説明

リュックサック

【課題】硬質前面により袋体内部の荷物を保護する機能を損なうことなく、素早く手軽に袋体を開閉できるリュックサックを提供する。
【解決手段】使用者の背中に接する背中面7と、この背中面7の反対側に設けられた硬質前面11と、背中面7および硬質前面11を接続する上側面部31および底面8とから形成された袋体2を有し、この袋体2の上部を開閉する大口ファスナー32が上側面部31に設けられたリュックサック1であって、硬質前面11が、水平分割部Dで上部前面12と下部前面16とに分割されて、上部前面12と下部前面16とを接続するとともに水平分割部Dで屈折自在な屈折帯15を備え、大口ファスナー32が、一つの引き手35を有する線ファスナーであり、大口ファスナー32の左右下端が、上側面部31のそれぞれ左右下端近傍に位置し、上側面部31に、左右下端が水平分割部Dの高さ以下に位置する小口ファスナー33が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リュックサックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リュックサックは、使用者にとって使い勝手をよくするため、様々な改良が施されており、折りたたみ可能なもの、椅子として使用できるもののほか、カートとして使用できるもの(例えば、特許文献1参照)が考え出されている。
【0003】
この特許文献1に記載のリュックサックは、その袋体を開閉する開閉ファスナーが、一方の側面部の下部から、上部および他方の側面部の下部に亘って設けられており、十分に開口して、荷物の出し入れが容易になるようにされている。
【0004】
また、最近では、リュックサックの前面を硬質材料からなるものとし、ファッション性を向上させるだけでなく、外部からの衝撃に対して内部の荷物を保護する機能を有するリュックサックが、人気を博している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3098518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載のリュックサックに、上述した硬質材料からなる前面(以下では硬質前面という)を採用した場合、硬質前面は折れ曲がらないので、ファスナー用スライダーを開閉ファスナーの一端から他端までスライドしなければ、袋体を開口することができない、つまり手軽に開口できないという問題がある。
【0007】
また、この問題は、硬質前面を採用しなければ解消するが、この場合、外部からの衝撃に対して荷物を保護する機能を損なうことになる。
そこで、本発明は、硬質前面により荷物を保護する機能を損なうことなく、素早く手軽に袋体を開閉することができるリュックサックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明のリュックサックは、使用者の背中に接する背中面と、この背中面の反対側に設けられた硬質前面と、背中面および硬質前面を接続する上側面部および底面とから形成された袋体を有し、この袋体を開閉する第一開閉ファスナーが上側面部に設けられたリュックサックであって、
硬質前面が、分割部で上部前面と下部前面とに分割されて、
上部前面と下部前面とを接続するとともに分割部で屈折自在な屈折帯を備え、
第一開閉ファスナーの左右下端が、分割部の高さ以下に位置するものである。
【0009】
また、請求項2に係る本発明のリュックサックは、請求項1に係る発明のリュックサックにおいて、第一開閉ファスナーが、一つのスライダーを有する線ファスナーであり、
第一開閉ファスナーの左右下端が、上側面部のそれぞれ左右下端近傍に位置し、
上側面部に、左右下端が分割部の高さ以下に位置して袋体の上部前面を開閉可能な第二開閉ファスナーが設けられたものである。
【0010】
さらに、請求項3に係る本発明のリュックサックは、請求項1に係る発明のリュックサックにおいて、第一開閉ファスナーが、二つのスライダーを有する線ファスナーであり、
二つのスライダーの間が、開口するものである。
【0011】
また、請求項4に係る本発明のリュックサックは、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明のリュックサックにおいて、上部前面の袋体内部側にポケットが設けられ、
このポケットの上部および下部を開閉し得るポケット用ファスナーが、当該ポケットの上端縁部および下端縁部にそれぞれ設けられたものである。
【0012】
また、請求項5に係る本発明のリュックサックは、請求項1乃至4のいずれか一項に係る発明のリュックサックの屈折帯が布からなるものである。
