レンズモジュール、撮影装置、レンズモジュールの製造方法
【課題】筐体の精度にかかわらず、各光学レンズの光軸と物側の遮光板の光軸とを合わすことができるレンズモジュールを提供する。
【解決手段】レンズモジュール13は、複数の光学レンズ11a〜11cと、不要な光が入射されることを防止するための遮光板12aとを備える。また、前記複数の光学レンズ11a〜11cおよび前記遮光板12aが積層されるとともに一体化されてレンズ積層体11を形成しており、前記遮光板12aと別体の遮光層12が、前記レンズ積層体11の径方向の外周面に更に設けられている。
【解決手段】レンズモジュール13は、複数の光学レンズ11a〜11cと、不要な光が入射されることを防止するための遮光板12aとを備える。また、前記複数の光学レンズ11a〜11cおよび前記遮光板12aが積層されるとともに一体化されてレンズ積層体11を形成しており、前記遮光板12aと別体の遮光層12が、前記レンズ積層体11の径方向の外周面に更に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズモジュールに関し、特にレンズ積層体を備えたレンズモジュール、及び該レンズモジュールを備えた撮影装置に関する。また、光軸を一致させることが容易なレンズモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている撮影装置として、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサあるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを撮像素子として備えるデジタルカメラがある。この撮像素子の集積度の向上に伴い、コンパクトカメラや携帯電話に内蔵される小型のレンズモジュールであっても、画質の向上が求められている一方で、小型化の要請は当然に強い。更に、コンパクトカメラや携帯電話に内蔵される小型のレンズモジュールは、比較的安価に供給される商品であるため、製造コストを低く抑えることができる構成であることも重要となる。
【0003】
ここで、画質を向上させるためには、レンズモジュールを構成する複数の光学レンズの各々の光軸およびレンズモジュールの物側(以下、単に、「物側」とする。)や像側(以下、単に、「像側」とする。)に設けられている遮光板の光軸を正確に合わせることが重要となる。そこで複数のレンズ群を有する高精度に組み付けることが可能な鏡筒装置が提示されている(例えば、特許文献1、参照)。特許文献1には、「レンズ群間の芯精度がよく、高精度の鏡筒装置を提供することができる。(〔0078〕)」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−82272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明により、レンズ群間の光軸を合わせる精度(芯精度)が向上するとしても、レンズモジュールを構成する光学レンズそれぞれを個別に光軸合わせすることは困難である。またレンズモジュールの光軸方向において最も物側に設けられている遮光部については考慮されていない。
【0006】
特に樹脂の筐体を用いたレンズモジュールにおいて、筐体の精度には限界があり、光学レンズ間の光軸ずれが問題となっている。また、上記遮光板のうち特にレンズモジュールの物側に設けられている遮光部については筐体と一体的に形成されているため、同様に光学レンズとの光軸ずれが問題となっている。以下に具体的に説明する。
【0007】
図9に示すように、カメラモジュール101は、レンズモジュールに入射した光を基板131上に設けられた光学素子103上に結像させ、記録する構造となっている。一例を説明する。基板131上にはCCDイメージセンサあるいはCMOSイメージセンサからなる光学素子103が固定され、配線135により基板131に電気的に接続されている。この光学素子103は同じく基板131に固定されたカバー140により覆われることにより保護されている。このカバー140は大径の有蓋筒型の下部141と小径の筒型の上部142を組み合わせた形状であるとともに蓋部143中央の上部との接合部分は貫通孔144となっている。この貫通孔144を覆うように、蓋部143の内側にカバーガラス102が固定されている。また、小径の筒型の上部142の内周面には雌ねじが切られており、外周面112aに対応する雄ねじが切られたレンズモジュール113を固定できるようになっている。
【0008】
図10に示すように、レンズモジュール113は外周面112aに上述の雄ねじが切られた有底筒状の筐体112と、光学レンズ111a〜111cを備えている。具体的には、底部112bに貫通孔112sを有することにより物側の遮光部が形成された筐体112の内部に、略円盤状の光学レンズ111a〜111cおよび光学レンズ111aと光学レンズ11bの光軸方向の間隔を調節するための略円環状のスペーサ115が積層された構造をレンズモジュール113は有している。更に光軸方向において最も像側(以下、単に、「像側」とする。)の端部は像側の遮光板112dが固定されている。光学レンズ111a〜111cは各々光学的機能を有するレンズ本体111a1〜111c1と、その周辺に形成されたコバ111a2〜111c2を有している。このコバ111a2〜111c2同士が互いに接するように積層されることにより、111a1〜111c1同士の光軸方向の距離が規定されている。また、光軸方向の距離を必要に応じてスペーサを光学レンズ間に介在させることにより調整することもできる。例えば上述のように、光学レンズ111aと光学レンズ111bの間にスペーサ115が介在している。また、光学レンズ111bと光学レンズ111cとの間には開口絞り114が一体的に挟みこまれている。
【0009】
一方、径方向の位置は、コバ111a2〜111c2の外縁部111a5〜111c5を筐体112の内周面112cに接触させることにより規定されている。従って、筐体112の精度が不十分な場合、図10中に一点差線で示した光学レンズ毎の光軸が一致せず、光軸ずれが発生しうる。また、底部112bとして筐体112と一体的に形成されている物側の遮光部の光軸0bと、光学レンズ111a〜111cの光軸と、像側の遮光板112dの光軸0dとの光軸ずれが発生しうる。特に樹脂製の筐体112とプラスチック(樹脂)レンズの組み合わせにおいてこの問題は大きくなる。図11に示すように、樹脂製の筐体112においては、径方向に筐体112が撓み、光軸方向に垂直な断面の真円度が低下し、楕円形となることがある。一方、射出成型させたプラスチックレンズには、樹脂材料を射出するために必要となるゲート跡111a4がコバ111a2の外縁部111a5に残ることを防止するための切り欠け部111a3を形成する必要がある。図11(a)に示すように、筐体112断面の楕円形の長径方向にプラスチックレンズの切り欠け部111a3が位置した場合には、コバ111a2の外縁部111a5が楕円の短径部分に接触し、筐体112の撓みを修正するため光軸のずれは最小限となる。一方、図11(b)に示すように、筐体断面の楕円形の短径方向にプラスチックレンズの切り欠け部111a3が位置した場合には、短径部分にコバ111a2の外縁部111a5の一方が接触しないため筐体112の歪が修正されず、光軸のずれが最大となる。
【0010】
また、筐体112の微細な撓み方向を測定し、プラスチックレンズの切り欠け部111a3の向きを調整することは困難であるし、コストアップとなる。また、小型化の要請を鑑みると、筐体や光学レンズの径を大きくして精度を出すことも困難である。更に、製造コスト圧縮および軽量化の要請から小型のレンズモジュールにおいては樹脂製の筐体が主流となっており、高精度の筐体を用いることも困難である。また、物側の遮光部はレンズモジュール内に不要な光線が入射することを防止する上で、正確に光軸が一致していることが望まれている。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、筐体や遮光層の精度にかかわらず、各光学レンズの光軸と物側の遮光板の光軸とを合わすことができるレンズモジュール、該レンズモジュールを備えた撮影装置、及びレンズモジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるレンズモジュールは、複数の光学レンズと、不要な光が入射されることを防止するための遮光板とを備え、前記複数の光学レンズおよび前記遮光板が積層されるとともに一体化されてレンズ積層体を形成しており、前記遮光板と別体の遮光層が、前記レンズ積層体の径方向の外周面に更に設けられている。
【0013】
上記構成によると、複数の光学レンズおよび遮光板が積層されるとともに、一体化されてレンズ積層体を形成しているため、従来用いられてきた筐体の形状に影響されて各光学レンズおよび遮光板の光軸がずれることが抑制される。
【0014】
また、上記構成によると、レンズ積層体の径方向の外周面に遮光層が設けられているため、レンズ積層体の径方向の外周面からの光の入射を防止することができる。従って、径方向の外周面からの光の入射を防止するための別段の筐体などを必要としないため、レンズモジュールを従来に比して径方向に小型化することができる。
【0015】
なお、上述のレンズ積層体は、複数の光学レンズおよび前記遮光板が一体化されて形成されていれば良いのであり、他の部材、例えば、スペーサや開放絞りなどが併せて一体化された場合であっても、レンズ積層体の概念に含まれる。
【0016】
本発明にかかるレンズモジュールは、前記複数の光学レンズおよび前記遮光板は、該複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと該遮光板との間に延設された接続部材により接続されることにより一体化されてレンズ積層体を形成していることが好ましい。また、前記接続部材は前記複数の光学レンズの各々の外縁部および前記遮光板の外縁部に接するように配置されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によると、複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと遮光板との間に延設された接続部材により接続されることにより一体化されてレンズ積層体を形成しているため、複数の光学レンズと遮光板とを接続部材により容易に一体化できる。
【0018】
また、接続部材は複数の光学レンズの各々の外縁部および遮光板の外縁部に接するように配置されているため、複数の光学レンズおよび遮光板の各々が接する面に接着剤を塗布したり、複数の光学レンズ自身に加工を施したりする必要がない。
【0019】
なお、接続部材は、複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと遮光板との間に延設されているのであるから、接続部材は光軸方向に延設されているのが通常であるが、光学レンズを互いに接続できれば良いのであり、必ずしも直線的に光軸方向に延設されている必要はない。従って、光学レンズを互いに接続する機能を害さない限度において、光軸方向に対して傾いた方向に延設されていても、延設方向が屈曲していても、複数の光学レンズ間に延設されているといえる。
【0020】
本発明にかかるレンズモジュールは、前記複数の光学レンズは、前記複数の光学レンズの光軸方向における物側および像側に開口する貫通孔、または、物側および像側のいずれか一方に開口する有底孔を有していることが好ましい。また、前記貫通孔または前記有底孔内に配置されている接続部材により接続されることにより、前記複数の光学レンズおよび前記遮光板が一体化されてレンズ積層体を形成していることが好ましい。
【0021】
上記構成によると、複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと遮光板との間に延設された接続部材により接続されることにより一体化されてレンズ積層体を形成しているため、複数の光学レンズと遮光板とを接続部材により容易に一体化できる。
【0022】
また、貫通孔または前記有底孔内に配置されている接続部材により接続されるため、複数の光学レンズおよび遮光板の各々が接する面に接着剤を塗布したり、複数の光学レンズ自身に加工を施したりする必要がない。
【0023】
更に、貫通孔または前記有底孔内に配置されている接続部材により一体化されてレンズ積層体を形成しているため、接続部材を、光学レンズの外縁部に配置する必要がない。従って、レンズ積層体を径方向に小型化することができうる。
【0024】
また、接続部材は、複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと遮光板との間に延設されているのであるから、接続部材は光軸方向に延設されているのが通常であるが、光学レンズを互いに接続できれば良いのであり、必ずしも直線的に光軸方向に延設されている必要はない。従って、光学レンズを互いに接続する機能を害さない限度において、光軸方向に対して傾いた方向に延設されていても、延設方向が屈曲していても、最も像側の光学レンズと遮光板との間に延設されているといえる。
【0025】
本発明にかかるレンズモジュールは、光量を調整するための開口絞りが、前記複数の光学レンズのうちいずれか2つのレンズの間に備えられ、前記接続部材は前記開口絞りにより分断された態様で、前記貫通孔または前記有底孔内に配置されていることが好ましい。
【0026】
上記構成によると、接続部材は開口絞りにより分断された態様で、貫通孔または有底孔内に配置されているため、開口絞りに貫通孔または有底孔を設ける必要がない。従って、開口絞りに貫通孔または有底孔を設ける加工が困難な場合であっても、接続部材によって光学レンズおよび遮光板を一体化することができる。
【0027】
本発明にかかるレンズモジュールは、前記接続部材が、複数備えられており、前記複数の前記接続部材の各々が、光軸に対して周方向において等間隔に配置されていることが好ましい。
【0028】
上記構成によると、接続部材が、複数備えられているため複数の光学レンズの各々を接続部材によって接続するとともに複数の光学レンズを一体化することが一層確実にできる。従って、レンズ積層体を一層容易に形成することができる。また、複数の接続部材の各々が、光軸に対して周方向において等間隔に配置されているため、接続箇所も周方向において等間隔に形成されることとなり、各接続箇所にかかる応力バランスが良好となる。
【0029】
本発明にかかる撮影装置は、上記レンズモジュールを備えた撮影装置である。上述のレンズモジュールは筐体の精度にかかわらず各光学レンズの光軸を合わせることが可能なレンズモジュールであるため、安価かつ小型のレンズモジュールとすることが容易であって、筐体を用いる必要もない。従って特に安価に製造する必要がある小型の撮影装置に好適に用いることができる。
【0030】
なお、本明細書における撮影装置とは、レンズモジュールに入射された光線を静止画および動画として記録媒体に記録する装置、ディスプレイ等の表示装置に表示する装置であって、いわゆるカメラやビデオカメラを含む概念である。
【0031】
