説明

ループブラシ、潤滑剤塗布機構、および画像形成装置

【課題】潤滑剤塗布方式に適したループブラシ、そのループブラシを用いた潤滑剤塗布機構、および、その潤滑剤塗布機構を用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】ループブラシは、シャフトと、ループ状に形成された繊維束が規則的に基布上に配置されるとともに、シャフトに対して所定角度で巻き付けられたリボンとを含む。隣接する繊維束を結ぶ直線である配列線がリボンの長手方向に対してなす角度である配列角度と、リボンの長手方向がシャフトの周方向に対してなす角度である巻き付け角度とが異なるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成処理に用いられるループブラシ、そのループブラシを用いた潤滑剤塗布機構、および、その潤滑剤塗布機構を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置を用いて、オフセット印刷に劣らない品質を提供するために、高解像度や写真再現性などの画質向上が要求されている。このような画像向上の要求を実現するための一つの有力な手段として、トナーの小粒径化やトナーの球形化が知られている。
【0003】
一方で、小粒径化や球形化に伴って、トナーは、残留トナーを掻き取るためのクリーニングブレードと像担持体との間をすり抜けやすくなる。これは、トナーを小粒径化することで、像担持体との間に生じるファンデルワールス力に起因する付着力が強くなるとともに、粒径が小さくなることでクリーニングブレードと像担持体との間(ニップ部)に進入しやすくなるためである。また、トナーを球形化することで、クリーニングブレードと像担持体との間でトナーが転がりやすくなり、転がることでやはりニップ部に進入しやすくなるためである。
【0004】
このように、クリーニングブレードと像担持体との間をトナーがすり抜ける、すなわちクリーニング不良が発生すると、次の処理における画像上にその残留したトナーが転写されて黒スジ状の画像ノイズとなったり、露光工程においてその残留したトナーで光が遮られて潜像が形成されない部分が発生したりすることで画像ノイズとなったりする。そのため、このようなクリーニング不良は、避けなければならない事象である。
【0005】
そこで、像担持体の摩擦係数を低下させる物質を像担持体上に供給することで、このような小粒径化や球形化されたトナーをクリーニングしやすくする技術が提案されている(たとえば、特開2007−047514号公報)。このような技術の一例としては、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩からなる潤滑剤を、ブラシを用いて像担持体表面に塗布する方法が知られている。潤滑剤を像担持体上に塗布することで、トナーの像担持体に対する付着力および摩擦力が低下し、クリーニングブレードだけでもトナーを十分に掻き取ることができるようになる。
【0006】
このような像担持体に対して潤滑剤を供給する方式として、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛など)を粉体の状態でトナーに外添処理し、トナーと同様に現像することで像担持体に供給し、クリーニングブレード部で薄膜化させる方式(潤滑剤現像供給方式)が知られている。この潤滑剤現像供給方式は、潤滑剤を供給するための特別な構成を必要としないため、コストやスペースなどの点で非常に有利である。そのため、低速/中速領域の画像形成装置には、この方式が採用されることが多い。
【0007】
しかしながら、上述の潤滑剤現像供給方式では、潤滑剤を外添処理するため、多くの場合、現像器で攪拌されているときにトナーとの間で摩擦帯電され、潤滑剤の供給が不均一化するという課題がある。すなわち、トナーと同極性に帯電した場合には、像担持体の画像部に潤滑剤が供給され、トナーとは逆極性に帯電した場合には、非画像部に潤滑剤が供給されることとなる。そのため、同じ画像が連続かつ長期的に印字されると、不均一な潤滑剤の供給となり、摩擦係数の異なる部分が生じてしまう。
【0008】
また、低濃度の画像が長期的に続くような場合には、クリーニングブレードへの潤滑剤の供給そのものが減少することから、摩擦係数が充分に低下しない状態となってしまう。一方で、外添処理する潤滑剤の量を多くすると、現像器内で潤滑剤がキャリアに転移しやすくなる。潤滑剤が転移すると、トナーの荷電性が失われて逆荷電のトナーが生じる。このような逆荷電のトナーの発生によって、非画像部に現像される、いわゆる「カブリ」という現象を引き起こす。さらに、現像ローラーに潤滑剤が塗布されて摩擦係数が低下し、現像剤の適正な搬送が行なわれなくなり、その結果、高濃度の画像についての濃度低下といった不具合も生じてしまう。
【0009】
像担持体に対して潤滑剤を供給する別の方式として、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛など)を固形化して得られる固形潤滑剤を回転可能なブラシに押圧し、ブラシで掻き取った潤滑剤を像担持体に塗布する方式(潤滑剤塗布方式)がある。
【0010】
この潤滑剤塗布方式は、クリーニングブレードに加えて、固形潤滑剤、その固定潤滑剤を掻き取って像担持体に供給するためのロール状のブラシ、さらにそれらを保持する部品や押圧するためのバネなどが必要となるため、コストが高くなるとともに、より多くのスペースが必要となる。しかしながら、潤滑剤を像担持体に積極的に塗布できるため、潤滑剤塗布の安定性を比較的高くすることができ、また、環境依存性を小さくできるといった利点がある。
