説明

レプトマイシン誘導体

抗体等の細胞結合試薬に結合することのできる、スルフィドまたはジスルフィド等の部分を有するレプトマイシン誘導体が開示される。そのようなレプトマイシン誘導体複合体の治療用途も記載される。そのような複合体は、これらが細胞毒性レプトマイシン誘導体を、標的化形式で特異的細胞集団へ送達することができるので治療用途を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なレプトマイシン誘導体およびこの治療用途に関する。さらに具体的にいえば、本発明は、細胞結合剤へ共有結合することのできる部分(結合基)を含む新規なレプトマイシン誘導体、および前記細胞結合剤へリンカーを介して結合した前記レプトマイシン誘導体を含む相当する複合体(conjugate)に関する。前記複合体は、インビボで活性化され、放出され、標的化方式で特異的細胞集団へ送達することのできる治療剤を与える。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体−薬剤複合体での腫瘍細胞の標的化に係わる多数の報告が明らかにされている(Sela et al.、in Immunoconjugates、189−216頁(C.Vogel、ed.1987年);Ghose et al.、in Targeted Drugs、1−22頁(E.Goldberg、ed.1983年);Diener et al.、in Antibody Mediated Delivery Systems、1−23頁(J.Rodwell、ed.1988年);Pietersz et al.、in Antibody Mediated Delivery Systems、25−53頁(J.Rodwell、ed.1988年);Bumol et al.、in Antibody Mediated Delivery Systems、55−79頁(J.Rodwell、ed.1988年);G.A.Pietersz & K.Krauer、2 J.Drug Targeting、183−215頁(1994年);R.V.J.Chari、31 Adv.Drug Delivery Revs.、89−104頁(1998年);W.A.Blattler & R.V.J.Chari、in Anticancer Agents、Frontiers in Cancer Chemotherapy、317−338頁、ACS Symposium Series 796;およびI.Ojima et al.eds、American Chemical Society 2001年)。メトトレキサート(methotrexate)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、メルファラン(melphalan)、マイトマイシン(mitomycin)C、クロラムブシル(chlorambucil)、カリケアマイシン(calicheamicin)およびメイタンシノイド(maytansinoid)等の細胞毒性薬剤は、種々のマウスモノクローナル抗体へ結合されている。いくつかの場合では、薬剤分子は、中間担体分子、例えば、血清アルブミン(Garnett et al.、46 Cancer Res.2407−2412頁(1986年);Ohkawa et al.、23 Cancer Immunol.Immunother.81−86頁(1986年);Endo et al.、47 Cancer Res.1076−1080頁(1980年))、デキストラン(Hurwitz et al.、2 Appl.Biochem.25−35頁(1980年);Manabi et al.、34 Biochem.Pharmacol.289−291頁(1985年);Dillman et al.、46 Cancer Res.4886−4891頁(1986年);およびShoval et al.、85 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.8276−8280頁(1988年))、またはポリグルタミン酸(Tsukada et al.、73 J.Natl.Canc.Inst.721−729頁(1984年);Kato et al.、27 J.Med.Chem.1602−1607頁(1984年);Tsukada et al.、52 Br.J.Cancer 111−116頁(1985年))等を介して抗体分子へ結合された。
【0003】
リンカーの広範囲の配列は、開裂性および非開裂性リンカーの両方を含めて、そのような免疫複合体の調製のために現在利用できる。インビトロでの細胞毒性テストは、しかしながら、抗体−薬剤複合体が、遊離の非結合薬剤と同じ細胞毒性効力を殆ど達成しないことを示している。これは、薬剤分子が、結合した抗体から放出されるメカニズムが極めて非効率的であることを示唆している。抗毒素の分野での初期の研究は、モノクローナル抗体および触媒的に活性なタンパク質毒素との間でジスルフィド架橋を介して形成される複合体が、他のリンカーを含む複合体よりも細胞毒性であることを示した(Lambert et al.、260 J.Biol.Chem.12035−12041頁(1985年):Lambert et al.、in Immunotoxins 175−209頁(A.Frankel、ed.1988年);Ghetie et al.、48 Cancer Res.2610−2617頁(1988年))。この改善された細胞毒性は、抗体分子および毒素との間のジスルフィド結合の有効な開裂に寄与する還元されたグルタチオンの高い細胞内濃度によるものであった。メイタンシノイドおよびカリケアマイシンは、ジスルフィド結合を介してモノクローナル抗体へ結合した高細胞毒性薬剤の最初の例であった。これらの薬剤の抗体複合体は、インビトロでの高い効力およびマウスでのヒト腫瘍異種移植片モデルで例外的な抗腫瘍活性を有することが示されている(R.V.J.Chari et al.、52 Cancer Res.、127−131頁(1992年);C.Liu et al.、93、Proc.Natl.Acad.Sci.、8618−8623頁(1996年);L.M.Hinman et al.、53、Cancer Res.、3536−3542(1993年);およびP.R.Hamann et al.、13、BioConjugate Chem.、40−46頁(2002年))。
【0004】
レプトマイシンB:
【0005】
【化1】