本発明にかかるレンズモジュールの製造方法は、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で複数の光学レンズ、および該複数の光学レンズのうち最も物側の光学レンズの物側に配設され不要な光が入射されることを防止するための遮光板を挿入することにより、前記複数の光学レンズおよび前記遮光板の光軸を一致させる光軸合せ工程を有する。また、前記光軸合せされた前記複数の光学レンズと前記遮光板とを光軸方向に延設された接続部材を介して接続するとともに一体化する一体化工程を有する。更に、一体化された前記複数の光学レンズと前記遮光板との径方向の外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有する。
【0032】
上記構成によると、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で複数の光学レンズ、および該複数の光学レンズのうち最も物側の光学レンズの物側に配設され不要な光が入射されることを防止するための遮光板を挿入することにより、複数の光学レンズおよび遮光板の光軸を一致させる光軸合せ工程を有する。従って、筐体の精度にかかわらず各光学レンズの光軸を合わせることが可能となる。また、光軸合せ冶具は最終製品ではなく何度も使用することができるため、光軸合せ冶具の工作精度を向上させても大きなコストアップとなることはない。
【0033】
また、光軸合せされた複数の光学レンズと遮光板とを光軸方向に延設された接続部材を介して接続するとともに一体化する一体化工程を有するため、複数の光学レンズと遮光板とは光軸合せされた状態で一体化される。また、一体化された複数の光学レンズと遮光板との径方向の外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有するため、光軸合せされた状態を保ったまま径方向の面が遮光される。従って、製造されたレンズモジュールは、別段の筐体を設けなくても径方向からの不要光の入射を防止できるレンズモジュールとなる。
【0034】
本発明にかかるレンズモジュールの製造方法は、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で、前記複数の光学レンズのうち少なくとも1つの光学レンズと前記遮光板とを挿入することにより、該光学レンズおよび該遮光板の光軸を一致させ、次いで、光軸を一致させた該光学レンズおよび該遮光板を、該光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させる第1工程を有する。また、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で前記複数の光学レンズのうち一体化されている光学レンズを除く少なくとも1つの他の光学レンズを更に挿入することにより、一体化されている前記遮光板および前記光学レンズの光軸と挿入された光学レンズの光軸とを一致させ、次いで、一体化されている前記遮光板および前記光学レンズと挿入された前記他の光学レンズとを、該他の光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させる第2工程を有する。更に、前記第1工程および1回以上行われる前記第2工程によって一体化された前記複数の光学レンズと前記遮光板との径方向における外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有する。
【0035】
上記構成によると、第1工程において、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で、複数の光学レンズのうち少なくとも1つの光学レンズと遮光板とを挿入することにより、光学レンズおよび遮光板の光軸を一致させるため、筐体の精度にかかわらず光学レンズと遮光板との光軸を一致させることが可能となる。また、同工程において、光軸を一致させた光学レンズおよび遮光板を該光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させるため、光学レンズと遮光板との光軸が筐体等の影響により光軸が再びずれることを防止できる。
【0036】
また、上記構成によると、第2工程において、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で前記複数の光学レンズのうち一体化されている光学レンズを除く少なくとも1つの他の光学レンズを更に挿入することにより、一体化されている前記遮光板および前記光学レンズの光軸と挿入された光学レンズの光軸とを一致させる。従って、既に遮光板および遮光板と一体化されている光学レンズの光軸と、他の光学レンズとの光軸を一致させることが可能となる。また、同工程において、一体化されている遮光板および光学レンズと挿入された他の光学レンズとを該他の光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させる。従って、一体化されている遮光板および光学レンズの光軸と挿入された他の光学レンズの光軸とが、筐体等の影響により光軸が再びずれることを防止できる。なお、光軸合せ冶具は最終製品ではなく何度も使用することができるため、光軸合せ冶具の工作精度を向上させても大きなコストアップとなることはない。
【0037】
更に、第1工程および1回以上行われる第2工程によって一体化された複数の光学レンズと遮光板との径方向における外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有するため、光軸合せされた状態を保ったまま径方向の面が遮光される。従って、製造されたレンズモジュールは、別段の筐体を設けなくても径方向からの不要光の入射を防止できるレンズモジュールとなる。
【0038】
なお、第2工程は1回以上行われる。即ち、必要があれば、第2工程は複数回行われるのであって、その回数については、光学レンズの枚数や構成、絞り等の他の部材等を考慮して、製造にかかる時間やコストに鑑み合目的的に決定すればよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、筐体または遮光層の精度にかかわらず、各光学レンズの光軸と物側の遮光板の光軸とを合わすことができるレンズモジュール、該レンズモジュールを備えた撮影装置、及びレンズモジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、携帯電話の閉じた状態を示す模式図である。
【図2】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、携帯電話の開いた状態を示す模式図であるとともに、(a)は内面を示す斜視図であり、(b)は背面を示す斜視図である。
【図3】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、カメラモジュールの構成を示す断面図である。
【図4】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、(a)はレンズモジュールの軸方向断面図であり、(b)はレンズモジュールを物側から見た図である。
【図5】本発明にかかるレンズモジュールの製造方法の一実施形態について説明する図面であって、(a)は光軸合せ工程を示す斜視断面図であり、(b)は一体化工程を示す斜視断面図であり、(c)は一体化工程を示す平面図である。
【図6】本発明にかかるレンズモジュールの製造方法の一実施形態について説明する図面であって、(a)は治具より取り出されたレンズモジュールを示す軸方向断面図であり、(b)は被覆されたレンズモジュールを示す軸方向断面図である。
【図7】本発明にかかる撮影装置の第2の実施形態について説明する図面であって、(a)はレンズモジュールの軸方向断面図であり、(b)はレンズモジュールを物側から見た図であり、(c)は(a)の部分拡大図である。
【図8】本発明にかかる撮影装置の第2の実施形態の変形例について説明する図面であって、(a)は遮光板に貫通孔を設けたレンズモジュールの軸方向断面図であり、(b)は遮光板に有底孔を設けたレンズモジュールの軸方向断面図である。
【図9】従来のカメラモジュールについて説明する図面であって、カメラモジュールの構成を示す断面図である。
【図10】従来のカメラモジュールについて説明する図面であって、レンズモジュールの断面図である。
【図11】従来のレンズモジュールの問題点について説明する図面であって、(a)は筐体の歪の影響による光軸のずれが小さい場合を示す平面図であり、(b)は筐体の歪の影響による光軸のずれが大きい場合を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した撮影装置の一実施形態である携帯電話を図面を用いて説明する。図1に示すように、係る撮影装置はヒンジHを中心に折り畳む構成の携帯電話である。図1は折り畳んだ状態を示す図であり前面にはカメラモジュールの一部であるカバーガラス9が露出している。図2(a)は、この携帯電話を開いて表示部81、操作部82を前面にした図である。図2(b)は、開いた携帯電話を背面から見た図である。撮影者は、このように携帯電話を開いた状態でカバーガラス9を撮影したい対象に向けて、表示部81で画像を確認しつつ、操作部82を操作することによりシャッターを切り、対象物を撮影することができる。
【0042】
次に、図3に示すように、カメラモジュール1は、レンズモジュールに入射した光を基板31上に設けられた光学素子3上に結像させ、記録する構造となっている。一例を説明する。基板31上にはCCDイメージセンサあるいはCMOSイメージセンサからなる光学素子3が固定され、配線35により基板31に電気的に接続されている。この光学素子3は同じく基板31に固定されたカバー40により覆われることにより保護されている。このカバー40は大径の有蓋筒型の下部41と小径の筒型の上部42を組み合わせた形状であるとともに蓋部43中央の上部との接合部分は貫通孔44となっている。この貫通孔44を覆うように、蓋部43の内側にカバーガラス2が固定されている。また、小径の筒型の上部42の内周面にレンズモジュール13の外周面13aが接する態様でレンズモジュール13を固定できるようになっている。
【0043】
このカメラモジュール1は携帯電話本体に内蔵されたマイコン5と通信可能に接続されているとともに、同マイコン5は操作部82からの信号を受信できる態様で操作部82と接続されている。撮影者が操作部82を操作し、撮影命令がマイコン5に届くと、マイコン5は、光学素子3に結像した画像の情報を、配線35および基板31を介して入手し、必要なシャッター速度等を算出した上で、シャッターを切り、撮影する。
【0044】
図4(a)および(b)に示すように、レンズモジュール13は複数の光学レンズ11a〜11cと、不要な光が入射されることを防止するための物側の遮光板12aとを備えている。この複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aが光軸を一致させた状態で積層されるとともに、物側の遮光板12aが最も物側の光学レンズ11cの物側面に接する態様で、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aが一体化されてレンズ積層体11を形成している。
【0045】
ここで、光学レンズ11a〜11cは各々光学的機能を有するレンズ本体11a1〜11c1と、その周辺に形成されたコバ11a2〜11c2を有している。このコバ11a2〜11c2同士が互いに接するように積層されることにより、レンズ本体11a1〜11c1間の光軸方向の距離が規定されている。また、光軸方向の距離は必要に応じてスペーサを光学レンズ間に介在させることにより調整することもできる。例えば上述のように、光学レンズ11aと光学レンズ11bの間にスペーサ15が介在している。開口絞り14としては光学レンズ11a〜11cと同一の径を有する円盤状に形成されるとともに中心部に必要な径の貫通孔を設けた樹脂フィルムが、用いられている。この樹脂フィルムにはカーボン等の黒色物質が練り込まれているため、貫通孔を除いて光を遮断することができ、絞りとして機能する。この開口絞り14は光学レンズ11bと光学レンズ11cとの間に一体的に挟みこまれている。
【0046】
更に、最も物側の光学レンズ11cの物側面に接する態様で物側の遮光板12aが備えられており、最も像側の光学レンズ11aの像側面に接する態様で像側の遮光板12bが備えられている。物側の遮光板12aはレンズモジュール13内に不要な光線が入射し、内部反射により、フレアやゴースト等を発生させることを防止するために設けられる部材であり、物側面にはレンズモジュール13の画角に応じた傾斜部が設けられている。一方、像側の遮光板12bはレンズモジュール13内に生じた不要な反射光が光学素子3に達し、フレアやゴースト等を発生させることを防止するために設けられる部材であり、像側面にはレンズモジュール13の主光線入射角度に応じた傾斜部が設けられている。複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの他に、上述の像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15が一体化されてレンズ積層体11が形成されている。具体的には、複数の光学レンズ11a〜11cの各々の外縁部および遮光板の外縁部11a5〜11c5に接するように接続部材16が配置されている。複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12a、像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15は、この接続部材16により一体化されて、レンズ積層体11を形成している。また、レンズ積層体11の径方向の外周面には光を遮断するための遮光層12が形成されている。
【0047】
図4(b)に示すように、この接続部材16は、複数備えられており、各々光軸に対して周方向において等間隔に配置されている。接続部材16が複数あるため、単数の場合に比べて、同一接触面積であっても複数の光学レンズ11a〜11c等を確実に一体化できる。また、周方向において等間隔に配置されているため、複数の接続部材16のうち1つあたりにかかる応力も略均等に分散されるため、構造上の弱点が生じにくいと考えられる。
【0048】
このレンズモジュール13の製造方法を以下に説明する。図5(a)に示すように、略円筒形の光軸合せ冶具20を用意する。光軸合せ冶具20の内径は製造するレンズモジュール13に用いる物側の遮光板12a、光学レンズ11a〜11c、像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15の径と正確に一致している。また、光軸合せ冶具20の内周面には光軸方向に延設された凹溝21が3つ形成されている。光軸合せ冶具20の製造方法は特に限定されないが、略円筒形であるため、例えば、市販の円筒形金属部材を研削および研磨することにより作成しても良い。冶具であるため高精度を要求され、作成にコストがかかった場合であっても、繰り返し使用することができるため、最終製品1個当たりのコストは小さく抑えることができる。また、光軸方向から見た光軸合せ冶具20の内周面の形状や、光軸方向から見た物側の遮光板12a、光学レンズ11a〜11c、像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15の形状は必ずしも円形とする必要はなく、光軸合わせが可能であるならば他の形状とすることも可能である。
