説明

ルックアップテーブル作成方法及びPETシステム

【課題】PET検出器における結晶識別を容易にすることが可能なルックアップテーブル作成方法及びPETシステムを提供することである。
【解決手段】実施形態に係るルックアップテーブル作成方法は、シンチレーションアレイ内の複数の結晶のうち第1の一部の結晶を覆うためにシンチレーションアレイ上の第1の位置にマスクを配列する。また、シンチレーションアレイにガンマ線を照射し、シンチレーションアレイにより生成された光を受ける光センサからの第1のセットのデータを収集する。また、複数の結晶のうち第2の一部の結晶を覆うためにシンチレーションアレイ上の第2の位置にマスクを再配列して、ガンマ線の照射を繰り返し、光センサから第2のセットのデータを収集する。また、第1のセットの収集データから作成した第1のフラッドヒストグラムを、第2のセットの収集データから作成した第2のフラッドヒストグラムに重ね合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で述べる実施形態は、概してポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)検出器における結晶識別に関する。特に、ここで述べる実施形態は、PET検出器における結晶識別を容易にする改良方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガンマ線検出器、特にPETの使用は、医用イメージングの分野で増大している。PETイメージングでは、注射、吸入、または経口摂取によって、撮像される被検体に放射性薬剤が取り入れられる。放射性薬剤の投与後、その薬剤は、その物理的および生体分子的な特性によって、人体内の特定部位に集中する。薬剤の実際の空間分布、薬剤の蓄積領域の濃度、および投与されてから最終的に排出されるまでのプロセスの動態は、全て、臨床的な重要性を持ち得る因子である。このプロセスの間に、放射性薬剤に付着したポジトロン放射体は、半減期、分岐比などの同位元素の物理的性質に応じてポジトロンを放射する。
【0003】
放射性核種は、ポジトロンを放射する。そして、放射されたポジトロンが電子と衝突すると、消滅イベントが起こり、ポジトロンおよび電子が消滅する。多くの場合、消滅イベントは、ほぼ180度方向に放出される511keVの2つのガンマ線を発生させる。
【0004】
PETイメージングシステムは、被検体から放射されるガンマ線を検出するために、相互に対向して配設された検出器を使用する。典型的には、各角度から飛来するガンマ線を検出するために、環状に配置された検出器を使用する。したがって、PETスキャナは、本質的に等方性になっているはずの照射をできるだけ多く捕獲できるように、典型的には実質的に円筒形状を有している。対応できていない角度のものを捕獲するのに部分円環を使用すること及び検出器を回転することも考えられないことではない。しかし、これらの手法を実施しても、結果は、スキャナ全体の感度に対して厳しいものとなる。1つの面に含まれる全てのガンマ線が検出器と相互作用を起こす機会を有する円筒形状では、軸方向の寸法が大きくなると、感度又は照射を捕獲する能力に非常に有利な効果が現れる。したがって、最良の構造は、全てのガンマ線が検出される可能性がある球体構造である。当然ながら、人体への適用では、球状構造は、極めて大きくなり、極めて高価にならざるをえない。したがって、現実的には、検出器の軸方向の長さが可変である円筒形状が、最新のPETスキャナの構造の基本である。
【0005】
PETスキャナ全体の形状が分かれば、もう1つの課題は、できるだけ多くのシンチレーション材料をガンマ線経路に配置して、できるだけ多くのガンマ線を停止させて光に変換することである。断層撮影再構成の原理によって放射性同位体の時空間分布を再構成できるようにするために、検出された各イベントのエネルギー(すなわち、発生した光の量)、位置、及びタイミングを特徴付ける必要がある。ほとんどの最新PETスキャナは、数千個の個別の結晶で構成される。これらの結晶は、モジュール化して配置され、シンチレーションイベントの位置を特定するために用いられている。典型的には、結晶素子の断面は、概ね4mm×4mmである。これよりも小さい寸法や大きい寸法、または正方形以外の断面の場合もある。結晶の長さや奥行きは、ガンマ線を捕捉する確率を決定することになるのであるが、典型的には、10〜30mmの範囲である。かかる検出器モジュールは、スキャナの主たる構成部品である。
【0006】
上記のように、PETイメージングシステムは単なる計数器ではなく、シンチレーション事象の存在を検出することに加え、その部位の識別も行う必要がある。各相互作用の部位を識別できるようにするための最も端的な設計は、概念的には、恐らくシンチレータ結晶毎に独立した光センサ及びデータ収集チャネルを有するようにすることである。一般的な光センサの物理的な大きさ、各データ収集チャネルに必要な電力、及びこれらの品目の関連コスト等の制約があり、光センサ数及び電子機器のチャネル数を減らすために、通常は何らかの形で多重化が採用される。このため、個々の光センサが1つ以上の結晶に入射する複数のガンマ線を検出し、さらに1つの結晶に入射する複数のガンマ線を1つ以上の光センサが検出するため、これらの光センサの出力を個々の結晶で識別する必要がある。
【0007】
一般的に、結晶アレイ全体がガンマ線を大量に受けて、フラッドヒストグラムが作られる。このフラッドヒストグラムのピークを、画像処理技術を用いて見つける作業が繰り返される。しかし、自動画像処理技術を利用できないフラッドヒストグラム上では、ピークを人がクリックする場合があり、人力による介入がしばしば起こる。このため、多数の結晶を識別するための自動処理は、市販されたものがない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】WW.Moses著、「改訂PETにおける飛行時間」IEEE Transactions on Nuclear Science、Vol.50、No.5、p.1325〜1330
