説明

レゾルバの浮線防止構造

【課題】本発明は、端子ピン保持部に設けた端線固定用突起に端線のたるみをワニス含浸剤によって固定することにより、浮線の発生を防止することを目的とする。
【解決手段】本発明によるレゾルバの浮線防止構造は、端子ピン保持部(5)の端子ピン(6)と突出磁極(2)との間の端線(8)のたるみ(8a)を端線固定用突起(20)にワニス含浸剤で固定することにより浮線(8b)の発生を防止する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバの浮線防止構造に関し、特に、端子ピン保持部に設けた端線固定用突起に端線のたるみをワニス含浸剤によって固定することにより、浮線の発生を防止するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバの端線処理構造としては、例えば、特許文献1の明細書及び図面に記載されている構成を図3及び図4に開示することができる。
すなわち、図3及び図4において符号1で示されるものは全体形状が輪状に形成された輪状ステータであり、この輪状ステータ1の内周面には内方へ向けて突出する複数の突出磁極2が所定角度間隔で形成されている。
【0003】
前記輪状ステータ1の両面には、前記輪状ステータ1の一部を露出させた状態で覆うためのインサート成形による一体成形又は別体による嵌め合わせの何れかにより形成された輪状絶縁カバー3が設けられている。
【0004】
前記各突出磁極2には、前記輪状絶縁カバー3を介してステータ巻線4が巻回されており、前記輪状絶縁カバー3の一部から半径方向に沿って突出して端子ピン保持部5が形成されている。
【0005】
前記端子ピン保持部5の最も外側の外縁位置5Aには、複数の端子ピン6が設けられており、前記端子ピン保持部5上における前記各端子ピン6と前記突出磁極2との間には、複数のたるみ取りピン用ホール7が形成されている。
【0006】
前述の構成において、前記各突出磁極2に巻回された端線8は、前記たるみ取りピン用ホール7に植設されたたるみ取り用ピン(図示せず)の周囲に係合した後に、前記端子ピン6にからげられ、その後、前記たるみ取り用ピン(図示せず)が除去されている。
【0007】
前述のように、端線8が各端子ピン6にからげられた後に、前記たるみ取り用ピン(図示せず)を除去した後は、端線8が前記たるみ取りピン用ホール7の輪状係合突部7aの外周に係合すると共に、この端線8にはたるみ8aすなわち浮線8bが形成される。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6044545号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のレゾルバの端線処理構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、各磁極に巻回されたステータ巻線の端線は、たるみ取りピンを経て端子ピンにからげられるため、このたるみ取りピンを除去した後は、端線がたるみ取りピン用ホールの輪状係合突部と突出磁極との間でたるみ8aが形成されると共に、このたるみ8aが端子ピン保持部5の面5aから上方に距離をおいて浮線8bとなるため、この浮線8bをなくすために、一度のワニス含浸剤の塗布では済まず、再度の塗布を必要とし、量産時における大きい障害となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるレゾルバの浮線防止構造は、所定間隔で突出する複数の突出磁極を有する輪状ステータと、前記輪状ステータの両面に一体又は別体にて設けられた輪状絶縁カバーと、前記輪状絶縁カバーに一体に設けられ半径方向に沿って突出する端子ピン保持部と、前記各突出磁極に前記輪状絶縁カバーを介して巻回されたステータ巻線と、前記端子ピン保持部の外縁位置に設けられ前記ステータ巻線の端線をからげるための複数の端子ピンと、前記各端子ピンの内側位置に設けられ前記端線にたるみを形成するためのたるみ取りピンを設けるためのたるみ取りピン用ホールと、前記たるみ取りピン用ホールと前記突出磁極との間で前記端子ピン保持部に形成された複数の端線固定用突起と、を備え、前記突出磁極から前記たるみ取りピン用ホールを経て前記端子ピンにからげられた前記端線の一部をなすたるみがワニス含浸剤を介して前記端線固定用突起に固定されている構成であり、また、前記たるみ取りピン用ホールの周囲には、軸方向に突出する輪状係合突部が形成され、前記端線は前記輪状係合突部に係合する構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるレゾルバの浮線防止構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、所定間隔で突出する複数の突出磁極を有する輪状ステータと、前記輪状ステータの両面に一体又は別体にて設けられた輪状絶縁カバーと、前記輪状絶縁カバーに一体に設けられ半径方向に沿って突出する端子ピン保持部と、前記各突出磁極に前記輪状絶縁カバーを介して巻回されたステータ巻線と、前記端子ピン保持部の外縁位置に設けられ前記ステータ巻線の端線をからげるための複数の端子ピンと、前記各端子ピンの内側位置に設けられ前記端線にたるみを形成するためのたるみ取りピンを設けるためのたるみ取りピン用ホールと、前記たるみ取りピン用ホールと前記突出磁極との間で前記端子ピン保持部に形成された複数の端線固定用突起と、を備え、前記突出磁極から前記たるみ取りピン用ホールを経て前記端子ピンにからげられた前記端線の一部をなすたるみがワニス含浸剤を介して前記端線固定用突起に固定されていることにより、たるみの浮線が端線固定用突起に接すると共に、ワニス含浸剤で簡単に固定することができ、浮線の発生を防止し、信頼性を向上することができる。