は、US4771070およびUS4792522で報告されているように、ステプトマイセス種(Steptomyces spp.)から最初に単離された天然産物である。それは、元々は、抗菌作用のためのスクリーニングの結果として確認され、その後、抗腫瘍剤として確認された(Komiyama et al.、J.Antibiotics 1985年、38(3)、427−429頁およびUS2003/0162740)。分子レベルでは、レプトマイシンBは、「カーゴタンパク質(cargo protein)」の核転座に結合して影響を及ぼす核外輸送受容体CRM1の阻害剤として作用する。細胞レベルでは、レプトマイシンBは、細胞周期のG1およびG2期の最後で細胞を停止させることにより作用する(Kalesse et al.、Synthesis 2002年、8、981−1003頁)。しかしながら、哺乳類細胞に対するその極端な毒性は(Hamamoto et al.、J.Antibiotics 1983年、36(6)、639−645頁)、その臨床使用を不可能にしている。したがって、標的外細胞に対するレプトマイシン誘導体の毒性を減少させることが極めて望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US4771070
【特許文献2】US4792522
【特許文献3】US2003/0162740
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Immunoconjugates、189−216頁(C.Vogel、ed.1987年)
【非特許文献2】Tageted Drugs、1−22頁(E.Goldberg、ed.1983年)
【非特許文献3】Antibody Mediated Delivery Systems、1−23頁(J.Rodwell、ed.1988年)
【非特許文献4】Antibody Mediated Delivery System、25−53頁(J.Rodwell、ed.1988年)
【非特許文献5】Antibody Mediated Delivery System、55−79頁(J.Rodwell、ed.1988年)
【非特許文献6】2 J.Drug Targeting、183−215頁(1994年)
【非特許文献7】31 Adv.Drug Delivery Revs.、89−104頁(1998)
【非特許文献8】Anticancer Agents,Frontiers in Cancer Chemotherapy、317−338頁、ACS Symposium Series 796
【非特許文献9】American Chemical Society(I.Ojima et al.eds.2001年)
【非特許文献10】46 Cancer Res.2407−2412頁(1986年)
【非特許文献11】23 Cancer Immunol.Immunother.81−86頁(1986年)
【非特許文献12】47 Cancer Res.1076−1080頁(1980年)
【非特許文献13】2 Appl.Biochem.25−35頁(1980年)
【非特許文献14】34 Biochem.Pharmacol.289−291頁(1985年)
【非特許文献15】46 Cancer.Res.4886−4891頁(1986年)
【非特許文献16】85 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.8276−8280頁(1988年)
【非特許文献17】73 J.Natl.Canc.Inst.721−729頁(1984年)
【非特許文献18】27 J.Med.Chem.1602−1607頁(1984年)
【非特許文献19】52 Br.J.Cancer 111−116頁(1985年)
【非特許文献20】260 J.Biol.Chem.12035−12041頁(1985年)
【非特許文献21】Immunotoxins、175−209頁(A.Frankel、ed.1988年)
【非特許文献22】48 Cancer.Res.2610−2617頁(1988年)
【非特許文献23】52 Cancer.Res.、127−131頁(1992年)
【非特許文献24】93 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、8618−8623頁(1996年)
【非特許文献25】53 Cancer.Res.、3536−3542(1993年)
【非特許文献26】13 BioConjugate Chem.、40−46頁(2002年)
【非特許文献27】J.Antibiotics 1985年、38(3)、427−429頁
【非特許文献28】Synthesis 2002年、8、981−1003頁
【非特許文献29】J.Antibiotics 1983年、36(6)、639−645頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
レプトマイシン誘導体の治療効果は、標的外組織への低毒性、したがって、低い全身的毒性をもたらす、腫瘍部位への標的化送達によりインビボ分布を変えることで大いに改善することができる。この目標達成のために、本発明者らは、高い標的−特異性細胞毒性を示す観点から、レプトマイシンBの誘導体と腫瘍細胞を特異的に標的とする細胞結合剤との複合体を調製することを検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、細胞結合剤に共有結合することのできる結合基を含むレプトマイシン誘導体、および前記細胞結合剤にリンカーを介して結合した前記レプトマイシン誘導体を含む相当する複合体を提供することである。前記複合体は、インビボで活性化され、放出され、標的化方式で特異的細胞集団へ送達することのできる治療剤を与える。水溶性をさらに高めるために、任意のポリエチレングリコールスペーサーを結合基中へ導入することができる。
【0010】
本発明の化合物は、細胞結合剤が本発明の化合物の1つまたは複数へ結合される細胞毒性複合体で使用することができる。細胞結合剤としては、抗体およびこのフラグメント、インターフェロン、リンフォカイン、ビタミン、ホルモンおよび成長因子が挙げられる。そのような複合体を含む薬剤組成物もまた提供される。
【0011】
細胞毒性複合体は、上記薬剤組成物の有効量を投与することにより対象を治療する方法で使用することができる。選択された細胞結合剤が結合する細胞タイプによって、多数の疾患が、インビボ、エクスビボまたはインビトロで治療され得る。そのような疾患としては、例えば、リンパ腫、白血病、肺癌、乳癌、結腸癌、前立腺癌、腎臓癌、膵臓癌等を含む多種類の癌の治療が挙げられる。
【0012】
このように、特異的細胞結合剤への結合による特異的細胞タイプの標的化で有用であるレプトマイシン誘導体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】huC242−SSNPB−実施例6のレプトマイシン誘導体の複合体のインビトロでの細胞毒性および特異性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、細胞結合剤へ結合することができるレプトマシシン誘導体を見出し、それによってそのような誘導体の治療効果が、標的外組織への低毒性、したがって、低い全身的毒性をもたらす、腫瘍部位への誘導体の標的化送達によりそのインビボ分布を変えることで改善されることを見出した。
【0015】
この目標達成のために、本発明者らは、細胞結合剤へのレプトマイシン誘導体の結合のための結合基を含む例示的レプトマイシン誘導体を合成した。結合基はポリエチレングリコールスペーサーを含むことができる。結合基は、細胞結合剤への結合のために使用され、好ましくは、ジスルフィド結合またはスルフィド(または、本明細書ではチオエーテルと呼ばれる。)結合を含む。
【0016】
開裂結合、例えば、ジスルフィド結合等を使用する、高い細胞毒性の薬剤の抗体への結合は、細胞内部の完全な活性薬剤の放出を確実にすること、そしてそのような複合体が抗原特異性方式で細胞毒性であることは既に示されている(R.V.J.Chari et al.、52、Cancer Res.127−131頁(1992年);R.V.J.Chari et al.、55、Cancer Res.4079−4084頁(1995年);ならびに米国特許第5208020号および第5475092号)。本発明で、本発明者らは、レプトマイシン誘導体の合成、モノクローナル抗体へのこれらの結合の手順ならびにそのような複合体のインビトロでの細胞毒性および特異性の測定の手順を説明する。したがって、本発明は、最少の副作用を示しながら、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、微生物感染細胞、寄生虫感染細胞、自己免疫細胞(自己抗体産生細胞)、活性化細胞(移植片拒絶反応または移植片対宿主疾患に関与するもの)、または任意の他のタイプの罹病または異常細胞等を殺しまたは溶解する、罹病細胞または異常細胞の除去に関わる治療剤の調製にとって有用な化合物を提供する。
【0017】
したがって、本発明は、細胞結合剤へ化学的に結合することができ、保護基の放出により、親のレプトマイシン誘導体の高細胞毒性を維持するレプトマイシン誘導体の合成を教示する。これらの化合物が細胞結合剤へ結合した場合は、細胞結合剤が結合する細胞に対しては細胞毒性であり、標的外細胞に対しては毒性が極めて少ない。
【0018】
本発明のレプトマイシン誘導体
本発明によるレプトマイシン誘導体は、細胞結合剤へ誘導体を結合することのできる結合基を含む。
【0019】
本発明によれば、「レプトマイシン誘導体」とは、Kalesse et al.in Synthesis 2002年、8、981−1003頁で定義されているレプトマイシン族のメンバーを意味し、レプトマイシン、例えば、レプトマイシンAおよびレプトマイシンB等、カリスタチン(callystatin)、ラトジャドン(ratjadone)、例えば、ラトジャドンAおよびラトジャドンB等、アンギノマイシン(anguinomycin)、例えば、アンギノマイシンA、B、C、D等、カスサマイシン(kasusamycin)、レプトルスタチン(leptolstatin)、レプトフラニン(leptofuranin)、例えば、レプトフラニンA、B、C、D等が挙げられる。レプトマイシンAおよびBの誘導体が好ましい。
【0020】
誘導体を細胞結合剤へ結合させるためには、誘導体は、結合、例えば、ジスルフィド結合、スルフィド結合(または本明細書ではチオエーテルと呼ばれる。)、酸−不安定基、光−不安定基、ペプチダーゼ−不安定基、またはエステラーゼ−不安定基等を介して誘導体を細胞結合剤へ結合することのできる部分(結合基)を含まねばならない。誘導体は、これらが、レプトマイシン誘導体を、例えば、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、酸−不安定基、光−不安定基、ペプチダーゼ−不安定基、またはエステラーゼ−不安定基を介して細胞結合剤へ結合するのに必要な部分を含むように調製される。水溶液での溶解性をさらに高めるために、結合基はポリエチレングリコールスペーサーを含むことができる。
【0021】
好ましくは、標的化細胞の還元環境が、スルフィドまたはジスルフィドの開裂および細胞毒性の随伴増加を伴う誘導体の放出をもたらすので、スルフィドまたはジスルフィド結合が使用される。
【0022】
好ましい態様によれば、本発明は、末端カルボニル官能基が、誘導体の細胞結合剤への結合を可能にする部分を表すレプトマイシン誘導体を提供する。結合部分は、ポリエチレングリコールスペーサーを含んでもよい。例としては、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、酸−不安定基、光−不安定基、ペプチダーゼ−不安定基、またはエステラーゼ−不安定基を介して結合を可能とする部分が挙げられ、当技術分野ではよく知られている(例えば、参照として本明細書に組み込まれる米国特許第5846545号を参照されたい。)。好ましい部分は、ジスルフィド結合、例えば、チオールまたはジスルフィドを介して結合を可能とする部分が挙げられる。任意の末端離脱基、例えば、グルタチオン、メチルチオ等のアルキルチオ、ピリジルチオ、アリールチオ、ニトロピリジルチオ、ヒドロキシカルボニルピリジルチオ、(ニトロ)ヒドロキシカルボニルピリジルチオ等を含む混合ジスルフィドは、そのようなジスルフィドが、誘導体の細胞結合剤へのカップリングのためのジスルフィド−交換反応を受けることができることを条件に使用されてもよい。
【0023】
さらに具体的にいえば、本発明の誘導体は、式(I):
【0024】
【化2】

[式中、
RaおよびRa’は、Hまたは−Alkであり、好ましくは、Raは−Alk、好ましくは、メチルであり、Ra’はHであり;
R17は、OR、CN、NRR’、ペルフルオロアルキルで場合により置換されたアルキルであり、好ましくは、R17はアルキル、より好ましくは、メチルまたはエチルであり;
R9は、OR、CN、NRR’、ペルフルオロアルキルで場合により置換されたアルキルであり、好ましくは、R9はアルキル、より好ましくは、メチルであり;
Xは、−O−または−NR−であり、好ましくは、Xは−NR−であり;
Yは、−U−、−NR−U−、−O−U−、−NR−CO−U−、−U−NR−CO−、−U−CO−、−CO−U−であり、好ましくは、Xが−O−である場合、Yは−U−、−NR−U−、−U−NR−CO−であり;(ここで、Uは、直鎖または分枝−Alk−、−Alk(OCHCH−、−(OCHCH−Alk−、−Alk(OCHCH−Alk−、−(OCHCH−、−シクロアルキル−、−複素環−、−シクロアルキル−Alk−、−Alk−シクロアルキル−、−複素環−Alk−、−Alk−複素環−から選択され、mは、1から2000から選択される整数であり、好ましくはUは直鎖または分枝−Alk−である。)、
Zは−Alk−であり、
nは0または1であり、好ましくはnは0であり、
Tは、H、(Ac、RまたはSR等の)チオール保護基を表し(ここで、Rは、H、メチル、Alk、シクロアルキル、場合により置換されたアリールまたは複素環を表す。)、あるいはTは、
【0025】
【化3】

