説明

リールシート

【課題】可動フードのズレ動きを抑制して、品質の向上を図ることのできるリールシートを提供する。
【解決手段】可動フード5内にリール脚を押さえ保持する脚押さえ体5Bを装着し、脚押さえ体5Bにシートベース2の外周面とフード本体5Aの内周面との間で挟み込み固定される袴部5hを設け、シートベース2の外周面に上向きの元側傾斜凹入面2fとを設け、この袴部5hと元側傾斜凹入面2fとで可動フード5の円周方向へのガタ付きを抑制すべく構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動フードを備えているリールシートに関する。
【背景技術】
【0002】
可動フード(公報内番号:10)は、シートベース(公報内番号:7)に外嵌される3/4円筒状のフード本体部(公報内番号:10A)と、そのフード本体部10Aの上方に位置しリール脚Raを保持するリール脚挿入用保持部10Bとを一体で構成してある。
そして、フード本体部10Aの内周面には、竿軸芯方向に沿った突条(公報内番号:10c)が突設されており、この突条10cが雌ネジ部(公報内番号:7A)に形成されたガイド溝に係合することによって、可動フード10を竿軸芯方向にスライド移動可能に構成してある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−34035号公報(段落〔0035〕〔0036〕,図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような構成によって、可動フードは竿の円周方向に傾くことなく、竿軸線方向に沿ってスライド移動し、リール脚に対する適正な保持位置を確保して、リール脚を保持するものである。
しかし、突条とガイド溝との係合状態は、可動フードの円滑なスライド移動を確保する為に、緩やかな係合状態を呈するものであり、かつ、フード本体部自体が成形型を利用した型成形品である為に、可動フードが円周方向においてズレ動き(ガタ付き)を生ずることは否めなかった。
そうすると、リール脚を保持するために可動フードをナット部材で移動させる釣り人の感触が不満足なものとなり、リールシートとしての品質の低下を招来していた。
【0005】
本発明の目的は、可動フードのズレ動きを抑制して、品質の向上を図ることのできるリールシートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、竿体の竿軸線方向に沿ってスライド移動自在な可動フードをシートベースに取り付け、前記シートベースと前記可動フードとに、前記可動フードが円周方向にズレ動きするのを抑制するズレ動き抑制機構を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用効果〕
ズレ動き抑制機構を、シートベースと可動フードとに設けたので、可動フードが円周方向にズレ動きをしようとしても、シートベースによって受け止められて、ズレ動きが抑制される。
このように、ズレ動き抑制機構を構成することによって、可動フードをズレ動き(ガタツキ)なく、リール脚を保持するために操作することができ、操作感が良好である。
【0008】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記可動フード内にリール脚を押さえ保持する脚押さえ体を装着し、前記脚押さえ体に前記シートベースの受け部に当接する当接部を設け、前記受け部と前記当接部とで前記ズレ動き抑制機構を構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
〔作用効果〕
リール脚を押さえ保持するものとして脚押さえ体を可動フード内に設け、この脚押さえ体にシートベースの受け部に当接する当接部を形成してズレ動き抑制機構を構成し、可動フードのズレ動きを抑制している。
このように、リール脚を押さえ保持するものとして導入された脚押さえ体をズレ動き抑制機構に兼用することによって、可動フード自体にズレ動きを抑制する機構を設ける必要はなく、可動フード自体は製造方法等を変更する必要はない。しかも、脚押さえ体をズレ動き抑制機構に兼用することによって専用の機構を採用する必要がなく、機器構成の簡素化を図ることができる。
【0010】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記シートベースにおけるリール脚載置面とは竿軸心を挟んで180°反対側に、竿軸線に平行なガイド溝を形成するとともに、前記可動フードに前記ガイド溝に係合する係合突起を設け、前記係合突起と前記ガイド溝との係合状態によって、前記可動ガイドを竿軸線に平行な方向でスライド移動自在に構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
