説明

リン−酸素酸のアルコキシ含有エステルおよびエステル塩、およびこれらの腐食防止剤としての使用方法

【課題】特にアルカリ性媒体中で好適に使用される腐食防止剤を提供する。
【解決手段】本発明は、特定のリン−酸素酸のアルコキシ含有エステルまたはアルコキシ含有エステル塩、および、これらの化合物を特にアルカリ性媒体中での腐食防止剤として使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン−酸素酸のアルコキシ含有エステルまたはエステル塩に関する。その上、本発明は上記化合物を特にアルカリ性媒体中での腐食防止剤として使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸誘導体またはホスホン酸誘導体の腐食防止のための使用は、原則として公知である。しかしながら、リン酸誘導体またはホスホン酸誘導体またはその加水分解生成物は、アルカリ性の水性媒体中で、種々の対イオン、例えばCa2+と不溶性または難溶性の塩をしばしば形成し、従ってこれらの物質のこのような媒体中での使用には制限がある。
【0003】
アルカリ性媒体としては、例えば、コンクリート、モルタル等、アルカリ性の結合剤組成物を含む仕上剤、被覆剤組成物等が挙げられる。
【0004】
コンクリートに埋め込まれる鉄筋もまた腐食から完全には防御されておらず、時間の経過と共に腐食する可能性がある。鉄筋の腐食の結果、鉄筋の強度、従ってまたコンクリートの強度が低下する。その上、腐食生成物、例えば鉄酸化物または水和鉄酸化物は腐食されていない鉄筋自体より大きな体積を有する。従って、構造全体に亀裂または断裂を生ずる可能性のある応力がコンクリート中に発生する。鉄筋コンクリートの腐食により、多大な経済的損失が発生する。
【0005】
鉄筋の腐食は、実質的に拡散に支配される工程である。水と酸素はコンクリートの孔隙中に拡散しうる。孔隙中の水は特に溶解したCa(OH)2を含み、無傷のコンクリート中では約13のpHを示す。このpHでは、コンクリート中に埋め込まれた鉄筋は、不動態層により腐食から保護されている。大気中のCO2が孔隙中に拡散すると、特に不溶なCaCO3が形成され、孔隙中の水のpHは9未満の値に減少する。しかしながら、これらのpH値では、鉄筋上の不動態層が無力化する。不動態層の効力はまた、塩素イオンによって悪影響を受けまたは無力化されうる。塩素イオンは、例えば海水または凍結防止剤とコンクリートの接触を介して、コンクリート中に浸入しうる。
【0006】
浸入したCO2または塩化物の量は、特別な孔隙が少ない緻密なコンクリートが使用された場合には少なくなる。しかしながら、このような方法でも、浸入を完全に防止することができない。その上、使用目的によってはしばしば望ましくないコンクリートの構造の変化が生じた場合には、その性質は他のコンクリートと同じになる。従って、少ない孔隙を有するコンクリートの使用は考慮できるものの、多くの場合にはうまく行かない。
【0007】
従って、腐食防止剤、例えば亜硝酸塩、アミン、アルカノールアミン、これらと無機または有機酸またはリン酸エステルとの混合物を新規なコンクリートに添加する技術が知られている。また、ホスホン酸またはホスホン酸誘導体をコンクリート中の腐食防止のために使用しうることも知られている。DE−A−3629234号公報は、コンクリートおよびモルタル混合物への添加物として、様々なアルキルホスホン酸の塩、特にナトリウム塩を開示している。GB−A−2248612号公報およびJP−A−03−159945号公報は、コンクリートのための添加物として、アミノ含有またはヒドロキシル含有ホスホン酸を開示している。
【0008】
新規なコンクリートの腐食防止処理に加えて、古いコンクリートの保護に関しても、実際的な問題がしばしば発生する。この場合には、表面上のコンクリートおよびむき出しになった鉄筋上のコンクリートを削り落としまたは吹き落とし、次いで鉄筋を腐食防止剤で処理し、最終的に再びコンクリートで覆うことができる。この方法は、コンクリートの構造が既に不可逆的に損傷を受けたような深刻な場合に、特に用いられる方法である。
【0009】
その上、硬化後の鉄筋コンクリートの表面を移行性腐食防止剤で処理しうることも公知である。この技術は、例えば、M.Haynes,B.Maricの“Construction Repair,July/August 1997”、またはUS5071579号公報に開示されている。このためには、腐食防止剤の溶液が数回連続的に表面に塗布または噴霧され、腐食防止剤が表面から内部に移行する。鉄筋に至るまでのさらに内部への拡散は、通常は表面への水の塗布を繰り返すことによって支援される。Na2PO3Fを移行性腐食防止剤として使用しうることが知られている。US5071579号公報はまた、Na2PO3Fと式RnlN(CH2PO322-n(nは0または1を表す。)で表されるホスホン酸との併用を開示している。しかしながら、フルオロリン酸ナトリウムは水中で加水分解され、孔隙の水に溶解しているCa(OH)2と不溶なカルシウム塩を形成する。ホスホン酸も不溶なカルシウム塩を形成する。従って、表面に塗布された腐食防止剤のかなりの部分が結局鉄筋に到達せず、従って何の作用も果たしえない。従って、腐食防止剤を多量に使用しなければならない。この点は不経済であり、その上コンクリートが結果的に望ましくない成分で汚染されてしまう。
【0010】
【特許文献1】DE−A−3629234号公報
【特許文献2】GB−A−2248612号公報
【特許文献3】JP−A−03−159945号公報
【特許文献4】US5071579号公報
【非特許文献1】M.Haynes,B.Maric,Construction Repair,July/August 1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、特にアルカリ性媒体中での使用に適しており、特に不溶のまたは難溶のカルシウム塩を形成しない、改良された腐食防止剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、この目的は、式(A)
【0013】
【化1】