また、請求項6に係る本発明のリュックサックは、請求項1乃至3のいずれか一項に係る発明のリュックサックにおいて、上部前面が、左上部前面と右上部前面とに分割されて、
左上部前面と右上部前面との間に、袋体の左上部前面または右上部前面を開閉可能な前部ファスナーが設けられたものである。
【発明の効果】
【0013】
上記リュックサックによると、硬質前面により袋体内部の荷物を保護する機能を損なうことなく、素早く手軽に袋体を開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係るリックサックの構成を示す斜視図である。
【図2】同リュックサックの平面図である。
【図3】同リュックサックの正面図である。
【図4】同リュックサックの上部前面による開口を示す斜視図である。
【図5】同リュックサックの内ポケットの使用状態を説明する側面図であり、(a)は上部前面を前下方に引き下げない状態の図、(b)は上部前面を前下方に引き下げた状態の図である。
【図6】本発明の実施例2に係るリュックサックの上部前面による開口を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施例3に係るリュックサックの構成を示す斜視図である。
【図8】同リュックサックの右上部前面による開口を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例1に係るリュックサックについて、図1〜図5に基づき説明する。
図1に示すように、このリュックサック1は、荷物を収納する袋体2と、この袋体2に設けられて使用者が袋体2を背負う際に使用者の両肩にかける2本の肩ベルト3と、袋体2に設けられてフックなどに引っ掛けられる吊り手4とを備えている。
【0016】
上記袋体2は、図2および図3に示すように、使用者が袋体2を背負う際に使用者の背中に接する背中面7と、この背中面7の反対側に設けられた硬質前面11と、背中面7および硬質前面11を接続する上側面部31および底面8とから形成されている。上記袋体2は、その上部が大口ファスナーおよび/または小口ファスナー(いずれも後述する)により開閉し得るものである。
【0017】
上記背中面7は、図2に示すように、使用者の背中にフィットさせるため、略平坦な形状である。また、上記肩ベルト3は、上記背中面7の上端部の左右位置から下端部の左右位置に亘って縫い付けられている。さらに、上記吊り手4は、左右一方の肩ベルト3の上端近くから他方の上端近くに亘って、上側面部31に縫い付けられている。
【0018】
次に、本発明の要旨である硬質前面11および上側面部31について説明する。
上記硬質前面11は、軽量の硬質材料からなり、図1および図2に示すように、外周に対し中央が前方(背中面7から硬質前面11に向かう方向)に突出する湾曲状に形成されて、外部からの衝撃に対して袋体2内部の荷物を保護し得るようにされている。上記軽量の硬質材料としては、例えば、アルミニウムなどの軽金属合金、プラスチック、FRPなどが用いられる。
【0019】
上記硬質前面11は、図1および図3に示すように、線状の水平分割部Dで上部前面12と下部前面16とに分割されて、これら上部前面12と下部前面16とが布からなる屈折帯15で接続されたものである。具体的に説明すると、この屈折帯15は、上記水平分割部D上に沿って位置するとともに、その上端縁および下端縁が、それぞれ上部前面12の下端縁および下部前面16の上端縁に縫い付けられたものである。また、上記屈折帯15は、布からなるため、水平分割部Dで屈折自在であり、図4に示すように、上部前面12を蓋として袋体2を開閉し得るようにされたものである。
【0020】
上記上側面部31は、図1に示すように、正面視が逆U字形状の帯体であり、その左右下端縁が底面8のそれぞれ左右端縁に縫い付けられるとともに、前後両端縁が硬質前面11および背中面7のそれぞれの周縁(下端縁を除く)に縫い付けられたものである。また、図1および図2に示すように、上側面部31の左右一方の下端部から他方の下端部に亘って、硬質前面11全体を蓋として袋体2を開閉し得る大口ファスナー(第一開閉ファスナーである)32が設けられている。さらに、上側面部31には、大口ファスナー32と平行で且つ前方に、上部前面12のみを蓋として袋体2を開閉し得る小口ファスナー(第二開閉ファスナーである)33が設けられている。この小口ファスナー33は、上部前面12のみを蓋として袋体2を開閉し得る機能を有すれば足りるので、図1および図3に示すように、上記水平分割部Dの一端側の僅かに下方から他端側の僅かに下方まで亘るようにされている。すなわち、小口ファスナー33は、その左右下端が水平分割部Dの高さより僅かに下に位置するものである。