〔作用効果〕
可動ガイドの円周方向でのズレ動きを抑制する機構を設けることによって、可動ガイドを竿軸線に沿って移動させる構成としてあるので、ガイド溝と係合突起との係合状態に、可動フードのズレ動きを抑制する機能までを付加する必要がないので、ガイド溝と係合突起とに大きな機構の変更を加える必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】釣り竿を示す全体側面図である。
【図2】グリップ被覆体と可動フードをシートベースに取り付ける前の状態を示す 分解斜視図である。
【図3】シートベースに可動フードを取り付ける前の状態を示す分解斜視図である 。
【図4】シートベースに可動フード、グリップ被覆体を装着した状態を示す斜視図 である。
【図5】グリップ被覆体と可動フードをシートベースに取り付ける前の状態を示す 分解側面図である。
【図6】(a)シートベースに可動フード、グリップ被覆体を装着したリールシー トを示す平面図、(b)シートベースに可動フード、グリップ被覆体を装着したリール シートを示す側面図である。
【図7】グリップ被覆体と可動フードをシートベースに取り付ける前の状態を示す 分解縦断側面図である。
【図8】シートベースに可動フード、グリップ被覆体を装着したリールシートを示 す縦断側面図である。
【図9】可動フードをシートベースに装着した状態を示す縦断正面図である。
【図10】シートベースのリール脚の元側足部を載置する元側載置面とは180° 反対側の表面に、可動フードとの干渉を回避する為の凹入部を形成した状態を示す縦断 側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
本発明を釣り竿Aに適用する形態について説明する。
釣り竿Aは、図1〜4に示すように、握り部を備えた竿体としての元竿1に、スピンニングリール10を取り付ける筒状リールシートBを装着し、筒状リールシートBのシートベース2に可動フード5を取り付けて、構成してある。
【0014】
シートベース2には、可動フード5と協働でスピニングリール10のリール脚10Aの先端において竿先側に屈曲形成されている先側足部10aを保持する固定フード3が一体形成されており、固定フード3の形成部位より後方側に可動フード5を螺着する雌ねじ部4が設けてある。
図4,8,9に示すように、可動フード5には、リール脚10Aの先端において竿元側に屈曲形成されている元側足部10aを保持するフード本体5Aと、フード本体5A内に装着されている樹脂製の脚押さえ体5Bと、フード本体5Aを竿軸線X方向に螺進移動さ
せるナット体7とが装備されている。
【0015】
シートベース2について説明する。
図5に示すように、シートベース2は、ポリエステル、ABS、PET等のエンジニアリング樹脂を使用した筒状体である。前記したように、竿先半部に外向きに盛り上がっている固定フード3を形成してあり、固定フード3のフード内部に入り込む状態で先側載置面2Aを形成してある。この先側載置面2Aでリール脚10Aの先端において竿元側に屈曲形成されている先側足部10aを載置支持すべく構成してある。
先側載置面2Aの竿元側に、位置決め用の環状鍔2Cが設けてあり、環状鍔2Cの更に竿元側に、可動フード5内に入り込む元側載置面2Bを形成してある。元側載置面2Bでリール脚10Aの先端において竿元側に屈曲形成されている元側足部10aを載置支持すべく構成してある。
【0016】
環状鍔2Cは、図2及び図5に示すように、元側載置面2Bの両横側方に幾分張り出した状態から略シートベース2の周面に沿って周回する状態で巡らされている。環状鍔2Cより竿先側には、環状鍔2Cから竿先側に向けて、後記するグリップ被覆体としてのゴムグリップ6の取付座2Dが形成してある。取付座2Dは、環状鍔2Cより一段凹入する面に形成してあり、図4及び図6に示すように、ゴムグリップ6をこの取付座2Dに装着した際に、ゴムグリップ6の外周面と環状鍔2Cの外周縁とを面一状態に設定して、高さを揃えるように形成してある。
【0017】
図2及び図5に示すように、固定フード3は、取付座2Dより一段突出する状態に外面3Aが形成してあり、固定フード3の外面3Aも、ゴムグリップ6を取付座2Dに装着した状態で、そのゴムグリップ6の外面と面一状態となるように構成してある。
