説明

リユース分離膜の管理装置、管理プログラム、および、管理方法

【課題】リユース分離膜を交換または洗浄するタイミングを適切に管理することができるリユース分離膜の管理装置を提供する。
【解決手段】リユース分離膜の管理装置が、第1のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第1の時系列データが記憶される運転データ記憶部と、運転データ記憶部から読み出した第1の時系列データに基づいて、第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する予測部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リユース分離膜を管理するリユース分離膜の管理装置、管理プログラム、および、管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分離膜エレメントの再利用が望まれている(例えば、特許文献1参照)。また、複数の現場で発生した使用済み分離膜エレメントを回収し、再生工場で洗浄し、再生した分離膜エレメントをさらに複数の現場で利用できる仕組みが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このように、リユースされる分離膜エレメント(リユース分離膜)が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−140843号公報
【特許文献2】特開2008−246285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リユース分離膜は現場の水処理装置で通水処理すると、徐々にその処理性能が劣化するため、交換や洗浄が必要になる。このリユース分離膜の交換や洗浄は、定期的に行われていることが多い。しかし、処理性能が現場での処理条件を満足するのであれば、出来る限り通水時間を延ばしたほうが、コスト的にも環境的にもやさしい運転となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、リユース分離膜を交換または洗浄するタイミングを適切に管理することができるリユース分離膜の管理装置、管理プログラム、および、管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、第1のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第1の時系列データが記憶される運転データ記憶部と、前記運転データ記憶部から読み出した前記第1の時系列データに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する予測部と、を備えていることを特徴とするリユース分離膜の管理装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記予測部は、前記流量、差圧、または、フラックス毎に予め定められている複数の関数毎に、前記リユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測し、前記流量、差圧、または、フラックス毎に予め定められている複数の関数毎に予測された前記リユース分離膜を洗浄または交換する時期のうち、前記運転データ記憶部に記憶されている前記流量、差圧、または、フラックスの時系列データとの相関が最も高い前記リユース分離膜を洗浄または交換する時期を選択する、ことを特徴とする請求項1に記載のリユース分離膜の管理装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記第1のリユース分離膜と同じ種類のリユース分離膜である第2のリユース分離膜により前記原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第2の時系列データが予め記憶されている実験データ記憶部、を備えており、前記予測部は、前記運転データ記憶部から読み出した前記第1の時系列データと、前記実験データ記憶部から読み出した前記第2の時系列データとに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリユース分離膜の管理装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記予測部は、前記実験データ記憶部から読み出した前記第2の時系列データに基づいて、前記第2のリユース分離膜により前記原水が分離処理される場合の前記流量、差圧、または、フラックスの、時間に対する変化率を算出し、前記運転データ記憶部から読み出した前記第1の時系列データの値が、前記算出した変化率に基づいて変化した場合に、予め定められている閾値を越える時期を算出することにより、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する、をことを特徴とする請求項3に記載のリユース分離膜の管理装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記実験データ記憶部には、複数の前記第2の時系列データが予め記憶されており、前記予測部は、前記実験データ記憶部に記憶されている前記第2の時系列データの中から、前記運転データ記憶部から読み出した前記第1の時系列データと最も類似している前記第2の時系列データを選択し、当該選択した前記第2の時系列データに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する、ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のリユース分離膜の管理装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記実験データ記憶部には、前記第2のリユース分離膜の分離処理における性能を示す指標と関連付けて、前記第2の時系列データが予め記憶されており、前記予測部は、前記第1のリユース分離膜の分離処理における性能を示す指標と前記指標が同じ前記第2の時系列データを前記実験データ記憶部から読み出し、当該読み出した前記第2の時系列データに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する、ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のリユース分離膜の管理装置である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記実験データ記憶部に記憶されている前記第2の時系列データは、前記第2のリユース分離膜に対する前記原水に基づいた平膜実験の場合の前記第2の時系列データである、ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のリユース分離膜の管理装置である。
