の入力側に接続され、他端は接地されている。インバータINV1の出力側は、トランジスタQ1のベースに接続されている。抵抗器R2は、一端が電源PWに接続され、他端がトランジスタQ1のコレクタに接続されている。トランジスタQ1のエミッタは接地されている。またトランジスタQ1のコレクタは、切替制御信号が出力されるように、セレクタ13に接続されている。
【0064】
切替制御回路14は上述した回路構成となっており、RFリモコン信号と参照電圧Vcとの比較結果の信号がトランジスタQ2のベースに入力され、トランジスタQ2のON/OFF(導通/非導通)が制御される。トランジスタQ2がONのときは、インバータINV1はLレベルの状態となる。
【0065】
トランジスタQ2がOFFに遷移したとき、コンデンサC1は徐々に充電し、一定時間が経過(遅延)した後に、インバータINV1に入力される電圧は所定値を上回る。またインバータINV1の出力信号は、トランジスタQ1のベースに入力され、トランジスタQ1のON/OFFが制御される。トランジスタQ1のON/OFFが切替ることにより、切替制御信号の状態が切替ることとなる。
【0066】
このように切替制御回路14は、所定の時定数が設定された時定数回路を備えている。なお当該時定数回路は、主に、コンデンサC1および抵抗器R1から形成されており、その時定数の値は、主に、コンデンサC1の容量および抵抗器R1の抵抗値によって定まっている。そしてこの時定数の値(つまり、コンデンサC1の容量や抵抗器R1の抵抗値など)は、時定数回路による遅延時間が先述した基準時間Tstにほぼ一致するように、基準時間Tstに基づいて予め設定されている。
【0067】
これにより切替制御回路14は、RFリモコン信号がLレベルの状態である期間だけでなく、RFリモコン信号がHレベルの状態に遷移してから基準時間Tstが経過していない期間においても、Lレベルの切替制御信号を出力するようになっている。すなわち、RFリモコン信号がHレベルの状態に遷移しても、切替制御信号は直ちにはHレベルとならず、基準時間Tstだけ遅延した段階でHレベルとなる。ただし、基準時間Tstが経過する前にRFリモコン信号がLレベルの状態に遷移した場合は、切替制御信号はLレベルに維持され、Hレベルとはならない。
【0068】
なお第1形態の切替制御回路14によれば、参照電圧Vcの値を変更することによって、スレッショルドレベルを変更することが可能である。そのため当該切替制御回路14によれば、設計段階などにおいて、動作の反応時間や感度などを調節することが容易となっている。
【0069】
次に第2形態の切替制御回路14について説明する。図6は、当該切替制御回路14の構成図である。本図に示すように第2形態の切替制御回路14は、第1形態におけるコンパレータCOMPの代わりに、インバータINV2が設けられている。より具体的には、インバータINV2の入力側には、RFリモコン信号受信部12からRFリモコン信号が入力され、出力側は、トランジスタQ2のベースに接続されている。
【0070】
次に第3形態の切替制御回路14について説明する。図7は、当該切替制御回路14の構成図である。本図に示すように第3形態の切替制御回路14は、第1形態におけるコンパレータCOMPおよびトランジスタQ2の代わりに、ダイオードD1が設けられている。より具体的には、ダイオードD1のカソードには、RFリモコン信号受信部12からRFリモコン信号が入力され、アノードは、インバータINV1の入力側に接続されている。
【0071】
第2形態および第3形態の切替制御回路14は、全体的な動作の内容については、第1形態のものと同等である。ただし第2形態および第3形態の切替制御回路14は、前段側の回路構成が第1形態のものに比べて簡易化されており、製造コスト等を抑えることが可能となっている。
【0072】
以上に説明した通り、リモコン信号受信装置5は、機器本体1に備えられ、リモコン操作の内容を表すリモコン信号を受信して、後段側の信号処理装置6に伝送するものである。またリモコン信号受信装置5は、IRリモコン信号を受信するIRリモコン信号受信部11と、RFリモコン信号を受信するRFリモコン信号受信部12と、これらの受信部の何れか一方を、信号処理装置6へ切替可能に接続することで、信号処理装置6へのリモコン信号の伝送を可能とするセレクタ13と、セレクタ13における接続の切替を制御する切替制御回路14と、を備えている。
【0073】
そして更に切替制御回路14は、RFリモコン信号の状態を監視することにより、RFリモコン信号が到来している期間に対応した特定期間を検出するようになっている。また切替制御回路14は、この特定期間においては、RFリモコン信号受信部12が信号処理装置6へ継続的に接続されるように、特定期間を除く全ての期間においては、IRリモコン信号受信部11が信号処理装置6へ継続的に接続されるように、セレクタ13における接続の切替を制御する。
【0074】
更に具体的には、RFリモコン信号は、リモコン操作の種類ごとに予め設定されている信号パターンに従って、Lレベルの状態(第1状態)とHレベルの状態(第2状態)が交互に繰り返される形態とされることにより、リモコン操作の内容を表すものとなっている。また信号パターンの各々は、Hレベルの状態が基準時間Tstを超えて続かないように設定されている。