または、式(B)
【0014】
【化2】

【0015】
{式中、nが0〜10の整数を表し、
m+k=2であり、かつ、mが1または2を、kが0または1を表し、
1、R2および場合によりR3のうちの少なくとも1個が、式−[CH2−CHR6−O]l7(式中、lが2〜30の値を表し、R6およびR7がそれぞれHまたはCH3を表す。)で表されるアルコキシを表し、これらの基がアルコキシを表さない場合には、R1およびR2が直鎖状または分枝状のC1−C6−アルキルを表し、R3が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C20−アルキルまたはアリールを表し、
4がHまたは直鎖状または分枝状のC1−C6−アルキルを表し、
5が二価の架橋基を表す。}、
で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステルによって達成されることを発見した。
【0016】
本発明では、第2に、式(C)
【0017】
【化3】

または、式(D)
【0018】
【化4】

【0019】
{式中、nが0〜10の整数を表し、
m+k=2であり、かつ、mが1または2を、kが0または1を表し、
1および場合によりR3のうちの少なくとも1個が、式−[CH2−CHR6−O]l7(式中、lが2〜30の値を表し、R6およびR7がそれぞれHまたはCH3を表す。)で表わされるアルコキシを表し、これらの基がアルコキシを表さない場合には、R1が直鎖状または分枝状のC1−C6−アルキルを表し、R3が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C20−アルキルまたはアリールを表し、
4がHまたは直鎖状または分枝状のC1−C6−アルキルを表し、
5が二価の架橋基を表し、
Mがアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、およびアンモニウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種のカチオンを表す。}、
で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル塩が発見された。
【0020】
発明者らはまた、上記エステルまたはエステル塩を腐食防止剤、特に鉄筋コンクリートのための移行性腐食防止剤として使用する方法を発見した。
【0021】
意外にも、本発明の新規なジエステル(リン1原子に対する2個のエステル)は腐食防止剤として極めて有用であることがわかった。これらはアルカリ性媒体、場合によりカルシウムイオンを含有する媒体に対して極めて適している。新規なエステルは飽和Ca(OH)2溶液に溶解し、難溶性の沈殿を形成しない。その上、モノエステル塩のCa(OH)2溶液中での溶解性は十分である。
【0022】
過剰のNaOHが存在しておりかつ高温であっても、ジエステルはアルカリ性媒体中で一般に非常にゆっくりとしか加水分解せず、対応するモノエステル塩が生成する。しかしながら、上述の条件では、遊離酸またはその塩が生成するようなさらなる加水分解はほとんど起こらない。ジエステル自身は腐食防止効果を有している。原則として、対応するモノエステル塩の腐食防止効果はさらに大きい。モノエステル塩は、加水分解によって徐々にしか遊離しない。ジエステルは、被覆型の腐食防止剤または遅延作用型または長期作用型腐食防止剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明について、以下に詳細に説明する。
【0024】
本発明のリン−酸素酸のアルコキシ含有エステルは、1個または2個のリン−酸素酸基および少なくとも1個の別の置換基が直接または間接的に窒素原子を介して結合している式(A)
【0025】
【化5】

で表されるジエステル、または、2個の窒素原子が互いに基R5を介して結合しておりかつ1個または2個のリン−酸素酸基および場合により別の置換基を有している式(B)
【0026】
【化6】

