説明

レジスタ

【課題】1枚のみの前フィンを有するレジスタ前面のデザインを側面視略円弧状とした場合に、前フィンの長手方向端部近傍における指向性を向上させると共に、吹出口を通る空気流の圧力損失を全体として低減できるレジスタを提供する。
【解決手段】吹出口2の長手開口縁11Aは、下流側に突出して側面視略円弧状に形成されると共に、前フィン50も、その前端縁部50Aが吹出口の長手開口縁11Aに沿う略円弧状に形成される。このため前フィン50の弦長は前フィン50の長手方向端部に近づくほど短くなる。これに対して山形凸条13、14の上流側傾斜面13A、14Aの傾斜角度は、吹出口2の長手方向において中央部分から端部に向かうに連れて大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に長い吹出口と、吹出口内に吹出口の長手方向に沿って設けられる一枚の前フィンと、を有し、吹出口近傍の内側面に、下流側に向かって前記前フィンに近づくように内側に傾斜する第1傾斜面を上流側に有する山形凸条が吹出口の長手開口縁に沿って形成される車両空調用のレジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のデザインにおいて車両のフロントウィンドウの面積を広くとるため、インストルメントパネルの上端位置を下げてそのスペースを縮小する傾向が見られる。よってインストルメントパネルに配設されるレジスタも、その吹出口がより狭いものが求められるようになり、それにより吹出口内に設けられる前フィン(意匠フィン)の数も減少する傾向にある。例えば、特許文献1のような車両空調用のレジスタが報告されている。
【0003】
特許文献1のレジスタでは、長手方向に長い空気吹出口10と、空気吹出口10内に空気吹出口10の長手方向に沿って設けられる一枚の横フィン13と、を有し、空気吹出口10近傍の内側面には、吹出方向下流側(以下、下流側と略記)に向かい横フィン13に近づくように内側に傾斜する傾斜面11a、11bを上流側に有する山形凸条11、12が空気吹出口10の長手開口縁に沿って形成される。
そして通風路21を流れる空気流は、空気吹出口10から吹き出されるとき、空気吹出口10の傾斜面11a、11bに沿って、横フィン13の方向に曲げられ、意匠フィンである横フィン13が1枚のみと少なくても、横フィン13の向きを変えた時の風の指向性を良好なものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−160981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、車両メーカ等から、レジスタ前面を側面視略円弧状にデザインしたいという要求がある場合がある。例えば、車両内装のデザイン全体に丸みを帯びさせて柔らかな印象を持たせたいといった場合である。しかし、特許文献1のような意匠フィンを1枚のみとしたレジスタにおいて、前面を側面視略円弧状にデザインしようとすると前フィンの性能が大きく低下してしまうという問題が生じる。
【0006】
仮に特許文献1の側面視略直線状のレジスタ前面が、側面視略円弧状に変形されると仮定する。すると空気吹出口10の長手開口縁は下流側に突出した側面視略円弧状に変形される。
また横フィン13もその前端縁部が、空気吹出口10の長手開口縁に沿って下流側に突出した略円弧状に変形されるから、横フィン13の長手方向端部近傍における弦長が短くなる。これにより、横フィン13の長手方向端部において、横フィン13の向きを変えたときの風の指向性が大幅に低下してしまう。
【0007】
また、そもそも特許文献1の山形凸条11、12の形状の問題点として空気吹出口10を通る空気流の圧力損失が大きいことが挙げられる。特に、空気吹出口10の中央部分では風速がより大きいため、圧力損失が大きくなりがちである。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、1枚のみの前フィンを有するレジスタ前面のデザインを側面視略円弧状とした場合に、前フィンの長手方向端部近傍における指向性を向上させると共に、吹出口を通る空気流の圧力損失を全体として低減できるレジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため請求項1に係るレジスタは、長手方向に長い吹出口と、吹出口内に吹出口の長手方向に沿って設けられる一枚の前フィンと、を有し、吹出口近傍の内側面に、下流側に向かって前記前フィンに近づくように内側に傾斜する第1傾斜面を上流側に有する山形凸条が吹出口の長手開口縁に沿って形成される車両空調用のレジスタにおいて、前記長手開口縁は、下流側に突出して側面視略円弧状に形成されると共に、前記前フィンも前端縁部が、長手開口縁に沿う略円弧状に形成され、前記山形凸条における前記第1傾斜面の傾斜角度は、前記吹出口の長手方向において中央部分から端部に向かうに連れて大きくなることを特徴とする。
