説明

リーマ及びハンドリーマ

【課題】
小径の孔の後加工、仕上げ加工を、作業者の熟練度を要求することなく簡単に、而も精度よく行えるリーマを提供する。
【解決手段】
テーパ部と、該テーパ部の母線に沿って刻設された1本のV溝11とを有し、前記テーパ部周面と前記V溝の境界によって切り刃12が形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工孔の径を拡大する為に用いられるリーマ、特に小径の加工孔を調整の為追加加工するリーマに関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズ、主にプラスチックレンズに枠無し眼鏡フレームを取付ける場合に、分離した左右のテンプル、或は左右の眼鏡レンズを連結するブリッジはそれぞれ螺子を用いて眼鏡レンズに固着される。テンプル、ブリッジを取付ける為の孔加工は、通常専用の孔加工機によって穿設されている。
【0003】
図9は、枠無し眼鏡フレーム、所謂ツーポイントフレームが取付けられた眼鏡を示している。図示される様に、ツーポイントフレーム1では、左右の眼鏡レンズ2,2がブリッジ3により直接連結され、又テンプル4の一端が直接、前記眼鏡レンズ2に螺子5或はピンを介して固着される構造となっている。又、前記ブリッジ3と前記眼鏡レンズ2との固着についても前記螺子5、或はピンを介して行われている。
【0004】
従って、前記眼鏡レンズ2には前記ツーポイントフレーム1を装着する為、前記螺子5或はピンを貫通させる為の取付け孔が穿設される。
【0005】
前記ツーポイントフレーム1では、前記眼鏡レンズ2を保持する枠がないので、該眼鏡レンズ2に前記テンプル4を前記螺子5の締付け力だけで固定した場合、該螺子5の弛み等でガタツキを生じる。従って、前記眼鏡レンズ2と前記テンプル4とをガタつきなく取付ける為には、前記眼鏡レンズ2に取付け孔を穿設する場合に、前記テンプル4側の螺子孔と前記眼鏡レンズ2の取付け孔の芯を若干ずらし、前記螺子5を取付ける場合に該螺子5と取付け孔とがこじる様な状態とし、該螺子5の締付け力だけでなく、取付け孔に対して芯ズレした螺子5のこじれによって前記眼鏡レンズ2と前記テンプル4とのガタツキを抑える様にしている。
【0006】
尚、螺子孔と前記取付け孔の芯ずれが大きい場合、無理にねじ込むと前記眼鏡レンズ2が割れる為、作業者が螺子の取付け状態を見ながら、適宜ヤスリ等の工具で孔を一方向にを削る等して適正なこじれとなる様に取付け孔を調整加工している。
【0007】
尚、小径の孔をヤスリ等で後加工するのは、細心の注意が必要であり、又孔全体を大きくしてしまいガタツキを増大させる可能性がある。従って、後加工の仕上げには作業者の熟練が要求されていた。
【0008】
【特許文献1】特開2003−334767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み、眼鏡レンズの取付け孔等の小径の孔の後加工、仕上げ加工を、作業者の熟練度を要求することなく簡単に、而も精度よく行えるリーマを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、テーパ部と、該テーパ部の母線に沿って刻設された1本のV溝とを有し、前記テーパ部周面と前記V溝の境界によって切り刃が形成されたリーマに係り、又胴部と、該胴部の先端側に位置する先端部と、前記胴部の基側に位置する基端部とからなり、前記胴部は断面が円で径変化のない形状であり、前記先端部は先端側に向って径が漸次小さくなるテーパ形状であり、前記先端部の母線に沿って1本のV溝が刻設され、該V溝と前記テーパ形状を成す円錐面との境界が切り刃を形成し、前記基端部断面は非円形形状であり、前記胴部は回転力伝達部に同心に保持可能であり、前記基端部は前記回転力伝達部からの回転力を前記先端部に伝達する様構成されたリーマに係るものである。
【0011】