【0049】
光軸合せ冶具20の内周面に、光学レンズ11a〜11cの外縁部11a5〜11c5や像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15、物側の遮光板12aの外縁部が接触する態様で、物側の遮光板12a、光学レンズ11c、開口絞り14、光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11a、像側の遮光板12bを順に挿入する。この工程が、複数の光学レンズ11a〜11cの光軸を同一方向に合わせる光軸合せ工程である。光軸合せ冶具20の内径は光学レンズ11a〜11cや物側の遮光板12a等の径と正確に一致しているため、光学レンズ11a〜11cや物側の遮光板12a等が各々正確に作成され、光軸が中心部にあれば、光軸が互いにずれることがなく、図5(a)中に1点鎖線で示したように、全体として一致した光軸を有することとなる。
【0050】
次に、図5(b)中に矢印にて示したように、像側より凹溝21に沿って光軸方向に接着剤が挿入される。この接着剤が固化することにより接続部材16となる。つまり接続部材16は接着剤により形成される。このように接着剤が光学レンズ11a〜11cの外縁部11a5〜11c5を接着するとともに固化することにより、光学レンズ11a〜11cは光軸合せされた状態を保ったまま、互いに接続されるとともに一体化される。この工程が一体化工程である。図5(c)に示すように、凹溝21は周方向において等間隔に設けられているため、接続部材16も周方向において等間隔に設けることができる。
【0051】
図6(a)に示すように、接着剤が完全に固化するとともに物側の遮光板12a、光学レンズ11c、開口絞り14、光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11a、像側の遮光板12bが一体化した後、光軸合せ冶具20から像側に抜き出すと、レンズ積層体11が形成されている。光軸合せ冶具20から抜き出されたレンズ積層体11の径方向の外周面に、図6(b)に示すように、光を遮断するための遮光層12を形成する。この工程が遮光層形成工程である。遮光層12の形成方法は特に限定されないが、例えば、遮光性の塗料を塗布しても良いし、遮光性膜を蒸着により形成しても良い。なお、接続部材16が遮光性を有していない場合には、遮光層12は接続部材16表面を含めて形成する。接続部材16が遮光性を有している場合は、遮光層12は接続部材16表面を含めて形成しても、接続部材16表面を避けて形成しても、いずれでも良い。
【0052】
かかる一連の工程により、物側の遮光板12aの光軸および複数の光学レンズ11a〜11cの光軸が一致するとともに、径方向に小型化されたレンズモジュール13が製造される。
【0053】
本実施形態によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(1)本実施形態において、複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bが光軸を一致させた状態で積層される。また、物側の遮光板12aが最も物側の光学レンズ11cの物側面に接する態様で、複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bが一体化されてレンズ積層体11を形成している。従って、筐体の形状に影響されて、複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bの光軸がずれることが抑制される。
【0054】
(2)本実施形態において、レンズ積層体11の径方向の外周面に遮光層12が設けられているため、レンズ積層体11の径方向からの光の入射を防止することができる。従って、側方からの光の入射を防止するための別段の筐体などを必要としないため、レンズモジュール13を従来に比して径方向に小型化することができる。
【0055】
(3)本実施形態において、複数の光学レンズ11a〜11cのうち最も像側の光学レンズ11aと物側の遮光板12aとの間に延設された接続部材16により接続されることにより一体化されてレンズ積層体11を形成しているため、複数の光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとを接続部材16により容易に一体化できる。また、接続部材16は複数の光学レンズ11a〜11cの各々の外縁部11a5〜11c5および物側の遮光板12aの外縁部に接するように配置されているため、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの各々が接する面に接着剤を塗布したり、複数の光学レンズ11a〜11c自身に加工を施したりする必要がない。
【0056】
(4)本実施形態において、接続部材16が、複数備えられているため複数の光学レンズ11a〜11cの各々を接続部材16によって接続するとともに複数の光学レンズ11a〜11cを一体化することが一層確実にできる。従って、レンズ積層体11を一層容易に形成することができる。また、複数の接続部材16の各々が、光軸に対して周方向において等間隔に配置されているため、接続箇所も周方向において等間隔に形成されることとなり、各接続箇所にかかる応力バランスが良好となる。
【0057】
(5)本実施形態において、撮影装置である携帯電話は、上記レンズモジュール13を備えている。レンズモジュール13は筐体の精度にかかわらず複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bの光軸を合わせることが可能なレンズモジュールであるため、安価かつ小型のレンズモジュールとすることが容易であって、筐体の制限もない。従って特に安価に製造する必要がある携帯電話等に搭載する小型の撮影装置に好適に用いることができる。
【0058】
(6)本実施形態にかかるレンズモジュール13の製造方法によると、略円筒形の光軸合せ冶具20の内周面に外縁部11a5〜11c5が接触する態様で複数の光学レンズ11a〜11c、および物側の遮光板12aを挿入することにより、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの光軸を一致させる光軸合せ工程を有する。そのため、筐体の精度にかかわらず各光学レンズの光軸を合わせることが可能となる。また、光軸合せ冶具20は最終製品ではなく何度も使用することができるため、光軸合せ冶具20の工作精度を向上させても大きなコストアップとなることはない。
【0059】
(7)また、光軸合せされた複数の光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとを、光軸方向に延設された接続部材16を介して互いに接続するとともに一体化する一体化工程を有するため、光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとは光軸合せされた状態で一体化される。また、一体化された複数の光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとの径方向の外周面に、光を遮断するための遮光層12を形成する遮光層形成工程とを有するため、光軸合せされた状態を保ったまま径方向の面が遮光される。従って、製造されたレンズモジュールは、別段の筐体を設けなくても径方向からの不要光の入射を防止できるレンズモジュールとなる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した撮影装置の第2の実施形態である携帯電話を図7(a)〜(c)にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態のレンズモジュール13の構造および製造方法を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0061】
第2の実施形態においても、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの他に、上述の像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15が一体化されてレンズ積層体11が形成されている。具体的には、複数の光学レンズ11a〜11cは、複数の光学レンズ11a〜11cの各々の物側および像側に開口する貫通孔11hを有している。この貫通孔11h内に配置されている接続部材16により接続されることにより、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aが一体化されてレンズ積層体11が形成されている。また、開口絞り14が、光学レンズ11bと光学レンズ11cとの間に備えられ、接続部材16は開口絞り14により分断された態様で、貫通孔11h内に配置されている。
【0062】
より具体的には、図7(a)および(b)に示すように、光学レンズ11aのコバ11a2には光軸方向に貫通する貫通孔11hを有している。この貫通孔11hは、図7(a)に示すように、光学レンズ11bのコバ11b2、光学レンズ11cのコバ11c2、スペーサ15も有しており、光学レンズ11a〜11cが積層された状態において、貫通孔11hは光軸に平行な直線17上に並んでいる。
【0063】
ところで貫通孔11hは開口絞り14には設けられていない。その為、特に図7(c)に明確に示されているように、接続部材16は開口絞り14により分断された態様で、貫通孔11h内に配置されている。即ち、接続部材16は第1接続部材16aと第2接続部材16bとからなる。第1接続部材16aは物側の遮光板12a、光学レンズ11cおよび開口絞り14を接続しており、第2接続部材16bは開口絞り14、光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11aおよび像側の遮光板12bを接続している。従って、第1接続部材16aと第2接続部材16bとは開口絞り14を介して全体として、物側の遮光板12a、光学レンズ11a〜11cおよび開口絞り14を接続しており、これら全ての部材によりレンズ積層体11が形成されている。
【0064】
このレンズモジュール13の製造方法を以下に説明する。なお、基本的には第1の実施形態と同様であるので、異なる部分のみ詳説する。また、図5および図6も併せて参酌されたい。
【0065】
第2の実施形態においても、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの光軸を一致させる光軸合せ工程と、光軸合せされた複数の光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとを光軸方向に延設された接続部材16を介して接続するとともに一体化する一体化工程とが行われる。但し、光軸合せ工程が終了した後に一体化工程が行われるのではなく、両者が一部並行して行われる。
【0066】
第1の実施形態と同様、図5(a)に参酌されるような、略円筒形の光軸合せ冶具20を用意するのであるが、光軸合せ冶具20に凹溝21は設けられていない。物側の遮光板12aおよび光学レンズ11cを、各々の外縁部がこの光軸合せ冶具20の内周面に接触する態様で、順に挿入する。この工程により物側の遮光板12aの光軸と光学レンズ11cの光軸とが一致させられる。次に光学レンズ11cのコバ11c2に設けられた貫通孔11h内に接着剤を流し込み、更に開口絞り14を挿入する。この接着剤が硬化することにより、光軸方向に延設された第1接続部材16aが形成され、この第1接続部材16aを介して、光軸を一致させた光学レンズ11cおよび物側の遮光板12aが、接続されるとともに一体化される。この工程を第1工程とする。ここで、物側の遮光板12aおよび開口絞り14には貫通孔11hが設けられていないが、接着剤が固化して光軸方向に延設された第1接続部材16aを形成することにより、光学レンズ11cと一体化される。同様に、既に遮光板12aと一体化されている光学レンズ11cに対する他の光学レンズである光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11aを順次挿入積載し、積層中間体の光軸と一致させ、それぞれに設けられた貫通孔11hに接着剤を流し込んだ後に、像側の遮光板12bを挿入する。この接着剤が硬化することにより、光軸方向に延設された第2接続部材16bが形成され、この第2接続部材16bを介して、既に一体化されている遮光板12aおよび光学レンズ11cと、光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11aとが、接続されるとともに一体化される。この工程を第2工程とする。ここで、開口絞り14および遮光板12bには貫通孔11hが設けられていないが、接着剤が固化して接続部材16を形成することにより、開口絞り14、光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11a、遮光板12bが一体化される。つまり、接続部材16は開口絞り14により第1接続部材16aと第2接続部材16bとに分断されているが、この接続部材16を介して、物側の遮光板12aから像側の遮光板12bが一体化され、レンズ積層体11が形成される。このレンズ積層体11を光軸合せ冶具20から像側に抜き出すと、図7(a)に参酌されるような状態となる。このように、第2の実施形態においては、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの光軸を一致させる光軸合せ工程と、光軸合せされた複数の光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとを光軸方向に延設された接続部材16を介して接続するとともに一体化する一体化工程とが並行して行われる。
【0067】
図6(a)に参酌されるように、光軸合せ冶具20からレンズ積層体11を取り出した後、図6(b)に参酌されるように、レンズ積層体11の径方向の外周面に、光を遮断するための遮光層12を形成する。この工程が遮光層形成工程である。遮光層12の形成方法は特に限定されないが、例えば、遮光性の塗料を塗布しても良いし、遮光性膜を蒸着により形成しても良い。この製造方法によれば、図5(a)に示した、光軸合せ冶具20に凹溝21を設ける必要がなく、光軸合せ冶具20の構造を単純化できる。
【0068】
なお、貫通孔11hは複数の光学レンズ11a〜11cおよびスペーサ15の各々に予め設けておき、光軸方向に平行な直線状に貫通孔11hが並ぶように複数の光学レンズ11a〜11cを積層しても良いし、光学レンズ11a〜11cやスペーサ15を積層した後、接着剤を流し込む前に逐次形成しても良い。
【0069】
かかる第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様に(1)〜(7)の効果を奏することができる。また加えて以下に示す(8),(9)の効果も有する。
(8)第2の実施例において、貫通孔11h内に配置されている接続部材16により接続されることにより、複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bが一体化されてレンズ積層体11を形成している。従って、接続部材16を、光学レンズ11a〜11cの外縁部11a5〜11c5に配置する必要がない。従って、レンズ積層体11を径方向に一層小型化することができる。
