説明

レンズホルダ機構、電子装置の解析装置及び固浸レンズの制御方法

【課題】固浸レンズの移動をスムーズに実施可能であると共に、固浸レンズと観察対象の密着性を高めることが可能なレンズホルダ機構、電子装置の解析装置及び固浸レンズの制御方法を提供する。
【解決手段】電子装置の解析装置100は、電子装置が発する光を検出するための固浸レンズ101と、固浸レンズに取り付けられる磁石112と、磁力により磁石の位置を調節する電磁石114と、磁石の変位を検出するセンサ115と、センサからの情報に応じて電磁石の磁力及び位置を制御する制御回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡等において適用可能なレンズホルダ機構に関する。また、本発明は、当該レンズホルダ機構を有する電子装置の解析装置に関する。さらに、本発明は、顕微鏡等における固浸レンズの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の電子装置の故障箇所を特定する電子装置の解析装置においては、電子装置が動作時に発生させる異常信号、例えば光を検出することによって、故障箇所を特定する(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
半導体装置においては、配線の多層化が進んでおり、配線側(表面)からの計測では異常信号が上層配線によって遮蔽され検出できないことが多い。これを回避するため、通常は半導体基板側(裏面)から異常信号の計測を行う。この場合、0.1mm以上の厚みのシリコン(Si)層を透過した異常信号を観察することになるが、シリコンは可視光の波長領域の光を透過しないので、可視光は利用できない。そこで、半導体装置裏面からの観察及び計測には、シリコンを透過可能な赤外線領域の波長の光を利用する。しかしながら、光の波長によって光学的な分解能が決定されるので、可視光より波長が長い赤外線を用いる観察では分解能が落ちてしまう。特に、シリコンの屈折率は約3.5であるのに対し、空気の屈折率は約1であるので、レンズと解析対象との間に空気が介在する状態において観察を実施すると、分解能がさらに低下し、最小寸法サイズの回路の形状が確認できず、また検出した異常信号の発生源が単一の候補に特定できない。
【0004】
そこで、例えば半導体装置の解析においては、赤外線波長領域におけるシリコンの屈折率に近い屈折率を有する半球状のレンズを解析対象に接触させることによって赤外線に対する分解能を高めている(例えば特許文献1参照)。このレンズは、一般的に、固体浸レンズ又は固浸レンズ(SIL;Solid Immersion Lens)と呼称されている。
【0005】
特許文献1に記載の観測システムにおいては、固浸レンズに相当する数値絞り増加レンズ(NAIL)が標本を覆って置かれている。サブストレート内の対象物からの光は、NAILを通過し、次いで顕微鏡システムの対物レンズ及び出口レンズを通って、ビデオカメラ等の中に入っている。
【0006】
非特許文献2に記載のエミッション顕微鏡においては、固浸レンズと対物レンズとは、一体的に構成されている。
【0007】
特許文献2に記載の半導体装置は、半導体基板の表面に集積回路が形成されており、半導体基板の裏面の一部に、半球状の凸部を半導体基板と一体的に形成されている。
【0008】
特許文献3に記載の固浸レンズホルダは、対物レンズの前面側に配置される固浸レンズを保持する固浸レンズホルダであり、固浸レンズを固定せずにフリーの状態に保持するレンズ保持部を有するホルダ本体と、ホルダ本体を振動させる振動発生部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2003−502705号公報
【特許文献2】特開2002−189000号公報
【特許文献3】特開2009−3133号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】PHEMOSシリーズ総合カタログ エミッション顕微鏡PHEMOSシリーズ、[online]、浜松ホトニクス株式会社、[平成23年10月17日検索]、インターネット〈http://jp.hamamatsu.com/resources/products/sys/pdf/jpn/phemos.pdf〉
【非特許文献2】「Meridian」の製品紹介における「標準型固侵レンズ(SIL)」の写真、[online]、DCGシステムズ株式会社、[平成23年10月17日検索]、インターネット〈URL:http://www.dcgsystems.co.jp/products/meridian/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以下の分析は、本発明の観点から与えられる。