取付座2Dにおける固定フード3の存在側とは反対側の面と固定フード3の横側方側の面には、シートベース2の軸線方向に沿った突条2aが形成してあり、この突条2aが取付座2Dに装着したゴムグリップ6の内周面に形成した後記する長溝6eに係合して、ゴムグリップ6の捲れ上がりを抑制する構成を採っている。
【0018】
先側載置面2Aと元側載置面2Bとの間にも、一段凹入する面としての繋ぎ部分2cが形成してあり、取付座2Dの他の部分と段差の無い状態に連なっており、先側載置面2Aと元側載置面2Bとの間の繋ぎ部分2cも取付座2Dの一部を形成する。後記するゴムグリップ6を取付座2Dに装着した状態で、ゴムグリップ6の外面と、先側載置面2A及び元側載置面2Bとが面一状態となるように構成してある。
【0019】
シートベース2におけるリール脚10Aの先側足部10aと元側足部10aを載置する部位について詳述する。図2及び図4〜図8に示すように、先側載置面2Aは断面形状としては前記したように、円弧状を呈する形状を採っているが、図6に示すように平面視では、竿元側に向う程、徐々に、左右方向での横幅を狭める形状を呈している。
一方、元側載置面2Bは略一定の広い横幅を呈し、竿元側端部において左右方向での横幅を狭める形状を呈している。図6に示すように、先側載置面2Aと元側載置面2Bとの間でゴムグリップ6の取付座2Dの一部を形成する繋ぎ部分2cにおいては、先側載置面2Aの竿元側端の横幅L1と元側載置面2Bの竿先側端の横幅L2とに連続的に繋がるような横幅を呈している。
【0020】
先側載置面2Aの両横側方には、皿状の左右の先側傾斜凹入面2eを形成してあり、この皿状の左右の先側傾斜凹入面2eは、竿軸芯方向に向けて僅かに凹入する形状に形成してあり、かつ、左右の先側傾斜凹入面2eにおける先側載置面2A側に位置する端部ほど左右の間隔を狭める上向きの傾斜状態に形成してある。元側載置面2Bの両横側方にも、同じように、上向きの元側傾斜凹入面2fを形成してあり、更に、取付座2Dにおいて繋ぎ部分2c以外の周面部分は、取付座2Dの一部を構成する円弧状面2gに形成してある。円弧状面2gは、取付座2Dの一部を構成する部分であるので、竿先側に位置する斜め上向き先側傾斜凹入面2eと竿元側に位置する斜め上向きの元側傾斜凹入面2fよりも、ゴムグリップ6の厚みに相当するだけの深さで凹入形成されている。
【0021】
次に、ゴムグリップ6について説明する。図2及び図4〜図8に示すように、ゴムグリップ6は、NBR等のゴムを材料とした筒状体であり、取付座2Dに装着した状態で固定フード3をゴムグリップ6より突出させるように、楕円状の抜き孔6Aが形成してある。
【0022】
ゴムグリップ6における抜き孔6Aより竿先側の部分6Cは、竿先側の開口部6bに近接する程小径化する緩円錐筒状に形成してある。一方、ゴムグリップ6の竿元側にも筒状の竿元側の部分6Dが形成してあり、竿元側の部分6Dにはゴムグリップ6の竿元側に円弧状を呈する載置面部6cと、その載置面部6cの両横側方側に竿軸芯方向に向けて凹入する状態で、かつ、載置面部6c側に位置する端部ほど互いの左右間隔を狭めるように上向き傾斜状態にある皿状の左右の中間傾斜凹入面部6dが形成してある。
中間傾斜凹入面部6dによって、ゴムグリップ6を所定位置に装着した際に、シートベース2に形成された斜め上向き傾斜凹入面2eとゴムグリップ6の斜め上向き傾斜面6dとが段差無く繋がることとなっている。
【0023】
図5〜図8に示すように、抜き孔6Aの存在側とは180°反対側には、他の部分よりやや外方に膨出する膨出部6Bが設けてあり、この膨出部6Bに宛がわれる手指が滑り難いように、表面加工が施してある。つまり、表面の滑りを抑制するために、細かい凹凸を形成する梨地加工が施してある。
この膨出部6Bの内周面には、抜き孔6Aの存在側とは180°反対側及び左右の両側面の3箇所に、竿軸線X方向に沿った細幅の長溝6eが形成してあり、ゴムグリップ6を
シートベース2に装着した際に、シートベース2に突出形成した突条2aに細幅の長溝6eが外嵌係合して、ゴムグリップ6の位置決めを行うとともにゴムグリップ6の捲れ上がりを抑制する構成を採っている。
【0024】
以上のような構成になるゴムグリップ6を、図4に示すように、竿元側開口6aから取付座2Dに外嵌装着すると、ゴムグリップ6の外面が固定フード3の外面3Aと面一状態に、かつ、竿元側開口6aを囲む外縁が環状鍔2Cに当接し、ゴムグリップ6の外面が環状鍔2Cの外面と面一状態に連なる。
【0025】