【0011】
この潤滑剤塗布方式に使用されるブラシとしては、一般的には、直毛ブラシが用いられる。直毛ブラシは、いわば歯ブラシのような状態で、ブラシ表面に繊維先端が存在する。繊維同士が独立して存在することで、ブラシ表面を比較的密な状態に保つことができ、像担持体体に対する当接状態を均一にできる。直毛ブラシは、像担持体体に対して均一な当接状態を確保できるが、潤滑剤の研磨に対しては、次のような課題がある。
【0012】
すなわち、固形潤滑剤は、表面がやわらかく、研磨により削れて消費される。初期の段階では、比較的均一に削れていくが、消費に伴って徐々に表面に凹凸が形成される。凹凸が形成されると、複数の繊維がその凹部分に集中して、凹部分はさらに研磨が加速される。一方、凸部分には繊維が当接しない状態となる。そのため、消費が進むと、潤滑剤は著しい凹凸形状となってしまう。さらに消費が進むと、凹部分は、潤滑剤の押圧力が低下して研磨できなくなる。この結果、像担持体体への潤滑剤の供給量が著しく低下し、機能しなくなる。
【0013】
この状態を防止するためには、ブラシの繊維密度を大きくすることが有効である。しかしながら、繊維密度を大きくすると、ブラシ内にトナーが蓄積され、潤滑剤を掻き取る能力が低下する。さらに、像担持体体への摺刷力が高くなり、像担持体体に筋状の傷が発生したり、減耗が大きくなったりというダメージを与える。
【0014】
上述したように、潤滑剤塗布方式に直毛ブラシを使用する方法に代えて、ループブラシを使用する方法もある(たとえば、特開2010−117523号公報)。ループブラシは、いわばタオル生地のような状態で、複数本の繊維を束ねた状態でループ状に形成したものである。このようなループブラシを使用することで、潤滑剤を均一な状態で研磨することが可能となる。
【0015】
この理由としては、ループブラシは、直毛ブラシとは異なり、繊維が複数本の束となっているため繊維束の剛性が強く、潤滑剤に生じる多少の凹凸に対しても繊維束が影響を受けず研磨できるためである。また、ループブラシの先端はループ状であるので、凹部分に繊維が集中しにくいことも要因であると考えられる。
【0016】
このようなループブラシを使用することで、潤滑剤は均一に研磨されるため、消費が進んでも像担持体体への供給量が急激に低下するようなことがなく、また潤滑剤を残らず使用することも可能なるため、比較的小さな潤滑剤であっても、より高い耐久性を実現できる。
【0017】
ループブラシの作成方法について概略すると、まず、縦糸と横糸とを網目構造に編んだ細長いリボン状の布(以下「基布」とも称す。)に対して、複数本に束ねた繊維束を貫通させて上下に往復させるとともに、基布の一方側において繊維束をより大きく突出させることでループ形状を形成する。そして、このループ形状が形成された細長いリボンを、ブラシの金属シャフトに、リボン幅とシャフト径とから一意に定まる所定の角度で巻き付けることで、ロール形状を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−047514号公報
【特許文献2】特開2010−117523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、ループブラシは、複数本の繊維を束ねてブラシを形成しているため、直毛ブラシのようなブラシ表面での繊維のばらつきがなく、繊維束が規則的に分布した状態となる。そのため、リボンの巻き付け角度によっては、繊維束がブラシ周方向に一列に並んでしまうことがある。すなわち、ブラシ周方向において繊維束が存在しない部分が生じ得る。
【0020】
また、ブラシの繊維密度を小さくすると、繊維束の配列線(隣接する繊維束を結んだ直線)とそのすぐ隣の配列線との間の間隔(配列線間隔)が大きくなり、配列線が周方向に対して角度をもっていても、ブラシが1周する間にその横にある配列線と交わらないことがある。このような状態では、像担持体体の長手方向に対してブラシの繊維束が触れない部分が周期的に生じる(当接ムラの発生)。この結果、像担持体体への潤滑剤の供給ムラが生じ、主にハーフトーン画像において筋状ノイズとして現れる。
【0021】
一方、ブラシの繊維密度を大きくすることで、上述のような当接ムラの発生を効果的に抑制することができるが、上述の直毛ブラシを使用した場合と同様に、ブラシ内にトナーが堆積してしまい潤滑剤を掻き取れなくなる可能性がある。
【0022】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、潤滑剤塗布方式に適したループブラシ、そのループブラシを用いた潤滑剤塗布機構、および、その潤滑剤塗布機構を用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明のある局面に従うループブラシは、シャフトと、ループ状に形成された繊維束が規則的に基布上に配置されるとともに、シャフトに対して所定角度で巻き付けられたリボンとを含む。隣接する繊維束を結ぶ直線である配列線がリボンの長手方向に対してなす角度である配列角度と、リボンの長手方向がシャフトの周方向に対してなす角度である巻き付け角度とが異なるように構成されている。
【0024】
好ましくは、リボンは、シャフトの回転方向と最も近接した角度で定義される配列線の群について、リボンがシャフトを1周するうちにある配列線が隣接する配列線と少なくとも交わるように巻き付けられている。
【0025】
さらに好ましくは、シャフトの回転方向と最も近接した角度で定義される配列線の群について、隣接する配列線の間の最短距離である配列線間隔Lpが、巻き付け角度をφとし、配列角度をθとし、リボンの幅をLとした場合に、Lp≦L・sin(|φ−θ|)/sinφの関係を満足するように構成されている。
