説明

レジストパターン形成装置およびその形成方法、および、当該方法を用いた半導体装置の製造方法

【課題】リソグラフィ工程において寸法精度が向上して微細化が可能であり、また、スループットの向上が可能な製造方法を提供する。
【解決手段】凹凸構造のモールドパターンを有するモールド12を、レジスト3を有する基板2に一括して押し付けることでレジストパターンを形成する方法であり、光源31を用いてモールド12の温度を制御して、モールド12の保持寸法などを調整する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レジストパターン形成装置およびその形成方法、および当該方法を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体装置などの高集積化、低消費電力化、高速化などの要求に伴い、所望のパターン形状に加工でき、微細化ができるリソグラフィ技術が求められている。また、リソグラフィ技術は、半導体装置の製造工程において多用されるため、スループットの向上が必要とされている。
【0003】
リソグラフィ技術は、たとえば、加工される基板にレジストを設け、パターン開口されたマスクを介してそのレジストに光、電子線などを照射しパターン転写する。そして、そのレジストを現像してレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンをエッチングマスクとして基板をエッチングして加工する。
【0004】
上述のようなレジストを用いたリソグラフィ技術は、レジスト露光時の光を短波長化することなどによりパターンの微細化が向上しているが十分でなく、また、複数の複雑な工程にて基板を加工するため十分なスループットが得られていない。また、電子ビームを走査して基板に直描するなどのレジストレスな方法も検討されているが、スループットが十分でない。このため、リソグラフィ技術は、パターンの微細化とスループットの向上とを両立できることが要求されている。
【0005】
パターンの微細化とスループットの向上が可能なリソグラフィ技術として、光などの露光によりレジストパターンを形成する方法ではなく、ナノインプリントと呼ばれる方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。ナノインプリント方法は、凹凸構造のモールドパターンを有するモールドを、レジストが設けられた基板に一括して押し付けて転写させ、基板にモールドパターンと等倍のレジストパターンを形成する。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−323461号公報(第2頁、図6)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のナノインプリント方法においては、保持されるモールドの温度が所定温度と温度誤差が生じた場合、モールドの保持されている寸法(以下、保持寸法)が熱膨張や熱収縮によって設計寸法と異なり寸法誤差が生ずる。たとえば、熱膨張率が3×10−6/degであるシリコンのモールドの場合、0.1℃の温度誤差で30nmの熱膨張または熱収縮が生じて寸法誤差が発生する。このようにモールドが寸法誤差を有する場合、モールドのモールドパターンも同様に所望の寸法でなくなり寸法誤差を有する。寸法誤差を有するモールドパターンは、レジストに等倍で転写されるため、レジストパターンは所望の寸法を得ることが困難であり寸法精度が低くなる。そして、低い寸法精度のレジストパターンをエッチングマスクとして用いる場合、加工される基板も同様に寸法精度が低くなる。また、モールドの面内温度分布が均一でない場合は、上記と同様な現象により、レジストパターンの面内の寸法精度が均一でなくなる。以上の現象は基板が温度誤差によって熱膨張あるいは熱収縮する場合も同様に発生し、つまり、基板の保持寸法とモールドの保持寸法との保持寸法比が、温度誤差によって、設計時の保持寸法比と異なる場合に発生する。このように、従来のナノインプリント方法は、温度誤差が発生することに起因して所望なレジストパターンを形成することが困難であって寸法精度が低い。
【0008】
そこで、本発明は、リソグラフィ工程において、寸法精度が向上して微細化が可能であり、また、スループットの向上が可能なレジストパターン形成装置およびその形成方法、および当該方法を用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、レジストを有する基板を保持する基板保持工程と、凹凸構造のモールドパターンを有し前記レジストより硬い材料のモールドを保持するモールド保持工程と、前記基板と前記モールドとを圧着させて前記モールドパターンを前記レジストに転写するモールドパターン転写工程と、前記圧着した基板とモールドとを引き離して前記レジストに凹凸構造のレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、を具備するレジストパターン形成方法であって、前記基板保持工程における前記基板の保持寸法と前記モールド保持工程における前記モールドの保持寸法との保持寸法比を調整するために前記基板と前記モールドとの少なくとも一方の温度を制御する保持温度制御工程とを有するレジストパターン形成方法およびその形成装置、および当該方法を用いた半導体装置の製造方法である。