【0010】
また請求項2のレジスタは、請求項1に記載のレジスタにおいて、前記前フィンにおける長手方向端部の近傍部分の弦長を長くするように当該近傍部分の後部を延長することを特徴とする。
【0011】
また請求項3のレジスタは、請求項1又は請求項2に記載のレジスタにおいて、前記吹出口内において前記前フィンより上流側に、回動軸が吹出口の短手方向と略同じ向きに配設される複数枚の奥フィンを有し、前記奥フィンはいずれもその前中央部分が切り欠かれていることを特徴とする。
【0012】
また請求項4のレジスタは、請求項3に記載のレジスタにおいて、前記吹出口と連続する通風路を有し、前記通風路において前記吹出口の短手方向に沿う内壁には、下流側に向かい前記奥フィンに近づくように内側に傾斜する第2傾斜面を有する漏れ防止部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1のレジスタでは、前面を側面視略円弧状にデザインするため、吹出口の長手開口縁は、下流側に突出して側面視略円弧状に形成されると共に、前フィンも、その前端縁部が吹出口の長手開口縁に沿う略円弧状に形成される。これにより前フィンの弦長は前フィンの長手方向端部に近づくほど短くなる。これに対して第1傾斜面の傾斜角度は、吹出口の長手方向において中央部分から端部に向かうに連れて大きくなる。
よって前フィンの弦長が短い吹出口の長手方向端部近傍では特に、第1傾斜面の傾斜角度を大きくすることにより、吹出方向に流れてきた風が第1傾斜面に当たってその向きをより大きく変える。よって第1傾斜面により向きが変化した風は前フィンに当たり易くなり、前フィンの指向性を向上させることができる。また第1傾斜面の傾斜角度が小さいほど吹出口を通る風の圧力損失は小さくなる傾向にあるが、風速が比較的小さな吹出口の長手方向端部近傍では、第1傾斜面の角度を大きくしても空気流の圧力損失はあまり大きくならない。
また吹出口の長手方向中央部分に向かうにつれて前フィンの弦長も長くなるから、吹出口の長手方向中央部分に向かうに連れて大きくなりがちな圧力損失を低減できる。
以上より、請求項1のレジスタでは、吹出口を通る空気流の圧力損失全体を低減しつつ、長手方向端部近傍における前フィンの指向性を上げることができる。
【0014】
また、請求項2のレジスタでは、前フィンの長手方向端部の近傍部分の弦長を長くするように当該近傍部分の後部が延長される。よって、レジスタ前面の意匠に影響を与えることなく前フィンの長手方向端部の近傍部分の弦長を長くして、長手方向端部の近傍部分であっても前フィンの表面により多くの空気流を流れさせて当該長手方向端部の近傍部分における指向性を上げることができる。また、前フィンの剛性も向上する。
【0015】
また請求項3のレジスタでは、吹出口内において前フィンより上流側に、回動軸が吹出口の短手方向と略同じ向きに配設される複数枚の奥フィンを有する。
ここで前フィンの前端縁部が略円弧状となることにより、前フィンの長手方向端部に設けられる回転軸は、前フィン前端縁部が略直線形状に形成される特許文献1のレジスタに比べて上流側に配設せざるを得なくなる。すると、吹出口の短手方向と略同じ向きに配設される複数枚の奥フィンの回動軸も、奥フィンと前フィンとの当接を避けるために、特許文献1のレジスタに比べて吹出口からより遠い上流側に配設されることになる。ここで、奥フィンの指向性は、奥フィンの回動軸と吹出口との距離をどれほど小さくできるかに依存する。吹出口との距離が長いと、直線方向の空気流が奥フィンにより別の方向に曲げられても、その後、吹出口の内側面に当たってその向きが乱されてしまうからである。よって、レジスタ前面を側面視略円弧状にデザインすると、奥フィンの指向性が低下する問題が起こる。
しかし、請求項3のレジスタでは、奥フィンはいずれもその前中央部分が切り欠かれているので、その分、奥フィンの回動軸の位置を前フィン吹出口前端に近づけることができ、奥フィンによる風の指向性を向上させることができる。
【0016】