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、PET検出器における結晶識別を容易にすることが可能なルックアップテーブル作成方法及びPETシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係るルックアップテーブル作成方法は、ガンマ線検出器において相互作用の結晶を識別するためのルックアップテーブルを作成するルックアップテーブル作成方法である。前記ルックアップテーブル作成方法は、シンチレーションアレイ内の複数の結晶のうち一部の結晶へのガンマ線の照射を遮るために前記一部の結晶を覆うように構成されたマスクを、第1の一部の結晶を覆うために前記シンチレーションアレイ上の第1の位置に配列するステップを含む。また、前記ルックアップテーブル作成方法は、前記シンチレーションアレイに所定のエネルギーを有するガンマ線を照射するステップを含む。また、前記ルックアップテーブル作成方法は、前記シンチレーションアレイにより生成された光を受けるために配置された少なくとも1つの光センサからの第1のセットのデータを収集するステップを含む。また、前記ルックアップテーブル作成方法は、前記複数の結晶のうち前記第1の一部の結晶とは異なる第2の一部の結晶を覆うために前記シンチレーションアレイ上の第2の位置に前記マスクを再配列するステップを含む。また、前記ルックアップテーブル作成方法は、前記マスクを前記シンチレーションアレイ上の前記第2の位置に配列して、前記所定のエネルギーを有するガンマ線を照射するステップを繰り返すステップを含む。また、前記ルックアップテーブル作成方法は、前記マスクを前記シンチレーションアレイ上の前記第2の位置に配列して、前記少なくとも1つの光センサから第2のセットのデータを収集するステップを含む。前記ルックアップテーブル作成方法は、前記第1のセットの収集データから第1のフラッドヒストグラムを作成し、前記第2のセットの収集データから第2のフラッドヒストグラムを作成するステップを含む。前記ルックアップテーブル作成方法は、重ね合わせたフラッドヒストグラムを作成するため、前記第1のフラッドヒストグラムを前記第2のフラッドヒストグラムに重ね合わせるステップを含む。前記ルックアップテーブル作成方法は、前記重ね合わせたフラッドヒストグラムの領域を、前記複数の結晶のうち対応する結晶に割り当てることにより、ルックアップテーブルを生成するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明とこれに付随する多くの利点をより完全に理解することは、以下の詳細な説明を参照し添付図面と関連付けて考えれば、容易にできる。しかし、添付図面とそこに示される例は、発明の詳細な説明に含まれる本発明の範囲を決して制限するものではない。発明の詳細な説明及び図面に含まれる本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載により規定される。
【図1】図1は、円筒形のPET検出器の例を示す。
【図2】図2は、検出器を2方向から見た図であり、シンチレータ結晶の配置を示す。
【図3】図3は、PETシステムの例を示す。
【図4】図4は、ガンマ線検出システムの概略図である。
【図5】図5は、PETシステムの構築で使用される処理装置のブロック図である。
【図6】図6は、PET管理システムの例を示す。
【図7】図7は、シンチレータアレイの例を示す。
【図8】図8は、第1の位置に格子構造を有するマスク付きのシンチレータアレイを示す。
【図9】図9は、第2の位置に格子構造を有するマスク付きのシンチレータアレイを示す。
【図10】図10は、ブロック構造を有するマスク付きのシンチレータアレイを示す。
【図11】図11は、マスク無しのシンチレータアレイのフラッドヒストグラムの例を示す。
【図12】図12は、マスクを使用した結晶識別を実行するための手順の例を示す。
【図13】図13は、マスクを使用した結晶識別を実行するための手順の別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に開示する実施形態は、ガンマ線検出器において相互作用の結晶を特定するためのルックアップテーブルを作成する方法を含む。前記方法は、一部の結晶へのガンマ線の照射を遮るために、シンチレーションアレイ内の複数の結晶のうち前記一部の結晶を覆うように構成されたマスクを配置するステップを含む。ここで前記マスクは、第1の一部の結晶を覆うため前記シンチレーションアレイ上の第1の位置に配列されたものである。前記方法は、シンチレーションアレイに所定のエネルギーを有するガンマ線を照射するステップを含む。さらに、前記方法は、前記シンチレーションアレイにより生成された光を受けるために配置された少なくとも1つの光センサからの第1のセットのデータを収集するステップを含む。また、前記方法は、前記複数の結晶のうち第2の一部の結晶を覆うために、前記シンチレーションアレイ上の第2の位置に前記マスクを再配列するステップを含む。ここで前記第2の一部の結晶は、前記第1の一部の結晶とは異なるものである。その上、前記方法は、前記マスクを前記シンチレーションアレイ上の前記第2の位置に配列して、前記照射するステップを繰り返すステップを含む。次に、前記方法は、前記マスクを前記シンチレーションアレイ上の前記第2の位置に配列して、前記少なくとも1つの光センサから第2のセットのデータを収集するステップを含む。前記方法は、前記第1のセットの収集データから第1のフラッドヒストグラムを作成し、前記第2のセットの収集データから第2のフラッドヒストグラムを作成するステップを含む。さらに、前記方法は、重ね合わせたフラッドヒストグラムを作成するため、前記第1のフラッドヒストグラムを前記第2のフラッドヒストグラムに重ね合わせるステップを含む。また、前記方法は、前記重ね合わせたフラッドヒストグラムの領域を、前記複数の結晶のうち対応する結晶に割り当てることにより、ルックアップテーブルを生成するステップを含む。
【0013】
本明細書に開示する実施形態は、ガンマ線検出器において相互作用の結晶を特定するためのルックアップテーブルを作成する方法を含む。前記方法は、一部の結晶へのガンマ線を遮るために、シンチレーションアレイ内の複数の結晶のうち前記一部の結晶を覆うように構成されたマスクを配置するステップを含む。ここで前記マスクは、第1の一部の結晶を覆うため前記シンチレーションアレイ上の第1の位置に配列されたものである。前記方法は、前記シンチレーションアレイに所定のエネルギーを有するガンマ線を照射するステップを含む。さらに、前記方法は、前記シンチレーションアレイにより生成された光を受けるために配置された少なくとも1つの光センサからの第1のセットのデータを収集するステップを含む。また、前記方法は、前記マスクを前記シンチレーションアレイから取り去るステップを含む。その上、前記方法は、前記マスクを前記シンチレーションアレイの位置から取り去り、前記照射するステップを繰り返すステップを含む。次に、前記方法は、前記マスクを前記シンチレーションアレイ上に配列せずに、前記少なくとも1つの光センサから第2のセットのデータを収集するステップを含む。前記方法は、前記第1のセットの収集データから第1のフラッドヒストグラムを作成し、前記第2のセットの収集データから第2のフラッドヒストグラムを作成するステップを含む。さらに、前記方法は修正フラッドヒストグラムを作成するため、前記第1のフラッドヒストグラムを前記第2のフラッドヒストグラムから差し引くステップを含む。また、前記方法は、前記第1のフラッドヒストグラムと修正フラッドヒストグラムの領域を、前記複数の結晶のうち対応する結晶に割り当てることにより、ルックアップテーブルを生成するステップを含む。