【0010】
本発明は、モールドと基板との保持寸法比を調整するために基板とモールドとの少なくとも一方の温度を制御し、凹凸構造のモールドパターンを有するモールドをレジストが設けられた基板に一括して等倍に転写する。このため、本発明は、所望のパターン寸法のレジストパターンを形成できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の一例について添付図面を参照して説明する。
<実施形態1>
【0012】
図1は、実施形態1のレジストパターン形成装置を示す概略図である。
本実施形態のレジストパターン形成装置は、基板保持手段と、モールド保持手段と、マーク検出手段と、レジスト軟化手段と、位置合わせ手段と、保持温度制御手段と、モールドパターン転写手段と、レジストパターン形成手段と、を有する。
【0013】
基板保持手段は、レジスト3を有する基板2を保持するために基板台1で構成される。モールド保持手段は、モールド12を保持するためにモールド台11で構成される。基板台1およびモールド台11は、基板2、モールド12の変形などが発生しないように保持するため、高温雰囲気においても変形しにくい材料が用いられ、金属、ガラスなどが用いられる。基板台1とモールド台11は、レジスト3とモールド12のモールドパターンとが対面するように配置される。本実施形態において、基板台1は金属を用い、モールド台11は後述するアライメント手段を活用するために光を透過できる透明なガラスを用いる。
【0014】
モールド12は、凹凸構造のモールドパターンを有する。モ−ルド12は、レジスト3にモールドパターンを転写するために、レジスト3より硬い材料を用いて形成され、板状の金属、ガラス、半導体層などが用いられる。たとえば、モールド12にシリコンを用いた場合、RIE法、電子ビームを用いた直描などのリソグラフィ技術によってモールド12が加工され、凹凸構造のモールドパターンが得られる。本実施形態においては、電子ビームを用いた直描により、微細なモールドパターンがモールド12に形成される。
【0015】
基板2は、レジスト3を支持し、レジストパターンを用いて加工される被加工面を有する。本実施形態においては、基板2はシリコンの半導体基板を用いる。レジスト3は、たとえばスピンコート法により基板2に形成される。レジスト3は、モールドパターンが転写されるためにレジスト3より軟らかい材料が用いられる。レジスト3は、圧着された基板2とモールド12との引き離しの際に、所望のレジストパターンを形成できるようにレジストとモールド12との接着力が低い方が好ましい。そして、レジスト3は熱可塑性を有する高分子樹脂が好ましい。熱可塑性を有する高分子材料のレジスト3は、後述するモールドパターン転写手段によって基板2とモールド12とを圧着する際、熱によって軟化可能なためにモールドパターンが容易に転写できる。このため、熱可塑性を有する高分子材料のレジスト3は、レジスト特性を有することは勿論であるが、熱によって軟化され易いようにガラス転移温度が低い方が好ましい。本実施形態において、レジスト3は、熱可塑性を有する高分子材料であるポリメチルメタクリレート(PMMA)を用いる。
【0016】
レジスト軟化手段は、熱可塑性を有するレジスト3を軟化させるために設けられる。本実施形態において、レジスト軟化手段は、基板2を加熱してレジスト3を軟化させるため、基板台1の内部にヒータ51を備えている。基板台1の内部のヒータ51は、熱可塑性のレジストが軟化する温度以上に基板2を加熱して、基板2に形成されたレジスト3を加熱する。
【0017】
