説明

リンク駆動式ローリングハッチカバー

【課題】バルクキャリア等貨物船に搭載されるオートクリート付きサイドローリングタイプハッチカバーにおいて、ハッチカバーの風雨密時にハッチカバーに取り付けられたホイールを滑らせて降下する上下方向変位量は通常200mm近く必要であり、油圧カム機構はハッチカバー開放時この高さまで押し上げる必要がある。この油圧カム機構は大掛かりなものとなり、高額になると言う欠点があった。
【解決手段】従来のハッチカバー開閉に使われていたオイルモーターチェーンドライブ駆動方式をリンク機構にする事で、開初期に大きな力を得ることが出来る。この力を利用してリフティング装置を無くしてもレール溝に落ち込んだホイールを簡単に引き上げることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は船舶のハッチカバーに関するもの。
【背景技術】
従来、開閉用に油圧カム機構を備えたサイドローリングタイプでは、通常水平直線状のコーミングと称する枠及びハッチカバー開閉の際の移動用に、水平直線状のレールが設けられている。又開放及び閉鎖時に、ハッチカバーに取り付けられたホイールを斜め下方に滑らせて、ハッチカバーに取り付けられた密閉用スポンジラバーとコーミング側の突起プレート(これをコンプレッションバーと称する)を圧接状態にし、最終的に油圧カム機構で両側のハッチカバーに設けられたスポンジラバーとコンプレッションバーを圧接し風雨密状態にしている。
又開閉時、カバーはコーミングに沿って張られたチェーンに連結され、油圧モーターにより開閉されている。
【発明が解決しようとする課題】
ハッチカバーに取り付けられたホイールを斜め下方に滑らせ降下する上下変位量は、通常200mm近くが必要で、油圧カム機構は開放時この高さに押し上げる必要がある。しかしハッチカバーの大型化に伴い、この油圧カム機構は大掛かりな構造となっている。又コーミングに沿って張られたチェーンと油圧モーターも大きくなり高額となっている。さらにチェーンは伸び易く、その都度調整が必要である。
【課題を解決する為の手段】
請求項1では、油圧モーターとコーミングに沿って張られたチェーンを、コーミングに沿って直線状に設置され、ハッチカバー開放初期に大きな力が得られるリンク機構にする事で、レールの溝に落ち込んでいるホイールを容易に引き上げることが出来る。従って請求項2で言うリフティング装置が不要となる。又チェーンが無いので、伸びの調整がいらなくなる。さらに開放動作に関わる油圧カム機構が不要となる。請求項3では、ハッチカバー搭載初期のリンク機構は未調整となっており左右舷カバーのずれが生ずる。リンク機構とカバー接合部に長さ調整装置を設ける事で、ずれを修正する事が出来る。
請求項4では、請求項2でリフティング装置を無くし、レールに溝を設けた事で、船体中心側と船側ホイール用にレールが2本必要になるが、船体中心側ホイールにツバを設け、船側ホイール用溝脇にガイドピースを設ける事で、船体中心側ホイールがその部分を通過出来、又レールを1本に出来る。
【作用・考課】
請求項1及び2により、パネル開寸前にリンク機構で発生した大きな力を利用し、ホイールを溝から引き上げることが出来る。最近のハッチカバーは大型化し、油圧モーターとチェーンも大きくなり、費用が多大となっている。
本リンク機構に依れば、オイルモーター、チェーン及びジャッキアップ装置が不用となり、経済的になる。
請求項3に依れば、従来のオイルモーターチェーンドライブの場合、チェーンの伸びを取る為、パネルとの接合部にリギングスクリューを設け取っているが、リギングスクリューの調整可能範囲を超える伸びが出た場合にはチェーンを切断し、長さを短くする必要がある。この場合多大な時間と費用が必要になる。本リンク機構では伸びが無く、初期調整のみで長年使用できる。
請求項4に依れば、請求項1及び2に依り、ジャッキアップ機構が無くなり、船体中心側と船側ホイール用にレールが2本必要になるが、船体中心側ホイールにツバを設け、船側ホイール用の溝脇にライナーを設ける事で、船体中心側ホイールがその部分を通過出来るようになり、レールを1本にする事が出来る。
これに依りコーミングの幅が狭くなり、又材料の節約となる。
【発明の実施形態】
請求項1によれば、2パネルサイドローリングの場合、各パネル10,11の船首船尾に1つづつ計4セット。1パネルサイド又は1パネルエンドローリングの場合、合計2セット設けることになる。以下2パネルサイドローリングについて説明する。リンク1,2はリンク中央付近でそれぞれがヒンジ3で連結される。
