説明

リーダライタ装置

【課題】内蔵タグを備えたリーダライタ機器の性能低下を防ぐこと。
【解決手段】アクセス対象のRFIDタグをリード/ライトするリーダライタ部12と、内蔵タグ16を含む内蔵タグ部11と、少なくともリーダライタ部12の動作時に、内蔵タグ部11を非能動化させる制御部13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリーダライタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFID(Radio frequency Identification)アンテナを有し、このRFIDアンテナによりIC(Integrated Circuit)タグ(RFIDタグ)や非接触ICカードに記録された情報を非接触に読み取り、また情報を書き込むRFID機能を有するハンディターミナル、PDA(Personal Digital Assistant)等のリーダライタ機器が知られている。RFIDタグは、例えば、生産された商品に付され、その商品の識別情報(固体識別情報)が記録される。また、非接触ICカードは、例えば、電車,バス等の乗車券、電子マネーの情報の記録に用いられる。
【0003】
RFIDは、複数のタグ(RFIDタグ)への同時アクセスが可能である、RFIDタグ内の不揮発性メモリに情報の書き込みができる、リーダライタ機器のアンテナとアクセス対象のRFIDタグのアンテナとの間に障害物があってもアクセスが可能である、RFIDタグに電源は不要である、RFIDタグ毎に固体識別情報が存在する、といった特徴がある。
【0004】
また、上述のRFIDタグを内蔵した構成のリーダライタ機器も想定されている。以下、リーダライタ機器自体に内蔵されたRFIDタグを内蔵タグと記す。
【0005】
図8に、内蔵タグを備えたリーダライタ機器100の回路構成を示す。図8に示すように、リーダライタ機器100は、内蔵タグ部101と、リーダライタ部102と、制御部103と、を備えて構成される。
【0006】
内蔵タグ部101は、アンテナ104と、マッチング回路105と、タグIC(内蔵タグ)106と、を備える。アンテナ104は、アクセス元の外部のリーダライタ機器との間で電波の送受信を行う。マッチング回路105は、アンテナ104の利得調整用の回路である。内蔵タグ106は、Ant端子106Aを備える。また、内蔵タグ106は、アンテナ104が受信した電波を動作電源とする。
【0007】
リーダライタ部102は、アンテナ107と、マッチング回路108と、リーダライタIC109と、を備えて構成される。アンテナ107は、アクセス対象のRFIDタグとの間で電波の送受信を行う。マッチング回路108は、アンテナ107の利得調整用の回路である。
【0008】
リーダライタIC109は、Ant端子109Aと、制御端子109Bと、シリアル端子109Cと、を備える。Ant端子109Aは、アンテナ107及びマッチング回路108と接続される。制御端子109Bは、回路線を介してCPU103AのGPIO103Bと接続される。シリアル端子109Cは、回路線を介してCPU103Aのシリアル端子103Cと接続される。
【0009】
制御部103は、CPU(Central Processing Unit)103Aにより構成される。CPU103Aは、リーダライタ機器100の各部を中央制御する。また、CPU103Aは、GPIO(General Purpose I/O)103Bと、シリアル端子103Cと、を備える。
【0010】
GPIO103Bは、回路線を介してリーダライタIC109の制御端子109B及びスイッチ109Dと接続される。スイッチ109Dは、リーダライタIC109に電圧Vccを供給するか否かを切り換えるためのスイッチである。シリアル端子103Cは、回路線を介してリーダライタIC109のシリアル端子109Cと接続される。
【0011】
図8に示すリーダライタ機器100における内蔵タグを用いたアプリケーションの一例としては、リーダライタ機器100の製造工程の管理が挙げられる。具体的には、内蔵タグ部101をリーダライタ機器100の製品管理用タグとし、リーダライタ機器100の内蔵タグ106内の不揮発性メモリに、製品管理情報(製品のトレーサビリティ、製品のリビジョン又はモデル名の情報等)などを書き込む(記憶する)。これにより、例えば、製品の保証期間に製造元にリーダライタ機器100が戻ってきた場合、製造者は内蔵タグ内の不揮発性メモリに記憶された製品管理情報を読み込むことで、製品の製造工程(いつリーダライタ機器100が出荷されたかについての情報等)を把握することができる。
【0012】
