説明

レンズ研磨皿作製装置及び作製方法

【課題】成形後の研磨シートの厚さが均一で、表面形状にばらつきのないレンズ研磨皿を作製することができるレンズ研磨皿作製装置及び作製方法を提供する。
【解決手段】レンズ研磨皿作製装置は、球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製装置において、上記球面レンズの最終仕上げ面に対応する球面形状を有する研磨面成形面23aが設けられた型皿30と、研磨シート50が貼付される研磨シート貼付面11aであって、研磨面成形面23aに対応する球面形状を有する研磨シート貼付面11aが設けられた研磨台皿11と、研磨台皿11を研磨面成形面23aに向けて押圧する押圧機構40と、研磨面成形面23aと研磨シート貼付面11aとの間隔を一定に維持する間座30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨台皿に研磨シートが貼付されたレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製装置及び作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ等の研磨は、研磨対象であるレンズ部材の最終仕上げ面に応じた形状(例えば球面形状)の研磨面を有するレンズ研磨皿を用いて行われる。レンズ研磨皿は、球面形状の凸部又は凹部を有する台皿に対して、発泡ポリウレタンや発泡ポリエステル等の多孔質材料に研磨剤を含浸させた部材その他研磨作用を有する部材からなる研磨シートを接着剤によって貼り付け、研磨面成形用の型皿を用いて研磨シートを押圧することにより作製される。この押圧により、研磨シートが台皿に密着すると共に圧縮され、型皿に沿った曲率の研磨面が形成される。
【0003】
このようなレンズ研磨皿を作製する際には、研磨シートに均一な押圧力を与えて、均一な厚さに圧縮することが重要となる。このため、例えば特許文献1においては、キャップ状筒体からなり、レンズ研磨用台皿の軸部の周囲に嵌合される押圧部材を設けることにより、レンズ研磨用台皿の傾きを防止し、押圧部材の移動量に応じた押圧力を研磨シートに均等に与えることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−252855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のレンズ研磨皿作製方法においては、レンズ研磨皿に対して一定の押圧力を与えたとしても、圧縮後の研磨シートの厚さや表面形状にばらつきが生じることがあった。具体的には、所望の圧縮量を考慮して圧縮方向における押圧部材の位置を調節しても、圧縮後の研磨シートにおいて厚さが狙いよりも薄くなる部分が生じ、厚さを均一にすることが困難であった。そのため、台皿の形状や大きさ、研磨シートの材質等の条件によってはレンズ研磨皿の球面形状にばらつきが生じてしまい、安定した品質のレンズ研磨皿を効率よく作製することが困難となる場合があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、台皿の形状や大きさ、研磨シートの材質等の条件によらず、成形後の研磨シートの厚さが均一で、表面形状にばらつきのない、安定した品質のレンズ研磨皿を作製することができるレンズ研磨皿作製装置及び作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るレンズ研磨皿作製装置は、球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製装置において、前記球面レンズの最終仕上げ面に対応する球面形状を有する研磨面成形面が設けられた型皿と、研磨シートが貼付される研磨シート貼付面であって、前記研磨面成形面に対応する球面形状を有する研磨シート貼付面が設けられた研磨台皿と、前記研磨台皿を前記研磨面成形面に向けて押圧する押圧機構と、前記研磨面成形面と前記研磨シート貼付面との間隔を一定に維持する間隔維持手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記レンズ研磨皿作製装置において、前記間隔維持手段は、前記研磨台皿が先端に設けられる研磨皿基体と、前記型皿又は該型皿を支持する型皿受けとの間に配置される間座であり、前記間座は、前記研磨面成形面及び前記研磨シート貼付面の外周側に配置されることを特徴とする。
【0009】
上記レンズ研磨皿作製装置において、前記間隔維持手段は、前記研磨シート貼付面及び前記研磨面成形面に当接する間座であることを特徴とする。
【0010】
上記レンズ研磨皿作製装置において、前記間隔維持手段は、前記研磨台皿が先端に設けられる研磨皿基体と、前記型皿又は該型皿を支持する型皿受けとの間に配置される間座であり、前記研磨面成形面の外周側には前記間座と当接する型皿側間座当接面が設けられており、前記間座は、前記研磨シート貼付面および前記型皿側間座当接面に当接することを特徴とする。
【0011】
上記レンズ研磨皿作製装置において、前記間隔維持手段は、前記研磨台皿が先端に設けられる研磨皿基体と、前記型皿又は該型皿を支持する型皿受けとの間に配置される間座であり、前記研磨シート貼付面の外周側には前記間座と当接する台皿側間座当接面が設けられており、前記間座は、前記研磨面成形面および前記台皿側間座当接面に当接することを特徴とする。
【0012】
上記レンズ研磨皿作製装置において、前記間座は、前記研磨面成形面の球心と前記研磨シート貼付面の球心とを通る軸上の点を中心として配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るレンズ研磨皿作製方法は、球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿であって、研磨台皿に研磨シートを貼付したレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製方法において、前記球面レンズの最終仕上げ面に対応する球面形状を有する研磨面成形面が設けられた型皿上に、前記研磨台皿の研磨シート貼付面と前記研磨面成形面との間隔を一定に維持する間隔維持手段を配置する間座配置工程と、前記研磨面成形面上に前記研磨シートを配置する研磨シート配置工程と、前記研磨シート貼付面と、該研磨シート貼付面に対向する前記研磨シートの面との内の少なくとも一方に接着剤を塗布し、押圧機構によって前記研磨台皿を前記研磨面成形面に向け、前記研磨台皿側の間座当接面が前記間座に当接するまで押圧する押圧工程と、前記研磨シート貼付面と前記研磨面成形面とによって前記研磨シートを圧縮した状態で、前記接着剤を硬化させる接着剤硬化工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、研磨台皿と型皿とによって研磨シートを押圧する際に研磨シート貼付面と研磨面成形面との間隔を一定に維持する間隔維持手段を設けるので、研磨台皿の形状や大きさ、研磨シートの材質等の条件によらず、成形後の研磨シートの厚さや表面形状にばらつきのないレンズ研磨皿を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製装置を示す一部断面図である。