マーク検出手段は、モールド12と基板2が各保持手段で保持された状態での寸法を検出して、モールド12と基板2との保持寸法比を測定するために設けられる。さらに、マーク検出手段は、モールド12と基板2のそれぞれの位置を検出するために設けられる。マーク検出手段は、モールド12に設けられたモールド用マーク41と、基板2に設けられた基板用マーク42と、各マークを検出する検出カメラ43で構成される。モールド用マーク41と基板用マーク42の各マークは、モールド台11または基板2と光学的なコントラストを有するように設けられる。本実施形態において、モールド12および基板2は、金属光沢を有する基板用マーク42が設けられる。モールド用マーク41は、検出カメラ43が照射する側のモールド12の表面に形成される。基板用マーク42も同様に、基板1の表面に形成される。モールド用マーク41と基板用マーク42は、モールド12と基板2のそれぞれの保持寸法を測定するため、モールド12と基板2のそれぞれに2つ以上設けることが好ましい。検出カメラ43は、光や電子線などをモールド12または基板2に照射し、モールド用マーク41または基板用マーク42を検出するために設けられる。検出カメラ43は、モールド用マーク41と基板用マーク42とのそれぞれを検出することで、モールド12と基板2との相対的な位置を測定できる。また、検出カメラ43によって、モールド12に設けられた2つのモールド用マーク41をそれぞれ検出することで、2つのモールド用マーク41の間の距離がわかり、モールド12の保持寸法が測定できる。基板2も同様にして、基板2の保持寸法が測定できる。モールド12の保持寸法と基板2の保持寸法とを測定し、モールド12と基板2との保持寸法比をもとめることができる。
【0018】
位置合わせ手段は、モールド12と基板2との相対位置を所定の位置に合わせるために設けられる。本実施形態において位置合わせ手段は、モールド台11の水平方向の両側に位置するアーム61とアーム本体(図示なし)で構成される。アーム本体は、マーク検出手段で検出されたモールド12と基板2との相対位置に基づき、アーム61を水平方向に駆動してモールド12の位置を所定の位置に合わせるアーム駆動機能を有する。
【0019】
保持温度制御手段は、モールド台11に保持されたモールド12の温度を制御してモールド12の保持寸法を調整し、モールド12と基板2との保持寸法比を調整するために備えられる。モールド12の保持寸法は、モールド12の温度を制御し、熱膨張または熱収縮させて調整される。本実施形態において、保持温度制御手段は、加熱光を発生する光源であるキセノンランプ31を設けている。保持温度制御手段としての光源を用いることは、光源自身の熱容量が小さいために光源自身の熱を伝導しにくく、よってモールド12の温度を制御することが容易となり好適である。キセノンランプ31は、モールド台11の上方にコリメータレンズ32を介して配置される。そして、キセノンランプ31は、モールド12の温度を検知してモールド12の温度を制御する温度制御装置を具備する。キセノンランプ31の温度制御装置は、キセノンランプ31の光強度や照射時間を制御する。たとえば、キセノンランプ31の温度制御装置は、前述のマーク検出手段で検出されたモールド12および基板2の保持寸法に基づき、モールド12が所望の寸法となるようにキセノンランプで照射しモールド12を熱膨張させて調整する。保持されたモールド12の温度が制御されて所望の保持寸法となっているため、モールドパターンも同様に、所望のパターン寸法となる。なお、加熱光を発生する光源は、キセノンランプ31の他、ハロゲンランプ、YAGレーザ、COレーザ、パルス光源などを使用できる。パルス光源の場合は、照射パルス数を制御して、温度を制御する。コリメータレンズ32は、キセノンランプ31で発生した加熱光を拡大し、モールド台11に均一に照射するため設けられている。
【0020】
モールドパターン転写手段は、基板2とモールド12とを圧着させ、モールドパターンをレジスト3に一括して等倍に転写するために設けられる。本実施形態のモールドパターン転写手段は、加圧板21と加圧板21を押圧する油圧式ポンプ22で構成される。油圧式ポンプ22は、加圧面内に均一な圧力を印加することができるため好ましい。本実施形態は、基板台1側から圧力を印加するように、加圧板21と油圧式ポンプは基板台1を介しモールド台11と反対側に位置している。
【0021】
レジストパターン形成手段は、圧着した基板2とモールド12とを引き離してレジスト3に凹凸構造のレジストパターンを形成するために設けられる。本実施形態のレジストパターン形成手段は、油圧ポンプ22による圧力印加を解除できる圧力弁23で構成される。圧力弁23を開けることで基板2とモールド12との圧力印加は解除されて、基板2とモールド12は引き離される。
【0022】
つぎに、本実施形態に係るレジストパターン形成方法および当該方法を用いた半導体装置の製造方法について図1〜図3を用いて説明する。図2に示すように本実施形態に係るレジストパターン形成方法は、順次、基板保持工程101と、モールド保持工程102と、レジスト軟化工程103と、マーク検出工程104と、位置合わせ工程105と、保持温度制御工程106と、モールドパターン転写工程107と、レジストパターン形成工程108と、を行う。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、さらに基板加工工程109とを行う。
【0023】