【0014】
本明細書に開示する実施形態は、結晶識別のためのPETシステムを含む。また、前記システムは、複数の結晶を含むシンチレーションアレイ、及び前記複数の結晶のうち一部の結晶へのガンマ線の照射を遮るために前記一部の結晶を覆うように構成されたマスクを含む。前記システムは、前記シンチレーションアレイによって生成される光を受けるように配置された少なくとも1つの光センサを含む。さらに、前記システムは、第1の一部の結晶を覆うために前記マスクが前記シンチレーションアレイの上の第1の位置に配置されたとき、前記シンチレーションアレイへのガンマ線の照射に応じて、前記少なくとも1つの光センサから第1のセットのデータを収集するように構成された処理装置を含む。さらに、前記処理装置は、前記第1の一部の結晶とは異なる第2の一部の結晶を覆うために前記マスクが前記シンチレーションアレイ上の第2の位置に配置されたとき、前記シンチレーションアレイへのガンマ線の照射に応じて、前記少なくとも1つの光センサから第2のセットのデータを収集するように構成される。さらに、前記処理装置は、前記第1のセットの収集データから第1のフラッドヒストグラム、及び前記第2のセットの収集データから第2のフラッドヒストグラムを作成するように構成される。その上、前記処理装置は、重ね合わせたフラッドヒストグラムを作成するため、前記第1のフラッドヒストグラムを前記第2のフラッドヒストグラムに重ね合わせるように構成される。また前記重ね合わせたフラッドヒストグラムの領域を前記複数の結晶のうちの対応する結晶に割り当てることによりルックアップテーブルを生成するように構成される。
【0015】
本明細書で開示される実施形態は、結晶識別のためのPETシステムを含む。また、前記システムは、複数の結晶を含むシンチレーションアレイ、及び前記複数の結晶のうち一部の結晶へのガンマ線の照射を遮るために前記一部の結晶を覆うように構成されたマスクを含む。前記システムは、前記シンチレーションアレイによって生成された光を受けるように配置された少なくとも1つの光センサを含む。さらに、前記システムは、第1の一部の結晶を覆うために前記マスクが前記シンチレーションアレイの上の第1の位置に配置されたとき、前記シンチレーションアレイへのガンマ線の照射に応じて、前記少なくとも1つの光センサから第1のセットのデータを収集するように構成された処理装置を含む。さらに、前記処理装置は、前記マスクが前記シンチレーションアレイから取り去られたとき、前記シンチレーションアレイへのガンマ線の照射に応じて、前記少なくとも1つの光センサから第2のセットのデータを収集するように構成される。さらに、前記処理装置は、前記第1のセットの収集データから第1のフラッドヒストグラム、及び前記第2のセットの収集データから第2のフラッドヒストグラムを作成するように構成される。その上、前記処理装置は、修正フラッドヒストグラムを作成するため、前記第1のフラッドヒストグラムを前記第2のフラッドヒストグラムから差し引くように構成される。また、前記処理装置は、前記第1のフラッドヒストグラム及び前記修正フラッドヒストグラムの領域を前記複数の結晶のうちの対応する結晶に割り当てることにより、ルックアップテーブルを生成するよう構成される。
【0016】
一実施形態に係る方法により、シンチレータアレイにおける端部の結晶を、現行の方法よりも確実に検出しマッピングしやすくなる。一実施形態では、前記方法は、PETシステムの中で使用されるシンチレータアレイの上に配置されたマスクを使用するステップを含む。例として、前記マスクは、前記マスクで覆われる結晶へのガンマ線の照射を遮るように構成される。このため、結晶へのガンマ線の照射を遮る前記マスクを使用することにより、隣接する結晶からの干渉が除去されて、シンチレータアレイ内の各結晶の識別が容易になる。
【0017】
図1に、円筒形リング102を備えた円筒形PET検出器100の例を示す。一部の実施形態に係る前記PET検出器には、複数のシンチレータアレイ104を含むものもある。撮像対象の患者すなわち被検体がシリンダ102の内部に置かれる。放射線医薬品(ポジトロン放射体)が被検体に投与される。放射線医薬品は崩解する際に、ポジトロンを放出する。これらのポジトロンは近くの電子と相互作用して両者は消滅し、同一直線上に2つの511keVのガンマ線を発生する。そして、これらのガンマ線はシンチレータと相互作用し、光学光子に変換される。光学的にシンチレータ結晶に接続された光電子倍増管(Photomultiplier Tube:PMT)が光学光子を検出し、入射ガンマ線のエネルギーに比例した電気信号を生成する。これら2つのガンマ線を多くのそうした崩壊過程を通して検出し、そして断層画像再構成処理を用いることにより、投与した放射線医薬品の実際の空間的分布画像を詳細に描くことが可能である。
【0018】
一実施形態では、1つのPMTが2つ以上のシンチレータ結晶に光学的に接続されている。図2は検出器を2方向から見た図であり、シンチレータ結晶200、ライトガイド202、光センサ204(例えば、PMT)の配置を示す。図2に示すように、光センサ204は2つ以上の結晶から光を受ける。一実施形態では、ライトガイドがシンチレーション光を1つのシンチレータ結晶から複数の光センサ上に広げる。
【0019】
図3はPETシステムの例を示す図で、CPU(Central Processing Unit)302、ガンマ線304、シンチレータアレイ306、光センサ308が含まれる。一実施形態では、ガンマ線304は511keVでシンチレータアレイ306に向け放出される。ガンマ線の発生源の例には、消滅事象を発生させる医薬品を摂取した被検体が含まれる。ガンマ線がシンチレータアレイ306に衝突すると、1つ以上の結晶が放射化し、光が1つ以上の光センサ308に放出される。この光を受けると同時に、光センサ308は光を電気信号に変換する。この電気信号は検出情報の解析のためにCPU302に送られる。一部の実施形態では、CPU302はPETシステム300から離れ、PETシステム300と無線通信するものもある。
【0020】
図4は、一実施形態に係るガンマ線検出システムの概略図である。当業者には自明であるが、図4のガンマ線検出システムはPETシステムや飛行時間型(Time Of Flight:TOF)PETシステムの一部を形成する。PETシステムと飛行時間型PETシステムについてのさらなる解説は、簡潔にするため省略する。しかし、飛行時間型PETシステムについての解説が非特許文献1にあり、その全ての内容が参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。
