説明

レンジフード用フィルタ

【課題】排気流中の油脂分や埃などを効率的に付着(衝突)回収することができるようにさらに改善されたレンジフード用フィルタを提供する。
【解決手段】排気流Gが通過する多数の通気孔5,6の集合によって区画形成されて配置される集合通気部7,8と、この集合通気部7,8に隣接して配置される非通気部9,10とをそれぞれ略等しい幅で交互に配置している。そして、集合通気部7,8と非通気部9,10とをそれぞれ備えている二枚のフィルタ部材1,2を備え、この二枚のフィルタ部材1,2を所定の間隔で重ね配したときに、集合通気部7,8と非通気部9,10とが互いに対向するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフード内に組み込み設置されて、調理時に発生する排気流中に含まれている油脂分や埃などを捕獲回収するフィルタに係り、特に、排気流が通過する多数の通気孔を備えて構成されているフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタ(グリスフィルタと称されている)としては、略矩形形状に形成されている金属製薄板に、一方向に向けて切り起こし傾斜させた排気流衝突舌片を有する通気孔を設けてなる切り起こし構造のものが知られている。所謂、カットベンドタイプのフィルタが知られている(例えば、特許文献1などを参照)。
この特許文献1のフィルタは、金属薄板に、排気流が通過するときの流れ方向に対して直交させた一方向に多数列のスリット状の孔を設けている。そして、孔の相互で区画された平面部分である排気流衝突舌片を、金属薄板の一側面(フード内設置状態で排気下流側)の方向に向けて、なおかつ、一方向に屈折傾斜するように切り起こすことによって、平面部分を残すことなく一方向に向けて斜めに開口させた通気孔を備えている構成となっている。
これにより、排気流が通気孔を通過するとき、ストレートに通過せずに屈折する排気流衝突舌片に排気流を衝突させることで、排気流中に含まれている油脂分などが排気流衝突舌片に付着されて捕獲回収されるようになっている。
【0003】
また、従来では、排気流が通過する多数の通気孔を備えている二枚のフィルタ部材を重ね合わせて構成されるフィルタが知られている(例えば、特許文献2などを参照)。
この特許文献2に開示されているフィルタは、外周部に着脱自在に嵌め合せ連結させる嵌込み縁部をそれぞれ設けた前面板と後面板とを備えている。そして、外周の嵌込み縁部を除く前面板と後面板のそれぞれの平坦部全面に、一定のピッチで長孔形状の前部孔と後部孔をそれぞれ穿孔し、前面板と後面板を重ね配したとき、前面板の前部孔が後面板の非孔明き部に対向し、後面板の後部孔が前面板の非孔明き部に対向するように構成されている。
これにより、前面板の前部孔から侵入した排気流が対向する後面板の非孔明き部に当たって向きを変えながら後面板の後部孔から流出する。このとき、後面板の非孔明き部や前面板の非孔明き部への排気流の衝突によって排気流中の油分が非孔明き部に付着されて分離捕獲(捕捉)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−323012号公報
【特許文献2】実開昭64−44010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2に記載されている従来技術のフィルタは、前部孔と後部孔とが同じ大きさで前面板と後面板のそれぞれの平坦部全面に穿孔されている全面に一定のピッチで配列としている。
つまり、前部孔の開口幅とこれに隣接する前部孔との間に位置する非孔明き部の横幅を等しく、後部孔の開口幅とこれに隣接する後部孔との間に位置する非孔明き部の横幅を等しくして、前面板と後面板を重ね配したとき、前面板の前部孔に対して後面板の非孔明き部を対向させ、後面板の後部孔に対して前面板の非孔明き部を対向させる通気孔部の全面に一定のピッチで配列されているために、前面板の前部孔から侵入してくる排気流が対向する後面板側の非孔明き部に当たる衝突量が低いものとなっていた。