基板保持工程101は、レジスト3が設けられた基板2を保持する工程である。本実施形態の基板保持工程101は、基板2を基板台1に保持する。モールド保持工程102は、凹凸構造のモールドパターンを有するモールド12を保持する工程である。本実施形態のモールド保持工程102は、モールド12をモールド台11に保持する。基板2とモールド12は、レジスト3とモールドパターンの凹凸面が対面するように保持される。基板2とモールド12は、モールドパターンが均一に転写されるため、互いが平行になるように保持されることが好ましい。
【0024】
レジスト軟化工程103は、保持された基板2に形成された熱可塑性のレジスト3を軟化させる工程である。本実施形態のレジスト軟化工程103は、基板台1の内部に設けられたヒータ51を用いて、熱可塑性のレジスト3が軟化する温度以上に基板2を加熱し、基板2に形成されたレジスト3を軟化させる。
【0025】
マーク検出工程104は、モールド12と基板2の保持寸法を検出してモールド12と基板2との保持寸法比を測定する工程である。さらに、マーク検出工程104は、モールド12と基板2の相対位置を検出するための工程である。本実施形態のマーク検出工程104は、モールド12に設けられたモールド用マーク41と基板2に設けられた基板用マーク42とを検出カメラ43により検出する。検出カメラ43は、光や電子線などをモールド12または基板2に照射し、モールド用マーク41または基板用マーク42を検出する。モールド12の保持寸法は、たとえば、モールド12に設けられた2つのモールド用マーク41をそれぞれ検出することで、2つのモールド用マーク41の間の距離をもとめて測定する。基板2も同様にして保持寸法を測定する。モールド12の保持寸法と基板2の保持寸法とを測定し、モールド12と基板2との保持寸法比をもとめる。モールド12と基板2との相対的な位置は、たとえば、モールド用マーク41と基板用マーク42とを検出することで測定する。
【0026】
位置合わせ工程105は、保持されたモールド12と保持された基板2との相対位置を所定の位置に合わせる工程である。本実施形態の位置合わせ工程105は、マーク検出手段で検出されたモールド12と基板2との相対位置に基づいて、アーム61を水平方向に駆動しモールド12の位置を所定の位置に合わせる。
【0027】
保持温度制御工程106は、モールド12と基板2との保持寸法比を調整するために、保持されたモールド12の温度を調整する工程である。たとえば、モールド12が所望の寸法A1に対して保持寸法A2となり、基板2が所望の寸法B1に対して保持寸法B2となる場合、A1/B1=A2/B2となるように、A2とB2の少なくとも一方を調整する。ここで、モールドの保持寸法A2と基板2の保持寸法B2は、前述のマーク検出手段で検出される。本実施形態の保持温度制御工程106は、モールド台11に保持されたモールド12の温度を制御してモールド12の保持寸法A2を調整する。モールド12の保持寸法は、モールド12の温度を制御し、熱膨張または熱収縮させて調整される。本実施形態の保持温度制御工程106は、キセノンランプ31から加熱光を照射し、その加熱光の光束をコリメータレンズ32によって拡大してモールド台11に照射する。キセノンランプ31の照射は、モールド12の温度を検知してモールド12の温度を制御する温度制御装置により、キセノンランプ31の光強度や照射時間が制御される。たとえば、前述のマーク検出手段で検出されたモールド12と基板2の保持寸法比に基づき、モールド12が所望の寸法となるようにキセノンランプで照射しモールド12を熱膨張などさせて調整する。
【0028】
モールドパターン転写工程107は、基板2とモールド12とを圧着させてモールドパターンをレジスト3に一括して等倍に転写する工程である。基板2とモールド12との圧着は、前述の保持温度制御工程106で調整された温度を維持した状態で行われる。本実施形態のモールドパターン転写工程107は、油圧式ポンプ22よって基板台1の下方より押圧され、図3(a)の保持された状態から、図3(b)のように基板2とモールド12とが圧着される。基板2とモールド12との圧着は、この圧着によって基板2を損傷させないため、図3(b)のように、モールドパターンの凸面が基板2の表面に達する前の圧着状態とすることが好ましい。この圧着によって、軟化している熱可塑性のレジスト3は変形し、モールドパターンが等倍にレジスト3に転写される。
【0029】
レジストパターン形成工程108は、圧着した基板2とモールド12とを引き離してレジスト3に凹凸構造のレジストパターンを形成する工程である。本実施形態においては、油圧ポンプ22の圧力弁23を開けて圧力を解除し、基板2とモールド12は引き離され、図3(c)のようにモールドパターンと等倍の凹凸構造であるレジストパターンが形成される。そして、図3(d)のように、RIE法によってレジストパターンの凹部のレジストを基板2の表面が露出するまで除去する。