【0026】
さらに好ましくは、配列線間隔Lpが0.5以上となるように構成される。
本発明の別の局面に従う潤滑剤塗布機構は、上述のループブラシと、ループブラシに対して押圧されるように配置された固形潤滑剤とを含む。
【0027】
本発明のさらに別の局面に従う画像形成装置は、上述のループブラシと、ループブラシに対して押圧されるように配置された固形潤滑剤と、ループブラシの回転に伴って固形潤滑剤の一部が供給される像担持体体と、像担持体体に当接されたクリーニング装置とを含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、低い繊維密度を維持しつつ筋状ノイズの発生を抑制できる、潤滑剤塗布方式に適したループブラシ、そのループブラシを用いた潤滑剤塗布機構、および、その潤滑剤塗布機構を用いた画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に従うループブラシを適用する画像形成装置の主要構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すイメージングユニットの構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に従う潤滑剤塗布ブラシを構成するリボンを上から見た模式図である。
【図4】図3に示すリボンのIV−IV断面模式図である。
【図5】シャフトへのリボンの巻き付け工程を示す模式図である。
【図6】リボンの特性定数を定義するための模式図である。
【図7】リボンの配列線および配列線の間隔の算出方法を説明するための模式図である。
【図8】本発明の実施の形態に従うリボンブラシについてのリボンの巻き付け角度、配列角度および配列線間隔の関係を説明するための模式図である。
【図9】本発明の実施の形態に従うリボンブラシについての繊維密度に関する配列線間隔の上限値の変化を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態に従う潤滑剤塗布ブラシの設計手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0031】
[A.概要]
本発明の実施の形態に従うループブラシは、潤滑剤塗布機構の潤滑剤塗布ブラシに向けられたものであり、潤滑剤の供給ムラに伴う筋状ノイズ、および、ブラシ汚れに伴う濃度ムラの発生を抑制する構成に向けられている。このループブラシは、隣接する繊維束を結んだ直線(配列線)がリボンの長手方向に対してなす角度(配列角度θ)と、リボンをシャフトに巻き付けた状態でのシャフトの回転軸と垂直な回転周方向に対してリボンの長手方向のなす角度(巻き付け角度φ)との間で、配列角度θ≠巻き付け角度φとなるように構成される。
【0032】
また、ブラシの回転方向と最も近接した角度を有する配列線が、シャフトを1周するうちに隣接する配列線と少なくとも交わるように巻き付け角度φが設定される。
【0033】
このような関係を数式で示すと、ブラシの回転方向と最も近接した角度を有する配列線の配列線間隔Lp(基準の配列線と、その基準の配列線に平行でかつ近接する配列線との間の最短距離)、巻き付け角度φ、配列角度θ、およびリボン幅Lとについて、以下の関係が満足されるように構成される。
【0034】
Lp≦L・sin(|φ−θ)/sinφ
Lp≧0.5
また、本実施の形態に従う潤滑剤塗布ブラシは、固形化した潤滑剤を削り取り、削り取った潤滑剤をトナー像担持体(像担持体体)に供給するようにした回転可能な潤滑剤塗布ブラシを有し、当該ブラシには、上述のようなループブラシが使用される。
【0035】
また、本実施の形態に従う画像形成装置は、トナーを選択的に担持してトナー像を保持する像担持体(像担持体体)と、像担持体からトナー像を転写媒体(中間転写ベルト)に転写した後に像担持体上に残留した残留トナーをクリーニングすることで、次の画像形成に備える。クリーニング装置の上流位置または下流位置に、上述のような潤滑剤塗布ブラシが使用される。
【0036】
[B.装置構成]
まず、本発明の実施の形態に従うループブラシを適用する電子写真方式の画像形成装置について説明する。本実施の形態に従うループブラシは、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置(複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機(MFP:multi-function peripheral)に適合可能である。
【0037】
図1は、本発明の実施の形態に従うループブラシを適用する画像形成装置の主要構成を示す模式図である。図2は、図1に示すイメージングユニットの構成を示す模式図である。図1および図2には、電子写真方式の画像形成装置の一例として、タンデム式の4色カラー方式を示すが、これらに限られることなく、モノクロ方式であってもよいし、ロータリー式のカラー方式であってもよい。
【0038】
図1を参照して、電子写真方式の画像形成を行なう主要構成としては、定着装置10と、各色のイメージングユニット20Y,20M,20C,20Kと、中間転写ベルト(第2像担持体)30と、1次転写ローラー40Y,40M,40C,40Kと、2次転写ローラー50と、像担持体体(第1像担持体)60Y,60M,60C,60Kと、クリーニング装置70とを含む。
【0039】
