説明

レゾルバの巻線絶縁構造

【課題】本発明は、突出磁極に設けられる突出樹脂部の外周に複数の鍔部を介して形成した各輪状溝内に互いに異なる種類の巻線を巻回し、電気的特性の向上を計ることを目的とする。
【解決手段】本発明によるレゾルバの巻線絶縁構造は、突出磁極(2)に設けられた輪状絶縁カバー(3)の突出樹脂部(4)の外周には、複数の鍔部(20)が形成され、各鍔部(20)間に形成された各輪状溝(21a,21b,21c)には励磁巻線(5c)、出力1相目巻線(5b)及び出力2相目巻線(5a)が巻回され、各々独立して配設されている構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバの巻線絶縁構造に関し、特に、突出磁極に設けられる突出樹脂部の外周に複数の鍔部を介して形成した各輪状溝内に互いに異なる種類の巻線を巻回し、電気的特性の向上を計るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバの巻線絶縁構造としては、例えば、特許文献1に開示されている構成を図7から図8で示される構成を挙げることができる。
すなわち、図7から図9において、符号1で示されるものは周知の輪状ステータであり、この輪状ステータ1の内面1aには、所定角度間隔で内方へ突出する複数の突出磁極2が形成されている。
【0003】
前記輪状ステータ1の両面には、一体又は別体で輪状絶縁カバー3が設けられ、この輪状絶縁カバー3の内面には、前記突出磁極2の外周を覆うように突出樹脂部4が形成されている。
前記各突出磁極2の外周には、前記輪状絶縁カバー3の突出樹脂部4を介してステータ巻線3が巻回され、このステータ巻線3は、周知の励磁巻線5c、出力1相目巻線5b及び出力2相目巻線5aによって構成されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6750577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のレゾルバの巻線絶縁構造は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、突出磁極の外周に巻回されるステータ巻線の励磁巻線と出力1相目巻線と出力2相目巻線は、互いに積層状態で巻回されているため、互いの巻線同士が接触し、被覆のピンホール等でショートする可能性があると共に、整列巻線による巻線保持が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるレゾルバの巻線絶縁構造は、輪状ステータの内面から所定角度間隔で内方へ突出する複数の突出磁極と、前記輪状ステータの両面に一体又は別体にて設けられた輪状絶縁カバーと、前記輪状絶縁カバーに形成され前記各突出磁極の少なくとも外周を覆うための突出樹脂部と、前記各突出樹脂部の外周面に形成された複数の鍔部と、前記各鍔部間に形成された少なくとも3個の輪状溝と、前記各輪状溝に巻回されステータ巻線を形成するための励磁巻線、出力1相目巻線及び出力2相目巻線と、を備え、前記励磁巻線、出力1相目巻線及び出力2相目巻線は、前記各輪状溝毎に独立して配設されている構成であり、また、前記各鍔部の一面に形成された少なくとも1個の切欠き部と、前記突出樹脂部の外周面にその長手方向に沿って連続して形成された1本の長手状溝と、を備え、前記各切欠き部と長手状溝とは互いに連通していると共に、前記長手状溝には前記各輪状溝に巻回される前記各巻線の端線又は渡り線が配設されている構成であり、また、前記突出樹脂部の外周面の外周形状は、断面で正方形又は長方形よりなる構成であり、また、前記長手状溝の長手方向における内側底部には、テーパ状部が形成されている構成であり、また、前記各輪状溝に巻回されている前記各巻線と前記長手状溝内の前記端線又は渡り線は互いに非接触とした構成であり、また、前記各巻線は整列巻きで形成されている構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるレゾルバの巻線絶縁構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、輪状ステータの内面から所定角度間隔で内方へ突出する複数の突出磁極と、前記輪状ステータの両面に一体又は別体にて設けられた輪状絶縁カバーと、前記輪状絶縁カバーに形成され前記各突出磁極の少なくとも外周を覆うための突出樹脂部と、前記各突出樹脂部の外周面に形成された複数の鍔部と、前記各鍔部間に形成された少なくとも3個の輪状溝と、前記各輪状溝に巻回されステータ巻線を形成するための励磁巻線、出力1相目巻線及び出力2相目巻線と、を備え、前記励磁巻線、出力1相目巻線及び出力2相目巻線は、前記各輪状溝毎に独立して配設されていることにより、各相の巻線が確に隔離して巻線することが可能となり、ワニスによる固定を行っていない場合においても、テンションをかけて整列巻きが可能となる。