【図2】図2は、図1に示すレンズ研磨皿作製装置の一部を拡大した断面図である。
【図3】図3は、図1に示す研磨皿基体の外観を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1に示す型皿の外観を示す斜視図である。
【図5】図5は、図1に示す間座を拡大した一部断面斜視図である。
【図6】図6は、花冠形状に成形された研磨シートを示す平面図である。
【図7】図7は、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製方法を示すフローチャートである。
【図8A】図8Aは、レンズ研磨皿作製方法を説明する図である。
【図8B】図8Bは、レンズ研磨皿作製方法を説明する図である。
【図8C】図8Cは、レンズ研磨皿作製方法を説明する図である。
【図8D】図8Dは、レンズ研磨皿作製方法を説明する図である。
【図8E】図8Eは、レンズ研磨皿作製方法を説明する図である。
【図9】図9は、変形例1−1に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
【図10】図10は、実施の形態2に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
【図11】図11は、図10に示す間座を拡大した一部断面斜視図である。
【図12】図12は、変形例2−1に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
【図13】図13は、変形例2−3に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
【図14】図14は、図13に示す補助型皿を示す斜視図である。
【図15】図15は、実施の形態3に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
【図16】図16は、図15に示す間座を拡大した一部断面斜視図である。
【図17】図17は、変形例3に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
【図18】図18は、図17に示す間座を拡大した一部断面斜視図である。
【図19】図19は、実施の形態4に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
【図20】図20は、図19に示す間座を拡大した一部断面斜視図である。
【図21】図21は、変形例4に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
【図22】図22は、図21に示す間座を拡大した一部断面斜視図である。
【図23】図23は、実施の形態5に係るレンズ研磨皿作製装置を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これら実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。図面は模式的なものであり、各部の寸法の関係や比率は、現実と異なることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製装置を示す一部断面図である。また、図2は、図1に示すレンズ研磨皿作製装置1の一部を拡大して示す断面図である。図1及び図2に示すように、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製装置1は、球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿を作製する装置であり、研磨シートが貼付される研磨台皿11が設けられた研磨皿基体10と、型皿20と、研磨台皿11と型皿20との間に配置された間座30と、押圧機構40とを備える。
【0018】
図3は、研磨皿基体10の外観を示す斜視図であり、図1とは上下を逆転している。図3に示すように、研磨皿基体10は、研磨台皿11と、研磨台皿11を支持する軸部12と、軸部12の側面に設けられた間座受け部13とを含む。このような研磨皿基体10は、例えば真鍮、ステンレス等の合金により一体的に形成されている。
【0019】
研磨台皿11は、研磨シート50が貼付される研磨シート貼付面(以下、単に貼付面ともいう)11aを有する。この貼付面11aは、研磨対象であるレンズ部材の最終仕上げ面に対応する球面形状(例えば凹レンズを研磨する場合には凸の球面形状)を有している。また、貼付面11aの曲率半径は、後述する型皿20のシート成形面(研磨面成形面)23aの曲率半径よりも、研磨シート50の厚さTの分だけ小さくなるように設計されている(図2参照)。このような貼付面11aに研磨シート50を貼付し、型皿20と共に研磨シート50を圧縮することにより、レンズ研磨皿が作製される。なお、研磨シート50は、発泡ポリウレタンや発泡ポリエステル等の多孔質材料に研磨剤を含浸させた部材その他研磨作用を有する部材からなるシート状の研磨部材である。
【0020】
間座受け部13は、貼付面11aの外縁よりも外周側に張り出すように設けられた円盤状の部材である。間座受け部13の研磨台皿11側の面の内、貼付面11aよりも外周側の部分が、間座30に当接する台皿側間座当接面13aとなっている。
間座受け部13は、研磨台皿11から間隔dだけ離して配置されている。それにより、研磨時に間座受け部13が研磨の妨げとなるのを防止している。
【0021】
軸部12は、研磨皿基体10を押圧機構40に取り付ける際に用いられる。軸部12は略円柱形状を有し、軸部12の研磨台皿11とは反対側の底面中央部には、凹状の受け部12aが設けられている。
【0022】
図4は、型皿20の外観を示す斜視図である。型皿20は、研磨面成形(シート成形)用の型であり、例えば鉄やステンレス等の金属又は合金によって形成される。図4に示すように、型皿20は、円盤状の皿部21及び該皿部21を支持する脚部22を含む。
【0023】
皿部21の図の上面中央部には、凹部23が設けられている。この凹部23の内壁面が、研磨対象のレンズ部材の最終仕上げ面に対応する(該最終仕上げ面と曲率半径が等しい)球面形状を有し、貼付面11aに貼付された研磨シート50の表面形状を成形するシート成形面23aとなっている。このシート成形面23aが、被研磨部材である球面レンズに当接して研磨する研磨シート50の表面を成形する研磨面成形面である。実施の形態1において、シート成形面23aの面積は、貼付面11aよりも面積が大きくなっている。また、凹部23周囲の平面は、型皿側間座当接面21aとなっている。
【0024】
脚部22は円柱状を有し、脚部22の側面には、型皿20を支持する型皿受け44に対して型皿20を羅合するためのネジ部24が設けられる。皿部21の外周側面には、型皿20を型皿受け44に螺合し、或いは螺合を解除する際にスパナ等を嵌合させるため、一部を平面状にカットした平面部25が例えば2箇所に設けられる。