【0012】
半導体装置の解析装置において、固浸レンズを実装する方法としては、第1に、非特許文献2に記載のように、固浸レンズと対物レンズとを一体的に形成する方法、第2に、特許文献1に記載のように、解析対象に固浸レンズを載置する方法、及び第3に、特許文献2に記載のように、半導体基板の裏面に直接固浸レンズを形成する方法が知られている。
【0013】
図9に、固浸レンズと対物レンズとを一体的に形成した場合の背景技術の概略断面図を示す。観察対象である電子装置920は、ソケット903に電気的に接続され、カバー904によって固定されている。カバー904は、例えば、QFP(Quad Flat Package)やFCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)等の電子装置920をソケット903に電気的に接続するためや固定するために、電子装置920の外周部を押さえるような形状を有すると共に、観察箇所を確保するための開口904aを有する。また、カバー904をソケット903にネジ留めする場合には、カバー904は一定の高さ(厚さ)を有する必要がある。一方、固浸レンズと対物レンズとを一体化すると、レンズ902は、テーパ面を有する円錐形状(円錐台形状)となる。この場合、レンズ902は、開口904aに挿入することができず、カバー904と接触してしまう。そうすると、レンズ902の固浸レンズは、電子装置920の電子素子921に接触することができない。また、仮に接触できたとしても、レンズ902の横方向の移動はカバー904によって阻害されてしまう。特許文献3に記載の固浸レンズホルダにおいても、レンズ保持部をカバー904の開口904aに挿入できないおそれがあり、あるいは、カバー904とレンズ保持部との接触により固浸レンズを所望の位置に移動させることができないおそれがある。
【0014】
観察対象上に固浸レンズを載置する方法では、固浸レンズを簡便かつ迅速に移動させる手段が必要となる。また、図10に示すような、固浸レンズが解析対象の下方に位置する倒立型の解析装置においては、重力による影響により、固浸レンズ901と電子素子921との密着性が弱まってしまう。この場合、焦点を合わせることができず、高分解能の解析を実現することができなくなる。
【0015】
半導体基板に直接固浸レンズを形成する場合、その加工費用は高額となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1視点によれば、観察対象が発する光を検出するための固浸レンズに取り付けられる磁石と、磁力により磁石の位置を調節する電磁石と、磁石の変位を検出するセンサと、センサからの情報に応じて電磁石の磁力及び位置を制御する制御回路と、を備えるレンズホルダ機構が提供される。
【0017】
本発明の第2視点によれば、電子装置が発する光を検出するための固浸レンズと、固浸レンズに取り付けられる磁石と、磁力により磁石の位置を調節する電磁石と、磁石の変位を検出するセンサと、センサからの情報に応じて電磁石の磁力及び位置を制御する制御回路と、を備える電子装置の解析装置が提供される。
【0018】
本発明の第3視点によれば、固浸レンズに取り付けられた磁石を電磁石の磁力によって移動させることによって、固浸レンズの位置を制御する工程を含む固浸レンズの制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
【0020】
本発明においては、磁力によって固浸レンズの移動を制御する。これにより、カバーとの物理的接触により固浸レンズの接触や移動が阻害されることを防止することができる。
【0021】
本発明においては、電磁石により固浸レンズの位置を制御する。これにより、電磁石の磁力調節によって固浸レンズと観察対象との密着性を高めることができるので、倒立型の解析装置に適用する場合や電子素子の周縁部を観測する場合であっても、高分解能の解析を実現することができる。
【0022】
本発明においては、例えば半導体基板を固浸レンズ形状に加工する必要はない。したがって、半導体基板の裏面に固浸レンズを作製するよりもコストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置の解析装置の概略断面図。
【図2】固浸レンズ、対物レンズ、磁石、電磁石及び第1センサの位置関係の一例を示す概略平面図。
【図3】レンズホルダ機構の概略ブロック図。
【図4】磁石に収容した固浸レンズの概略断面図。
【図5】電磁石のコイルの巻き方を説明するための概略平面図。