【0013】
請求項8に記載の発明は、前記実験データ記憶部に記憶されている前記第2の時系列データは、前記第2のリユース分離膜により前記原水が分離処理される場合の前記第2の時系列データである、ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のリユース分離膜の管理装置である。
【0014】
請求項9に記載の発明は、前記予測部は、前記第1の時系列データに含まれている流量、差圧、または、フラックスの、異なる時刻に測定された少なくとも2点の値に基づいて算出される関数に基づいて、予め定められている閾値を超える時期である第2の時期を予測し、前記予測した第2の時期に基づいて、前記予測した前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を変更する、ことを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか1項に記載のリユース分離膜の管理装置である。
【0015】
請求項10に記載の発明は、前記予測部は、前記予測した前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期と前記予測した第2の時期との平均を算出する、または、前記予測した前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期と前記予測した第2の時期とのうち時期が短い方を選択することにより、前記予測した第2の時期に基づいて、前記予測した前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を変更する、ことを特徴とする請求項9に記載のリユース分離膜の管理装置である。
【0016】
請求項11に記載の発明は、リユース分離膜の管理装置としてのコンピュータに、第1のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第1の時系列データが記憶される運転データ記憶部から読み出した前記第1の時系列データと、前記第1のリユース分離膜と同じ種類のリユース分離膜である第2のリユース分離膜により前記原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第2の時系列データが予め記憶されている実験データ記憶部から読み出した前記第2の時系列データとに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する予測手順、を実行させるための管理プログラムである。
【0017】
請求項12に記載の発明は、第1のリユース分離膜と同じ種類のリユース分離膜である第2のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第2の時系列データを測定しておき、前記第1のリユース分離膜により前記原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第1の時系列データと、前記第2の時系列データとに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する、ことを特徴とするリユース分離膜の管理方法である。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、リユース分離膜の性能が劣化し、処理性能が現場での処理条件を満足しなくなる時期を予測できるため、リユース分離膜を交換または洗浄するタイミングを適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一般的な分離膜エレメント(リユース分離膜)の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の第1の実施形態によるリユース分離膜管理の仕組みを示すブロック図である。
【図3】差圧に基づいた交換時期の予測方法を説明する説明図である。
【図4】処理流水量に基づいた交換時期の予測方法を説明する説明図である。
【図5】第1の実施形態のリユース分離膜管理装置10の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の第2の実施形態によるリユース分離膜管理の仕組みを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。まず、図1を用いて、本実施形態によるリユース分離膜の対象である分離膜エレメント(リユース分離膜)の一例について説明する。
【0021】
分離膜を濾過装置として使用できる形にしたものを分離膜モジュールといい、圧力容器(ベッセル)7内に分離膜エレメントが充填された形になっている。図1は、スパイラル型逆浸透膜を使用した分離膜モジュールを模式的に示した図である。図1(a)に示すように、圧力容器7には、図1(b)に示すような逆浸透膜(Reverse Osmosis Membrane)エレメント2(以下、RO膜エレメント2という)が、通常4〜6本直列に接続して、充填される。なお、図1(a)に示されるように、各RO膜エレメント2は、圧力容器7内において、それぞれブラインシール3によって区画され、コネクタ4によって直列に接続されている。
【0022】
圧力容器7に供給水が供給されると、順次各RO膜エレメント2の逆浸透膜を透過した透過水は、最終的にセンターパイプ5から取り出される。また、逆浸透膜を透過しなかった濃縮水は、最終的に濃縮水出口6から排出される。
【0023】
また、各RO膜エレメント2の構成は、透過水集水用のセンターパイプ5に、逆浸透膜(RO膜)をスパイラル状に捲装した構造となっている(図1(b)参照)。そのため、各RO膜エレメント2においては、供給水の一部はRO膜を透過し、透過水はRO膜のスパイラル通路を経てセンターパイプ5に集められる。
【0024】
RO膜のような分離膜は、使用に伴って劣化し、その脱塩性能(脱塩率)や、供給水の汚染物等の目詰まりにより透過性能(透過流束)が低下する。そのため、性能維持のためには分離膜エレメントを交換する必要がある。しかしながら、交換された分離膜エレメントは、ただちに廃棄されるわけではなく、再生工場にて洗浄し、再生されて繰り返し使用(リユース)されるようにしたい。しかしながら、このようにリユースされる分離膜エレメント(リユース分離膜)の性能劣化は、運転時間、交換頻度、供給水の性質や汚染度等の使用状況によって変化する可能性がある。
【0025】
<第1の実施形態:予測方法1>