で表されるジエステルのいずれかである。
【0027】
以下で、“ジエステル”という語は、リン1原子あたりのエステル基の数に関係しており、従って分子中に存在するリン原子の全てがそれぞれ2個のエステル基を有していることを示している。また、以下の“モノエステル”という語は、それぞれのリン原子が1個のエステル基、1個のOHまたはOM基を有している化合物を意味している。新規なジエステルまたはモノエステルは、nが0より大きい場合にはホスホン酸誘導体であり、nが0である場合にはアミドリン酸の誘導体である。
【0028】
式(A)(B)中の指数nは、0〜10の整数を表す。好ましくは、nは0〜3の整数であり、特に好ましくは0または1であり、極めて好ましくは1である。
【0029】
指数mは1または2を、kは0または1を表し、m+kの合計は2である。好ましくは、mおよびkはそれぞれ1であり、すなわち、それぞれの化合物において、1個の−(CH2n−PO(OR1)(OR2)基のみが1個の窒素原子に結合している。
【0030】
1、R2および場合によりR3(すなわちジエステルが化合物(A)である場合)のうちの少なくとも1個は、アルコキシを表す。好適なアルコキシ基は、特に式−[CH2−CHR6−O]l7(式中、lが2〜30の値を表し、R6がHおよび/またはCH3を表す。)で表されるポリオキシエチレン基またはポリオキシプロピレン基である。R6がH、すなわちアルコキシ基がポリオキシエチレン基であるのが好ましい。lは、好ましくは3〜20の値であり、特に好ましくは5〜15の値である。R7はCH3基またはHを表す。
【0031】
このようなアルコキシ基を例えば工業的なポリグリコールから出発してまたはオキシアルキル化によって得ることができることは、当業者に公知である。従って、上述のlの値は平均的な鎖長を表わし、平均値はもちろん自然数である必要はないが、適当な有理数でありうる。
【0032】
残りのアルコキシ基を表わさないR1、R2および場合によりR3(ジエステルが化合物(A)である場合)は、直鎖状または分枝状の置換または非置換のアルキルを表す。場合により存在する置換基は、例えばアミノまたはOHであることができる。特にこの置換基は末端OH基であることができる。
【0033】
1および/またはR2は、好ましくはC1−C6−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、またはn−ヘキシル、好ましくはメチルまたはエチル、極めて好ましくはエチルを表す。置換アルキル基は、特に2−メトキシエチルであることができる。
【0034】
3は、好ましくはC1−C20−アルキルまたはアリールを表す。好ましくは、直鎖状または分枝状のC4−C12−アルキルである。好ましい基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、またはn−ドデシルが挙げられる。特に好ましい基としては、n−プロピル、n−ブチル、n−オクチル、および2−エチルヘキシルが挙げられる。置換アルキル基は、特にω−メトキシアルキル、例えばメトキシエチルであることができる。アリール基は、純粋なアリール基であっても、アルキル置換アリール基、例えば−CH256基であってもよい。
【0035】
存在する場合には、R4はHまたは直鎖状または分枝状の置換または非置換のアルキル、好ましくはC1−C6−アルキルを表す。特に好ましくは、R4はHまたはメチルである。置換アルキル基は、特に2−メトキシエチルであることができる。
【0036】
架橋化合物(B)にはR3が存在しないが、その代わりに二価の架橋基R5が存在する。この基は少なくとも2個の炭素原子を有するのが好ましい。このような基は、特に脂肪族、脂環式、または芳香族炭化水素から誘導された基であることができる。例としては、異原子または置換基を有していてもよい1,4−キシリレン、1,4−シクロヘキシレン、またはエチリデン基が挙げられる。
【0037】
この架橋基は、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基であるのが好ましい。ただし、このアルキレン基において、隣接していないCH2基はOまたはN原子で置換されていてもよい。例としては、−(CH22−、−(CH24−、−(CH26−、−(CH28−、−(CH22−O−(CH22−、−(CH22−O−(CH22−O−(CH22−、−(CH23−O−(CH24−O−(CH23−、−(CH23−O−(CH22−O−(CH22−O−(CH23−、−(CH22−O−(CH22−O−(CH22−O−(CH22−、−(CH22−O−[(CH22−O−]j(CH22−O−(CH22−、−(CH22−HN−(CH22−および−(CH22−NR6−(CH22−NR6−(CH22−基(式中、jが1〜10の値を表し、R6がアルキル、−(CH2n−PO(OR1)(OR2)または−(CH2n−PO(OR1)(OM)を表す。)が挙げられる。このような基としては、−(CH22−、−(CH24−、−(CH26−、−(CH23−O−(CH24−O−(CH23−、−(CH22−O−(CH22−O−(CH22−、または−(CH22−O−(CH22−O−(CH22−O−(CH22−基が好ましい。
【0038】
基R1〜R7の様々な組み合わせの中から、当業者はこれらの基を所望の特性および目的の用途に応じて適宜選択することができる。本発明を実行するためには、R1およびR2の少なくとも一方がアルコキシであれば十分である。しかしながら、R1およびR2の両方がアルコキシであるのが好ましい。
【0039】
特に有用であることがわかっている移行性腐食防止剤は、以下の化合物である。
【0040】
【化7】

