説明

リン酸ジエステル塩の製造方法

【課題】実質的に不純物を含まないリン酸ジエステル塩を高収率かつ高純度で得られる製造方法を提供する。
【解決手段】式(1):(R−O)(R−O)(R−O)P=Oで表されるリン酸トリエステル(A)[式(1)中、R〜Rは同一でも異なっていても良い炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R〜Rのうち2つ以上の基が互いに結合して環構造を形成していても良い。]と式(2):(R4)(R5)NHで表される2級アミン(B)[式(2)中、R〜Rは同一でも異なっていても良い炭素数1〜20の炭化水素基を表す。RとRは互いに結合して環構造を形成していてもよい。]とを水の不存在下で反応させることを特徴とするリン酸ジエステル塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸ジエステル塩の製造方法に関する。さらに詳しくは、リン酸やリン酸モノエステル、リン酸トリエステルといった有機不純物やナトリウムイオンや塩化物イオン等イオン不純物を含まない高純度のリン酸ジエステル塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸ジエステル塩の一般的な製造方法は、リン酸ジエステルを塩基(アミン等)で中和させるか、あるいはリン酸ジエステル塩をカチオン交換させることにより目的の塩を得る方法である。これらの方法により得られる塩を、例えばアルミ電解コンデンサ用電解液の電解質として用いることができる。
ところで、リン酸ジエステルの製造方法としてはアルコールと、オキシ塩化リン等ハロゲン化リンや五酸化二リン、ポリリン酸等とを反応させて製造する方法が一般的に知られている。コンデンサのみならず特に電子材料用途においては有機不純物・イオン不純物を避けるため、使用される原料についても高純度のものが望まれている。この方法では主にリン酸モノエステルとリン酸ジエステルとの混合物となってしまうため、リン酸ジエステルの高純度化に向け種々の方法が開発されている。
【0003】
たとえば特開2004−269421号では、リン酸トリエステルをリン酸ジエステル存在下、無機塩基水溶液で加水分解し、対応するリン酸ジエステルを得る方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−269421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では無機塩基を使用するためナトリウムやカリウムのような金属イオンが混入する恐れがあり、また製造中に水を使用するため少量のリン酸モノエステルおよびリン酸を生じるという問題点がある。
【0006】
そこで、実質的に不純物を含まないリン酸ジエステル塩を高収率かつ高純度で得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、一般式(1)で表されるリン酸トリエステル(A)と一般式(2)で表される2級アミン(B)とを水の不存在下で反応させることを特徴とするリン酸ジエステル塩の製造方法である。
【0008】
【化1】

[式(1)中、R〜Rは同一でも異なっていても良い炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R〜Rのうち2つ以上の基が互いに結合して環構造を形成していても良い。]
【0009】
【化2】

[式(2)中、R〜Rは同一でも異なっていても良い炭素数1〜20の炭化水素基を表す。RとRは互いに結合して環構造を形成していてもよい。]
【発明の効果】
【0010】
本発明は無機塩基を使用せずにリン酸ジエステル塩を製造できるためナトリウムやカリウムのような金属イオンが混入する恐れがなく、また製造中に水を使用しないため加水分解による少量のリン酸モノエステルおよびリン酸を生じることがない。したがって実質的に不純物を含まないリン酸ジエステル塩を高収率かつ高純度で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のリン酸ジエステル塩の製造方法は、一般式(1)で表されるリン酸トリエステル(A)と一般式(2)で表される2級アミン(B)とを水の不存在下で反応させる製造方法であり、ナトリウムやカリウムのような金属イオン、加水分解による少量のリン酸モノエステルおよびリン酸を生じることがなく、実質的に不純物を含まない。
ここでリン酸ジエステル塩とは、リン酸ジエステルアニオンとアンモニウムカチオンの塩をさすものとする。
【0012】
ここで「水の不存在下」とは加水分解その他の反応を促進する目的で意図的に水を添加しないということであり、原料や溶媒等含まれる微量水が存在していても差し支えない。
加水分解などの副反応を考慮し、反応に使用する原料の水分は0.5重量%以下であることが好ましい。
【0013】
本発明におけるリン酸トリエステル(A)は、下記一般式(1)で表される。
【0014】
【化1】