【0025】
図5は、間座30を示す一部断面斜視図である。間座30は、貼付面11aとシート成形面23aとの間隔を一定に維持する間隔維持手段であり、貼付面11a及び研磨面成形面23aの外周側に配置されている。図5に示すように、間座30は、中央に円柱状の開口31が設けられたリング部32と、リング部32の一方の底面(図の下面)32bの外周側に設けられたストッパ部33とを含む。
【0026】
リング部32の上面32a及び下面32bは平面状となっており、この平面状の部分が、台皿側間座当接面13a及び型皿側間座当接面21aにそれぞれ当接する。
リング部32の厚さWは、台皿側間座当接面13aと貼付面11aの中心Cとの距離、及び、研磨シート50を圧縮する厚さの目標値Tに基づいて決定される。また、開口31の径Dは、研磨シート50をシート成形面23aに沿って湾曲させた場合の径以上であり、好ましくは、研磨シート50を平面状にした場合の径以上とすると良い。
【0027】
ストッパ部33は、間座30を型皿20上に配置した際に、内周面33aを型皿20に側面上部に当接させて間座30の水平方向における移動を規制することにより、位置ずれを防止する。
【0028】
押圧機構40は、水平に配置された基台である第1支持部材41と、該第1支持部材41の上方に平行に配置された第2支持部材42と、これらの第1、第2支持部材41、42の対向面の両側に植立固定されて第1、第2支持部材41、42を互いに連結する柱状の連結部材43とからなる成形枠体を有する。第1支持部材41上の略中央部には、内周面に雌ネジが刻設された円筒形状の型皿受け44が固設され、この型皿受け44に、研磨台皿11と対をなす型皿20が螺合して装着される。レンズ研磨皿の作製時には、型皿20に設けられた凹部23に研磨シート50が載置され、この研磨シート50を、接着剤を塗布した研磨台皿11で上方から押圧するようになっている。
【0029】
第2支持部材42の略中央部には、内周面に雌ネジが刻設されたネジ環45が嵌合して固着されている。このネジ環45には、上部(略上半分)の外周に雄ネジ部(図示せず)が形成された押圧棒46が螺合している。この押圧棒46の下部(略下半分)は第2支持部材42の下面から突出している。押圧棒46の下端面は、レンズ研磨皿の作製時に研磨皿基体10の受け部12aに配置される剛球47の対向面となっている。押圧棒46の下端面には凹部46aが設けられており、これにより、剛球47を介して研磨皿基体10を安定して押圧することができる。
【0030】
押圧棒46の上端はネジ環45から突出しており、この突出端部に操作部48が一体的に固定されている。この操作部48を回転操作することにより、押圧棒46がネジ環45内を上下に移動する。また、操作部48は、操作し易い角形(例えば6角形)に形成されている。
【0031】
このようなレンズ研磨皿作製装置1において、研磨皿基体10、型皿20、及び間座30は、中心軸が互いに一致するように配置される。
【0032】
ここで、実施の形態1において、間座30をレンズ研磨皿作製装置1に設ける理由は以下のとおりである。
本願発明者らは、一般的なレンズ研磨皿作製方法において、研磨台皿に対して一定の押圧力を与えた場合に、圧縮後の研磨シートの厚さにばらつきが生じる理由を鋭意考察した。その結果、本願発明者らは、研磨シートの成形中、研磨台皿の自重が制御されていないことに想到した。即ち、研磨シートを押圧する際に、制御されていない研磨台皿の自重が研磨シートに与えられることにより、この自重によって研磨シートが過剰に圧縮され続け、厚さが狙いよりも薄くなって、厚さのばらつきが生じるのである。
【0033】
そこで、本願発明者は、貼付面11aとシート成形面23aとの間隔を一定の値に保つ間座30を設け、間座30において研磨皿基体10の自重を受けることにより、貼付面11aに貼付される研磨シート50が所定の厚さTを越えて圧縮されることを防止するという本願発明をなすに至った。それにより、研磨シート50全体を厚さTに均一に圧縮することが可能となった。
【0034】
次に、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製方法を説明する。
まず、事前準備として、研磨台皿11に貼付する研磨シート50を作製する。図6に示すように、研磨シート50は、円形状の外周側から中心に向け複数の切り込み52を入れて周縁部51を複数の花弁状に分割した花冠形状を有している。このような研磨シートは、発泡ポリウレタンや発泡ポリエステル等の多孔質材料に研磨剤を含浸させた部材その他研磨作用を有する部材からなるシートを上記花冠形状にカットすることにより作製される。このとき、切り込み52の形状及び長さは、貼付面11aの球面形状を展開した形状に基づいて決定される。
【0035】
なお、切り込み52を入れる前の状態での研磨シート部材は、研磨シート50を研磨台皿11に貼付した際に貼付面11aを縁まで覆うことができる形状及びサイズを少なくとも有していれば良い。具体的には、少なくとも、貼付面11aの中心と貼付面11aの縁とを結ぶ経線の長さを半径とする円形を包含する形状及びサイズを有していれば良く、例えば、該円形よりも径が大きい円形状や、該円形が内接する又は該円形を包含する多角形等であっても良い。研磨シート50を研磨台皿11に貼付した際に貼付面11aの縁からはみ出した部分については、貼付後に切り取ることができる。
また、この段階での研磨シート50の厚さは、後の工程において圧縮されることを考慮し、研磨台皿11への貼り付け時における最終的な厚さTよりも厚くしておく。
【0036】
図7は、レンズ研磨皿作製方法を示すフローチャートである。
まず、工程S1において、図8Aに示すように、型皿20上に間座30を配置する。詳細には、貼付面11a及びシート成形面23aの曲率中心Q(球心)を通る軸が開口31の中心Oを通るように、間座30を型皿20に嵌合させる。
【0037】
続く工程S2において、図8Bに示すように、研磨シート50を間座30の開口31から型皿20の凹部23上に配置する。
【0038】
工程S3において、図8Cに示すように、貼付面11aにエポキシ樹脂性等の接着剤55を塗布した研磨台皿11を押圧機構40に取り付ける。なお、この際、操作者の手又は図示しないガイド等によって研磨皿基体10を保持しておくと良い。
【0039】
工程S4において、操作部48を回転操作することにより研磨皿基体10を下方に移動させ、研磨台皿11を研磨シート50に押し当て、台皿側間座当接面13aが間座30の上面32aに当接するまで押圧する(図8D参照)。それにより、貼付面11aとシート成形面23aとの間で研磨シート50を圧縮する。なお、図8Dにおいては、接着剤55の記載を省略している。
【0040】