又本発明は、胴部と、該胴部の先端側に位置する先端部と、前記胴部の基側に位置する基端部とからなり、前記胴部は断面が円で径変化のない形状であり、前記先端部は先端側に向って径が漸次小さくなるテーパ形状であり、前記先端部の母線に沿って1本のV溝が刻設され、該V溝と前記テーパ形状を成す円錐面との境界が切り刃を形成し、前記基端部断面は非円形形状であるリーマと、合成樹脂製の握りと、該握りに圧入された工具チャックとから構成され、前記リーマは前記工具チャックに挿入され、前記リーマの前記基端部は前記工具チャックに設けられた工具係合孔に嵌合し、前記握りの回転力が前記基端部を介して前記リーマに伝達される様構成されたハンドリーマに係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、テーパ部と、該テーパ部の母線に沿って刻設された1本のV溝とを有し、前記テーパ部周面と前記V溝の境界によって切り刃が形成されたので、孔の径を拡大する加工と孔の一部を切削して長孔にする加工が可能となる。
【0013】
又本発明によれば、胴部と、該胴部の先端側に位置する先端部と、前記胴部の基側に位置する基端部とからなり、前記胴部は断面が円で径変化のない形状であり、前記先端部は先端側に向って径が漸次小さくなるテーパ形状であり、前記先端部の母線に沿って1本のV溝が刻設され、該V溝と前記テーパ形状を成す円錐面との境界が切り刃を形成し、前記基端部断面は非円形形状であり、前記胴部は回転力伝達部に同心に保持可能であり、前記基端部は前記回転力伝達部からの回転力を前記先端部に伝達する様構成されたので、回転力伝達部に正確に保持可能であると共に回転力伝達部からの回転力が確実にリーマに伝達される。
【0014】
又本発明によれば、胴部と、該胴部の先端側に位置する先端部と、前記胴部の基側に位置する基端部とからなり、前記胴部は断面が円で径変化のない形状であり、前記先端部は先端側に向って径が漸次小さくなるテーパ形状であり、前記先端部の母線に沿って1本のV溝が刻設され、該V溝と前記テーパ形状を成す円錐面との境界が切り刃を形成し、前記基端部断面は非円形形状であるリーマと、合成樹脂製の握りと、該握りに圧入された工具チャックとから構成され、前記リーマは前記工具チャックに挿入され、前記リーマの前記基端部は前記工具チャックに設けられた工具係合孔に嵌合し、前記握りの回転力が前記基端部を介して前記リーマに伝達される様構成されたので、リーマが握り部に対して容易に着脱可能であり、孔加工に応じ最適なリーマの使用が可能となり、又簡便に而も確実、正確に孔径の拡大、長孔加工が可能となるという優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0016】
図1〜図3は、本発明に係るリーマ6を示している。
【0017】
該リーマ6には高速度工具鋼等の工具材料が用いられ、焼入等の材料調質がされる。
【0018】
前記リーマ6は、胴部7と、該胴部7の先端側に位置する先端部8と、前記胴部7の基側に位置する基端部9とからなり、前記胴部7は断面が円で径変化のない形状となっている。
【0019】
前記先端部8は先端側に向って径が漸次小さくなる断面円のテーパ形状であり、前記先端部8の最先端部は円錐状の尖端となっている。又、前記先端部8の母線に沿って1本のV溝11が刻設され、該V溝11と前記テーパ形状を成す円錐面との境界線が切り刃12を形成している。前記V溝11の頂角は切削の対象となる材料によって選択され、切削対象が眼鏡レンズ2(図9参照)に使用されるプラスチック材料の場合、選択される頂角の一例として、60°である。
【0020】
前記基端部9は断面が扁平な矩形形状をしており、該基端部9と前記胴部7とはテーパ部を介して連続している。尚、前記基端部9と前記胴部7との境界は段差となっていてもよく、又前記基端部9の断面形状も正方形、或は6角形等の多角形断面等、非円形形状で回転力が滑りなく伝達される断面形状であればよい。
【0021】
前記リーマ6により孔加工がされる場合は、該リーマ6が回転する所要のチャックに保持され、前記リーマ6が孔に挿入された状態でチャックが回転されることで、孔加工が成される。
【0022】
又、前記リーマ6を孔に挿入し、該リーマ6を挿入方向に適宜な押し力を与えた状態で、全周回転させた場合、前記V溝11を除いた円周部分が、孔と契合し、又円周部分が案内の機能を奏して、前記リーマ6は孔と同心で回転し、又前記切り刃12が孔の内周を切削して孔を拡大する。
【0023】
次に、前記リーマ6を孔に挿入し、該リーマ6を挿入方向に適宜な押し力を与えた状態で、前記V溝11の溝中心を中心として所要角度、例えば120°往復回転させると、前記切り刃12が孔に対して摺動する部分のみが切削され、孔は長孔に切削される。
【0024】