図4及び図6に示すように、ゴムグリップ6を取付座2Dに装着した状態で、先側載置面2Aと、元側載置面2Bと、ゴムグリップ6における載置面部6cとを、竿軸線Xに沿
った方向で連続する足部載置面に形成する。図6(a)に示すように、足部載置面の横幅を、竿軸線Xに沿った方向で中間に位置する部分の横幅ほど絞り込んで狭くなるように形
成してある。
【0026】
先側載置面2A、元側載置面2Bの両横側方に位置する部分を円弧面に形成するのではなく、前記した先側傾斜凹入面2eとして上向きの傾斜面に形成することによって、その両側方に対応する部分の外径を小さくでき、かつ、足部載置面の竿軸線に沿った方向で中間に位置する部分の横幅ほど絞り込んで狭くなるように形成したので、シートベース2に取付られたリール脚10Aの先側足部10a、及び、元側足部10aをそのシートベース2とともに握り込む際に握り易い。
しかも、後記するように、ゴムグリップ6を円弧状面2gに装着した際に、ゴムグリップ6に形成した中間傾斜凹入面6dが、竿先側に位置する斜め上向きの先側傾斜凹入面2eと段差なく連続する状態となるので、手指や掌を圧迫することが少なく、仕掛けの打ち込みや魚の釣り上げ操作を行う場合に、手が痛くならず負担も少ない。
【0027】
可動フード5について説明する。図2〜図9に示すように、可動フード5は、アルミニュウムやチタン等の軽量金属製のフード本体5Aと、そのフード本体5Aのリール脚挿入用保持部5aに内装されるゴム製または合成樹脂製の脚押さえ体5Bとを装備している。
脚押さえ体5Bは、リール脚挿入用保持部5aに内装されるように、略円弧状を呈するものであり、フード本体5Aの竿先側端に鍔部5bを突出させるとともに、左右中央部に突起5cを設け、この突起5cをフード本体5Aの天井部分に形成した抜き孔5d内に嵌合させて、脚押さえ体5Bの位置決めを行っている。
【0028】
フード本体5Aは、図9に示すように、断面形状として、シートベース2に外嵌する略4分の3円弧状を呈する部分とアーチ状を呈するリール脚挿入用保持部5aとを一体形成した縦長い楕円状を呈するものであり、成形型で一体形成される。
フード本体5Aは、前記したように、成形型で一体形成されるものであるために、従来は、シートベース2の外周面に密着する程高い成型性を示してはいないので、フード本体5Aを所定位置に装着した状態で、円周方向でのガタ付きが出ることは否めなかった。
【0029】
そこで、ズレ動き抑制機構Cを設けてそのガタ付きを抑制することとした。ここでは、まず、フード本体5Aと脚押さえ体5Bとの取り付け構造について説明しその後ズレ動き抑制機構Cについて説明する。
つまり、図9に示すように、フード本体5Aにおける略4分の3円弧状を呈する部分とアーチ状を呈するリール脚挿入用保持部5aとの接続部位近傍には、上向き段差部5eが設けてある。
一方、脚押さえ体5Bには、左右の両下端部近傍の外面に下向き段差部5gが形成してある。脚押さえ体5Bをフード本体5Aのリール脚挿入用保持部5a内に挿入した際に、脚押さえ体5Bの下向き段差部5gがフード本体5Aの上向き段差部5eに上方から当接して、脚押さえ体5Bが装着支持される。
【0030】
脚押さえ体5Bの左右両側下端部には、厚さの薄い袴部5hが下方に向けて延出してあり、袴部5hは下方に向って徐々に厚みを薄くする構成を採っている。一方、シートベース2の袴部5hに対応する外面は、前記したように、上向きに凹入傾斜する皿状の元側傾斜凹入面2fが形成してある。そして、袴部5hが元側凹入面2fに接触し受止られることによって、袴部5hの下端部をフード本体5Aとシートベース2の外周面とで挟み込み固定するように構成してある。
【0031】
ここに、袴部5hを当接部と称する。元側傾斜凹入面2fを受け部と称する。
このような袴部(当接部)5hと元側傾斜凹入面(受け部)2fとで、ズレ動き抑制機構Cを構成してある。
このような構成によって、可動フード5が脚押さえ体5Bとともに、円周方向へ回転しようとしても、袴部5hの下端部がフード本体5Aとシートベース2の外周面とで挟み込み固定されて回転が抑制される。したがって、可動フード5の円周方向でのガタ付きが抑制され、筒状リールシートBを握る手指が安定する。
【0032】
このように、金属製のフード本体5Aではなく、樹脂製またはゴム製の脚押さえ体5Bに袴部5hを形成することによって、ズレ動き抑制機構Cを構成した。したがって、フード本体5Aとシートベース2の外周面とが多少の固体誤差を持って形成された場合にも、脚押さえ体5Bの樹脂またはゴムの弾性変形力によって、袴部5hの下端部をフード本体5Aとシートベース2の外周面とで挟み込み固定する状態が確実に維持されて、良好なズレ動き抑制機能を発揮するズレ動き抑制機構Cが構成される。