【0070】
(9)第2の実施例において、接続部材16は開口絞り14により分断された態様で、貫通孔11h内に配置されているため、開口絞り14に貫通孔11hを設ける必要がない。従って、開口絞り14に貫通孔11hを設ける加工が困難な場合であっても、接続部材16によって光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bを一体化することができる。
【0071】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・第2の実施形態において、物側の遮光板12a、像側の遮光板12b、開口絞り14には貫通孔11hを設けていないが、他の構成であっても良い。貫通孔11hを設ける加工が困難でなければ、少なくともいずれか1つに貫通孔11hを設けても良い。例えば、図8(a)に示すように、物側の遮光板12a、像側の遮光板12b、開口絞り14の全てに貫通孔11hを設ければ、光軸合わせ工程終了後に一体化工程を行うことができるため、製造過程を簡略化することができる。
【0072】
・第2の実施形態において、物側の遮光板12a、像側の遮光板12b、開口絞り14には貫通孔11hを設けていないが、他の構成であっても良い。加工が困難でなければ、少なくともいずれか1つに貫通孔11hまたは有底孔12hを設けても良い。例えば、図8(b)に示すように、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bに有底孔12hを設けるとともに、開口絞り14に貫通孔11hを設ければ、これらの有底孔12hおよび貫通孔11hを設けない場合に比して、接続部材16による接着を強固にすることができる。
【0073】
・第2の実施形態において、スペーサ15には貫通孔11hが設けられているが、他の構成であっても良い。例えば、スペーサ15に貫通孔11hを設けることが困難であれば、開口絞り14と同様に貫通孔11hを設けない構成とし、接続部材16がスペーサ15により分断された態様で、貫通孔11h内に配置されていても良い。
【0074】
・第2の実施形態において、第2工程は1度だけ行われているが、他の構成であっても良い。例えば、光学レンズを多く使用する場合や開口絞りを複数使用する場合には、第2工程を複数回行っても良い。工程数は増加するが、開口絞りに接着剤を挿入するための貫通孔11hを設ける必要がなく、コストダウンとなりうる。
【0075】
・上記実施形態において、レンズ積層体11の径方向の外周面に光を遮断するための遮光層12を形成するために、遮光性の塗料を塗布することや、遮光性膜を蒸着することが例示されているが他の構成であっても良い。要はレンズ積層体11の径方向の外周面を遮光できるとともに、遮光層の厚みを小さくできればよいのであるから、例えば、遮光性のフィルムをレンズ積層体11の径方向の外周面に捲きつける、遮光性の樹脂をモールドするなど、他の公知の方法により遮光層12を形成しても良い。
【0076】
・上記実施形態において、カバー40の小径の筒型の上部42の内周面にレンズモジュール13の外周面13aが接する態様でレンズモジュール13を固定しているが他の構成であっても良い。径方向の小型化が不要な場合は、従来の樹脂製や金属性の筐体内にレンズ積層体11を挿入して筐体を有する一般的なレンズモジュールとしてレンズモジュール13を構成しても良い。レンズモジュール13の強度を大きくすることができる。またかかる場合であっても、物側の遮光板12a、像側の遮光板12bを含めて光学レンズ11a〜11cが一体化されているため、筐体の精度に関わらず、光学レンズ11a〜11cの光軸と物側の遮光板12a、像側の遮光板12bの光軸とを一致させることができるレンズモジュールとなる。またその場合、必ずしも筐体は独立した部材で形成されている必要はなく、他の部材と一体的に構成されていても良い。例えば、図2に示す携帯電話の枠体88と一体的に筐体が形成されていても良い。かかる構成によれば、部品点数を減少させることができるため、コストダウンに資する。
【0077】
・上記実施形態において、レンズ積層体11は複数の光学レンズ11a〜11c、スペーサ15、開口絞り14、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bを備えているが、他の構成であっても良い。例えば、コバ11a2〜11c2の厚みのみで光学レンズ間の光軸方向距離の調整が可能であれば、スペーサ15は不要であるし、光学レンズの数も必要に応じて変化しても良い。また、物側の遮光板12aや開口絞り14によって不要な光線が十分に遮断されるのであれば、像側の遮光板12bも備えなくても良い。
【0078】
・上記実施形態において、接続部材16は3箇所に構成されているが、他の構成であっても良い。各光学レンズの径方向の移動を止める意味では3箇所以上設けるのが良いが、接着強度が十分であり、物側の遮光板12aおよび光学レンズ11a〜11cを一体化する目的を果たすのであれば、1箇所または2箇所に設けても良い。また、3箇所で不十分であれば、4箇所以上設けても良い。
【0079】
・第1の実施形態において、接続部材16は接着剤を固化することにより構成しているが、他の構成であっても良い。物側の遮光板12aおよび光学レンズ11a〜11cを一体化できれば良いのであるから、例えば、始めから外縁部11a5〜11c5に対応する面に接着性を有する棒状の部材で接続部材16を構成し、外縁部11a5〜11c5に接着しても良い。
【0080】
・第2の実施形態において、接続部材16は接着剤を固化することにより構成しているが、他の構成であっても良い。物側の遮光板12aおよび光学レンズ11a〜11cを一体化できれば良いのであるから、例えば、外周面に接着性を有する棒状の部材で接続部材16を構成し、貫通孔11h内に配置することにより接着し、物側の遮光板12aおよび光学レンズ11a〜11cを一体化しても良い。
【0081】
・上記実施形態において、接続部材16は光軸方向に延設されているのであるが、光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aを互いに接続できれば良いのであり、必ずしも直線的に光軸方向に延設されている必要はない。光学レンズ11a〜11cを互いに接続する機能を害さない限度において、例えば、光軸方向に対して傾いた方向に延設されている場合や、延設方向が屈曲していても良い。
【0082】
・第2の実施形態において、光学レンズ11a〜11cの各々は、光軸に平行な同一直線17上に、光軸方向に貫通する貫通孔11hを有しており、接続部材16は貫通孔11h内において、前記直線方向に挿入された接着剤により形成されているが、他の構成であっても良い。上述のように、接続部材16は光軸方向に延設されているのであるが、光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aを互いに接続できれば良いのであり、必ずしも直線的に光軸方向に延設されている必要はない。光学レンズ11a〜11cを互いに接続する機能を害さない限度において、例えば、光軸方向に対して傾いた方向に延設されている場合や、延設方向が屈曲していても良い。従って、各光学レンズの貫通孔11hについても互に連絡していれば良いのであって、光軸に平行な同一直線17上に正確に設けられていなくても良い。
【0083】
・上記実施形態において、光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aは接続部材16によって互いに接続されているのであるが、他の構成であっても良い。例えば、コバ11a2〜11c2を互いに接着することにより光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aが接続され、レンズ積層体11を形成しても良い。
【0084】
・また、光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aはレーザー光線による融着により接続されていても良い。例えば、互いに隣り合う2つの光学レンズの当接部の外周部にレーザー光を照射して光学レンズ同士を融着させることによっても行っても良い。この方法によれば、接着部材が不要となるため、コストダウンとなりうる。
【0085】
・上記実施形態において、遮光層12は遮光板12aの径方向における外周面から遮光板12bの径方向における外周面にいたって形成されている。即ち、図3において遮光板12bの像側面12bsには遮光層12を設けていない。係る構成にすることによりレンズユニットの光軸方向における長さを小さくすることができる。また、遮光板12bを設けていないレンズユニットであっても、最も像側の光学レンズの像側面には遮光層を設けないのが好ましい。また、他の構成でも良い。光学レンズ11a〜11cの径方向における外周面にのみ遮光層12を形成しても良い。遮光板12a自身は光を透過しないため、側面に遮光層12を設ける構成は必須ではない。いずれの構成であっても、光軸方向に小型化することができる。
【0086】
・上記実施形態において、カメラモジュール1は固定焦点式のものを例示したが、他の構成であっても良い。レンズ移動装置や焦点位置測定装置等を備え、自動焦点方式(オートフォーカス)としても良い。
【0087】
・上記実施形態において、蓋部43の内側にカバーガラス2が固定されているが、他の構成であっても良い。例えば、赤外線フィルタ等の光学フィルタに換えても良いし、カバーガラスに加えて光学フィルタを用いても良い。
【0088】
・上記実施形態においてレンズモジュール13は、カメラモジュール1に搭載したが、他の構成であっても良い。例えば、望遠鏡、顕微鏡、双眼鏡等の他の光学機器に搭載しても良い。
【0089】
・上記実施形態においてカメラモジュール1は撮影装置としての携帯電話に搭載したが、他の構成であっても良い。コンパクトデジタルカメラ、デジタル一眼レフカメラに搭載しても良いし、銀塩写真用のカメラに搭載しても良い。また、動画撮影用のデジタルビデオカメラやフィルムカメラに搭載しても良い。
【符号の説明】
【0090】
1…カメラモジュール、2…カバーガラス、3…光学素子、5…マイコン、9…カバーガラス、11…レンズ積層体、11a…光学レンズ、11a1…レンズ本体、11a2…コバ、11a5…外縁部、11b…光学レンズ、11b1…レンズ本体、11b2…コバ、11b5…外縁部、11c…光学レンズ、11c1…レンズ本体、11c2…コバ、11c5…外縁部、11h…貫通孔、12…遮光層、12a…遮光板、12b…遮光板、12bs…遮光板12bの像側面、12h…有底孔、13…レンズモジュール、13a…外周面、14…開口絞り、15…スペーサ、16…接続部材、16a…第1接続部材、16b…第2接続部材、17…直線、20…光軸合せ冶具、21…凹溝、31…基板、35…配線、40…カバー、41…下部、42…上部、43…蓋部、44…貫通孔、81…表示部、82…操作部、88…枠体、101…カメラモジュール、102…カバーガラス、103…光学素子、111a…光学レンズ、1111a1…レンズ本体、111a2…コバ、111a3…切り欠け部、111a4…ゲート跡、111a5…外縁部、11b…光学レンズ、111b1…レンズ本体、111b2…コバ、111b5…外縁部、111c…光学レンズ、111c1…レンズ本体、111c2…コバ、111c5…外縁部、112…筐体、112a…外周面、112c…内周面、112b…底部(物側の遮光板)、112s…貫通孔、113…レンズモジュール、114…開口絞り、115…スペーサ、131…基板、135…配線、140…カバー、141…下部、142…上部、143…蓋部、144…貫通孔、H…ヒンジ、0b…光軸、0d…光軸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズモジュールに関し、特にレンズ積層体を備えたレンズモジュール、及び該レンズモジュールを備えた撮影装置に関する。また、光軸を一致させることが容易なレンズモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている撮影装置として、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサあるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを撮像素子として備えるデジタルカメラがある。この撮像素子の集積度の向上に伴い、コンパクトカメラや携帯電話に内蔵される小型のレンズモジュールであっても、画質の向上が求められている一方で、小型化の要請は当然に強い。更に、コンパクトカメラや携帯電話に内蔵される小型のレンズモジュールは、比較的安価に供給される商品であるため、製造コストを低く抑えることができる構成であることも重要となる。
【0003】
ここで、画質を向上させるためには、レンズモジュールを構成する複数の光学レンズの各々の光軸およびレンズモジュールの物側(以下、単に、「物側」とする。)や像側(以下、単に、「像側」とする。)に設けられている遮光板の光軸を正確に合わせることが重要となる。そこで複数のレンズ群を有する高精度に組み付けることが可能な鏡筒装置が提示されている(例えば、特許文献1、参照)。特許文献1には、「レンズ群間の芯精度がよく、高精度の鏡筒装置を提供することができる。(〔0078〕)」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−82272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明により、レンズ群間の光軸を合わせる精度(芯精度)が向上するとしても、レンズモジュールを構成する光学レンズそれぞれを個別に光軸合わせすることは困難である。またレンズモジュールの光軸方向において最も物側に設けられている遮光部については考慮されていない。
【0006】
特に樹脂の筐体を用いたレンズモジュールにおいて、筐体の精度には限界があり、光学レンズ間の光軸ずれが問題となっている。また、上記遮光板のうち特にレンズモジュールの物側に設けられている遮光部については筐体と一体的に形成されているため、同様に光学レンズとの光軸ずれが問題となっている。以下に具体的に説明する。
【0007】
図9に示すように、カメラモジュール101は、レンズモジュールに入射した光を基板131上に設けられた光学素子103上に結像させ、記録する構造となっている。一例を説明する。基板131上にはCCDイメージセンサあるいはCMOSイメージセンサからなる光学素子103が固定され、配線135により基板131に電気的に接続されている。この光学素子103は同じく基板131に固定されたカバー140により覆われることにより保護されている。このカバー140は大径の有蓋筒型の下部141と小径の筒型の上部142を組み合わせた形状であるとともに蓋部143中央の上部との接合部分は貫通孔144となっている。この貫通孔144を覆うように、蓋部143の内側にカバーガラス102が固定されている。また、小径の筒型の上部142の内周面には雌ねじが切られており、外周面112aに対応する雄ねじが切られたレンズモジュール113を固定できるようになっている。
【0008】