(式中、Ra、Ra’、R17、R9、X、Y、Z、nは上で定義された通りである。)を表し、好ましくは、TはHまたはSRであり、RはAlk、より好ましくは、メチルを表し;
R、R’は同じか異なり、Hまたはアルキルであり、
Alkは、直鎖または分枝アルキルを表し、好ましくは、Alkは、−(CH2−q(CH−(ここで、pは1から10の整数を表し;qは0から2の整数を表す。)を表し;好ましくは、Alkは、−(CH)−ou−C(CH−を表す。]を有し、
または薬剤として許容されるその塩、水和物、または水和した塩、あるいはこれらの化合物の多形結晶構造またはこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマーまたは鏡像異性体である。
【0026】
好ましい化合物は、
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メチルスルファニル−エチル)−アミド
ビス−[(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メルカプトエチル)−アミド]
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メルカプト−エチル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メチルジスルファニル−エチル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メチル−2−メチルジスルファニル−プロピル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メルカプト−2−メチル−プロピル)−アミド
または薬剤として許容されるその塩、水和物、または水和した塩、あるいはこれらの化合物の多形結晶構造またはこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマーまたは鏡像異性体から選択されてもよい。
【0027】
本明細書で定義される通り、アルキルは、直鎖または分枝C−C20アルキルを含む。直鎖アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。分枝アルキルの例としては、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチルおよび1−エチル−プロピルが挙げられる。シクロアルキル、即ち、環状アルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられる。アリールの例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。置換されたアリールの例としては、アルキル基で、ハロゲン、例えば、Cl、Br、F等で、ニトロ基、アミノ基、スルホン酸基、カルボン酸基、ヒドロキシ基およびアルコキシ基で置換されたフェニルまたはナフチル等のアリールが挙げられる。複素環とは、場合によって、O、N、およびSから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含む芳香族環を意味し、例としては、フリル、ピロリル、ピリジル、(例えば、2−置換ピリミジン基)およびチオフェンが挙げられる。
【0028】
本発明のスルフィドまたはジスルフィド含有およびメルカプト含有誘導体は、培養条件下のインビトロで、種々の望ましくない細胞系の増殖を抑えるためのこれらの能力を評価することができる。例えば、Ramos細胞系およびHL60等の細胞系は、これらの化合物の細胞毒性の評価のために簡単に使用することができる。評価される細胞は、24時間化合物に暴露して、細胞の生存画分を公知の方法によって直接分析で測定することができる。次いで、IC50値を、分析の結果から計算することができる。
【0029】
本明細書で使用される「細胞結合剤へ結合可能な」という表現は、誘導体を細胞結合剤へ結合するのに適当な少なくとも1つの結合基(好ましい結合基は、チオール、スルフィドもしくはジスルフィド結合、またはこれらの前駆体である。)を含むレプトマイシン誘導体またはこの前駆体を意味する。
【0030】
本明細書で使用される「細胞結合剤へ結合した」という表現は、適当な結合基(好ましい結合基は、チオール、スルフィドもしくはジスルフィド結合、またはこれらの前駆体である。)を介して細胞結合剤へ結合した少なくとも1つのレプトマイシン誘導体を含む複合体分子、またはこの前駆体を意味する。
【0031】
本明細書で使用される「患者」という用語は、本明細書で説明されている1つまたは複数の疾患および状態で苦しめられている、または苦しめられる可能性を有する動物、例えば、繁殖、同伴もしくは保存目的の有用な動物等、または好ましくはヒトもしくはヒトの子供を意味する。
【0032】
本明細書で使用される「治療有効量」とは、本明細書で説明されている疾患および状態の症状を予防、軽減、除去、治療または制御するのに有効である、本発明の化合物の量を意味する。「制御」という用語は、本明細書で説明されている疾患および状態の進行を緩慢にし、中断し、妨げ、または停止することであってもよいすべての過程を意味することが意図されるが、すべての疾患および状態の症状の完全除去を必ずしも示すものではなく、予防的治療を含むことが意図される。
【0033】
本明細書で使用される「薬剤として許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答または妥当な利益/危険比に見合う他の問題の合併症なしで人間および動物の組織と接触するのに適当な化合物、材料、賦形剤、組成物または剤形を意味する。
【0034】
本明細書で使用される「薬剤として許容される塩」とは、親化合物が、この酸または塩基塩を作ることにより変性される、開示された化合物の誘導体を意味する。薬剤として許容される塩としては、例えば、非毒性無機もしくは有機酸から形成された親化合物の従来の非毒性塩または第四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、そのような従来の非毒性塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等の無機酸から誘導されるもの、および酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、グルコロン酸(glucoronic)、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、トルエンスルホン酸、シュウ酸、フマール酸、マレイン酸、乳酸等の有機酸から調製される塩が挙げられる。さらなる付加塩としては、アンモニウム塩、例えば、トロメタミン、メグルミン、エポラミン等、金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛またはマグネシウム等が挙げられる。
【0035】
本発明の薬剤として許容される塩は、塩基性または酸性部分を含む親化合物から、従来の化学方法によって合成することができる。一般的に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸もしくは塩基形態と化学量論量の適当な塩基もしくは酸とを、水または有機溶媒またはこの2つの混合物中で反応させることにより調製することができる。一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。適当な塩の一覧表は、その開示が参照として本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、17th ed.、Mack Publishing Company、Easton、PA、1985年、1418頁において見出される。
【0036】
なおさらなる目的によれば、本発明は、また本発明の化合物の調製方法に関する。
【0037】
本発明の化合物および方法は、当業者によく知られた多数の方式で用意される。化合物は、例えば、以下で説明される方法、または当業者にとって適当と思われるその変法の適用または適合によって合成することができる。適当な変更および置換は容易に明らかであり、当業者に対する科学文献からよく知られ、または容易に得ることができる。
【0038】
特に、そのような方法は、R.C.Larock、Comprehensive Organic Transformations、Wiley−VCH Publishers、1999年において見出すことができる。
【0039】
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉的に置換された炭素原子を含んでもよく、光学的に活性なまたはラセミ体で単離され得ることが理解される。したがって、特定の立体化学または異性体が特に示されない限り、構造のすべてのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体およびすべての幾何異性体が意図される。そのような光学活性体を如何に調製し単離するかは当技術分野でよく知られている。例えば、立体異性体の混合物は、ラセミ体の分割、正常、逆相、およびキラルクロマトグラフィー、優先的塩形成、再結晶化等を含むがこれらに限定されない標準技法で、またはキラル出発物質からもしくは目標キラル中心の意図的な合成によるキラル合成で分離されてもよい。
【0040】
本発明の化合物は、種々の合成経路で調製されてもよい。試薬および出発物質は市販されており、または当業者によく知られた技法で容易に合成される。すべての置換基は、別途指示されない限り、既に定義されている通りである。
【0041】
以降で説明される反応では、反応性官能基、例えば、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオまたはカルボキシ基(これらは最終生成物において必要とされる。)を、反応でのこれらの望ましくない関与を避けるために保護することが必要であってもよい。従来の保護基は、標準的実践に従って使用されてもよく、例えば、T.W.Greene and P.G.M.Wuts in Protective Groups in Organic Chemistry、3rd ed.、John Wiley and Sons、1999年;J.F.W.McOmie in Protective Groups in Organic Synthesis、Plenum Press、1973年を参照されたい。
【0042】
いくつかの反応は塩基の存在下で行われてもよい。この反応で使用される塩基の性質についての特別の制限は存在せず、このタイプの反応で従来使用される任意の塩基が、分子の他の部分について悪影響をもたないことを条件にここで等しく使用されてもよい。適当な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、アルカリ金属水素化物、例えば、水素化ナトリウムおよび水素化カリウム等;アルキルリチウム化合物、例えば、メチルリチウムおよびブチルリチウム等;およびアルカリ金属アルコキシド、例えば、ナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシド等が挙げられる。
【0043】
通常、反応は適当な溶媒中で行われる。種々の溶媒が、反応または含まれる試薬に悪影響をもたないことを条件に使用されてもよい。適当な溶媒の例としては、芳香族、脂肪族または環状脂肪族炭化水素であってもよい炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等;アミド、例えば、ジメチルホルムアミド等;アルコール、例えば、エタノールおよびメタノール等ならびにエーテル、例えば、ジエチルエーテルおよびテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0044】
反応は、広範囲の温度にわたって生起することができる。一般的に、本発明者らは、0℃から150℃(より好ましくは、約室温から100℃)の温度で反応を行うことが都合よいことを見出した。反応に必要な時間は、また、多数の要因、特に反応温度および試薬の性質によって広く変動し得る。しかしながら、反応が上述の好ましい条件下で行われることを条件として、3時間から20時間の期間で普通は十分である。
【0045】
このようにして調製された化合物は、反応混合物から従来の手段によって回収されてもよい。例えば、化合物は、反応混合物から溶媒を留去させることにより回収されてもよく、または、必要に応じて、反応混合物から溶媒を留去させた後に、水中へ残渣を注ぎ、次いで、水非混和性有機溶媒での抽出および抽出物からの溶媒の留去により回収されてもよい。さらに、生成物は、必要に応じて、種々のよく知られた技法、例えば、再結晶化、再沈殿または種々のクロマトグラフィー技法、特にカラムクロマトグラフィーまたは分取薄層クロマトグラフィー等でさらに精製することができる。
【0046】
式(I)の化合物の調製方法は、式(II)および(III):
【0047】
【化4】