【0021】
一実施形態によると、図4のガンマ線検出システムは、CPU302(図3)に相当する演算装置470を含む。また図4のガンマ線検知システムは、光センサ308(図3)に相当する光センサ435A、435B、440A、440Bを含む。一実施形態では、光センサ435A、435B、440A、440Bは非線形である。
【0022】
図4では、光センサ435A、440Aはライトガイド430Aの上に配置されており、シンチレーション結晶アレイ405Aはライトガイド430Aの下に配置されている。当業者に自明であるが、実施形態は任意の光センサを用いた検出器に適用できる。この光センサにはシリコン光電子増倍管(Silicon Photomultiplier:SiPM)又はSiPMsをアレイ状に配置したものも含まれる。第2のシンチレーション結晶アレイ405Bが、シンチレーション結晶アレイ405Aに対向して、ライトガイド430B、光センサ435B、440Bに重ねて配置される。
【0023】
図4では、ガンマ線が被検体(図示せず)から放出されると、ガンマ線は互いに約180度の反対方向に進む。ガンマ線は、相互作用の結晶400Aと相互作用の結晶400Bで、ほぼ同時に検出される。そして、既定制限時間内に相互作用の結晶400Aと相互作用の結晶400Bでガンマ線が検出されると、シンチレーション事象が特定される。こうして、ガンマ線検出システムはガンマ線を、相互作用の結晶400Aと相互作用の結晶400Bでほぼ同時に検出する。しかし簡略化のために、相互作用の結晶400Aでのガンマ検出のみをここで説明する。当業者には自明であるが、相互作用の結晶400Aについての説明は、相互作用の結晶400Bでのガンマ線検出にも同様に適用できる。
【0024】
図4に戻り、各光センサ435A、440A、435B、440Bはデータ取得装置450又は460に接続されている。データ取得装置450、460は、シンチレーション光に反応して光センサ435A、440A、435B、440Bで生成される対応波形を積分することにより、デジタル化した出力を生成する。
【0025】
データ取得装置450、460は、1ギガヘルツ〜5ギガヘルツのサンプリングレートで動作するシグマデルタ変換器等のアナログデジタル変換器を含む。あるいは、データ取得装置450、460は、一定のサンプリングレートではなく電圧閾値をトリガに用いて光センサ波形をサンプリングする多重閾値サンプラを含む。当業者には自明であるが、他のサンプリング方法及びデータ取得装置も可能である。例えば、エネルギーとタイミングでそれぞれ別のチャネルを用いることも可能である。この場合、一般的にエネルギーチャネルには、整形フィルタ及びより低いサンプリングレートのアナログデジタル変換器を使用する。また、タイミングチャネルは典型的に、複数の光センサからの信号を合計する。次に、合計されたタイミング信号が積分器に入力され、時間デジタル変換器で各事象の受信毎にタイムスタンプが生成される。
【0026】
出力データが得られると演算装置470に送られ、以下に説明する方法に基づき相互作用の結晶及び消滅事象のエネルギーレベルが算出される。次に、出力値と受信時間が電子記憶装置475に格納され、ディスプレイ485に表示できる。インタフェース480は、演算装置470の構成と制御の両方又は一方を行うことと、演算装置470に更なる命令を出すこととの両方又は一方のために使用される。
【0027】
当業者には自明であるが、ディスプレイ485は、ブラウン管ディスプレイ(Cathode-Ray Tube:CRT)や液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)等である。インタフェース480は、キーボード、マウス、トラックボール、マイクロホン、タッチスクリーン等、中央処理装置を接続して機能させるための既知のデバイスである。同様に当業者には自明であるが、電子記憶装置475は、ハードディスクドライブ、CD−ROM(Compact Disc − Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)ディスク、フラッシュメモリ、あるいは別の中央処理装置である。さらに、電子記憶装置475は、演算装置470から着脱可能又は分離可能であり、あるいはこれに取り付けられている。電子記憶装置475は、ネットワークを介して演算装置に接続されており、そのため別の部屋や建物等、演算装置470関連の別の場所に設置される。
【0028】
図5は、PETシステム300(図3)又は演算装置470(図4)を構築するために使用される処理装置500のブロック図である。一部の実施形態によると、それぞれ並行して動作する1つ以上の処理装置500が、PETシステム300(図3)又は演算装置470(図4)を構築するために使用される。
【0029】
一実施形態では、処理装置500は、メインメモリ540とROM550の両方又は一方の中に格納されたデータと命令を処理するCPU580を含む。またCPU580は、ディスク510又はCD−ROM520に格納した情報を処理する。1つの例として、CPU580は、少なくとも1つの米国Intel社製のXenon(登録商標)プロセッサあるいは米国AMD社製のOpteron(登録商標)プロセッサを使用する米国IBM社製のIBM System X(登録商標)である。こうして、可搬式装置における処理に対応する命令が、ディスク510、CD−ROM520、メインメモリ540、あるいはROM550のいずれか1つに格納される。
【0030】
一実施形態では、処理装置500は、ネットワークインタフェース575(米国Intel社製のIntel Ethernet(登録商標) PRO ネットワークインタフェースカード等)、ディスプレイ502(Hewlett Packard HP L2445w LCDモニタ等)を接続して機能させるためのディスプレイ制御部530(米国NVIDIA社製のNVIDIA(登録商標) GeForce(登録商標) GTX グラフィックスアダプタ等)を含む。また処理装置500は、キーボード595、及びローラーボールやマウス等のポインティングデバイス585を接続して機能させるためのI/Oインタフェース590を含む。一部の実施形態によると、ディスク制御部560が、ディスク510(ハードディスクドライブ、フラッシュメモリドライブ等)、及びCD−ROM520又はDVDドライブをバス570に相互接続する。バス570は、ISA(Industrial Standard Architecture)、EISA(Extended Industrial Standard Architecture)、VESA(Video Electronics Standards Association)、PCI(Peripheral Component Interconnect)等、処理装置500の構成要素の全てを相互接続するものである。ディスプレイ502、キーボード595、及びポインティングデバイス585、さらにはディスプレイ制御部530、ディスク制御部560、ネットワークインタフェース575、及びI/Oインタフェース590についても、周知の機能であるため簡潔にするために、一般的機能及び機能性の説明を省略する。もちろん、当技術分野で他の処理装置やハードウェア(米国Freescale社製のFreescale(登録商標) ColdFire(登録商標)、i.MX、ARMプロセッサ等)も知られている。