また、IDタグとIDタグ用リーダライタの両機能を備えた通信装置において、IDタグ機能とリーダ・ライタ機能に共通の部分を設け、通信装置の構成を簡略化する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、無線タグ及び無線タグ・リーダ/ライタ機能の双方を備えた無線通信装置において、外部の無線タグ・リーダ/ライタからスリープ要求を受信したときに、無線タグにおける受動的な信号送信を禁止することに連動して、無線タグ・リーダ/ライタにおける能動的な信号送信も禁止することにより、他の無線タグリーダ・ライタとの互いの要求信号の干渉を軽減する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、プリンタの電源のON/OFFに応じて、通信回路及びリーダ/ライタモジュールのいずれかにループアンテナを接続することで、自己のリーダ/ライタモジュールが自己の通信回路と通信してしまう可能性を低減することのできる技術も知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、アンテナコイルとともに共振回路を構成するコンデンサの静電容量を変化させることで、非接触識別タグが外部装置と通信可能となる技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−172359号公報
【特許文献2】特開2003−150916号公報
【特許文献3】特開2005−148820号公報
【特許文献4】特開2006−216083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述の内蔵タグを備えたリーダライタ機器100の構成においては、リーダライタ機器100がリーダライタ機能(リーダライタ部102のアクセス対象であるRFIDタグと情報の送受信を行うための機能)を実行すると、内蔵タグ106がリーダライタ機能の通信範囲に入ってしまう。そうすると、内蔵タグ106もリーダライタ部102に応答(レスポンス)を返してしまうため、内蔵タグ106と、アスセス対象であるRFIDタグとの混信が発生する恐れがある。
また、上述の特許文献1〜4には、内蔵タグとアクセス対象であるRFIDタグとの混信を防ぐ技術は記載されていない。
【0015】
内蔵タグを備えたリーダライタ機器の場合、リーダライタ機能の通信範囲内にRFIDタグが1つしかない場合であっても、内蔵タグと通信範囲内のRFIDタグとの混信を回避するための制御を行う必要がある。しかし、リーダライタ機器が混信を回避するための制御を実行した場合、目的(アクセス対象)のRFIDタグとの通信の開始までに時間を要し、製品性能(リーダライタ機器の性能)の低下につながるという問題がある。
【0016】
ここで、図9〜図11を参照して、リーダライタ機器の製品性能の低下について詳細に説明する。図9は、リーダライタ機器の通信範囲内にRFIDタグが1つある場合に、RFIDタグ(タグ1)を検出(探索)するために要する処理時間を示す。このとき、リーダライタ機器は、内蔵タグを備えない構成であるものとする。
通常、リーダライタICは、RFIDタグのリードライト時(リーダライタ機能の実行時)にRFIDタグを検出するための処理を行うが、電波の衝突(RFIDタグの混信)を回避するために、タグ探索コマンド(RFIDタグを検出するためのコマンド)に対応するRFIDタグからのレスポンスの受信処理にタイムスロットを用いるのが一般的である。具体的には、図9に示すように、1個のRFIDタグ(タグ1)からのレスポンス時において、1つのタイムスロット1を用いる。この場合、RFIDタグを検出するために要する処理時間はT1となる。
【0017】
図10は、リーダライタ機器の通信範囲内にRFIDタグが2個ある場合において、RFIDタグを検出するために要する処理時間を示す。ここで、図10に示すタグ1は内蔵タグであり、タグ2は通信範囲内に存在するRFIDタグであるものとする。この場合、タイムスロットを1つとすると、通信範囲内にRFIDタグが2個(タグ1、タグ2)存在するため、リーダライタICがレスポンスの受信処理を行う際、それぞれのRFIDタグからの電波が衝突し、混信が起きる。すなわち、内蔵タグを備えたリーダライタ機器は、RFIDタグが1個でも通信範囲内に入ると、混信が起きてしまい、通信性能が低下する。
【0018】
混信を回避するため、図11に示すように、タイムスロットをn(>1)とすると、それぞれのRFIDタグ(タグ1、タグ2)のレスポンスの受信処理にタイムスロット(タイムスロット1、タイムスロット3)が用いられる。ここで、図11に示すタグ1は内蔵タグであり、タグ2は通信範囲内に存在するRFIDタグであるものとする。この場合、それぞれのRFIDタグにタイムスロットが用いられるので、複数のRFIDタグが通信範囲内に存在しても対応可能となる(混信が起きない状態となる)。しかし、タイムスロットが増える分、処理時間はTn(Tn>T1)となる。このため、処理時間が長くなってしまい、リーダライタ機器のタグ探索性能の低下を招いてしまう