(式中、Ra、Ra’、R17、R9、X、Y、Z、T、nは、式(I)で定義された通りである。)の相当する化合物を反応させる工程を含む。
【0048】
一般的に、この反応は、HOBT等のラセミ化を抑えるための試薬を含む通常のカップリング試薬および/またはアミドもしくはエステル形成に対してカルボン酸を活性化するために使用される脱水剤、例えば、DIC、DCC等の存在下で行われてもよい。
【0049】
典型的には、反応は適当な有機溶媒、例えば、ジクロロメタン等で行われてもよい。
【0050】
式(I)でTがHである場合、反応は、N−アシル化剤、例えば、塩化ピバロイル等を伴い、有機塩基、例えば、トリエチルアミン等を含む塩基の存在下で代替的に行われてもよい。
【0051】
あるいは、式(I)でTがHである場合、式(I)の化合物は、また、ジスルフィド結合の還元剤、例えば、トリアルキルホスフィン、さらに具体的にいえばTCEP等の存在下で、式(I)(ここで、TはS−R1である。)の相当する化合物から得られてもよい。この反応は、一般的に、有機溶媒および水の混合物、例えば、THF/水等の水性媒体で行われてもよい。
【0052】
式(I)の二量体化合物は、式(II)の相当する化合物と、式(IV):
HX−Y−(Z)n−S−S−(Z)n−XH (IV)
の相当する化合物とを、HOBT等のラセミ化を抑えるための試薬を含む通常のカップリング試薬および/またはアミドもしくはエステル形成に対してカルボン酸を活性化するために使用される脱水剤、例えば、DIC、DCC等の存在下で反応させることにより調製されてもよい。
【0053】
典型的には、この反応は適当な有機溶媒、例えば、ジクロロメタン等で行われてもよい。
【0054】
本方法は、また、得られた生成物を単離する工程をさらに含んでもよい。
【0055】
本発明は、また、前記結合基を含むリンカーを介して本発明による1つまたは複数のレプトマイシン誘導体へ結合した細胞結合剤を含むレプトマイシン誘導体複合体に関する。
【0056】
好ましくは、細胞結合剤は抗体またはこのフラグメントである。
【0057】
好ましくは、リンカーは、−S−または−S−S−基を含む。
【0058】
細胞結合剤の調製
細胞結合剤としては、現在知られている、または知られることになる任意の種類であってもよく、ペプチドおよび非ペプチドが挙げられる。一般的に、これらは、抗体(特に、モノクローナル抗体)、または少なくとも1つの結合部位を含む抗体のフラグメント、リンフォカイン、ホルモン、成長因子、栄養素輸送分子(トランスフェリン等)、あるいは任意の他の細胞結合分子または物質であることができる。
【0059】
使用することのできる細胞結合剤のさらに特定的例としては:
モノクローナル抗体;
単鎖抗体;
抗体のフラグメント、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)およびF等(Parham、131 J.Immunol.2895−2902頁(1983年);Spring et al.、113 J.Immunol.470−478頁(1974年);Nisonoff et al.、89 Arch.Biochem.Biophys.230−244頁(1960年));
インターフェロン;
ペプチド;
リンフォカイン、例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6等;
ホルモン、例えば、インスリン、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)、MSH(メラニン細胞刺激ホルモン)等、ステロイドホルモン、例えば、アンドロゲンおよびエストロゲン等;
成長因子およびコロニー刺激因子、例えば、EGF、TGFα、インスリン様成長因子(IGF−I、IGF−II)G−CSF、M−CSFおよびGM−CSF(Burgess、5 Immunology Today 155−158頁(1984年));
ビタミン、例えば、葉酸等、および
トランスフェリン(O’Keefe et al.、260 J.Biol.Chem.932−937頁(1985年))が挙げられる。
【0060】
モノクローナル抗体技術は、特異的モノクローナル抗体の形態で極端に選択的な細胞結合剤の製造を可能にする。無傷の標的細胞等の対象の抗原、標的細胞から単離された抗原、全ウイルス、弱毒化全ウイルス、およびウイルス外被タンパク質等のウイルスタンパク質でマウス、ラット、ハムスターまたは任意の他の哺乳類を免疫化することにより産生されるモノクローナル抗体を作り出す技法が当技術分野で特によく知られている。
【0061】
適当な細胞結合剤の選択は、標的にされる特定の細胞集団による選択の問題であるが、一般的には、適当なものとして利用可能であればモノクローナル抗体が好ましい。
【0062】
例えば、モノクローナル抗体MY9は、CD33抗原に特異的に結合するマウスIgG抗体であり(J.D.Griffin et al.、8 Leukemia Res.、521頁(1984年))、標的細胞が、急性骨髄性白血病(AML)の疾患でのようにCD33を発現する場合に使用することができる。同様に、モノクローナル抗体の抗−B4は、B細胞上のCD19抗原へ結合するマウスIgGであり(Nadler et al.、131 J.Immunol.244−250頁(1983年))、標的細胞が、非ホジキンスリンパ腫または慢性リンパ芽球性白血病等でのようにこの抗原を発現するB細胞または罹病細胞である場合に使用することができる。
【0063】
さらに、骨髄性細胞へ結合するGM−CSFは、急性骨髄性白血病の罹病細胞に対する細胞結合剤として使用することができる。活性化T−細胞へ結合するIL−2は、移植の移植片拒絶反応の予防、移植片対宿主病の治療および予防、ならびに急性T−細胞白血病の治療のために使用することができる。メラニン細胞へ結合するMSHは、黒色腫の治療のために使用することができる。
【0064】
複合体の調製
誘導体および細胞結合剤の複合体は、現在知られているまたは後に開発される任意の技法を使用して形成することができる。一般的に、本発明の複合体の調製方法は、本発明のレプトマイシン誘導体と細胞結合剤とを、誘導体および細胞結合剤の結合基に対して反応性の官能基を含む試薬の存在下で、誘導体および細胞結合剤が前記結合基を含むリンカーを介して一緒に結合されるように反応させる工程を含む。好ましくは、前記リンカーはスルフィドまたはジスルフィド結合を含む。
【0065】
誘導体は、遊離のアミノ基を含ませるために調製され、次いで、酸不安定リンカーを介して、または光不安定リンカーにより抗体または他の細胞結合剤へ結合することができる。誘導体は、適当な配列を有するペプチドと縮合し、その後、ペプチダーゼ不安定リンカーを生成するために細胞結合剤へ結合することができる。細胞毒性化合物は、スクシニル化することができ、細胞結合剤へ結合することができ、遊離のレプトマイシン誘導体を遊離するために細胞間エステラーゼによって開裂できる複合体を生成する第一級ヒドロキシル基を含ませるために調製することができる。好ましくは、誘導体は、PEG含有スペーサーを伴うまたは伴わない遊離のまたは保護されたチオール基を含ませるために合成され、次いで、1つまたは複数のスルフィド、ジスルフィドまたはチオール含有誘導体は、それぞれ、ジスルフィド結合またはチオエーテル結合を介して細胞結合剤へ共有結合される。
【0066】
本発明の代表的な複合体は、抗体、抗体フラグメント、上皮成長因子(EGF)、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、エストロゲン、エストロゲン類似体、アンドロゲン、およびアンドロゲン類似体を伴うレプトマイシン誘導体の複合体である。
【0067】
レプトマイシン誘導体および細胞結合剤の種々の複合体の調製の代表的な例は以下で説明される。
【0068】
ジスルフィドリンカー:抗体huMy−9−6は、急性骨髄性白血病(AML)の多くの場合を含めて、ヒト骨髄性細胞の表面で見付かるCD33抗原に対して向けられるマウスモノクローナル抗体My−9−6の遺伝子的にヒト化された形態である(E.J.Favaloro、K.F.Bradstock、A.Kabral、P.Grimsley & M.C.Berndt、Disease Markers、5(4):215頁(1987年);M.G.Hoffee、D.Tavares、R.J.Lutz、Robert J.、PCT Int.Appl.(2004年)WO2004043344)。My−9−6は、複合体の調製のために使用することができる。この抗体は、平均で、抗体分子当たり4つのピリジルジチオ基を導入するために、既に説明したように(J.Carlsson、H.Drevin & R.Axen、Biochem.J.、173:723頁(1978年))、N−スクシンイミジル−3−ピリジルジチオプロピオネートで変性される。変性された抗体は、チオール含有レプトマイシン誘導体と反応して、ジスルフィド結合複合体を生成する。
【0069】
チオエーテルリンカー:本発明のチオール含有誘導体は、既に説明したように(米国特許第5208020号)、チオエーテルリンカーを介して抗体および他の細胞結合剤へ結合することができる。抗体または他の細胞結合剤は、公知のまたは市販の化合物、例えば、N−スルホスクシンイミジル−4−(5−ニトロ−2−ピリジル−ジチオ)ブタノエート(SSNPB)、N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボキシレート(SMCC)、N−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシ−(6−アミドカプロエート)(SMCCの「長鎖」類似体(LC−SMCC)である。)等で変性することができる。これらの架橋試薬は、マレイミドを基にした部分から誘導される非開裂性リンカーを形成する。
【0070】
ハロアセチルを基にした部分を含む架橋試薬としては、N−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N−スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)およびN−スクシンイミジル3−(ブロモ−アセトアミド)プロピオネート(SBAP)が挙げられる。これらの架橋試薬は、ハロアセチルを基にした部分から誘導される非開裂性リンカーを形成する。変性された細胞結合剤は、チオール含有薬剤と反応することができ、チオエーテル−結合複合体を与える。
【0071】
酸−不安定リンカー:本発明のアミノ基含有レプトマイシン誘導体は、既に説明したように(W.A.Blattler et al.、Biochemistry 24、1517−1524頁(1985年);米国特許第4542225号、第4569789号、第4618492号、第4764368号)、酸不安定リンカーを介して抗体および他の細胞結合剤へ結合することができる。
【0072】
同様に、本発明のヒドラジド基含有レプトマイシン誘導体は、酸不安定ヒドラゾンリンカーを介して抗体および他の細胞結合剤の炭水化物部分へ結合することができる(ヒドラゾンリンカーの例として、B.C.Laguzza et al.、J.Med.Chem.、32、548−555頁(1989年);R.S.Greenfield et al.、Cancer Res.、50、6600−6607頁(1990年)を参照されたい。)。
【0073】
光不安定リンカー:本発明のアミン基含有レプトマイシン誘導体は、既に説明したように(P.Senter et al.、Photochemistry and Photobiology、42、231−237頁(1985年);米国特許第4625014号)、光不安定リンカーを介して抗体および他の細胞結合剤へ結合し得る。
【0074】
ペプチダーゼ不安定リンカー:本発明のアミン基含有レプトマイシン誘導体は、また、ペプチドスペーサーを介して細胞結合剤へ結合し得る。薬剤および巨大分子タンパク質担体の間の短いペプチドスペーサーが血清中で安定であるが、細胞内ペプチダーゼにより容易に加水分解されることは既に示されている(A.Trouet et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.、79、626−629頁(1982年))。アミノ基含有レプトマイシン誘導体は、縮合剤、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド−HCl(EDC−HCl)等を使用してペプチドと縮合し、細胞結合剤へ結合することのできるペプチド誘導体を与えてもよい。
【0075】
エステラーゼ不安定リンカー:ヒドロキシアルキル基をもつ本発明のレプトマイシン誘導体は、無水琥珀酸でスクシニル化され、次いで、細胞結合剤へ結合して、遊離の薬剤を遊離するために細胞内エステラーゼによって開裂できる複合体を生成してもよい(例えば、E.Aboud−Pirak et al.、Biochem Pharmacol.、38、641−648(1989年)を参照されたい。)。
【0076】
抗体、抗体フラグメント、タンパク質またはペプチドホルモン、タンパク質またはペプチド成長因子および他のタンパク質の複合体は、公知の方法で同様に作られる。例えば、ペプチドおよび抗体は、公知方法により、架橋試薬、例えば、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)、4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)−トルエン(SMPT)、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート(SDPB)、スクシンイミジルピリジル−ジチオプロピオネート(SPDP)、4−(2−ピリジルジチオ)ブタン酸N−ヒドロスクシンイミドエステル(SPDB)、スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、N−スルホスクシンイミジル−3−(2−(5−ニトロ−ピリジルジチオ)ブチレート(SSNPB)、2−イミノチオラン、またはS−アセチル無水琥珀酸等で変性することができる。Carlsson et al.、173、Biochem.J.723−737頁(1978年);Blattler et al.、24、Biochem.1517−1524頁(1985年);Lambert et al.、22、Biochem.3913−3920頁(1983年);Klotz et al.、96、Arch.Biochem.Biophys.、605頁(1962年);およびLiu et al.、18、Biochem.、690頁(1979年)、Blakey and Thorpe、1 Antibody、Immunoconjugates & Radio−pharmaceuticals、1−16頁(1988年)、Worrell et al.、1 Anti−Cancer Drug Design 179−184頁(1986年)を参照されたい。このようにして誘導された遊離のまたは保護されたチオール含有細胞結合剤は、次いで、ジスルフィドまたはチオール含有レプトマイシン誘導体と反応して複合体を生成する。
【0077】
上記方法で作られた複合体は標準カラムクロマトグラフィーまたはHPLCで精製することができる。
【0078】
好ましくは、モノクローナル抗体または細胞結合剤と本発明のレプトマイシン誘導体との間の複合体は、上で検討されたようなジスルフィド結合、またはチオエーテル結合を介して結合されるものである。そのような細胞結合複合体は、公知の方法、例えば、モノクローナル抗体をスクシンイミジルピリジル−ジチオプロピオネート(SPDP)で変性する等の方法で調製される(Carlsson et al.、173、Biochem.J.、723−737頁(1978年))。得られるチオピリジル基は、次いで、チオール含有レプトマイシン誘導体での処理で置換されてジスルフィド結合複合体を生成する。ジスルフィド架橋を介して結合した1から10個のレプトマイシン誘導体を含む複合体は、この方法で簡単に調製される。この方法による結合は、参照として組み込まれる米国特許第5585499号において十分に説明されている。
【0079】
細胞結合剤と本発明のレプトマイシン誘導体間の複合体のインビトロ細胞毒性
本発明のレプトマイシン誘導体および細胞結合剤とのこの複合体の細胞毒性は、保護基の開裂および活性薬剤への転換後に測定することができる。NamalwaおよびHL60等の非接着性細胞系に対する細胞毒性は、Goldmacher et al.、135、J.Immunol.、3648−3651頁(1985年)に記載されているように、細胞増殖曲線の逆外挿法で測定することができる。A−375およびSCaBER等の接着性細胞系に対するこれらの化合物の細胞毒性は、Goldmacher et al.、102、J.Cell Biol.、1312−1319頁(1986年)に記載されているクローン原性アッセイで決定することができる。
【0080】
選択された細胞集団の成長を阻害するための治療剤および方法
本発明は、また、
(a)細胞結合剤へ結合した上述のレプトマイシン誘導体の1つまたは複数の細胞毒性量、および
(b)薬剤として許容される担体、希釈剤または賦形剤
を含む、選択された細胞集団の成長を阻害するための治療剤を提供する。
【0081】
同様に、本発明は、選択された細胞集団からの細胞を含むことの疑いをかけられている細胞集団または組織を、細胞結合剤へ結合した上述のレプトマイシン誘導体の1つまたは複数を含む細胞毒性剤の細胞毒性量と接触させることを含む、前記選択された細胞集団の成長を阻害するための方法を提供する。
【0082】
細胞毒性剤は上述のように調製される。
【0083】
適当な、薬剤として許容される担体、希釈剤、および賦形剤はよく知られており、臨床状況が保証するように当業者によって決定することができる。
【0084】
適当な担体、希釈剤および/または賦形剤の例としては、(1)pH約7.4で、約1mg/mlから25mg/mlのヒト血清アルブミンを含む、Dulbeccoのリン酸塩緩衝生理食塩水、(2)0.9%生理食塩水(0.9%w/v NaCl)、および(3)5%(w/v)デキストロースが挙げられる。
【0085】
選択された細胞集団の成長を阻害するための方法は、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで実施することができる。
【0086】
インビトロの使用例としては、標的抗原を発現しない所望の変異体を除くすべての細胞を殺すための;または望ましくない抗原を発現する変異体を殺すための細胞培養の処理が挙げられる。
【0087】
非臨床的インビトロ使用の条件は当業者によって簡単に決定される。
【0088】
エクスビボ使用の例としては、罹病細胞または悪性細胞を殺すための、自家骨髄の同じ患者へのその移植前の処理;コンピテントT細胞を殺し、移植片対宿主病(GVHD)を抑えるための、骨髄のこの移植前の処理が挙げられる。
【0089】
癌治療または自己免疫疾患の治療での自家移植前に骨髄から腫瘍細胞またはリンパ球様細胞を除去するため、またはGVHDを抑えるために移植前に同種異系骨髄または組織からT細胞および他のリンパ球様細胞を除去するための臨床的エクスビボ治療は次の通り行うことができる。骨髄は患者または他の個人から収穫され、次いで、本発明の細胞毒性剤が約10μMから1pMの範囲の濃度で添加される、血清を含む媒体で、約30分から約48時間、約37℃で培養される。濃度および培養(=投与量)の時間の正確な条件は当業者によって容易に決定される。培養後、骨髄細胞を、血清を含む媒体で洗浄し、公知の方法により静脈内注入によって患者へ戻す。患者が別の治療を受けている環境、例えば、骨髄の収穫の時間および処理された細胞の再注入の間の切除的化学療法または全身照射のコース等では、処理された骨髄細胞は標準の医療装置を使用して液体窒素中で凍結保存される。
【0090】
臨床的インビボ使用に対しては、本発明の細胞毒性剤は、無菌性およびエンドトキシン水準をテストされる溶液として、または注入のための滅菌水に再溶解することのできる凍結乾燥固体として提供される。複合体投与の適当なプロトコルの例は次の通りである。複合体は静脈内ボーラスとして6週間毎週与えられる。ボーラス投与量は、ヒト血清アルブミン(例えば、0.5から1mLの、ヒト血清アルブミンの濃縮溶液、100mg/mL)が添加できる50から400mlの正常生理食塩水で与えられる。投薬量は、毎週、静脈内で、体重1kg当たり約50μgから10mgである(注入当たり10μgから100mg/kgの範囲)。治療後6週間は、患者は治療の第2コースを受けてもよい。投与の経路、賦形剤、希釈剤、投薬量、時間等に関する特定の臨床プロトコルは、臨床状況が保証するように当業者により決定することができる。
【0091】
選択された細胞集団を殺すためのインビボまたはエクスビボ方法により治療することのできる医学的状態の例としては、例えば、肺、胸、結腸、前立腺、腎臓、膵臓、卵巣、およびリンパ性臓器の癌を含む任意のタイプの悪性腫瘍;黒色腫;自己免疫疾患、例えば、全身性狼瘡、リウマチ様関節炎、および多発性硬化症等;移植片拒絶反応、例えば、腎臓移植拒絶反応、肝臓移植拒絶反応、肺移植拒絶反応、心臓移植拒絶反応、および骨髄移植拒絶反応等;移植片対宿主病;ウイルス感染症、例えば、CMV感染、HIV感染、AIDS等;バクテリア感染;ならびに寄生虫感染症、例えば、ランブル鞭毛虫症、アメーバ症、住血吸虫症、および当業者により決定されるような他のものが挙げられる。
【実施例】
【0092】
本発明は非限定的実施例に対する参照により例示される。別途言及されない限り、すべてのパーセント、比、部等は重量である。
【0093】
材料および方法
融点は、電熱装置を使用して測定したが補正はされていない。NMRスペクトルは、Bruker AVANCE 400(400MHz)分光計で記録した。化学シフトは、国際基準としてTMSに関してppmで報告される。質量スペクトルは、Bruker Esquire 3000系を使用して得た。紫外線スペクトルは、Hitachi U1200分光光度計で記録した。HPLCは、Beckman Coulter系 GOLD 168可変波長検出器およびWaters RADIALPAK(逆相C−18カラム)を備えたBeckman Coulter GOLD 125系を使用して行った。薄層クロマトグラフィーは、Analtech GFシリカゲルTLCプレートで行った。フラッシュカラムクロマトグラフィー用のシリカゲルはBaker社製であった。テトラヒドロフランは、金属ナトリウムで蒸留により乾燥した。ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドは、減圧下で水素化カルシウムで蒸留により乾燥した。使用されたすべての他の溶媒は試薬級またはHPLC級であった。
【0094】
ヒト癌細胞系HL60、Namalwa、A−375、COLO205およびRamosは、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した。Karaは、ヒトCD33抗原で安定的に移入されたマウス腫瘍細胞系である。
【0095】
実験部分
質量分光分析を次の通り行った:
EI−CI分析:直接導入(DCI=フィラメント上のサンプル堆積物)
質量分光計 Finnigan SSQ7000;質量範囲 m/z=29−900;電子エネルギー 70eV;線源温度 70℃;反応体ガス Clアンモニア性;EI=電子衝突によりイオン化;CI=化学的イオン化。
【0096】
電気スプレイ分析:(正電気スプレイ:ES;負電気スプレイ:ES
LC−MS−DAD−ELSD:
MS:Waters−Micromass ZQ;LC:Agilent HP 1100;LCカラム Xbridge Waters C18、3×50mm、2.5μm;溶出液:勾配水(0.1%ギ酸を伴う)+アセトニトリル;UV:DAD(λ=200−400nm)。
【実施例1】
【0097】
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メチルスルファニル−エチル)−アミド
【0098】
【化5】