【0041】
本発明の式(C)
【0042】
【化8】

または、式(D)
【0043】
【化9】

のエステル塩において、各基−存在する場合には−および指数は、ジエステルに関して上述した意味を表す。しかしながら、エステル酸は1個のリン原子あたり1個のエステル基のみを有している。(D)の場合には、R1は常にアルコキシであり、(C)の場合には、R1およびR3のいずれかがアルコキシであってもよく、両方がアルコキシであってもよい。
【0044】
Mは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンまたはアンモニウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種のカチオンを意味する。アンモニウムイオンは、特にNH4+、アルキル置換またはヒドロキシアルキル置換アンモニウムイオン、例えば(HOCH2CH23NH+、(HOCH2CH22NH2+、HOCH2CH2NH3+、またはHOCH2CH2N(CH33+、または他にテトラアルキルアンモニウムイオン、例えばテトラメチルアンモニウムイオンまたはテトラエチルアンモニウムイオンであることができる。Na+、K+、Mg++、Ca++、Ce+++、Al+++、Zn++およびNH4+が好ましい。上の式は、単純化のために、1価のカチオンの場合のみを示したものである。しかしながら、当業者は上の式から多価のカチオンに対する正確な式を容易に誘導することができる。
【0045】
本発明のリン−酸素酸のジエステルは、例えば市販のホスホン酸エステル、例えばホスホン酸ジエチルから出発して製造することができる。
【0046】
アルコキシル化ジエステルは、出発化合物から、エステル交換によって、またホスホン酸ジエチルとそれぞれのジエステルまたはモノエステルに必要なポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールとの反応によって得ることができる。エステル交換は、例えばアルカリ金属を触媒とすることができ、遊離したエタノールは蒸留除去される。
【0047】
もちろんホスホン酸自体から出発して、原則として当業者に公知の方法によりこれをオキシアルキル化することもできる。この場合には、依然として末端OH基を有するアルコキシ基が得られる。
【0048】
n=0の場合には、得られたジアルコキシエステルを所望のアミン、例えばエチルヘキシルアミンと反応させることができる。反応は、原則としてCCl4中で触媒として第3アミンを使用して公知の方法で行うことができる。エチレンジアミンのようなジアミンを使用すると、架橋ジエステル(B)が生成する。アミノポリエチレンまたはポリプロピレングリコールを使用すると、R3としてのアルコキシを有するジエステルが生成する。
【0049】
n=1の場合のジエステルは、ホスホン酸ジエチルまたは対応するアルコキシル化ジエステルのアミノメチル化により得ることができる。この場合は、ホスホン酸ジエステルは、ホルムアルデヒド、所望のアミンおよび適当なブレンステッド酸と反応させられる。
【0050】
n=2の場合のジエステルは、ビニルホスホン酸エステルにアミンを付加させることにより製造することができ、n>の場合は、ホスホン酸ジエステルの二重結合(例えばn=3の場合のアリルアミンへの)でのラジカル付加反応またはアミノアルキル臭化物によるアルブゾフ反応により製造することができる。
【0051】
エステル塩は、ジエステルのアルカリ加水分解により、例えばNaOH水溶液中でジエステルを60〜100℃で2〜12時間加熱し、リン1原子あたり1個のエステル基のみを加水分解することにより、好ましく製造される。目的の化合物のそれぞれに対する最適条件は、場合により数回の実験により当業者が決定することができる。モノエステル塩は、使用媒体中での加水分解により、in situで製造することもできる。
【0052】
本発明の新規なジエステルおよびモノエステル塩は、腐食防止剤として使用することができる。これらは特にアルカリ性媒体、例えば8〜13のpHを有する媒体中で使用するのに適している。その上、これらは特にCa2+イオンの存在下での使用に適している。
【0053】
本発明の新規なジエステルおよびモノエステル塩は、それ自体を腐食防止のために使用することができる。例えば、金属表面を必要に応じて温和に加熱した後に適当な誘導体を表面上に注いだり噴霧したりすることができる。これらはまた他の物質または混合物、例えば仕上剤、印刷インク、モルタルまたはコンクリートに添加することもでき、従って、このような物質または混合物が金属に接触した際の腐食を防止することができる。
【0054】