図2を参照して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のそれぞれのトナー像を形成するためのイメージングユニット20Y,20M,20C,20K(以下「イメージングユニット20」とも総称する。)の各々は、帯電装置21と、現像装置22と、潤滑剤塗布機構80と、クリーニングブレード24および回収スクリュー25を含むクリーニング装置23と、除電装置26とを含む。これらの部材は、対応する像担持体体60Y,60M,60C,60K(以下「像担持体体60」とも総称する。)の周方向に沿って、その順序で配置されている。
【0040】
イメージングユニット20においては、帯電装置21が像担持体体(第1像担持体)60の表面をマイナス極性に一様に帯電し、続いて、画像データにより変調された書込光(画像露光)が照射される。すると、像担持体体60上に画像データに対応する静電潜像が形成され、この静電潜像が形成された像担持体体60に現像装置22によりマイナス極性に摩擦帯電されトナーを供給することで現像される。すなわち、静電潜像に対応するトナー画像が像担持体体上に形成される。なお、現像装置22からトナーを供給するための現像ローラー27には、マイナス極性の電圧(現像バイアス)が印加されており、露光によって電位が低下した像担持体体60に対して選択的にトナーを供給する反転現像を行っている。
【0041】
像担持体体60上に形成されたトナー画像は、対応する1次転写ローラー40Y,40M,40C,40K(以下「1次転写ローラー40」とも総称する。)(図1)によって、中間転写ベルト30へ静電的に転写される。この静電的な転写は、1次転写ローラー40に印加された電圧によって生じる静電的な吸引力によって実現される。
【0042】
上述したように像担持体体およびトナーは帯電されているので、両者の間にはファンデルワールス力が働く。このファンデルワールス力の影響を受けて、静電的には転写することができないトナー、いわゆる残留トナーが像担持体体60上に残る。クリーニング装置23が残留トナーを回収する。より具体的には、クリーニング装置23のクリーニングブレード24が像担持体体60上の残留トナーを掻き取る。クリーニングブレード24は、シート状に加工したポリウレタンゴムなどで構成される。掻き取られた残留トナーは、クリーニング装置23の内部へ搬送される。さらに、クリーニング装置23の内部へ搬送された残留トナーは、回収スクリュー25によってクリーニング装置23から廃トナーボックス(図示しない)へさらに搬送されて、廃トナーボックスに回収される。
【0043】
クリーニングの後、除電装置26が像担持体体60を全面露光することで、像担持体体60表面に残存する静電潜像を消去する。除電装置26は、典型的には、長手方向に配置された複数のLED(Light Emitting Diode)などの発光部材からなる。この発光部材からの光を像担持体体60に照射することで、像担持体体60表面に残存した電位を低下させ、次の画像形成において前の画像形成において形成された画像の履歴(メモリー画像)が残らないようにしている。
【0044】
以上のような処理によって、各色(Y,M,C,K)のイメージングユニット20で対応する単色のトナー像が生成され、中間転写ベルト30上に順次転写される。そして、最終的には、各色のトナー像が重ね合されたフルカラー画像が中間転写ベルト30上に形成される。
【0045】
中間転写ベルト30上のフルカラー画像は、2次転写ローラー50によって記録紙へさらに転写され、続いて、定着装置10が記録紙上に転写されたトナーを加熱・加圧して定着させる。このトナー像が定着された記録紙は、図示しないトレーへ排出される。一方、中間転写ベルト30上の残留トナーは、クリーニング装置70のクリーニングブレードにより掻き取り回収される。
【0046】
[C.潤滑剤塗布機構]
次に、図2に示すイメージングユニット20に含まれる潤滑剤塗布機構80について説明する。図2を参照して、潤滑剤塗布機構80は、後述するループブラシを用いた潤滑剤塗布ブラシ81と、潤滑剤塗布ブラシ81に当接して配置された固形潤滑剤82とを含む。なお、潤滑剤塗布ブラシ81は、固形潤滑剤82を押圧するように構成されている。
【0047】
潤滑剤塗布ブラシ81が回転駆動することで、固形潤滑剤82から潤滑剤を掻き取るとともに、掻き取った潤滑剤を像担持体体60に塗布する。すなわち、塗布部材である潤滑剤塗布ブラシ81の回転と、固形潤滑剤82に対する押圧力とによって、固形潤滑剤82は削り取られ、その削り取られた潤滑剤は粉体状に戻されて、像担持体体60との接触部まで搬送される。
【0048】
固形潤滑剤82は、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸マグネシウムやステアリン酸リチウムなどの脂肪酸金属塩からなる。本実施の形態においては、一例として、ステアリン酸亜鉛の粉体を溶融整形したものを固形潤滑剤82として用いた。溶融整形したままだと脆く割れやすいため、固形潤滑剤82は、板金でできた保持部材に両面テープなどで接着されている。さらに、潤滑剤塗布ブラシ81と固形潤滑剤82との押圧力を提供するため、固形潤滑剤82は、圧縮バネでできた押圧部材によって、潤滑剤塗布ブラシ81に対して押圧保持されている。
【0049】
像担持体体60表面に供給された潤滑剤は、その後、クリーニング装置23まで搬送され、クリーニングブレード24の当接力を受けて成膜されることで、像担持体体60表面に皮膜を形成する。このように、本実施の形態に従う画像形成装置は、ループブラシの回転に伴って固形潤滑剤の一部が供給される像担持体体60と、像担持体体60に当接されたクリーニング装置23とを含む。ステアリン酸亜鉛によって皮膜は、離型性が高く(すなわち、像担持体体60表面における純水接触角が大きい)、摩擦係数が小さいという特徴を有する。このような高離型性・低摩擦性によって、転写性およびクリーニング性を良好に保つことができ、また像担持体体60の減耗も抑制されて長寿命化を達成できる。