図10に示すように、レンズモジュール113は外周面112aに上述の雄ねじが切られた有底筒状の筐体112と、光学レンズ111a〜111cを備えている。具体的には、底部112bに貫通孔112sを有することにより物側の遮光部が形成された筐体112の内部に、略円盤状の光学レンズ111a〜111cおよび光学レンズ111aと光学レンズ11bの光軸方向の間隔を調節するための略円環状のスペーサ115が積層された構造をレンズモジュール113は有している。更に光軸方向において最も像側(以下、単に、「像側」とする。)の端部は像側の遮光板112dが固定されている。光学レンズ111a〜111cは各々光学的機能を有するレンズ本体111a1〜111c1と、その周辺に形成されたコバ111a2〜111c2を有している。このコバ111a2〜111c2同士が互いに接するように積層されることにより、111a1〜111c1同士の光軸方向の距離が規定されている。また、光軸方向の距離を必要に応じてスペーサを光学レンズ間に介在させることにより調整することもできる。例えば上述のように、光学レンズ111aと光学レンズ111bの間にスペーサ115が介在している。また、光学レンズ111bと光学レンズ111cとの間には開口絞り114が一体的に挟みこまれている。
【0009】
一方、径方向の位置は、コバ111a2〜111c2の外縁部111a5〜111c5を筐体112の内周面112cに接触させることにより規定されている。従って、筐体112の精度が不十分な場合、図10中に一点差線で示した光学レンズ毎の光軸が一致せず、光軸ずれが発生しうる。また、底部112bとして筐体112と一体的に形成されている物側の遮光部の光軸0bと、光学レンズ111a〜111cの光軸と、像側の遮光板112dの光軸0dとの光軸ずれが発生しうる。特に樹脂製の筐体112とプラスチック(樹脂)レンズの組み合わせにおいてこの問題は大きくなる。図11に示すように、樹脂製の筐体112においては、径方向に筐体112が撓み、光軸方向に垂直な断面の真円度が低下し、楕円形となることがある。一方、射出成型させたプラスチックレンズには、樹脂材料を射出するために必要となるゲート跡111a4がコバ111a2の外縁部111a5に残ることを防止するための切り欠け部111a3を形成する必要がある。図11(a)に示すように、筐体112断面の楕円形の長径方向にプラスチックレンズの切り欠け部111a3が位置した場合には、コバ111a2の外縁部111a5が楕円の短径部分に接触し、筐体112の撓みを修正するため光軸のずれは最小限となる。一方、図11(b)に示すように、筐体断面の楕円形の短径方向にプラスチックレンズの切り欠け部111a3が位置した場合には、短径部分にコバ111a2の外縁部111a5の一方が接触しないため筐体112の歪が修正されず、光軸のずれが最大となる。
【0010】
また、筐体112の微細な撓み方向を測定し、プラスチックレンズの切り欠け部111a3の向きを調整することは困難であるし、コストアップとなる。また、小型化の要請を鑑みると、筐体や光学レンズの径を大きくして精度を出すことも困難である。更に、製造コスト圧縮および軽量化の要請から小型のレンズモジュールにおいては樹脂製の筐体が主流となっており、高精度の筐体を用いることも困難である。また、物側の遮光部はレンズモジュール内に不要な光線が入射することを防止する上で、正確に光軸が一致していることが望まれている。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、筐体や遮光層の精度にかかわらず、各光学レンズの光軸と物側の遮光板の光軸とを合わすことができるレンズモジュール、該レンズモジュールを備えた撮影装置、及びレンズモジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるレンズモジュールは、複数の光学レンズと、不要な光が入射されることを防止するための遮光板とを備え、前記複数の光学レンズおよび前記遮光板が積層されるとともに一体化されてレンズ積層体を形成しており、前記遮光板と別体の遮光層が、前記レンズ積層体の径方向の外周面に更に設けられている。
【0013】
上記構成によると、複数の光学レンズおよび遮光板が積層されるとともに、一体化されてレンズ積層体を形成しているため、従来用いられてきた筐体の形状に影響されて各光学レンズおよび遮光板の光軸がずれることが抑制される。
【0014】
また、上記構成によると、レンズ積層体の径方向の外周面に遮光層が設けられているため、レンズ積層体の径方向の外周面からの光の入射を防止することができる。従って、径方向の外周面からの光の入射を防止するための別段の筐体などを必要としないため、レンズモジュールを従来に比して径方向に小型化することができる。
【0015】
なお、上述のレンズ積層体は、複数の光学レンズおよび前記遮光板が一体化されて形成されていれば良いのであり、他の部材、例えば、スペーサや開放絞りなどが併せて一体化された場合であっても、レンズ積層体の概念に含まれる。
【0016】
本発明にかかるレンズモジュールは、前記複数の光学レンズおよび前記遮光板は、該複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと該遮光板との間に延設された接続部材により接続されることにより一体化されてレンズ積層体を形成していることが好ましい。また、前記接続部材は前記複数の光学レンズの各々の外縁部および前記遮光板の外縁部に接するように配置されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によると、複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと遮光板との間に延設された接続部材により接続されることにより一体化されてレンズ積層体を形成しているため、複数の光学レンズと遮光板とを接続部材により容易に一体化できる。
【0018】
また、接続部材は複数の光学レンズの各々の外縁部および遮光板の外縁部に接するように配置されているため、複数の光学レンズおよび遮光板の各々が接する面に接着剤を塗布したり、複数の光学レンズ自身に加工を施したりする必要がない。
【0019】
なお、接続部材は、複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと遮光板との間に延設されているのであるから、接続部材は光軸方向に延設されているのが通常であるが、光学レンズを互いに接続できれば良いのであり、必ずしも直線的に光軸方向に延設されている必要はない。従って、光学レンズを互いに接続する機能を害さない限度において、光軸方向に対して傾いた方向に延設されていても、延設方向が屈曲していても、複数の光学レンズ間に延設されているといえる。
【0020】
本発明にかかるレンズモジュールは、前記複数の光学レンズは、前記複数の光学レンズの光軸方向における物側および像側に開口する貫通孔、または、物側および像側のいずれか一方に開口する有底孔を有していることが好ましい。また、前記貫通孔または前記有底孔内に配置されている接続部材により接続されることにより、前記複数の光学レンズおよび前記遮光板が一体化されてレンズ積層体を形成していることが好ましい。
【0021】
上記構成によると、複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと遮光板との間に延設された接続部材により接続されることにより一体化されてレンズ積層体を形成しているため、複数の光学レンズと遮光板とを接続部材により容易に一体化できる。
【0022】
また、貫通孔または前記有底孔内に配置されている接続部材により接続されるため、複数の光学レンズおよび遮光板の各々が接する面に接着剤を塗布したり、複数の光学レンズ自身に加工を施したりする必要がない。
【0023】
更に、貫通孔または前記有底孔内に配置されている接続部材により一体化されてレンズ積層体を形成しているため、接続部材を、光学レンズの外縁部に配置する必要がない。従って、レンズ積層体を径方向に小型化することができうる。
【0024】
また、接続部材は、複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと遮光板との間に延設されているのであるから、接続部材は光軸方向に延設されているのが通常であるが、光学レンズを互いに接続できれば良いのであり、必ずしも直線的に光軸方向に延設されている必要はない。従って、光学レンズを互いに接続する機能を害さない限度において、光軸方向に対して傾いた方向に延設されていても、延設方向が屈曲していても、最も像側の光学レンズと遮光板との間に延設されているといえる。
【0025】
本発明にかかるレンズモジュールは、光量を調整するための開口絞りが、前記複数の光学レンズのうちいずれか2つのレンズの間に備えられ、前記接続部材は前記開口絞りにより分断された態様で、前記貫通孔または前記有底孔内に配置されていることが好ましい。
【0026】
上記構成によると、接続部材は開口絞りにより分断された態様で、貫通孔または有底孔内に配置されているため、開口絞りに貫通孔または有底孔を設ける必要がない。従って、開口絞りに貫通孔または有底孔を設ける加工が困難な場合であっても、接続部材によって光学レンズおよび遮光板を一体化することができる。
【0027】
本発明にかかるレンズモジュールは、前記接続部材が、複数備えられており、前記複数の前記接続部材の各々が、光軸に対して周方向において等間隔に配置されていることが好ましい。
【0028】
上記構成によると、接続部材が、複数備えられているため複数の光学レンズの各々を接続部材によって接続するとともに複数の光学レンズを一体化することが一層確実にできる。従って、レンズ積層体を一層容易に形成することができる。また、複数の接続部材の各々が、光軸に対して周方向において等間隔に配置されているため、接続箇所も周方向において等間隔に形成されることとなり、各接続箇所にかかる応力バランスが良好となる。
【0029】
本発明にかかる撮影装置は、上記レンズモジュールを備えた撮影装置である。上述のレンズモジュールは筐体の精度にかかわらず各光学レンズの光軸を合わせることが可能なレンズモジュールであるため、安価かつ小型のレンズモジュールとすることが容易であって、筐体を用いる必要もない。従って特に安価に製造する必要がある小型の撮影装置に好適に用いることができる。
【0030】
なお、本明細書における撮影装置とは、レンズモジュールに入射された光線を静止画および動画として記録媒体に記録する装置、ディスプレイ等の表示装置に表示する装置であって、いわゆるカメラやビデオカメラを含む概念である。
【0031】
本発明にかかるレンズモジュールの製造方法は、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で複数の光学レンズ、および該複数の光学レンズのうち最も物側の光学レンズの物側に配設され不要な光が入射されることを防止するための遮光板を挿入することにより、前記複数の光学レンズおよび前記遮光板の光軸を一致させる光軸合せ工程を有する。また、前記光軸合せされた前記複数の光学レンズと前記遮光板とを光軸方向に延設された接続部材を介して接続するとともに一体化する一体化工程を有する。更に、一体化された前記複数の光学レンズと前記遮光板との径方向の外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有する。
【0032】
上記構成によると、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で複数の光学レンズ、および該複数の光学レンズのうち最も物側の光学レンズの物側に配設され不要な光が入射されることを防止するための遮光板を挿入することにより、複数の光学レンズおよび遮光板の光軸を一致させる光軸合せ工程を有する。従って、筐体の精度にかかわらず各光学レンズの光軸を合わせることが可能となる。また、光軸合せ冶具は最終製品ではなく何度も使用することができるため、光軸合せ冶具の工作精度を向上させても大きなコストアップとなることはない。
【0033】
また、光軸合せされた複数の光学レンズと遮光板とを光軸方向に延設された接続部材を介して接続するとともに一体化する一体化工程を有するため、複数の光学レンズと遮光板とは光軸合せされた状態で一体化される。また、一体化された複数の光学レンズと遮光板との径方向の外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有するため、光軸合せされた状態を保ったまま径方向の面が遮光される。従って、製造されたレンズモジュールは、別段の筐体を設けなくても径方向からの不要光の入射を防止できるレンズモジュールとなる。
【0034】
本発明にかかるレンズモジュールの製造方法は、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で、前記複数の光学レンズのうち少なくとも1つの光学レンズと前記遮光板とを挿入することにより、該光学レンズおよび該遮光板の光軸を一致させ、次いで、光軸を一致させた該光学レンズおよび該遮光板を、該光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させる第1工程を有する。また、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で前記複数の光学レンズのうち一体化されている光学レンズを除く少なくとも1つの他の光学レンズを更に挿入することにより、一体化されている前記遮光板および前記光学レンズの光軸と挿入された光学レンズの光軸とを一致させ、次いで、一体化されている前記遮光板および前記光学レンズと挿入された前記他の光学レンズとを、該他の光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させる第2工程を有する。更に、前記第1工程および1回以上行われる前記第2工程によって一体化された前記複数の光学レンズと前記遮光板との径方向における外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有する。
【0035】
上記構成によると、第1工程において、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で、複数の光学レンズのうち少なくとも1つの光学レンズと遮光板とを挿入することにより、光学レンズおよび遮光板の光軸を一致させるため、筐体の精度にかかわらず光学レンズと遮光板との光軸を一致させることが可能となる。また、同工程において、光軸を一致させた光学レンズおよび遮光板を該光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させるため、光学レンズと遮光板との光軸が筐体等の影響により光軸が再びずれることを防止できる。
【0036】
また、上記構成によると、第2工程において、光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で前記複数の光学レンズのうち一体化されている光学レンズを除く少なくとも1つの他の光学レンズを更に挿入することにより、一体化されている前記遮光板および前記光学レンズの光軸と挿入された光学レンズの光軸とを一致させる。従って、既に遮光板および遮光板と一体化されている光学レンズの光軸と、他の光学レンズとの光軸を一致させることが可能となる。また、同工程において、一体化されている遮光板および光学レンズと挿入された他の光学レンズとを該他の光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させる。従って、一体化されている遮光板および光学レンズの光軸と挿入された他の光学レンズの光軸とが、筐体等の影響により光軸が再びずれることを防止できる。なお、光軸合せ冶具は最終製品ではなく何度も使用することができるため、光軸合せ冶具の工作精度を向上させても大きなコストアップとなることはない。