0.3mlのジクロロメタン中の、20mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸および5.6mgのHOBT(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)の溶液へ、20℃に近い温度で、7.65μlのDIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)を、次いで、5.2mgの2−(チオメチル)エチルアミンを導入する。反応混合物を、20℃に近い温度で20.5時間攪拌し、次いで、2つの分取用シリカゲルTLCプレート(厚さ0.5mm、20×20cm)上で直接堆積物で精製する。分取用TLCプレートを、メタノール/ジクロロメタンの混合物(容量で5/95)で溶出した。次いで、所望の生成物を、メタノール/ジクロロメタンの混合物(容量で15/85)でシリカゲルから抽出する。黄色固体として、1.4mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メチルスルファニル−エチル)−アミドを得、その特徴は次の通りである:
質量スペクトル:
CI:m/z=617:[M+NH:m/z=600:[M+H]
次の化学シフト(ppmでのδ)、溶媒としてクロロホルム中で、303Kの温度で7.27でのd1(CDCl3−d1)参照で、BRUKER AVANCE DMX−600の分光計で得た600MHzでの1H NMRスペクトル:0.79(d,J=6.5Hz,3H);0.97(d,J=7.0Hz,3H);1.07(d,J=7.0Hz,3H);1.12(d,J=7.0Hz,3H);1.15(d,J=7.5Hz,3H);1.71(m,1H);1.81(s,3H);1.82(m:部分マスク,1H);1.83(s,3H);2.08(m,2H);2.11(s,3H);2.13(s,3H);2.15(dd,J=6.5および13.5Hz,1H);2.45(m 広幅,1H);2.53(m,1H);2.66(t,J=6.5Hz,2H);2.70(m,1H);2.82(m,1H);3.50(q,J=6.5Hz,2H);3.61(m,1H);3.65(m,1H);5.01(dd,J=4.5および7.5Hz,1H);5.09(d,J=10.0Hz,1H);5.26(d,J=10.0Hz,1H);5.55から5.66(m,2H);5.69(dd,J=7.5および16.0Hz,1H);5.97(t 広幅,J=6.5Hz,1H);6.00(d,J=10.0Hz,1H);6.02(d,J=15.5Hz,1H);6.75(d,J=16.0Hz,1H);6.95(dd,J=6.0および10.0Hz,1H)。
【実施例2】
【0099】
ビス−[(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メルカプトエチル)−アミド]
【0100】
【化6】