【0050】
[D.潤滑剤塗布ブラシ]
(d1:概要)
次に、潤滑剤塗布機構80の潤滑剤塗布ブラシ81を構成するループブラシについて説明する。上述したように、本実施の形態に従う画像形成装置では、潤滑剤塗布ブラシ81としてロール状のブラシ(ループブラシ)が用いられる。
【0051】
潤滑剤塗布ブラシ81は、像担持体体60の回転方向に対していずれの方向に回転してもよいが、本実施の形態においては、像担持体体60と摺擦する方向への回転、いわゆるカウンター回転し、像担持体体60に対して相対的に遅い線速度で回転する。一例として、潤滑剤塗布ブラシ81は、像担持体体60に対して、線速度比が0.4倍になるように回転する。
【0052】
潤滑剤塗布ブラシ81の典型的な材質としては、導電性のポリエステルが用いられる。この導電性のポリエステルのブラシとしての抵抗値は、10〜1010Ωであるとする。また、繊維の太さは4T(デシテックス)であり、繊維密度は100KF/inchであるとする。なお、潤滑剤塗布ブラシ81の材質としては、ナイロン、アクリル、レーヨンなどを採用することもできる。
【0053】
潤滑剤塗布ブラシ81の回転軸は、鉄などの金属で構成される。一例として、潤滑剤塗布ブラシ81のシャフト径はΦ6mmであり、ブラシの径はΦ12mmであるとする。なお、後述するように、繊維は、基布(厚さ:約0.5mm)に織り込まれており、その長さは約2.5mmとなっている。
【0054】
(d2:基布および繊維束)
次に、潤滑剤塗布ブラシ81(ループブラシ)を構成するリボンについて説明する。このリボンは、基布および繊維束(束ねた複数の繊維)からなる。
【0055】
図3は、本発明の実施の形態に従う潤滑剤塗布ブラシ81を構成するリボン150を上から見た模式図である。図4は、図3に示すリボン150のIV−IV断面模式図である。
【0056】
図3を参照して、潤滑剤塗布ブラシ81を構成するリボン150は、縦糸110と横糸120とを交互に編み込んだ布(以下「基布」とも称す。)に対して、所定の規則に従って繊維束100が編み込まれている。この繊維束100は、数十本(一例としては、96本)の繊維を束ねた状態のものであり、縦糸110と横糸120との間の空隙を這うように往復して編み込まれている。
【0057】
図4に示すように、繊維束100が基布(縦糸110および横糸120)の紙面下側を這うときは、基布に密着して編み込まれ、繊維束100が基布の紙面上側を這うときは、基布に対して一定の距離を保って編み込まれる。そのため、紙面上側に、ループ状の繊維束が形成される。このループ状の繊維束がループブラシの主たる構成となる。
【0058】
繊維束100が編み込まれる規則の一例として、図3には、ある繊維束100の列(たとえば、偶数列)に対して、その横に位置する繊維束100が異なる列(たとえば、奇数列)に編み込まれた例を示す。すなわち、隣接する繊維束100の間で、基布と交差する位置が、偶数列と記数列との互い違いになるようにずらして配置されている。言い換えれば、ある位置の横糸120についてみれば、ある繊維束100が上側に位置していれば、その隣に位置する繊維束100は下側に位置することになる。
【0059】
このように、繊維束100を交互にずらして配置することで、繊維束100をよりばらけた状態で織ることができる。もちろん、繊維束100を編み込む規則としては、図3に示すものに限られず、繊維束100が特定の位置に集中しないようにできれば、任意のパターンを用いることができる。
【0060】
(d3:巻き付け構成)
次に、図3および図4に示すリボン150をシャフトに巻き付けて、潤滑剤塗布ブラシ81を構成する処理について説明する。図5は、シャフトへのリボン150の巻き付け工程を示す模式図である。図6は、リボン150の特性定数を定義するための模式図である。
【0061】
図5を参照して、円筒状のシャフト130の軸方向に対して、リボン150を所定角度で巻き付けることで、潤滑剤塗布ブラシ用のループブラシを構成する。図5に示すように、シャフト130の回転軸に直交する回転周方向(軸外周側の端面)に対するリボン150の巻き付け角度をφとし、シャフト130の直径(シャフト径)をdとする。
【0062】
図5に示すように、リボン150をシャフト130に対して一重(重なり部分無し)で巻き付ける場合、シャフト1周毎にリボン150は1枚巻き付くことになるので、リボン150のリボン幅Lは、シャフト径dおよび巻き付け角度φを用いて、(1)式のように表すことができる。
【0063】
L=π×d×sinφ …(1)
このように、潤滑剤塗布ブラシ81に用いられるループブラシは、ループ状に形成された繊維束が規則的に基布上に配置されるとともに、シャフトに対して所定角度で巻き付けられたリボンとからなる。
【0064】
(d4:課題)
図3を用いて説明したように、リボン150には、繊維束100が所定規則に従う等間隔で存在しているので、任意の2つの繊維束100を結んだ直線上には、別の繊維束100が等間隔に並ぶことになる。ここで、ある繊維束(たとえば、偶数列)とそれに隣接する(最も近い)繊維束(たとえば、奇数列)とを結ぶ直線を「配列線」と定義する。
【0065】
図5には、リボン150をシャフト130に巻き付けた状態におけるリボン150の配列線が、シャフト130の周方向と略一致している例を示す。このように、リボン150の配列線とシャフト130の周方向とが略一致した状態になると、シャフト130の回転軸に沿って所定幅で見ていくと、ブラシ周方向について、複数の繊維束100が存在する密な部分と、繊維束100が1つも存在しない疎な部分とが周期的(等間隔)に生じてしまう。