【0015】
式(1)中、R〜Rは同一でも異なっていても良い炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R〜Rのうち2つ以上の基が互いに結合して環構造を形成していても良い。
【0016】
式(1)中R〜Rにおいて同一でも異なっていても良い炭素数1〜20の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、酸素原子、又は硫黄原子を含有していてもよい芳香族炭化水素基が挙げられ、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの分岐アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロブチルなどの環状アルキル基等が挙げられる。反応性の観点から好ましいのは炭素数1〜10、さらに好ましいのは炭素数1〜8、最も好ましいのは炭素数1〜6の1位が無置換であるアルキル基である。
【0017】
アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル等が挙げられる。反応性の観点から好ましいのは炭素数2〜10、さらに好ましいのは炭素数2〜8、最も好ましいのは二重結合位置が1位でない炭素数3〜6のものである。
【0018】
アルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル等が挙げられる。反応性の観点から好ましいのは炭素数2〜10、さらに好ましいのは炭素数2〜8、最も好ましいのは三重結合位置が1位でない炭素数2〜6のものである。
【0019】
酸素原子、又は硫黄原子を含有していてもよい芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、ナフチル、アントラセニル等のほか、フラニル、チエニル等複素環芳香族化合物基も挙げられる。
【0020】
式(1)中R〜Rのうち2つ以上の基が互いに結合して環構造を形成してもよく、2つの基が互いに結合してなる基の具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどの直鎖アルキレン基、1−メチルエチレン、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレンなどの分岐アルキレン基、1,3−シクロペンチレン、1,4−シクロヘキシレン、1,2−シクロヘキシレンなどの環状アルキレン基等が挙げられる。
【0021】
式(1)中、R〜Rは工業的入手のし易さの観点から、すべて同一であることが好ましい。
【0022】
〜Rの好ましい具体例としては、トリメチルホスファート、トリエチルホスファート、トリ(n−プロピル)ホスファート、トリイソプロピルホスファート、トリ(n−ブチル)ホスファート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファート、トリ(n−ブトキシエチル)ホスファート、トリベンジルホスファート、トリアリルホスファート、トリフェニルホスファート、トリナフチルホスファート、エチレン−モノメチルホスファート、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン−モノエチルホスファート、(2,2'−ビフェニレン−モノエチルホスファート、1,1'−ビナフチル−2,2'−ジイル−モノエチルホスファート等が挙げられる。
【0023】
さらに好ましいのはトリメチルホスファート、トリエチルホスファート、トリ(n−プロピル)ホスファート、トリイソプロピルホスファート、トリ(n−ブチル)ホスファート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファート、トリ(n−ブトキシエチル)ホスファートであり、最も好ましいのは、トリメチルホスファート、トリエチルホスファート、トリ(n−プロピル)ホスファート、トリ(n−ブチル)ホスファートである。
【0024】
本発明における2級アミン(B)としては、下記一般式(2)で表される。
【0025】
【化2】

