説明

リールシート及びリールシートを備えた釣り竿

【課題】リールシートの取付け部位に工夫を凝らすことによって、仕掛けの繰出しや巻き上げ操作を円滑に十分な傾斜を得ることのできる釣り竿を提供する。
【解決手段】可動フード5にそのフードの軸芯X周りの複数箇所に脚取付穴5A〜5Dを形成し、各脚取付穴5A〜5Dにおける軸芯Xから脚部受止面5a〜5dまでの間隔を、異なるものに設定して、固定フード6と可動フード5に装着されるリールの傾斜姿勢を変更可能に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール脚の竿先側に位置する先脚部を保持する脚保持部を有する先側フードと、前記リール脚の竿元側に位置する元脚部を保持する脚保持部を有する元側フードを備えるリールシートに関する。
【背景技術】
【0002】
リール脚載置構造としては、リールシートを構成するシートベースの周方向の一箇所にリール脚載置面を設け、そのリール脚載置面にリール脚を載置し、先側フードと元側フードとでリール脚の先脚部と元脚部とを締め付け保持する構成を採っている (特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−299427号公報(公報段落番号〔0019〕〜〔0021〕、図3〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リール脚載置面は、竿軸線に平行な平面状態に形成されているので、そのリール脚載置面に載置されたリールの取付状態は、リール脚載置面の表面状態に従った姿勢を採る。
そうすると、リールの仕様としてリール脚の部分は同一であるが、糸を巻き付けるスプールの仕様やリール脚からスプールまでの間隔等の他の部分において違いがある場合や、同一仕様のスプールを使用しているが、異なる径の糸に付け替えた場合に、釣糸ガイドを通過する際の抵抗が変化して、仕掛けの繰出しや巻き上げ操作が行い難くなることがあった。
【0005】
本発明の目的は、リールシートの取付け部位に工夫を凝らすことによって、仕掛けの繰出しや巻き上げ操作を円滑に十分な傾斜を得ることのできるリールシート及び釣り竿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、リール脚の竿先側に位置する先脚部を保持する脚保持部を有する先側フードと、前記リール脚の竿元側に位置する元脚部を保持する脚保持部を有する元側フードとの少なくとも一方のフードにおいては、前記脚保持部をその一方のフードの軸芯周りの複数箇所に形成し、複数箇所に形成した前記脚保持部における前記軸芯から脚部受止面までの間隔を、異なるものに設定してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
一方のフードにおいて、軸芯周りの複数箇所に脚保持部が設けてあり、軸芯から各脚保持部の脚部受止面までの間隔が異なるものに形成されている。これによって、他方のフードに形成した脚保持部にリールの元脚部又は先脚部の他方を載置した状態で、一方のフードに形成した複数の脚保持部のうちの一つの脚保持部に載置した場合のリールの取付姿勢と、複数の脚保持部のうちの他の脚保持部に載置した場合のリールの取付姿勢とが、異なる傾斜姿勢を示すことになる。
これによって、リールを異なる仕様のものに取り換えた場合や、釣り糸を径の異なるものに取り換えた場合には、リールの傾斜姿勢を変えるべく、前記一方のフードを軸芯周りに回転させて、軸芯から脚部受止面までの間隔が異なるものを所定位置に切り換えて、この所定位置に位置させた脚保持部にリール脚部を載置する。
【0008】
〔効果〕
したがって、リール脚を保持するフードに、リールの取付姿勢を変更可能な脚保持部を複数個備える構成によって、仕様の異なるリールや糸径の異なる釣り糸に取り換えた場合にも、釣り操作の悪化を招来しない態様をとることができる。
これによって、好みに応じた釣り道具を使用して快適な釣りをフードでの簡単な選択変更によって行うことができた。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1記載のリールシートを備えている釣り竿である点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
釣り道具の切換えにも十分対応できるリールシートを備え、釣り操作が容易に行える釣り竿を提供できるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
釣り竿Aは、図1に示すように、元竿2にリール脚3を保持するリールシート1を外嵌装着して構成されている。
元竿2は、基本的には、ガラス繊維かカーボン繊維等の強化繊維にエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて形成したプリプレグをマンドレルに巻回して筒状に形成した竿素材を焼成して形成されている。
【0012】
リールシート1の構成について説明する。
リールシート1は、図1に示すように、ポリエチレン・テレフタレート(PET)やABS樹脂等のエンジニアリング樹脂をインジェクションによって成型されている。リール脚3を載置するシートベース4には、リール脚3の竿先側に位置する先脚部3Aを保持する他方のフードとしての固定フード6が一体形成されており、リール脚載置面6eを挟んで固定フード存在側とは反対側にリール脚3の竿元側に位置する元脚部3Bを保持する一方のフードとしての可動フード5が配置してある。
【0013】
