説明

ルーズスペーサの取付け構造及びそれに好適なルーズスペーサ

【課題】ルーズ把持部5がルーズ把持する導体5が捻れて元に戻らない場合でも、コロナ放電が発生するおそれの少ないルーズスペーサの取付け構造を提供する。
【解決手段】ルーズ把持部5の導体把持金具9の締付け部材15が、一方の導体把持片9aの外面から導体把持金具の分割面Pと直交する方向へ突出して突起物となっているルーズスペーサを、多導体送電線に取り付ける場合に、導体把持金具9が導体1の捻れによって締付け部材9の突出方向へ回動範囲の限界まで回動しても締付け部材9がコロナ発生源とならないように、導体把持金具9を、その分割面Pが、フレーム3の中心軸線と導体把持金具の中心軸線を通る平面Qに対し、締付け部材15の突出方向と反対側へ所定の角度θだけ傾いた状態となるように、導体1に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多導体送電線又は複導体送電線へのルーズスペーサの取付け構造と、それに好適なルーズスペーサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多導体送電線又は複導体送電線のギャロッピングを防止するには、ルーズスペーサを用いることが有効である。ルーズスペーサは、通常のスペーサと同様、複数の導体把持部を有しているが、そのうちの一部の導体把持部を、導体を回動可能に把持するルーズ把持部とし、他の導体把持部を、導体を回動不能に把持する固定把持部としたものである(特許文献1〜3参照)。
【0003】
図4及び図5に従来のルーズスペーサの一例を示す。図において、1は多導体送電線を構成する複数本の導体、3は導体間隔保持の基体となるフレーム、5はフレーム3に取り付けられて導体1を回動可能に把持するルーズ把持部、7はフレーム1に取り付けられて導体1を回動不能に把持する固定把持部である。固定把持部7は、通常のスペーサに用いられているボルトレスクランプ(カムで圧縮されたコイルばねの反発力で締め付けるクランプ)で構成されている。
【0004】
ルーズ把持部5は、導体1を固定把持する導体把持金具9と、この導体把持金具9を導体1と共に所定の範囲で回動できるように支持する支持金具11とから構成されている。
【0005】
導体把持金具9は、二つの導体把持片9a、9bで導体1を把持する二つ割り型である。二つの導体把持片9a、9bは導体1の片側でヒンジピン13によりヒンジ結合され、反対側を締付け部材15により締め付けられて導体1を固定把持するようになっている。締付け部材15はカムで圧縮されたコイルばねの反発力で締め付けるボルトレスタイプである。また導体把持金具9は、導体1に沿って支持金具11内を貫通する二つ割り型の円筒部17a、17bを一体に有している。円筒部17aは導体把持片9aと一体に形成され、円筒部17bは導体把持片9bと一体に形成されている。
【0006】
支持金具11は、導体把持金具9の円筒部17a、17bを回動可能に把持する二つ割り型のルーズ把持片11a、11bで構成されている。二つのルーズ把持片11a、11bは、円筒部17a、17bの片側でヒンジピン19によりヒンジ結合され、反対側を締付け部材21により締め付けられて円筒部17a、17bを回動可能に(ゆるく)把持するようになっている。この締付け部材21も圧縮コイルばねの反発力で締め付けるボルトレスタイプである。一方のルーズ把持片11aの基部は、フレーム3に取り付けられた連結金具23にボルトナット25を介して連結されている。
【0007】
なお、導体把持金具9の円筒部17a、17bには、支持金具11が導体方向に移動するのを阻止するため、鍔部27が形成されている。
【0008】
また、図5(B)に示すように、一方の円筒部17aの外周面中央部には凸部29が形成され、一方のルーズ把持片11aの内周面には上記凸部29が入る溝部31が周方向に形成されている(凸部29、溝部31は、他方の円筒部17b、他方のルーズ把持片11bにも形成されていてもよい)。凸部29と、溝部31の周方向両端の壁31a、31bは、導体把持金具9の回動範囲を規制するストッパーを構成している。すなわち、図5(A)、(B)の状態(導体把持金具9がどちら側へも同じ角度だけ回動できる中間位置にある状態)から、導体把持金具9が時計方向に回動して、凸部29が図5(C)のように溝部31の一端側の壁31aに突き当たると、それ以上回動できなくなり、また図5(B)の状態から、導体把持金具9が反時計方向に回動して、凸部29が図5(D)のように溝部31の他端側の壁31bに突き当たると、それ以上回動できなくなるようになっている。支持金具11に対する導体把持金具9の回動範囲は通常、±80°程度に設定される。
【0009】
ルーズ把持部5は、以上のような構成であるため、多導体送電線にギャロッピングが発生したときに、支持金具11に対する導体1及び導体把持金具9の往復回動を許容し、固定把持部7との相互作用でギャロッピングを抑制する働きをする。