また、請求項4のレジスタでは、吹出口と連続する通風路を有し、通風路において吹出口の短手方向に沿う内壁には、下流側に向かい奥フィンに近づくように内側に傾斜する第2傾斜面を有する漏れ防止部が形成される。
よって通風路において吹出口の短手方向に沿う内壁近くを通る空気流は漏れ防止部の第2傾斜面により奥フィン側に曲げられる。このため吹出口の短手方向に沿う通風路内壁近傍を通る空気流が奥フィンと通風路内壁との隙間を抜けてしまうことが防止されて、より多くの空気流が奥フィンの表面に沿って流れることになり、奥フィンの指向性を更に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態のレジスタの正面図である。
【図2】第1実施形態のレジスタの斜視図である。
【図3】第1実施形態のレジスタの側面図である。
【図4】第1実施形態のレジスタの分解斜視図である。
【図5】第1実施形態のレジスタのA−A断面図である。
【図6】図5のレジスタを前フィンの回動軸と略直交する線であるB−B線で切断した断面図である。
【図7】図5のレジスタを前フィンの回動軸と略直交する線であるC−C線で切断した断面図である。
【図8】図5のレジスタを前フィンの回動軸と略直交する線であるD−D線で切断した断面図である。
【図9】各奥フィンの切り欠き形状を示す図である。(A)は平面図、(B)は右方から見た斜視図である。
【図10】第2実施形態のレジスタを図1のA−A位置で切断した断面図である。
【図11】第2実施形態のリテーナの側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るレジスタについて、具体化した2つの実施形態に基づいて図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1〜図9に基づき説明する第1実施形態のレジスタ1、図10、図11に基づき説明する第2実施形態のレジスタ100は、いずれも車両のインストルメントパネルにおいてナビゲーション画面の両脇部分に配設される。以下では図1の左をレジスタ1の左方向、図1の右をレジスタ1の右方向、図1の下をレジスタ1の下方向、図1の上をレジスタ1の上方向と呼ぶ。図1の前方向をレジスタ1の前方向又は下流側、図1の後をレジスタ1の後方向或いは上流側と呼ぶ。各方向の呼び方は第2実施形態でも同様である。
【0019】
図1〜図4のように、第1実施形態のレジスタ1は、レジスタ1の前面部を構成する前板部11を有するベゼル10と、ベゼル1と嵌合して連結するダクト状のリテーナ20とを有する。
図1のように、正面視において、前板部11は長手方向に長く短手方向に短い略長方形である。そして、その前板部11には、前板部11の長手方向と略同方向の長手方向を有する略長方形をした吹出口2が開口している。
ここで図3のように、ベゼル10の前板部11は、下流側に突出するように側面視略円弧状に湾曲した湾曲板状をしている。よって吹出口2の短手側端縁を構成する長手開口縁11Aも、側面視略円弧状をしている。
【0020】
また、吹出口2内には、吹出口2の長手方向に沿って前フィン50が配設される。図2のように前フィン50は後述する回転軸51、52が吹出口2の短手開口縁11Bの中央部分のすぐ内側にそれぞれ配設されているため、図1のように、正面視では回転軸51、52を通る直線が吹出口2を短手方向に2分する中央線と略一致し、回転軸51、52を通る直線が吹出口2の長手方向と略平行に見える。
図3ではベゼル10の内側に隠れているが、正面を向いた状態における前フィン50の前端縁部50Aが成す略円弧は、吹出口2の長手開口縁11Aを側面視してなる略円弧の直ぐ内側に当該略円弧に沿うように位置する。前フィン50前端縁部50Aの略円弧は、長手開口縁11Aからなる略円弧よりもわずかに半径が小さいが同程度の中心角を有する。また、前フィン50の回動軸51、52を通る直線は、前板部11を側面視してなる略円弧のうち中央の点を通る接線と略平行となる。なお、図3のように、前板部11は側面視において左側部分が右側部分よりもやや突出した形状をしている。
このようにして、レジスタ1の前面のデザインは側面視略円弧状となるように形成されている。
【0021】
なお、図2、図3のように、レジスタ1の長手方向の直線はいずれも上方に向かい斜め後方に向いており、レジスタ1は全体として上方に向かい後方に傾斜した形状をしている。図3のように、前板部11を側面視してなる略円弧も、当該略円弧の中央の点を通る接線が垂直方向に対して10°程度傾いている。
【0022】