また、前記各鍔部の一面に形成された少なくとも1個の切欠き部と、前記突出樹脂部の外周面にその長手方向に沿って連続して形成された1本の長手状溝と、を備え、前記各切欠き部と長手状溝とは互いに連通していると共に、前記長手状溝には前記各輪状溝に巻回される前記各巻線の端線又は渡り線が配設されていることにより、各相巻線と端線又は渡り線との接触を防止し、信頼性の高いレゾルバを得ることができる。
また、前記突出樹脂部の外周面の外周形状は、断面で正方形又は長方形よりなることにより、ニードルによって巻回を行う場合に、4ヶ所の角度で巻線に力が作用し、整列巻線が円滑に行われる。
また、前記長手状溝の長手方向における内側底部には、テーパ状部が形成されていることにより、長手状溝内に設けられた端線及び渡り線の引出しが容易となる。
また、前記各輪状溝に巻回されている前記各巻線と前記長手状溝内の前記端線又は渡り線は互いに非接触としたことにより、信号系の信頼性を向上させることができる。また、各巻線が整列巻きであるため、検出精度も高精度となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、突出磁極に設けられる突出樹脂部の外周に複数の鍔部を介して形成した各輪状溝内に互いに異なる種類の巻線を巻回し、電気的特性の向上を計るようにしたレゾルバの巻線絶縁構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0009】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバの巻線絶縁構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
また、周知のレゾルバの構成については、前述の突出磁極2に対するステータ巻線5の巻回構造が異なるのみで他は同一であるため、図8のレゾルバ10(要部のみ)の構成を援用するものとする。
【0010】
図1から図3において符号1で示されるものは周知の輪状ステータであり、この輪状ステータ1の内面1aには、所定角度間隔で内方へ突出する複数の突出磁極2が一体に形成されている。
【0011】
前記輪状ステータ1の両面には、一体又は別体で輪状絶縁カバー3が設けられ、この輪状絶縁カバー3の内面には、前記突出磁極2の外周を覆うように突出樹脂部4が形成されている。
前記各突出樹脂部4の外周面4aには、複数の鍔部20がその長手方向Aに沿って所定間隔で一体に形成され、前記各鍔部20間には複数の輪状溝21a,21b,21cが形成されている。
【0012】
前記各輪状溝21a,21b,21cを形成する各鍔部20の一面22の中央位置には、各々1個の切欠き部23が形成され、各切欠き部23は前記突出樹脂部4の長手方向Aに沿って一直線状に形成されている。
【0013】
前記突出樹脂部4の外周面4aには、前記各切欠き部23に連通する状態で直線状の長手状溝24が形成されている。
前記長手状溝24の溝の深さは、前記一面22からみた場合、前記各輪状溝21a〜21cの溝の深さよりもさらに深く形成され、この長手状溝24は前記突出樹脂部4の外周面4aから内部に切り込んだ状態で形成されている。尚、前記外周面4aの外周形状は、断面で正方形4aA又は長方形4aBで形成されている。
【0014】
前記長手状溝24の長手方向Aにおける内側底部24aには、底面から前記外周面4aに向けて上がる状態で形成されたテーパ状部25を有しており、後述におけるステータ巻線5の端線5A又は渡り線5Bが配設されるように構成されている。
【0015】
次に、前述の構成において、輪状ステータ1の各突出磁極2に前記突出樹脂部4を介してステータ巻線5を、図示しない自動巻線機のニードルを介して巻回させる場合について説明する。
まず、図6で示されるように、突出磁極2のティース内径側すなわち先端側2Aの前記輪状溝21に励磁巻線5cを巻回した後、その端線5A又は渡り線5Bは前記長手状溝24に配設されて輪状ステータ1の外径側1Aへ引き出されて次の突出磁極2A側へ移動される。
【0016】
次に、前記輪状溝21bには、前記ニードル(図示せず)によって出力1相目巻線5bが巻回され、その端線5A又は渡り線5Bは長手状溝24を介して前述と同様に外径側1Aに引き出されている。
また、前記出力2相目巻線5aは、図5には示していないが、図2に示されるように、前記輪状溝21cにも前述と同様に、出力2相目巻線5aが巻回されている。
【0017】
従って、前述のように前記突出磁極2に巻回されたステータ巻線5の各巻線5a,5b,5cは、前記各鍔部20によって完全に分離・独立され、これらの各巻線5a,5b,5cの各端線5A又は渡り線5Bは前記長手状溝24内に配設されているため、これらの各巻線5a,5b,5cと各端線5A又は渡り線5Bは、その配設方向が互いに直交し、かつ、各溝21a〜21c及び24の深さが異なるため、各巻線5a〜5cと端線5A又は渡り線5Bとが互いに交差して接触することを防止することができると共に、互いの損傷等によるショートを防止できる。