シートベース4は、中間部を図1の紙面上、下向きに膨出する大径部4Bと、大径部4Bの竿元側に小径部4Cとを備え、その小径部4Cに可動フード5を装着している。可動フード5の取付位置よりさらに竿元側に雄ネジ部4Aが設けてあり、この雄ネジ部4Aに可動フード5を固定フード6に向けて押し込むナット体7を螺着してある。
ここに、可動フード5とナット体7とは一体で移動するものではなく、分離された二部品である。
【0014】
可動フード5の構造について説明する。図1及び図2に示すように、可動フード5の中心部にシートベース4の小径部4Cに外嵌する挿通孔5Eが設けてあり、可動フード5の固定フード6に対向する面に、4個の脚取付部としての第1脚取付穴5A〜第4脚取付穴5Dが設けてある。
第1脚取付穴5A〜第4脚取付穴5Dの断面形状は、元脚部3Bの断面形状に沿った略半楕円状を呈しており、軸芯Xに近い平面部分が脚部受止面5a〜5dに形成してある。
【0015】
第1脚取付穴5A〜第4脚取付穴5Dにおける脚部受止面5a〜5dから挿通孔5Eの軸芯Xまでの間隔a〜dは、aが一番大きく、bcdの順番に小さくなっている。
一方、固定フード6においては、シートベース4に形成した平坦面をリール脚載置面6eとして使用している。リール脚載置面6eから元竿2の軸芯Xまでの間隔eは、間隔aと同一である。リール脚載置面6eを覆うフード部によってリール脚3の先脚部3Aを保持する脚保持部を形成する。
【0016】
以上のような構成によって、リールの取付角度について説明する。図1に示すように、脚取付穴として第1脚取付穴5Aを選定した場合には、脚部受止面5a〜5dから挿通孔5Eの軸芯Xまでの間隔は間隔aとなり、リール脚載置面6eから元竿2の軸芯Xまでの間隔eと同一となる。そうすると、固定フード6と可動フード5に亘って取付けられたリールは平行状態であり、傾きはない。
【0017】
第2脚取付穴5Bを選定するには、まず、ナット体7を少し緩めて可動フード5を軸芯X周りに90度回転させて、ナット体7を締め付けて第2脚取付穴5Bを所定位置に設定する。この場合には、脚部受止面5bから挿通孔5Eの軸芯Xまでの間隔は間隔bとなり、間隔aより小さくなっているので、リール脚載置面6eから元竿2の軸芯Xまでの間隔eよりは小となっている。
これによって、図3に示すように、リールは取付角度θが生じて、やや上向き傾斜となる。
第3脚取付穴5C、第4脚取付穴5Dを所定位置に設定するには、同様の操作を繰り返せばよい。
【0018】
〔別実施の形態〕
(1) 複数の脚取付穴5A〜5Dを形成した可動フード5を竿先側と竿元側とに配置し、両方の可動フード5でリールの先脚部3Aと元脚部3Bとを保持する構成を採ってもよい。そうすると、図3で示すように、リールの傾斜姿勢を上向き傾斜とするだけでなく、下向きに傾斜する状態にも設定でき、リールの設置態様を広く採ることができる。
【0019】
(2) 可動フード5における挿通孔5Eの縁部に、内向きの係合突起5eを突出し、シートベース4に形成した係合溝(図示せず)に前記係合突起5eを係合させて、可動フード5の軸芯X方向に移動自在でかつ周方向に回転不能に構成することができる。これによって、可動フード5でリール脚3を保持した際に、リールのガタツキが抑制されて、姿勢が安定する。
脚取付穴5A〜5Dを変更する場合には、ナット体7と可動フード5とを雄ネジ部4Aから取り外して、所望の脚取付穴5A〜5Dを選択し、再度装着するようにする。
【0020】
(3) 脚取付部としては、穴ではなく孔であってもよく、また、形成する個数も二個以上あればよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】リールシートを示す縦断側面図
【図2】可動フードに脚取付穴を複数個形成した状態を示す正面図
【図3】リールを上向きに傾斜する状態で取り付けた状態を示す縦断側面図
【図4】可動フードの挿通孔の縁部に突起を設けた別実施構成を示す正面図
【符号の説明】
【0022】
1 リールシート
3 リール脚
3A 先脚部
3B 元脚部
4 シートベース
5 可動フード
5A 第1脚取付穴(脚取付部)
5B 第2脚取付穴(脚取付部)
5C 第3脚取付穴(脚取付部)
5D 第4脚取付穴(脚取付部)
5E 挿通孔
5a 脚部受止面
5b 脚部受止面
5c 脚部受止面
5d 脚部受止面
6 固定フード
a 脚部受止面から挿通孔の軸芯までの間隔
b 脚部受止面から挿通孔の軸芯までの間隔
c 脚部受止面から挿通孔の軸芯までの間隔
d 脚部受止面から挿通孔の軸芯までの間隔
e リール脚載置面から元竿の軸芯までの間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール脚の竿先側に位置する先脚部を保持する脚保持部を有する先側フードと、前記リール脚の竿元側に位置する元脚部を保持する脚保持部を有する元側フードとの少なくとも一方のフードにおいては、前記脚保持部をその一方のフードの軸芯周りの複数箇所に形成し、複数箇所に形成した前記脚保持部における前記軸芯から脚部受止面までの間隔を、異なるものに設定してあるリールシート。
【請求項2】
請求項1記載のリールシートを備えている釣り竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−11789(P2010−11789A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174797(P2008−174797)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】