説明

レンズ装置、およびレンズ装置を有する撮像装置

【課題】
ズーム移動体31あるいはフォーカス移動体33を駆動するズーム用リニアモータ41あるいはフォーカス用リニアモータ51のコイル42、52に対する給電の機構において、小型化と軽量化とを図り、しかも配線体のための特別なスペースを要せず、ズーム移動体31やフォーカス移動体33の移動に伴なう反力の低減を図り、さらに配線体が光路を遮らないようにしたレンズ装置を提供する。
【解決手段】
ズーム移動体31を案内する案内用主軸26の周囲に、螺旋状にフレキシブル基板49を配し、ズーム移動体31の移動に上記フレキシブル基板49の伸縮によって追随させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ装置および撮像装置に係り、とくにレンズを移動体に取付けるとともに、該移動体を筐体内において光軸方向に移動自在に保持したレンズ装置、およびレンズ装置を有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラやデジタルスチルカメラは、小型軽量化、高倍率ズーム、高速フォーカス、高速ズーム等の多くのテーマについてそれぞれの性能向上が図られている。そしてビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の光学機器の移動レンズ群を構成する際に、高精度でかつ高速度に駆動させるために、ズーム機能を持つズーム移動体やフォーカス機能を持つフォーカス移動体にコイルを取付け、これらのコイルをそれぞれマグネットとヨークとによって構成される磁気回路で直線駆動するリニアアクチュエータあるいはリニアモータが用いられている。
【0003】
ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の光学機器の移動レンズ群を有する、代表的な光学系の構成例を図37に示す。ここでは前側鏡筒1に対物レンズ2が固定して取付けられ、光軸方向に移動自在なズーム移動体3にズームレンズ4が取付けられ、中間鏡筒5に中間固定レンズ6が固定され、その後側において光軸方向に移動自在なフォーカス移動体7にフォーカスレンズ8が取付けられる。そして後部鏡筒9にはCCDから成る撮像素子10が取付けられる。また絞りを構成するアイリス11が上記中間固定レンズ6内に配される。そして上記ズーム移動体3とフォーカス移動体7とをそれぞれ光軸方向に移動するために上側の一対の案内軸12、13と、下側の案内軸14とを備える。
【0004】
このようなレンズ鏡筒は、ズーム移動体3によってズームレンズ4を移動させることによってズーム変倍による画枠設定を行なう。またフォーカス移動体7によってフォーカスレンズ8を移動させることにより、ズーム移動体3の移動量に合わせてフォーカス調整を行なう。またアイリス11が適切な露出が得られるように、光学口径を自動調整する。そして映像光を撮像素子10の表面に結像させ、この撮像素子10によって光の強弱を電気信号に変換する。
【0005】
このような撮像用レンズ装置においては、移動体3、7を光軸方向に移動するためにリニアモータを備えるようにし、このリニアモータのコイルに対してフレキシブルプリント基板で給電を行なうようにしている。
【0006】
例えば特開2003−75708号公報には、少なくとも、レンズと巻線コイルを保持したレンズ枠からなる可動部と、該レンズ枠の移動を光軸方向に沿ってガイドするガイド軸と、巻線コイルと作用してレンズ枠を移動させるマグネットを備えたヨーク部とを固定側に有する撮像用レンズ装置であって、可動部と固定体側との間に、巻線コイルへの電源供給配線としてU字状またはV字状を呈するフレキシブルプリント配線板を配設した構成の撮像用レンズ装置であり、フレキシブル配線板の反発力を軽減しつつ、小型レンズ鏡筒に適用できるようにし、小型レンズ鏡筒内にはフレキシブルプリント配線板用のスペースを設ける必要がなく、小型レンズ鏡筒のサイズをさらに小型化するようにした撮像用レンズ装置が開示されている。
【0007】
ここで、レンズ鏡筒が用いられるビデオカメラやデジタルスチルカメラの小型化、軽量化に伴い、レンズ鏡筒自身も小型化、軽量化が進んできている。そのために、レンズ鏡筒内のスペースも限られたものになっている。また、レンズ鏡筒の小型化、軽量化に伴ない、鏡筒内でズームレンズやフォーカスレンズ等の移動する可動体自身の重量も軽減化されており、この可動体上のコイル等の電力を供給する必要がある部分に、給電用の配線であるフレキシブル基板等が、上述の可動体の移動を妨げる方向に発生させる反力も、該移動体を可動制御する際に無視できないものになってきている。さらに、このフレキシブル配線板等による配線は、一般的に、レンズ鏡筒内に位置するために、光学系の光路を遮ることがあってはならない。
【0008】
そのために、従来は、例えば実開平2−67323号公報に開示されているように、フレキシブル配線板を光軸に対して垂直方向に屈曲させる方法が提案されている。
【0009】
また特開平9−80516号公報には、駆動に要する消費電力の削減を目的として、フレキシブル配線板の長手方向の途中に、ねじれ部、撓み部、または折畳み部を設ける手法が用いられている。すなわち図38に示すように、例えばズームレンズ4を保持したズーム移動体3を駆動するためのコイルに給電するフレキシブルプリント基板16の一部に撓み部を設け、これによって移動体3に加えられ反力を軽減している。
【0010】
あるいはまた図39に示すように、ズームレンズ4を保持するズーム移動体3に取付けられ、この移動体3を駆動するリニアモータのコイルへの通電を行なうフレキシブルプリント基板16を折畳むようにし、この折畳み部分の開閉によって移動体3にフレキシブル基板16を追随させるようにしている。