また図1〜図3のように、前フィン50の上流側には複数枚の奥フィン80が、その回動軸82がいずれも、前フィン50の回動軸51、52と略直交すると共に吹出口2の短手方向と略同方向を向くように配設される。各奥フィン80の回動軸82は、上述したレジスタ1の傾斜に合わせて上方に向かい斜め後方に向く直線上に沿って並列するように配設される。
【0023】
続いて図4に基づいて、レジスタ1を構成する各部品について概説する。
レジスタ1は、上述したベゼル10、リテーナ20、前フィン50、奥フィン80のほか、前フィン50に摺動可能に取り付けられる操作ノブ60、前フィン50の回動軸51、52を支持する略板状の軸受部70、75、操作ノブ60と嵌合するラック状の歯部62を有する。
【0024】
ベゼル20は、上述した前板部11と、前板部11から後方に突出する枠部15とを有する。枠部15は、後方からみると略矩形である後端縁部15Bによりリテーナ20の前縁部を囲むように嵌着すると同時に、前板部11の長手開口縁11Aと連続する側壁部15Aを有し、側壁部15Aはその内側面に後述する山形凸条13、14を有する。
一方、リテーナ20は上記のレジスタ1の傾斜形状により側面視略平行四辺形をした(図10参照)ダクト状であり、内部に通風路25を形成する。
ベゼル10の枠部15はリテーナ20に嵌合するための板状突起16を有し、これがリテーナ21の外壁面に形成された外壁孔部21に挿入される。そして板状突起11に開いた角状の孔12がリテーナ20外壁面の係止突起22と係合してベゼル10がリテーナ20に嵌合する。これにより、ベゼル10の前板部10の正面に開口する吹出口2とリテーナ20とが連通する。
【0025】
また、前フィン50は、上述したように略円弧状の前端縁部50Aを有しており、その長手方向の両端部からはそれぞれ外側方向に回動軸51、52が立設される。
また、下側の回動軸51は下側の軸受部70の軸孔71に、上側の回動軸52は上側の軸受部75の軸孔76に回動可能に軸支される。また、上側の回動軸52の直ぐ後側には回動軸52と略同方向に軸部53が立設している。軸部53は上側の軸受部1の長孔77に挿通され、軸部53と長孔77との当接により前フィン50の回動角度が規制される。
下側の軸受部70はリテーナ20の前縁部の下側嵌合部23に嵌合すると共に上側の軸受部75は上側嵌合部24に嵌合する。この状態で、ベゼル10がリテーナ20に嵌着すると、軸受部70、75の各先端が前板部11の内側面に当接してしっかり固定される(図5、図10参照)。
【0026】
また、前フィン50の略中央部分を挟みこむように操作ノブ60が前フィン50の長手方向に沿って上下方向に摺動可能に外嵌される。前フィン50を外装した操作ノブ60の後部にはラック状の歯部62が設けられる。
【0027】
また、図4のように、上述した複数枚の奥フィン80は、それぞれ左右の端面から外方に回転軸82が突設され、それらの回転軸82は、左右の軸受部85、85にそれぞれ回動可能に嵌合される。これら左右の軸受部85、85がリテーナ20の前縁部の左壁と右壁のそれぞれ内側に配設された状態でベゼル10がリテーナ20に嵌着されると、軸受部85、85が枠部15の内側面に当接して軸受部85、85がしっかり固定される(図6等参照)。
また、図9(A)のように、各奥フィン80は、略四角形の前部と、当該前部よりも幅狭な略四角形の後部とからなり、後部からは右側の回転軸82と略同方向に突起部88がそれぞれ突設される。そして、各突起部88がリンク部材90により相互に連結されることにより、各奥フィン80は連動して回動して、一斉にその向きを変えることができる。このリンク部材90はリテーナ20内部に位置する。
【0028】
また上から4枚目の奥フィン80に、上述した扇形歯車87が前方に突出して嵌着されている。この扇形歯車87は、その前方に位置する前フィン50上の操作ノブ60後部に設けられる上述の歯部62と噛合するように配設される。よって操作ノブ60を前フィン13に沿って上下方向摺動することにより、連動して回動する奥フィン80の向きを変更することが出来る。
なお、各奥フィン80の切り欠き形状等については後述する。
【0029】
次に、前フィン50の構造について図5に基づいて詳述する。