【図6】固浸レンズの制御方法を説明するためのフローチャート。
【図7】本発明の第2実施形態に係る電子装置の解析装置の概略断面図。
【図8】第3実施形態に係る固浸レンズの制御方法を説明するための概略断面図。
【図9】背景技術の問題点を説明するための概略断面図。
【図10】背景技術の問題点を説明するための概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記各視点の好ましい形態を以下に記載する。
【0025】
上記第1視点の好ましい形態によれば、磁石は、固浸レンズと共に、電磁石による磁力により磁気的に支持される。
【0026】
上記第1視点の好ましい形態によれば、磁石及び電磁石は、観察対象に対して同じ側に配されている。
【0027】
上記第1視点の好ましい形態によれば、磁石は、観察対象に対して一方の側に配されている。電磁石は、観察対象に対して一方の側とは反対側の他方の側に配されている。
【0028】
上記第2視点の好ましい形態によれば、固浸レンズ及び磁石は、電磁石による磁力によって磁気的に支持可能である。
【0029】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電子装置の解析装置は、固浸レンズからの光を受光する対物レンズをさらに備える。磁石は、固浸レンズから対物レンズへの光路を遮らない位置に取り付けられている。
【0030】
上記第2視点の好ましい形態によれば、磁石は、固浸レンズの電子装置との接触面の中心から接触面に対して30°以下の範囲に設けられている。
【0031】
上記第2視点の好ましい形態によれば、磁石は、円筒形状を有する。固浸レンズは、磁石の円筒内に挿入されている。
【0032】
上記第2視点の好ましい形態によれば、磁石の少なくとも一部は、ネオジム磁石で構成されている。
【0033】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電子装置の解析装置は、電子装置を電気的に接続するためのソケットと、電子装置をソケットに固定するためのカバーと、をさらに備える。固浸レンズ及び磁石は、カバー内に配置されている。
【0034】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電磁石は、電子装置に対して固浸レンズ側に配されている。
【0035】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電磁石は、カバーの外側に配されている。
【0036】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電磁石は円筒形状を有する。固浸レンズからの光を受光する対物レンズは、電磁石の円筒内に配されている。
【0037】
上記第2視点の好ましい形態によれば、センサは、磁石の第1方向の変位を検出する第1ホール素子と、磁石の第2方向の変位を検出する第2ホール素子と、を有する。第1ホール素子はカバー内に配されている。第2ホール素子はカバー外に配されている。
【0038】
上記第2視点の好ましい形態によれば、電磁石は、電子装置に対して固浸レンズとは反対側に配されている。
【0039】
上記第2視点の好ましい形態によれば、センサは、電子装置に対して固浸レンズとは反対側に配されている。
【0040】
上記第3視点の好ましい形態によれば、電磁石を移動させることによっても固浸レンズの位置を制御する。
【0041】
上記第3視点の好ましい形態によれば、固浸レンズの制御方法は、センサにより磁石の変位を検出する工程をさらに含む。センサが取得した情報に基づいて固浸レンズの位置を制御する。
【0042】
上記第3視点の好ましい形態によれば、電磁石は、観察対象に対して固浸レンズと同じ側から、磁石との反発力を利用して固浸レンズを移動させる。
【0043】
上記第3視点の好ましい形態によれば、電磁石は、観察対象に対して固浸レンズとは反対側から、磁石との引力を利用して固浸レンズを移動させる。
【0044】
上記第3視点の好ましい形態によれば、固浸レンズの制御方法は、固浸レンズを移動させた後、電磁石の磁力を高めて、固浸レンズと観察対象とを密着させる工程をさらに含む。
【0045】
上記第3視点の好ましい形態によれば、固浸レンズの制御方法は、固浸レンズと観察対象との間に接着剤を供給する工程と、固浸レンズを接着剤によって観察対象に固定する工程と、をさらに含む。
【0046】
上記第3視点の好ましい形態によれば、接着剤は、観察する光に対して透明性を有すると共に、屈折率が3〜4である。
【0047】