【0010】
図7はルーズスペーサのルーズ把持部の他の例を示す。図7において、図4及び図5の各部に対応する部分には図4及び図5と同じ符号を付してある。すなわち、1は導体、3はフレーム、5はルーズ把持部、9は導体把持金具、9a、9bは導体把持片、11は支持金具、13はヒンジピン、15は締付け部材、17a、17bは二つ割り円筒部材、23は連結金具、25は連結用ボルトナットである。
【0011】
このルーズ把持部5は、内側に円筒部材17a、17bを取り付けた導体把持金具9を、軸線方向の両端側2箇所で締付け部材15により締め付けることにより導体1を固定把持し、軸線方向の中間部で支持金具11により回動可能に支持するものである。このルーズ把持部5の締付け部材15はアイボルトである。
【0012】
導体把持金具9を回動可能に支持するため、支持金具11の先端には、円筒部材17a、17bの外周面の曲率に合うように形成された断面円弧形のガイド板33が一体に形成されている。また、導体把持金具9の内周面には、前記ガイド板33を収容する幅広の溝部35が周方向に形成されている。さらに、導体把持金具9の軸線方向中間部には、支持金具11の基端部とガイド板33のつなぎ部分37を貫通させるスロット39が周方向に形成されている。溝部35の周長はガイド板33の周長より十分長く、スロット39の周長も支持金具11のつなぎ部分35の幅より十分長く設定されている。
【0013】
これにより、導体把持金具9は、ガイド板33に案内されて、図7(D)の矢印R方向へ又は矢印S方向へ、導体1と共に回動できるようになっている。導体把持金具9の回動範囲は、溝部35の周方向の一端側の壁35aがガイド板33の片側の側面に突き当たるまでと、溝部35の他端側の壁35bがガイド板33の反対側の側面に突き当たるまでである(あるいは、スロット39の周方向の一端側の壁39aが支持金具11のつなぎ部分37に突き当たるまでと、スロット39の他端側の壁39aが支持金具11のつなぎ部分37に突き当たるまでとすることもできる)。
【0014】
ルーズ把持部5が上記のような構造であっても、図4及び図5に示したルーズスペーサと同様に、多導体送電線のギャロッピングを抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平2−254916号公報
【特許文献2】特開平10−322866号公報
【特許文献3】特開平8−9544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来のルーズスペーサのルーズ把持部5は、図4(A)、図7(B)に示すように、導体把持金具9の分割面Pが、フレーム3の中心軸線と導体把持金具9の(導体把持部分の)中心軸線を通る平面Qと一致するように、導体1に取り付けられる。このような取付け構造にするため、導体把持金具9と支持金具11の外面には、図4(B)に示すように、図4(A)における導体把持金具9の分割面Pが、フレーム3の中心軸線と導体把持金具9の中心軸線を通る平面Qと一致するときに同じ位置にくるようにマーク41a、41bが付されている(図7の場合も同様)。
【0017】
一方、導体把持金具9の締付け部材15は、一方の導体把持片9aの外面から導体把持金具9の分割面Pと直交する方向に突出して突起物となっている。
【0018】
その結果、導体把持金具9が、締付け部材15の突出方向へ大きく回動した場合、図6右下に示すように、締付け部材15がスペーサ外方へ(目安としては二点鎖線で示した各把持部の外接円より外側へ)大きく突出することがある。なお、図7のようなルーズ把持部でも、導体把持金具9が、締付け部材15の突出方向に大きく回動すると、図8の実線のようになり、図6の場合と同様な状態になることがある。
【0019】
このような状態が、多導体送電線のギャロッピング発生時に一時的に起こるのであれば、ほとんど問題はない。しかし最近、ギャロッピングが発生していないときでも、導体に発生した捻れが元に戻らずに、締付け部材15がスペーサ外方へ大きく突出する状態が持続する場合のあることが確認された。このような状態になると、締付け部材15がルーズスペーサからの突起物となってコロナ放電が発生するという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、上記のような問題点に鑑み、ルーズ把持部がルーズ把持する導体が捻れて元に戻らない場合でも、コロナ放電が発生するおそれの少ないルーズスペーサの取付け構造と、それに好適なルーズスペーサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るルーズスペーサの取付け構造は、
導体間隔保持の基体となるフレームと、このフレームに取り付けられて導体を回動可能に把持するルーズ把持部と導体を回動不能に把持する固定把持部とを有し、