【0031】
図5の処理装置500の例は、PC(Personal Computer)等の計算機器のハードウェアプラットフォームである。またCPU580は、Intel Pentium(登録商標)プロセッサ等、当技術分野で知られている任意の処理装置である。メインメモリ540、ROM550、ディスク510、又はCD−ROM520のいずれかに格納されているコンピュータで読み取り可能な命令が、ユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、又はオペレーティングシステムの構成要素、あるいはこれらの組み合わせとして提供され、CPU580、及びMicrosoft VISTA(登録商標)、UNIX(登録商標)、Solaris(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple MAC−OS(登録商標)等の当業者に知られているシステムと連動して実行される。
【0032】
メインメモリ540は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)メモリ等である。一方、ROM550はPROM(Programmable Read Only Memory)などの読み出し専用メモリである。さらに、メインメモリ540及びROM550の説明は、このようなメモリは公知であり簡潔のため、省略する。
【0033】
図6に、1つ以上のモジュールを含むPET管理システム600の例を示す。一実施形態では、モジュールは、ハードウェア、あるいはハードウェアとソフトウェアを組み合わせたものである。PET管理システム600は、CPU302(図3)あるいは演算装置470(図4)の中に組み込まれている。一実施形態によると、PET管理システム600は、シンチレータアレイ管理モジュール604、マスク管理モジュール606、フラッドヒストグラムモジュール608、結晶識別モジュール610、及びルックアップテーブル(LUT)モジュール612を含む。
【0034】
一実施形態によると、シンチレータアレイ管理モジュール604は、様々な種類のシンチレータアレイの状況を常に監視する。例として、シンチレータアレイはN×Nに配列される。
【0035】
一実施形態では、マスク管理モジュール606が各マスクの状況を常に監視する。例として、奇数番目あるいは偶数番目の結晶が格子構造を持つN×Nマスクで覆われる。別の例として、アレイ内の結晶の一部(例えば、N/2×N/2)がブロック構造を持つマスクによって覆われる。これに応じて、一実施形態では、マスク管理モジュール606は、マスクで覆われた結晶の状況を常に監視する。
【0036】
一実施形態では、フラッドヒストグラムモジュール608が、アルゴリズムを実行してフラッドヒストグラムを作成する。さらなる実施形態では、結晶識別モジュール610が、アルゴリズムを実行して結晶を識別する。例として、結晶識別モジュール610が、シンチレータアレイ管理モジュール604とマスク管理モジュール606にアクセスし、特定のフラッドヒストグラムのために用いられるシンチレータアレイとマスクに関する情報を検索する。こうして、結晶識別モジュール610は、使用するシンチレータアレイとマスクに基づいて結晶識別処理を実行する。一部の実施形態によると、LUTモジュール612は、アルゴリズムを実行してルックアップテーブルを作成する。
【0037】
図2に示すように、ガンマ光が結晶と相互作用するシンチレーションプロセスで発生する光が、相互作用の物理的位置に基づき2つ以上の隣接するPMTによって検出される。シンチレータアレイにおける相互作用の実際の位置(垂直位置Y及び軸上位置Z)は、一部の実施形態によると、アンガーロジック、及び信号を記録した全てのPMTからの信号を用いて算出される。
【0038】
一実施形態によると、画像再構成処理では、XY位置ではなく個々の結晶素子の識別情報が用いられる。したがって、アレイ内の個々の結晶に対しXY位置をマッピングすることにより、画像再構成処理を容易に行うことができる。画像再構成処理に加えて、PETスキャンの前に、XY位置毎ではなく結晶毎にエネルギー補正やタイミング補正等の補正を行う。XY位置を個々の結晶素子に対応付けるこの処理は、結晶識別と呼ばれている。一部の実施形態によると、ルックアップテーブル(Look Up Table)が結晶識別処理によって作成される。例として、ルックアップテーブルは、1つ以上のXY位置と個々の結晶を相互に関連付ける。LUTは一度作成されると、メモリに格納される。一度作成されると、同じLUTを通常のスキャン毎に使用して、事象を結晶に割り当てる。
【0039】
一実施形態では、全ての結晶に十分な数の光線が当るようにして、結晶アレイにガンマ線を照射することにより、LUTテーブルが作成される。次に、これらの事象の情報をヒストグラムで表した2Dマップが作成される。このマップは「フラッドヒストグラム」と呼ばれる。ピークを識別し結晶に割り当てるために、フラッドヒストグラムは様々な自動及び半自動アルゴリズムで処理される。しかし、この自動処理は全てのピークを識別するわけではなく、特にピークが互いに密集している端部の結晶では識別しない場合がある。
【0040】
このため、一実施形態では、マスクをシンチレータアレイの上に配置することで、シンチレータアレイ内の各結晶の検出を容易にする。マスクは、十分な厚みを持つ鉛やタングステン等の高密度材料で作られ、511keVで入射するガンマ線を阻止あるいは大幅に減衰させることができる。一実施形態では、マスクは1個の継ぎ目のない材料である。さらなる実施形態では、マスクは格子状に加工される。
【0041】