本発明の第1実施形態に係る電子装置の解析装置及びレンズホルダ機構について説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係る電子装置の解析装置の概略断面図を示す。電子装置の解析装置100は、電子装置120に実装された電子素子121に故障がある場合に、故障箇所が発する光を検出し、当該故障箇所を特定することができる。解析対象となる電子装置120としては、例えば、電子素子121として半導体チップを有する半導体装置が挙げられる。
【0048】
固浸レンズ101は、観測する光に対して透過性を有する材料を使用する。また、固浸レンズ101は、電子素子121の屈折率に近い屈折率を有すると好ましい。電子素子121が半導体チップである場合、固浸レンズ101の材料は、シリコン、ガリウムヒ素等を使用することができる。また、固浸レンズ101は、赤外線に対して透過性を有し、シリコンの屈折率に近い屈折率を有する材料として、例えばジルコニアやダイヤモンドで作製することもできる。
【0049】
電子装置の解析装置100は、電子装置120が発する信号を測定するための固浸レンズ101と、固浸レンズ101からの光を受ける対物レンズ102と、テスト基板(不図示)に電気的に接続され、電子装置120とテスト基板とを電気的に接続するためのソケット103と、ソケット103に電子装置120を固定するためのカバー104と、固浸レンズ101を保持するレンズホルダ機構110と、を備える。図1に示す形態においては、固浸レンズ101及びレンズホルダ機構110は、電子素子121の基板側(裏面側)に配されている。
【0050】
図2に、電子装置の解析装置における一部の要素の概略平面図を示す。図3に、レンズホルダ機構の概略ブロック図を示す。レンズホルダ機構110は、固浸レンズ101に取り付けられる磁石112と、磁石112の水平方向の変位及び速度を検出する第1センサ115と、磁石112の垂直方向の変位及び速度を検出する第2センサ116と、磁石112に対して引力及び斥力を作用させることができると共に、少なくとも水平方向に移動可能な電磁石114と、第1センサ115及び第2センサ116からの情報に基づき、電磁石114の磁力の強さ及び向きを制御する制御回路117と、を有する。固浸レンズ101と磁石112とは、例えば、接着剤等の接合剤113で接合されている。
【0051】
本書においていう水平方向とは、電子装置120の面に沿った方向(解析装置100の光軸に垂直な方向;図1における左右方向)を意味する。また、垂直方向とは、電子装置120の面に対して垂直な方向(解析装置100の光軸方向;図1における上下方向)を意味する。
【0052】
磁石112は、固浸レンズ101から対物レンズ102への光路を遮らないように固浸レンズ101に取り付けられる。また、磁石112は、固浸レンズ101と電子装置120とに密着を阻害しないように固浸レンズ101に取り付けられる。例えば、磁石112は、円筒形状とすることができる。この場合、固浸レンズ101は円筒内に収容することができる。図4に、磁石112を円筒形状とし、当該円筒内に収容した固浸レンズ101の概略断面図を示す。例えば、磁石112は、外径1.5mm、内径1mmのリング状とすることができる。磁石112は、固浸レンズ101から対物レンズ102への光を遮蔽しないような高さHを有する。例えば、円筒の高さHは、固浸レンズ101の観測対象との接触面101aの中心からの開口角αを120°以上確保できるような高さとする。すなわち、磁石112は、固浸レンズ101の観測対象との接触面101aの中心から接触面101aに対する角度βが30°以下の範囲に存在するようにすると好ましい。このとき、固浸レンズ101を球の一部と仮定し、その半径をrとした場合、高さHは(r×tanβ)以下であると好ましい。例えば、固浸レンズ101を半球とし、その球の直径を1mmとした場合、磁石112の高さHは0.28mm以下とすると好ましい。図1〜図4に示す形態においては、磁石112を固浸レンズ101に直接的に接合しているが、磁石112を間接的に固浸レンズ101に接合してもよい。例えば、固浸レンズ101を収容する樹脂に、磁石112を含有させてもよい。
【0053】
磁石112は、電磁石114との引力及び反発力(斥力)によりその位置を制御可能な磁力を有する。例えば、磁石112としては、ネオジム磁石を用いることができる。これにより、磁石112及び固浸レンズ101は、物理的(機械的)な支持が無くとも、電磁石114により磁気的に支持されることができる。
【0054】