【0026】
式(2)中、R〜Rは同一でも異なっていても良い炭素数1〜20の炭化水素基を表す。RとRは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0027】
式(2)中同一でも異なっていても良い炭素数1〜20の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、酸素原子、又は硫黄原子を含有していてもよい芳香族炭化水素芳香族炭化水素基が挙げられ、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの分岐アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルなどの環状アルキル基等が挙げられる。反応性の観点から好ましいのは炭素数1〜10、さらに好ましいのは炭素数1〜8、最も好ましいのは炭素数1〜8の1位が無置換であるアルキル基である。
【0028】
アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル等が挙げられる。反応性の観点から好ましいのは炭素数2〜10、さらに好ましいのは炭素数2〜8のものである。
【0029】
アルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル等が挙げられる。反応性の観点から好ましいのは炭素数2〜10、さらに好ましいのは炭素数2〜8のものである。
【0030】
酸素原子、又は硫黄原子を含有していてもよい芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、ナフチル、アントラセニル等のほか、フラニル、チエニル等複素環芳香族化合物基も挙げられる。
【0031】
式(2)中、R〜Rは互いに結合して環構造を形成してもよくその具体例としては、エチレン、プロピレン、ブチレンなどの直鎖アルキレン基、1−メチルエチレン、1,1−ジメチルエチレン、1,2−ジメチルエチレンなどの分岐アルキレン基、1,3−シクロペンチレン、1,4−シクロヘキシレン、1,2−シクロヘキシレンなどの環状アルキレン基等が挙げられる。
【0032】
〜Rの好ましい具体例としてはジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、イソプロピルメチルアミン、ジアリルアミン、アリルエチルアミン、ジベンジルアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメチルアミン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチルピペラジン、モルホリン、N−メチルアニリン、メチルナフチルアミン等が挙げられる。
【0033】
さらに好ましいのは、反応性の観点からジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、N−メチルエタノールアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリンである。
【0034】
リン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)の反応温度は60℃〜200℃が好ましく、80℃〜150℃がより好ましい。60℃以上では反応が速く効率的であり、通常リン酸トリエステルは200℃以下で安定である。
【0035】
リン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)の反応は必要に応じて溶媒を使用しても良い。溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ペンタン、ヘキサン、シクロへキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジンなどの3級アミン、ニトロメタン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。
【0036】
リン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)の反応比率はモル比で(B)/(A)=10/1〜1/1であり、より好ましくは5/1〜1/1である。
(B)/(A)が10以下では反応が効率的であり、(B)/(A)が1以上では反応時間が長くならず、また余剰のリン酸トリエステルの除去が容易となり純度が向上する。
【0037】
本発明の製造方法によれば、目的に応じリン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)の反応比率を変えることで作り分けが可能である。
【0038】
リン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)の反応比率をモル比(B)/(A)=1/1とした場合、下記一般式(3)で表されるリン酸ジエステル塩(C)を合成できる。
【0039】
【化3】

【0040】
式(3)中R〜Rは一般式(1)ならびに一般式(2)で説明したとおりである。
【0041】
(A)と(B)の反応モル比率(B)/(A)が2以上の場合下記一般式(4)で表されるリン酸ジエステル塩(D)を合成できる。
【0042】
【化4】

【0043】
式(4)中R〜Rは一般式(1)ならびに一般式(2)で説明したとおりである。
なお、(A)と(B)の反応モル比率(B)/(A)が1より大きく2より小さい場合、塩(C)と塩(D)の混合物となる。(C)と(D)の生成モル比率は、(B)/(A)がxのとき、(C):(D)=(x−1):(2−x)となると考えられる。
【0044】
本発明の製造方法によれば、リン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)の反応により得られるリン酸ジエステル塩に対し、2級アミン(B)のpKaより大きな値を有するアミン(E)を反応させることにより一般式(5)で表されるリン酸ジエステル塩(F)を製造することができる。
【0045】
【化5】

【0046】
式(5)中、R〜Rは一般式(1)と同じである。
【0047】
ここで、pKaについて説明する。pKaとは酸解離定数の逆数の対数値を表し、数値が小さい程プロトンを放出しやすい物質すなわち強酸であるといえる。アミン等の塩基については、その共役酸のpKa値の大小によりその塩基性を比べることができる。共役酸のpKaが大きい程プロトンを放出し難い、つまり塩基性が強いということになる。
【0048】
pKaについては種々の文献に掲載されており、引用できる。たとえば「化学便覧基礎編II(日本化学会編)」が参考になる。またpKaに限らず化合物同士の酸(塩基)の強さを比較できるものであればpKa値に替えて引用できる。例えば「Journal of Synthetic Organic chemistry,Japan2005,vol.63,No.25,Yoshinori Kondo(35〜45頁)」では化合物の塩基性の序列についてpKa値に替えてpKBH値を示している。
【0049】
アミン(E)は2級アミン(B)のpKaより大きな値を有するものであれば特に制限なく使用できる。通常のアミンの他、アミジン化合物、グアニジン化合物といった有機超強塩基と呼ばれる化合物も好適に使用できる。ここで有機超強塩基とは、一般的にpKa値として12以上を示す化合物であり、具体例としては1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−5−デセン、N−t−ブチル−リン酸イミド=ヘキサメチルトリアミド、2,8,9−トリイソブチル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカン等が挙げられる。
【0050】
2級アミン(B)とアミン(E)の組合せ例としては、ジエチルアミン(pKa:10.9)と1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(pKa:12.7)、ピペリジン(pKa:11.1)と1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(pKa:12.5)、モルホリン(pKa:8.5)と−トリエチルアミン(pKa:10.7)、ジエタノールアミン(pKa:8.9)とn−ブチルアミン(pKa:10.6)等が例示できる。
【0051】
リン酸ジエステル塩(E)を得る反応は必要に応じて溶媒を使用しても良い。溶媒としてはリン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)の反応で例示したものが好適に用いられる。また用いるアミン(D)のモル比はリン酸ジエステル塩(C)に対し1〜5モルが好ましい。
【0052】
本発明の製造方法によれば、リン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)の反応により得られるリン酸ジエステル塩に対し、下記一般式(6)で表されるアンモニウム塩(G)をさらに反応させることにより、一般式(7)で表されるリン酸ジエステル塩(H)を製造することができる。
【0053】
【化6】