【0030】
基板加工工程109は、レジストパターンが形成されたレジスト3をマスクとして基板2を加工する工程である。基板2は、レジストパターンが形成されたレジスト3をマスクとして、たとえば、RIE法などのエッチングにより、不要部分を除去して加工される。
【0031】
上述したように本実施形態は、微細な凹凸構造のモールドパターンを有するモールド12をレジスト3が設けられた基板2に一括して等倍に転写するため、微細なレジストパターンを高いスループットで形成することができる。そして、本実施形態は、モールド12と基板2との保持寸法比を調整するため、所望のパターン寸法比のレジストパターンが転写される。したがって、本実施形態によれば、高い寸法精度のレジストパターンを形成できる。
【0032】
また、本実施形態は、熱可塑性を有するレジスト3をヒータ51により軟化させレジスト3を変形し易くするため、基板2とモールド12とを圧着させる際に、モールドパターンがレジスト3に容易に転写できる。したがって、本実施形態は、レジストパターンを高いスループットにて形成できる。
【0033】
また、本実施形態は、加熱光を発生する光源を用いる光照射によって、保持されたモールド12の温度を制御する。光源を用いることは、光源自身の熱容量が小さく光源自身の熱が伝導されにくいため、モールド12の温度を制御することが容易となる。したがって、本実施形態は、寸法精度が高いレジストパターンを効率的に形成できる。
【0034】
<実施形態2>
本実施形態のレジストパターン形成装置は、保持温度制御手段が異なることを除き、実施形態1と同様である。このため、実施形態1と共通する部分については、同一符号を付し、その説明を省略する。図4は、実施形態2のレジストパターン形成装置の保持温度制御手段を示す概略図である。
【0035】
本実施形態の保持温度制御手段は、モールド12の面内の温度分布を制御する空間光変調器(SLM:Spatial Light Modelator)34を具備する。そして、本実施形態の保持温度制御手段は、加熱光を発する光源のYAGレーザ33と、YAGレーザのレーザ光の光束径を拡大し空間光変調器34に照射するコリメータレンズ32と、空間光変調器34から光をモールド12に照射する投影レンズ35とを具備する。投影レンズ35は、モールド12の形状に合わせて、照射領域を調整するため、ズームレンズとなっている。
【0036】
空間光変調器34は、DMD(Digital Micromirror Device)やGLV(Grating Light Valve)などのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子を使用する。また、直線偏向のレーザの場合には、液晶SLMが使用できる。DMDやGLVは、多数の独立に可動する鏡がチップに集積された構成であり、それぞれの鏡で光を反射させて投影する。このため、空間光変調器34は、モールド12の面内の温度分布を検出後、その温度分布に従い、DMDやGLVなどの鏡の向きを変え、モールド12へのYAGレーザ33の光照射量を制御し、保持されたモールド12の面内を所望の温度分布とすることができる。
上記空間光変調器の代わりに面発光半導体レーザ等をアレイ化したアレイ型レーザを用いてもよい。この場合には、要素レーザの発振強度を直接に変調することによって、光強度分布を制御する。
【0037】
つぎに、本実施形態に係るレジストパターン形成方法および当該方法を用いた半導体装置の製造方法について図2、図4を用いて説明する。本実施形態のレジストパターン形成方法および当該方法を用いた半導体装置の製造方法は、保持温度制御工程106が異なることを除き、実施形態1と同様に図2に示す工程を有する。このため、実施形態1と共通する部分については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
本実施形態の保持温度制御工程106は、空間光変調器34を用いて、保持されたモールド12の面内の温度分布を制御する工程である。本実施形態の保持温度制御工程106は、光源のYAGレーザ33から加熱光を照射し、コリメータレンズ32によって加熱光の光束径を拡大して空間光変調器34に照射し、空間光変調器34からの加熱光を投影レンズ35に介してモールド12に照射する。保持されたモールド12の面内の温度分布を検出し、加熱光は、その温度分布に従って、空間光変調器34によってモールド12の面内への照射を制御される。そして、本実施形態の保持温度制御工程106は、モールド12の面内の温度分布を制御するため、モールドパターンは所望のパターン寸法に調整される。
【0039】