一実施形態によると、シンチレータアレイへの入射ガンマ線の照射は、まずマスク付きで、次にマスク無しで行われる。マスクをシンチレータアレイの上に被せると、特定の結晶素子にガンマ線が照射されるが、一部には照射されない。この照射で作成されるフラッドヒストグラムのピークの位置は、マスク無しでのフラッドヒストグラムとは非常に異なり、ピーク同士がより離れている。したがって、ピーク間に隙間があるため、ピークの識別が容易になる。一実施形態によると、1回目の照射で照射されないピクセルは、2回目の操作で入射ガンマ線が照射される。2回目の照射の間は、マスクは1回目の照射で照射された結晶を覆うように置き換えられている、あるいはマスクは完全に取り去られている。こうして、全ての結晶に照射される。
【0042】
図7に、シンチレータアレイ700の例を示す。図7に示すように、シンチレータアレイ700は、6×16のアレイである。しかし、その他の実施形態では、どのような大きさ(すなわち、N×Mのアレイ)でも可能である。矢印702は、1つ以上のガンマ線がシンチレータアレイ700上に入射する方向を示している。シンチレータアレイ700は、シンチレータアレイ管理モジュール604内で指定される。
【0043】
例えば、マスクは、シンチレータアレイ内の連続して配置された2つの結晶を覆わない格子構造である。図8に、一実施形態として、格子構造を有するマスク800をアレイ上の第1の位置に配置したシンチレータアレイ700を示す。図8に示すように、マスク800は格子構造を有し、アレイ700の各行列内の結晶を1つおきに覆う。一実施形態では、マスク800は511keV以上のガンマ線を遮るように構成される。マスクに適した材料の例として、鉛とタングステンがある。こうして、一実施形態では、第1の位置においてマスク800により覆われるシンチレータアレイ700内の結晶には、ガンマ線が照射されない。マスク800はマスク管理モジュール606内で指定される。
【0044】
図9に、シンチレータアレイ上の第2の位置に移したマスク800を示す。図9に示すように、第2の位置では、第1の位置でマスク700により覆われなかったシンチレータアレイ700内の各結晶が、第2の位置でマスク800により覆われる。このため、一実施形態では、第2の位置でマスクにより覆われた結晶は、ガンマ線に照射されない。一実施形態では、マスク800は、手動で、あるいは任意の自動装置によって、第1の位置から第2の位置に移される。
【0045】
一実施形態では、マスク800を用いたシンチレータアレイ700の結晶識別は、図8に示すように、マスク800をシンチレータアレイ700上の第1の位置に配置し、そしてマスク800で覆われていないシンチレータアレイ700内の結晶にガンマ線を照射することによって、実行される。第1のフラッドヒストグラムが、第1の位置にマスク800を置いた第1の照射により生成される。次に、マスク800がシンチレータアレイ700上の第2の位置に移され(図9に示すように)、第2の位置でマスクに覆われなかったシンチレータアレイ700内の結晶にガンマ線が照射される。第2のフラッドヒストグラムが、マスク800を置かない第2の照射によって生成される。当業者には周知であるが、マスク800を第1又は第2の位置に配置する順番は入れ替えられる。
【0046】
これを受けて、一実施形態では、第1のフラッドヒストグラムが第2のフラッドヒストグラムに重ね合わせられる。こうして、シンチレータアレイ700内の各結晶は、重ね合わせたフラッドヒストグラムを用いて識別される。図8、9に示すように、シンチレータアレイ700内の結晶の一部だけが第1及び第2の照射の間に照射されるので、第1と第2のフラッドヒストグラムを重ね合わせたフラッドヒストグラムは、マスクを使用していないシンチレータアレイ700のフラッドヒストグラムよりもはっきり見える。これにより、結晶識別処理が容易になる。
【0047】
その他の実施形態では、マスク800を用いたシンチレータアレイ700の結晶識別は、シンチレータアレイ700上の第1又は第2の位置に(それぞれ図8又は図9に示すように)マスク800を最初に置き、そしてシンチレータアレイ700にガンマ線を照射することにより実行される。第1のフラッドヒストグラムが、マスク800を第1又は第2の位置に置いた第1の照射によって生成される。次に、マスク800がシンチレータアレイ700から取り去られる(図7に示すように)、シンチレータアレイ700内の全ての結晶にガンマ線が照射される。第2のフラッドヒストグラムが、マスク800を使わない第2の照射によって生成される。そのため、一実施形態では、第1の照射の間にマスクで覆われていなかったシンチレータアレイ700の中の結晶が、第1のフラッドヒストグラムを用いて識別される。そして、第1の照射の間にマスクで覆われていたシンチレータアレイ700の中の結晶は、第2のフラッドヒストグラムから第1のフラッドヒストグラムを差し引くことにより識別される。シンチレータアレイ管理モジュール604内で指定されるシンチレータアレイ700、及びマスク管理モジュール606内で指定されるマスク800に基づいて、結晶識別モジュール610は、第1のフラッドヒストグラムを第2のフラッドヒストグラムから差し引く際にどの結晶を識別すべきか判断する。第2の照射の間にマスクを用いない方法は、マスクを置き換える方法に比べて少し短い時間で行われる。後者はマスクの位置を動かすのに時間を要すからである。
【0048】
例えば、マスク1000は、シンチレータアレイ100内の連続して配置された少なくとも2つの結晶を覆うブロック構造である。ここで、端部の結晶は非端部の結晶よりも識別が難しいため、これら端部の結晶に対応するピークをアレイ中央部の結晶からの他のピークと分離することにより、端部の結晶の結晶識別がさらに容易になる。そこで、図10に、別の実施例として、ブロック構造を有するマスク1000を使用したシンチレータアレイ700を示す。図10に示すように、マスク1000は、シンチレータアレイ700の端部の結晶を除く全ての結晶をガンマ線から遮断するよう構成される。すなわち、マスク1000は、シンチレータアレイ700内の端部に配置された結晶を除く全ての結晶を覆う。さらに図10に示すように、マスク1000には穿孔あるいは格子状の網加工が施されておらず、したがってマスク800(図8、図9)に比べて安く簡単に作成できる。
【0049】
一実施形態では、マスク1000を用いたシンチレータアレイ700の結晶識別は、シンチレータアレイ700上にマスク1000を最初に配置し(図10に示すように)、そしてシンチレータアレイ700にガンマ線を照射することにより実行される。第1のフラッドヒストグラムは、マスク1000を置いた第1の照射によって生成される。次に、マスク1000がシンチレータアレイ700から取り去られ(図7に示すように)、シンチレータアレイ700内の全ての結晶にガンマ線が照射される。第2のフラッドヒストグラムは、マスク1000を置かない第2の照射によって生成される。こうして、一実施形態では、シンチレータアレイ700の端部の結晶は第1のフラッドヒストグラムを用いて識別され、シンチレータアレイ700の残りの結晶は第1のフラッドヒストグラムを第2のフラッドヒストグラムから差し引くことにより識別される。