【0066】
すなわち、図5には、隣接する繊維束を結ぶ直線である配列線がリボン150の長手方向に対してなす角度である配列角度と、リボン150の長手方向がシャフト130の周方向に対してなす角度である巻き付け角度とが略一致するように構成された例を示す。
【0067】
図5に示すようなリボンブラシを潤滑剤塗布ブラシとして使用すると、像担持体体60に対して潤滑剤が供給される部分と供給されない部分とが等間隔にできてしまい、それに伴って、像担持体体60表面の摩擦係数が周期的に変動することになる。このように、像担持体体60表面の摩擦係数が場所によって異なると、転写性や現像性、さらに像担持体体60の電位状態が異なる。そのため、特に、ハーフトーン画像に筋状ノイズが現れる。
【0068】
(d5:解決手段)
本実施の形態においては、上述のような筋状ノイズの発生を防止するために、以下のような思想に従って設計されるリボンブラシを潤滑剤塗布ブラシに用いる。すなわち、図5に示す状態とは異なり、隣接する繊維束を結ぶ直線である配列線がリボン150の長手方向に対してなす角度である配列角度と、リボン150の長手方向がシャフト130の周方向に対してなす角度である巻き付け角度とが異なるように構成する。
【0069】
図7を参照して、リボン150を構成する繊維束100の間隔についての配列線および配列線の間隔(配列線間隔Lp)について説明する。図7は、リボン150の配列線および配列線の間隔の算出方法を説明するための模式図である。
【0070】
図7(A)に示すように、偶数列に配置された繊維束100と奇数列に配置された繊維束100との間隔をxとし、偶数列のある繊維束100と奇数列の最も近接した繊維束100との間のリボン150の長手方向についての間隔をyとし、配列線とリボン150の長手方向とのなす角度(配列角度)をθとする。また、隣接する2つの配列線の間隔(配列線間隔Lp)をLpとする。すると、配列線間隔Lpと間隔xおよびyとの間には、(2)式のような関係式が成り立つ。
【0071】
Lp=2×x×y/√(x+y) …(2)
より具体的な算出過程としては、図7(B)に示すように、共通の配列線上における隣接した2つの繊維束100の間隔をzとすると、z=√(x+y)となる。配列角度θの余角をδとすると、sinδ=y/z=y/√(x+y)となる。ここで、Lp=2×x×sinδであるから、上述の(2)式が導出される。
【0072】
図8は、本発明の実施の形態に従うリボンブラシについてのリボンの巻き付け角度φ、配列角度θおよび配列線間隔Lpの関係を説明するための模式図である。図8(A)には、巻き付け角度φが配列角度θよりも大きい場合を示し、図8(B)には、巻き付け角度φが配列角度θよりも小さい場合を示す。なお、配列線については、複数種類を定義することも可能であるが、以下の説明においては、シャフト130の回転方向と最も近接した角度で定義される配列線の群について考える。
【0073】
筋状ノイズを発生させないためには、繊維束100が像担持体体60に接触しない部分を発生させないという条件を満たすことが好ましい。すなわち、シャフト130の回転方向と最も近接した角度で定義される配列線の群について、リボンがシャフト130を1周するうちにある配列線が隣接する配列線と少なくとも交わるように巻き付けられることが好ましい。
【0074】
このような条件下において、配列線間隔Lpが最大となる場合は、図8(A)に示すように、第1配列線の下側の終点(リボン150の端面との交点201)と、第2配列線の上側の始点(リボン150の端面との交点202)とがブラシ周方向で一致している(交点201と交点202とを結ぶ破線が巻き付け方向と一致している)状態である。あるいは、図8(B)に示すように、第1配列線の上側の終点(リボン150の端面との交点203)と、第2配列線の下側の始点(リボン150の端面との交点204)とがブラシ周方向で一致している(交点203と交点204とを結ぶ破線が巻き付け方向と一致している)状態である。
【0075】
図8(A)または図8(B)に示す状態が、上述の条件下において配列線間隔Lpが最大となる場合であり、配列線間隔Lpがこの値よりも大きくなると、繊維束100が像担持体体60に接触しない部分を発生し得る。
【0076】
図8(A)に示すように、巻き付け角度φが配列角度θよりも大きい場合には、上述の条件を満たすLpは(3)式のように表すことができる。
【0077】
Lp≦π×d×sin(φ−θ) …(3)
また、図8(A)に示すように、巻き付け角度φが配列角度θよりも小さい場合には、上述の条件を満たすLpは(4)式のように表すことができる。
【0078】
Lp≦π×d×sin(θ−φ) …(4)
これらの(3)式および(4)式を一般化すると(5)式が得られる。
【0079】
Lp≦π×d×sin(|φ−θ|) …(5)
(1)式および(5)式から(6)式が得られる。
【0080】
Lp≦L×sin(|φ−θ|)/sinφ …(6)
この(6)式は、筋状ノイズの発生を抑制するためには、シャフト130の回転方向と最も近接した角度で定義される配列線の群について、隣接する配列線の間の最短距離である配列線間隔Lpが、巻き付け角度をφとし、配列角度をθとし、リボンの幅をLとした場合に、満たすべき条件を意味する。すなわち、(6)式の条件を満たすように、ループブラシを構成することで、潤滑剤塗布機構に用いた場合であっても、筋状ノイズの発生を抑制できる。
【0081】
さらに、(2)式および(6)式に従って、繊維密度(繊維束100の長手方向についての間隔y)を変化させた場合の巻き付け角度φに対する配列線間隔Lpの上限値の変化について検討する。