上述した本実施形態は、空間光変調器34によって、保持されたモールド12の面内の温度分布を制御することができる。このため、モールド12の表面に残留応力がある場合や、モールド12の温度分布が不均一な場合などモールド12に歪みが発生していても、モールド12の面内温度を容易に所望とすることができる。また、平行光でない光源を斜め方向から照射する場合は、照射対象であるモールド12などの位置によって照射する分布が変わり均一に照射できないが、空間光変調器34を介することで均一に照射することが可能となる。このように、空間光変調器34は、モールド12の形状または位置によらず所望な照射ができる。
【0040】
したがって、本実施形態は、モールド12の面内を所望な温度分布として、モールドパターンの面内を所望のパターン寸法とでき、モールド12と基板2との保持寸法比を所望に調整できる。このため、本実施形態は、面内の寸法精度が向上したレジストパターンを形成することができる。
【0041】
なお、本発明の実施に際しては、上記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形形態を採用することできる。
【0042】
たとえば、本実施形態においては、保持されたモールド12の温度を調整したが、保持された基板2の温度を調整してもよい。また、本実施形態は、モールド12の温度のみを調整したが、モールド12と基板2の両者の保持寸法を調整してもよい。基板2とモールド12の両者の保持された温度を調整することで、さらに高い寸法精度のレジストパターンを形成できる。
【0043】
また、本実施形態は、保持するモールド台11に加熱光を照射して、モールド台11に保持されたモールド12の温度を調整しているが、モールド12に加熱光を直接的に照射してもよい。本実施形態のように、モールド台11に加熱光を照射してモールド12の温度を調整する場合、モールド台11の形状によってはモールド12が所望な温度とすることができない場合がある。しかし、モールド12に加熱光を直接的に照射する場合、モールド台11の形状によらず、保持されたモールド12の温度を調整できる。このため、さらに高い寸法精度のレジストパターンを形成できる。これは、保持された基板2の温度を調整する場合も同様である。
【0044】
また、本実施形態は、マーク検出手段で検出されたモールド12と基板2との保持寸法比に基づいてモールド12の保持状態の温度を制御している。しかし、保持状態のモールドパターンのパターン寸法と基板2の保持寸法とを検出カメラにより検出し、その寸法比に基づいて、モールド12と基板2との保持寸法比を調整してもよい。同様に、基板2とモールド12との少なくとも一方の保持状態での温度データを検出し、その温度データに基づいて、基板2とモールド12との少なくとも一方の温度を調整してもよい。このようにマーク検出を使用しない場合であっても、基板2とモールド12との少なくとも一方の温度を調整しても、同様な効果が得られる。
【0045】
また、本実施形態は、加熱光を照射してモールド12を熱膨張させているが、たとえば、冷却ファンなどの冷却手段を用いて温度を調整してモールドを熱収縮させてもよい。この場合も同様な効果を得ることができる。
【0046】
そして、本実施形態は、レジスト3を軟化するために基板2にヒータ51を設けて基板2を加熱しているが、モールド12にヒータを設けてモールド12を加熱してもよい。この場合、熱可塑性のレジスト3が軟化する温度以上にモールド12を加熱し、基板2とモールド12とを圧着する際にレジスト3に伝熱させてレジスト3を軟化させる。また、レジスト3を軟化するために基板2とモールド12の両者にヒータを設けて両者を加熱しても同様に効果的である。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、リソグラフィ工程において、寸法精度が向上して微細化が可能であり、また、スループットの向上が可能なレジストパターン形成装置およびその形成方法、および当該方法を用いた半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施形態1に係るレジストパターン形成装置を示す概略断面図である。
【図2】図2は本発明の実施形態1または2に係るレジストパターン形成方法および当該方法を用いた半導体装置の製造方法を示す工程図である。
【図3】図3は本発明の実施形態1または2に係るレジストパターン形成方法および当該方法を用いた半導体装置の製造方法における概略断面図である。
