説明

リリーフバルブ付き電磁制御弁およびこの電磁制御弁を備えたコンプレッサ

【課題】 コンプレッサへの取付けを容易に行なえるとともに、専用の部位を要せずにリリーフバルブを設置できるリリーフバルブ付き電磁制御弁およびこの電磁制御弁を備えたコンプレッサを提供する。
【解決手段】 電磁制御弁21は、高圧部26、中圧部27、および低圧部28と、両端にそれぞれ開口24,25が形成される挿入孔23に挿入され、高圧部26から中圧部27への供給通路、および中圧部27から低圧部28への戻り通路の各開度を調整するプランジャ29と、電気信号に応じてプランジャ29を制御駆動するソレノイド30とを有し、高圧部26に、圧力調整用リリーフバルブ22を設けた。これにより、リリーフバルブ22の単独での設置が不要であるとともに、リリーフバルブ22で電磁制御弁21に掛かる冷媒ガスの圧力を抑制することにより、電磁制御弁21を強固に支持する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置などに設けられるリリーフバルブ付き電磁制御弁およびこの電磁制御弁を備えたコンプレッサ(圧縮機)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4乃至図6に示すように法規上義務付けられ、冷媒回路内の圧力異常上昇時の回路外への冷媒排出による圧力調整用リリーフバルブ1と電磁制御弁2とが別体で各々設けられる車両空調装置用のコンプレッサ3が用いられている。このコンプレッサ3は、図示を省略したが内部にクランク室が形成されるハウジング4と、このハウジング4の後端側(図4の右側)に接合され、内部に吸入室及び吐出室が形成されるリアハウジング5と、ハウジング4に回転可能に設けられ、内部の駆動軸に動力を伝達するプーリ6とを有している。このコンプレッサ3にあっては、駆動軸の回転に伴ってハウジング4内でピストンが駆動軸の軸方向に往復動することにより冷媒ガスが吸入室から吸入されるとともに高圧冷媒ガスが吐出室へ吐出され、図示しない外部冷媒回路へ供給される。リアハウジング5の後部にはリリーフバルブ1が挿入される挿入孔7と、電磁制御弁2のプランジャ8が挿入される図5及び図6の挿入孔9とが別々に形成されている。この挿入孔9の一端9aは開口端であり、他端9bは閉じている。
【0003】
図5に示すように電磁制御弁2は、上記のプランジャ8と、挿入孔9の一端9a側に装着され、電気信号に応じてプランジャ8を制御駆動するソレノイド10とからなり、プランジャ8の外周にはコンプレッサ3の吐出室、クランク室および吸入室とそれぞれ連通する高圧部11、中圧部12、および低圧部13が形成されている。この電磁制御弁2にあっては、ソレノイド10の駆動でプランジャ8が軸方向へ移動することにより、高圧部11から中圧部12への供給通路、および中圧部12から低圧部13への戻り通路の各開度を調整してクランク室内の圧力を増減させることにより、コンプレッサ3のピストンストロークを変更し、その結果として、コンプレッサ3の吐出量を増減するようになっている。
【0004】
このような従来のコンプレッサ3にあっては、リリーフバルブ1と電磁制御弁2が別体で各々挿入孔7,9に挿入されているため、電磁制御弁2を取付ける部位の他に、リリーフバルブ1を取付ける専用の部位が必要であるとともに、電磁制御弁2に高い圧力の冷媒ガスが掛かるため複数本のボルト14で電磁制御弁2を固定する必要がある。
【0005】
また、特許文献1にリリーフバルブ付き制御弁を備えた「容積型圧縮機」が記載されている。この従来の圧縮機にあっては、リリーフバルブを制御弁と一体に設けたためリリーフバルブが取付ける専用の部位を省略できる。
【特許文献1】特開昭62−168982号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている圧縮機は、リリーフバルブが制御弁と一体に設けられ、車両パワーステアリング用の油圧ポンプとして用いられており、車両の高速時などにパワーステアリング用オイルの吐出量を制限することはできるが、車両用空調装置などに設けられるコンプレッサとして、クランク室内の冷媒ガスの圧力を増減させる電磁制御弁を備えるものについては考慮されていなかった。