そのために、従来技術のフィルタでは、排気流中の油脂分や埃などの汚れ、特に、油脂分の大半は後面板側の非孔明き部に付着回収されることなく、後面板の後部孔から排気流とともに流出してしまうなどの汚れを取り逃がしてしまうことが多く、汚れを効率よくキャッチすることができない問題があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、このような改善すべき課題に着目し、長年にわたり鋭意研究を重ねた結果、本発明の創案に至ったものであり、排気流が通過する多数の通気孔を備えて構成されるレンジフード用フィルタであって、排気流中の油脂分や埃などの汚れを取り逃がすことなく、確実に、かつ、効率的に付着(衝突)回収することができ、しかも、金属薄板からなるフィルタ自体の剛性を高めるなどによって、清掃性などを向上させるようにさらに改善されたレンジフード用フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明では、レンジフード内に組み込み設置されて、調理中に発生する排気流中の油脂分などを捕獲するフィルタであって、
前記排気流が通過する多数の通気孔の集合によって区画形成されて配置される複数の集合通気部と、この集合通気部に隣接して配置される複数の非通気部とを備え、
前記集合通気部と前記非通気部とはそれぞれ交互に配置されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、前記集合通気部と前記非通気部とをそれぞれ備えている二枚のフィルタ部材を備え、
前記集合通気部と前記非通気部は、前記二枚のフィルタ部材を重ね配したときに、互いに対向する位置関係で前記二枚のフィルタ部材にそれぞれ交互に配置されていることを特徴とする。
ここで、前記集合通気部と前記非通気部は、略矩形形状を呈している前記二枚のフィルタ部材の外周各辺のうち、対向する一方の二辺縁方向に向けて平行な帯状に延び、かつ、対向するもう一方の二辺縁間にそれぞれ交互に配置されていることが好適なものとなる。
【0009】
また、前記二枚のフィルタ部材のうち、少なくとも一方のフィルタ部材側の前記集合通気部が、二枚のフィルタ部材を重ね配した内側または外側に向けて膨出して形成されている。例えば、前記排気流の排気下流側に位置して配される二枚目のフィルタ部材側の前記集合通気部が、二枚のフィルタ部材を重ね配した内側に向けて膨出して形成されていること、または、前記排気流の排気上流側に位置して配される一枚目のフィルタ部材側の前記集合通気部が、二枚のフィルタ部材を重ね配した外側に向けて膨出して形成されていること、そして、前記非通気部が内面凹状または内面凸状に形成されていること、などの構成を採用することが好適なものとなる。
【0010】
また、前記集合通気部を区画形成する前記通気孔は、略千鳥状の開口配列とし、その開口幅を0.6〜1.0mmの範囲で、開口長さを7〜13mmの範囲とする細長孔形状に開口されていること、また、前記集合通気部と前記非通気部は、20〜23mmの略等しい幅でそれぞれ交互に配置されていること、などの構成を採用することが好適なものとなる。
【0011】
このような構成によれば、排気上流側に位置して配される一枚目のフィルタ部材の排気流が流れ込む集合通気部は、略細長孔形状で略千鳥状に配列する多数の通気孔によって平行な帯状に区画形成されていることで、レンジフード(捕獲空間など)に吸い込み捕集されてくる排気流がフィルタを通過するときに、集合通気部の多数の通気孔から分散されて流れ込むこととなる。
つまり、排気流の流れが、集合通気部の多数の通気孔によって分散(整流)されて二枚目のフィルタ部材の対向する各非通気部に衝突することとなって、排気流中の油脂分や埃などの汚れが各非通気部に付着されて回収される。
【0012】