【図4】図4は本発明の実施形態2に係るレジストパターン形成装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…基板台、 2…基板、 3…レジスト、11…モールド台、12…モールド、21…加圧板、22…加圧ポンプ、23…圧力弁、31…キセノンランプ、32…コリメータレンズ、33…YAGレーザ、34…空間光変調器、35…投影レンズ、41…モールド用マーク、42…基板用マーク、43…検出カメラ、51…ヒータ、61…アーム、101…基板保持工程、102…モールド保持工程、103…レジスト軟化工程、104…マーク検出工程、105…位置合わせ工程、106…保持温度制御工程、107…モールドパターン転写工程、108…レジストパターン形成工程、109…基板加工工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストを有する基板を保持する基板保持工程と、
凹凸構造のモールドパターンを有し前記レジストより硬い材料のモールドを保持するモールド保持工程と、
前記基板と前記モールドとを圧着させて前記モールドパターンを前記レジストに転写するモールドパターン転写工程と、
前記圧着した基板とモールドとを引き離して前記レジストに凹凸構造のレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
を具備するレジストパターン形成方法であって、
前記基板保持工程における前記基板の保持寸法と前記モールド保持工程における前記モールドの保持寸法との保持寸法比を調整するために前記基板と前記モールドとの少なくとも一方の温度を制御する保持温度制御工程と
を有する
レジストパターン形成方法。
【請求項2】
前記レジストは熱可塑性を有し、
前記基板保持工程において保持された前記基板と前記モールド保持工程において保持された前記モールドとの少なくとも一方を前記熱可塑性のレジストが軟化する温度以上に加熱するレジスト軟化工程と
を有する
請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項3】
前記保持温度制御工程は、光照射により温度を制御する
請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項4】
前記保持温度制御工程は、前記モールドまたは前記基板の少なくとも一方の面内の温度分布を制御する
請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項5】
前記保持温度制御工程は、空間光変調器を用いて温度分布を制御する
請求項4に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項6】
前記保持温度制御工程は、アレイ型レーザを用いて温度分布を制御する
請求項4に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項7】
レジストを有する基板を保持する基板保持手段と、
凹凸構造のモールドパターンを有し前記レジストより硬い材料のモールドを保持するモールド保持手段と、
前記基板と前記モールドとを圧着させて前記モールドパターンを前記レジストに転写するモールドパターン転写手段と、
前記圧着した基板とモールドとを引き離して前記レジストに凹凸構造のレジストパターンを形成するレジストパターン形成手段と、
を具備するレジストパターン形成装置であって、
前記基板保持手段に保持された前記基板の保持寸法と前記モールド保持工程に保持された前記モールドの保持寸法との保持寸法比を調整するために前記基板と前記モールドとの少なくとも一方の温度を制御する保持温度制御手段と
を有する
レジストパターン形成装置。
【請求項8】
レジストを有する基板を保持する基板保持工程と、
凹凸構造のモールドパターンを有し前記レジストより硬い材料のモールドを保持するモールド保持工程と、
前記基板と前記モールドとを圧着させて前記モールドパターンを前記レジストに転写するモールドパターン転写工程と、
前記圧着した基板とモールドとを引き離して前記レジストに凹凸構造のレジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
前記レジストパターンが形成された前記レジストをマスクとして前記基板を加工する基板加工工程と、
を具備する半導体装置の製造方法であって、
前記基板保持工程における前記基板の保持寸法と前記モールド保持工程における前記モールドの保持寸法との保持寸法比を調整するために前記基板と前記モールドとの少なくとも一方の温度を制御する保持温度制御工程と
を有する
半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2004−259985(P2004−259985A)
【公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−49675(P2003−49675)
【出願日】平成15年2月26日(2003.2.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】