しかしながら、ジエステルおよびモノエステル塩は、少なくとも1種のジエステルおよび/またはモノエステル塩、適当な溶媒および場合により他の成分を含む適当な調剤の形態で使用するのが好ましい。
【0055】
適当な溶媒は、特に水またはメタノール、エタノール、プロパノール、ポリエチレングリコールまたはアルキルポリエチレングリコールのようなアルコールである。もちろん異なる溶媒の混合物を使用することもできる。
【0056】
主として水性の溶媒混合物を含む調剤が好ましい。主として水性の溶媒混合物とは、少なくとも50質量%、好ましくは少なくとも65質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%の水を含む混合物を意味する。他の成分は、水に混和可能な溶媒である。例としては、メタノール、エタノールまたはプロパノールのようなモノアルコール、エチレングリコール、グリセロール、またはポリエーテルポリオールのような高級アルコール、およびブチルグリコールまたはメトキシプロパノールのようなエーテルアルコールが挙げられる。
【0057】
使用される腐食防止剤の種類および使用目的に依存して、当業者は原則として考えうる溶媒の中から適当な選択を行うことができる。
【0058】
特に好ましい溶媒は水である。
【0059】
調剤のpHは、使用目的に依存して当業者に選択される。アルカリ性水性媒体、例えばpHが8〜13の範囲の水性媒体中での腐食防止剤の使用が好ましい。
【0060】
腐食防止剤の濃度は、使用目的に依存して当業者によって設定される。もちろん、現場で実際に使用するまで所望の濃度に希釈されない濃縮物を製造することもできる。
【0061】
また、問題が生じない限り、他の腐食防止剤を本発明の新規な防止剤との混合物として使用することもできる。
【0062】
本発明の新規な腐食防止剤を含む調剤は、適当な方法、例えば塗布、噴霧、印刷、または浸漬により、保護されるべき金属表面に適用される。金属表面は、アルミニウム合金、マグネシウム合金、鉄、鋼、銅、亜鉛、スズ、ニッケル、クロム、およびこれらの金属の工業上慣用的な合金から成る群から選択された一般的に工業上慣用されている材料である。他の例としては、亜鉛およびその合金、好ましくは金属亜鉛、亜鉛/鉄、亜鉛/ニッケル、亜鉛/マンガン、または亜鉛/コバルト合金、スズおよびその合金、好ましくは金属スズ、Cu、Sb、Pb、Ag、BiおよびZnを含むスズの合金、特に好ましくは例えば回路基板の製造および加工においてハンダとして使用されるスズ合金、および銅、好ましくは回路基板および金属被覆されたプラスチック部品において使用される形態の銅から成る群から選択される、化学的手法および電気化学的手法で得ることができる工業上慣用の金属被覆が挙げられる。
【0063】
保護されるべき金属表面は、金属粒子または金属層板、例えばアルミニウム薄片であることもできる。このようなメタル効果粉末は、粒径に応じて極めて広範囲の目的に使用される。比較的小さな粒子は、例えば印刷インクまたは仕上剤中でのシルバーブロンズとして使用され、比較的大きな粒子は仕上剤中の腐食防止粉末として使用される。本発明のジエステルおよびモノエステル塩は、印刷インクまたは仕上剤に添加することができ、または他にメタル効果粉末を使用前する前に新規な調剤で処理することもできる。
【0064】
本発明の新規なジエステルおよびモノエステル塩は、鉄筋コンクリートの腐食防止に特に適している。一方では、これらを新規なコンクリートに添加することができる。また、古いコンクリートの修復のために、例えばむき出しになった鉄筋の処理のために使用することができる。これらは移行性腐食防止剤としても適している。
【0065】
本発明の新規な化合物は、もちろん他の分野で使用することもできる。これらはまた例えば防炎加工剤として適している。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0067】
使用される出発物質は、プルリオール(Pluriol)(登録商標)A275E:メチルポリエチレングリコールエーテル、Mw275(BASF社製)である。
【0068】
以下の実施例では、上記化合物を簡便のためメトキシヘキサエチレングリコールと表すが、実際は存在する−CH2CH2O−単位の数の平均値が5.5である種々のメチルポリエチレングリコールの混合物である。
【0069】
実験のため、他の平均分子量Mwを有する他のメチルポリエチレングリコールエーテル、例えばプルリオール(Pluriol)(登録商標)A350E(Mw350)またはプルリオール(Pluriol)(登録商標)A500E(Mw500)を使用することもできる。
【0070】
例1:
ジ(メチルヘキサエチレングリコール)ホスフィットの製造
【0071】
【化10】