また、二枚のフィルタ部材を重ね配した内側または外側に向けて前記集合通気部が膨出させている。例えば、排気下流側に位置して配される二枚目のフィルタ部材の前記集合通気部が内側に向けて膨出されている場合では、非通気部が内面凹状となる。これにより、排気流中に含まれている油脂分や埃などの汚れを内面凹状の非通気部に付着させて捕獲回収する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレンジフード用フィルタによれば、レンジフード(捕獲空間など)に吸い込み捕集されてくる排気流が、一枚目のフィルタ部材の集合通気部から流れ込むとき、その流れが多数の通気孔によって分散(整流)されることにより、分散された排気流が非通気部に衝突して拡散し、さらに拡散した排気流同士の衝突により、非通気部表面への油脂分や埃などの付着を高めることができる。
つまり、従来フィルタのように、まとまった(ひとかたまりの)排気流の衝突に比べ、排気流を分散させることで、排気流中に含まれている油脂分や埃などの汚れの付着(衝突)回収率(捕獲回収率)を向上させることができる。
【0014】
また、内面凹状に形成されている非通気部に排気流を衝突させて排気流中に含まれている油脂分や埃などの汚れを効率的に付着回収(捕獲回収)することができる。
つまり、排気流の排気下流側に位置するフィルタ部材の集合通気部を、二枚のフィルタ部材を重ね配した内側に向けて膨出させることで、排気上流側に位置するフィルタ部材の集合通気部から流れ込んでくる排気流が衝突する非通気部は、帯状に延びる広い衝突面(面積)を有する内面凹状となって、排気流の衝突は、非通気部の凹状底面、そして凹状立上り面へと繰り返される。これにより、排気流の衝突による油脂分や埃などの汚れの付着回収率(捕獲回収率)を向上させることができる。
また、排気上流側のフィルタ部材の集合通気部を通過した直後の排気流の流れは、通気孔の配列個数に応じて分散化(微細化)された多数の細い流れとなって排気下流側のフィルタ部材の非通気部に衝突する。このとき、細い流れが互いに衝突干渉し合いながら複雑な流れとなることで、分散化された各細い流れ中の汚れの粒子同士が互いに衝突くっ付き合って大きく成長するために、効率よく油脂分や埃などの汚れを捕獲回収することができる。つまり、排気流中の細かな汚れ粒子を大きく成長させながら非通気部へ衝突させて捕獲回収することができる。
さらに、通気孔が略千鳥状に配列されていることで、単純に通気孔の開口短辺部の位置を合わせた配列、所謂碁盤目状の配列の場合に比べて一つの細い流れに対してより多くの細かい流れが隣接するため、細い流れがお互いにより多く衝突干渉し合うことで汚れ粒子同士の衝突成長を助長し、油脂分や埃など汚れをより効率的に捕獲回収することができる。
【0015】
また、金属薄板からなるフィルタ部材は、集合通気部を内側または外側に膨出させることで、隣接する隣接する非通気部との間に、補強部的な作用を成す段差部(凹状立上り部)を備えた構造を成して板面方向における撓み変形などに対する剛性が高められる。
これにより、使用者はシンクなどにおいて洗浄する際に、フィルタ部材が折れ曲がり損傷するなどの心配をすることなく、スポンジなどの清掃用具を用いて洗浄することができるため、清掃性や取扱い性などの向上が期待できる。
【0016】
また、排気流が通過する多数の通気孔は、細長孔形状で、開口長さ方向を一方向に向け、かつ、開口長辺縁同士を互いに隣接させた略千鳥状の配列にて開口されていることで、ブラシなどの清掃用具を用いて汚れを取り除く際に、細長孔形状の一端に集められてくる油脂分や埃などが隣どうしで絡まりつくことが抑えられることで清掃性が改善され、汚れを洗い落とすなどによって速やかに取り除くことができる。
また、通気孔の集合によって区画形成される集合通気部に隣接して配置される非通気部は、平行な帯状に延びる広い衝突閉鎖面(面積)であることで、タオルなどを用いて非通気部に付着している汚れを拭き取るという作業で容易に取り除くことができる。これにより、清掃性を従来フィルタに比べて格段に向上させることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係るフィルタを適用させたレンジフードの一例を示す斜視図である。
【図2】同フィルタを構成する二枚のフィルタ部材のうち、一枚目のフィルタ部材を示す正面図である。
【図3】同二枚目のフィルタ部材を示す正面図である。