また、各輪状溝21a〜21cの外周面4aが正方形又は長方形であるため、巻回時のテンションがかけやすく、整列巻きを容易に行うことができる。
【0018】
また、前記長手状溝24の長手方向Aにおける前記輪状ステータ1の外径側1Aの内側底部24aには、テーパ状部25が形成されているため、端線5A又は5Bを長手状溝24から引込む又は引出す時に円滑に案内することができる。
【0019】
また、前記各巻線5a,5b,5cが各溝21a,21b,21cにテンションを伴なって巻回されているため、従来のように、ワニス剤で各巻線5a,5b,5cを固めなくても、各輪状溝21a,21b,21cに強固に整列巻きによって巻回された状態を維持することができると共に、浮き線の発生を抑え、振動による断線を防止し、ワニス剤の含浸固定を無くすことにより、耐ヒートショック性の向上を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるレゾルバの巻線絶縁構造を示す平面図である。
【図2】図1の構成に巻線を巻回した場合を示す断面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1を拡大して示す斜視図である。
【図5】図1の断面を示す要部の断面図である。
【図6】本発明による巻線絶縁構造の巻線工程を示す説明図である。
【図7】従来のレゾルバの巻線絶縁構造を示す断面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】従来のレゾルバの巻線絶縁構造の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 輪状ステータ
1a 内面
2 突出磁極
2a 外周
3 輪状絶縁カバー
4 突出樹脂部
4a 外周面
4aA 正方形
4aB 長方形
5 ステータ巻線
5c 励磁巻線
5b 出力1相目巻線
5a 出力2相目巻線
5A 端線
5B 渡り線
10 レゾルバ
20 鍔部
21a,21b,21c 輪状溝
22 一面
23 切欠き部
24 長手状溝
25 テーパ状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪状ステータ(1)の内面(1a)から所定角度間隔で内方へ突出する複数の突出磁極(2)と、
前記輪状ステータ(1)の両面に一体又は別体にて設けられた輪状絶縁カバー(3)と、前記輪状絶縁カバー(3)に形成され前記各突出磁極(2)の少なくとも外周を覆うための突出樹脂部(4)と、前記各突出樹脂部(4)の外周面(4a)に形成された複数の鍔部(20)と、前記各鍔部(20)間に形成された少なくとも3個の輪状溝(21a,21b,21c)と、前記各輪状溝(21a,21b,21c)に巻回されステータ巻線(5)を形成するための励磁巻線(5c)、出力1相目巻線(5b)及び出力2相目巻線(5a)と、を備え、
前記励磁巻線(5c)、出力1相目巻線(5b)及び出力2相目巻線(5a)は、前記各輪状溝(21a,21b,21c)毎に独立して配設されていることを特徴とするレゾルバの巻線絶縁構造。
【請求項2】
前記各鍔部(20)の一面(22)に形成された少なくとも1個の切欠き部(23)と、前記突出樹脂部(4)の外周面(4a)にその長手方向に沿って連続して形成された1本の長手状溝(24)と、を備え、前記各切欠き部(23)と長手状溝(24)とは互いに連通していると共に、前記長手状溝(24)には前記各輪状溝(21a〜21c)に巻回される前記各巻線(5)の端線(5A)又は渡り線(5B)が配設されていることを特徴とする請求項1記載のレゾルバの巻線絶縁構造。
【請求項3】
前記突出樹脂部(4)の外周面(4a)の外周形状は、断面で正方形(4aA)又は長方形(4aB)よりなることを特徴とする請求項1又は2記載のレゾルバの巻線絶縁構造。
【請求項4】
前記長手状溝(24)の長手方向(A)における内側底部(24a)には、テーパ状部(25)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のレゾルバの巻線絶縁構造。
【請求項5】
前記各輪状溝(21a〜21c)に巻回されている前記各巻線(5a〜5c)と前記長手状溝(24)内の前記端線(5A)又は渡り線(5B)は互いに非接触としたことを特徴とする請求項2ないし4の何れかに記載のレゾルバの巻線絶縁構造。
【請求項6】
前記各巻線(5a,5b,5c)は整列巻きで形成されていることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載のレゾルバの巻線絶縁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−268231(P2009−268231A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114016(P2008−114016)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】