【0037】
更に、第1工程および1回以上行われる第2工程によって一体化された複数の光学レンズと遮光板との径方向における外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有するため、光軸合せされた状態を保ったまま径方向の面が遮光される。従って、製造されたレンズモジュールは、別段の筐体を設けなくても径方向からの不要光の入射を防止できるレンズモジュールとなる。
【0038】
なお、第2工程は1回以上行われる。即ち、必要があれば、第2工程は複数回行われるのであって、その回数については、光学レンズの枚数や構成、絞り等の他の部材等を考慮して、製造にかかる時間やコストに鑑み合目的的に決定すればよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、筐体または遮光層の精度にかかわらず、各光学レンズの光軸と物側の遮光板の光軸とを合わすことができるレンズモジュール、該レンズモジュールを備えた撮影装置、及びレンズモジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、携帯電話の閉じた状態を示す模式図である。
【図2】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、携帯電話の開いた状態を示す模式図であるとともに、(a)は内面を示す斜視図であり、(b)は背面を示す斜視図である。
【図3】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、カメラモジュールの構成を示す断面図である。
【図4】本発明にかかる撮影装置の一実施形態について説明する図面であって、(a)はレンズモジュールの軸方向断面図であり、(b)はレンズモジュールを物側から見た図である。
【図5】本発明にかかるレンズモジュールの製造方法の一実施形態について説明する図面であって、(a)は光軸合せ工程を示す斜視断面図であり、(b)は一体化工程を示す斜視断面図であり、(c)は一体化工程を示す平面図である。
【図6】本発明にかかるレンズモジュールの製造方法の一実施形態について説明する図面であって、(a)は治具より取り出されたレンズモジュールを示す軸方向断面図であり、(b)は被覆されたレンズモジュールを示す軸方向断面図である。
【図7】本発明にかかる撮影装置の第2の実施形態について説明する図面であって、(a)はレンズモジュールの軸方向断面図であり、(b)はレンズモジュールを物側から見た図であり、(c)は(a)の部分拡大図である。
【図8】本発明にかかる撮影装置の第2の実施形態の変形例について説明する図面であって、(a)は遮光板に貫通孔を設けたレンズモジュールの軸方向断面図であり、(b)は遮光板に有底孔を設けたレンズモジュールの軸方向断面図である。
【図9】従来のカメラモジュールについて説明する図面であって、カメラモジュールの構成を示す断面図である。
【図10】従来のカメラモジュールについて説明する図面であって、レンズモジュールの断面図である。
【図11】従来のレンズモジュールの問題点について説明する図面であって、(a)は筐体の歪の影響による光軸のずれが小さい場合を示す平面図であり、(b)は筐体の歪の影響による光軸のずれが大きい場合を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した撮影装置の一実施形態である携帯電話を図面を用いて説明する。図1に示すように、係る撮影装置はヒンジHを中心に折り畳む構成の携帯電話である。図1は折り畳んだ状態を示す図であり前面にはカメラモジュールの一部であるカバーガラス9が露出している。図2(a)は、この携帯電話を開いて表示部81、操作部82を前面にした図である。図2(b)は、開いた携帯電話を背面から見た図である。撮影者は、このように携帯電話を開いた状態でカバーガラス9を撮影したい対象に向けて、表示部81で画像を確認しつつ、操作部82を操作することによりシャッターを切り、対象物を撮影することができる。
【0042】
次に、図3に示すように、カメラモジュール1は、レンズモジュールに入射した光を基板31上に設けられた光学素子3上に結像させ、記録する構造となっている。一例を説明する。基板31上にはCCDイメージセンサあるいはCMOSイメージセンサからなる光学素子3が固定され、配線35により基板31に電気的に接続されている。この光学素子3は同じく基板31に固定されたカバー40により覆われることにより保護されている。このカバー40は大径の有蓋筒型の下部41と小径の筒型の上部42を組み合わせた形状であるとともに蓋部43中央の上部との接合部分は貫通孔44となっている。この貫通孔44を覆うように、蓋部43の内側にカバーガラス2が固定されている。また、小径の筒型の上部42の内周面にレンズモジュール13の外周面13aが接する態様でレンズモジュール13を固定できるようになっている。
【0043】
このカメラモジュール1は携帯電話本体に内蔵されたマイコン5と通信可能に接続されているとともに、同マイコン5は操作部82からの信号を受信できる態様で操作部82と接続されている。撮影者が操作部82を操作し、撮影命令がマイコン5に届くと、マイコン5は、光学素子3に結像した画像の情報を、配線35および基板31を介して入手し、必要なシャッター速度等を算出した上で、シャッターを切り、撮影する。
【0044】
図4(a)および(b)に示すように、レンズモジュール13は複数の光学レンズ11a〜11cと、不要な光が入射されることを防止するための物側の遮光板12aとを備えている。この複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aが光軸を一致させた状態で積層されるとともに、物側の遮光板12aが最も物側の光学レンズ11cの物側面に接する態様で、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aが一体化されてレンズ積層体11を形成している。
【0045】
ここで、光学レンズ11a〜11cは各々光学的機能を有するレンズ本体11a1〜11c1と、その周辺に形成されたコバ11a2〜11c2を有している。このコバ11a2〜11c2同士が互いに接するように積層されることにより、レンズ本体11a1〜11c1間の光軸方向の距離が規定されている。また、光軸方向の距離は必要に応じてスペーサを光学レンズ間に介在させることにより調整することもできる。例えば上述のように、光学レンズ11aと光学レンズ11bの間にスペーサ15が介在している。開口絞り14としては光学レンズ11a〜11cと同一の径を有する円盤状に形成されるとともに中心部に必要な径の貫通孔を設けた樹脂フィルムが、用いられている。この樹脂フィルムにはカーボン等の黒色物質が練り込まれているため、貫通孔を除いて光を遮断することができ、絞りとして機能する。この開口絞り14は光学レンズ11bと光学レンズ11cとの間に一体的に挟みこまれている。
【0046】
更に、最も物側の光学レンズ11cの物側面に接する態様で物側の遮光板12aが備えられており、最も像側の光学レンズ11aの像側面に接する態様で像側の遮光板12bが備えられている。物側の遮光板12aはレンズモジュール13内に不要な光線が入射し、内部反射により、フレアやゴースト等を発生させることを防止するために設けられる部材であり、物側面にはレンズモジュール13の画角に応じた傾斜部が設けられている。一方、像側の遮光板12bはレンズモジュール13内に生じた不要な反射光が光学素子3に達し、フレアやゴースト等を発生させることを防止するために設けられる部材であり、像側面にはレンズモジュール13の主光線入射角度に応じた傾斜部が設けられている。複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの他に、上述の像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15が一体化されてレンズ積層体11が形成されている。具体的には、複数の光学レンズ11a〜11cの各々の外縁部および遮光板の外縁部11a5〜11c5に接するように接続部材16が配置されている。複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12a、像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15は、この接続部材16により一体化されて、レンズ積層体11を形成している。また、レンズ積層体11の径方向の外周面には光を遮断するための遮光層12が形成されている。
【0047】
図4(b)に示すように、この接続部材16は、複数備えられており、各々光軸に対して周方向において等間隔に配置されている。接続部材16が複数あるため、単数の場合に比べて、同一接触面積であっても複数の光学レンズ11a〜11c等を確実に一体化できる。また、周方向において等間隔に配置されているため、複数の接続部材16のうち1つあたりにかかる応力も略均等に分散されるため、構造上の弱点が生じにくいと考えられる。
【0048】
このレンズモジュール13の製造方法を以下に説明する。図5(a)に示すように、略円筒形の光軸合せ冶具20を用意する。光軸合せ冶具20の内径は製造するレンズモジュール13に用いる物側の遮光板12a、光学レンズ11a〜11c、像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15の径と正確に一致している。また、光軸合せ冶具20の内周面には光軸方向に延設された凹溝21が3つ形成されている。光軸合せ冶具20の製造方法は特に限定されないが、略円筒形であるため、例えば、市販の円筒形金属部材を研削および研磨することにより作成しても良い。冶具であるため高精度を要求され、作成にコストがかかった場合であっても、繰り返し使用することができるため、最終製品1個当たりのコストは小さく抑えることができる。また、光軸方向から見た光軸合せ冶具20の内周面の形状や、光軸方向から見た物側の遮光板12a、光学レンズ11a〜11c、像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15の形状は必ずしも円形とする必要はなく、光軸合わせが可能であるならば他の形状とすることも可能である。
【0049】
光軸合せ冶具20の内周面に、光学レンズ11a〜11cの外縁部11a5〜11c5や像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15、物側の遮光板12aの外縁部が接触する態様で、物側の遮光板12a、光学レンズ11c、開口絞り14、光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11a、像側の遮光板12bを順に挿入する。この工程が、複数の光学レンズ11a〜11cの光軸を同一方向に合わせる光軸合せ工程である。光軸合せ冶具20の内径は光学レンズ11a〜11cや物側の遮光板12a等の径と正確に一致しているため、光学レンズ11a〜11cや物側の遮光板12a等が各々正確に作成され、光軸が中心部にあれば、光軸が互いにずれることがなく、図5(a)中に1点鎖線で示したように、全体として一致した光軸を有することとなる。
【0050】
次に、図5(b)中に矢印にて示したように、像側より凹溝21に沿って光軸方向に接着剤が挿入される。この接着剤が固化することにより接続部材16となる。つまり接続部材16は接着剤により形成される。このように接着剤が光学レンズ11a〜11cの外縁部11a5〜11c5を接着するとともに固化することにより、光学レンズ11a〜11cは光軸合せされた状態を保ったまま、互いに接続されるとともに一体化される。この工程が一体化工程である。図5(c)に示すように、凹溝21は周方向において等間隔に設けられているため、接続部材16も周方向において等間隔に設けることができる。
【0051】
図6(a)に示すように、接着剤が完全に固化するとともに物側の遮光板12a、光学レンズ11c、開口絞り14、光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11a、像側の遮光板12bが一体化した後、光軸合せ冶具20から像側に抜き出すと、レンズ積層体11が形成されている。光軸合せ冶具20から抜き出されたレンズ積層体11の径方向の外周面に、図6(b)に示すように、光を遮断するための遮光層12を形成する。この工程が遮光層形成工程である。遮光層12の形成方法は特に限定されないが、例えば、遮光性の塗料を塗布しても良いし、遮光性膜を蒸着により形成しても良い。なお、接続部材16が遮光性を有していない場合には、遮光層12は接続部材16表面を含めて形成する。接続部材16が遮光性を有している場合は、遮光層12は接続部材16表面を含めて形成しても、接続部材16表面を避けて形成しても、いずれでも良い。
【0052】
かかる一連の工程により、物側の遮光板12aの光軸および複数の光学レンズ11a〜11cの光軸が一致するとともに、径方向に小型化されたレンズモジュール13が製造される。
【0053】
本実施形態によれば、以下に示す効果を奏することができる。
(1)本実施形態において、複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bが光軸を一致させた状態で積層される。また、物側の遮光板12aが最も物側の光学レンズ11cの物側面に接する態様で、複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bが一体化されてレンズ積層体11を形成している。従って、筐体の形状に影響されて、複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bの光軸がずれることが抑制される。
【0054】
(2)本実施形態において、レンズ積層体11の径方向の外周面に遮光層12が設けられているため、レンズ積層体11の径方向からの光の入射を防止することができる。従って、側方からの光の入射を防止するための別段の筐体などを必要としないため、レンズモジュール13を従来に比して径方向に小型化することができる。
【0055】
(3)本実施形態において、複数の光学レンズ11a〜11cのうち最も像側の光学レンズ11aと物側の遮光板12aとの間に延設された接続部材16により接続されることにより一体化されてレンズ積層体11を形成しているため、複数の光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとを接続部材16により容易に一体化できる。また、接続部材16は複数の光学レンズ11a〜11cの各々の外縁部11a5〜11c5および物側の遮光板12aの外縁部に接するように配置されているため、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの各々が接する面に接着剤を塗布したり、複数の光学レンズ11a〜11c自身に加工を施したりする必要がない。
【0056】