次に、図2を用いて、この発明の一実施形態によるリユース分離膜管理システム100を用いたリユース分離膜管理の仕組みについて説明する。なお、以降の説明においては、上記に図1を用いて説明した分離膜エレメントを、リユース分離膜として説明する。また、ここでは、リユース分離膜により、原水としての水を浄化処理する場合のリユース分離膜管理システム100について説明する。
【0026】
リユース分離膜管理システム100は、リユース分離膜管理装置10と、リユース分離膜を使った現場(ここでは分離膜使用工場B)の水処理装置20(以下、水処理装置20とする)とを備えている。水処理装置20は、リユース分離膜が使用される工場である分離膜使用工場Bに設置されている。水処理装置20には、運転データ計測装置21が付設されており、水処理装置20において使用されているリユース分離膜に関する運転データを計測し、計測した運転時計測データを、記憶または送信する。リユース分離膜管理装置10は、たとえば、分離膜使用工場B、または、リユース分離膜を管理する場所に設置されている。この図2では、水処理装置20及び運転データ計測装置21は1つのみが示されているが、この水処理装置20は複数であってもよい。
【0027】
リユース分離膜管理装置10は、現場DB11と、分離膜運転DB(運転データ記憶部及び事例DB(実験データ記憶部))12と、分離膜個体管理DB13と、分離膜劣化予測部(予測部)15とを備えている。
【0028】
現場DB11には、リユース分離膜を使用して水の浄化処理を行う現場を示す情報である現場情報が、個々の現場名称または個々の現場を識別する現場ID毎に記憶されている。この現場情報とは、たとえば、リユース分離膜の被処理水の原水を示す情報(水質・水量など)や、要求される処理水を示す情報(水質・水量など)、水の用途を示す情報などである。また、現場DB11には、現場情報と関連付けて、分離膜劣化予測部15により後述する交換時期を予測する場合に用いられる閾値の情報が予め記憶されている。
【0029】
分離膜運転DB12には、リユース分離膜を適用して、実際に運転している現場の運転データが、日時とともに順に記憶される。すなわち、分離膜運転DB12には、流量・圧力・水質などの計測データである運転データが、日時とともに順に記憶される。この運転データとは、入口圧力、出口圧力、差圧、透過流束(フラックス)、通水流量、入口導電率、または、出口導電率などである。
【0030】
このように、分離膜運転DB12には、第1のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第1の時系列データが記憶される。この第1のリユース分離膜とは、たとえば、分離膜使用工場Bで使用されているリユース分離膜のことである。
【0031】
なお、入口圧力とは、図1において、供給水が供給される入口の圧力のことである。出口圧力とは、図1において、濃縮水出口6の圧力のことである。また、差圧とは、膜差圧のことであり、ろ過中の膜の表裏間の差圧のことである。たとえば、差圧とは、図1において、供給水が供給される入口の圧力と濃縮水出口6の圧力との差のことである。また、フラックスとは、単位膜面積あたり、かつ、単位時間あたりの透過水量のことである。また、通水流量とは、供給水の流量のことである。また、入口導電率とは、図1において、供給水が供給される入口における導電率のことである。また、出口導電率とは、図1において、濃縮水出口6における導電率のことである。
【0032】
なお、水処理装置20に付設されている運転データ計測装置21において、流量・圧力・水質などの計測データである運転データが測定される。そして、この測定された運転データが、水処理装置20から分離膜運転DB12に、日時と関連付けて順に記憶される。
【0033】
たとえば、運転データを一定時間毎に測定するセンサと、センサにより測定された運転データをリユース分離膜管理装置10に送信する送信部とを、運転データ計測装置21が備えている。そして、運転データ計測装置21の送信部から送信された運転データが運転時計測データとして、分離膜運転DB12に記憶されてもよい。
【0034】
なお、本実施形態の説明では運転データ計測装置21を用いたが、これを用いず、水処理装置20のオペレータが、運転データを一定時間毎に測定し、測定した運転データを運転時計測データとして、リユース分離膜管理装置10に送信し、送信された運転データ(運転時計測データ)が、分離膜運転DB12に記憶されるようにしてもよい。
【0035】
分離膜個体管理DB13には、使用済み分離膜の再生洗浄後の性能を示す指標である洗浄後性能データ、リユース分離膜の使用履歴を示す使用履歴データ、リユース分離膜の現在の使用状態を示す使用状態情報、などの情報が、リユース分離膜を識別する識別情報と関連付けて記憶されている。なお、リユース分離膜の現在の使用状態を示す使用状態情報とは、リユース分離膜が、使用中、または、保管中であることを示す情報である。
【0036】
分離膜劣化予測部15は、分離膜運転DB12に記憶された運転データに基づいて、指標値を予測し、現場DB11に記憶されている現場情報に基づいた閾値を超える時期を予測する。分離膜劣化予測部15は、この予測する処理(分離膜劣化予測処理)において、指標値としては差圧、処理水量、フラックス、電気伝導度、除去率(膜塩率)、入口圧力から選ばれる少なくとも1以上の指標を使用する。
【0037】
次に、分離膜劣化予測部15による予測の方法について説明する。
<予測方法1>
分離膜劣化予測部15は、通水開始時点から現時点までの時系列データを使って、近似式の関数を作成する。
【0038】
指標値 = f(x) …(式1)
【0039】
ここで、xは通水時間(H(時間))である。
【0040】
(式1)の関数fは、近似式の作成は最小二乗法などにより算出する。たとえば、次の(式2)から(式4)のような予め定められている複数の式を用いる。
【0041】
f(x)= ax+b …(式2)
f(x)= ax2 + bx + c …(式3)
f(x)= alog(x) + b …(式4)
【0042】
分離膜劣化予測部15は、(式2)に示すような一次式、(式3)に示すような多項式、(式4)に示すような対数関数、などの予め定められている複数の近似式において、a、bおよびcなどの係数の値を算出する。
【0043】
分離膜劣化予測部15は、このような複数の式を用いて複数の近似式を算出し、算出した複数の近似式の中から、現場に最もマッチする式を選択する。この選択の方法としては、たとえば、算出した複数の近似式の中から、既に測定されている時系列データと相関が最も高い関数を選択する。この「相関が最も高い」とは、たとえば、相関係数の値が最も大きいこと、または、誤差(二乗誤差)が最も小さいことである。
【0044】