電磁石114は、磁力の強度及び磁力の向きを調節することによって、磁石112の位置を制御することにより、固浸レンズ101の位置を制御する。電磁石114は、磁石112及び固浸レンズ101をその磁力によって制御可能とすると共に、固浸レンズ101から対物レンズ102への光を遮蔽しないように配置される。例えば、電磁石114は、円筒形状とすることができる。電磁石114が円筒形状である場合、対物レンズ102は、電磁石114の円筒内に配置すると好ましい。図1に示すような倒立型顕微鏡の場合、対物レンズ102は、電磁石114の円筒からその下方に存在する。
【0055】
電磁石114は、その磁力によって磁石112及び固浸レンズ101を水平方向に移動可能とするように、少なくとも水平方向に移動可能に構成される。電磁石114は、垂直方向や斜め方向に移動可能に構成してもよい。電磁石114が移動するとき、電磁石114と対物レンズ102とが接触しないようにする。例えば、電磁石114の形状が円筒形であり、電磁石114のその円筒内に対物レンズ102を配置する場合、電磁石114の円筒の内径は、対物レンズ102との干渉を防止するため、7cm以上にすると好ましい。
【0056】
図5に、電磁石114のコイルの巻き方を説明するための概略平面図を示す。電磁石114の磁力により磁石112を電子装置120に接近させたり電子装置120から離したりできるように、電磁石114は、両端の磁極を結ぶ方向が電子装置120に対して垂直になるようにする。すなわち、磁石112を垂直方向に移動できるように、電磁石114のコイルを巻くようにする。例えば、電磁石114が円筒形である場合、孔(開口)が固浸レンズ101を向くようにし、コイルは円筒の外周方向に沿って巻くようにすると好ましい。
【0057】
第1センサ115及び第2センサ116が磁石112の変位及び速度を検出することによって、固浸レンズ101の変位が把握される。第1センサ115及び第2センサ116としては、例えば、ホール素子を使用することができる。ホール素子を使用する場合、第1センサ115は、少なくとも2つのホール素子を有すると好ましい。第1センサ115は、磁石112と共に移動可能に構成することもできるが、カバー104との接触を防止するため、第1センサ115の位置は固定にすると好ましい。
【0058】
制御回路117は、電磁石114、第1センサ115及び第2センサ116に接続されている。制御回路117は、第1センサ115及び第2センサ116が検出した磁石112の変位及び速度の情報に基づいて、磁石112を所望の位置に移動させるように、電磁石114の磁力強度及び磁力の向きを制御すると共に、電磁石114の位置を制御する。これにより、磁石112が所望の位置に移動されることにより、磁石112と一体化された固浸レンズ101を所望の位置に移動させることができる。
【0059】
カバー104は、電子装置120をソケット103に固定すると共に、電子装置120と解析装置100との電気的接続を維持する。また、カバー104は、電子装置120を覆っており、電子装置120からの光を伝導するための開口104aを有する。固浸レンズ101、磁石112及び第1センサ115はカバー104内に配置される。対物レンズ102、電磁石114、及び第2センサ116はカバー104外に配置される。固浸レンズ101からの光はカバー104の開口104aを通じて対物レンズ102に伝導される。カバー104は、電磁石114と磁石112の間の磁力を阻害しないような材料で形成すると好ましい。
【0060】
次に、本発明の固浸レンズの制御方法について説明する。図6に、固浸レンズの制御方法を説明するためのフローチャートを示す。まず、制御回路117は、電磁石114の磁力を調節して、磁石112及び固浸レンズ101を水平方向に移動可能な状態とする(S101)。例えば、電磁石114との反発力を利用して、磁石112を浮遊させて、固浸レンズ101の接触面101aが電子素子121に軽く接触している状態とする。
【0061】
次に、制御回路117は、第1センサ115及び第2センサ116により磁石112を検知しながら、電磁石114を移動させることにより、電磁石114との反発力を利用して、固浸レンズ101を観測位置まで移動させる(S102)。
【0062】
次に、固浸レンズ101が適切な位置にあるかを確認する(S103)。例えば、固浸レンズ101移動後のパターン像と観察したい箇所のレイアウト画像を比較して、位置ずれ量を計算し、観察箇所がパターン像に表示されているかどうかを確認する。位置ずれの計算は自動計算で実施することもできるが、目視により位置ずれを確認してもよい。固浸レンズ101が適切な位置にない場合、再度固浸レンズ101を移動させる(S102)。
【0063】