(4)本実施形態において、接続部材16が、複数備えられているため複数の光学レンズ11a〜11cの各々を接続部材16によって接続するとともに複数の光学レンズ11a〜11cを一体化することが一層確実にできる。従って、レンズ積層体11を一層容易に形成することができる。また、複数の接続部材16の各々が、光軸に対して周方向において等間隔に配置されているため、接続箇所も周方向において等間隔に形成されることとなり、各接続箇所にかかる応力バランスが良好となる。
【0057】
(5)本実施形態において、撮影装置である携帯電話は、上記レンズモジュール13を備えている。レンズモジュール13は筐体の精度にかかわらず複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bの光軸を合わせることが可能なレンズモジュールであるため、安価かつ小型のレンズモジュールとすることが容易であって、筐体の制限もない。従って特に安価に製造する必要がある携帯電話等に搭載する小型の撮影装置に好適に用いることができる。
【0058】
(6)本実施形態にかかるレンズモジュール13の製造方法によると、略円筒形の光軸合せ冶具20の内周面に外縁部11a5〜11c5が接触する態様で複数の光学レンズ11a〜11c、および物側の遮光板12aを挿入することにより、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの光軸を一致させる光軸合せ工程を有する。そのため、筐体の精度にかかわらず各光学レンズの光軸を合わせることが可能となる。また、光軸合せ冶具20は最終製品ではなく何度も使用することができるため、光軸合せ冶具20の工作精度を向上させても大きなコストアップとなることはない。
【0059】
(7)また、光軸合せされた複数の光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとを、光軸方向に延設された接続部材16を介して互いに接続するとともに一体化する一体化工程を有するため、光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとは光軸合せされた状態で一体化される。また、一体化された複数の光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとの径方向の外周面に、光を遮断するための遮光層12を形成する遮光層形成工程とを有するため、光軸合せされた状態を保ったまま径方向の面が遮光される。従って、製造されたレンズモジュールは、別段の筐体を設けなくても径方向からの不要光の入射を防止できるレンズモジュールとなる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した撮影装置の第2の実施形態である携帯電話を図7(a)〜(c)にしたがって説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態のレンズモジュール13の構造および製造方法を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0061】
第2の実施形態においても、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの他に、上述の像側の遮光板12b、開口絞り14およびスペーサ15が一体化されてレンズ積層体11が形成されている。具体的には、複数の光学レンズ11a〜11cは、複数の光学レンズ11a〜11cの各々の物側および像側に開口する貫通孔11hを有している。この貫通孔11h内に配置されている接続部材16により接続されることにより、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aが一体化されてレンズ積層体11が形成されている。また、開口絞り14が、光学レンズ11bと光学レンズ11cとの間に備えられ、接続部材16は開口絞り14により分断された態様で、貫通孔11h内に配置されている。
【0062】
より具体的には、図7(a)および(b)に示すように、光学レンズ11aのコバ11a2には光軸方向に貫通する貫通孔11hを有している。この貫通孔11hは、図7(a)に示すように、光学レンズ11bのコバ11b2、光学レンズ11cのコバ11c2、スペーサ15も有しており、光学レンズ11a〜11cが積層された状態において、貫通孔11hは光軸に平行な直線17上に並んでいる。
【0063】
ところで貫通孔11hは開口絞り14には設けられていない。その為、特に図7(c)に明確に示されているように、接続部材16は開口絞り14により分断された態様で、貫通孔11h内に配置されている。即ち、接続部材16は第1接続部材16aと第2接続部材16bとからなる。第1接続部材16aは物側の遮光板12a、光学レンズ11cおよび開口絞り14を接続しており、第2接続部材16bは開口絞り14、光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11aおよび像側の遮光板12bを接続している。従って、第1接続部材16aと第2接続部材16bとは開口絞り14を介して全体として、物側の遮光板12a、光学レンズ11a〜11cおよび開口絞り14を接続しており、これら全ての部材によりレンズ積層体11が形成されている。
【0064】
このレンズモジュール13の製造方法を以下に説明する。なお、基本的には第1の実施形態と同様であるので、異なる部分のみ詳説する。また、図5および図6も併せて参酌されたい。
【0065】
第2の実施形態においても、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの光軸を一致させる光軸合せ工程と、光軸合せされた複数の光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとを光軸方向に延設された接続部材16を介して接続するとともに一体化する一体化工程とが行われる。但し、光軸合せ工程が終了した後に一体化工程が行われるのではなく、両者が一部並行して行われる。
【0066】
第1の実施形態と同様、図5(a)に参酌されるような、略円筒形の光軸合せ冶具20を用意するのであるが、光軸合せ冶具20に凹溝21は設けられていない。物側の遮光板12aおよび光学レンズ11cを、各々の外縁部がこの光軸合せ冶具20の内周面に接触する態様で、順に挿入する。この工程により物側の遮光板12aの光軸と光学レンズ11cの光軸とが一致させられる。次に光学レンズ11cのコバ11c2に設けられた貫通孔11h内に接着剤を流し込み、更に開口絞り14を挿入する。この接着剤が硬化することにより、光軸方向に延設された第1接続部材16aが形成され、この第1接続部材16aを介して、光軸を一致させた光学レンズ11cおよび物側の遮光板12aが、接続されるとともに一体化される。この工程を第1工程とする。ここで、物側の遮光板12aおよび開口絞り14には貫通孔11hが設けられていないが、接着剤が固化して光軸方向に延設された第1接続部材16aを形成することにより、光学レンズ11cと一体化される。同様に、既に遮光板12aと一体化されている光学レンズ11cに対する他の光学レンズである光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11aを順次挿入積載し、積層中間体の光軸と一致させ、それぞれに設けられた貫通孔11hに接着剤を流し込んだ後に、像側の遮光板12bを挿入する。この接着剤が硬化することにより、光軸方向に延設された第2接続部材16bが形成され、この第2接続部材16bを介して、既に一体化されている遮光板12aおよび光学レンズ11cと、光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11aとが、接続されるとともに一体化される。この工程を第2工程とする。ここで、開口絞り14および遮光板12bには貫通孔11hが設けられていないが、接着剤が固化して接続部材16を形成することにより、開口絞り14、光学レンズ11b、スペーサ15、光学レンズ11a、遮光板12bが一体化される。つまり、接続部材16は開口絞り14により第1接続部材16aと第2接続部材16bとに分断されているが、この接続部材16を介して、物側の遮光板12aから像側の遮光板12bが一体化され、レンズ積層体11が形成される。このレンズ積層体11を光軸合せ冶具20から像側に抜き出すと、図7(a)に参酌されるような状態となる。このように、第2の実施形態においては、複数の光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aの光軸を一致させる光軸合せ工程と、光軸合せされた複数の光学レンズ11a〜11cと物側の遮光板12aとを光軸方向に延設された接続部材16を介して接続するとともに一体化する一体化工程とが並行して行われる。
【0067】
図6(a)に参酌されるように、光軸合せ冶具20からレンズ積層体11を取り出した後、図6(b)に参酌されるように、レンズ積層体11の径方向の外周面に、光を遮断するための遮光層12を形成する。この工程が遮光層形成工程である。遮光層12の形成方法は特に限定されないが、例えば、遮光性の塗料を塗布しても良いし、遮光性膜を蒸着により形成しても良い。この製造方法によれば、図5(a)に示した、光軸合せ冶具20に凹溝21を設ける必要がなく、光軸合せ冶具20の構造を単純化できる。
【0068】
なお、貫通孔11hは複数の光学レンズ11a〜11cおよびスペーサ15の各々に予め設けておき、光軸方向に平行な直線状に貫通孔11hが並ぶように複数の光学レンズ11a〜11cを積層しても良いし、光学レンズ11a〜11cやスペーサ15を積層した後、接着剤を流し込む前に逐次形成しても良い。
【0069】
かかる第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様に(1)〜(7)の効果を奏することができる。また加えて以下に示す(8),(9)の効果も有する。
(8)第2の実施例において、貫通孔11h内に配置されている接続部材16により接続されることにより、複数の光学レンズ11a〜11c、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bが一体化されてレンズ積層体11を形成している。従って、接続部材16を、光学レンズ11a〜11cの外縁部11a5〜11c5に配置する必要がない。従って、レンズ積層体11を径方向に一層小型化することができる。
【0070】
(9)第2の実施例において、接続部材16は開口絞り14により分断された態様で、貫通孔11h内に配置されているため、開口絞り14に貫通孔11hを設ける必要がない。従って、開口絞り14に貫通孔11hを設ける加工が困難な場合であっても、接続部材16によって光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bを一体化することができる。
【0071】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・第2の実施形態において、物側の遮光板12a、像側の遮光板12b、開口絞り14には貫通孔11hを設けていないが、他の構成であっても良い。貫通孔11hを設ける加工が困難でなければ、少なくともいずれか1つに貫通孔11hを設けても良い。例えば、図8(a)に示すように、物側の遮光板12a、像側の遮光板12b、開口絞り14の全てに貫通孔11hを設ければ、光軸合わせ工程終了後に一体化工程を行うことができるため、製造過程を簡略化することができる。
【0072】
・第2の実施形態において、物側の遮光板12a、像側の遮光板12b、開口絞り14には貫通孔11hを設けていないが、他の構成であっても良い。加工が困難でなければ、少なくともいずれか1つに貫通孔11hまたは有底孔12hを設けても良い。例えば、図8(b)に示すように、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bに有底孔12hを設けるとともに、開口絞り14に貫通孔11hを設ければ、これらの有底孔12hおよび貫通孔11hを設けない場合に比して、接続部材16による接着を強固にすることができる。
【0073】
・第2の実施形態において、スペーサ15には貫通孔11hが設けられているが、他の構成であっても良い。例えば、スペーサ15に貫通孔11hを設けることが困難であれば、開口絞り14と同様に貫通孔11hを設けない構成とし、接続部材16がスペーサ15により分断された態様で、貫通孔11h内に配置されていても良い。
【0074】
・第2の実施形態において、第2工程は1度だけ行われているが、他の構成であっても良い。例えば、光学レンズを多く使用する場合や開口絞りを複数使用する場合には、第2工程を複数回行っても良い。工程数は増加するが、開口絞りに接着剤を挿入するための貫通孔11hを設ける必要がなく、コストダウンとなりうる。
【0075】
・上記実施形態において、レンズ積層体11の径方向の外周面に光を遮断するための遮光層12を形成するために、遮光性の塗料を塗布することや、遮光性膜を蒸着することが例示されているが他の構成であっても良い。要はレンズ積層体11の径方向の外周面を遮光できるとともに、遮光層の厚みを小さくできればよいのであるから、例えば、遮光性のフィルムをレンズ積層体11の径方向の外周面に捲きつける、遮光性の樹脂をモールドするなど、他の公知の方法により遮光層12を形成しても良い。
【0076】
・上記実施形態において、カバー40の小径の筒型の上部42の内周面にレンズモジュール13の外周面13aが接する態様でレンズモジュール13を固定しているが他の構成であっても良い。径方向の小型化が不要な場合は、従来の樹脂製や金属性の筐体内にレンズ積層体11を挿入して筐体を有する一般的なレンズモジュールとしてレンズモジュール13を構成しても良い。レンズモジュール13の強度を大きくすることができる。またかかる場合であっても、物側の遮光板12a、像側の遮光板12bを含めて光学レンズ11a〜11cが一体化されているため、筐体の精度に関わらず、光学レンズ11a〜11cの光軸と物側の遮光板12a、像側の遮光板12bの光軸とを一致させることができるレンズモジュールとなる。またその場合、必ずしも筐体は独立した部材で形成されている必要はなく、他の部材と一体的に構成されていても良い。例えば、図2に示す携帯電話の枠体88と一体的に筐体が形成されていても良い。かかる構成によれば、部品点数を減少させることができるため、コストダウンに資する。
【0077】
・上記実施形態において、レンズ積層体11は複数の光学レンズ11a〜11c、スペーサ15、開口絞り14、物側の遮光板12aおよび像側の遮光板12bを備えているが、他の構成であっても良い。例えば、コバ11a2〜11c2の厚みのみで光学レンズ間の光軸方向距離の調整が可能であれば、スペーサ15は不要であるし、光学レンズの数も必要に応じて変化しても良い。また、物側の遮光板12aや開口絞り14によって不要な光線が十分に遮断されるのであれば、像側の遮光板12bも備えなくても良い。
【0078】
・上記実施形態において、接続部材16は3箇所に構成されているが、他の構成であっても良い。各光学レンズの径方向の移動を止める意味では3箇所以上設けるのが良いが、接着強度が十分であり、物側の遮光板12aおよび光学レンズ11a〜11cを一体化する目的を果たすのであれば、1箇所または2箇所に設けても良い。また、3箇所で不十分であれば、4箇所以上設けても良い。