次に、分離膜劣化予測部15は、選択した近似式「指標値=f(x)」を用いて、指標値が閾値を超えるxの値を、リユース分離膜を洗浄または交換する時期(以降、交換時期とする)として求める。たとえば、分離膜劣化予測部15は、算出した近似式の逆関数を算出し、算出した逆関数に基づいて、指標値が閾値を超えるxの値を交換時期として求めてもよい。また、分離膜劣化予測部15は、xに期間を示すデータの値を順に代入していき、閾値を超えるxの値を交換時期として求めてもよい。この、xに期間を示すデータの値を順に代入していき、閾値を超えるxの値を求める場合には、xに期間を示すデータの値を順に代入していき、xに対する指標値の予測トレンド情報を生成しながら、閾値を超えるxの点を交換時期として求めてもよい。
【0045】
次に、図3と図4とを用いて、上記に説明した分離膜劣化予測部15による予測の一例について説明する。
【0046】
まず、図3を用いて、分離膜劣化予測部15が、差圧に基づいて交換時期を求める場合について説明する。図3において、横軸はリユース分離膜が水処理装置20で使用され始めてからの経過日数(または、経過時刻)を示し、縦軸はリユース分離膜の差圧を示している。これらの情報は、分離膜運転DB12に記憶されている情報である。
【0047】
分離膜劣化予測部15は、(式2)から(式4)などに基づいて、複数の近似式をそれぞれ算出し、その中から、相関係数が最大となる近似式を選択する。この場合、分離膜劣化予測部15は、(式2)で示される一次関数を、近似式として選択したものとする(図3の関数L1を参照)。
【0048】
また、ここでは、水処理装置20におけるリユース分離膜の差圧に対しての、リユース分離膜の交換時期となる閾値は、0.35MPaであるものとする。たとえば、分離膜劣化予測部15は、この0.35MPaという閾値の値を、現場を識別する現場IDを検索キーとして、現場DB11から読み出す。
【0049】
次に、分離膜劣化予測部15は、選択した近似式において、現場DB11から読み出した閾値を超える場合の経過日数を交換時期として算出する。すなわち、分離膜劣化予測部15は、図3の関数L1により算出される差圧の値が、0.35MPaとなる経過日数を、交換時期として算出する(交点P1参照)。この場合、分離膜劣化予測部15は、交換時期を39日として算出するものとする。
【0050】
次に、図4を用いて、分離膜劣化予測部15が、処理水流量に基づいて交換時期を求める場合について説明する。図4において、横軸は図3の場合と同様にリユース分離膜が水処理装置20で使用され始めてからの経過日数を示し、縦軸はリユース分離膜による処理水流量を示している。これらの情報は、分離膜運転DB12に記憶されている情報である。
【0051】
また、ここでは、水処理装置20におけるリユース分離膜による処理水流量に対しての、リユース分離膜の交換時期となる閾値は、16m/hであるものとする。分離膜劣化予測部15は、この16m/hという閾値の値を、現場を識別する現場IDを検索キーとして、現場DB11から読み出す。
【0052】
次に、図3の場合と同様に、分離膜劣化予測部15は、近似式(図4の関数L2参照)により算出される処理水流量の値が、16m/hとなる経過日数を、交換時期として算出する(交点P2参照)。この場合、分離膜劣化予測部15は、交換時期を37日として算出するものとする。
【0053】
次に、図5を用いて、分離膜劣化予測部15の動作の一例について説明する。
まず、分離膜運転DB12から予測に利用する運転データを抽出する(ステップS1)。
【0054】
次に、停止時の運転データを削除し、平均処理によって、1日1点のデータに集計する(ステップS2)。これにより、停止時の運転データ、すなわち通水状態信号=0または空白のデータ、を削除することで、誤差原因が排除される。
【0055】
次に、差圧などの指標の時系列データを計算により求める(ステップS3)。ここで指標としては、差圧の他に、フラックスや圧力補正フラックスなどを用いてもよい。このように複数の指標を用いるのは、外乱(圧力・水温など)の影響をできるだけ除去し、予測の対象とするリユース分離膜が備えている処理能力に対しての時系列データにするためである。
【0056】
次に、運転データの変化量を求めて、その数値を1日当たりの変化量として用いたり、関数で近似するなどして、保守(膜の洗浄や交換など)が必要となる日(交換時期)を求める(ステップS4)。
【0057】
その後、分離膜劣化予測部15は、複数の予測方法で得られた交換時期を、ディスプレイ装置などの表示装置に表示して、人に示してもよい。この場合、交換時期などは、人が判断することになる。また、分離膜劣化予測部15は、複数の予測方法で得られた交換時期の中間値(平均値)を出力してもよい。また、分離膜劣化予測部15は、予め定められている選択方法に基づいて、複数の予測方法で得られた交換時期の中から、いずれかの交換時期を選択し、この選択した交換時期を出力してもよい。
【0058】
分離膜劣化予測部15が交換時期を自動選定する場合は、先月の予測結果と今月の予測結果との比較、すなわち、予測直線(曲線)の時系列データと実際の計測・演算結果との二乗誤差の和が小さいものを選択する(変化パターンの類似度を評価)。または、分離膜劣化予測部15は、予測直線(曲線)の時系列データと実際の計測・演算結果とにおいて、月の最終日の値を比較して、差の小さいものを選択する(結果のみに着目して評価)。
【0059】
たとえば、上記に説明した図3と図4との場合であれば、分離膜劣化予測部15は、予測直線(曲線)の時系列データと実際の計測・演算結果の二乗誤差の和が小さいものとして、図3の差圧の場合を選択するとしたとする。この場合、分離膜劣化予測部15は、交換時期として、図3に示されるような、差圧に基づいて算出された交換時期である39日を出力する。
【0060】
その後、分離膜劣化予測部15は、予測したリユース分離膜を洗浄または交換する時期を示す情報を、予測結果として、オペレータOP1に出力する。たとえば、分離膜劣化予測部15は、予測結果を、メールなどの文字形式でオペレータOP1に送信する。なお、このオペレータOP1は、たとえば、リユース分離膜管理装置10を管理する人である。
【0061】
オペレータOP1は、分離膜管理部門CにいるオペレータOP2に、予測結果を通知する。たとえば、オペレータOP1は、メールなどの文字形式により、または、電話などの音声により、分離膜管理部門CにいるオペレータOP2に予測結果を通知する。なお、このオペレータOP2は、たとえば、分離膜管理部門Cにおいてリユース分離膜を管理する人である。
【0062】
分離膜管理部門CにいるオペレータOP2は、通知された予測結果に基づいて、分離膜使用工場Bで使用されているリユース分離膜を、洗浄(現地洗浄)または交換する保守作業を行う。
【0063】
また、リユース分離膜を交換する場合、または、リユース分離膜を分離膜再生工場Dで洗浄する必要がある場合は、分離膜管理部門CにいるオペレータOP2は、分離膜使用工場Bで使用されているリユース分離膜を、分離膜再生工場Dに送る。
【0064】