工程S5において、研磨シート50を圧縮しながら所定時間保持することにより、接着剤55を硬化させる。このとき、研磨シート50の材料、圧縮量、接着剤の種類等の条件に応じて、研磨シート50を加熱しても良い。実施の形態1においては、約200℃の雰囲気中に、図8Dに示す状態のレンズ研磨皿作製装置1を約40分間放置する。それにより、研磨シート50が塑性変形し、研磨シート50をシート成形面23aに沿って湾曲させたことにより生じた部分的なひずみが除去又は均一化される。
【0041】
工程S6において、接着剤が硬化した後(研磨シート50を加熱する場合には、加熱を停止して研磨シート50を常温まで冷却させた後)、図8Eに示すように、操作部48を回転操作して押圧棒46を引き上げ、型皿20から研磨皿基体10を離型する。それにより、シート成形面23aの球面形状が転写されると共に、所望の厚さに圧縮された研磨シート50が研磨台皿11に貼付されたレンズ研磨皿2が完成する。
なお、貼付面11aに対してサイズが大きい研磨シート50を用いた場合には、この段階で、貼付面11aからはみ出した研磨シート50の部分を切り取れば良い。
【0042】
(実施例)
厚さ0.56mmの研磨シート50を研磨台皿11に貼付し、圧縮後の厚さの目標値を0.5mmとしてレンズ研磨皿2を作製する実験を行った。実施例として、貼付面11aとシート成形面23aとの間隔を0.5mmに維持する間座30を型皿20上に配置する場合と、比較例として間座30を配置しない場合とで、それぞれ10個のレンズ研磨皿2を作製した。その結果、比較例においては、約16%の範囲で厚さのばらつきが発生した。それに対し、実施例においては、厚さのばらつきを2%に抑えることができた。
【0043】
以上説明したように、実施の形態1においては、貼付面11aとシート成形面23aとの間隔を一定に保つ間座30によって研磨皿基体10の重量を受け止め、研磨皿基体10の自重によって研磨シート50を過剰に圧縮することを防止する。このため、研磨台皿11に貼付された研磨シート50を所望の厚さに均一に圧縮し、シート成形面23aの球面形状を研磨シート50に正確に転写することができる。従って、複数のレンズ研磨皿を作製する場合においても、成形後の研磨シート50の厚さや表面形状のばらつきを抑制することが可能となる。このようなレンズ研磨皿を用いることにより、凸レンズ等の光学素子を安定的に精度良く研磨することが可能となる。
【0044】
また、実施の形態1によれば、間座30の厚さを調節することにより、圧縮後の研磨シート50の厚さを容易に制御することができる。
【0045】
また、実施の形態1によれば、台皿側間座当接面13aを間座30の上面32aに当接させることにより、研磨台皿11と型皿20との位置関係を決定するので、目盛を読みながら操作部48を回転操作して押圧棒46の位置調整を行うといった作業が不要となり、押圧機構40に対する操作が容易となる。
【0046】
さらに、実施の形態1によれば、通常のレンズ研磨皿作製装置に対して間座を配置するという簡単な構成で、精度の高いレンズ研磨皿を作製することが可能となる。
【0047】
なお、上記説明においては、シート成形面23aよりも貼付面11aの径を小さくして、貼付面11a全体に研磨シート50が貼付されたレンズ研磨皿2を作製したが、実施の形態1の場合、貼付面11a及びシート成形面23aの径の大小関係、並びに研磨シート50の大きさによらず、研磨シート50の圧縮及び成形を行うことができる。
【0048】
また、レンズ研磨皿2の使用後、研磨台皿11から研磨シート50を剥がす際には、トリクレン液洗浄や超音波洗浄等によりエポキシ樹脂性の接着剤を溶解させ、貼付面11aをエーテルやアルコール等の混合液により清拭すれば良い。
【0049】
(変形例1−1)
次に、実施の形態1の変形例1−1について説明する。図9は、変形例1−1に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
図9に示すように、変形例1−1に係るレンズ研磨皿作製装置は、凹の球面形状の貼付面111を有する研磨台皿110と、貼付面111に対応する凸の球面形状のシート成形面121を有する型皿120と、間座130とを備える。型皿120は、脚部122に設けられたネジ部123において型皿受け44に螺合されている。間座130は、研磨台皿110と型皿受け44との間に配置されて、貼付面111とシート成形面121との間隔を一定の値Tに保つ。
【0050】
間座130は、中央に円柱状の開口131が設けられたリング部132と、リング部132の一方の底面(図の下面)135の外周側に設けられたストッパ部133とを含む。リング部132の上面134及び下面135は、それぞれ、研磨台皿110の貼付面111周囲の平面部112、及び型皿120が螺合された型皿受け44の上面44aに当接する。開口131の径は、研磨シート50をシート成形面121に沿って湾曲させた場合の径以上であり、好ましくは、研磨シート50を平面状にした場合の径以上とすると良い。
【0051】
ストッパ部133は、間座130を型皿受け44上に配置した際に、内周面136を型皿受け44の側面上部に当接させることにより、間座130の水平方向における移動を規制して位置ずれを防止する。
このような間座130は、貼付面111及びシート成形面121の曲率中心Qを通る軸が開口131の中心Oを通るように、型皿120に嵌合される。
【0052】
このような本変形例1−1によれば、貼付面111が凹の球面形状を有する場合であっても、間座130により貼付面111とシート成形面121との間隔を一定の値Tに維持することができる。それにより、研磨シート50が研磨台皿110の自重により過剰に圧縮されることを防止し、研磨シート50を所望の厚さに均一に圧縮して、シート成形面121の球面形状を研磨シート50に正確に転写することが可能となる。従って、複数のレンズ研磨皿を作製する際にも、成形後の研磨シート50の厚さや表面形状のばらつきを抑制することが可能となる。
【0053】
また、本変形例1−1においても、貼付面111及びシート成形面121の径の大小関係や、研磨シート50の大きさによらず、研磨シート50の圧縮及び成形を行うことが可能となる。
【0054】
(変形例1−2)
上記実施の形態1においては、リング形状に一体的に形成された間座を用いたが、複数の部材を組み合わせた間座を用いても良い。例えば、高さが互いに等しい複数の円弧状の部材を型皿側間座当接面21a上に所定の間隔ずつ離して配置することにより、間座として用いることができる。
【0055】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図10は、実施の形態2に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
図10に示すように、実施の形態2に係るレンズ研磨皿作製装置は、凸の球面形状の研磨シート貼付面(以下、単に貼付面という)211を有する研磨台皿210と、貼付面211に対応する凹の球面形状のシート成形面221を有する型皿220と、貼付面211とシート成形面221との間隔を一定の値Tに維持する間隔維持手段としての間座230とを備える。なお、押圧機構40を含むレンズ研磨皿作製装置全体の構成については、図1に示すものと同様である。