図5は図1のA−A断面図であり、前フィン50の前端縁部50Aの側面視略円弧形状を示す。また図5の距離L及び距離Mは、いずれも前フィン50の回転軸51、52を通る直線と略直交する線分の長さであり、前フィン50の回転軸51、52を通る直線と前フィン前端縁部50Aとの距離を示す。前フィン50の長手方向端部に最も近い箇所における距離Lは、回転軸51、52を通る直線と前フィン前端縁部50Aとの最短距離であり、前フィン50の略中央部分における距離Mは、回転軸51、52を通る直線と前フィン50の前端縁部との最長距離である。本実施形態では、最短距離Lは最長距離Mの4倍以上であり、前フィン50の略円弧が大きな円弧であることを示している。なお、前フィン50の前端縁部の略円弧形状は、最短距離Lと最長距離Mとの差が7mm以上の大きな円弧であることが望ましい。すなわち、最短距離Lと最長距離Mの差が7mm以上の場合に、本発明の効果が大きい。
【0030】
そこで、前フィン50における長手方向端部の近傍部分の弦長r(前フィン50の前端から後端までを結ぶ、回動軸51、52と略直交する線分の長さ)を長くするために、当該近傍部分において後部を延長させている。
図5では、延長した部分を斜線で示す。このような延長は、前フィン50の長手方向の略中央部分における最長弦長(図5における弦長R)に対して、弦長rが3分の2以上となる箇所より端部側で行われるものとする。例えば図5において、前フィン50の中央より下側では、延長の起点となる箇所の弦長r1は最長弦長Rの約0.8倍となり、3分の2よりも大きい。図5では、後部への延長部分の延長幅は延長の起点となる箇所では0であって端部側へ向かうにつれて大きくなり所定幅に達すると端部近傍では当該所定幅を維持する。
なお、図5では前フィン50の大部分において弦長rが最長弦長Rの3分の2以上となっている。
【0031】
ここで、通風路25内壁に設けられる漏れ防止部26、27について説明する。
図5等のように、吹出口2の短手方向に沿う通風路25の上下内壁(すなわちリテーナ20の上下内壁)における吹出口2近傍に、漏れ防止部26、27が形成される。図5のように、上側の漏れ防止部26は、側断面視略台形であり、上流側には、下流側に向かい奥フィン80に近づくように内側に傾斜する上流側傾斜面26Aを有する。上流側傾斜面26Aは、水平なリテーナ20後部上壁に対して約120°傾斜している。一方、下側の漏れ防止部27は一枚の壁状であり、側断面視において水平なリテーナ20の下壁に対して約70°傾斜している。これらの漏れ防止部26、27は略同一の側断面を持って吹出口2の短手方向に沿って連続して形成される。
上流側傾斜面26Aも1枚壁状の漏れ防止部27も、奥フィン80の方向を向いているため、吹出口2の短手方向に沿う通風路25内壁近傍を通る通風方向の空気流は、漏れ防止部26の上流側傾斜面26Aや漏れ防止部27に当たり、奥フィン80側に向けられる。よって吹出口2の短手方向に沿う通風路25内壁近傍を通る空気流が通風路25の上下の内壁と奥フィン80との隙間を抜けてしまうのを防止して、奥フィン80の指向性を高めることができる。
【0032】
続いて図6〜図8に基づいて本実施形態の吹出口2の構造について詳述する。図6〜8は、レジスタ1の正面断面図であり、前フィン50の長手方向中央部から端部近傍にかけて3段階で切断したものである。上述のように、前フィン50はその長手方向端部近傍を後側に延長させるものの、図6〜図8のように、断面図の切断位置が長手方向中央から端部に向かうに連れて前フィン13の弦長は徐々に短くなっている。
図6〜図8のように、吹出口2の左右の内側面には、前板部11と連続する吹出口2の直ぐ内側面の対向した左部と右部に、山形凸条13、14が形成される。山形凸条13と山形凸条14は、吹出口2の短手方向中央線に対し略対称形に形成されると共に、吹出口2の長手開口縁11Aに沿って連続して形成される。山形凸条13、14は上述の枠部15の側壁部15Aの内面形状として形成される。
山形凸条13、14は、下流側傾斜面13B、14Bと上流側傾斜面13A、14Aからなる。上流側傾斜面13A、14Aは下流側に向かって前フィン50に近づくように吹出口2の内側に傾斜する。また、下流側傾斜面13B、14Bは下流側に向けて吹出口2の外側に広がるように、つまり前斜め左方と前斜め右方に向けて傾斜する。
【0033】
なお、図6〜図8において、前フィン50の前端縁部50Aは上流側傾斜面13A、14Aの下流側端部よりもやや下流側に位置しており、上流側傾斜面13A、14Aに当たりむきを変えた空気流が前フィン50に当たり易くしている。
なお、図6〜図8では、前フィン50の後端縁部は上流側傾斜面13A、14Aの上流側端部と略同位置或いはやや上流側に位置している。
【0034】