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術を考慮してなされたもので、その目的は、空調装置のコンプレッサへの取付けを容易に行なえるとともに、専用の部位を要せずにリリーフバルブを設けることのできるリリーフバルブ付き電磁制御弁およびこの電磁制御弁を備えたコンプレッサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に係る発明は、コンプレッサの吐出室、クランク室および吸入室とそれぞれ連通する高圧部、中圧部および低圧部と、前記高圧部から前記中圧部への供給通路、および前記中圧部から前記低圧部への戻り通路の各開度を調整するプランジャと、このプランジャを駆動するソレノイドとを有し、このソレノイドの駆動で前記プランジャを軸方向へ移動させて前記供給通路および前記戻り通路の各開度を調整し前記クランク室内の圧力を増減させることにより、前記コンプレッサのピストンストロークを変更するようにした電磁制御弁であって、前記高圧部に、圧力調整用のリリーフバルブを設けた構成にし、例えば請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明であって、前記リリーフバルブが、前記高圧部とリリーフ流路とを連通する連通路と、この連通路内の圧力が所定値を越えたときに前記連通路を開く開閉手段とを備えた構成にしている。
【0009】
また、上記目的を達成するため請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたリリーフバルブ付き電磁制御弁を備えた構成にしてある。
【0010】
このように構成した請求項1乃至請求項3に係る発明では、電磁制御弁の高圧部に圧力調整用のリリーフバルブを設けたので、このリリーフバルブのための専用の部位を要せずに済む。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、クランク室内の冷媒ガスの圧力制御を行なう電磁制御弁を容易に空調装置のコンプレッサへ装着できるとともに、専用の部位を要せずにリリーフバルブを設けることができる。
【0012】
したがって、電磁制御弁を空調装置のコンプレッサへ取付ける際の作業効率を向上できるとともに、コンプレッサのコンパクト化が可能であるリリーフバルブ付き電磁制御弁、およびこの電磁制御弁を備えたコンプレッサを提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るリリーフバルブ付き電磁制御弁およびこの電磁制御弁を備えたコンプレッサの詳細を図に基づいて説明する。
【0014】
本発明の一実施形態を図1乃至図3に示す。図1は本発明の一実施形態に係るリリーフバルブ付き電磁制御弁を備えたコンプレッサの正面図、図2は図1のA―A線に沿うコンプレッサの断面を示す図、図3は本実施形態のリリーフバルブ付き電磁制御弁が挿入される挿入孔を示す断面図である。なお、図1乃至図3において前述した図4乃至図6に示すものと同等のものには同一符号を付してある。
【0015】
図1乃至図3に示すように本実施形態のコンプレッサ20は、図4乃至図6に示す従来のコンプレッサ3に比べて、電磁制御弁21自体に圧力調整用のリリーフバルブ22を設け、電磁制御弁21が挿入される挿入孔23が、両端にそれぞれ開口24,25が形成される直線状の貫通穴からなることが異なっており、その他の構成は従来のコンプレッサ1と基本的に同様である。
【0016】
電磁制御弁21は、コンプレッサ20の吐出室、クランク室および吸入室とそれぞれ連通する高圧部26、中圧部27および低圧部28と、高圧部26から中圧部27への供給通路、および中圧部27から低圧部28への戻り通路の各開度を調整するプランジャ29と、電気信号に応じてプランジャ29を制御駆動するソレノイド30とを有している。リリーフバルブ22は、高圧部26とリリーフ開孔31とを連通する連通路と、この連通路内の圧力が所定値を越えたときに連通路を開く開閉手段とを備えている。
【0017】
この実施形態にあっては、組付時にリリーフバルブ22付きのプランジャ29を一端の開口24から挿入孔23に挿入するとともに、一端の開口24側にソレノイド30を装着して1本のボルト14でリアハウジング5に締結する。この状態で一端の開口24がソレノイド30で覆われるとともに、他端の開口25が高圧部26、中圧部27および低圧部28のいずれからも遮断されている。このようにして電磁制御弁21をコンプレッサ20に組付けた後、コンプレッサ20の作動時にソレノイド30の駆動でプランジャ29を軸方向へ移動させて供給通路および戻り通路の各開度を調整しクランク室内の圧力を増減させることにより、コンプレッサ20のピストンストロークを変更する。次いで、高圧部26内の冷媒ガスの圧力が所定値を越えた場合、リリーフバルブ22の開閉手段により連通路を開いて高圧部26内の冷媒ガスをリリーフ開孔31へ流すことよりコンプレッサが部に排出し、高圧部26内の圧力が低下する。従って、高圧部と連通するコンプレッサ吐出室、外部冷媒回路内の圧力が低下する。