【0072】
ジエチルホスフィット(12.8g、0.093mol)とプルリオール(Pluriol)A275E(50g、0.186mol)を、まず500mLのフラスコに導入する。触媒としてカリウム(20mg、0.5mmol)を添加した後、反応混合物を170℃に加熱し、生成したEtOHを大気圧下で蒸留除去する。残留したEtOHは20mmHgで蒸発させる。収率は95−98%である。
【0073】
より高い分子量またはより低い分子量を有する他のポリエチレングリコールエーテルを使用することによって、他のエステル基を有するホスホン酸エステルを得ることができる。
【0074】
代替的な製造方法により、ジ(メチルヘキサエチレングリコール)ホスフィットは、ホスホン酸の直接エトキシル化によっても製造することができる。
【0075】
例2
2−エチルヘキシルリンアミドジ(メチルヘキサエチレングリコール)エステルの製造
【0076】
【化11】

【0077】
例1で得られたジ(メチルヘキサエチレングリコール)ホスフィットの62.0g(0.092mol)を1:1CCl4/CH2Cl2(185mL)混合物に溶解させ、2−エチルヘキシルアミン(11.9g、0.092mol)を添加する(上式におけるR3が2−エチルヘキシルである)。最後に、トリエチルアミン(9.28g、0.092mol)を滴下する。白色のトリエチルアンモニウム塩酸塩の粉末をろ過し、溶媒を除去する。2−エチルヘキシルリンアミドジ(メチルヘキサエチレングリコール)エステルが、(F.R.Atherton,A.R.ToddによるJ.Am.Chem.Soc.,(1947),674,ibid.(1945),660の合成法に基づき)、76%の収率で、透明液体として得られる。
【0078】
例1の方法により得られる他の化合物は、ホスホン酸エステルとして使用できる。2−エチルヘキシルアミンの代わりに、他のアミンを使用することもできる。
【0079】
例3:
ジ(メチルヘキサエチレングリコール)N−メチル−N−2−エチルヘキシルアミノメチルホスフィットの製造
【0080】
【化12】

【0081】
ジ(メチルヘキサエチレングリコール)(0.1mol)ホスフィットを、1時間にわたって、N−メチル−2−エチルヘキシルアミン(14.3g、0.1mol)、ホルムアルデヒド(8.21g、濃度36.5%の溶液、0.1mol)およびo−リン酸(4.89g、力価85%、5質量%)の混合物に、〜11℃に冷却しながら滴下する。その後、反応混合物を90℃に加熱し、この温度に3時間保つ。
【0082】
o−リン酸の代わりに、酸性イオン交換体、例えばアンバーリスト(Amberlyst)36Dryを、触媒として、総量に対して1質量%の量で使用することもできる。例1によって得られる他の化合物も、ホスホン酸エステルとして使用することもできる。2−エチルヘキシルアミンの代わりに、他のアミンを使用することもできる。第1アミンを使用すると、対応する二量体も上述の化合物に加えて形成される。この反応を、オクチルアミンを使用する例を用いて以下に示す。
【0083】
【化13】

【0084】
例4
ジ(ヒドロキシヘキサエチレングリコール)N−メチル−N−2−エチルヘキシルアミノメチルホスフィットの製造
【0085】
【化14】

【0086】
第1段階:ホスホン酸の製造
ホスホン酸Aを、第1反応段階において、上式に従い、K.Moedritzer,R.R.IraniによるJ.Org.Chem.(1966),1603−1607の合成法に基づき製造する。
【0087】
第2段階:ホスホン酸のエトキシル化
N−メチル−N−2−エチルヘキシルアミノメチルホスホン酸(238g、1mol)を、トルエン2Lに懸濁させ、14当量のエチレンオキシド(616g、14mol)をゆっくりと50℃、1−1.5barの条件下で導入する。減圧下で溶媒を生成物(B)から分離する。
【0088】
ジエステルの加水分解によりモノエステルを製造する一般的手法
ジ(メチルポリエチレングリコール)ジアルキルアミノメチルホスフィットまたはアルキルリンアミドジ(メチルポリエチレングリコール)エステル(0.05mol)を、まず熱電対、温度制御器、コイル凝縮器、および計泡器を備えた容量100mLの4口フラスコに導入する。生成物を脱塩水(37.0g)で希釈する。次いで、水酸化ナトリウム溶液(50%、8g、0.1mol)を約10分間で温度が32℃以下になるようにしながら滴下する。滴下を終了した後、ゆっくりと100〜105℃の還流温度まで加熱する。反応混合物を、この温度で8時間保持する。生成物を31P、1H、および13C−NMRで特定する。
【0089】
この条件下で、1加水分解生成物のみを検出することができる。
【0090】
本発明の化合物のアルカリ性媒体中での腐食防止剤としての使用
一般的手法
金属の試験片(2cm×5cm、鋼1.0037)を、陰極アルカリ脱脂およびこれに続く電解除錆により処理する。
【0091】
このサンプルを7日間試験溶液中に浸した後、金属試験片の質量損失を測定する。但し、対応する腐食防止剤を上記試験溶液に添加する。比較実験は、同じ金属試験片と腐食防止剤を加えない点を除いて同じ試験溶液とを使用して行う。
【0092】
腐食防止効果は、腐食防止剤を含む試験溶液と含まない試験溶液を使用して試験した金属試験片の質量損失の比較を行って判断する。
【0093】
腐食防止効果(%)=[(ΔMo−ΔM)/(ΔMo)]×100
ΔMo:腐食防止剤を含まない試験溶液を使用した場合の試験片の質量損失
ΔM:腐食防止剤を添加した試験溶液を使用した場合の試験片の質量損失
試験溶液:脱塩水、NaCl0.03mol/L、KOHでpH10に調整
溶液中の腐食防止剤の濃度:それぞれ1質量%。
【0094】
表1は、異なる新規な腐食防止剤における腐食防止効果を示している。比較例として、腐食防止剤を含まない試験溶液および慣用の腐食防止剤であるモノエタノールアミンを添加した試験溶液を使用した実験の結果も示している。
【0095】
【表1】