また、前記たるみ取りピン用ホールの周囲には、軸方向に突出する輪状係合突部が形成され、前記端線は前記輪状係合突部に係合していることにより、端線のたるみを防止することに大きく寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、端子ピン保持部に設けた端線固定用突起に端線のたるみをワニス含浸剤によって固定することにより、浮線の発生を防止するようにしたレゾルバの浮線防止構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0013】
以下、図面と共に本発明によるレゾルバの浮線防止構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を用いて説明する。
図1及び図2において符号1で示されるものは全体形状が輪状に形成された輪状ステータであり、この輪状ステータ1の内周面には内方へ向けて突出する複数の突出磁極2が所定角度間隔で形成されている。
【0014】
前記輪状ステータ1の両面には、前記輪状ステータ1の一部を露出させた状態で覆うためのインサート成形による一体成形又は別体による嵌め合わせの何れかにより形成された輪状絶縁カバー3が設けられている。
【0015】
前記各突出磁極2には、前記輪状絶縁カバー3を介してステータ巻線4が巻回されており、前記輪状絶縁カバー3の一部から半径方向に沿って突出して端子ピン保持部5が形成されている。
【0016】
前記端子ピン保持部5の最も外側の外縁位置5Aには、複数の端子ピン6が設けられており、前記端子ピン保持部5上における前記各端子ピン6と前記突出磁極2との間には、複数のたるみ取りピン用ホール7が形成されている。
【0017】
前記各たるみ取りピン用ホール7と前記突出磁極2との間には、前記端子ピン保持部5の面5a上において複数の端線固定用突起20が形成されており、各端線固定用突起20は前記面5aから軸方向に沿って所定の高さとなるように構成されている。
【0018】
前述の構成において、前記各突出磁極2に巻回された端線8は、前記たるみ取りピン用ホール7に植設されたたるみ取り用ピン(図示せず)の周囲に係合した後に、前記端子ピン6にからげられ、その後、前記たるみ取り用ピン(図示せず)が除去される。
【0019】
前述の場合、各突出磁極2と前記たるみ取りピン用ホール7の輪状係合突部7aとの間の端線8のたるみ8aは、前記各端線固定用突起20に接すると共に、図示しないワニス含浸剤の塗布により、このワニス含浸剤によって従来浮線8bとなっていた前記たるみ8aは前記端線固定用突起20に固定される。
従って、前記たるみ取りピン用ホール7の輪状係合突部7aと前記突出磁極2との間の従来の浮線8bである前記たるみ8aは、複数の前記端線固定用突起20に固定されることにより、たるみ8aは安定的に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるレゾルバの浮線防止構造を示す平面図である。
【図2】図1の斜視図である。
【図3】従来構成の平面図である。
【図4】図3の斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 輪状ステータ
2 突出磁極
3 輪状絶縁カバー
4 ステータ巻線
5 端子ピン保持部
6 端子ピン
5A 外縁位置
7 たるみ取りピン用ホール
8 端線
8a たるみ
8b 浮線
7a 輪状係合突部
20 端線固定用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で突出する複数の突出磁極(2)を有する輪状ステータ(1)と、前記輪状ステータ(1)の両面に一体又は別体にて設けられた輪状絶縁カバー(3)と、前記輪状絶縁カバー(3)に一体に設けられ半径方向に沿って突出する端子ピン保持部(5)と、前記各突出磁極(2)に前記輪状絶縁カバー(3)を介して巻回されたステータ巻線(4)と、前記端子ピン保持部(5)の外縁位置に設けられ前記ステータ巻線(4)の端線(8)をからげるための複数の端子ピン(6)と、前記各端子ピン(6)の内側位置に設けられ前記端線(8)にたるみ(8a)を形成するためのたるみ取りピンを設けるためのたるみ取りピン用ホール(7)と、前記たるみ取りピン用ホール(7)と前記突出磁極(2)との間で前記端子ピン保持部(5)に形成された複数の端線固定用突起(20)と、を備え、
前記突出磁極(2)から前記たるみ取りピン用ホール(7)を経て前記端子ピン(6)にからげられた前記端線(8)の一部をなすたるみ(8a)がワニス含浸剤を介して前記端線固定用突起(20)に固定されていることを特徴とするレゾルバの浮線防止構造。
【請求項2】
前記たるみ取りピン用ホール(7)の周囲には、軸方向に突出する輪状係合突部(7a)が形成され、前記端線(8)は前記輪状係合突部(7a)に係合していることを特徴とする請求項1記載のレゾルバの浮線防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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