【0054】
式(6)中、R〜Rは同一でも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基であり、R〜Rのうち2つ上の基が互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは陰イオンを示す。
【0055】
【化7】

【0056】
式(7)中、R〜Rは一般式(1)で、R〜Rは一般式(6)で説明したとおりである。
【0057】
式(6)中R〜Rにおける炭素数1〜20の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、酸素原子、又は硫黄原子を含有していてもよい芳香族炭化水素芳香族炭化水素基が挙げられ、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの分岐アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロブチルなどの環状アルキル基等が挙げられる。
【0058】
アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル等が挙げられ、アルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル等が挙げられる。
【0059】
酸素原子、又は硫黄原子を含有していてもよい芳香族炭化水素芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、ナフチル、アントラセニル等のほか、フラニル、チエニル等複素環芳香族化合物基も挙げられる。
【0060】
式(6)中R〜Rのうち2つ以上の基が互いに結合して環構造を形成してもよく、2つの基が互いに結合してなる基の具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどの直鎖アルキレン基、1−メチルエチレン、1,1−ジメチルエチレン、1,2−ジメチルエチレンなどの分岐アルキレン基、1,3−シクロペンチレン、1,4−シクロヘキシレン、1,2−シクロヘキシレンなどの環状アルキレン基等が挙げられる。
【0061】
3つの基が互いに結合してなる基の具体例としては、プロパン−1,2,3−トリイル、3−(エチル−2−イル)ペンタン−1,5−ジイル、3,3−ビス(エチル−2−イル)ペンタン−1−イル等が挙げられ、4つの基が互いに結合してなる基の具体例としては、4−(プロピル−3−イル)ヘプタン−1,4,7−トリイル等が挙げられる。
【0062】
式(6)中好ましいアンモニウムカチオンの具体例としては、n−プロピルアンモニウム、n−ブチルアンモニウム、シクロへキシルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、トリアリルメチルアンモニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、ジメチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、ジメチルモルホリニウム、1−メチル−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタニウム、1−メチル−1−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニウム、7、7−ジメチル−7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニウム、5−アゾニアスピロ[4.4]ノナン、5−アゾニアスピロ[4.5]デカン、1−メチル−1−アゾニアビシクロ[3.3.0]オクタン、1−アゾニアトリシクロ[3.3.3.0]ウンデカン等が挙げられる。
【0063】
式(6)中Xは陰イオンを表し、対応する酸XHのpKaがリン酸ジエステル塩(G)の対アニオン[PO(OR)(OR)]に対応する酸HOP(O)(OR)(OR)より大きなpKaを有するものである。ここでpKaは上記ですでに説明したとおりである。
【0064】
上記のような陰イオンXとしては、モノ置換炭酸アニオン、無置換炭酸ジアニオン、リン酸ジエステルアニオン、リン酸モノエステルアニオン、リン酸アニオン、カルボン酸アニオン、フェノラートアニオン、チオフェノラートアニオン、チオシアナートアニオン等が挙げられ、好ましい具体例としては、モノメチル炭酸アニオン、モノエチル炭酸アニオン、炭酸アニオン、リン酸アニオン、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、サリチル酸等のカルボン酸アニオンであり、反応性の観点でモノメチル炭酸アニオン、モノエチル炭酸アニオン、炭酸アニオンがより好ましい。
【0065】
リン酸ジエステル塩(H)を得る反応は必要に応じて溶媒を使用しても良い。溶媒としてはリン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)の反応で例示したものが好適に用いられる。また用いるアンモニウム塩(G)のモル比はリン酸ジエステル塩(C)に対し1〜2モルが好ましく、1〜1.1モルがさらに好ましい。
【0066】
本発明の製造方法によれば、リン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)の反応により得られるリン酸ジエステル塩に対し、下記一般式(8)で表されるアミジニウム塩(J)をさらに反応させることにより、一般式(9)で表されるリン酸ジエステル塩(K)を製造することができる。
【0067】
【化8】