0.3mlのジクロロメタン中の、20mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸および5.6mgのHOBT(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)の溶液へ、20℃に近い温度で、12.8mgの、シスタミンの二塩化水和物、7.65μlのDIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)を、次いで、11.6μlのトリエチルアミンを導入する。反応混合物を、20℃に近い温度で22時間攪拌し、次いで、2つの分取用シリカゲルTLCプレート(厚さ0.5mm、20×20cm)上で直接堆積物で精製する。分取用TLCプレートを、メタノール/ジクロロメタンの混合物(容量で5/95)で溶出した。次いで、所望の生成物を、メタノール/ジクロロメタンの混合物(容量で15/85)でシリカゲルから抽出する。白色固体白として、4.6mgのビス−[(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタ−メチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−チオエチル)−アミド]を得、その特徴は次の通りである:
質量スペクトル:
ES:m/z=1167:[M+H]
ES:m/z=1211:[M−H+HCOOH]
【実施例3】
【0101】
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メルカプト−エチル)−アミド
【0102】
【化7】

0.15mlのジクロロメタン中の、20mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸および8μlのトリエチルアミンの溶液へ、0℃に近い温度で、6.1μlの塩化ピバロイルを導入する。0℃に近い温度で15分後に、0.15mlのジクロロメタンおよび0.05mlのエタノール中の4.4mgの2−アミノエタンチオールの溶液を添加する。反応混合物を20℃に近い温度で1時間攪拌し、次いで、2つの分取用シリカゲルTLCプレート(厚さ0.5mm、20×20cm)上で直接堆積物で精製する。分取用TLCプレートを、メタノール/ジクロロメタンの混合物(容量で8/92)で溶出した。次いで、所望の生成物を、メタノール/ジクロロメタンの混合物(容量で15/85)でシリカゲルから抽出する。無色ガラスとして、2.3mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メルカプト−エチル)−アミドを得、その特徴は次の通りである:
質量スペクトル:
ES:m/z=586:[M+H]
ES:m/z=630:[M−H+HCOOH]
次の化学シフト(ppmでのδ)、溶媒としてクロロホルム中で、303Kの温度で7.27でのd1(CDCl3−d1)参照で、BRUKER AVANCE DRX−400の分光計で得た400MHzでの1H NMRスペクトル:0.80(d,J=6.5Hz,3H);0.98(d,J=6.5Hz,3H);1.08(d,J=7.5Hz,3H);1.14(d,J=6.5Hz,3H);1.16(d,J=7.0Hz,3H);1.72(m,1H);1.80から1.87(mがマスク,1H);1.82(s,3H);1.84(s,3H);2.09(m,2H);2.11(s,3H);2.16(dd,J=6.5および13.5Hz,1H);2.54(m,1H);2.65から2.74(m,3H);2.83(m,1H);3.48(q,J=6.5Hz,2H);3.60から3.70(m,2H);5.00(dd,J=4.0および7.0Hz,1H);5.10(d,J=10.5Hz,1H);5.27(d,J=10.5Hz,1H);5.58(s,1H);5.60(td:部分マスク,J=7.5および15.5Hz,1H);5.70(dd,J=7.0および15.5Hz,1H);5.96から6.06(m,3H);6.75(d 広幅,J=15.5Hz,1H);6.97(dd,J=6.0および10.0Hz,1H)。
【実施例4】
【0103】
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メチルジスルファニル−エチル)−アミド
【0104】
【化8】

0.15mlのジクロロメタン中の、20mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸および5.6mgのHOBT(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)の溶液へ、20℃に近い温度で、7.65μlのDIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)を、次いで、0.15mlのジクロロメタン中の8mgの2−メチルジチオ−エチルアミンの溶液を導入する。反応混合物を、20℃に近い温度で2時間攪拌し、次いで、2つの分取用シリカゲルTLCプレート(厚さ0.5mm、20×20cm)上で直接堆積物で精製する。分取用TLCプレートを、メタノール/ジクロロメタンの混合物(容量で7/93)で溶出し、次いで、所望の生成物を、メタノール/ジクロロメタンの混合物(容量で15/85)でシリカゲルから抽出する。淡黄色油として、3.4mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メチルジスルファニル−エチル)−アミドを得、その特徴は次の通りである:
質量スペクトル:
ES:m/z=632:[M+H]
ES:m/z=630:[M−H];m/z=676:[M−H+HCOOH]
次の化学シフト(ppmでのδ)、溶媒としてクロロホルム中で、303Kの温度で7.27でのd1(CDCl3−d1)参照で、BRUKER AVANCE DRX−400の分光計で得た400MHzでの1H NMRスペクトル:0.81(d,J=6.5Hz,3H);0.98(d,J=6.5Hz,3H);1.08(d,J=7.5Hz,3H);1.14(d,J=6.5Hz,3H);1.16(d,J=7.0Hz,3H);1.72(m,1H);1.79から1.86(m,1H);1.82(s,3H);1.84(s,3H);2.09(m,2H);2.11(s 広幅,3H);2.15(dd,J=5.5および13.5Hz,1H);2.35(s 広幅,1H);2.43(m,3H);2.54(m,1H);2.70(m,1H);2.83(m,1H);2.86(t,J=6.5Hz,2H);3.59から3.70(m,4H);5.01(dd,J=4.0および7.0Hz,1H);5.11(d,J=10.0Hz,1H);5.27(d,J=10.0Hz,1H);5.56(s,1H);5.60(td:部分マスク,J=7.5および15.5Hz,1H);5.70(dd,J=7.0および15.5Hz,1H);5.93(t,J=6.0Hz,1H);6.00(d,J=10.0Hz,1H);6.02(d,J=15.5Hz,1H);6.75(d,J=15.5Hz,1H);6.96(dd,J=6.0および10.0Hz,1H)。
【実施例5】
【0105】
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メチル−2−メチルジスルファニル−プロピル)−アミド
【0106】
【化9】