【0021】
また、図4に示すように、上部前面12の袋体2内部側には、矩形のポケット(以下、内ポケットという)21が設けられている。この内ポケット21は、その外周縁が上部前面12の裏地に縫い付けられており、上端縁部および下端縁部にはポケット用ファスナー22U,22Lがそれぞれ設けられたものである。
【0022】
ところで、上記大口ファスナー32、小口ファスナー33、およびポケット用ファスナー22U,22Lは、いずれも線ファスナーであり、それぞれ引き手(スライダーをスライドさせるつまみ)35を一つ有するものである。
【0023】
以下、上記リュックサック1の使用方法について説明する。
まず、大きな荷物を上記リュックサック1に出し入れする場合について説明する。
この場合、従来のリュックサック1と同様に、大口ファスナー32の引き手35を、大口ファスナー32の一端から他端までスライドさせて、硬質前面11全体を蓋として袋体2を開口する。そして、この開口から、大きな荷物を袋体2に出し入れする。
【0024】
次に、小さな荷物を上記リュックサック1に出し入れする場合について説明する。
この場合、小口ファスナー33の引き手35を、小口ファスナー33の一端から他端までスライドさせて、図4に示すように、上部前面12を蓋として袋体2を開口する。この開口を広げるには、上部前面12を前下方に引き下げて屈折帯15を水平分割部Dで屈折させる。なお、大口ファスナー32で開口する場合に比べて、小口ファスナー33で開口する場合は、開口が小さくて大きな荷物の出し入れには適しないが、引き手35をスライドさせる長さが短くて済み、素早く手軽に袋体2を開口させ得る。そして、この開口から、小さな荷物を出し入れする。
【0025】
ところで、内ポケット21を使用するには、図5(a)および(b)に示すように、小口ファスナー33で袋体2の上部を開口した後、内ポケット21の上端縁部または下端縁部のポケット用ファスナー22U,22Lの引き手をスライドさせて、内ポケット21を開口する。なお、上部前面12を前下方に引き下げない場合は、上端縁部のポケット用ファスナー22Uの引き手をスライドさせる[図5(a)参照]。また、上部前面12を前下方に引き下げて内ポケット21の天地が逆転する場合は、下端縁部のポケット用ファスナー22Lの引き手をスライドさせる[図5(b)参照]。これによって、上部前面12を前下方に引き下げるか否かに関わらず、内ポケット21の鉛直上方側を開口できるので、内ポケット21に荷物を出し入れし易く、また荷物の出し入れの際における、内ポケット21からの荷物の落下が防止される。
【0026】
上記リュックサック1の使用後は、室内のフックなどに吊り手4を引っ掛けて、リュックサック1を保管する。
このように、実施例1に係るリュックサック1によると、硬質前面11による袋体2内部の荷物を保護する機能を損なうことなく、素早く手軽に袋体2を開閉することができる。
【0027】
また、上端縁部および下端縁部のいずれも開閉し得る内ポケット21により、内ポケット21の天地が逆転しても常に鉛直上方側を開口できるので、リュックサック1の利便性を向上させることができる。
【実施例2】
【0028】
本実施例2に係るリュックサック1は、図6に示すように、上記実施例1に係るリュックサック1に小口ファスナー33を設けず、大口ファスナー32の引き手35を二つにしたものである。これら二つの引き手35L,35Rは、これら35L,35Rの間が開口する(所謂、両開きである)向きに配置されている。これら以外については、実施例1と実施例2で同一であるから、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0029】
本実施例2に係るリュックサック1では、大きな荷物を出し入れする場合、二つの引き手35L,35Rをそれぞれ左右下端までスライドさせて、硬質前面11全体を蓋として袋体2を開口する。また、小さな荷物を出し入れする場合、二つの引き手35L,35Rをそれぞれ水平分割部Dの左右両端から僅かに下にまでスライドさせて、上部前面12のみを蓋として袋体2を開口する。
【0030】
このように、実施例2に係るリュックサック1によると、上記実施例1に係るリュックサック1と比べて、より簡単な構造で、同一の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0031】
本実施例3に係るリュックサック1は、図7および図8に示すように、上記実施例1または2に係るリュックサック1の上部前面12を左右に分割したものである。これ以外については、実施例1または2と実施例3で同一であるから、同一の符号を用いて説明を省略する。