前記ルーズ把持部は、導体を固定把持する導体把持金具と、この導体把持金具を導体と共に所定の範囲で回動できるように支持する支持金具とからなり、
前記導体把持金具は、二つの導体把持片で導体を把持する二つ割り型で、二つの導体把持片が導体の片側でヒンジ結合され、反対側を締付け部材により締め付けられて導体を固定把持するようになっており、
前記導体把持金具の締付け部材が、一方の導体把持片の外面から導体把持金具の分割面と直交する方向へ突出して突起物となっているルーズスペーサの、多導体送電線又は複導体送電線への取付け構造であって、
前記ルーズ把持部の導体把持金具が導体の捻れによって締付け部材の突出方向へ回動範囲の限界まで回動しても締付け部材がコロナ発生源とならないように、前記導体把持金具を、その分割面が、フレームの中心軸線と導体把持金具の中心軸線を通る平面に対し、前記締付け部材の突出方向と反対側へ所定の角度だけ傾いた状態となるように、導体に取り付けたことを特徴とするものである。
【0022】
また本発明に係るルーズスペーサは、
導体間隔保持の基体となるフレームと、このフレームに取り付けられて導体を回動可能に把持するルーズ把持部と導体を回動不能に把持する固定把持部とを有し、
前記ルーズ把持部は、導体を固定把持する導体把持金具と、この導体把持金具を導体と共に所定の範囲で回動できるように支持する支持金具とからなり、
前記導体把持金具は、二つの導体把持片で導体を把持する二つ割り型で、二つの導体把持片が導体の片側でヒンジ結合され、反対側を締付け部材により締め付けられて導体を固定把持するようになっており、
前記導体把持金具の締付け部材が、一方の導体把持片の外面から導体把持金具の分割面と直交する方向に突出して突起物となっているルーズスペーサにおいて、
前記導体把持金具は、その分割面が、フレームの中心軸線と導体把持金具の中心軸線を通る平面に対し、締付け部材の突出方向と反対側へ所定の角度だけ傾いた状態を回動範囲の中間位置とし、導体把持金具の回動範囲を規制するストッパーは、導体把持金具が前記中間位置から締付け部材の突出方向へ許容角度だけ回動すると、それ以上回動できなくなり、かつ締付け部材の突出方向と反対側へ許容角度だけ回動すると、それ以上回動できなくなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
また本発明に係る上記ルーズスペーサは、導体把持金具及び支持金具の外面に、導体把持金具の分割面が、フレームの中心軸線と導体把持金具の中心軸線を通る平面に対し、締付け部材の突出方向と反対側へ所定の角度だけ傾いた状態にあるときに同じ位置にくるようにマークが付されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るルーズスペーサの取付け構造は、ルーズスペーサを多導体送電線又は複導体送電線に取り付けるときに、ルーズ把持部の導体把持金具を、その分割面が、フレームの中心軸線と導体把持金具の中心軸線を通る平面に対し、前記締付け部材の突出方向と反対側へ所定の角度だけ傾いた状態となるように、導体に取り付けたので、導体の捻れにより導体把持金具が締付け部材の突出方向へ限界まで回動しても、締付け部材がスペーサ外方へ大きく突出するのを回避することができる。したがって、導体が捻れたままの状態が持続しても、コロナ放電の発生を抑制することができる。
【0025】
また本発明に係るルーズスペーサは、導体把持金具の分割面が、フレームの中心軸線と導体把持金具の中心軸線を通る平面に対し、前記締付け部材の突出方向と反対側へ傾いた状態が導体把持金具の回動範囲の中間位置となるため、導体が捻れたままの状態が持続しても、上記と同じ理由によりコロナ放電の発生を抑制できると共に、導体把持金具は上記中間位置からどちら側へもほぼ同じ角度だけ回動できるようになるので、ギャロッピング発生時の導体の往復回動に追従でき、ギャロッピング抑制効果を十分に発揮することができる。
【0026】
また本発明に係るルーズスペーサは、導体把持金具と支持金具の外面に付されたマークを一致させることにより、導体把持金具を、その分割面が、フレームの中心軸線と導体把持金具の中心軸線を通る平面に対し締付け部材の突出方向と反対側へ所定の角度だけ傾いた状態となるように、導体に容易に取り付けることができるため、ルーズスペーサの取付け作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るルーズスペーサの取付け構造の一実施例を示す、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線矢視図。
【図2】図1のルーズスペーサのルーズ把持部を示す、(A)は図1(A)のB−B線矢視拡大図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(B)の状態から導体把持金具が片側へ限界まで回動した状態を示す断面図、(D)は同じく反対側へ限界まで回動した状態を示す断面図。