1.5mlのジクロロメタン中の、225.4mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の溶液へ、0℃に近い温度で、1.5mlのジクロロメタン中の、63.6mgのHOBT(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)および110mgの2−メチル−2−メチルジスルファニル−プロピルアミンの溶液を、次いで、86.2μlのDIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)を導入する。反応混合物を、0℃に近い温度で15時間攪拌し、次いで、30mlのジクロロメタンで希釈する。有機相を、10mlの水で2度洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、焼結ガラス上で濾過し、次いで、減圧下で、40℃に近い温度で濃縮する。そのようにして得た残渣を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(20gの、15−35μmのSiO、0/100から10/90(容量で)のメタノール/ジクロロメタン溶出勾配)で精製する。所望の生成物を含む画分を、減圧下で40℃に近い温度で濃縮する。黄色ガラスとして、212.1mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メチル−2−メチルジスルファニル−プロピル)−アミドを得、その特徴は次の通りである:
質量スペクトル:
ES:m/z=660:[M+H]
ES:m/z=658:[M−H];m/z=704:[M−H+HCOOH]
次の化学シフト(ppmでのδ)、溶媒としてクロロホルム中で、303Kの温度で7.27でのd1(CDCl3−d1)参照で、BRUKER AVANCE DRX−400の分光計で得た400MHzでの1H NMRスペクトル:0.80(d,J=6.5Hz,3H);0.97(d,J=6.5Hz,3H);1.08(d,J=7.5Hz,3H);1.14(d,J=6.5Hz,3H);1.16(d,J=7.0Hz,3H);1.32(s,6H);1.72(m,1H);1.82(s,3H);1.83(mがマスク,1H);1.84(s,3H);2.08(m,2H);2.11(s 広幅,3H);2.15(dd,J=6.5および13.5Hz,1H);2.43(s,3H);2.54(m,1H);2.70(m,1H);2.83(m,1H);3.45(d,J=6.0Hz,2H);3.59から3.69(m,2H);5.00(dd,J=4.0および7.0Hz,1H);5.10(d,J=10.5Hz,1H);5.26(d,J=10.0Hz,1H);5.54から5.64(m,2H);5.70(dd,J=7.0および15.5Hz,1H);5.83(t,J=6.0Hz,1H);6.00(d,J=10.5Hz,1H);6.02(d,J=15.5Hz,1H);6.75(d,J=15.5Hz,1H);6.96(dd,J=6.5および10.5Hz,1H)。
【実施例6】
【0107】
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メルカプト−2−メチル−プロピル)−アミド
【0108】
【化10】

7.7mlのテトラヒドロフランおよび3.85mlの水の中の、200mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メチル−2−メチルジスルファニル−プロピル)−アミドの溶液へ、20℃に近い温度で、217.2mgのTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンの塩化水和物)を添加する。20℃に近い温度で16時間後に、反応混合物を30mlの酢酸エチルで希釈し、15mlの水、15mlのブラインで2度洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、焼結ガラス上で濾過し、減圧下で、40℃に近い温度で濃縮する。そのようにして得た黄色油を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィー(25gの、15−35μmのSiO、1/99から10/90(容量で)のメタノール/ジクロロメタン溶出勾配)で精製する。所望の生成物を含む画分を、減圧下で40℃に近い温度で濃縮する。黄色ガラスとして、122.6mgの(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタン酸の(2−メルカプト−2−メチル−プロピル)−アミドを得、その特徴は次の通りである:
質量スペクトル:
ES:m/z=614:[M+H]
ES:m/z=612:[M−H];m/z=658:[M−H+HCOOH]
次の化学シフト(ppmでのδ)、溶媒としてクロロホルム中で、303Kの温度で7.27でのd1(CDCl3−d1)参照で、BRUKER AVANCE DRX−500の分光計で得た500MHzでの1H NMRスペクトル:0.80(d,J=6.5Hz,3H);0.97(d,J=6.5Hz,3H);1.07(d,J=7.5Hz,3H);1.13(d,J=6.5Hz,3H);1.16(d,J=6.5Hz,3H);1.38(s,6H);1.72(m,1H);1.82(s,3H);1.84(s,3H);1.85(m:部分マスク,1H);2.09(m,2H);2.11(s,3H);2.17(dd,J=6.5および13.5Hz,1H);2.54(m,1H);2.70(m,1H);2.83(m,1H);3.38(d,J=6.5Hz,2H);3.61から3.70(m,2H);5.01(dd,J=4.0および7.0Hz,1H);5.09(d,J=10.0Hz,1H);5.26(d,J=10.0Hz,1H);5.59(dt:部分マスク,J=7.5および15.5Hz,1H);5.63(s,1H);5.69(dd,J=7.0および15.5Hz,1H);6.00(d,J=10.0Hz,1H);6.02(d,J=15.5Hz,1H);6.04(t:部分マスク,J=6.5Hz,1H);6.75(d,J=15.5Hz,1H);6.97(dd,J=6.0および10.0Hz,1H)。
【0109】
抗体とレプトマイシン誘導体の結合:
抗−結腸癌抗体huC242とレプトマイシン誘導体の結合:
【0110】
【化11】

ヒト化抗−結腸腫瘍抗体(huC242)と実施例6の化合物とのジスルフィド−結合複合体を調製した(本明細書では、huC242−SSNPB−実施例6のレプトマイシンとして参照する。)。huC242抗体を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5、50mM NaCl、2mM EDTA、5%ジメチルアセトアミドを含む。)中で、90分間、周囲温度で、9mg/mlの抗体濃度で、6倍モル過剰の抗体変性剤SSNPB(N−スルホスクシンイミジル4−(5−ニトロ−2−ピリジルジチオ)ブタノエート)と反応させた。反応混合物を、50mM NaClおよび2mM EDTAを含むpH6.5の、50mMリン酸カリウム緩衝液で平衡にした、Sephadex G−25サイズ排除クロマトグラフィーで精製した。変性抗体サンプルを、β−メルカプトエタノールの添加および無添加で分析し、1抗体当たり導入された、6個までのニトロピリジルジチオ基を有することを決定した。リンカー基1個当たり2倍モル過剰のレプトマイシン−SH薬剤を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5、50mM NaCl、2mM EDTA、10%ジメチルアセトアミドを含む。)中の2mg/mlで変性抗体サンプルへ添加した。反応を、5−ニトロピリジン−2−チオンの放出に対して分光光度法(394nm)およびHPLCで追跡した。周囲温度で約90分間の反応の後、混合物を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5、50mM NaCl、2mM EDTAを含む。)でのSephadex G−25サイズ排除クロマトグラフィーで精製した。複合体の0.78対未変性抗体の0.37の250nm/280nmでの吸光度比は、複合体(250nmで増加した吸光度をもたらす。)中のレプトマイシン基の導入を証明した。
【0111】
脱グリコシル化huC242−レプマイシン複合体の質量分光分析は、1抗体分子当たり導入された1、2、3、および4レプトマイシン分子に相当する147492、148212、148936、および149660ダルトンでの複合体ピークを示した。
【0112】
抗−CD19(huB4)抗体とレプトマイシン誘導体の結合:
抗−CD19抗体(ヒト化B4抗体)とレプトマイシンとの複合体を、ジスルフィドおよび非開裂性チオエーテルリンカーで調製した。最初のサンプル(−S−S−リンカー)は、ジスルフィドリンカーのSSNPB(N−スルホスクシンイミジル4−(5−ニトロ−2−ピリジル−ジチオ)ブタノエート)を介して実施例6の化合物へ結合した抗−CD19(huB4)抗体から成った。第2のサンプルは、マレイミドリンカーのSMCC(N−スクシンイミジル4−(マレイミド−メチル)シクロヘキサンカルボキシレート)を介して実施例6の化合物へ結合したhuB4抗体から成った。
【0113】
huB4−SSNPB−レプトマイシン複合体(huB4−SSNPB−実施例6のレプトマイシン):
【0114】
【化12】