分離膜再生工場Dでは、送られてきた使用済み分離膜が再生洗浄され、再生されたリユース分離膜の性能が検査される。その後、検査後の洗浄後性能データ、使用履歴データ、使用状態情報などの情報が、このリユース分離膜を識別する識別情報と関連付けて、リユース分離膜管理装置10の分離膜個体管理DB13に記憶される。これらの処理は、たとえば、分離膜再生工場Dにいるオペレータにより実行される。
【0065】
その後、分離膜再生工場Dで洗浄されたリユース分離膜は、たとえば、分離膜使用工場Bで使用されている分離膜と交換されて、再度利用されるまで、保存状態にされる。リユース分離膜の保存は、分離膜再生工場Dで行われてもよいし、分離膜使用工場Bで行われてもよい。
【0066】
なお、上記の説明においては、分離膜劣化予測部15からの予測結果は、オペレータOP1を介してオペレータOP2に通知されたが、分離膜劣化予測部15からオペレータOP2に通知されてもよい。
【0067】
なお、分離膜管理部門CにいるオペレータOP2は、リユース分離膜管理装置10の分離膜運転DB12と分離膜個体管理DB13とに記憶されている情報のうち、自身が管理している水処理装置20と関連付けられている情報を確認用情報として参照し、運転状況を評価する処理を行ってもよい。この運転状況を評価する処理とは、たとえば、確認用情報が正常な値の範囲にあるか否かを判定することにより、水処理装置20における処理が、正常に運転が行われているいか否かを判定する処理である。この判定処理は、リユース分離膜管理装置10により行われてもよい。
【0068】
上記に説明したように、本実施形態によるリユース分離膜管理システム100のリユース分離膜管理装置10は、リユース分離膜の性能が劣化し、処理性能が現場での処理条件を満足しなくなる時期を適切に予測することにより、リユース分離膜を交換または洗浄するタイミングを適切に管理することができる。
【0069】
また、分離膜劣化予測部15は、(式1)から(式4)を用いて説明したように、現場毎の使用状況に応じた近似関数であり、かつ、現場に最もマッチした近似式に基づいて、リユース分離膜を洗浄または交換する時期を算出する。更に、分離膜劣化予測部15は、このようにして算出された近似式を用いるとともに、現場毎に予め設定されている閾値により、リユース分離膜を洗浄または交換する時期を算出する。
【0070】
そのため、リユース分離膜の性能劣化が、運転時間、交換頻度、供給水の性質や汚染度等の使用状況によって変化する場合であっても、処理性能が現場での処理条件を満足しなくなる時期を適切に予測することができ、リユース分離膜を交換または洗浄するタイミングを適切に管理することができる。
【0071】
なお、上記の説明においては、分離膜劣化予測部15は、たとえば、算出された複数の交換時期の中から、予測直線(曲線)の時系列データと実際の計測・演算結果の二乗誤差の和が小さい場合の交換時期を選択するものとして説明した。しかし、分離膜劣化予測部15は、算出された複数の交換時期の中から、最も期間が短い交換時期を選択してもよい。たとえば、上記に説明した交換時期が、図3による39日と図4による37日との場合には、分離膜劣化予測部15は、交換時期を図4による37日による交換時期として選択してもよい。分離膜劣化予測部15のこのような選択方法は、水処理装置20において、リユース分離膜に対して、より高い性能が要求される場合に好適である。
【0072】
<第2の実施形態:予測方法2>
次に、分離膜劣化予測部15による交換時期の予測の第2の方法(予測方法2)について説明する。この予測方法2においては、分離膜劣化予測部15は、過去の運転データにおける通水開始から交換するまでの時系列データを事例DB(実験データ記憶部)に記憶しておき、最も類似したパターンの過去データを使って、交換時期を推測する。
【0073】
たとえば、リユース分離膜管理装置10は、図2の場合の構成に対して、更に、事例DBを備えている。この事例DBには、過去の運転データにおける通水開始から交換するまでの時系列データが、経過日時と関連付けて予め記憶されている。この時系列データとは、分離膜運転DB12に記憶されている流量・圧力・水質などの計測データと同様の運転データの時系列データのことである。
【0074】
このように、事例DBには、第1のリユース分離膜と同じ種類のリユース分離膜である第2のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第2の時系列データが、予め記憶されている。この第1のリユース分離膜とは、図1を用いて説明したように、たとえば、分離膜使用工場Bで使用されているリユース分離膜のことである。また、この第2のリユース分離膜とは、たとえば、分離膜使用工場Bで使用されたリユース分離膜のことである。すなわち、この事例DBに記憶されている第2の時系列データは、第2のリユース分離膜により原水が分離処理される(された)場合の前記第2の時系列データである。
【0075】
分離膜劣化予測部15は、事例DBに記憶されている時系列データとしての流量・圧力・水質などの計測データの中から、分離膜運転DB12に記憶されている流量・圧力・水質などの計測データをと類似している計測データを、流量、圧力および水質のそれぞれについて選択する。分離膜劣化予測部15は、この選択において、たとえばパターンマッチング技術などにより、最もパターンが類似しているものを選択する。
【0076】
すなわち、分離膜劣化予測部15は、分離膜運転DB12から読み出した第1の時系列データと、平膜実験データ管理DB14から読み出した第2の時系列データとに基づいて、第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する。
【0077】
このようにして、分離膜劣化予測部15は、事例DBの中から、流量、圧力、水質のそれぞれについて類似している時系列データを選択する。ここで、この事例DBには、既に交換された時期も記録されている。そのため、分離膜劣化予測部15は、選択した時系列データにおける交換時期を読み出すことにより、今回の交換時期を予測することができる。
【0078】
なお、事例DBには、リユース分離膜の洗浄後の性能を示す洗浄後性能データ、および、リユース分離膜の使用履歴を示す使用履歴データと関連付けて、過去の運転データ通水開始から交換するまでの時系列データが、経過日時と関連付けて予め記憶されていてもよい。そして、分離膜劣化予測部15は、予測する対象となるリユース分離膜が使用されている洗浄後性能データおよび使用履歴データが、事例DBに記憶されている洗浄後性能データおよび使用履歴データと一致する時系列データの中から、上述したように、類似している時系列データを選択するようにしてもよい。これにより、分離膜劣化予測部15は、洗浄後性能データ、または、使用履歴データが異なる場合であっても、適切に交換時期を予測することができる。
【0079】