【図3】本発明に係るルーズスペーサのルーズ把持部の一実施例を示す正面図。
【図4】従来のルーズスペーサの取付け構造の一例を示す、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B線矢視図。
【図5】図4のルーズスペーサのルーズ把持部を示す、(A)は図4(A)のB−B線矢視拡大図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(B)の状態から導体把持金具が片側へ限界まで回動した状態を示す断面図、(D)は同じく反対側へ限界まで回動した状態を示す断面図。
【図6】図4のルーズスペーサの取付け構造の問題点を示す正面図。
【図7】従来のルーズスペーサのルーズ把持部の他の例を示す、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は(B)のC−C線断面図、(D)は(A)のD−D線断面図。
【図8】図7のルーズスペーサの取付け構造の問題点を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0028】
図1及び図2は、本発明の一実施例を示す。図1及び図2において、先に説明した図4及び図5と同一部分には同一符号を付してあるので、重複する説明は省略する。
【0029】
このルーズスペーサの取付け構造の特徴は、ルーズ把持部5の導体把持金具9を、その分割面Pが、フレーム3の中心軸線と導体把持金具9の中心軸線(導体把持部分の中心軸線)を通る平面Qに対し、締付け部材15の突出方向と反対側へ所定の角度θだけ傾いた状態となるように、導体1に取り付けたことである。
【0030】
角度θは、導体把持金具9の回動範囲や、導体把持片9aの外面からの締付け部材15の突出高さ等によって決められる。図示の例では、分割面Pが角度θだけ傾いた状態が導体把持金具9の回動範囲の中間位置であり、導体把持金具9がこの中間位置から例えば±80°の範囲で回動可能であるとすると、θは25°程度に設定するとよい。そうすると、導体把持金具9が締付け部材15の突出方向へ80°回動した場合でも、図1(A)右下にTで示すように、締付け部材15がスペーサ外方へ(目安として二点鎖線で示した各把持部の外接円より外側へ)突出することがなくなる。このため、導体1の捻れにより、この状態が持続したとしても、コロナが発生するおそれは少ない。また、導体把持金具9が締付け部材15の突出方向と反対側へ80°回動した場合でも、図1(A)右下にUで示すように、導体把持金具9の導体把持片9bの外面がスペーサ外方へ突出することがない。もっとも導体把持金具9の導体把持片9bの外面は突起物のない滑らかな曲面なので、スペーサ外方へ多少突出してもコロナ放電の問題はない。このことからθは30°位に設定することも可能である。
【0031】
導体把持金具9の回動範囲を規制するストッパーは、一方の円筒部17aの外周面に形成された凸部29と、ルーズ把持片11a、11bの内周面に周方向に形成された上記凸部29が入る溝部31とで構成されている。凸部29と溝部31は、導体把持金具9の分割面Pが、フレーム3の中心軸線と導体把持金具9の中心軸線を通る平面Qに対し、締付け部材15の突出方向と反対側へ所定の角度θだけ傾いた状態(図1(A)、図2(A)、(B)の状態)にある導体把持金具9が、締付け部材15の突出方向へ許容角度(例えば80°)だけ回動すると、凸部29が図2(C)のように溝部31の一端側の壁31aに突き当たってそれ以上回動できなくなり、締付け部材15の突出方向と反対側へ許容角度(例えば80°)だけ回動すると、凸部29が図2(D)のように溝部31の他端側の壁31bに突き当たってそれ以上回動できなくなるように形成されている。このようにすると導体把持金具が中間位置からどちら側へもほぼ同じ角度だけ回動できるので、ギャロッピング発生時の導体の往復回動に追従でき、ギャロッピング抑制効果を十分に発揮することができる。
【0032】
また、導体把持金具9及び支持金具11の外面には、導体把持金具9の分割面Pが、フレーム3の中心軸線と導体把持金具9の中心軸線を通る平面Qに対し、締付け部材15の突出方向と反対側へ所定の角度だけ傾いた状態にあるときに同じ位置にくるようにマーク41a、41bが付されている。このようなマーク41a、41bを付しておくことにより、作業者は導体把持金具を適正な傾き角度で導体に容易に締付け固定することができる。
【0033】
図3は本発明の他の実施例を示す。この実施例は、先に説明した図7のようなルーズ把持部を有するルーズスペーサに本発明を適用したものである。図3において、図7と同一部分には同一符号を付してあるので、重複する説明は省略する。
【0034】