固浸レンズ101が適切な位置にある場合、制御回路117は、電磁石114に流す電流を増加させて、電磁石114と磁石112との反発力を高める。これにより、固浸レンズ101の接触面101aを電子素子121に密着させて、固浸レンズ101を電子装置120に固定することができる(S104)。
【0064】
次に、解析装置100は、電子装置120を動作させて電子素子121からの異常信号を観測する(S105)。
【0065】
観測が終了したら、制御回路117は、固浸レンズ101の電子装置120への固定を解除する(S106)。
【0066】
次に、他の位置で測定する場合にはS102以下のステップを繰り返す。他の位置で測定しない場合には、観測を終了する。
【0067】
このように、本発明の更なる視点によれば、固浸レンズに取り付けられた磁石を電磁石の磁力によって移動させることによって、固浸レンズの位置を制御し、例えば異常信号を観測することで電子装置を解析する工程を含む解析方法が提供される。
【0068】
本発明によれば、磁力によって固浸レンズを制御するので、固浸レンズや対物レンズがカバーと接触して固浸レンズの移動が阻害されることを防止することができる。また、磁力を用いることにより、倒立型の解析装置であっても、固浸レンズを電子素子に強固に密着させることができる。特に、平坦度の低い半導体チップ周縁部においても固浸レンズと電子素子との良好な密着性を得ることができる。これにより、高分解能の解析を実現することができる。さらに、半導体基板の裏面に固浸レンズを作製するよりもコストを低く抑えることができる。
【0069】
次に、本発明の第2実施形態に係る電子装置の解析装置及びレンズホルダ機構について説明する。図7に、本発明の第2実施形態に係る電子装置の解析装置の概略断面図を示す。図7において、第1実施形態と同じ要素には同じ符号を付してある。電子装置の解析装置200が備える要素は、第1実施形態に係る解析装置が備える要素と同じである。第1実施形態においては、電磁石及びセンサは、電子装置に対して固浸レンズと同じ側に配置されていたが、第2実施形態においては、電磁石114及びセンサ115は、電子装置120に対して固浸レンズ101とは反対側、すなわち電子素子121の配線側(表面側)に配置されている。また、第2実施形態においては、電磁石114の形状は、光路上にないので、円筒形に限定されず、例えば、柱状等を採ることができる。これにより、電磁石114が占める体積を減少させることができる。
【0070】
センサ115は、例えば、電磁石114と固浸レンズ101の間に配置することができる。また、センサ115は、電磁石114の移動に対応して、好ましくは電磁石114と同じ方向及び同じ速度で、移動可能に構成すると好ましい。特に、センサ115は、電磁石114の中心軸上に配置すると好ましい。これにより、センサ115と電磁石114との距離を一定に保つことができ、特に電磁石114の中心軸上に配置した場合には電磁石114からの磁界の影響を現象させることができ、固浸レンズ101の位置制御の精度を向上させることができる。
【0071】
固浸レンズ101の制御方法においては、第1実施形態においては電磁石114と磁石112の反発力を利用したが、第2実施形態においては電磁石114と磁石112の引力を利用する。これ以外の方法については、第1実施形態と同様である。
【0072】
第2実施形態における上記以外の形態は、第1実施形態と同様である。
【0073】
第2実施形態によれば、電磁石と対物レンズとの接触を考慮する必要がないので、電磁石の移動の自由度を高めることができる。また、電子素子周縁部への固浸レンズの移動も容易になる。さらに、固浸レンズの高精度の位置制御が可能となるので、固浸レンズの移動を容易にすることができる。
【0074】
次に、本発明の第3実施形態に係る固浸レンズの制御方法について説明する。図8に、本発明の第3実施形態に係る固浸レンズの制御方法を説明するための概略断面図を示す。図8は、第2実施形態に係る解析装置及びレンズホルダ機構を例にしている。
【0075】
第3実施形態においては、固浸レンズ101と電子装置120とを接着剤301で接着した状態で故障箇所を観測する。接着剤301は、硬化時において、観測する光に対して透過率が高いと共に、電子素子121、例えばシリコンと同等の屈折率、例えば3〜4、を有する材料であると好ましい。接着剤301としては、例えば、紫外線硬化型のアクリル樹脂接着剤を使用することができる。
【0076】
まず、例えば赤外線顕微鏡を使用することによって、予め観測する箇所を特定しておく。次に、少なくとも観測する箇所に接着剤301を塗布する。接着剤301は、観測する箇所を含めて広範囲に塗布してもよい。次に、第1実施形態と同様にして、観測箇所まで固浸レンズ101を移動させて、接着剤301を介して電子装置120に固浸レンズ101を固定する。次に、接着剤301を硬化させる。接着剤301が硬化するまでレンズホルダ機構110は固浸レンズ101を所望の位置に固定させることができる。次に、固浸レンズ101を接着剤301で固定した状態で故障箇所を観測する。