【0056】
図11は、間座230を拡大して示す一部断面斜視図である。図11に示すように、間座230は、中央部に円柱状の開口231が設けられたリング形状を有している。間座の図の上側の面(上面)232は、貼付面211に対応する(即ち、貼付面211と同じ曲率を有する)凹の球面形状となっており、この上面232が貼付面211の周縁部212に当接する。一方、間座230の図の下側の面(下面)233は、シート成形面221に対応する(即ち、シート成形面221と同じ曲率を有する)凸の球面形状を有しており、この下面233が、シート成形面221の周縁部222に当接する。
【0057】
レンズ研磨皿を作製する際には、まず、間座230を、貼付面211及びシート成形面221の曲率中心Qを通る軸が開口231の中心Oを通るように、型皿220上に配置する。そして、開口231からシート成形面221上に研磨シート50を配置する。さらに、貼付面211に接着剤を塗布した研磨台皿210を研磨シート50に押し当て、貼付面211が間座230の上面232に当接するまで押圧する。それにより、研磨シート50が研磨台皿210に貼付されて厚さTに圧縮されると共に、シート成形面221に対応する球面形状が研磨シート50に転写される。
【0058】
以上説明したように、実施の形態2によれば、貼付面211とシート成形面221との間に、両者の間隔を一定に保つ間座230を設けるので、研磨台皿210の自重による研磨シート50に対する過剰な圧縮を防止することができる。それにより、研磨シート50を所望の厚さに均一に圧縮して、シート成形面221の球面形状を研磨シート50に正確に転写することが可能となる。従って、複数のレンズ研磨皿を作製する際にも、成形後の研磨シート50の厚さ及び表面形状のばらつきを抑制することが可能となる。
【0059】
また、実施の形態2によれば、貼付面211及びシート成形面221に対応する球面形状の当接面(上面232及び下面233)を有する間座230を両者の間に配置するので、シート成形面221の曲率中心を通る軸と、貼付面211の曲率中心を通る軸とを常に一致させておくことが可能となる。
【0060】
また、実施の形態2によれば、研磨シート50全体を貼付面211とシート成形面221との間で圧縮するので、研磨シート50の端部まで均一に圧縮すると共に、研磨シート50の端部まで貼付面211に密着させることができる。従って、研磨シート50の端部における貼付面211からの剥がれを抑制することが可能となる。
【0061】
また、実施の形態2によれば、貼付面211とシート成形面221との間に間座230を直接配置するので、研磨シート50の厚さと間座230の高さとの関係が明確となり、間座230の設計や選択が容易となる。
【0062】
また、実施の形態2によれば、貼付面211及びシート成形面221の曲率が共通であれば、貼付面211やシート成形面221の大きさによらず、共通の間座230を用いることができる。
【0063】
(変形例2−1)
図12は、変形例2−1に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。この変形例2−1においては、貼付面211とシート成形面221との間に、円の断面形状を有するリング状の間座330を配置している。このように、間座の断面形状としては、貼付面211及びシート成形面221にそれぞれ接する領域を有し、両者の間隔を一定に維持することができれば、特に限定することなく、様々な形状を適用することができる。
【0064】
(変形例2−2)
貼付面211とシート成形面221との間に配置される間座として、リング状に一体的に形成された間座330ではなく、一定の高さを有する複数の部材を用いても良い。この場合、貼付面211及びシート成形面221の曲率中心Qを通る軸がこれらの複数の部材の中心を通るように、複数の部材の位置を決定すれば良い。
【0065】
(変形例2−3)
図13は、変形例2−3に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
図13に示すように、変形例2−3に係るレンズ研磨皿作製装置は、凸の球面形状の研磨シート貼付面(以下、単に貼付面という)411を有する研磨台皿410と、貼付面411に対応する凹の球面形状のシート成形面421を有する型皿420と、型皿420と嵌合された補助型皿430と、補助型皿430に固設された間座440とを備える。なお、押圧機構40を含むレンズ研磨皿作製装置全体の構成については、図1に示すものと同様である。
【0066】
図14は、補助型皿430及び間座440を示す斜視図である。図14に示すように、補助型皿430は、合体させるとリング形状をなす2つの補助型皿部材431からなる。各補助型皿部材431は、シート成形面421と同じ曲率を有する補助曲面432と、型皿420に設けられた嵌合部422(図13参照)と嵌合する嵌合部433とを含む。補助曲面432は、補助型皿430を型皿420に嵌合した際にシート成形面421と連続した曲面となるように形成されている。また、2つの補助型皿部材431を合体させることにより形成される開口434は、型皿420と同じ又は若干大きい径を有している。
【0067】
補助曲面432上には、合体させるとリング状をなす間座440が、接着剤又は溶接等により固着されている。間座440の上面441は、貼付面411に対応する(即ち、貼付面411と同じ曲率を有する)凹の球面形状を有している。また、間座440の高さ(上面441と補助曲面432との間隔)は、貼付面411に貼付される研磨シート50の圧縮後の厚さ(目標値)Tとなっている。間座440の位置は、貼付面411及びシート成形面421の曲率中心Qを通る軸が、補助曲面432を合体させた状態での間座440の中心Oを通るように決定される。
【0068】
レンズ研磨皿を作製する際には、2つの補助型皿部材431を型皿420の外周側から嵌合させる。そして、開口434からシート成形面421上に研磨シート50を配置する。さらに、貼付面411に接着剤を塗布した研磨台皿410を研磨シート50に押し当て、貼付面411が間座440の上面441に当接するまで押圧する。それにより、研磨シート50が研磨台皿410に貼付されて厚さTに圧縮されると共に、シート成形面421に対応する球面形状が研磨シート50に転写される。
【0069】
このような変形例2−3によれば、貼付面411及びシート成形面421に対する間座440の位置合わせが不要となり、レンズ研磨皿の作製工程を簡単にすることができる。また、補助曲面432に対する間座440の位置が異なる複数の補助型皿430を用意しておくことにより、研磨台皿410の径を変更させる際にも容易に対応することができる。
【0070】
なお、上記変形例2−3においては、2つの補助型皿部材によって補助型皿を形成しているが、3つ以上の部材によって補助型皿を形成しても良い。また、間座は、補助曲面の全周に設ける必要はなく、貼付面411とシート成形面421との間隔を一定に保つことができれば、部分的に間座を設けても良い。具体的には、貼付面411及びシート成形面421の曲率中心Qを通る軸上の点を中心とする補助曲面上の周に、高さが等しい少なくとも3つの部材を配置して間座として用いても良い。