【0068】
式(8)中、R10〜R13は同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭化水素基であり、14は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基であり、R10〜R14のうち2つ上の基が互いに結合して環構造を形成していてもよく、RXは陰イオンを表す。
【0069】
【化9】

【0070】
式(9)中、R〜Rは一般式(1)と同じであり、R10〜R14は一般式(8)と同じである。
【0071】
式(8)中R10〜R14における炭素数1〜20の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、酸素原子、又は硫黄原子を含有していてもよい芳香族炭化水素基が挙げられ、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの分岐アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロブチルなどの環状アルキル基等が挙げられる。
【0072】
アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル等が挙げられ、アルキニル基としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル等が挙げられる。
【0073】
酸素原子、又は硫黄原子を含有していてもよい芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、ナフチル、アントラセニル等のほか、フラニル、チエニル等複素環芳香族化合物基も挙げられる。
【0074】
式(8)中R10〜R14のうち2つ以上の基が互いに結合して環構造を形成してもよく、2つの基が互いに結合してなる基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの直鎖アルキレン基、1−メチルエチレン基、1,1−ジメチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基などの分岐アルキレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,2−シクロヘキシレン基などの環状アルキレン基等が挙げられる。
【0075】
3つの基が互いに結合してなる基の具体例としては、プロパン−1,2,3−トリイル、3−(エチル−2−イル)ペンタン−1,5−ジイル、3,3−ビス(エチル−2−イル)ペンタン−1−イル等が挙げられる。
【0076】
式(8)中好ましいアンモニウムカチオンの具体例としては、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウム、5−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、2,3−ジメチル−1,3−ジアザビシクロ[4.2.1]−2−ノネニウム、2,3−ジメチル−1,3−ジアザビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテニウム等が挙げられる。
【0077】
式(8)中Xは陰イオンを表し、対応する酸XHのpKaがリン酸ジエステル塩(J)の対アニオン[PO(OR)(OR)]に対応する酸HOP(O)(OR)(OR)より大きなpKaを有するものである。ここでpKaは上記ですでに説明したとおりであり、陰イオンXの具体例としては上記で示したとおりである。
【0078】
本発明で得られるリン酸ジエステル塩は実質的に不純物を含まない高純度なものであるので、有機不純物・イオン不純物混入を嫌う電子材料用途に好適に使用される。例えば、アルミ電解コンデンサ、電気二重層キャパシター、Liイオン電池を始めとする各種電池 に添加される電解質として用いることができる。該リン酸ジエステル塩はアルミ電解コンデンサ用電解液に特に有用である。
【0079】
該アルミ電解コンデンサ用電解液は、本発明で得られるリン酸ジエステル塩を有機溶媒に溶解させて製造され、必要に応じ従来アルミ電解コンデンサ用電解液に用いられる電解質を併用し、また種々の添加剤を添加することもできる。
【0080】
有機溶媒としては、特に制限なくアルミ電解コンデンサに用いられるものを好適に使用できる。
【0081】
具体例としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール等アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等エーテル類、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等アミド類、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン等ラクトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル等ニトリル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等カーボネート類、スルホラン、ジメチルスルホン等スルホン類などが挙げられ、有機溶媒は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