【0033】
図2〜図6に示すように、可動フード5のフード本体5Aは、リール脚10Aを保持するリール脚挿入用保持部5aから竿元側に向けて外径が細くなる中間縮径部5jを形成してあり、中間縮径部5jより竿元側に中間縮径部5jの外径より大径の受止部5kを形成してある。
【0034】
以上のような構成により、リール脚10Aと筒状リールシートBとを共握りして釣り動作を行う場合に、手の掌がゴムグリップ6の膨出部6Bに掛って竿先側への移動が抑制される状態にあり、小指が可動フード5の中間縮径部5jに掛って受止部5kによって竿元側への移動が抑制されており、握りの状態が安定する構成となっている。
【0035】
図2〜図6に示すように、ゴムグリップ6を受け止める環状鍔2Cは、元側載置面2Bを除く全周面に亘って巡らされており、元側載置面2B存在側とは180°反対側に至る程、竿元側に偏位するように形成されている。このような構成によって、環状鍔2Cに当接して位置決めされるゴムグリップ6の竿元側端は、元側載置面2B存在側とは180°反対側において、竿元側に入り込んで位置することとなる。つまり、図5及び図6に示すように、環状鍔2Cの竿先端側において想定した基準線Yよりも、ゴムグリップ6の竿元側端は、竿元側に延出されている。
【0036】
しかも、可動フード5においても、図5及び図7に示すように、フード本体5Aの竿先側端5Cの開口縁の側面視形状は、リール脚挿入保持部5aを形成する上半部5fとシートベース2に外嵌される下半部5pとの中間位置に対応する部分が、最も竿先側に突出する形状に形成してある。下半部5pでは、環状鍔2Cに沿うように、リール脚挿入保持部5aの存在側とは180°反対側に至る程、フード本体5Aの竿先側端5Cの開口縁の側面視形状が竿元側に偏位する状態に形成されている。
【0037】
したがって、環状鍔2Cと可動フード5とが共にリール脚載置側とは180°反対側の面において竿元側に偏位した形状を呈するので、前記した基準線Yよりも竿元側において、ゴムグリップ6が竿元側に入り込んで露出する状態にある。
このような構成によって、リール脚10Aをシートベース2と共に握った手指における親指部分がゴムグリップ6に当てがわれることとなって、圧迫感を感じることが少ない。
【0038】
なお、図1及び図4に示すように、可動フード5は、環状鍔2Cに当接することによって、固定フード3の存在側への移動が規制されている。つまり、可動フード5のリール脚挿入用保持部5aに装着された脚押さえ体5Bの左右両側端が、環状鍔2Cの上端に当接するとともに、フード本体5Aの竿先側端5Cも環状鍔2Cに当接して、固定フード3側への移動が規制される。
このような構成によって、可動フード5の外周面と環状鍔2Cとゴムグリップ6の外周面とが略面一状態に連なることとなり、その部分を握る手に圧迫感を与えることが少ない。
【0039】
図3及び図7〜図9に示すように、可動フード5のリール脚挿入用保持部5aとは180°反対側には、内向きに突出する係合突起5nが設けてあり、シートベース2の竿元端に設けてある雌ネジ部4に形成したガイド溝4aに係合突起5nを係合させることによって、可動フード5をナット体7の回転によって、シートベース2の軸線方向に沿ってスライド移動可能に構成してある。
【0040】
図3、図5及び図7に示すように、シートベース2における元側載置面2B存在側とは竿軸芯Xを挟んで反対側には、竿軸芯Xに向って凹入する凹入部2dを形成してある。
凹入部2dは、ガイド溝4aの竿先端と環状鍔2Cとの間において、円周方向での横幅が略30°位に亘る範囲に凹入形成されている。尚、凹入部2dとしては、可動フード5との干渉を回避する範囲で、円周方向での横幅を30°〜90°に至る範囲で採っても良い。
【0041】
このような凹入部2dを設けた理由は次のようなものである。
つまり、リール脚10Aを保持すべく、可動フード5がナット体7とともに移動すると、脚押さえ体5Bがリール脚10Aの元側足部10aの甲部分に形成された傾斜面10bに乗り上る状態になるので、可動フード5は、リール脚10Aの元側足部10aによって持ち上げられたような状態となり、シートベース2に対して偏芯した状態となる。
【0042】
そうすると、可動フード5のフード本体5Aにおける固定フード3側に向う開口縁において、リール脚挿入用保持部5aとは反対側の端縁がシートベース2の外周面に食い込むような状態になる。
【0043】