【図4】同二枚のフィルタ部材を示し、(a)は、対面させた状態で示す斜視図であり、(b)は、重ね配した状態の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】同二枚のフィルタ部材を重ね配して構成される本実施形態に係るフィルタの油捕獲率と通気抵抗との関係を示すグラフである。
【図6】他の実施形態に係るフィルタを構成する二枚のフィルタ部材を示し、(a)は、対面させた状態で示す斜視図であり、(b)は、重ね配した状態の一部を拡大して示す断面図である。
【図7】他の実施形態に係るフィルタの変形例であり、二枚のフィルタ部材を重ね配した状態で一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るフィルタを適用させたレンジフードの一例を示す斜視図である。
【0019】
本実施形態に係るフィルタAが適用されるレンジフードとしては、捕獲空間が浅く形成されている薄型(平型)のフード部を備えて構成される薄型レンジフード、そして、図1に示すように、捕獲空間Mが深く形成されている深型のフード部を備えて構成される深型レンジフードなどを挙げることができる。
【0020】
≪フィルタの構成説明≫
図2および図3は、本実施形態に係るフィルタを構成する二枚のフィルタ部材の一枚目と二枚目のフィルタ部材をそれぞれ示す正面図であり、図4は、二枚のフィルタ部材を対面させた状態の斜視図および重ね配した状態の一部を拡大して示す断面図である。
なお、図4の(b)において、重ね配された二枚のフィルタ部材1,2を境として、紙面下側がレンジフードに組み込み設置され状態で排気流Gの排気上流側であり、紙面上側が排気流Gの排気下流側である。
フィルタAは、例えば、図1に示すように、深型レンジフードBの捕獲空間Mなどの吸込み口に、排気流Gの排気上流側と排気下流側とを仕切るように組み込み設置されて、送風装置(図示省略)の吸引力によって捕獲空間Mに吸い込み捕集されてくる排気流G中の油脂分や埃などを捕獲回収するものである。
このフィルタAは、図2および図3に示すように、二枚のフィルタ部材1,2を備えて構成され、この二枚のフィルタ部材1,2を、図4の(b)に示すように、所定の間隔を隔てて重ね配することで構成されるものである。
【0021】
二枚のフィルタ部材1,2は、亜鉛めっき鋼板、耐食アルミニウム板、ステンレス鋼板などの所望の金属薄板を用いた打抜き、曲げ、絞り加工などによって適宜の大きさを有する略矩形形状にそれぞれ形成されている。
また、二枚のフィルタ部材1,2は、外周各辺に沿わせて所望の高さ(幅)にて折り曲げ連設された外周縁壁部3,4をそれぞれ備えている。
二枚のフィルタ部材1,2のうち、排気下流側に位置して配される二枚目のフィルタ部材2は、一枚目のフィルタ部材1の外周縁壁部3の板厚分、一枚目のフィルタ部材1よりも外周各辺の縁辺幅寸法が小さく形成されている。
これにより、一枚目のフィルタ部材1に対して二枚目のフィルタ部材2が内嵌めにて所定の間隔を隔てて重ね配されるようになっている。つまり、二枚目のフィルタ部材2の外周壁縁部4は、二枚のフィルタ部材1,2を重ね配したときの間隔に相当する高さ(幅)にて形成されている。
【0022】
そして、このように所定の間隔を隔てて重ね配される二枚のフィルタ部材1,2には、送風装置の吸引力によってレンジフードBの捕獲空間Mに吸い込み捕集されてくる排気流Gが通過するための多数の通気孔5,6がそれぞれ設けられている。
【0023】
≪通気孔の構成説明≫
通気孔5,6は、所定の開口幅と開口長さを有する細長孔形状に形成されている。
この通気孔5,6の開口幅L1は、0.6〜1.0mm程度の範囲が好ましく、特に、0.8mmが好ましい。そして、開口長さL2は、7〜13mm程度の範囲で、特に、10mm程度と、かなり細め(小さめ)の細長孔形状(スリット形状)に形成されている。
【0024】
そして、この通気孔5,6は、図2の拡大図に示すように、開口長辺縁同士を互いに隣接させて開口長さ方向を一方向に向けた略千鳥状の配列にて二枚のフィルタ部材1,2にそれぞれ設けられる。
具体的に述べると、開口長さ方向の両側開口短辺縁を、隣接する通気孔5,6の開口長辺縁の長さ中央部位に位置させて、なおかつ、開口長さ方向を一方向に向けた略千鳥状の配列にて、通気孔5,6は、二枚のフィルタ部材1,2にそれぞれ設けられている。