なお、リユース分離膜は、洗浄された直後であっても、リユース分離膜が使用された履歴や使用回数により洗浄後性能データが異なる可能性がある。そのため、使用履歴データが異なる場合であっても、適切に交換時期を予測できるようにすることは、リユース分離膜のように分離膜を再利用(リユース)する場合には好適である。
【0080】
また、事例DBには、個々の現場名称または個々の現場を識別する現場ID毎に、過去の運転データ通水開始から交換するまでの時系列データが、経過日時と関連付けて予め記憶されていてもよい。そして、分離膜劣化予測部15は、予測する対象となるリユース分離膜が使用されている現場IDが、事例DBに記憶されている現場IDと一致する時系列データの中から、上述したように、類似している時系列データを選択するようにしてもよい。これにより、分離膜劣化予測部15は、リユース分離膜の性能劣化が現場毎に異なる場合であっても、適切に交換時期を予測することができる。
【0081】
なお、この事例DBは、図2のように分離膜運転DB12と一体とされていてもよい。すなわち、分離膜運転DB12に既に記憶されている運転データであって、既に交換されたリユース分離膜の運転データを、上記に説明した事例DBに記憶されている運転データとしてもよい。
【0082】
<第3の実施形態:予測方法3>
次に、図6を用いて、第3の実施形態によるリユース分離膜管理システム100を用いたリユース分離膜管理の仕組みについて説明する。同図において図2の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。この図6に示されるリユース分離膜管理装置10は、図2に示されるリユース分離膜管理装置10に対して、更に、平膜実験データ管理DB(実験データ記憶部)14を備えている。
【0083】
平膜実験データ管理DB14には、平膜実験(平膜試験)により得られる運転データが、通水時間と関連付けて記録されている。この平膜実験とは、現場で使用される膜と同材質の平膜による簡易通水実験のことである。なお、平膜実験は、同一の原水に対して、何通りかの平膜に対して通水実験を行い、どんな膜の場合はどのように運転データが変化するかを記憶する構造となっている事が好ましい。
【0084】
また、平膜実験データ管理DB14には、原水情報(現場情報・水質:導電率、CaやSiなどの濃度など)とともに、運転データが、通水時間と関連付けて記録されている。
【0085】
ここで平膜実験とは、RO膜エレメント2を使った水処理装置の適用可否を行うために実施される事前実験である。また、この平膜実験とは、適用予定の現場から原水(被処理水)をサンプル(採取)し、サンプルした水を使って、フラックスとその低下速度および除去率(脱塩率ともいう。RO膜によるイオン除去率)を確認するための実験である。なお、このフラックスは、圧力補正フラックスであってもよい。このような平膜実験は、RO膜エレメント2の前段に投入する薬品量やPHの調整範囲、水温の調整範囲など、どのような条件で運転するべきかを判断するためにも利用されている。
【0086】
このように、平膜実験データ管理DB14には、第1のリユース分離膜と同じ種類のリユース分離膜である第2のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第2の時系列データが、予め記憶されている。この第1のリユース分離膜とは、図1を用いて説明したように、たとえば、分離膜使用工場Bで使用されているリユース分離膜のことである。また、この第2のリユース分離膜とは、たとえば、平膜実験に用いられたリユース分離膜のことである。すなわち、平膜実験データ管理DB14に記憶されている第2の時系列データは、第2のリユース分離膜に対する原水に基づいた平膜実験の場合の第2の時系列データである。
【0087】
分離膜劣化予測部15は、現場DB11から読み出したリユース分離膜が使用されている現場情報、および、処理する水を示す情報が、平膜実験における現場情報、および、処理する水を示す情報と最も近い運転データを、平膜実験データ管理DB14から読み出して取得する。そして、分離膜劣化予測部15は、取得した運転データ(または実験データから作成した指標値変化の近似関数)に基づいて、交換時期を予測する。すなわち、分離膜劣化予測部15は、現場の分離膜も、平膜実験の場合と同様に、その運転データが変化するものとして、交換時期を予測する。
【0088】
すなわち、分離膜劣化予測部15は、分離膜運転DB12から読み出した第1の時系列データと、平膜実験データ管理DB14から読み出した第2の時系列データとに基づいて、第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する。
【0089】
分離膜劣化予測部15による予測方法の1例として、次のような方法がある。たとえば、実験データから得られる予測近似式を微分した結果が、通水開始日からの日数からその日の低下量を求める式(または、交換時期の値)となる。よって、分離膜劣化予測部15は、その式(または、交換時期の値)と現場の最終日データから、次の日の予測値を計算する。分離膜劣化予測部15は、以降の予測は予測値と、予測近似式から得られるその日の低下量を使って、さらにその次の日を予測する。分離膜劣化予測部15は、この処理を繰り返すことにより、2〜3ヵ月後のフラックスなどの指標値を算出することができる。また、分離膜劣化予測部15は、予測近似式の逆関数を生成して、その逆関数を使って、閾値以下になる日(交換時期)を算出してもよい。
【0090】
すなわち、分離膜劣化予測部15は、平膜実験データ管理DB14から読み出した第2の時系列データに基づいて、第2のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの、時間に対する変化率を算出する。そして、分離膜劣化予測部15は、分離膜運転DB12から読み出した第1の時系列データの値が、算出した変化率に基づいて変化した場合に、予め定められている閾値を越える時期を算出することにより、第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測してもよい。
【0091】
なお、フラックスの低下予測を行うためには、平膜実験データ管理DB14には、平膜実験を、50時間から200時間、好ましくは150〜200時間の通水を行うとともに、時系列に変化する流量・圧力・水質の情報が採取されて、記憶されていることが望ましい。そして、分離膜劣化予測部15は、このようにして平膜実験データ管理DB14に記憶されている情報に基づいて、フラックスの低下速度を予測することにより、交換時期を予測することが望ましい。
【0092】
このようにして予測する方法は、たとえば、現場のデータが少ない(オンラインセンサが無い場合で、手動採取するはずであったのに、予定どおり採取できていない時など)ために、ある程度の精度を確保した予測が行えない場合に好適である。