【0019】
本発明の課題は、内蔵タグを備えたリーダライタ機器の性能低下を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明のリーダライタ装置は、
アクセス対象のRFIDタグをリード/ライトするリーダライタ部と、
自装置に内蔵されたRFIDタグを含む内蔵タグ部と、
少なくとも前記リーダライタ部の動作時に、前記内蔵タグ部を非能動化させる制御部と、を備える。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリーダライタ装置において、
前記内蔵タグ部は、
前記内蔵タグ部の能動化又は非能動化を決定するための機能を有するイネーブル部を備え、
前記制御部は、
前記リーダライタ部の動作時に、前記イネーブル部に前記内蔵タグ部を非能動化させる制御信号を入力して前記イネーブル部により前記内蔵タグ部を非能動化させる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリーダライタ装置において、
前記内蔵タグ部は、
前記内蔵タグ部のアンテナの利得特性を調整するためのマッチング回路と、
前記内蔵タグ部のアンテナの利得特性を変化させるための利得変化部と、を備え、
前記制御部は、
前記リーダライタ部の動作時に、前記利得変化部に前記内蔵タグ部のアンテナの利得特性を変化させる制御信号を入力して前記内蔵タグ部を非能動化させる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載のリーダライタ装置において、
前記内蔵タグ部は、
前記内蔵タグ部のアンテナの利得特性を調整するためのマッチング回路と、
前記マッチング回路と、前記内蔵されたRFIDタグとの線路を切断又は接続するためのスイッチと、を備え、
前記制御部は、
前記リーダライタ部の動作時に、前記スイッチに前記マッチング回路と前記内蔵されたRFIDタグとの線路を切断するための制御信号を入力して前記内蔵タグ部を非能動化させる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のリーダライタ装置において、
前記内蔵タグ部と前記リーダライタ部とで共通の共通アンテナと、
前記共通アンテナと前記内蔵タグ部のマッチング回路又は前記リーダライタ部のマッチング回路とを切換接続するための切換スイッチと、を備え、
前記制御部は、
前記リーダライタ部の動作時に、前記切換スイッチに前記共通アンテナと、前記リーダライタ部のマッチング回路とを接続させるための制御信号を入力して前記内蔵タグ部を非能動化させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、内蔵タグを備えたリーダライタ機器の性能低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る実施の形態のリーダライタ機器の回路構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の動作シーケンスを示す図である。
【図3】第1の変形例のリーダライタ機器の回路構成を示す図である。
【図4】第1の変形例の動作シーケンスを示す図である。
【図5】第1の変形例の別のリーダライタ機器の回路構成を示す図である。
【図6】第2の変形例のリーダライタ機器の回路構成を示す図である。
【図7】第2の変形例の動作シーケンスを示す図である。
【図8】従来例のリーダライタ機器の回路構成を示す図である。
【図9】通信範囲内にタグが1つある場合における処理時間を示した図である。
【図10】通信範囲内にタグが2つある場合における処理時間を示した図である。
【図11】タイムスロットを複数用いた場合における処理時間を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態の一例を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0028】
図1及び図2を参照して、本発明に係る実施の形態を説明する。先ず、図1を参照して、本発明に係るリーダライタ装置としてのリーダライタ機器1の回路構成図を説明する。図1に示すように、リーダライタ機器1は、内蔵タグ部11と、リーダライタ部12と、制御部13と、を備えて構成される。
【0029】