これにより、図2および図3に示すように、二枚のフィルタ部材1,2に、それぞれの通気孔5,6の集合によって排気流Gの集合通気部7,8がそれぞれ区画形成されるとともに、この集合通気部7,8に隣接して非通気部9,10がそれぞれ形成(確保)されるようになっている。
ちなみに、通気孔5,6の略千鳥状の配列間隔L3は、開口長辺縁同士間および開口短辺縁同士間においてともに1mm程度としている。
【0025】
≪集合通気部および非通気部の説明≫
集合通気部7,8は、略千鳥状に配列される通気孔5,6の集合によって二枚のフィルタ部材1,2にそれぞれ区画形成されるものであり、図2および図3に示すように、二枚のフィルタ部材1,2の外周各辺のうち、対向するそれぞれの一方の二辺縁1a、1b,2a、2b方向に向けて平行な帯状に延び、かつ、対向するそれぞれのもう一方の二辺縁1c、1d,2c、2d間に略等しい幅で間隔(非通気部)をおいて配置される。
これにより、二枚のフィルタ部材1,2の二辺縁1c、1d,2c、2d間における各集合通気部7,8の間および二辺縁1c、1d,2c、2d側に位置して、排気流Gを通さない非通気部9,10が配置されるようになっている。
つまり、集合通気部7,8と非通気部9,10は、二枚のフィルタ部材1,2を所定の間隔を隔てて重ね配したときに、図4の(b)に示すように、一枚目のフィルタ部材1側の集合通気部7と二枚目のフィルタ部材2側の非通気部10、一枚目のフィルタ部材1の非通気部9と二枚目のフィルタ部材2の集合通気部8が互いに対向する位置関係になるように配置される。集合通気部7,8と非通気部9,10は、二枚のフィルタ部材1,2のそれぞれの二辺縁1c、1d,2c、2d間に略等しい幅でそれぞれ交互に配置される。
【0026】
具体的に説明すると、例えば、二枚のフィルタ部材1,2のそれぞれの外周各辺の幅寸法を、250〜340mm程度とし、そして、集合通気部7,8と非通気部9,10の略等しい幅の平行に延びる帯状幅(交互配置の幅)としている。この平行に延びる帯状幅を、20〜23mm程度にした場合、図2に示すように、一枚目のフィルタ部材1側では、略等しい幅で四列にて集合通気部7が配置され、この各集合通気部7の間に三列、両辺縁1c,1d側に沿わせた二列の計五列の非通気部9が配置される。
一方、二枚目のフィルタ部材2側では、一枚目のフィルタ部材1側の集合通気部7の間における三列の非通気部9に対応させた三列にて集合通気部8が配置され、この各集合通気部8の間に二列、両辺縁2c,2d側に沿わせた二列の計四列の非通気部10が配置される。
これにより、二枚のフィルタ部材1,2を重ね配したときに、一枚目のフィルタ部材1側の集合通気部7と二枚目のフィルタ部材2側の非通気部10、一枚目のフィルタ部材1の非通気部9と二枚目のフィルタ部材2の集合通気部8が互いに対向する位置関係となって、図4の(b)に示すように、排気上流側に位置して配される一枚目のフィルタ部材1の各集合通気部7から流れ込む排気流Gは、排気下流側に位置して配される二枚目のフィルタ部材2側の対向する各非通気部10に衝突する排気流Gの流れとなり、各非通気部10への衝突により流れ方向が略鋭角に変えられた排気流Gは、各非通気部10に隣接して配置されている各集合通気部8から抜けて屋外排気または屋内(室内)循環されるものである。
【0027】
なお、二枚目のフィルタ部材2側における集合通気部8は、図3に二点鎖線で示したように、二辺縁2c,2dに沿わせてそれぞれ配置することができる。この場合、三列の集合通気部8のうち、二辺縁2c,2d側に位置する両側二列の集合通気部8との間にそれぞれ非通気部10を確保し得るように、該両側二列の集合通気部8との間の間隔をあける。
これにより、排気流GがフィルタAを通過するときの、通気抵抗を緩和することができる。
【0028】
そして、本実施形態では、このように形成されている二枚のフィルタ部材1,2を重ね配して構成されるフィルタA(試験体)について、油捕獲率(油捕集率とも称されている)と通気抵抗を確認するために、以下内容の各試験体を用いて試験を行い、その試験結果を表1および図5に示す。