このルーズスペーサの取付け構造も、ルーズ把持部5の導体把持金具9を、その分割面Pが、フレーム3の中心軸線と導体把持金具9の中心軸線を通る平面Qに対し、締付け部材15の突出方向と反対側へ所定の角度θだけ傾いた状態となるように、導体1に取り付けたものである。
【0035】
このようにすると、導体把持金具9が回動範囲の中間位置(実線の位置)から締付け部材15の突出方向へ例えば80°回動した場合でも、締付け部材15の位置は二点鎖線Tのようになり、図8の従来例よりも締付け部材15のスペーサ外方への突出高さを小さくでき、その分、コロナ放電を少なく抑えることができる。また、導体把持金具9が回動範囲の中間位置から締付け部材15の突出方向と反対側へ例えば80°回動した場合には、導体把持片9bの位置は二点鎖線Uのようになり、導体把持片9bがスペーサ外方へ突起物となって突出するおそれがないので、コロナ放電の問題は生じない。
【符号の説明】
【0036】
1:導体
3:フレーム
5:ルーズ把持部
7:固定把持部
9:導体把持金具
9a、9b:導体把持片
11:支持金具
11a、11b:ルーズ把持片
13:ヒンジピン
15:締付け部材
17a、17b:円筒部
19:ヒンジピン
21:締付け部材
23:連結金具
25:ボルトナット
27:鍔部
29:凸部
31:溝部
31a、31b:溝部31の両端の壁
33:ガイド板
35:溝部
35a、35b:溝部35の両端の壁
37:つなぎ部
39:スロット
39a、39b:スロット39の両端の壁
41a、41b:マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体間隔保持の基体となるフレームと、このフレームに取り付けられて導体を回動可能に把持するルーズ把持部と導体を回動不能に把持する固定把持部とを有し、
前記ルーズ把持部は、導体を固定把持する導体把持金具と、この導体把持金具を導体と共に所定の範囲で回動できるように支持する支持金具とからなり、
前記導体把持金具は、二つの導体把持片で導体を把持する二つ割り型で、二つの導体把持片が導体の片側でヒンジ結合され、反対側を締付け部材により締め付けられて導体を固定把持するようになっており、
前記導体把持金具の締付け部材が、一方の導体把持片の外面から導体把持金具の分割面と直交する方向へ突出して突起物となっているルーズスペーサの、多導体送電線又は複導体送電線への取付け構造であって、
前記ルーズ把持部の導体把持金具が導体の捻れによって締付け部材の突出方向へ回動範囲の限界まで回動しても締付け部材がコロナ発生源とならないように、前記導体把持金具を、その分割面が、フレームの中心軸線と導体把持金具の中心軸線を通る平面に対し、前記締付け部材の突出方向と反対側へ所定の角度だけ傾いた状態となるように、導体に取り付けたことを特徴とするルーズスペーサの取付け構造。
【請求項2】
導体間隔保持の基体となるフレームと、このフレームに取り付けられて導体を回動可能に把持するルーズ把持部と導体を回動不能に把持する固定把持部とを有し、
前記ルーズ把持部は、導体を固定把持する導体把持金具と、この導体把持金具を導体と共に所定の範囲で回動できるように支持する支持金具とからなり、
前記導体把持金具は、二つの導体把持片で導体を把持する二つ割り型で、二つの導体把持片が導体の片側でヒンジ結合され、反対側を締付け部材により締め付けられて導体を固定把持するようになっており、
前記導体把持金具の締付け部材が、一方の導体把持片の外面から導体把持金具の分割面と直交する方向に突出して突起物となっているルーズスペーサにおいて、
前記導体把持金具は、その分割面が、フレームの中心軸線と導体把持金具の中心軸線を通る平面に対し、締付け部材の突出方向と反対側へ所定の角度だけ傾いた状態を回動範囲の中間位置とし、導体把持金具の回動範囲を規制するストッパーは、導体把持金具が前記中間位置から締付け部材の突出方向へ許容角度だけ回動すると、それ以上回動できなくなり、かつ締付け部材の突出方向と反対側へ許容角度だけ回動すると、それ以上回動できなくなるように形成されていることを特徴とするルーズスペーサ。
【請求項3】
導体把持金具及び支持金具の外面に、導体把持金具の分割面が、フレームの中心軸線と導体把持金具の中心軸線を通る平面に対し、締付け部材の突出方向と反対側へ所定の角度だけ傾いた状態にあるときに同じ位置にくるようにマークが付されていることを特徴とする請求項2記載のルーズスペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−211762(P2011−211762A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73928(P2010−73928)
【出願日】平成22年3月27日(2010.3.27)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】