【0077】
第3実施形態によれば、固浸レンズをマーカーとして利用することができ、故障箇所を低コストで特定することができる。例えば、異常信号発生個所を特定する手段として、最初、解像度は低いが異常信号の検出感度の高いマクロレンズでおおよその異常信号発生個所を特定してから、レンズの倍率を段階的に上げながら観測し、最高解像度のレンズでの観測によって故障個所を絞り込む方法がある。この方法を実施するためには複数のレンズを自動交換し、さらにレンズを交換しても同一座標の観察を実現するシステムの実装が必要となるが、半導体製造プロセスの微細化が進むにつれてレンズ交換時の位置制御機能も高機能化が必要となり、それが解析装置の高価格化の一因となっている。しかし、第3実施形態によれば、位置再現性の高い高価なレンズターレットを使用しないで故障箇所を特定することができる。
【0078】
図8においては、第2実施形態に係る解析装置及びレンズホルダ機構を示したが、第1実施形態に係る解析装置及びレンズホルダ機構であっても第3実施形態に係る固浸レンズの制御方法を適用することができる。
【0079】
第3実施形態における上記以外の形態は、第1実施形態と同様である。
【0080】
以上の説明においては、解析対象を下方から観察する倒立型顕微鏡を例にしたが、解析対象を上方から観察する正立型顕微鏡であっても本発明を適用することができる。
【0081】
上記説明においては、電子素子の基板側(裏面側)から観測する例を示したが、本発明は、電子素子の配線側(表面側)から観測する場合にも適用することはできる。
【0082】
本発明のレンズホルダ機構、電子装置の解析装置及び固浸レンズの制御方法は、上記実施形態に基づいて説明されているが、上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0083】
本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【符号の説明】
【0084】
100 電子装置の解析装置
101 固浸レンズ
101a 接触面
102 対物レンズ
103 ソケット
104 カバー
104a 開口
110 レンズホルダ機構
112 磁石
113 接合材
114 電磁石
115 第1センサ
116 第2センサ
117 制御回路
120 電子装置
121 電子素子
301 接着剤
901 固浸レンズ
902 レンズ
903 ソケット
904 カバー
904a 開口
920 電子装置
921 電子素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象が発する光を検出するための固浸レンズに取り付けられる磁石と、
磁力により前記磁石の位置を調節する電磁石と、
前記磁石の変位を検出するセンサと、
前記センサからの情報に応じて前記電磁石の磁力及び位置を制御する制御回路と、を備えることを特徴とするレンズホルダ機構。
【請求項2】
電子装置が発する光を検出するための固浸レンズと、
前記固浸レンズに取り付けられる磁石と、
磁力により前記磁石の位置を調節する電磁石と、
前記磁石の変位を検出するセンサと、
前記センサからの情報に応じて前記電磁石の磁力及び位置を制御する制御回路と、を備えることを特徴とする電子装置の解析装置。
【請求項3】
前記固浸レンズ及び前記磁石は、前記電磁石による磁力によって磁気的に支持可能であることを特徴とする請求項2に記載の電子装置の解析装置。
【請求項4】
電子装置を電気的に接続するためのソケットと、
電子装置を前記ソケットに固定するためのカバーと、をさらに備え、
前記固浸レンズ及び前記磁石は、前記カバー内に配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子装置の解析装置。
【請求項5】
固浸レンズに取り付けられた磁石を電磁石の磁力によって移動させることによって、前記固浸レンズの位置を制御する工程を含むことを特徴とする固浸レンズの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−105115(P2013−105115A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250326(P2011−250326)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】