内蔵タグ部11は、アンテナ14と、マッチング回路15と、タグIC16と、を備える。アンテナ14は、アクセス元の外部のリーダライタ機器(図示省略)との間で電波の送受信を行う。マッチング回路15は、アンテナ14の利得調整用の回路である。
【0030】
タグIC(内蔵タグ)16は、アンテナ14が電波を受信した場合、当該受信した電波により動作電力を作る。また、内蔵タグ16は、Ant端子16Aと、イネーブル部(以下、Enable部)16Bと、を備える。Ant端子16Aは、アンテナ14及びマッチング回路15と接続する。
【0031】
Enable部16Bは、Enable信号を受信する端子部と、Enable機能を有するEnable機能部と、を備えて構成される。Enable信号とは、内蔵タグ部11を動作させるか又は動作させないか(内蔵タグ部11を能動化させるか又は非能動化させるか)を決定するための制御信号である。以下では例として、Enable信号は2値(Hi,Lo)のローアクティブの電圧信号とする。
【0032】
Enable機能とは、アンテナ14から内蔵タグ16へ電力が供給された場合に、端子部の電圧値(端子電圧)に基づいて、内蔵タグ部11の能動化又は非能動化を決定するための機能である。
【0033】
例えば、リーダライタ部12のアンテナ17、又は外部のアンテナ(例えば、リーダライタ機器1のアクセス対象のRFIDタグのアンテナや内蔵タグ16へのアクセス元の外部のリーダライタ機器のアンテナ等)から送信された電波がアンテナ14により受信され、当該受信された電波により内蔵タグ16への電力供給が発生したとする。このとき、リーダライタ部12が動作中(リーダライタ部12がアクセス対象のRFIDタグと通信動作中)の場合、CPU13Aの指示により、CPU13Aに備えられたEnable端子(後述)の端子電圧がハイの端子電圧に設定されるとともに、Enable信号がハイの電圧値を示す信号(内蔵タグ部11を非能動化させるための信号)に設定される。そして、CPU13Aの指示により、Enable信号は、Enable部16Bに入力される。このとき、Enable信号はハイの電圧値を示す信号であるので、端子部の端子電圧もハイの電圧となる。そうすると、Enable機能部により、端子部の端子電圧(ハイの電圧)に基づいて、内蔵タグ部11が非能動化される。すなわち、リーダライタ部12が動作中である場合は、CPU13Aの指示に基づいて、内蔵タグ部11が非能動化される。
【0034】
また、アンテナ14により受信された電波により内蔵タグ16への電力供給が発生したとき、リーダライタ部12が動作中でない場合(例えば、リーダライタ機器1の電源がOFFである場合や保守モードの実行時である場合)は、端子部の端子電圧はローの電圧となる。例えば、電源がOFFである場合、CPU13Aには電圧Vcpuは供給されず、且つ、リーダライタIC19には電圧Vrwは供給されない。この場合、CPU13AのEnable端子の端子電圧は、自動的にローの電圧(ゼロ電圧)となり、Enable信号も自動的にローの電圧値を示す信号となる。また、Enable信号がローの電圧値を示す信号であるので、端子部の端子電圧もローの電圧となる。そうすると、Enable機能部により、端子部の端子電圧(ローの電圧)に基づいて、内蔵タグ部11が能動化される。
【0035】
また、例えば、リーダライタ機器1が保守モードの実行時の場合でも、端子部はローの電圧となる。保守モードとは、例えば、リーダライタ機器1が保証のため製造元に戻ってきたときに、内蔵タグ16に書き込まれている製品管理情報(例えば、リーダライタ機器1がいつ出荷されたかについての情報等)を読み込むために実行されるモードのことをいう。この場合、電源がOFFであるときと同様に、Enable機能部により、端子部の端子電圧(ローの電圧)に基づいて、内蔵タグ部11が能動化される。
【0036】
リーダライタ部12は、アクセス対象のRFIDタグをリード/ライトする。また、リーダライタ部12は、アンテナ17と、マッチング回路18と、リーダライタIC19と、を備えて構成される。アンテナ17は、アクセス対象であるRFIDタグ(図示省略)との間で電波の送受信を行う。マッチング回路18は、アンテナ17の利得調整用の回路である。
【0037】
リーダライタIC19は、Ant端子19Aと、制御端子19Bと、シリアル端子19Cと、を備える。Ant端子19Aは、アンテナ17及びマッチング回路18と接続される。制御端子19Bは、回路線を介してCPU13AのGPIO13B(後述)と接続される。シリアル端子19Cは、回路線を介してCPU13Aのシリアル端子13C(後述)と接続される。
【0038】
制御部13は、CPU13Aにより構成される。CPU13Aは、リーダライタ機器1の各部を中央制御する。
【0039】