【0082】
図9は、本発明の実施の形態に従うリボンブラシについての繊維密度に関する配列線間隔Lpの上限値の変化を示すグラフである。図9には、算出される配列線間隔Lpが許容される上限値を超える領域をNG領域(ハッチングした領域)として示す。
【0083】
図9に示す計算例では、繊維束100についての間隔xを1mmとし、シャフト径dを6mmとした。そして、リボン幅Lを変化させることで巻き付け角度φを3通りに調整した。図9に示すように、算出される配列線間隔Lpが許容される上限値を超える領域(NG領域)に対応する繊維密度は、巻き付け角度φによって異なっており、巻き付け角度φを大きくすると高密度側にシフトする。ただし、巻き付け角度φを大きくしたほうが、NGとなる繊維密度領域を小さくできることがわかる。
【0084】
[E.評価例]
次に、上述のような技術的思想に基づいて複数種類のループブラシを作成し、その性能を試験した結果について説明する。
【0085】
試験には、コニカミノルタビジネステクノロジーズ製bizhubC6500(印字性能:A4Y60枚/分)の画像形成装置を上述したような構成に改造したものを使用した。
【0086】
この試験の条件としては、温度23℃、湿度65%RHの環境下で、画像濃度0%のべ夕画像と画像濃度100%相当のべ夕画像とが混在したテストチャートをモノクロモードで連続5000枚プリントし、その5000枚プリント後に、ハーフトーン画像をプリントし、そのプリント結果における筋状ノイズおよび0%部分と100%部分との間の濃度ムラを評価した。
【0087】
また、潤滑剤塗布機構80および固形潤滑剤は、図1および図2において説明したものを使用した。押圧バネにより潤滑剤塗布ブラシ81に対して4N/mの押圧力がかかるように調整した。クリーニングブレード24としては、JIS−A硬度が72度で、反発弾性が25%のポリウレタンゴムを使用し、像担持体体60に対する当接力を25N/mとし、当接角度を15°とした。
【0088】
また、潤滑剤塗布ブラシについては、繊維束100の長手方向についての間隔yを0.25mmから1.6mmまで変更して繊維密度が異なるリボンを作成した。また、リボン幅Lについても、10mmから16mmまで2mmピッチで変更して異なる幅のリボンを作成した。また、繊維束100が構成するループの高さを変更して異ならせたループ高さのリボンをそれぞれ用いた。これらのリボンをそれぞれシャフト径6mmの芯金に巻き付けてブラシロール化した。表中、Φ12は、ループの高さが0.5mmの例を示し、Φ13は、ループの高さが1.0mmの例を示す。これらの耐久試験結果を、以下に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
上記の耐久評価結果においては、各項目について、全く問題ないレベルを「○」、画像上確認できるが実用上問題ないレベルを「△」、画像上確認でき実用上問題となり得るレベルを「×」とした。
【0091】
実施例1〜実施例9および比較例1〜比較例3は、配列線間隔Lpと配列線間隔Lpの上限値とについて、(6)式の条件を満たす場合に相当する。これらの実験例では、耐久評価結果のうち筋状ノイズについての結果がいずれも良好である。これに対して、比較例4〜比較例6は、配列線間隔Lpと配列線間隔Lpの上限値とについて、(6)式の条件を満たさない場合に相当する。これらの実験例では、耐久評価結果のうち筋状ノイズについての結果がいずれも不良である。
【0092】
このように配列線間隔Lpと配列線間隔Lpの上限値とについての関係と筋状ノイズの評価結果とについてみれば、上述した本実施の形態に従う設計方針の妥当性が検証されているといえる。
【0093】
また、実施例1〜実施例6は、配列線間隔Lpが1mmを超える例であり、実施例7〜実施例9は、配列線間隔Lpが1mmを下回る例である。実施例1〜実施例6については、耐久評価結果のうち濃度ムラの評価結果が「○」である一方、実施例7〜実施例9については評価結果が「△」である。さらに、比較例1〜比較例3については、配列線間隔Lpが0.5を下回る例であり、これらの例では、耐久評価結果のうち濃度ムラの評価結果が「×」という結果となった。そのため、少なくとも、配列線間隔Lpは、Lp≧0.5が成立するように構成される。
【0094】
この濃度ムラの評価結果についてみれば、繊維密度が高くなりすぎて、ブラシ内にトナーが堆積したことで摩擦係数が下がらなくなり、濃度ムラとなったと考えられる。
【0095】
さらに、実施例1〜実施例4についてみれば、ループの高さがより高い方が掻き取り能力を高くでき、その結果、筋状ノイズの発生を低減できることがわかる。
【0096】
なお、筋状ノイズについては、画像濃度0%部分に顕著に発生していた。この理由としては、繊維束が当接している部分と当接していない部分との摩擦係数差が大きくなることで、筋状ノイズが発生するため、特に、摩擦係数が下がる条件で顕著な差が生じるためであると考えられる。
【0097】
また、画像濃度0%部分は、潤滑剤塗布ブラシ81へのトナー付着がなく、潤滑剤の掻き取り能力が高くなるため、筋状ノイズが画像濃度0%部分で顕著に発生するものと考えられる。濃度ムラについても、画像濃度0%部分で濃く、画像濃度100%部分で薄くなる。この現象も同様の理由であり、画像濃度100%部分は、潤滑剤塗布ブラシ81へのトナー付着が多く、潤滑剤の掻き取り能力が低くなるため、画像濃度100%部分の摩擦係数が下がらないことに起因するものと考えられる。
【0098】