【0075】
そして更に切替制御回路14は、RFリモコン信号がLレベルの状態であること、および、RFリモコン信号がHレベルの状態に遷移してから基準時間Tstが経過していないことの、少なくとも一方の条件が満たされている期間を、特定期間として検出するようになっている。なお切替制御回路14は、基準時間Tstに基づいて時定数が設定された時定数回路を備えており、この時定数回路を用いて、特定期間を検出するようになっている。
【0076】
そのためリモコン信号受信装置5によれば、互いに周波数帯が異なる二種類のリモコン信号を受信し、リモコン信号の伝送に関わる信号処理装置6の受信ポートの数を、一つとすることが可能となっている。また双方のリモコン信号が合成された信号やノイズが合成されたモコン信号が信号処理装置6に送出されることを、極力防止することが可能となっている。また何れのリモコン信号をも信号処理装置6へ適切に送出することが可能となっている。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、リモコン操作を受付ける種々の電気機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 機器本体(電気機器本体)
2 IR仕様リモコン装置(第1リモコン装置)
3 RF仕様リモコン装置(第2リモコン装置)
5 リモコン信号受信装置
6 信号処理装置
9 電気機器
11 IRリモコン信号受信部(第1受信部)
12 RFリモコン信号受信部(第2受信部)
13 セレクタ
14 切替制御回路(切替制御部)
PW 電源
C1 コンデンサ
D1 ダイオード
Q1、Q2 トランジスタ
R1、R2 抵抗器
COMP コンパレータ
INV1、INV2 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器本体に備えられ、リモコン操作の内容を表すリモコン信号を受信して後段側に伝送する、リモコン信号受信装置であって、
所定の第1周波数帯による前記リモコン信号である、第1リモコン信号を受信する第1受信部と、
第1周波数帯とは異なる第2周波数帯による前記リモコン信号である、第2リモコン信号を受信する第2受信部と、
第1受信部と第2受信部の何れか一方を、前記後段側へ切替可能に接続することで、該後段側への前記リモコン信号の伝送を可能とするセレクタと、
該セレクタにおける接続の切替を制御する切替制御部と、
を備え、
該切替制御部は、
第2リモコン信号の状態を監視することにより、第2リモコン信号が到来している期間に対応した特定期間を検出するものであり、
該特定期間において第2受信部が前記後段側へ継続的に接続されるように、前記制御を行うことを特徴とするリモコン信号受信装置。
【請求項2】
第2リモコン信号は、
前記リモコン操作の種類ごとに予め設定されている信号パターンに従って、所定の第1状態と第2状態が交互に繰り返される形態とされることにより、前記リモコン操作の内容を表すものである請求項1に記載のリモコン信号受信装置であって、
前記信号パターンの各々は、
第2状態が所定の基準時間を超えて続かないように設定されており、
前記切替制御部は、
第2リモコン信号が第1状態であること、および、第2リモコン信号が第2状態に遷移してから前記基準時間が経過していないことの、少なくとも一方の条件が満たされている期間を、前記特定期間として検出することを特徴とするリモコン信号受信装置。
【請求項3】
前記切替制御部は、
前記基準時間に基づいて時定数が設定された時定数回路を備えており、
該時定数回路を用いて、前記特定期間を検出することを特徴とする請求項2に記載のリモコン信号受信装置。
【請求項4】
前記切替制御部は、
前記特定期間を除く全ての期間において、第1受信部が前記後段側へ継続的に接続されるように、前記制御を行うことを特徴とする請求項3に記載のリモコン信号受信装置。
【請求項5】
第1リモコン信号は、赤外線を伝送媒体とするリモコン信号であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のリモコン信号受信装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載のリモコン信号受信装置を備えた電気機器本体と、
該リモコン信号受信装置に、第1リモコン信号を送信する第1リモコン装置と、
該リモコン信号受信装置に、第2リモコン信号を送信する第2リモコン装置と、
を備えたことを特徴とする電気機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−155581(P2011−155581A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16802(P2010−16802)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】