【0079】
・第1の実施形態において、接続部材16は接着剤を固化することにより構成しているが、他の構成であっても良い。物側の遮光板12aおよび光学レンズ11a〜11cを一体化できれば良いのであるから、例えば、始めから外縁部11a5〜11c5に対応する面に接着性を有する棒状の部材で接続部材16を構成し、外縁部11a5〜11c5に接着しても良い。
【0080】
・第2の実施形態において、接続部材16は接着剤を固化することにより構成しているが、他の構成であっても良い。物側の遮光板12aおよび光学レンズ11a〜11cを一体化できれば良いのであるから、例えば、外周面に接着性を有する棒状の部材で接続部材16を構成し、貫通孔11h内に配置することにより接着し、物側の遮光板12aおよび光学レンズ11a〜11cを一体化しても良い。
【0081】
・上記実施形態において、接続部材16は光軸方向に延設されているのであるが、光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aを互いに接続できれば良いのであり、必ずしも直線的に光軸方向に延設されている必要はない。光学レンズ11a〜11cを互いに接続する機能を害さない限度において、例えば、光軸方向に対して傾いた方向に延設されている場合や、延設方向が屈曲していても良い。
【0082】
・第2の実施形態において、光学レンズ11a〜11cの各々は、光軸に平行な同一直線17上に、光軸方向に貫通する貫通孔11hを有しており、接続部材16は貫通孔11h内において、前記直線方向に挿入された接着剤により形成されているが、他の構成であっても良い。上述のように、接続部材16は光軸方向に延設されているのであるが、光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aを互いに接続できれば良いのであり、必ずしも直線的に光軸方向に延設されている必要はない。光学レンズ11a〜11cを互いに接続する機能を害さない限度において、例えば、光軸方向に対して傾いた方向に延設されている場合や、延設方向が屈曲していても良い。従って、各光学レンズの貫通孔11hについても互に連絡していれば良いのであって、光軸に平行な同一直線17上に正確に設けられていなくても良い。
【0083】
・上記実施形態において、光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aは接続部材16によって互いに接続されているのであるが、他の構成であっても良い。例えば、コバ11a2〜11c2を互いに接着することにより光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aが接続され、レンズ積層体11を形成しても良い。
【0084】
・また、光学レンズ11a〜11cおよび物側の遮光板12aはレーザー光線による融着により接続されていても良い。例えば、互いに隣り合う2つの光学レンズの当接部の外周部にレーザー光を照射して光学レンズ同士を融着させることによっても行っても良い。この方法によれば、接着部材が不要となるため、コストダウンとなりうる。
【0085】
・上記実施形態において、遮光層12は遮光板12aの径方向における外周面から遮光板12bの径方向における外周面にいたって形成されている。即ち、図3において遮光板12bの像側面12bsには遮光層12を設けていない。係る構成にすることによりレンズユニットの光軸方向における長さを小さくすることができる。また、遮光板12bを設けていないレンズユニットであっても、最も像側の光学レンズの像側面には遮光層を設けないのが好ましい。また、他の構成でも良い。光学レンズ11a〜11cの径方向における外周面にのみ遮光層12を形成しても良い。遮光板12a自身は光を透過しないため、側面に遮光層12を設ける構成は必須ではない。いずれの構成であっても、光軸方向に小型化することができる。
【0086】
・上記実施形態において、カメラモジュール1は固定焦点式のものを例示したが、他の構成であっても良い。レンズ移動装置や焦点位置測定装置等を備え、自動焦点方式(オートフォーカス)としても良い。
【0087】
・上記実施形態において、蓋部43の内側にカバーガラス2が固定されているが、他の構成であっても良い。例えば、赤外線フィルタ等の光学フィルタに換えても良いし、カバーガラスに加えて光学フィルタを用いても良い。
【0088】
・上記実施形態においてレンズモジュール13は、カメラモジュール1に搭載したが、他の構成であっても良い。例えば、望遠鏡、顕微鏡、双眼鏡等の他の光学機器に搭載しても良い。
【0089】
・上記実施形態においてカメラモジュール1は撮影装置としての携帯電話に搭載したが、他の構成であっても良い。コンパクトデジタルカメラ、デジタル一眼レフカメラに搭載しても良いし、銀塩写真用のカメラに搭載しても良い。また、動画撮影用のデジタルビデオカメラやフィルムカメラに搭載しても良い。
【符号の説明】
【0090】
1…カメラモジュール、2…カバーガラス、3…光学素子、5…マイコン、9…カバーガラス、11…レンズ積層体、11a…光学レンズ、11a1…レンズ本体、11a2…コバ、11a5…外縁部、11b…光学レンズ、11b1…レンズ本体、11b2…コバ、11b5…外縁部、11c…光学レンズ、11c1…レンズ本体、11c2…コバ、11c5…外縁部、11h…貫通孔、12…遮光層、12a…遮光板、12b…遮光板、12bs…遮光板12bの像側面、12h…有底孔、13…レンズモジュール、13a…外周面、14…開口絞り、15…スペーサ、16…接続部材、16a…第1接続部材、16b…第2接続部材、17…直線、20…光軸合せ冶具、21…凹溝、31…基板、35…配線、40…カバー、41…下部、42…上部、43…蓋部、44…貫通孔、81…表示部、82…操作部、88…枠体、101…カメラモジュール、102…カバーガラス、103…光学素子、111a…光学レンズ、1111a1…レンズ本体、111a2…コバ、111a3…切り欠け部、111a4…ゲート跡、111a5…外縁部、11b…光学レンズ、111b1…レンズ本体、111b2…コバ、111b5…外縁部、111c…光学レンズ、111c1…レンズ本体、111c2…コバ、111c5…外縁部、112…筐体、112a…外周面、112c…内周面、112b…底部(物側の遮光板)、112s…貫通孔、113…レンズモジュール、114…開口絞り、115…スペーサ、131…基板、135…配線、140…カバー、141…下部、142…上部、143…蓋部、144…貫通孔、H…ヒンジ、0b…光軸、0d…光軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学レンズと、
不要な光が入射されることを防止するための遮光板とを備え、
前記複数の光学レンズおよび前記遮光板が積層されるとともに一体化されてレンズ積層体を形成しており、
前記遮光板と別体の遮光層が、前記レンズ積層体の径方向の外周面に更に設けられているレンズモジュール。
【請求項2】
前記複数の光学レンズおよび前記遮光板は、該複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと該遮光板との間に延設された接続部材により接続されることにより一体化されてレンズ積層体を形成しており、
前記接続部材は前記複数の光学レンズの各々の外縁部および前記遮光板の外縁部に接するように配置されている請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項3】
前記複数の光学レンズは、前記複数の光学レンズの光軸方向における物側および像側に開口する貫通孔、または、物側および像側のいずれか一方に開口する有底孔を有しており、
前記貫通孔または前記有底孔内に配置されている接続部材により接続されることにより、
前記複数の光学レンズおよび前記遮光板が一体化されてレンズ積層体を形成している請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項4】
光量を調整するための開口絞りが、前記複数の光学レンズのうちいずれか2つのレンズの間に備えられ、
前記接続部材は前記開口絞りにより分断された態様で、前記貫通孔または前記有底孔内に配置されている請求項3に記載のレンズモジュール。
【請求項5】
前記接続部材が複数備えられており、
前記複数の前記接続部材の各々が、光軸に対して周方向において等間隔に配置されている請求項2〜4のいずれか1項に記載のレンズモジュール。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のレンズモジュールを備えた撮影装置。
【請求項7】
光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で複数の光学レンズ、および該複数の光学レンズのうち最も物側の光学レンズの物側に配設され不要な光が入射されることを防止するための遮光板を挿入することにより、前記複数の光学レンズおよび前記遮光板の光軸を一致させる光軸合せ工程と、
前記光軸合せされた前記複数の光学レンズと前記遮光板とを光軸方向に延設された接続部材を介して接続するとともに一体化する一体化工程と、
一体化された前記複数の光学レンズと前記遮光板との径方向における外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有するレンズモジュールの製造方法。
【請求項8】
光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で、複数の光学レンズのうち少なくとも1つの光学レンズと遮光板とを挿入することにより、該光学レンズおよび該遮光板の光軸を一致させ、次いで、光軸を一致させた該光学レンズおよび該遮光板を、該光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させる第1工程と、
光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で前記複数の光学レンズのうち一体化されている光学レンズを除く少なくとも1つの他の光学レンズを更に挿入することにより、一体化されている前記遮光板および前記光学レンズの光軸と挿入された光学レンズの光軸とを一致させ、次いで、一体化されている前記遮光板および前記光学レンズと挿入された前記他の光学レンズとを、該他の光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させる第2工程と、
前記第1工程および1回以上行われる前記第2工程によって一体化された前記複数の光学レンズと前記遮光板との径方向における外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有するレンズモジュールの製造方法。
【請求項1】
複数の光学レンズと、
不要な光が入射されることを防止するための遮光板とを備え、
前記複数の光学レンズおよび前記遮光板が積層されるとともに一体化されてレンズ積層体を形成しており、
前記遮光板と別体の遮光層が、前記レンズ積層体の径方向の外周面に更に設けられているレンズモジュール。
【請求項2】
前記複数の光学レンズおよび前記遮光板は、該複数の光学レンズのうち最も像側の光学レンズと該遮光板との間に延設された接続部材により接続されることにより一体化されてレンズ積層体を形成しており、
前記接続部材は前記複数の光学レンズの各々の外縁部および前記遮光板の外縁部に接するように配置されている請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項3】
前記複数の光学レンズは、前記複数の光学レンズの光軸方向における物側および像側に開口する貫通孔、または、物側および像側のいずれか一方に開口する有底孔を有しており、
前記貫通孔または前記有底孔内に配置されている接続部材により接続されることにより、
前記複数の光学レンズおよび前記遮光板が一体化されてレンズ積層体を形成している請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項4】
光量を調整するための開口絞りが、前記複数の光学レンズのうちいずれか2つのレンズの間に備えられ、
前記接続部材は前記開口絞りにより分断された態様で、前記貫通孔または前記有底孔内に配置されている請求項3に記載のレンズモジュール。
【請求項5】
前記接続部材が複数備えられており、
前記複数の前記接続部材の各々が、光軸に対して周方向において等間隔に配置されている請求項2〜4のいずれか1項に記載のレンズモジュール。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のレンズモジュールを備えた撮影装置。
【請求項7】
光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で複数の光学レンズ、および該複数の光学レンズのうち最も物側の光学レンズの物側に配設され不要な光が入射されることを防止するための遮光板を挿入することにより、前記複数の光学レンズおよび前記遮光板の光軸を一致させる光軸合せ工程と、
前記光軸合せされた前記複数の光学レンズと前記遮光板とを光軸方向に延設された接続部材を介して接続するとともに一体化する一体化工程と、
一体化された前記複数の光学レンズと前記遮光板との径方向における外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有するレンズモジュールの製造方法。
【請求項8】
光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で、複数の光学レンズのうち少なくとも1つの光学レンズと遮光板とを挿入することにより、該光学レンズおよび該遮光板の光軸を一致させ、次いで、光軸を一致させた該光学レンズおよび該遮光板を、該光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させる第1工程と、
光軸合せ冶具の内周面に外縁部が接触する態様で前記複数の光学レンズのうち一体化されている光学レンズを除く少なくとも1つの他の光学レンズを更に挿入することにより、一体化されている前記遮光板および前記光学レンズの光軸と挿入された光学レンズの光軸とを一致させ、次いで、一体化されている前記遮光板および前記光学レンズと挿入された前記他の光学レンズとを、該他の光学レンズのうち最も物側に配置された光学レンズと最も象側に配置された光学レンズとの間に延設された接続部材を介して接続させるとともに一体化させる第2工程と、
前記第1工程および1回以上行われる前記第2工程によって一体化された前記複数の光学レンズと前記遮光板との径方向における外周面に、光を遮断するための遮光層を形成する遮光層形成工程とを有するレンズモジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−15545(P2013−15545A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246942(P2009−246942)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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