【0071】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図15は、実施の形態3に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
図15に示すように、実施の形態3に係るレンズ研磨皿作製装置は、凸の球面形状の研磨シート貼付面(以下、単に貼付面という)511を有する研磨台皿510と、貼付面511に対応する凹の球面形状のシート成形面521を有する型皿520と、貼付面511とシート成形面521との間隔を一定の値Tに維持する間隔維持手段としての間座530とを備える。なお、押圧機構40を含むレンズ研磨皿作製装置全体の構成については、図1に示すものと同様である。
【0072】
図16は、間座530を拡大して示す一部断面斜視図である。図16に示すように、間座530は、中央部に開口531が設けられたリング形状を有している。開口531の径は、研磨シート50をシート成形面521に沿って湾曲させた場合の径以上であり、好ましくは、研磨シート50を平面状にした場合の径以上とすると良い。
【0073】
間座530の内周面(開口の壁面)532は、貼付面511に対応する(即ち、貼付面511と同じ曲率を有する)凹の球面形状を有しており、この内周面532が、貼付面511の周縁部512に当接する。一方、間座530の図の下側の面(下面)533は平面状となっており、この下面533が、シート成形面521周囲の平面部(型皿側間座当接面)522に当接する。
【0074】
レンズ研磨皿を作製する際には、まず、間座530を、貼付面511及びシート成形面521の曲率中心Qを通る軸が開口531の中心Oを通るように、型皿520上に配置する。そして、開口531からシート成形面521上に研磨シート50を配置する。さらに、貼付面511に接着剤を塗布した研磨台皿510を研磨シート50に押し当て、貼付面511が間座530の内周面532に当接するまで押圧する。それにより、研磨シート50が研磨台皿510に貼付されて厚さTに圧縮されると共に、シート成形面521に対応する球面形状が研磨シート50に転写される。
【0075】
以上説明したように、実施の形態3によれば、貼付面511とシート成形面521との間を一定の間隔に保つ間座530を設けるので、研磨台皿510の自重による研磨シート50に対する過剰な圧縮を防止することができる。それにより、研磨シート50を所望の厚さに均一に圧縮して、シート成形面521の球面形状を研磨シート50に正確に転写することが可能となる。従って、複数のレンズ研磨皿を作製する際にも、研磨シート50の厚さ及び表面形状のばらつきを抑制することが可能となる。
【0076】
また、実施の形態3によれば、球面形状を有する間座530の内周面532に対して貼付面511を当接させる。そのため、間座530の中心軸が型皿520の中心軸から水平方向に若干ずれていたとしても、研磨台皿510の中心軸を型皿520の中心軸に合わせて垂直に押し下げることにより、内周面532の上端が貼付面511に接触した後、間座530が型皿520の平面部522に沿って滑り、内周面532が貼付面511に当接するように間座530の水平方向の位置が補正される。従って、実施の形態3によれば、間座530の厳密な位置合わせが不要になるという利点もある。
【0077】
また、実施の形態3によれば、研磨シート50全体を貼付面511とシート成形面521との間で圧縮するので、研磨シート50の端部まで均一に圧縮すると共に、研磨シート50の端部まで貼付面511に密着させることができる。従って、研磨シート50の端部における貼付面511からの剥がれを抑制することが可能となる。
【0078】
また、実施の形態3によれば、実施の形態2の場合と比較して、貼付面511の広い範囲に研磨シート50を貼付することができる。
【0079】
なお、実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、間座530の下面533に、間座530の水平方向における位置ずれを規制するストッパ部を設けても良い。
【0080】
(変形例3)
次に、実施の形態3の変形例3について説明する。図17は、変形例3に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
図17に示すように、実施の形態3に係るレンズ研磨皿作製装置は、凹の球面形状の研磨シート貼付面(以下、単に貼付面という)611を有する研磨台皿610と、貼付面611に対応する凸の球面形状のシート成形面621を有する型皿620と、貼付面611とシート成形面621との間隔を一定の値Tに維持する間隔維持手段としての間座630とを備える。型皿620は、脚部622に設けられたネジ部623において型皿受け44に螺合されている。
【0081】
図18は、間座630を拡大して示す一部断面斜視図である。図18に示すように、間座630は、中央部に円柱状の開口631が設けられたリング形状を有している。間座630の外周面632は、貼付面611に対応する(即ち、貼付面611と同じ曲率を有する)凸の球面形状を有しており、この外周面632が貼付面611の周縁部612に当接する。一方、間座630の下面633は平面状となっており、この下面633が型皿受け44の上面44aに当接する。即ち、変形例3の場合、この上面44aが型皿側間座当接面となる。
【0082】
レンズ研磨皿を作製する際には、まず、間座630を、貼付面611及びシート成形面621の曲率中心Qを通る軸が開口631の中心Oを通るように、型皿受け44上に配置する。そして、開口631からシート成形面621上に研磨シート50を配置する。さらに、貼付面611に接着剤を塗布した研磨台皿610を研磨シート50に押し当て、貼付面611が間座630の外周面632に当接するまで押圧する。それにより、研磨シート50が研磨台皿610に貼付されて厚さTに圧縮されると共に、シート成形面621に対応する球面形状が研磨シート50に転写される。
【0083】
以上説明したように、変形例3によれば、凹の球面形状を有するレンズ研磨皿を作製する際にも、貼付面の曲面及びシート成形面の周囲の平面にそれぞれ当接する当接面を有する間座を設けることができる。
なお、変形例3においても、間座630の下面633に、間座630の水平方向における位置ずれを規制するストッパ部を設けても良い。
【0084】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図19は、実施の形態4に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
図19に示すように、実施の形態4に係るレンズ研磨皿作製装置は、凸の球面形状の研磨シート貼付面(以下、単に貼付面という)711を有する研磨台皿710と、貼付面711に対応する凹の球面形状のシート成形面721を有する型皿720と、貼付面711とシート成形面721との間隔を一定の値Tに維持する間隔維持手段としての間座730とを備える。なお、押圧機構40を含むレンズ研磨皿作製装置全体の構成については、図1に示すものと同様である。