【0018】
このように構成した本実施形態では、電磁制御弁21の高圧部26に圧力調整用のリリーフバルブ22を設けたので、このリリーフバルブ22のための専用の部位を要せずに済む。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、クランク室内の冷媒ガスの圧力調整を行なう電磁制御弁を空調装置のコンプレッサへ取付ける際の作業効率を向上できるとともに、コンプレッサのコンパクト化が可能であるリリーフバルブ付き電磁制御弁およびこの電磁制御弁を備えたコンプレッサを提供できるという効果があるので、一般的な車両用の空調装置として適用できるとともに、その他、一般機械用あるいは産業機械用などの空調装置としても広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るリリーフバルブ付き電磁制御弁を備えたコンプレッサの正面図である。
【図2】図1のA−A線に沿うコンプレッサの断面を示す図である。
【図3】本実施形態のリリーフバルブ付き電磁制御弁が挿入される挿入孔を示す断面図である。
【図4】従来のリリーフバルブおよび電磁制御弁を別々に備えたコンプレッサの正面図である。
【図5】図4のB−B線に沿うコンプレッサの断面を示す図である。
【図6】従来の電磁制御弁が挿入される挿入孔を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
4 ハウジング
5 リアハウジング
14 ボルト
20 コンプレッサ
21 電磁制御弁
22 リリーフバルブ
23 挿入孔(貫通穴)
23,25 開口
26 高圧部
27 中圧部
28 低圧部
29 プランジャ
30 ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサ(20)の吐出室、クランク室および吸入室とそれぞれ連通する高圧部(26)、中圧部(27)および低圧部(28)と、前記高圧部(26)から前記中圧部(27)への供給通路、および前記中圧部(27)から前記低圧部(28)への戻り通路の各開度を調整するプランジャ(29)と、電気信号に応じて前記プランジャ(29)を制御駆動するソレノイド(30)とを有し、このソレノイド(30)の駆動で前記プランジャ(29)を軸方向へ移動させて前記供給通路および前記戻り通路の各開度を調整し前記クランク室内の圧力を増減させることにより、前記コンプレッサ(20)のピストンストロークを変更するようにした電磁制御弁(21)であって、前記高圧部(26)に、圧力調整用のリリーフバルブ(22)を設けたことを特徴とするリリーフバルブ(22)付き電磁制御弁(21)。
【請求項2】
請求項1記載のリリーフバルブ付き電磁弁であって、前記リリーフバルブ(22)が、前記高圧部(26)とリリーフ流路とを連通する連通路と、この連通路内の圧力が所定値を越えたときに前記連通路を開く開閉手段とを備えたことを特徴とするリリーフバルブ(22)付き電磁制御弁(21)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたリリーフバルブ(22)付き電磁制御弁(21)を備えたことを特徴とするコンプレッサ(20)。
【請求項4】
請求項3記載のコンプレッサであって、両端にそれぞれ開口(24,25)が形成され、前記プランジャ(29)が挿入される挿入孔(23)を有し、この挿入孔(23)にその一端の開口(24)から前記プランジャ(29)を挿入した状態で前記一端の開口(24)が前記ソレノイド(30)で覆われるとともに、前記挿入孔(23)の他端の開口(25)が前記高圧部(26)、中圧部(27)および低圧部(28)のいずれからも遮断されることを特徴とするコンプレッサ(20)。
【請求項5】
請求項4記載のコンプレッサであって、上記挿入孔(23)は、一端から他端まで直線状の貫通穴からなることを特徴とするコンプレッサ(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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