4mgのhuB4抗体を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5、50mM NaCl、2mM EDTA、5%ジメチルアセトアミドを含む。)中で、90分間、周囲温度で、8mg/mlの抗体濃度で、7.5倍モル過剰のSSNPBリンカーと反応させた。反応混合物を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5、50mM NaCl、2mM EDTAを含む。)中で、Sephadex G−25サイズ排除クロマトグラフィーで精製した。変性抗体サンプルを、β−メルカプトエタノールの添加および無添加で分析し、1抗体当たり導入された、5.3個のニトロピリジルジチオ基を有することを決定した。リンカー基1個当たり実施例6の薬剤の3倍モル過剰を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5、50mM NaCl、2mM EDTA、10%ジメチルアセトアミドを含む。)中の1mg/mlで変性抗体サンプルへ添加した。反応を、5−ニトロピリジン−2−チオンの放出に対して分光光度法(394nm)およびHPLCで追跡した。周囲温度で一晩中反応後に、混合物を、10mMクエン酸塩緩衝液(pH5.5、135mM NaClを含む。)でのSephadex G−25サイズ排除クロマトグラフィーで精製した。サンプルを、β−メルカプトエタノールの添加および無添加で分析し、1抗体当たり4.3個の反応したリンカーを有することを決定した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析は、95%単体抗体を示した。
【0115】
huB4−SMCC−レプトマイシン複合体:
【0116】
【化13】

4mgのhuB4抗体を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5、50mM NaCl、2mM EDTA、5%ジメチルアセトアミドを含む。)中で、90分間、周囲温度で、8mg/mlの抗体濃度で、7.5倍モル過剰のSMCCリンカーと反応させた。反応混合物を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5、50mM NaCl、2mM EDTAを含む。)中で、Sephadex G−25サイズ排除クロマトグラフィーで精製した。サンプルに導入されたマレイミド基の数を、過剰のチオール(システイン)を添加して分析し、1抗体当たり3.3個のリンカー基を有することを決定した。マレイミド基1個当たり実施例6の薬剤の3倍モル過剰を、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5、50mM NaCl、2mM EDTA、10%ジメチルアセトアミドを含む。)中の1mg/mlで変性抗体サンプルへ添加した。周囲温度で一晩中反応後に、混合物を、10mMクエン酸塩緩衝液(pH5.5、135mM NaClを含む。)でのSephadex G−25サイズ排除クロマトグラフィーで精製した。SEC分析は、98%単体抗体を示した。
【0117】
脱グリコシル化huB4−SMCC−レプトマイシン複合体の質量分光分析は、1抗体分子当たり導入された1、2、および3レプトマイシン分子に相当する145138、145860、および146566ダルトンでの複合体ピークを示した。
【0118】
生物学的結果:
WST−生存可能性分析によるRamos(CD19抗原−陽性)およびHL60(抗原陰性)癌細胞についてのhuB4−SSNPB−実施例6のレプトマイシン複合体の細胞毒性評価は、それぞれに、1.4×10−9Mおよび4.2×10−9MのIC50値を示し、したがって、レプトマイシン−抗体複合体の抗原−特異性細胞毒性活性を証明した。
【0119】
COLO 205(CanAg抗原−陽性)癌細胞およびA375細胞についてのhuC242−SSNPB−実施例6のレプトマイシン複合体の細胞毒性評価は、それぞれに、1.3×10−10Mおよび>5.0×10−9MのIC50値を示した(図1)。
【0120】
特定の特許および印刷された刊行物が本発明の開示で参照されたが、その教示は、参照としてこれらのそれぞれの全体において本明細書にそれぞれ組み込まれる。
【0121】
本発明は詳細に、そして本発明の特定の実施形態を参照して説明されたが、種々の変化および変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明に対して為すことができることは当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レプトマイシン誘導体を細胞結合剤へ結合することのできる結合基を含むレプトマイシン誘導体。
【請求項2】
前記結合基が、チオール、スルフィドまたはジスルフィド結合を含む、請求項1に記載のレプトマイシン誘導体。
【請求項3】
式(I):
【化14】

[式中、
RaおよびRa’は、Hまたは−Alkであり、
R17は、OR、CN、NRR’、ペルフルオロアルキルで場合により置換されたアルキルであり、
R9は、OR、CN、NRR’、ペルフルオロアルキルで場合により置換されたアルキルであり、
Xは、−O−または−NR−であり、
Yは、−U−、−NR−U−、−O−U−、−NR−CO−U−、−U−NR−CO−、−U−CO−、−CO−U−であり(ここで、Uは、−Alk−、−Alk(OCHCH−、−(OCHCH−Alk−、−Alk(OCHCH−Alk−、−(OCHCH−、−シクロアルキル−、−複素環−、−シクロアルキル−Alk−、−Alk−シクロアルキル−、−複素環−Alk−、−Alk−複素環−から選択され、mは、1から2000から選択される整数である。)、
Zは−Alk−であり、
nは0または1であり、
Tは、H、(Ac、RまたはSR等の)チオール保護基を表し(ここで、Rは、H、メチル、Alk、シクロアルキル、場合により置換されたアリールまたは複素環を表す。)、あるいはTは、
【化15】

(式中、Ra、Ra’、R17、R9、X、Y、Z、nは上で定義された通りである。)を表し、
R、R’は同じか異なり、Hまたはアルキルであり、
Alkは、直鎖または分枝アルキルを表す。]を有する請求項1または2に記載のレプトマイシン誘導体、
または薬剤として許容されるその塩、水和物、または水和した塩、あるいはこれらの化合物の多形結晶構造またはこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマーまたは鏡像異性体。
【請求項4】
Raが−Alkであり、Ra’がHである、請求項3に記載のレプトマイシン誘導体。
【請求項5】
R17がアルキルである、請求項3または4に記載のレプトマイシン誘導体。
【請求項6】
R9がアルキルである、請求項3、4または5に記載のレプトマイシン誘導体。
【請求項7】
Xが−NRである、請求項3から6のいずれか一項に記載のレプトマイシン誘導体。
【請求項8】
Yが−Uである、請求項3から7のいずれか一項に記載のレプトマイシン誘導体。
【請求項9】
Uが−Alkである、請求項3から8のいずれか一項に記載のレプトマイシン誘導体。
【請求項10】
−Alk−が直鎖または分枝C−C20アルキルである、請求項3から9のいずれか一項に記載のレプトマイシン誘導体。
【請求項11】
TがHまたはSR(ここで、RはAlkを表す。)である、請求項3から10のいずれか一項に記載のレプトマイシン誘導体。
【請求項12】
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メチルスルファニル−エチル)−アミド
ビス−[(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メルカプトエチル)−アミド]
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メルカプト−エチル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メチルジスルファニル−エチル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メチル−2−メチルジスルファニル−プロピル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メルカプト−2−メチル−プロピル)−アミド
または薬剤として許容されるその塩、水和物、または水和した塩、あるいはこれらの化合物の多形結晶構造またはこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマーまたは鏡像異性体から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載のレプトマイシン誘導体。
【請求項13】
前記結合基を含むリンカーを介して、請求項1から12のいずれか一項に記載のレプトマイシン誘導体の1つまたは複数へ結合した細胞結合剤を含むレプトマイシン誘導体複合体。
【請求項14】
前記細胞結合剤が抗体またはこのフラグメントである、請求項13に記載のレプトマイシン誘導体複合体。
【請求項15】
前記リンカーが、−S−または−S−S−基を含む、請求項13または14に記載のレプトマイシン誘導体複合体。
【請求項16】
前記リンカーが、チオール、スルフィドまたはジスルフィドに対して反応性の官能基へ結合した前記結合基を含む、請求項13、14または15に記載のレプトマイシン誘導体複合体。
【請求項17】
請求項1から12のいずれか一項に記載のレプトマイシン誘導体および薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項18】
請求項13から16のいずれか一項に記載の複合体および薬剤として許容される担体を含む薬剤組成物。
【請求項19】
癌治療用医薬の調製のための、請求項1から12のいずれか一項に記載のレプトマイシン誘導体の使用。
【請求項20】
癌治療用医薬の調製のための、請求項13から16のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【請求項21】
式(II)および(III):
【化16】

(式中、Ra、Ra’、R17、R9、X、Y、Z、T、nは、式(I)で定義された通りである。)の相当する化合物を反応させる段階を含む、請求項3から12のいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項22】
TがS−R1である式(I)の相当する化合物を、ジスルフィド結合の還元剤の存在下で反応させる段階を含む、式(I)でTがHである、請求項3から12のいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項23】
式(II)の相当する化合物を、式(IV):
HX−Y−(Z)n−S−S−(Z)n−Y−XH (IV)
の相当する化合物と反応させる段階を含む、請求項3から12のいずれか一項に記載の二量体化合物の調製方法。
【請求項24】
請求項1から12のいずれか一項に記載のレプトマイシン誘導体を、前記誘導体の前記結合基に対して反応性の官能基を含む変性細胞結合剤と反応させて、前記誘導体および前記細胞結合剤とを、前記結合基を含む前記リンカーを介して一緒に結合させる段階を含む、請求項13から16に記載の複合体の調製方法。
【請求項25】
前記誘導体の前記結合基に対して反応性の官能基を含む前記変性細胞結合剤が、前記細胞結合剤と、SMCC、SSNPB、LC−SMCC、SIAB、SIA、SBA、SBAPから選択される試薬との反応により得られる、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−539820(P2009−539820A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513781(P2009−513781)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001328
【国際公開番号】WO2007/144709
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】