【0032】
本実施例3に係るリュックサック1は、上部前面12が、左上部前面13と右上部前面14とに分割されている。左上部前面13の右側には左接続帯43が縫い付けられ、右上部前面14の左側には右接続帯44が縫い付けられている。左接続帯43と右接続帯44とは、互いに接続し得るようにされている。例えば、スナップ留めが採用されて、左接続帯43の右接続帯44と重なる部分の表面にはメスのスナップボタン43Fが取り付けられ、右接続帯44の左接続帯43と重なる部分の裏面にはオスのスナップボタン44Mが取り付けられる。なお、スナップ留めは一例であり、面ファスナーなど他の手段を採用してもよい。
【0033】
また、内ポケット21は、左上部前面13または右上部前面14のいずれか一方(図8では例として右上部前面14)の袋体2内部側に設けられている。
本実施例3に係るリュックサック1では、上部前面12を蓋として袋体2を開閉し得るだけでなく、左上部前面13または右上部前面14のいずれか一方(図8では例として右上部前面14)を蓋として袋体2を開閉し得る。このため、実施例1または2に係るリュックサック1に比べて、引き手35をスライドさせる長さがさらに短くて済み、さらに素早く手軽に袋体2を開閉させ得る。
【0034】
このように、実施例3に係るリュックサック1によると、上記実施例1および2に係るリュックサック1と比べて、硬質前面11により袋体2内部の荷物を保護する機能を損なわないまま、さらに素早く手軽に袋体2を開閉することができる。
【0035】
ところで、上記実施例1〜3において、屈折帯は布からなるとして説明したが、これに限定されるものではなく、ゴム帯やナイロン帯などの樹脂帯など、屈折自在なものであればよい。
【符号の説明】
【0036】
D 水平分割部
1 リュックサック
2 袋体
11 硬質前面
12 上部前面
13 左上部前面
14 右上部前面
15 屈折帯
16 下部前面
21 ポケット
31 上側面部31
32 大口ファスナー
33 小口ファスナー
35 引き手
43 左接続帯
44 右接続帯


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の背中に接する背中面と、この背中面の反対側に設けられた硬質前面と、背中面および硬質前面を接続する上側面部および底面とから形成された袋体を有し、この袋体を開閉する第一開閉ファスナーが上側面部に設けられたリュックサックであって、
硬質前面が、分割部で上部前面と下部前面とに分割されて、
上部前面と下部前面とを接続するとともに分割部で屈折自在な屈折帯を備え、
第一開閉ファスナーの左右下端が、分割部の高さ以下に位置することを特徴とするリュックサック。
【請求項2】
第一開閉ファスナーが、一つのスライダーを有する線ファスナーであり、
第一開閉ファスナーの左右下端が、上側面部のそれぞれ左右下端近傍に位置し、
上側面部に、左右下端が分割部の高さ以下に位置して袋体の上部前面を開閉可能な第二開閉ファスナーが設けられたことを特徴とする請求項1に記載のリュックサック。
【請求項3】
第一開閉ファスナーが、二つのスライダーを有する線ファスナーであり、
二つのスライダーの間が、開口することを特徴とする請求項1に記載のリュックサック。
【請求項4】
上部前面の袋体内部側にポケットが設けられ、
このポケットの上部および下部を開閉し得るポケット用ファスナーが、当該ポケットの上端縁部および下端縁部にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリュックサック。
【請求項5】
屈折帯が布からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のリュックサック。
【請求項6】
上部前面が、左上部前面と右上部前面とに分割されて、
左上部前面と右上部前面との間に、袋体の左上部前面または右上部前面を開閉可能な前部ファスナーが設けられたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のリュックサック。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−94514(P2013−94514A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241792(P2011−241792)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(500514579)ジェイディジャパン株式会社 (20)
【Fターム(参考)】