【0093】
なお、上記に説明した予測方法3の場合にも、図3と図4とを用いて説明した場合と同様に、分離膜劣化予測部15は、運転データに含まれる流量、差圧、または、フラックスなどの複数の指標毎に交換時期を予測してもよい。また、分離膜劣化予測部15は、予測した複数の交換時期について、相関関数に基づいて最も類似している交換時期を選択してもよいし、平均を算出してもよい。
【0094】
また、平膜実験データ管理DB14には、洗浄後性能データと関連付けて、上述した平膜実験により得られる運転データが記録されていてもよい。この場合、分離膜劣化予測部15は、分離膜個体管理DB13から読み出した洗浄後性能データであって、交換期間を予測する対象となるリユース分離膜の洗浄後性能データと、洗浄後性能データが一致する平膜実験により得られる運転データを、平膜実験データ管理DB14から読み出す。そして、分離膜劣化予測部15は、このようにして読み出した平膜実験により得られる運転データに基づいて、交換時期を予測してもよい。これにより、洗浄後性能データが異なる場合であっても、分離膜劣化予測部15は、交換時期を適切に予測することができる。
【0095】
<複数の予測方法を組み合わせた補正>
分離膜劣化予測部15は、上記に説明した第1から第3の実施形態による予測方法によって得られた交換時期を組み合わせて、交換時期を算出してもよい。
【0096】
たとえば、分離膜劣化予測部15は、第3の実施形態による予測方法によって得られた交換時期を、第1または第2の実施形態による予測方法によって得られた交換時期により、補正してもよい。
【0097】
一例としては、分離膜劣化予測部15は、第3の実施形態による予測方法によって得られた交換時期と、第1または第2の実施形態による予測方法によって得られた交換時期との平均をとることにより、第3の実施形態による予測方法によって得られた交換時期を補正してもよい。
【0098】
この補正方法は次のような利点がある。上述したように、第3の実施形態による予測方法は、現場のデータが少ない(オンラインセンサが無い場合で、手動採取するはずであったのに、予定どおり採取できていない時など)ために、ある程度の精度を確保した予測が行えない場合に好適である。しかし、実際に運用した場合には、平膜実験の場合とは、異なる場合もある。そこで、実際に運用することにより得られた現場のデータにより算出される交換時期、すなわち、第1または第2の実施形態による予測方法によって得られた交換時期により、第3の実施形態による予測方法によって得られた交換時期を補正する。これにより、分離膜劣化予測部15は、より適切な交換時期を算出することができる。
【0099】
また、たとえば、分離膜劣化予測部15は、第1から第3の実施形態による予測方法によって得られた交換時期のうち、最も交換時期が短い交換時期を選択してもよい。このような選択方法は、水処理装置20において、リユース分離膜に対して、より高い性能が要求される場合に好適である。
【0100】
このように、分離膜劣化予測部15は、予測した第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期と予測した第2の時期との平均を算出する、または、予測した第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期と予測した第2の時期とのうち時期が短い方を選択することにより、予測した第2の時期に基づいて、予測した前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を変更(補正)してもよい。
【0101】
なお、上記に説明した本実施形態の説明においては、リユース分離膜として、図1に示したようなスパイラル型逆浸透膜を使用した分離膜モジュールの場合について説明したが、本実施形態におけるリユース分離膜は、これに限られるものではなく、任意の分離膜に適用可能である。
【0102】
また、上記に説明した本実施形態の説明においては、水を浄化処理する場合のリユース分離膜管理システム100について説明したが、水に限られるものではなく、リユース分離膜管理システム100は、任意の液体を浄化処理する場合にも、適用可能である。また、リユース分離膜管理システム100は、液体以外の気体などの流体を浄化処理する場合にも、適用可能である。
【0103】
なお、図2または図6に示された現場DB11、分離膜運転DB12、分離膜個体管理DB13、または、平膜実験データ管理DB14などの各記憶部は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CD−ROM等の読み出しのみが可能な記憶媒体、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されるものとする。
【0104】
また、離膜劣化予測部15は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、この離膜劣化予測部15はメモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、離膜劣化予測部15の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0105】
また、図2または図6における離膜劣化予測部15の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより離膜劣化予測部15による処理を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0106】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0107】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0108】
10…リユース分離膜管理装置、11…現場DB、12…分離膜運転DB、13…分離膜個体管理DB、14…平膜実験データ管理DB、15…離膜劣化予測部、20…水処理装置、100…リユース分離膜管理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第1の時系列データが記憶される運転データ記憶部と、
前記運転データ記憶部から読み出した前記第1の時系列データに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する予測部と、
を備えていることを特徴とするリユース分離膜の管理装置。
【請求項2】
前記予測部は、
前記流量、差圧、または、フラックス毎に予め定められている複数の関数毎に、前記リユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測し、