【0050】
図11に、マスクを使用しないシンチレータアレイ700のフラッドヒストグラム1100の例を示す。フラッドヒストグラム1100には、端部の結晶でも歪みがあるものと歪みが無いものの両方が見られる。例えば、ボックス1102で分けられた結晶のグループは歪んでおらず、正確に識別できる。しかし、ボックス1104で分けられた結晶のグループは歪んでおり、正確には識別できない。さらに、干渉し合う2つの隣接する結晶からの光が原因で、フラッドヒストグラム内に歪みが生じている。このため、格子構造のマスク800(図8、図9)を用いることにより、歪みの少ないフラッドヒストグラムを作成する。同様に、ブロック状のマスク1000(図10)を用いることにより、端部付近の歪みが少ないフラッドヒストグラムを作成する。
【0051】
図12に、マスクを用いて結晶識別を行うための手順の例を示す。一実施形態では、図12に示す手順は、PET管理システム600により実行される。
【0052】
手順は通例、シンチレータアレイとマスクを指定するステップ1200からスタートする。例えば、図8では、6×16のシンチレータアレイとマスク800が、それぞれシンチレータアレイ管理モジュール604とマスク管理モジュール606により指定される。
【0053】
工程はステップ1202に進み、マスクがシンチレータアレイ上の第1の位置に配置される。例として、マスク800はシンチレータアレイ700上の図8に示すような第1の位置に配置される。工程はステップ1204に進み、シンチレータアレイにガンマ線の照射を開始する。例として、被検体が、ガンマ線を発生する消滅事象を引き起こす放射線薬品を摂取してもよい。
【0054】
工程はステップ1206に進み、先に説明したように、光センサからのデータを収集する。工程はステップ1208に進み、フラッドヒストグラムモジュール608(図6)が第1のフラッドヒストグラムを作成する。工程はステップ1208からステップ1210に進み、マスクを第2の位置に移す。例えば、マスク800が、図9に示すようにシンチレータアレイ700上の第1の位置から第2の位置に移される。
【0055】
工程はステップ1212に進み、例えば、ステップ1204について先に説明したように、シンチレータアレイにガンマ線の照射を開始する。工程はステップ1214に進み、ステップ1206について先に説明したように、光センサからの第2の照射用のデータを収集する。
【0056】
工程はステップ1216に進み、ステップ1208について先に説明したように、第2のフラッドヒストグラムを作成する。工程はステップ1218に進み、第1のフラッドヒストグラムを第2のフラッドヒストグラムに重ね合わせる。工程はステップ1220に進み、結晶識別モジュール610(図6)が任意のアルゴリズムを用いて、シンチレータアレイの結晶を識別する。工程はステップ1222に進み、例えば、LUTモジュール612(図6)がルックアップテーブルを作成する。一実施形態では、ルックアップテーブルが作成された後、図12の工程は終了する。
【0057】
図13に、マスクを用いて結晶識別を行うための手順の別の例を示す。一実施形態では、工程のステップ1300〜1308は、ステップ1200〜1208(図12)について上述した工程と全く同じである。
【0058】
工程はステップ1308からステップ1310に進み、マスクが取り去られる。例として、シンチレータアレイ上にマスクがないとき、図7に示すように、シンチレータアレイ内の全ての結晶にガンマ線が照射される。工程はステップ1312に進み、先に説明したようにマスクを付けずにシンチレータアレイへの照射を開始する。
【0059】
工程はステップ1316に進み、先に説明したように第2のフラッドヒストグラムを作成する。工程はステップ1318に進み、第1のフラッドヒストグラムを第2のフラッドヒストグラムから差し引く。工程はステップ1320に進み、先に説明したように結晶識別を実行する。工程はステップ1322に進み、先に説明したようにルックアップテーブルを作成する。一実施形態では、ルックアップテーブルが作成された後、図13に示す工程は終了する。
【0060】
ある特定の実施形態を説明してきたが、これらの実施形態は、単なる事例として提示したものであって、本発明の範囲を限定するものではない。実際、本明細書で説明した新規の方法及びシステムは、様々な別の態様で具体化が可能である。さらには、本明細書で説明した方法及びシステムにおいて様々な省略、置換、及び変更が本発明の範囲を逸脱することなく可能である。添付の特許請求の範囲及びその均等物は、本発明の範囲と精神に収まると考えられる態様又は変更を有効範囲に含むためのものである。
【符号の説明】
【0061】
300 PETシステム
306、700 シンチレータアレイ
308 光センサ
600 PET管理システム
800 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマ線検出器において相互作用の結晶を識別するためのルックアップテーブルを作成するルックアップテーブル作成方法であって、
シンチレーションアレイ内の複数の結晶のうち一部の結晶へのガンマ線の照射を遮るために前記一部の結晶を覆うように構成されたマスクを、第1の一部の結晶を覆うために前記シンチレーションアレイ上の第1の位置に配列するステップと、
前記シンチレーションアレイに所定のエネルギーを有するガンマ線を照射するステップと、
前記シンチレーションアレイにより生成された光を受けるために配置された少なくとも1つの光センサからの第1のセットのデータを収集するステップと、
前記複数の結晶のうち前記第1の一部の結晶とは異なる第2の一部の結晶を覆うために前記シンチレーションアレイ上の第2の位置に前記マスクを再配列するステップと、
前記マスクを前記シンチレーションアレイ上の前記第2の位置に配列して、前記所定のエネルギーを有するガンマ線を照射するステップを繰り返すステップと、
前記マスクを前記シンチレーションアレイ上の前記第2の位置に配列して、前記少なくとも1つの光センサから第2のセットのデータを収集するステップと、
前記第1のセットの収集データから第1のフラッドヒストグラムを作成し、前記第2のセットの収集データから第2のフラッドヒストグラムを作成するステップと、
重ね合わせたフラッドヒストグラムを作成するため、前記第1のフラッドヒストグラムを前記第2のフラッドヒストグラムに重ね合わせるステップと、
前記重ね合わせたフラッドヒストグラムの領域を、前記複数の結晶のうち対応する結晶に割り当てることにより、ルックアップテーブルを生成するステップと、
を含んだことを特徴とするルックアップテーブル作成方法。