【0096】
コンクリート中での新規な腐食防止剤の挙動
一般的手法
新規な腐食防止剤の移行挙動を試験するために、長さ75mm、幅20mm、および厚さ4mmのコンクリート板を使用する。薄層クロマトグラフィーと同じように、水に新規な腐食防止剤10質量%を含む試験溶液中にコンクリート板を垂直に配置し、下端部の1cmを溶液中に浸ける。試験溶液の蒸発を防止するために、試験をスナップ式のカバーを備えた適当な大きさのガラスジャーのような密閉容器中で行う。1日後、試験溶液はコンクリート板の上端まで移行している。
【0097】
分析のために1日後にコンクリート板の上方1/3を折り取り、粉砕し、リンの含有量を分析する。未処理のコンクリート板のリン含有量を差し引き、分析値とする。
【0098】
3種の異なる新規な化合物について、上述の実験を行った。結果を表2に示す。表から、本発明の新規な化合物が良好な移行挙動を示すことがわかる。
【0099】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)
【化1】

または、式(B)
【化2】

{式中、nが0〜10の整数を表し、
m+k=2であり、かつ、mが1または2を、kが0または1を表し、
1、R2および場合によりR3のうちの少なくとも1個が、式−[CH2−CHR6−O]l7(式中、lが2〜30の値を表し、R6およびR7がそれぞれHまたはCH3を表す。)で表されるアルコキシを表し、これらの基がアルコキシを表さない場合には、R1およびR2が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、R3が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C20−アルキルまたはアリールを表し、
4がHまたは直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、
5が二価の架橋基を表す。}、
で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル。
【請求項2】
nが0または1を表すことを特徴とする、請求項1に記載のエステル。
【請求項3】
kおよびmがそれぞれ1を表すことを特徴とする、請求項1または2に記載のエステル。
【請求項4】
lが3〜20の値を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエステル。
【請求項5】
6がHを表すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエステル。
【請求項6】
架橋基R5が炭素原子数2〜20個のアルキレン(ただし、隣接していないCH2基がO原子またはNH基で置換されていてもよい)を表すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエステル。
【請求項7】
式(C)
【化3】

または、式(D)
【化4】

{式中、nが0〜10の整数を表し、
m+k=2であり、かつ、mが1または2を、kが0または1を表し、
1および場合によりR3のうちの少なくとも1個が、式−[CH2−CHR6−O]l7(式中、lが2〜30の値を表し、R6およびR7がそれぞれHまたはCH3を表す。)で表わされるアルコキシを表し、これらの基がアルコキシを表さない場合には、R1が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、R3が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C20−アルキルまたはアリールを表し、
4がHまたは直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、
5が二価の架橋基を表し、
Mがアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、およびアンモニウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種のカチオンを表す。}、
で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル塩。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエステルおよび/または請求項7に記載のエステル塩を腐食防止剤として使用する方法。
【請求項9】
前記腐食防止剤がアルカリ性媒体中で使用されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記媒体が水性媒体であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエステルおよび/または請求項7に記載のエステル塩を防炎加工剤として使用する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)
【化1】