ここで、図6〜図8に示すように、下流側傾斜面13B、14Bは前板部11の長手方向に沿う各位置において、その幅も、前板部11に対する傾斜角度も略等しい。これはレジスタ1の正面の意匠に整った美しさを与える(図1参照)。
一方、図6〜図8のように、吹出口2の長手方向の中央部から端部に向かうに連れて、上流側傾斜面13A、14Aの水平方向に対する傾斜角度はより大きくなる。上流側傾斜面13A、14Aの傾斜角度は、図6の吹出口2の長手方向中央部分のB−B位置では21.6°であり、図7のように、中央部分よりも端部側のC−C位置では22.7°であり、図8のように更に端部側のD−D位置では30.2°である。
なお、これに伴い上流側傾斜面13A、14Aの幅は吹出口2の長手方向端部側ほど短くなっている。
【0035】
このように、上流側傾斜面13A、14Aの傾斜角度が吹出口2の長手方向に沿って変化すると、例えば図6のように前フィン50の弦長が長いため、通風路25を通風方向に流れる空気流の大部分が前フィン50の表面に沿って流れ易く、良好な指向性が得易い吹出口2の長手方向中央部分では上流側傾斜面13A、14Aの傾斜角度を小さくしても前フィン50の指向性は低減せず、一方で早い風速による空気流の圧力損失を低減することができる。
【0036】
一方、図8のように、前フィン50の弦長が短く、吹出口2内において前フィン50表面に空気流が集まりにくい吹出口2の長手方向端部近傍では、上流側傾斜面13A、14Aの傾斜角度を大きくする。これにより、通風路25を通風方向に流れる風が上流側傾斜面13A、14Aに当たってより大きくその向きを変えて前フィン50側を向き易くなる。これにより、前フィン50表面に沿ってより多くの空気流が流れることとなり、前フィン50の指向性を向上させることができる。
また、吹出口2の長手方向端部の近傍では中央部分よりも風速が小さいので、上流側傾斜面13A、14Aの傾斜角度を大きくしても空気流の圧力損失はあまり大きくならない。
【0037】
続いて、図9に基づいて、奥フィン80の切り欠き形状について述べる。図9(A)は軸受部85、85に軸支された状態の奥フィン80の平面図、図10(B)は右斜めから見た斜視図である。図9(A)、(B)では切り欠き形状を見易くするために上述した扇形歯車87を上から4枚目の奥フィン80から取り外した状態を示す。
図9(A)、(B)のように、各奥フィン80は、その回動軸82位置をより下流側に配置するために、いずれも前中央部分に切り欠き部81を有する。ここで切り欠き部81が各奥フィン80前部の略中央部分となっているのは、前フィン50の回動軸51、52を通る直線に対して、各奥フィン80の左右の回動軸82は略対称な位置にあるためである。各奥フィン80の切り欠き部81の形状は前フィン80の後部の回動を逃すと共に切り欠き面積を小さくして奥フィン80性能を維持するため略円弧状となっている。
ただし、図9(B)のように、上から4枚目の奥フィン80の切り欠き部81Aは扇形歯車87を嵌装するために、略円弧状部分の後側中央部分がさらに凸状に切り欠かれている。また上から3枚目の奥フィン80の切り欠き部81Bも、操作ノブ60の後側に取り付けられる歯部62に当接しないように、略円弧状部分の後側中央部分が更に2段の凸状に切り欠かれている。
【0038】
各奥フィン80の切り欠き形状の大きさは、各奥フィン80の性能(指向性)維持と、前フィン80後部との当接関係とによって決定される。
このように各奥フィン80の前中央部分を切り欠くと、その切り欠きの分だけ奥フィン80の回動軸82の位置を下流側にして吹出口2との距離を縮めることができる。
【0039】
続いて、図10、図11に基づいて第2実施形態のレジスタ100について説明する。第2実施形態のレジスタ100は、第1実施形態のレジスタ1とほとんど同じ構成を有しており、同一の構成について同じ符号を付し、説明を省略する。
図5及び図10に示すように、第2実施形態のレジスタ100と第1実施形態のレジスタ1との違いはリテーナ20の上下内壁に設けられる漏れ防止部126、127の形状である。
第1実施形態と異なり、第2実施形態の漏れ防止部126、127は、それぞれ上流側に、下流側に向かい奥フィン80に近づくように内側に傾斜する上流側傾斜面126A、127Aを有する。
上流側傾斜面126A、127Aはいずれも奥フィン80の各回動軸82より僅かに上流側からリテーナ20の上下内壁における前後方向中央より後側にまで延びる。リテーナ20後部の水平な上壁に対する上流側傾斜面126Aの傾斜角度は約160°、リテーナ20後部の水平な下壁に対する下流側傾斜面127Aの傾斜角度は約145°であり、それぞれ第1実施形態の漏れ防止壁26、27の傾斜角度と比べて格段に緩やかな緩斜面となっている。よって、通風路25の上下壁近傍を通る空気流の圧力損失は第1実施形態のレジスタ1に比べて、第2実施形態のレジスタ100の方が大幅に小さい。