また、CPU13Aは、リーダライタ部12が動作中である場合、内蔵タグ部11を非能動化する。具体的には、CPU13Aは、リーダライタ部12が動作中である場合、Enable部16Bに内蔵タグ部11を非能動化させる制御信号(ハイの電圧値を示すEnable信号)を入力し、Enable部16Bにより内蔵タグ部11を非能動化させる。
【0040】
また、CPU13Aは、GPIO(General Purpose I/O)13Bと、シリアル端子13Cと、を備える。
【0041】
GPIO13Bは、Enable端子と、リーダライタ用端子と、を備えて構成される(いずれも図示省略)。Enable端子は、回路線を介してEnable部16Bと接続される。リーダライタ用端子は、回路線を介してリーダライタIC19の制御端子19B及びスイッチSW1と接続される。スイッチSW1は、電圧VrwをリーダライタIC19に供給するか否かを切り換えるためのスイッチである。シリアル端子13Cは、回路線を介してリーダライタIC19のシリアル端子19Cと接続される。
【0042】
次に、図2を参照して動作シーケンスについて説明する。図2は、CPU13AのEnable端子、シリアル端子13C、リーダライタIC19のStatus(状態)、Ant端子19A、内蔵タグ16のAnt端子16A、内蔵タグ16のStatus、リーダライタ機器1のアクセス対象であるRFIDタグを示すタグ(RW対象物)、の動作シーケンスを示す図である。
【0043】
先ず、CPU13Aによりタグ探索コマンドがシリアル端子13Cを介してリーダライタIC19に送信され(図2中のCPU13Aのシリアル端子におけるコマンド送信(to RW IC)に該当)、当該送信されたタグ探索コマンドがリーダライタIC19により受信される(図2中のリーダライタIC19のStatusにおけるシリアル受信(from CPU)に該当)。このとき、CPU13AのEnable端子の端子電圧はロー(図2中のCPU13AのEnable端子におけるEnableに該当)であり、内蔵タグ16及びタグ(RW対象物)の状態は電源OFF(図2中の内蔵タグ部11のStatusにおけるPower Down及びタグ(RW対称物)におけるPower Downに該当)である。
【0044】
そして、リーダライタIC19が電波の出力を始める前(リーダライタ部12が動作を開始する前)に、CPU13Aにより、CPU13AのEnable端子の端子電圧がロー(図2中のCPU13AのEnable端子におけるEnableに該当)からハイ(図2中のCPU13AのEnable端子におけるDisableに該当)に変化させられる。そして、リーダライタIC19より電波の出力が開始されると、内蔵タグ16のアンテナ14により、リーダライタ部12のアンテナ17から出力された電波が受信される。これにより、内蔵タグ16へ動作電力の供給が開始される。このとき、CPU13AのEnable端子の端子電圧はハイであるので、Enable信号はハイの電圧値を示す信号となる。また、Enable信号はハイの電圧値を示す信号であるので、Enable部16Bの端子部の端子電圧もハイの電圧となる。この場合、内蔵タグ16は、非能動化された状態(非能動状態:図2中の内蔵タグ16のStatusにおける「Power On But Disable」に該当)となり、且つ、内蔵タグ部11も非能動状態となる。このため、内蔵タグ部11は、リーダライタIC19からアンテナ14を介してタグ探索信号(RFIDタグを探索するための信号)を受信しても、リーダライタIC19にレスポンスを返さない。
【0045】
これに対し、アクセス対象のRFIDタグは、リーダライタIC19からタグ探索信号を受信して、リーダライタIC19にレスポンスを返す(図2中のタグ(RW対象物)における「レスポンス」に該当)。すなわち、リーダライタIC19が受信するレスポンスは、アクセス対象のRFIDタグからのレスポンスのみとなるため、タイムスロットは1つで済む。
【0046】
以上、本実施の形態によれば、リーダライタ部12の動作時に、Enable部16Bにハイの電圧値を示すEnable信号が入力され、内蔵タグ部11は非能動化される。このため、リーダライタ部12の動作時において、内蔵タグ16は、リーダライタIC19にタグ探索信号に対するレスポンスを返すことができないので、リーダライタIC19が受信するレスポンスは、アクセス対象のRFIDタグからのレスポンスのみとなり、タイムスロットを1つとすることができる。そうすると、内蔵タグ16と、アクセス対象のRFIDタグとの混信を防ぐことができるとともに、この混信を防ぐためにタイムスロットを増やす必要がなくなるので、RFIDタグを検出するために要する処理時間が増えることによるタグ探索性能の低下を防止することができる。このため、内蔵タグを備えたリーダライタ機器の性能低下を防ぐことができる。