【0085】
研磨台皿710には、軸部712が設けられており、この軸部712の側面には、貼付面711の外縁よりも外周側に張り出す円盤状の間座受け部713が設けられている。間座受け部713の研磨台皿710側の面の内、貼付面711よりも外周側の部分が、間座730に当接する台皿側間座当接面714となっている。
【0086】
図20は、間座730を拡大して示す一部断面斜視図である。図20に示すように、間座730は、中央部に円柱状の開口731が設けられたリング形状を有している。開口731の径は、研磨シート50をシート成形面721に沿って湾曲させた場合の径以上であり、好ましくは、研磨シート50を平面状にした場合の径以上とすると良い。
【0087】
間座730の上面732は平面となっており、この上面732が台皿側間座当接面714に当接する。一方、間座730の外周面733は、シート成形面721に対応する(即ち、シート成形面721と同じ曲率を有する)凸の球面形状を有しており、この外周面733がシート成形面721の周縁部722に当接する。
【0088】
レンズ研磨皿を作製する際には、まず、間座730を、貼付面711及びシート成形面721の曲率中心Qを通る軸が開口731の中心Oを通るように、シート成形面721上に配置する。そして、開口731からシート成形面721上に研磨シート50を配置する。さらに、貼付面711に接着剤を塗布した研磨台皿710を研磨シート50に押し当て、台皿側間座当接面714が貼付面711の上面732に当接するまで押圧する。それにより、研磨シート50が研磨台皿710に貼付されて厚さTに圧縮されると共に、シート成形面721に対応する球面形状が研磨シート50に転写される。
【0089】
以上説明したように、実施の形態4によれば、貼付面711とシート成形面721との間を一定の間隔に保つ間座730を設けるので、研磨台皿710の自重による研磨シート50に対する過剰な圧縮を防止することができる。それにより、研磨シート50を所望の厚さに均一に圧縮して、シート成形面721の球面形状を研磨シート50に正確に転写することが可能となる。従って、複数のレンズ研磨皿を作製する際にも、研磨シート50の厚さ及び表面形状のばらつきを抑制することが可能となる。
【0090】
また、実施の形態4においては、球面形状を有する間座730の外周面733をシート成形面721に当接させる。そのため、間座730の中心軸が型皿720の中心軸に対して若干傾いていたとしても、研磨台皿710の中心軸を型皿720の中心軸に合わせて垂直に押し下げることにより、台皿側間座当接面714に間座730の上面732が接触した後、外周面733がシート成形面721の球面形状に沿って滑り、上面732が台皿側間座当接面714に当接するように間座730の傾きが補正される。従って、実施の形態3によれば、間座730の厳密な位置合わせが不要になるという利点もある。
【0091】
また、実施の形態4によれば、研磨シート50全体を貼付面711とシート成形面721との間で圧縮するので、研磨シート50の端部まで均一に圧縮すると共に、研磨シート50の端部まで貼付面711に密着させることができる。従って、研磨シート50の端部における貼付面711からの剥がれを抑制することが可能となる。
【0092】
また、実施の形態4によれば、実施の形態2の場合と比較して、貼付面711の広い範囲に研磨シート50を貼付することができる。
【0093】
なお、実施の形態4においても、実施の形態1と同様に、間座730の外周側から型皿720の側面に延在するストッパ部を設けて、間座730の水平方向における位置ずれを規制しても良い。
【0094】
(変形例4)
次に、実施の形態4の変形例4について説明する。図21は、変形例4に係るレンズ研磨皿作製装置の一部を示す断面図である。
図21に示すように、実施の形態4に係るレンズ研磨皿作製装置は、凹の球面形状の研磨シート貼付面(以下、単に貼付面という)811を有する研磨台皿810と、貼付面811に対応する凸の球面形状のシート成形面821を有する型皿820と、貼付面811とシート成形面821との間隔を一定の値Tに維持する間隔維持手段としての間座830とを備える。型皿820は、脚部822に設けられたネジ部823において型皿受け44に螺合されている。
【0095】
図22は、間座830を拡大して示す一部断面斜視図である。図22に示すように、間座830は、中央部に開口831が設けられたリング形状を有している。間座830の上面832は平面となっており、この上面832が貼付面811周囲の平面部(台皿側間座当接面)812に当接する。一方、間座830の内周面833は、シート成形面821に対応する(即ち、シート成形面821と同じ曲率を有する)凹の球面形状を有しており、この内周面833がシート成形面821の周縁部824に当接する。
【0096】
レンズ研磨皿を作製する際には、まず、間座830を、貼付面811及びシート成形面821の曲率中心Qを通る軸が開口831の中心Oを通るように、シート成形面821上に配置する。そして、開口831からシート成形面821上に研磨シート50を配置する。さらに、貼付面811に接着剤を塗布した研磨台皿810を研磨シート50に押し当て、研磨台皿810の平面部812が間座830の上面832に当接するまで押圧する。それにより、研磨シート50が研磨台皿810に貼付されて厚さTに圧縮されると共に、シート成形面821に対応する球面形状に形成されたレンズ研磨皿が作製される。
【0097】
以上説明したように、変形例4によれば、凹の球面形状を有するレンズ研磨皿を作製する際にも、貼付面811の曲面及びシート成形面821の周囲の平面にそれぞれ当接する当接面を有する間座を設けることができる。
なお、変形例4においても、間座830の下面273に、間座830の水平方向における位置ずれを規制するストッパ部を設けても良い。
【0098】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図23は、実施の形態5に係るレンズ研磨皿作製装置を示す一部断面図である。
図23に示すように、実施の形態5に係るレンズ研磨皿作製装置5は、図1に示すレンズ研磨皿作製装置1に対し、研磨皿基体10の軸部12を覆うキャップ状の筒体60をさらに備える。
【0099】
筒体60の上面は天井壁61によって閉塞されている。この天井壁61の上面には、剛球47を受ける凹部62が形成されている。
一方、筒体60の下端部には、外周側に延在する押圧部63が設けられている。押圧部63の下面は間座受け部13の上面と当接し、剛球47から受けた押圧力を研磨台皿11に与える。
【0100】
このようなキャップ状の筒体60を設けることにより、研磨台皿11を型皿20の中心軸と平行の向きに均一に押圧することができる。従って、熟練者でなくても、研磨シート50が均一な厚さに圧縮され、シート成形面23aの球面形状が研磨シート50に正確に転写されたレンズ研磨皿を容易に作製することが可能となる。また、複数のレンズ研磨皿を作製する際にも、研磨シート50の厚さ及び表面形状のばらつきを抑制することが可能となる。