シートベース2の表面には、ウレタン樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料等の適宜塗料が選択されて、刷毛や吹き付けによって塗装されている。
そうすると、前記反対側の端縁がシートベース2の外周面に食い込むような状態になると、塗装面が剥がれる等の不具合が起こり得る。
そこで、前記したように凹入部2dを形成してあるので、可動フード5の反対側端縁がシートベース2の外周面に食い込むことが抑制されて、塗料が剥がれる等の不具合を抑制することができる。
【0044】
〔第1実施形態における別実施形態〕
(1) ズレ動き抑制機構Cを脚押さえ体5Bの袴部5hに設けて構成したが、脚押さえ体5Bの代わりに、フード本体5Aに袴部5hに相当するものを形成してもよい。
(2) 可動フード5の竿軸線X方向へのスライド移動をガイドする、ガイド溝4aと係合突起5nとの関係を、従来より密着性の高いもの構成し、可動フード5の円周方向でのズレ動き(ガタツキ)を抑制すべく、ガイド溝4aと係合突起5nとをズレ動き抑制機構Cに兼用構成してもよい。
【0045】
〔第2実施形態〕
第1実施形態の内、シートベース2に環状鍔2Cを形成していない実施形態のものを第2実施形態とする。したがって、環状鍔2Cの存在しない部分はシートベース2の他の外周面と面一状態となる。
【0046】
〔第3実施形態〕
第1実施形態の内、シートベース2にゴムグリップ6を装着していない実施形態のものを第3実施形態とする。従って、シートベース2に形成したゴムグリップ6を装着する為の取付座2Dはなく、シートベース2の外面は固定ガイド3の外面と面一状態で形成される。
【0047】
〔第4実施形態〕
第1実施形態の内、シートベース2に可動フード5との干渉を回避する為の凹入部2dを設けない実施形態のものを第4実施形態とする。凹入部2dを形成しない部分は、シートベース2における外周面の他の部分と面一状態に形成する。
【0048】
〔第5実施形態〕
第1実施形態の内、シートベース2には先側傾斜凹入面2eと元側傾斜凹入面2fとを形成していない実施形態のものを第5実施形態とする。従って、シートベース2の先側載置面2Aと元側載置面2Bの両横側方には、傾斜面ではなく、円弧面を形成してもよい。
【0049】
〔第6実施形態〕
第1実施形態の内、ゴムグリップ6の膨出部6Bと可動フード5の中間縮径部5jと受止部5kとを形成していない実施形態のものを第6実施形態とする。したがって、ゴムグリップ6では、膨出部6Bを形成せずに外周面を一定の外径を呈するものに形成し、可動フード5においても中間縮径部5jと受止部5kに相当する部分を一定の外径を呈する部分に構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本願発明は、筒状リールシートBを装備する磯竿、船竿等に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
2 シートベース
2f 元側傾斜凹入面(受け部)
5 可動フード
5A フード本体
5B 脚押さえ体
5h 袴部(当接部)
C ズレ動き抑制機構
X 竿軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿体の竿軸線方向に沿ってスライド移動自在な可動フードをシートベースに取り付け、前記シートベースと前記可動フードとに、前記可動フードが円周方向にズレ動くのを抑制するズレ動き抑制機構を設けてあるリールシート。
【請求項2】
前記可動フード内にリール脚を押さえ保持する脚押さえ体を装着し、前記脚押さえ体に前記シートベースの受け部に当接する当接部を設け、前記受け部と前記当接部とで前記ズレ動き抑制機構を構成してある請求項1記載のリールシート。
【請求項3】
前記シートベースにおけるリール脚載置面とは竿軸心を挟んで180°反対側に、竿軸線に平行なガイド溝を形成するとともに、前記可動フードに前記ガイド溝に係合する係合突起を設け、前記係合突起と前記ガイド溝との係合状態によって、前記可動ガイドを竿軸線に平行な方向でスライド移動自在に構成してある請求項1記載のリールシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−273586(P2010−273586A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128197(P2009−128197)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】