この試験は、外周各辺の幅寸法が250〜340mmの二枚のフィルタ部材を用い、そして、開口幅L1が0.8mm、開口長さL2が10mmの開口サイズ0.8×10mmからなる通気孔をフィルタ部材の全面に略等しい幅で千鳥状に配列してなる試験体(以後、「比較例1」という)と、サイズ0.8×10mmの通気孔の千鳥状配列の集合によって区画形成される集合通気部と非通気部との平行に延びる帯状幅(交互配置の幅)を5mmに設定してなる試験体(以後、「比較例2」という)、同帯状幅を10mmに設定してなる試験体(以後、「比較例3」という)、20mmに設定してなる試験体(以後、「実施例1」という)、30mm試験体(以後、「実施例2」という)、40に設定してなる試験体(以後、「比較例4」という)をそれぞれ準備し、排気風量を400m3/h、通気風速を1.5および3m/sにそれぞれに設定した試験条件にて行った。
【0029】
そして、このときの試験順序は、以下のa〜eとする。
a.加熱調理器の上に載せたフライパンをあらかじめ熱しておく。
b.フライパンの上方より、油滴(10秒10滴12.5g/5分間程度)、水滴(10秒30滴39.8g/5分間程度)を滴下する。
c.蒸発した油脂分をレンジフードで排気する。
d.排気する際にフィルタで油脂分を捕獲(捕集)する。
e.試験時間は1時間とし、これを3回繰り返してその平均値をとる。
【0030】
そして、フィルタに対する油脂分の付着量と油脂分の発生量を測定することで、油捕獲率(油捕集率)を求めることができる。この油捕獲率は次式により求められる。

油捕獲率=(フィルタの油分付着量/油分発生量)×100(%)

なお、この油捕獲率は、財団法人ベターリビングが優良住宅部品として認定する場合の評価基準で「上式により求めた値が30%以上であること」と定めている。
【0031】
【表1】

【0032】
表1および図5から明らかなように、比較例1(全開)の場合、通気抵抗は低いが、油捕獲率が44%程度である。比較例2(5mm)と比較例3(10mm)の場合、通気抵抗は低いが、油捕獲率が65%程度である。比較例4(40mm)の場合、油捕獲率は77%であるが、通気抵抗が76Paと高い。
しかして、通常のレンジフードにおけるグリスフィルタの通気抵抗は、一般的な送風装置の能力を鑑みて、400m3 /h時において50Pa以下が目安であるが、比較例4の通気抵抗76Paは高すぎる。これに比べ、実施例1(20mm)と実施例2(30mm)の場合、油捕獲率は70%以上を確保し、通気抵抗を50Pa以下に抑えることができた。
これにより、集合通気部(サイズ0.8×10mmの通気孔の千鳥状配列の集合によって区画形成)と非通気部との平行に延びる帯状幅(交互配置の幅)は実施例1、2のフィルタが好適であることが分かった。
【0033】
[他の実施形態の説明]
図6は、他の本実施形態に係るフィルタを構成する二枚のフィルタ部材を対面させた状態の斜視図および重ね配した状態の一部を拡大して示す断面図である。
なお、この他の実施形態に係るフィルタA−1は、二枚のフィルタ部材1−1,2−1のうち、図6に示すように、排気流Gの排気下流側に位置して配される二枚目のフィルタ部材2−1の集合通気部8−1を、二枚のフィルタ部材1−1,2−1を重ね配した内側方向に向けて膨出させて形成し、一枚目のフィルタ部材1−1の非通気部9−1と対向するように形成している。同様に一枚目のフィルタ部材1−1の集合通気部7−1を重ね配した内側方向に向けて膨出させて形成し、二枚目フィルタ部材2−1の非通気部10−1と対向するように形成している。それ以外の構成要素においては前記の実施形態と基本的に同じであり、同じ構成要素に同じ符合を付することで重複説明は省略する。
【0034】
すなわち、図6(b)の拡大断面図に示すように、二枚目のフィルタ部材2−1の各集合通気部8−1を二枚のフィルタ部材を重ね配した内側に向けて膨出させることで、隣接する各非通気部10−1を内面凹状にそれぞれ形成している。
同様に、一枚目のフィルタ部材1−1の各集合通気部7−1を、二枚のフィルタ部材を重ね配した内側に向けて膨出させることで、隣接する各非通気部9−1を内面凹状にそれぞれ形成している。