または、式(B)
【化2】

で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル、または、
式(C)
【化3】

または、式(D)
【化4】

で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル塩であって、
式(A)(B)(C)(D)中、nが0〜10の整数を表し、
m+k=2であり、かつ、mが1または2を、kが0または1を表し、
1、R2および場合によりR3のうちの少なくとも1個が、式−[CH2−CHR6−O]l7(式中、lが2〜30の値を表し、R6およびR7がそれぞれHまたはCH3を表す。)で表されるアルコキシを表し、これらの基がアルコキシを表さない場合には、R1およびR2が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、R3が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C20−アルキルまたはアリールを表し、
4がHまたは直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、
5が二価の架橋基を表し、
Mがアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、およびアンモニウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種のカチオンを表す、
エステルまたはエステル塩を、腐食防止剤として使用する方法。
【請求項2】
前記腐食防止剤がアルカリ性媒体中で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記媒体が水性媒体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
nが0または1を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
kおよびmがそれぞれ1を表すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
lが3〜20の値を表すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
6がHを表すことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式(C)
【化5】

または、式(D)
【化6】

{式中、nが0〜10の整数を表し、
m+k=2であり、かつ、mが1または2を、kが0または1を表し、
1および場合によりR3のうちの少なくとも1個が、式−[CH2−CHR6−O]l7(式中、lが2〜30の値を表し、R6およびR7がそれぞれHまたはCH3を表す。)で表わされるアルコキシを表し、これらの基がアルコキシを表さない場合には、R1が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、R3が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C20−アルキルまたはアリールを表し、
4がHまたは直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、
5が二価の架橋基を表し、
Mがアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、およびアンモニウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種のカチオンを表す。}、
で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル塩。
【請求項9】
式(A)
【化7】

または、式(B)
【化8】

{式中、nが0〜10の整数を表し、
m+k=2であり、かつ、mが1または2を、kが0または1を表し、
1、R2および場合によりR3のうちの少なくとも1個が、式−[CH2−CHR6−O]lCH3(式中、lが2〜30の値を表し、R6がHまたはCH3を表す。)で表されるアルコキシを表し、これらの基がアルコキシを表さない場合には、R1およびR2が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、R3が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C20−アルキルまたはアリールを表し、
4がHまたは直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、
5が二価の架橋基を表す。}、
で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)
【化1】

または、式(B)
【化2】

で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル、および/または、
式(C)
【化3】

または、式(D)
【化4】

で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル塩であって、
式(A)(B)(C)(D)中、nが0〜10の整数を表し、
m+k=2であり、かつ、mが1または2を、kが0または1を表し、
1、R2および場合によりR3のうちの少なくとも1個が、式−[CH2−CHR6−O]l7(式中、lが2〜30の値を表し、R6およびR7がそれぞれHまたはCH3を表す。)で表されるアルコキシを表し、これらの基がアルコキシを表さない場合には、R1およびR2が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、R3が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C20−アルキルまたはアリールを表し、
4がHまたは直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、
5が二価の架橋基を表し、
Mがアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、およびアンモニウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種のカチオンを表す、
エステルおよび/またはエステル塩を、腐食防止剤として使用する方法。
【請求項2】
前記腐食防止剤がアルカリ性媒体中で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記媒体が水性媒体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
nが0または1を表すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
kおよびmがそれぞれ1を表すことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
lが3〜20の値を表すことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
6がHを表すことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
式(C)
【化5】

または、式(D)
【化6】

{式中、nが0〜10の整数を表し、
m+k=2であり、かつ、mが1または2を、kが0または1を表し、
1および場合によりR3のうちの少なくとも1個が、式−[CH2−CHR6−O]l7(式中、lが2〜30の値を表し、R6およびR7がそれぞれHまたはCH3を表す。)で表わされるアルコキシを表し、これらの基がアルコキシを表さない場合には、R1が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、R3が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C20−アルキルまたはアリールを表し、
4がHまたは直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、
5が二価の架橋基を表し、
Mがアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、およびアンモニウムイオンからなる群から選択された少なくとも1種のカチオンを表す。}、
で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル塩。
【請求項9】
式(A)
【化7】

または、式(B)
【化8】

{式中、nが0〜10の整数を表し、
m+k=2であり、かつ、mが1または2を、kが0または1を表し、
1、R2および場合によりR3のうちの少なくとも1個が、式−[CH2−CHR6−O]lCH3(式中、lが2〜30の値を表し、R6がHまたはCH3を表す。)で表されるアルコキシを表し、これらの基がアルコキシを表さない場合には、R1およびR2が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、R3が直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C20−アルキルまたはアリールを表し、
4がHまたは直鎖状または分枝状の置換または非置換のC1−C6−アルキルを表し、
5が二価の架橋基を表す。}、
で表されるリン−酸素酸のアルコキシ含有エステル。

【公表番号】特表2006−525423(P2006−525423A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505355(P2006−505355)
【出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004648
【国際公開番号】WO2004/099222
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】