【0011】
図38あるいは図39に示す構成は、レンズ鏡筒内に移動体3を含む可動体が移動するためのスペースを要するのに加え、移動体3等のコイルに電力を供給するためのフレキシブル基板の配置のためのスペースの確保が必要なり、これによって鏡筒の小型化が妨げられる問題があった。
【特許文献1】特開2003−75708号公報
【特許文献2】実開平2−67323号公報
【特許文献3】特開平9−80516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明の課題は、可動体に対する給電のための配線体を工夫することによって、小型化および軽量化を図るようにしたレンズ装置を提供することである。
【0013】
本願発明の別の課題は、限られたスペースの中でしかも可動体のコイルに対して確実に給電を行なうことができるようにしたレンズ装置を提供することである。
【0014】
本願発明のさらに別の課題は、可動体のコイルに対する給電を行なう配線体が発生する反力を軽減し、これによって可動体が円滑に移動するようにしたレンズ装置を提供することである。
【0015】
本願発明のさらに別の課題は、可動体のコイルに対して給電する配線体が光路を遮らないようにしたレンズ装置を提供することである。
【0016】
本願発明のさらに別の課題は、配線体が接続されるコイルを有するリニアモータのヨークを案内軸と兼用することによって、より小型化したレンズ装置を提供することである。
【0017】
本願発明のさらに別の課題は、案内軸上に巻装された配線体が推力を発生し、この推力によって配線体が移動体の動きを阻害する反力を低減させるようにしたレンズ装置を提供することである。
【0018】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、および発明の実施の形態によって明らかにされよう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願の主要な発明は、レンズを移動体に保持し、該移動体を鏡筒内において光軸方向に移動自在に取付けたレンズ装置において、
前記移動体にフレキシブル基板が接続されるとともに、前記移動体を案内する案内軸の周囲に前記フレキシブル基板が伸縮自在に配され、前記移動体の移動に追随することを特徴とするレンズ装置に関するものである。
【0020】
ここで、前記移動体がリニアモータによって光軸方向に移動されるようになされ、該リニアモータのコイルが前記移動体に取付けられ、該コイルへの給電が前記フレキシブル基板によって行なわれてよい。また移動体に保持されて該移動体とともに光軸方向に移動されるレンズが、ズームレンズであってよい。また移動体に保持されて該移動体とともに光軸方向に移動されるレンズが、フォーカスレンズであってよい。また前記移動体を案内する案内軸の周囲であって、前記案内軸と摺動自在に嵌合する移動体のスリーブの摺動スペースに前記フレキシブル基板が伸縮自在に配されてよい。
【0021】
また前記移動体を案内する案内軸の周囲であって、前記移動体の両側に前記フレキシブル基板が伸縮自在に配されてよい。また前記移動体を案内する一対の案内軸の周囲であって、前記移動体に対して反対側に前記フレキシブル基板が伸縮自在に配されてよい。また前記移動体を案内する一対の案内軸の周囲であって、前記移動体に対して同一の側に前記フレキシブル基板が伸縮自在に配されてよい。
【0022】
また前記案内軸の外周面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ平行になるように、前記フレキシブル基板が前記案内軸の周囲に螺旋状に配されてよい。また前記案内軸の外表面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ直角になるように、前記フレキシブル基板が前記案内軸の周囲に螺旋状に配されてよい。また前記フレキシブル基板に複数の折返し部を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部を貫通するように穴を形成し、前記案内軸を前記穴内に挿通するようにしてよい。また前記フレキシブル基板に複数の折返し部を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部に切欠きを形成し、前記案内軸を前記切欠き内に挿通するようにしてよい。
【0023】
また案内軸の外表面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ平行になるように螺旋状に形成されたフレキシブル基板と、案内軸の外表面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ直角になるように螺旋状に形成されたフレキシブル基板と、複数の折返し部を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部を貫通するように案内軸を挿通する穴を形成したフレキシブル基板と、複数の折返し部分を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部に案内軸を挿通する切欠きを形成したフレキシブル基板と、フレキシブルな配線体と、の内の2種が同一の案内軸の前記移動体の両側に配されてよい。また案内軸の外表面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ平行になるように螺旋状に形成されたフレキシブル基板と、案内軸の外表面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ直角になるように螺旋状に形成されたフレキシブル基板と、複数の折返し部を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部を貫通するように案内軸を挿通する穴を形成したフレキシブル基板と、複数の折返し部分を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部に案内軸を挿通する切欠きを形成したフレキシブル基板と、フレキシブルな配線体と、の内の2種が前記移動体を案内する一対の案内軸の周囲であって、前記移動体に対して反対側または同一の側に配されてよい。