又、挿入方向の押し力を0として挿入方向に対し直角(V溝11を押当てる方向)に押し力を加える前記リーマ6を往復回転させることで、前記V溝11のある方向に削り孔の方向を変えることができる。
【0025】
従って、本リーマ6を前記眼鏡レンズ2の取付け孔に用いた場合、芯ずれを緩和する為の長孔加工を行える。
【0026】
又、前記リーマ6による孔加工は、該リーマ6を孔に嵌合させた状態で回転させる為、該リーマ6により孔以外の部分を傷付けることがない。又、該リーマ6の回転は、孔を拡大する場合、長孔を加工する場合のいずれの場合も、前記リーマ6の円周部の全部、又は一部が加工される孔の円周に摺接する状態であり、前記リーマ6の回転は加工される孔に案内されるので、加工による芯ずれが防止される。
【0027】
尚、前記リーマ6がチャックされる場合、前記胴部7部分で保持され、該胴部7は断面が円で径変化のない形状であるので、前記リーマ6の中心とチャックの中心との同心が担保される。又、前記基端部9を介して前記リーマ6にトルク伝達を行うことで、該リーマ6とチャック間の滑りを生じさせることなく、チャックから前記リーマ6に確実に回転力を伝えることができる。
【0028】
次に、図4〜図8に於いて、本発明に係るリーマ6をハンドリーマとして実施した場合を説明する。
【0029】
尚、図4、図5中、6は着脱可能な工具部としてのリーマであり、15は該リーマ6が装着されたハンドリーマを示し、又、16は回転力伝達部としての握り部、17は該握り部16に対して回転自在に設けられたフランジを示している。
【0030】
前記握り部16は合成樹脂製の握り18と金属製の工具チャック19を有し、前記握り18の先端部は先細り形状をし、外周面には滑止めの筋目が形成されている。該握り18の先端側からチャック保持穴21が穿設され、該チャック保持穴21は前記工具チャック19の軸心方向の長さと同等の深さとなっている。
【0031】
前記チャック保持穴21に前記工具チャック19が圧入される。
【0032】
該工具チャック19は図6〜図8に示されている。該工具チャック19は弾性を有する金属材料から製作され、先端側から所要の深さで工具嵌入穴22(図5参照)が穿設され、基端側からはリーマ係合孔であるスリット孔23が穿設され、該スリット孔23は前記工具嵌入穴22に到達している。
【0033】
前記工具チャック19の先端側から十字のスリットが刻設され、前記工具チャック19の先端部には4の把持片24が形成されている。該把持片24の少なくとも先端の内径は前記リーマ6の把持部の外径より小さくなっており、又前記把持片24が前記リーマ6を把持した状態での前記把持片24の外径は前記チャック保持穴21の径より小さくなっている。而して、前記把持片24は前記リーマ6の着脱に際して、前記チャック保持穴21内で自由に弾性変位が可能となっている。
【0034】
前記工具チャック19の基部はスプライン加工されており、軸心方向に延びる断面が3角形の突条25が円周方向に所要のピッチで形成されている。前記工具チャック19が前記チャック保持穴21に圧入され、前記突条25が前記チャック保持穴21の内面に食込むことで大きな保持力が発揮される。
【0035】
前記リーマ6の前記基端部9は漸次厚みが減少する平板テーパ形状となっており、該基端部9にはテーパ部27が連続している。前記基端部9は前記スリット孔23に挿入可能であり、前記テーパ部27は自由状態の前記把持片24の内縁に当接可能である。
【0036】
前記握り部16に前記リーマ6を取付ける場合、該リーマ6を基端から前記工具チャック19内に単に押込めばよい。
【0037】
前記リーマ6を基端から前記工具嵌入穴22に挿入すると、前記テーパ部27が前記把持片24の内縁に当接し、楔効果により該把持片24が押広げられる。更に前記リーマ6を押込むと、前記基端部9が前記スリット孔23に挿入される。尚、前記基端部9と前記スリット孔23の方向が一致しない場合は、前記リーマ6を回転させればよい。前記基端部9は先細りとなっているので、容易に位置合せが可能である。
【0038】
前記基端部9が前記スリット孔23に嵌入されることで、前記リーマ6は前記握り18に対して回転が拘束される。更に、前記基端部9が平板テーパ形状であることから、該基端部9を充分に前記スリット孔23に押込むことで、楔効果により前記基端部9と前記スリット孔23間のガタツキが完全に抑止される。