【0035】
このように、一枚目のフィルタ部材1−1の各集合通気部7−1から流れ込んでくる排気流Gが衝突する二枚目のフィルタ部材2−1の各非通気部10−1を内面凹状とすることで、各非通気部10−1への排気流Gの衝突による排気流G中の油脂分や埃などの汚れの付着回収率(捕獲回収率)を高めることができる。
つまり、内面凹状の非通気部10−1への排気流Gの衝突は、凹状底面、そして凹状立上り面へと繰り返されることとなり、排気流Gの衝突による油脂分や埃などの汚れの付着回収率(捕獲回収率)を向上させることができる。
【0036】
また、フィルタ部材1−1,2−1の集合通気部7−1,8−1を膨出させて隣接する非通気部9−1,10−1との間に、補強部的な作用を成す段差部(凹状立上り部)を備えた構成を採用することで、金属薄板からなるフィルタ部材1−1,2−1の板面方向における撓み変形などに対する剛性が高められる。
これにより、使用者はシンクなどにおいて洗浄する際に、フィルタ部材1−1,2−1が折れ曲がり損傷するなどの心配をすることなく、スポンジなどの清掃用具を用いて洗浄することができるため、清掃性や取扱い性などの向上が期待でき、有益である。
【0037】
図7は、他の実施形態に係るフィルタの変形例であり、二枚のフィルタ部材を重ね配した状態で一部を拡大して示す断面図である。
また、他の実施形態に係るフィルタA−1では、図7に示すように、二枚のフィルタ部材1−1,2−1の集合通気部7−1,8−1の膨出方向を、前記他の実施形態詳述の膨出方向に対して逆向き方向としている。なお、この変形例に係るフィルタA−1では、集合通気部7−1,8−1の膨出方向を変えた以外の構成要素においては前記他の実施形態と基本的に同じであり、同じ構成要素に同じ符合を付することで重複説明は省略する。
【0038】
すなわち、図7に示すように、二枚のフィルタ部材1−1,2−1のうち、二枚目のフィルタ部材2−1の各集合通気部8−1を、二枚のフィルタ部材1−1,2−1を重ね配した外側(排気流Gの排気下流側)に向けて膨出させることで、隣接する各非通気部10―1を内面凸状にそれぞれ形成している。そして、一枚目のフィルタ部材1−1の各集合通気部7−1を、二枚のフィルタ部材1−1,2−1を重ね配した外側(排気流Gの排気上流側)に向けて膨出させることで、隣接する各非通気部9−1を内面凸状、換言すれば、外面凹状にそれぞれ形成している。
【0039】
このように、二枚のフィルタ部材1−1,2−1の各集合通気部7−1,8−1の膨出方向を外面凸状とし、隣接する各非通気部9−1,10−1を内面凸状とした構成形態のフィルタA−1を採用することで、排気上流側に位置する一枚目のフィルタ部材1−1の各集合通気部7−1から排気下流側に位置する二枚目のフィルタ部材2−1との間に排気流Gが流れ込むとき、排気流Gの一部が、図7に示すように、外面凹状の非通気部9−1に衝突してその流れ方向を集合通気部7−1側に大きく方向変換することを繰り返すこととなり、排気流Gの非通気部9−1への衝突による油脂分や埃などの汚れの付着回収率(捕獲回収率)を向上させることができる。
これは、一枚目のフィルタ部材1−1に到達して集合通気部7−1から直接二枚目のフィルタ部材2−1との間に流れ込む排気流Gの流れとの干渉によって、排気流Gの一部が、非通気部9−1側に流れを変えて衝突した後にその流れ方向を集合通気部7−1側に大きく方向変換することを繰り返すことが一枚目のフィルタ部材1−1の外表面において起こるからである。
【0040】
なお、本発明の実施形態の具体的な構成は、前記した各実施形態に限られるものではなく、請求項1から請求項6に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更などがあっても本発明に含まれるものである。
例えば、二枚のフィルタ部材1、1−1,2、2−1への集合通気部7、7−1,8、8−1の帯状幅(交互配置の幅)を変えることで、その配置列数を任意に設定することができる。一枚目のフィルタ部材1、1−1への集合通気部7、7−1の配置列数を、6列から12列などの範囲内で任意に設定することができる。