【0040】
また、第2実施形態の上流側傾斜面126A、127Aでは上流側に向かって内側に傾斜する第1実施形態の漏れ防止部27とは異なり、下流側に向かって内側に傾斜するから、上流側傾斜面126A、127Aにより向きを変えた空気流が奥フィンに向かってスムーズに流れやすく、奥フィン80の指向性を更に向上させることができる。上流側傾斜面126A、127Aの傾斜角度は通風路25を通る空気流の圧力損失を低減すると共に奥フィン80の指向性を維持する角度に設定され、10°〜50°(リテーナ後部の水平な上壁又は下壁に対して130°〜170°)の範囲であることが好ましい。
【0041】
また、上側の漏れ防止壁126は下流側に向かって斜め上方に傾斜する下流側傾斜面126Bを有する。よって奥フィン80の向きを上側に変えた時には下流側傾斜面126Bにより空気流が斜め上方にガイドする。また、下側の漏れ防止部127は下流側に向かって斜め下方に傾斜する下流側傾斜部127Bを有し、奥フィン80の向きを下方に変えた時には下流側傾斜面127Bが空気流を斜め下方にガイドする。これら下流側傾斜面126B、127Bは吹出口2の外側に広がる方向に傾斜するので、通風路25内壁の吹出口2近傍を通る風が下流側傾斜面126B、127Bの存在により向きを乱されない。
【0042】
なお、第1実施形態の漏れ防止部26、27と同様に、第2実施形態の漏れ防止部126、127も略同一の側断面が吹出口2の短手方向に沿って連続して形成され、第2実施形態のリテーナ20は図11のように上流側傾斜面126A、127Aの緩斜面が側面視において明確に視認できる形状となっている。
なお、上述したように、第2実施形態のレジスタ100の他の構成は第1実施形態のレジスタ1と全く同じであり、仮にベゼル10を図11のリテーナ20に嵌着してなる第2実施形態のレジスタ100の斜視図や側面図は、図2、図3のレジスタ1においてリテーナ20の上下壁に126A、127B、127Aのような緩斜面を設けるように変形したものとなる。
【0043】
ここで、上流側傾斜面13A、14Aは請求項の第1傾斜面として機能する。また上流側傾斜面26A、126A、127Aは請求項の第2傾斜面として機能する。
【0044】
以上詳細に説明した通り、第1実施形態のレジスタ1及び第2実施形態のレジスタ100では、前面を側面視略円弧状にデザインするため、吹出口2の長手開口縁11Aは、下流側に突出して側面視略円弧状に形成されると共に、前フィン50も、その前端縁部50Aが吹出口の長手開口縁11Aに沿う略円弧状に形成される。このため前フィン50の弦長は前フィン50の長手方向端部に近づくほど短くなる。これに対して山形凸条13、14の上流側傾斜面13A、14Aの傾斜角度は、吹出口2の長手方向において中央部分から端部に向かうに連れて大きくなる。
よって前フィン50の弦長が短い吹出口2の長手方向端部近傍では特に、前フィン50の指向性を向上させることができる。また風速が比較的小さな吹出口2の長手方向端部近傍では、上流側傾斜面13A、14Aの傾斜角度を大きくしても空気流の圧力損失はあまり大きくならない。
また吹出口2の長手方向中央部分に向かうにつれて前フィン50の弦長も長くなるから、吹出口2の長手方向中央部分に向かうに連れて大きくなりがちな圧力損失を低減できる。
以上より、第1実施形態のレジスタ1及び第2実施形態のレジスタ100では、吹出口2を通る空気流の圧力損失全体を低減しつつ、長手方向端部近傍における前フィン50の指向性を上げることができる。
【0045】
また第1実施形態のレジスタ1及び第2実施形態のレジスタ100では、前フィン50の長手方向端部の近傍部分の弦長を長くするように当該近傍部分の後部が延長される。 よって、レジスタ1、100前面の意匠に影響を与えることなく前フィン50の長手方向端部の近傍部分の弦長を長くして、長手方向端部の近傍部分であっても前フィン50の表面により多くの空気流を流れさせて当該長手方向端部の近傍部分における指向性を上げることができる。また、前フィン50全体の剛性も向上する。
【0046】