【0047】
また、リーダライタ動作時以外は、内蔵タグ16が動作するので、リーダライタ機器1のトレーサビリティなどの目的で内蔵タグ16を使用する際に、外部のリーダライタで内蔵タグ16にアクセスできるようになる。
【0048】
(第1の変形例)
図3及び図4を参照して、上記実施の形態の第1の変形例を説明する。以下、上記実施の形態と同様な部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を援用し、異なる部分について説明する。
【0049】
本変形例のリーダライタ機器1Aは、リーダライタ機器1の内蔵タグ部11を内蔵タグ部11Aに変更したものである。
【0050】
図3に本変形例のリーダライタ機器1Aの回路構成図を示す。図3に示すように、リーダライタ機器1Aは、内蔵タグ部11Aに利得変化部15Aを備える。また、内蔵タグ161は、Ant端子16Aのみを備える構成である。
【0051】
利得変化部15Aは、アンテナ14のマッチング(アンテナ14の利得特性)をずらす(変化させる)ための回路である。利得変化部15Aは、スイッチSW2と、コンデンサCと、を備える。
【0052】
スイッチSW2は、CPU13AからのEnable信号に基づいて、ON又はOFFされる。例えば、リーダライタ部12が動作中である場合、CPU13Aの指示により、CPU13AのEnable端子の端子電圧はハイの端子電圧に設定されるとともに、Enable信号はハイの電圧値を示す信号(アンテナ14の利得特性を変化させる信号)に設定される。そして、CPU13Aの指示により、Enable信号は利得変化部15AのスイッチSW2に入力される。このとき、スイッチSW2はONされる。スイッチSW2がONされると、マッチング回路15は、コンデンサCを含む構成となる。このため、アンテナ14の利得特性が変化する。
【0053】
次に、図4を参照して、リーダライタ機器1Aの動作シーケンスについて説明する。以下、図2と異なる部分を主として説明する。図4において、CPU13Aにより、CPU13AのEnable端子の端子電圧がロー(図4中のCPU13AのEnable端子におけるEnableに該当)からハイ(図4中のCPU13AのEnable端子におけるDisableに該当)に変化させられる動作までは図2と同様である。
【0054】
そして、内蔵タグ部11AのスイッチSW2がONされる。スイッチSW2がONされると、アンテナ14の利得特性が変化するため、アンテナ14が受信した電波を内蔵タグ161に十分に伝えることができなくなる。このため、内蔵タグ161は、動作電力を作ることができず、非能動状態(図4中の内蔵タグ161のStatusにおける「Power Down」に該当)となり、且つ、内蔵タグ部11Aも非能動状態となる。このため、内蔵タグ部11Aは、リーダライタIC19からアンテナ14を介してタグ探索信号を受信しても、リーダライタIC19にレスポンスを返すことができない。
【0055】
これに対し、アクセス対象のRFIDタグは、リーダライタIC19からタグ探索信号を受信して、リーダライタIC19にレスポンスを返す(図4中のタグ(RW対象物)における「レスポンス」に該当)。すなわち、リーダライタIC19が受信するレスポンスは、アクセス対象のRFIDタグからのレスポンスのみとなるため、タイムスロットは1つで済む。
【0056】
また、図3に示すリーダライタ機器1Aの代わりに、図5に示すリーダライタ機器1Bの構成としてもよい。図5に示すリーダライタ機器1Bは、リーダライタ機器1の内蔵タグ部11を内蔵タグ部11Bに変更したものである。
【0057】
内蔵タグ部11Bは、スイッチSW3を備える。スイッチSW3は、マッチング回路15と、内蔵タグ161とを接続するための回路線(線路)を切断又は結合するためのスイッチである。
【0058】
具体的には、スイッチSW3は、CPU13AからのEnable信号に基づいて、ON又はOFFする。例えば、リーダライタ部12が動作中である場合、CPU13AのEnable端子の端子電圧はCPU13Aによりハイの端子電圧に設定されるとともに、Enable信号もハイの電圧値を示す信号(マッチング回路15と内蔵タグ161との線路を切断するための信号)に設定される。そして、CPU13Aの指示により、Enable信号がスイッチSW3に入力される。このとき、スイッチSW3はOFFされ、マッチング回路15と内蔵タグ161との線路が切断される。線路が切断されると、アンテナ14が受信した電波を内蔵タグ161に十分に伝えることができなくなる。このため、内蔵タグ161は、動作電力を作ることができず、非能動状態となり、且つ、内蔵タグ部11Bも非能動状態となる。このため、内蔵タグ部11Bは、リーダライタIC19からアンテナ14を介してタグ探索信号を受信しても、リーダライタIC19にレスポンスを返すことができない。