本発明で得られるリン酸ジエステル塩の含有量は、比電導度の観点からと有機溶媒への観点から、電解質および有機溶媒の重量に基づいて、好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。
【実施例】
【0083】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0084】
製造例1
1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムメチルカーボネートメタノール溶液の製造方法
攪拌機付き耐圧容器中に、ジメチルカーボネート(東京化成製)180部、メタノール63部を仕込み、そこへ2,4−ジメチルイミダゾリン98部を滴下し120℃にて15時間攪拌させることにより1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムメチルカーボネート(J−1)のメタノール溶液を得た。
【0085】
実施例1
1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムジエチルホスファート(K−1)の合成
攪拌機付き耐圧容器中に、リン酸トリエチル(日本合成化学製)(A−1)162部(0.89モル)、ジエチルアミン(BASF社製)(B−1)130部(1.78モル)を仕込み、125℃まで温度上昇させた。このまま30時間攪拌下反応させた。冷却し、反応液のP−NMRを測定したところリン酸トリエチルのピークが消失し、リン酸ジエチルのピークのみが現れた。この反応液に1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムメチルカーボネート(J−1)のメタノール溶液260部(0.9モル)を加え塩交換を行った。この溶液をロータリーエバポレーターを用いて100℃にて減圧下濃縮したところ黄褐色固体を得た。H−NMR、P−NMRによりこの黄褐色固体が1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムジエチルホスファート(K−1)であることを確認した。
【0086】
実施例2 ジエチルアンモニウムジエチルホスファート(C−1)の合成
攪拌機付き耐圧容器中に、リン酸トリエチル(日本合成化学製)(A−1)162部(0.89モル)、ジエチルアミン(BASF製)(B−1)130部(1.78モル)を仕込み、125℃まで温度上昇させた。このまま30時間攪拌下反応させた。冷却し、反応液のP−NMRを測定したところリン酸トリエチルのピークが消失し、リン酸ジエチルのピークのみが現れた。反応液をロータリーエバポレーターを用いて100℃にて減圧下濃縮したところ褐色液体を得た。H−NMR、P−NMRによりこの褐色液体がジエチルアンモニウムジエチルホスファート(C−1)であることを確認した。
【0087】
実施例3 トリエチルアンモニウムジエチルホスファート(D−1)の合成
実施例2において、ジエチルアミン(BASF製)130部を65部(0.89モル)とした以外は、実施例2と同様な操作を行い、黄褐色液体を得た。H−NMR、P−NMRによりこの黄褐色固体がトリエチルアンモニウムジエチルホスファート(C−2)であることを確認した。
【0088】
実施例4 1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウムジエチルホスファート(F−1)の合成
実施例1において、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムメチルカーボネート塩メタノール溶液260部を1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(サンアプロ製)(E−1)112部(0.9モル)とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、黄褐色液体を得た。H−NMR、P−NMRによりこの黄褐色固体が1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネニウムジエチルホスファート(F−1)であることを確認した。
【0089】
実施例5 ピロリジニウムジエチルホスファート(C−2)の合成
実施例2において、ジエチルアミン(BASF製)130部をピロリジン(東京化成製)(B−2)127部(1.78モル)とした以外は、実施例2と同様な操作を行い、黄褐色液体を得た。H−NMR、P−NMRによりこの黄褐色固体がピロリジニウムジエチルホスファート(C−2)であることを確認した。