【0041】
また、他の実施形態に係るフィルタA−1において、一枚目のフィルタ部材1−1の集合通気部7−1を外面凹状に形成せずに、非通気部9−1と面一とする平ら面とすることができる。
【0042】
また、集合通気部7、7−1,8、8−1における通気孔5,6の開口配列を、略格子状の配列とすることができる。
【0043】
さらに、二枚のフィルタ部材1、1−1,2、2−1の対向するそれぞれの一方の二辺縁1a、1b,2a、2b方向を、辺縁1a,2a側と1b,2b側に略等しく半分に分けて、辺縁1a,2a側と1b,2b側に集合通気部7、7−1,8、8−1と非通気部9、9−1,10、10−1を略等しい幅でそれぞれ交互配置する配置形態を採用することができる。
この場合、辺縁1a,2a側に配置される各集合通気部7、7−1,8、8−1の1b,2b側に至る帯状延長上に位置して、1b,2b側においては非通気部9、9−1,10、10−1が配置される配置形態とすることができる。
【0044】
また、集合通気部7、7−1,8、8−1と非通気部9、9−1,10、10−1を、二枚のフィルタ部材1、1−1,2、2−1に略等しい幅で碁盤目状などに交互配置する配置形態とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
A,A−1 フィルタ
1、1−1,2、2−1 フィルタ部材
1a,1b,1c,1d、2a,2b,2c,2d 辺縁
3,4 外周縁壁部
5,6 通気孔
7、7−1,8、8−1 集合通気部
9、9−1,10、10−1 非通気部
B レンジフード
G 排気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンジフードに組み込み設置されて、調理中に発生する排気流中の油脂分などを捕獲するフィルタであって、
前記排気流が通過する多数の通気孔の集合によって区画形成されて配置される複数の集合通気部と、この集合通気部に隣接して配置される複数の非通気部と、を備え、
前記集合通気部と前記非通気部とはそれぞれ交互に配置されていることを特徴とするレンジフード用フィルタ。
【請求項2】
前記集合通気部と前記非通気部とをそれぞれ備えている二枚のフィルタ部材を備え、
前記集合通気部と前記非通気部は、前記二枚のフィルタ部材を重ね配したときに、互いに対向する位置関係で前記二枚のフィルタ部材にそれぞれ交互に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレンジフード用フィルタ。
【請求項3】
前記集合通気部と前記非通気部は、略矩形形状を呈している前記二枚のフィルタ部材の外周各辺のうち、対向する一方の二辺縁方向に向けて平行な帯状に延び、かつ、対向するもう一方の二辺縁間にそれぞれ交互に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のレンジフード用フィルタ。
【請求項4】
前記二枚のフィルタ部材のうち、少なくとも一方のフィルタ部材側の前記集合通気部が、二枚のフィルタ部材を重ね配した内側または外側に向けて膨出して形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のレンジフード用フィルタ。
【請求項5】
前記集合通気部を区画形成する前記通気孔は、開口幅が0.6〜1.0mmの範囲で、開口長さが7〜13mmの範囲とする細長孔形状に開口されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のレンジフード用フィルタ。
【請求項6】
前記集合通気部と前記非通気部は、20〜23mmの範囲で略等しい幅でそれぞれ交互に配置されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のレンジフード用フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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