なお、摩擦係数が下がると画像濃度が濃くなり、摩擦係数が下がらないと画像濃度が薄くなる理由としては、摩擦係数によって転写効率が大きく異なるためである。摩擦係数が小さくなるほど転写効率が良くなるので、像担持体体60上での摩擦係数に差があると、濃度ムラおよび/または筋状ノイズが現れることになる。
【0099】
[F.設計手順]
上述の考察の結果に基づいて潤滑剤塗布ブラシを設計する場合の手順について説明する。
【0100】
図10は、本発明の実施の形態に従う潤滑剤塗布ブラシの設計手順を示すフローチャートである。図10を参照して、まず、潤滑剤塗布機構80を搭載する画像形成装置のスペック(トナー、像担持体体、クリーニング装置の特性値)に基づいて、ループブラシの高さおよび繊維密度を決定する(ステップS2)。続いて、潤滑剤塗布ブラシのシャフト径を決定する(ステップS4)。このステップS2およびS4において決定されたパラメーターから、繊維束の間隔x,y、シャフト径d、配列線間隔Lp、配列角度θが決定されている。そのため、これらのパラメーターを用いて、配列角度θが決定される(ステップS6)。そして、上述の(6)式を満足するように、リボン幅Lが決定される(ステップS8)。
【0101】
このような手順によって、上述の条件を満足する、すなわち、筋状ノイズおよび濃度ムラの発生しにくい潤滑剤塗布ブラシを設計することができる。
【0102】
[G.利点]
本実施の形態によれば、固形潤滑剤の櫛歯状削れを防止して、耐久時の固形潤滑材の供給安定性を高くできるループブラシを潤滑剤塗布ブラシとして用いる際の課題を解決する。すなわち、ループブラシは、ブラシ表面での繊維ムラに度合いが直毛ブラシよりも大きいため、ブラシのシャフト径、リボン幅、および密度などの組み合わせによっては、ブラシ周方向に対して繊維束が略一列に並んでしまい、潤滑剤の像担持体体に対する供給ムラが発生し、画像に筋ムラとして生じる可能性がある。そこで、本実施の形態においては、リボン幅を変更してシャフトへの巻きつけ角度を変えることで、筋ムラの発生を抑制する。
【0103】
このように、本実施の形態に従う構成を採用することで、像担持体(像担持体体)に対してブラシ繊維束が当接しない部分をほぼなくすことができ、その結果、潤滑剤の供給ムラに伴う筋状ノイズの発生を効果的に抑制できる。また、必要以上に繊維密度を高める必要がないので、ブラシを常に清浄な状態に保つことができ、潤滑剤の塗布性を損ねることがない。
【0104】
以上のように、本実施の形態においては、固形潤滑剤の塗布ブラシにループブラシを用いた場合であっても、潤滑剤の供給ムラに伴う筋状ノイズと、ブラシ汚れに伴う濃度ムラの発生とを抑制することができる。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
10 定着装置、20,20Y,20M,20C,20K イメージングユニット、21 帯電装置、22 現像装置、23,70 クリーニング装置、24 クリーニングブレード、25 回収スクリュー、26 除電装置、27 現像ローラー、30 中間転写ベルト、40,40Y,40M,40C,40K 1次転写ローラー、50 2次転写ローラー、60,60Y,60M,60C,60K 像担持体体、80 潤滑剤塗布機構、81 潤滑剤塗布ブラシ、82 固形潤滑剤、100 繊維束、110 縦糸、120 横糸、130 シャフト、150 リボン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループブラシであって、
シャフトと、
ループ状に形成された繊維束が規則的に基布上に配置されるとともに、前記シャフトに対して所定角度で巻き付けられたリボンとを備え、
隣接する前記繊維束を結ぶ直線である配列線が前記リボンの長手方向に対してなす角度である配列角度と、前記リボンの長手方向が前記シャフトの周方向に対してなす角度である巻き付け角度とが異なるように構成されている、ループブラシ。
【請求項2】
前記リボンは、前記シャフトの回転方向と最も近接した角度で定義される配列線の群について、前記リボンが前記シャフトを1周するうちにある配列線が隣接する配列線と少なくとも交わるように巻き付けられている、請求項1に記載のループブラシ。
【請求項3】
前記シャフトの回転方向と最も近接した角度で定義される配列線の群について、隣接する配列線の間の最短距離である配列線間隔Lpが、前記巻き付け角度をφとし、前記配列角度をθとし、前記リボンの幅をLとした場合に、
Lp≦L・sin(|φ−θ|)/sinφ
の関係を満足するように構成されている、請求項1または2に記載のループブラシ。
【請求項4】
前記配列線間隔Lpが0.5以上となるように構成される、請求項3に記載のループブラシ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のループブラシと、
前記ループブラシに対して押圧されるように配置された固形潤滑剤とを備える、潤滑剤塗布機構。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のループブラシと、
前記ループブラシに対して押圧されるように配置された固形潤滑剤と、
前記ループブラシの回転に伴って前記固形潤滑剤の一部が供給される像担持体と、
前記像担持体に当接されたクリーニング装置とを備える、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−3510(P2013−3510A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137275(P2011−137275)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】