また第1実施形態のレジスタ1及び第2実施形態のレジスタ100では、吹出口2内において前フィン50より上流側に、回動軸51、52が吹出口2の短手方向と略同じ向きに配設される複数枚の奥フィン80を有するが、奥フィン80はいずれもその前中央部分が切り欠かれているので、その分、奥フィン80の回動軸82の位置を吹出口2前端に近づけることができ、奥フィン80による風の指向性を向上させることができる。
【0047】
また第1実施形態のレジスタ1及び第2実施形態のレジスタ100では、吹出口2と連続する通風路25を有し、通風路25において吹出口2の短手方向に沿う内壁には、下流側に向かい奥フィン80に近づくように内側に傾斜する上流側傾斜面26A又は126A及び127Aを有する漏れ防止部26、126、127が形成される。
よって通風路25において吹出口2の短手方向に沿う内壁近くを通る空気流は漏れ防止部26、126、127の上流側傾斜面26A、126A、127Aにより奥フィン80側に曲げられる。このため吹出口2の短手方向に沿う通風路2内壁近傍を通る空気流が奥フィン80と通風路25内壁との隙間を抜けてしまうことが防止されて、より多くの空気流が奥フィン80の表面に沿って流れることになり、奥フィン80の指向性を更に向上できる。
【0048】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、リテーナ20の上下内壁において吹出口側に形成される漏れ防止部26、126、127は側断面視略台形に形成されたが、奥フィン80の弦長によっては側断面視略山形形状であってもよい。
また、実施形態のレジスタ1、100は側面視において上方に向かい後側に傾斜する形状に形成されたが、それに限定されないのは勿論である。
また、実施形態のレジスタ1は縦置きで吹出口2の長手方向が上下方向を向いていたが、横置きとして、吹出口2の長手方向が左右方向を向くのでもよい。
また、実施形態のレジスタ1には通風路25にダンパを設けないが、設けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、100 レジスタ
2 吹出口
11 前板部
11A 長手開口縁
13、14 山形凸条
13A、14A 吹出口の上流側傾斜面
20 リテーナ
25 通風路
26、27、126、127 漏れ防止部
26A、126A、127A 通風路の上流側傾斜面
50 前フィン
50A 前フィンの前端縁部
51、52 回動軸
60 操作ノブ
80 奥フィン
81 切り欠き部
r 弦長
R 最長弦長
L 前フィンの回転軸を通る直線と前フィン前端縁部との最短距離
M 前フィンの回転軸を通る直線と前フィン前端縁部との最長距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に長い吹出口と、吹出口内に吹出口の長手方向に沿って設けられる一枚の前フィンと、を有し、吹出口近傍の内側面に、下流側に向かって前記前フィンに近づくように内側に傾斜する第1傾斜面を上流側に有する山形凸条が吹出口の長手開口縁に沿って形成される車両空調用のレジスタにおいて、
前記長手開口縁は、下流側に突出して側面視略円弧状に形成されると共に、前記前フィンも前端縁部が、長手開口縁に沿う略円弧状に形成され、
前記山形凸条における前記第1傾斜面の傾斜角度は、前記吹出口の長手方向において中央部分から端部に向かうに連れて大きくなることを特徴とするレジスタ。
【請求項2】
前記前フィンにおける長手方向端部の近傍部分の弦長を長くするように当該近傍部分の後部を延長することを特徴とする請求項1に記載のレジスタ。
【請求項3】
前記吹出口内において前記前フィンより上流側に、回動軸が吹出口の短手方向と略同じ向きに配設される複数枚の奥フィンを有し、
前記奥フィンはいずれもその前中央部分が切り欠かれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスタ。
【請求項4】
前記吹出口と連続する通風路を有し、
前記通風路において前記吹出口の短手方向に沿う内壁には、下流側に向かい前記奥フィンに近づくように内側に傾斜する第2傾斜面を有する漏れ防止部が形成されることを特徴とする請求項3に記載のレジスタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−235668(P2011−235668A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106277(P2010−106277)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】