【0090】
実施例6 1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムジブチルホスファート(K−2)の合成
実施例1において、リン酸トリエチル(日本合成化学製)162部をリン酸トリブチル(アルドリッチ製)(A−2)266部(0.89モル)とし、反応時間を30時間から70時間に変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、黄褐色液体を得た。H−NMR、P−NMRによりこの黄褐色固体が1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムジブチルホスファート(K−2)であることを確認した。
【0091】
製造例2
エチルトリメチルアンモニウムメチルカーボネートメタノール溶液の製造方法
攪拌機付き耐圧容器中に、ジメチルカーボネート(東京化成製)100部、メタノール100部を仕込み、そこへジメチルエチルアミン(東京化成製)73部を滴下し120℃にて8時間攪拌させることによりエチルトリメチルアンモニウムメチルカーボネート(G−1)のメタノール溶液を得た。
【0092】
実施例7 エチルトリメチルアンモニウムジエチルホスファート(H−1)の合成
実施例1において、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムメチルカーボネート塩メタノール溶液260部をエチルトリメチルアンモニウムメチルカーボネート塩メタノール溶液(G−1)250部(0.9モル)とした以外は、実施例1と同様な操作を行い、黄褐色液体を得た。H−NMR、P−NMRによりこの黄褐色固体がエチルトリメチルアンモニウムジエチルホスファート(H−1)であることを確認した。
【0093】
比較製造例 リン酸ジエチルの合成
攪拌機、還流管つき4つ口フラスコに、リン酸トリエチル(日本合成化学製)180部、30%水酸化ナトリウム水溶液142部、リン酸ジエチル(東京化成製)5.4部を仕込み、1時間かけて80℃まで昇温させた。さらに100℃にて3時間攪拌した。反応液を60℃まで冷却し、36.6%硫酸水溶液151部を加え、60℃にて1時間攪拌し、静置後水相を除去した。有機相を水洗後、エバポレーターにより濃縮することで透明な液体を得た。
【0094】
比較例1 1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムジエチルホスファート(a−1)の合成
比較製造例で製造したリン酸ジエチル137部に1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムメチルカーボネート塩メタノール溶液260部を加え塩交換を行った。この溶液をロータリーエバポレーターを用いて100℃にて減圧下濃縮したところ黄褐色固体を得た。H−NMR、P−NMRによりこの黄褐色固体が1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムジエチルホスファート(a−1)であることを確認した。
【0095】
実施例1〜7で作成した本発明のリン酸ジエステル塩(K−1)、(C−1),(D−1)、(F−1)、(C−2)、(K−2)、(H−1)および比較例1で作成した比較のためのリン酸ジエステル塩(a−1)について、リン酸含有量、リン酸モノエステル含有量、アルカリ金属含有量および硫酸イオン含有量を以下に示す方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0096】
NMR測定:日本電子製AL−300型超伝導核磁気共鳴測定装置にて測定した。P−NMRでは以下の方法でサンプル調整を行った。
サンプル調整:5mm径のNMR管に、サンプル30mg、重水素化メタノール0.3mL、トリエチルアミン0.1mLを加えた。
リン酸ジエステルの化学シフト:−2〜−3PPM、5重線
【0097】
アニオン中のリン酸モノエステル含有量:P−NMR測定にてアニオン中のリン酸モノエステル含有量を測定した。リン酸ジエステルとの積分比により同定した。検出限界は0.1モル%以下である。
リン酸モノエステルの化学シフト3〜0PPM付近、3重線
【0098】
アニオン中のリン酸アニオン含有量:P−NMR測定にてアニオン中のリン酸アニオン含有量を測定した。リン酸ジエステルとの積分比により同定した。検出限界は0.1モル%以下である。
リン酸アニオンの化学シフト0PPM付近、1重線
【0099】
アルカリ金属含有量:原子吸光分光光度計(島津製作所製AA−6700F)を用い、フレームレス原子吸光分析法にてアルカリ金属含有量を測定した。測定はリン酸ジエステル塩1.0部をメタノール(微量金属分析用試薬)にて10mLに溶解したもので行った。検出限界は0.1ppm以下である。
【0100】
硫酸イオン含有量:硫酸比濁法:JISK−1527に基づき硫酸イオン含有量を測定した。検出限界は1ppm以下である。
【0101】
【表1】