【0059】
また、図5の構成におけるリーダライタ機器1Bの動作シーケンスは、図4と同様となる。
【0060】
以上、本変形例によれば、実施の形態と同様の効果を有するとともに、実施の形態の構成(内蔵タグ16のAnt端子16A及びEnable部16Bから3本の回路線が出力される構成)と比較して、内蔵タグ16のAnt端子16Aのみから2本の回路線が出力される一般的な構成とすることができるので、汎用性の高いリーダライタ機器の構成を実現することができる。
【0061】
(第2の変形例)
図6及び図7を参照して、上記実施の形態の第2の変形例を説明する。以下、上記実施の形態及び第1の変形例と同様な部分には同一の符号を付し、その詳細な説明を援用し、異なる部分について説明する。
【0062】
本変形例のリーダライタ機器1Cは、リーダライタ機器1の内蔵タグ部11を内蔵タグ部11Cに変更し、リーダライタ機器1のリーダライタ部12をリーダライタ部12Cに変更したものである。
【0063】
図6に本変形例のリーダライタ機器1Cの回路構成図を示す。図6に示すように、内蔵タグ部11Cは、マッチング回路15と、内蔵タグ161と、を備える。
本変形例では、スイッチSW4,SW5によりアンテナ17からの回路線がマッチング回路15に接続されたときは、アンテナ17が内蔵タグ部11Cのアンテナとして機能する。この場合、内蔵タグ部11Cは、アンテナ17を備える構成となる。
【0064】
リーダライタIC12Cは、切換スイッチとしてのスイッチSW4,SW5を備える。スイッチSW4,SW5は、アンテナ17からの回路線を、リーダライタ部12Cのマッチング回路18、又は内蔵タグ部11Cのマッチング回路15に接続するためのスイッチである。
【0065】
具体的には、スイッチSW4,SW5は、CPU13AからのEnable信号に基づいて、アンテナ17からの回路線をリーダライタ部12Cのマッチング回路18又は内蔵タグ部11Cのマッチング回路15に接続するように切り換えられる。
【0066】
例えば、リーダライタ部12Cが動作中である場合、CPU13Aの指示により、CPU13AのEnable端子の端子電圧はハイの端子電圧に設定されるとともに、Enable信号はハイの電圧値を示す信号(アンテナ17と、マッチング回路18とを接続させるための信号)に設定される。そして、CPU13Aの指示により、Enable信号はスイッチSW4,SW5に入力される。このとき、スイッチSW4,SW5は、アンテナ17からの回路線をマッチング回路18に接続する。
【0067】
また、リーダライタ部12Cが非動作時である場合、CPU13AのEnable端子の端子電圧はローの端子電圧となり、Enable信号はローの電圧値を示す信号(アンテナ17と、マッチング回路15とを接続させるための信号)となる。そして、Enable信号は、スイッチSW4,SW5に入力される。このとき、スイッチSW4,SW5は、アンテナ17からの回路線を内蔵タグ部11Cのマッチング回路15に接続する。
【0068】
また、アンテナ17は、スイッチSW4,SW5の切り換えに応じて、リーダライタ部12Cのアンテナ又は内蔵タグ部11Cのアンテナ(共通アンテナ)として機能する。
【0069】
次に、図7を参照して、リーダライタ機器1Cの動作シーケンスについて説明する。以下、図2と異なる部分を主として説明する。図7において、CPU13Aにより、CPU13AのEnable端子の端子電圧がロー(図7中のCPU13AのEnable端子のEnableに該当)からハイ(図7中のCPU13AのEnable端子のDisableに該当)に変化させられる動作までは図2と同様である。
【0070】
そして、スイッチSW4,SW5がアンテナ17からの回路線と内蔵タグ部11Cのマッチング回路15との接続を切り離し、アンテナ17からの回路線とリーダライタ部12Cのマッチング回路18とを接続する。この場合、内蔵タグ161は、アンテナ17からの回路線と切断されているため電波を受信できない。このため、内蔵タグ部161は動作電力を作ることができず、非能動状態(図7中の内蔵タグ161のStatusにおける「Power Down」に該当)となり、且つ、内蔵タグ部11Cも非能動状態となる。このため、内蔵タグ部11Cは、リーダライタIC19からアンテナ14を介してタグ探索信号を受信しても、リーダライタIC19にレスポンスを返すことができない。
【0071】