【0039】
前記リーマ6と前記握り18とが一体となり、該握り18を回転することで回転力が前記リーマ6に伝達される。
【0040】
該リーマ6の交換は、該リーマ6を引抜き、別のリーマ6を差込めば完了する。
【0041】
尚、該リーマ6の抜差し方向の保持力は、前記把持片24の弾性力により発生する該把持片24と前記リーマ6間の摩擦力となるが、該リーマ6による孔加工時には該リーマ6に引抜き力は作用せず、該リーマ6が脱落しない程度の保持力でも充分である。従って、該リーマ6の着脱作業は簡単に行える。
【0042】
尚、上記実施の形態で、前記工具チャック19の基部をスプライン加工したが、孔加工に必要な回転拘束力が得られればよいので、単なる圧入でもよく、又、前記工具チャック19に軸心と平行な平面部を形成してもよく、又、該工具チャック19の基部を6角形状等の形状にしてもよい。
【0043】
又、前記把持片24は3又は5以上に分割してもよい。更に、前記基端部9の形状は6角形状等の角形状とし、前記スリット孔23も対応した6角形状等の角形状の係合孔とする等、嵌合により回止めされるものであればよい。
【0044】
又、前記握り部16に装着される工具は、リーマ6に限らず螺子回し用のドライバであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態に係るリーマを示す平面図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】図1のB−B矢視図である。
【図4】本発明が実施されたハンドリーマの平面図である。
【図5】該ハンドリーマのチャック部分の断面図である。
【図6】該チャック部分に使用される工具チャックの平面図である。
【図7】該工具チャックの左側面図である。
【図8】該工具チャックの右側面図である。
【図9】ツーポイントフレームの眼鏡の斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
6 リーマ
7 胴部
8 先端部
9 基端部
11 V溝
12 切り刃
16 握り部
17 フランジ
18 握り
19 工具チャック
21 チャック保持穴
22 工具嵌入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーパ部と、該テーパ部の母線に沿って刻設された1本のV溝とを有し、前記テーパ部周面と前記V溝の境界によって切り刃が形成されたことを特徴とするリーマ。
【請求項2】
胴部と、該胴部の先端側に位置する先端部と、前記胴部の基側に位置する基端部とからなり、前記胴部は断面が円で径変化のない形状であり、前記先端部は先端側に向って径が漸次小さくなるテーパ形状であり、前記先端部の母線に沿って1本のV溝が刻設され、該V溝と前記テーパ形状を成す円錐面との境界が切り刃を形成し、前記基端部断面は非円形形状であり、前記胴部は回転力伝達部に同心に保持可能であり、前記基端部は前記回転力伝達部からの回転力を前記先端部に伝達する様構成されたことを特徴とするリーマ。
【請求項3】
胴部と、該胴部の先端側に位置する先端部と、前記胴部の基側に位置する基端部とからなり、前記胴部は断面が円で径変化のない形状であり、前記先端部は先端側に向って径が漸次小さくなるテーパ形状であり、前記先端部の母線に沿って1本のV溝が刻設され、該V溝と前記テーパ形状を成す円錐面との境界が切り刃を形成し、前記基端部断面は非円形形状であるリーマと、合成樹脂製の握りと、該握りに圧入された工具チャックとから構成され、前記リーマは前記工具チャックに挿入され、前記リーマの前記基端部は前記工具チャックに設けられた工具係合孔に嵌合し、前記握りの回転力が前記基端部を介して前記リーマに伝達される様構成されたことを特徴とするハンドリーマ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−183648(P2008−183648A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17792(P2007−17792)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(591242449)株式会社タクボ精機製作所 (6)
【Fターム(参考)】