【0102】
表1で明らかなように、本発明によれば製造過程で金属塩や水を使用しないので、イオン不純物の混入や加水分解による不純物の混入がほとんどないので各種リン酸ジエステル塩を高収率かつ高純度で得られる。
【0103】
実施例1〜7で作成した本発明のリン酸ジエステル塩(K−1)、(C−1),(D−1)、(F−1)、(C−2)、(K−2)、(H−1)および比較例1で作成した比較のためのリン酸ジエステル塩(a−1)を用いて電解液を作成し、以下の方法で比電導度、火花電圧の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0104】
電解液作成方法:25部のリン酸ジエステル塩を75部のγ−ブチロラクトン(三菱化学製)に溶解させ、電解液を得た。
【0105】
比電導度:東亜電波工業株式会社製電導度計CM−40Sを用い、30℃での比電導度を測定した。
【0106】
火花電圧:陽極に10cm2の高圧用化成エッチングアルミニウム箔、陰極に10cm2のプレーンなアルミニウム箔を用い、25℃にて定電流法(2mA)を負荷したときの電解液の放電電圧を測定した。
【0107】
【表2】

【0108】
表2で明らかなように、実施例1〜7においては、イオン不純物由来と思われる箔の腐食による変色が見られなかった。また、本発明の製造方法で得た1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムジエチルホスファート(実施例1)を使用した電解液と、従来の製造方法で得た1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムジエチルホスファート(比較例1)を使用した電解液の比電導度、火花電圧は同程度の値が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の製造方法で得られるリン酸ジエステルは、実質的に不純物を含まないため、コンデンサをはじめとする電解液用電解質として有用である。また、電池用添加剤等電気電子用途においても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるリン酸トリエステル(A)と一般式(2)で表される2級アミン(B)とを水の不存在下で反応させることを特徴とするリン酸ジエステル塩の製造方法。
【化1】

[式(1)中、R〜Rは同一でも異なっていても良い炭素数1〜20の炭化水素基を表し、R〜Rのうち2つ以上の基が互いに結合して環構造を形成していても良
い。]
【化2】

[式(2)中、R〜Rは同一でも異なっていても良い炭素数1〜20の炭化水素基を表す。RとRは互いに結合して環構造を形成していてもよい。]
【請求項2】
リン酸トリエステル(A)1モルと、2級アミン(B)1モルを反応させて、一般式(3)で表されるリン酸ジエステル塩(C)を得る請求項1に記載のリン酸ジエステル塩の製造方法。
【化3】

[式(3)中、R〜Rは一般式(1)と同じであり、R〜Rは一般式(2)と同じである。]
【請求項3】
リン酸トリエステル(A)1モルと、2級アミン(B)2モル又は2モル以上を反応させて、一般式(4)で表されるリン酸ジエステル塩(D)を得る請求項1に記載のリン酸ジエステル塩の製造方法。
【化4】

[式(4)中、R〜Rは一般式(1)と同じであり、R〜Rは一般式(2)と同じである。]
【請求項4】
リン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)とを水の不存在下で反応させた反応混合物と、2級アミン(B)のpKaより大きなpKaを有するアミン(E)を反応させて一般式(5)で表されるリン酸ジエステル塩(F)を得る請求項1〜3のいずれか1項に記載のリン酸ジエステル塩の製造方法。
【化5】

[式(5)中、R〜Rは一般式(1)と同じである。]
【請求項5】
リン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)とを水の不存在下で反応させた反応混合物と、対アニオンXの対応する酸XHのpKaが対アニオン[PO(OR)(OR)]の対応する酸HOP(O)(OR)(OR)より大きなpKaを有する一般式(6)で表されるアンモニウム塩(G)を反応させて一般式(7)で表されるリン酸ジエステル塩(H)を得る請求項1〜3のいずれか1項に記載のリン酸ジエステル塩の製造方法。
【化6】

[式(6)中、R〜Rは同一でも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜20
の炭化水素基であり、R〜Rのうち2つ上の基が互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは陰イオンを示す。]
【化7】

[式(7)中、R〜Rは一般式(1)と同じであり、R〜Rは一般式(6)と同じである。]
【請求項6】
リン酸トリエステル(A)と2級アミン(B)とを水の不存在下で反応させた反応混合物と、対アニオンXの対応する酸XHのpKaが対アニオン [PO(OR)(OR)]の対応する酸HOP(O)(OR)(OR)より大きなpKaを有する一般式(8)で表されるアミジニウム塩(J)を反応させて一般式(9)で表されるリン酸ジエステル塩(K)を得る請求項1〜3のいずれか1項に記載のリン酸ジエステル塩の製造方法。
【化8】

[式(8)中、R10〜R13は同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭化水素基であり、R14は水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基であり、R10〜R14のうち2つ以上の基が互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは陰イオンを表す。]
【化9】

[式(9)中、R〜Rは一般式(1)と同じであり、R10〜R14は一般式(8)と同じである。]
【請求項7】
一般式(1)のR〜Rがすべて同一である請求項1〜6のいずれか1項に記載のリン酸ジエステル塩の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られたリン酸ジエステル塩を有機溶媒に溶解することを特徴とするアルミ電解コンデンサ用電解液の製造方法。

【公開番号】特開2012−1459(P2012−1459A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136064(P2010−136064)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】