又リンク1,2はカバー閉鎖時に直線になるようにコーミング4上又は甲板5上の取り付け台6に取り付けられる。リンク2の1端には請求項3の長さ調整装置7を介しカバーに連結され、他端はリンク1に連結される。
リンク1は駆動装置8で上下に回転する。船首船尾の駆動装置8は同期装置に依り連動するものとする。これに依り左右舷のパネル10,11は船の中心線9に対し平行に移動する事が出来る。駆動装置8が伸縮する事によりリンク1,2はへの字に折れ、それと同時に左右舷のパネル10,11は開閉する。駆動装置8が完全に伸びるとデッキ側リンク1はほぼ180度回転し、リンク1,2はクの字になりパネルは全開する。
請求項2によれば、左右舷パネル10,11の船首船尾に2つのホイール12,13が設けられ、パネル全閉の際、各ホイール12,13はレール14に設けられた溝15に落ち込み、それと同時にパネル四周とミーティング部に設けられたスポンジラバー16,18はコーミング4上及びパネル間に取り付けられたコンプレッションバー17,19で圧縮され風雨密になる。一方、パネルが開く寸前のリンクは直線となっているが、駆動装置8が伸びるとリンク1,2はへの字に折れ曲がり始める。この時リンク1,2の軸方向には無限大に近い力が発生する。この力を利用してレール14の溝に落ち込んでいるホイール12,13を引き上げ、同時に左右舷のパネル10,11を開く事が出来る。ホイール12,13が溝15から完全に上がるとホイールは平らなレール14上を走行するので、駆動装置の駆動力は比較的に小さくて済む。
請求項3によれば、左右舷パネル10,11間のどちらか一方に風雨密用スポンジラバー18、他方にコンプレッションバー19が取り付けられ、左右のパネルが閉鎖されると同時に水平に圧縮される。
しかし、パネル10,11をコーミング4に搭載する際とか、リンク1,2をパネル10,11と取り付け台6に連結する際、各連結部に取り付け誤差が生じ、パネル10,11間の風雨密が完全にならない事が考えられる。この誤差を調整する為、リンク2とパネル10,11接合部に長さ調整装置7を設け、そのボルト20とナット21を回す事により長さ調整可能とするもの。
請求項4によれば、船の中心側ホイール13が船側ホイール12の溝15を通過する際、溝に落ちないようにフランジ22を設け、又船側溝15の横にライナー23を設け、船の中心側ホイール13のフランジ22がライナー23上を走行し溝を通過可能にしたもの。
船側ホイール12はレール14内側にフランジ24を設け、パネル開閉時の蛇行を防止する役目を持たせる。
【図面の簡単な説明】
第1図は上記実施例の説明図を示す。
第2図は上記実施例の油圧カム機構を説明した図で、特開昭58−55392.
1:リンク 11:パネル
2:リンク 12:ホイール
3:ヒンジ 13:ホイール
4:コーミング 14:レール
5:甲板 15:溝
6:取り付け台 18:スポンジラバー
7:長さ調整装置 19:コンプレッションバー
8:駆動装置 20:ボルト
9:船の中心線 21:ナット
10:パネル 22:フランジ
23:ライナー
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルクキャリア等貨物船のハッチカバーのうち、船体中心線を境に両舷方向に移動開閉する2パネルサイドローリングタイプ、船体中心を跨いだ1パネルサイドローリングタイプ及び船の船首船尾方向に1パネル又は2パネルで開閉するエンドローリングタイプハッチカバーで、開閉にリンク機構を設けたことを特徴とするハッチカバー。
【請求項2】
上記請求項1のハッチカバーで、リフティング装置を無くし、上記リンク機構のみで開閉とリフティングを行う事を特徴とするハッチカバー。
【請求項3】
上記請求項1のハッチカバーで、リンク機構のハッチカバー接続部に長さを調整する為の長さ調整装置を設けた事を特徴とするハッチカバー。
【請求項4】
上記請求項1のハッチカバーで、走行ホイール用レールを1本にし、船体中心側走行ホイールの外側(又は内側)にフランジを設け、船側ホイール用に設けられたレールの溝を通過出来るようにした事を特徴とするハッチカバー。

【公開番号】特開2008−68852(P2008−68852A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281955(P2006−281955)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(506347827)