これに対し、アクセス対象のRFIDタグは、リーダライタIC19からタグ探索信号を受信して、リーダライタIC19にレスポンスを返す(図7中のタグ(RW対象物)における「レスポンス」に該当)。すなわち、リーダライタIC19が受信するレスポンスは、アクセス対象のRFIDタグからのレスポンスのみとなるため、タイムスロットは1つで済む。
【0072】
以上、本変形例によれば、実施の形態と同様の効果を有するとともに、アンテナ17を内蔵タグ部11Cと、リーダライタ部12Cとで共通化して利用することができるので、リーダライタ機器1Cの小型化を図ることができる。
【0073】
なお、上記実施の形態及び各変形例における記述は、本発明に係るリーダライタ装置の一例であり、これに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態及び上記変形例のうち少なくとも2つを組み合わせる構成としてもよい。
【0074】
また、図3において、利得変化部15AにコンデンサCを備える構成としたがこれに限定されるものではない。例えば、コンデンサCの代わりに、抵抗RやインダクタLを備える構成としてもよい。
【0075】
また、図6において、リーダライタ部12Cのアンテナ17を共通アンテナとしたがこれに限定されるものではない。例えば、内蔵タグ部11Cがアンテナを有し、当該アンテナを共通アンテナとしてもよい。この場合、内蔵タグ部11Cは、アンテナとともに、スイッチSW4,及びスイッチSW5を備える構成となる。
【0076】
また、上記実施の形態及び各変形例におけるリーダライタ装置の各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
1,1A,1B,1C リーダライタ機器
11,11A,11B,11C 内蔵タグ部
12,12C リーダライタ部
13 制御部
13A CPU
13B GPIO
13C シリアル端子
14 アンテナ
15 マッチング回路
15A 利得変化部
16,161 内蔵タグ
16A Ant端子
16B Enable部
17 アンテナ
18 マッチング回路
19A Ant端子
19B 制御端子
19C シリアル端子
SW1,SW2,SW3,SW4,SW5 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセス対象のRFIDタグをリード/ライトするリーダライタ部と、
自装置に内蔵されたRFIDタグを含む内蔵タグ部と、
少なくとも前記リーダライタ部の動作時に、前記内蔵タグ部を非能動化させる制御部と、
を備えるリーダライタ装置。
【請求項2】
前記内蔵タグ部は、
前記内蔵タグ部の能動化又は非能動化を決定するための機能を有するイネーブル部を備え、
前記制御部は、
前記リーダライタ部の動作時に、前記イネーブル部に前記内蔵タグ部を非能動化させる制御信号を入力して前記イネーブル部により前記内蔵タグ部を非能動化させる請求項1に記載のリーダライタ装置。
【請求項3】
前記内蔵タグ部は、
前記内蔵タグ部のアンテナの利得特性を調整するためのマッチング回路と、
前記内蔵タグ部のアンテナの利得特性を変化させるための利得変化部と、を備え、
前記制御部は、
前記リーダライタ部の動作時に、前記利得変化部に前記内蔵タグ部のアンテナの利得特性を変化させる制御信号を入力して前記内蔵タグ部を非能動化させる請求項1又は2に記載のリーダライタ装置。
【請求項4】
前記内蔵タグ部は、
前記内蔵タグ部のアンテナの利得特性を調整するためのマッチング回路と、
前記マッチング回路と、前記内蔵されたRFIDタグとの線路を切断又は接続するためのスイッチと、を備え、
前記制御部は、
前記リーダライタ部の動作時に、前記スイッチに前記マッチング回路と前記内蔵されたRFIDタグとの線路を切断するための制御信号を入力して前記内蔵タグ部を非能動化させる請求項1又は2に記載のリーダライタ装置。
【請求項5】
前記内蔵タグ部と前記リーダライタ部とで共通の共通アンテナと、
前記共通アンテナと前記内蔵タグ部のマッチング回路又は前記リーダライタ部のマッチング回路とを切換接続するための切換スイッチと、を備え、
前記制御部は、
前記リーダライタ部の動作時に、前記切換スイッチに前記共通アンテナと前記リーダライタ部のマッチング回路とを接続させるための制御信号を入力して前記内蔵タグ部を非能動化させる請求項1から4のいずれか一項に記載のリーダライタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−48600(P2011−48600A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196162(P2009−196162)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】