前記流量、差圧、または、フラックス毎に予め定められている複数の関数毎に予測された前記リユース分離膜を洗浄または交換する時期のうち、前記運転データ記憶部に記憶されている前記流量、差圧、または、フラックスの時系列データとの相関が最も高い前記リユース分離膜を洗浄または交換する時期を選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載のリユース分離膜の管理装置。
【請求項3】
前記第1のリユース分離膜と同じ種類のリユース分離膜である第2のリユース分離膜により前記原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第2の時系列データが予め記憶されている実験データ記憶部、
を備えており、
前記予測部は、
前記運転データ記憶部から読み出した前記第1の時系列データと、前記実験データ記憶部から読み出した前記第2の時系列データとに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリユース分離膜の管理装置。
【請求項4】
前記予測部は、
前記実験データ記憶部から読み出した前記第2の時系列データに基づいて、前記第2のリユース分離膜により前記原水が分離処理される場合の前記流量、差圧、または、フラックスの、時間に対する変化率を算出し、
前記運転データ記憶部から読み出した前記第1の時系列データの値が、前記算出した変化率に基づいて変化した場合に、予め定められている閾値を越える時期を算出することにより、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する、
をことを特徴とする請求項3に記載のリユース分離膜の管理装置。
【請求項5】
前記実験データ記憶部には、複数の前記第2の時系列データが予め記憶されており、
前記予測部は、
前記実験データ記憶部に記憶されている前記第2の時系列データの中から、前記運転データ記憶部から読み出した前記第1の時系列データと最も類似している前記第2の時系列データを選択し、当該選択した前記第2の時系列データに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する、
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のリユース分離膜の管理装置。
【請求項6】
前記実験データ記憶部には、前記第2のリユース分離膜の分離処理における性能を示す指標と関連付けて、前記第2の時系列データが予め記憶されており、
前記予測部は、
前記第1のリユース分離膜の分離処理における性能を示す指標と前記指標が同じ前記第2の時系列データを前記実験データ記憶部から読み出し、当該読み出した前記第2の時系列データに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する、
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のリユース分離膜の管理装置。
【請求項7】
前記実験データ記憶部に記憶されている前記第2の時系列データは、
前記第2のリユース分離膜に対する前記原水に基づいた平膜実験の場合の前記第2の時系列データである、
ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のリユース分離膜の管理装置。
【請求項8】
前記実験データ記憶部に記憶されている前記第2の時系列データは、
前記第2のリユース分離膜により前記原水が分離処理される場合の前記第2の時系列データである、
ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載のリユース分離膜の管理装置。
【請求項9】
前記予測部は、
前記第1の時系列データに含まれている流量、差圧、または、フラックスの、異なる時刻に測定された少なくとも2点の値に基づいて算出される関数に基づいて、予め定められている閾値を超える時期である第2の時期を予測し、
前記予測した第2の時期に基づいて、前記予測した前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を変更する、
ことを特徴とする請求項3から請求項8のいずれか1項に記載のリユース分離膜の管理装置。
【請求項10】
前記予測部は、
前記予測した前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期と前記予測した第2の時期との平均を算出する、または、前記予測した前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期と前記予測した第2の時期とのうち時期が短い方を選択することにより、前記予測した第2の時期に基づいて、前記予測した前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を変更する、
ことを特徴とする請求項9に記載のリユース分離膜の管理装置。
【請求項11】
リユース分離膜の管理装置としてのコンピュータに、
第1のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第1の時系列データが記憶される運転データ記憶部から読み出した前記第1の時系列データと、前記第1のリユース分離膜と同じ種類のリユース分離膜である第2のリユース分離膜により前記原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第2の時系列データが予め記憶されている実験データ記憶部から読み出した前記第2の時系列データとに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する予測手順、
を実行させるための管理プログラム。
【請求項12】
第1のリユース分離膜と同じ種類のリユース分離膜である第2のリユース分離膜により原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第2の時系列データを測定しておき、
前記第1のリユース分離膜により前記原水が分離処理される場合の流量、差圧、または、フラックスの第1の時系列データと、前記第2の時系列データとに基づいて、前記第1のリユース分離膜を洗浄または交換する時期を予測する、
ことを特徴とするリユース分離膜の管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−212608(P2011−212608A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83940(P2010−83940)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】