【請求項2】
ガンマ線検出器において相互作用の結晶を識別するためのルックアップテーブルを作成するルックアップテーブル作成方法であって、
シンチレーションアレイ内の複数の結晶のうち一部の結晶へのガンマ線の照射を遮るために前記一部の結晶を覆うように構成されたマスクを、第1の一部の結晶を覆うために前記シンチレーションアレイ上の第1の位置に配列するステップと、
前記シンチレーションアレイに所定のエネルギーを有するガンマ線を照射するステップと、
前記シンチレーションアレイにより生成された光を受けるために配置された少なくとも1つの光センサからの第1のセットのデータを収集するステップと、
前記マスクを前記シンチレーションアレイから取り去るステップと、
前記複数の結晶の各結晶にガンマ線が照射されるように、前記マスクを前記シンチレーションアレイから取り去り、前記所定のエネルギーを有するガンマ線を照射するステップを繰り返すステップと、
前記マスクを前記シンチレーションアレイ上に配列せずに、前記少なくとも1つの光センサから第2のセットのデータを収集するステップと、
前記第1のセットの収集データから第1のフラッドヒストグラムを作成し、前記第2のセットの収集データから第2のフラッドヒストグラムを作成するステップと、
修正フラッドヒストグラムを作成するため、前記第1のフラッドヒストグラムを前記第2のフラッドヒストグラムから差し引くステップと、
前記第1のフラッドヒストグラム及び前記修正フラッドヒストグラムの領域を、前記複数の結晶のうち対応する結晶に割り当てることにより、ルックアップテーブルを生成するステップと、
を含んだことを特徴とするルックアップテーブル作成方法。
【請求項3】
前記マスクは、511keV以上のエネルギーレベルを有するガンマ線を遮るように構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のルックアップテーブル作成方法。
【請求項4】
前記マスクは、前記シンチレーションアレイ内の連続して配置された2つの結晶を覆わない格子構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載のルックアップテーブル作成方法。
【請求項5】
前記マスクは、前記シンチレーションアレイ内の連続して配置された少なくとも2つの結晶を覆うブロック構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載のルックアップテーブル作成方法。
【請求項6】
前記マスクは、前記シンチレーションアレイ内の端部に配置された結晶を除く全ての結晶を覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載のルックアップテーブル作成方法。
【請求項7】
結晶識別のためのPETシステムであって、
複数の結晶を含むシンチレーションアレイと、
前記複数の結晶のうち一部の結晶へのガンマ線の照射を遮るために、前記一部の結晶を覆うように構成されたマスクと、
前記シンチレーションアレイによって生成された光を受けるように配置された少なくとも1つの光センサと、
処理装置とを備え、
前記処理装置は、
第1の一部の結晶を覆うために前記マスクが前記シンチレーションアレイ上の第1の位置に配置されたとき、前記シンチレーションアレイへのガンマ線の照射に応じて、前記少なくとも1つの光センサから第1のセットのデータを収集し、
前記第1の一部の結晶とは異なる第2の一部の結晶を覆うために前記マスクが前記シンチレーションアレイ上の第2の位置に配置されたとき、前記シンチレーションアレイへのガンマ線の照射に応じて、前記少なくとも1つの光センサから第2のセットのデータを収集し、
前記第1のセットの収集データから第1のフラッドヒストグラムを作成し、前記第2のセットの収集データから第2のフラッドヒストグラムを作成し、
重ね合わせたフラッドヒストグラムを作成するため、前記第1のフラッドヒストグラムを前記第2のフラッドヒストグラムに重ね合わせ、
前記重ね合わせたフラッドヒストグラムの領域を前記複数の結晶のうちの対応する結晶に割り当てることによりルックアップテーブルを生成する、
ことを特徴とするPETシステム。
【請求項8】
結晶識別のためのPETシステムであって、
複数の結晶を含むシンチレーションアレイと、
前記複数の結晶のうち一部の結晶へのガンマ線の照射を遮るために、前記一部の結晶を覆うように構成されたマスクと、
前記シンチレーションアレイによって生成された光を受けるように配置された少なくとも1つの光センサと、
処理装置とを備え、
前記処理装置は、
第1の一部の結晶を覆うために前記マスクが前記シンチレーションアレイの上の第1の位置に配置されたとき、前記シンチレーションアレイへのガンマ線の照射に応じて、前記少なくとも1つの光センサから第1のセットのデータを収集し、
前記マスクが前記シンチレーションアレイから取り去られたとき、前記シンチレーションアレイへの照射に応じて、前記少なくとも1つの光センサから第2のセットのデータを収集し、
前記第1のセットの収集データから第1のフラッドヒストグラムを作成し、
前記第2のセットの収集データから第2のフラッドヒストグラムを作成し、
修正フラッドヒストグラムを作成するため、前記第1のフラッドヒストグラムを前記第2のフラッドヒストグラムから差し引き、
前記第1のフラッドヒストグラム及び前記修正フラッドヒストグラムの領域を前記複数の結晶のうちの対応する結晶に割り当てることにより、ルックアップテーブルを生成する、
ことを特徴とするPETシステム。
【請求項9】
前記マスクは、511keV以上のエネルギーレベルを有するガンマ線を遮るように構成されることを特徴とする請求項7又は8に記載のPETシステム。
【請求項10】
前記マスクは、前記シンチレーションアレイ内の連続して配置された2つの結晶を覆わない格子構造であることを特徴とする請求項7又は8に記載のPETシステム。
【請求項11】
前記マスクは、前記シンチレーションアレイ内の連続して配置された少なくとも2つの結晶を覆うブロック構造であることを特徴とする請求項7又は8に記載のPETシステム。
【請求項12】
前記マスクは、前記シンチレーションアレイ内の端部に配置された結晶を除く全ての結晶を覆うことを特徴とする請求項7又は8に記載のPETシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−98283(P2012−98283A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239358(P2011−239358)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】