【0101】
なお、実施の形態5に係るレンズ研磨皿作製装置が備えるキャップ状の筒体60は、実施の形態2〜4及び変形例1−1〜1−2、2−1〜2−3、3、及び4に適用しても良い。研磨台皿に間座受け部が設けられていない場合(例えば、図10に示す研磨台皿210)には、押圧部63の下面を研磨台皿の上面に当接させればよい。
【0102】
以上説明した実施の形態1〜5においては、研磨シート貼付面とシート形成面との間隔を一定に維持する間隔維持手段として間座を用いたが、両者の間隔を一定に維持することができればどのような構成を用いても良い。例えば、図1に示す間座30を配置する代わりに、間座30の上面32aと同じ高さを有し、連結部材43から間座受け部13の内周側まで延在する支持部材を連結部材43に固設し、この支持部材上に間座受け部13を当接させる構成としても良い。
【0103】
以上説明した実施の形態1〜5においては、研磨シート貼付面に接着剤を塗布して研磨シートを貼付したが、研磨シート貼付面に対向する側の研磨シートの面に接着剤を塗布しても良いし、研磨シート貼付面及びこれに対向する研磨シートの面の両方に接着剤を塗布しても良い。
【0104】
また、実施の形態1〜5においては、間座と型皿とを別の部材としたが、型皿に対して間座を一体的に設けても良い。
【0105】
また、実施の形態1〜5においては、型皿を下方に配置し、シート成形面上に配置した研磨シートを研磨台皿によって上方から押圧する構成としたが、型皿と研磨台皿との位置関係(上下関係)を逆転させ、研磨台皿を下方に配置し、研磨シート貼付面上に配置した研磨シートを型皿によって押圧する構成としても良い。
【符号の説明】
【0106】
1、5 レンズ研磨皿作製装置
2 レンズ研磨皿
10 研磨皿基体
11、110、210、410、510、610、710、810 研磨台皿
11a、111、211、411、511、611、711、811 貼付面
112、812 平面部
12、712 軸部
12a 受け部
13、713 間座受け部
13a、714 台皿側間座当接面
20、120、220、420、520、620、720、820 型皿
21 皿部
21a 型皿側間座当接面
22、122、622、822 脚部
23 凹部
23a、121、221、421、521、621、721、821 シート成形面
24、123、623、823 ネジ部
25 平面部
30、130、230、330、440、530、630、730、830 間座
31、131、231、531、631、731、831 開口
32、132 リング部
32a、134、232、441、732、832 上面
32b、135、233、533、633 下面
33、133 ストッパ部
33a、136、532、833 内周面
40 押圧機構
41、42 支持部材
43 連結部材
44 型皿受け
44a 上面
45 ネジ環
46a 凹部
46 押圧棒
47 剛球
48 操作部
50 研磨シート
51 周縁部
52 切り込み
55 接着剤
60 筒体
61 天井壁
62 凹部
63 押圧部
212、222、512、612、722、824 周縁部
422 嵌合部
430 補助型皿
431 補助型皿部材
432 補助曲面
433 嵌合部
434 開口
632、733 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製装置において、
前記球面レンズの最終仕上げ面に対応する球面形状を有する研磨面成形面が設けられた型皿と、
研磨シートが貼付される研磨シート貼付面であって、前記研磨面成形面に対応する球面形状を有する研磨シート貼付面が設けられた研磨台皿と、
前記研磨台皿を前記研磨面成形面に向けて押圧する押圧機構と、
前記研磨面成形面と前記研磨シート貼付面との間隔を一定に維持する間隔維持手段と、
を備えることを特徴とするレンズ研磨皿作製装置。
【請求項2】
前記間隔維持手段は、前記研磨台皿が先端に設けられる研磨皿基体と、前記型皿又は該型皿を支持する型皿受けとの間に配置される間座であり、
前記間座は、前記研磨面成形面及び前記研磨シート貼付面の外周側に配置されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ研磨皿作製装置。
【請求項3】
前記間隔維持手段は、前記研磨シート貼付面及び前記研磨面成形面に当接する間座であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ研磨皿作製装置。
【請求項4】
前記間隔維持手段は、前記研磨台皿が先端に設けられる研磨皿基体と、前記型皿又は該型皿を支持する型皿受けとの間に配置される間座であり、
前記研磨面成形面の外周側には前記間座と当接する型皿側間座当接面が設けられており、
前記間座は、前記研磨シート貼付面および前記型皿側間座当接面に当接することを特徴とする請求項1に記載のレンズ研磨皿作製装置。
【請求項5】
前記間隔維持手段は、前記研磨台皿が先端に設けられる研磨皿基体と、前記型皿又は該型皿を支持する型皿受けとの間に配置される間座であり、
前記研磨シート貼付面の外周側には前記間座と当接する台皿側間座当接面が設けられており、
前記間座は、前記研磨面成形面および前記台皿側間座当接面に当接することを特徴とする請求項1に記載のレンズ研磨皿作製装置。
【請求項6】
前記間座は、前記研磨面成形面の球心と前記研磨シート貼付面の球心とを通る軸上の点を中心として配置されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のレンズ研磨皿作製装置。
【請求項7】
球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿であって、研磨台皿に研磨シートを貼付したレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製方法において、
前記球面レンズの最終仕上げ面に対応する球面形状を有する研磨面成形面が設けられた型皿上に、前記研磨台皿の研磨シート貼付面と前記研磨面成形面との間隔を一定に維持する間隔維持手段を配置する間座配置工程と、
前記研磨面成形面上に前記研磨シートを配置する研磨シート配置工程と、
前記研磨シート貼付面と、該研磨シート貼付面に対向する前記研磨シートの面との内の少なくとも一方に接着剤を塗布し、押圧機構によって前記研磨台皿を前記研磨面成形面に向け、前記研磨台皿側の間座当接面が前記間座に当接するまで押圧する押圧工程と、
前記研磨シート貼付面と前記研磨面成形面とによって前記研磨シートを圧縮した状態で、前記接着剤を硬化させる接着剤硬化工程と、
を含むことを特徴とするレンズ研磨皿作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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