【0024】
別の主要な発明は、レンズを移動体に保持し、該移動体を鏡筒内において光軸方向に移動自在に取付けたレンズ装置において、
前記移動体にフレキシブルな配線体が接続されるとともに、前記移動体を案内する案内軸の周囲に前記フレキシブルな配線体が伸縮自在に配され、前記移動体の移動に追随することを特徴とするレンズ装置に関するものである。
【0025】
ここで、前記移動体がリニアモータによって光軸方向に移動されるようになされ、該リニアモータのコイルが前記移動体に取付けられ、該コイルへの給電が前記フレキシブルな配線体によって行なわれてよい。
【0026】
さらに別の主要な発明は、レンズを移動体に保持し、該移動体を鏡筒内において移動自在に取付けたレンズ装置において、
前記移動体を移動自在に案内する案内軸をリニアモータのヨークと兼用し、該ヨーク上にコイルを取付けるとともに、前記コイルに給電する配線体を前記案内軸の周囲に伸縮自在に配することを特徴とするレンズ装置に関するものである。
【0027】
ここで、前記配線体が螺旋状に巻いて伸縮自在にした導体であってよい。また前記配線体が前記ヨーク上のコイルの線材と同一方向に巻装されてよい。また前記案内軸上にボビンが摺動可能に嵌合され、該ボビン上のコイルに前記移動体が連結されてよい。
【0028】
撮像装置に関する主要な発明は、上記の何れかの構成に係るレンズ装置を有する撮像装置である。
【0029】
本願発明の好ましい態様は、レンズ鏡筒のズームレンズを保持するズーム移動体、フォーカスレンズを保持するフォーカス移動体等の可動部品がコイルを備え、これらのコイルに電力を供給する必要がある場合に、そのコイル等の部品に電力を供給する配線手段として、フレキシブル配線板を配線材として用いるものである。本態様は、コイル等を備える可動部品へ、フレキシブル基板等の配線体を利用し、可動部品が移動する際にガイドする案内軸の周囲のスペースを有効に用い、これによって特別の配線用のスペースを確保することなく、省スペースで配線を配置し、給電を行なうための構成を提供する。また同時にこの配線体が可動部品のストローク内において、その移動を妨げる反力を、できるだけ小さく抑えることができるようにする。
【0030】
上述の目的を達成するために、
(1)フレキシブル配線板等の配線体を、可動部品をガイドするガイド軸の表面と配線体の表面とが互いにほぼ平行になるように螺旋状に巻付けるように配置することによって、省スペース化、かつフレキシブル配線板が可動部品に与える反力を小さく抑えるようにする。
【0031】
(2)フレキシブル配線板等の配線体を、可動部品をガイドするガイド軸の軸表面と配線体の面とが垂直になるように、螺旋状に形成することで、ガイド軸の周囲に配置でき、省スペース化が可能になり、かつフレキシブル配線板等の配線体が可動部品に与える反力を小さく抑えることできる。
【0032】
(3)フレキシブル配線板に折返し部を多く設け、蛇腹形状とし、その中央部に可動部品のガイドとなる案内軸が貫通する穴を設けることによって、ガイド軸の周囲にフレキシブル配線板を配置でき、省スペース化を可能にする。しかもフレキシブル配線板が可動部品に与える反力を小さく抑える。
【0033】
(4)フレキシブル配線板に折返し部を多く設け、蛇腹形状とし、その中央部に可動部品のガイドとなるガイド軸が貫通できる切欠きを持った形状とすることにより、ガイド軸の周囲にフレキシブル配線板を配置でき、省スペース化が可能になり、しかもフレキシブル配線板が可動部品に与える反力を小さく抑えることが可能になる。
【0034】
(5)移動体を移動自在に案内するリニアモータのヨークを、移動体を移動自在に案内する案内軸と兼用し、この案内軸に沿ってコイルを移動可能にし、しかもこのコイルに対する給電手段を構成する配線体を案内軸の周囲に伸縮自在に配すると、案内手段とリニアモータのヨークとが兼用されて部品点数が少くなり、しかも配線体を配するための特別なスペースを必要としなくなる。
【0035】
ここでとくに配線体の巻き方向をコイルの巻き方向と同一の方向にすると、配線体自身にも推力が発生し、配線体が移動体の動きを阻害する反力をさらに低減させる効果を生ずることになる。
【0036】
上述のような構成によれば、小型化、軽量化が進むレンズ鏡筒内での、ズーム動作やフォーカス動作の際に、移動する可動体への給電時のように、限られたスペースの中で、軽量な可動体へ給電する際に、フレキシブル配線板等の配線体用に特別なスペースを確保することなく、省スペースで配線体を配置することできる。同時に、この配線体によって、可動体が移動する際に発生する反力等の負荷を軽減することが可能になる。またレンズ鏡筒のような小型デバイスで、本配線形態を用いる際には、その光路を遮ることなく、構造体の内部に給電用の配線体を設置することが可能になる。
【発明の効果】
【0037】
本願の主要な発明は、レンズを移動体に保持し、該移動体を鏡筒内において光軸方向に移動自在に取付けたレンズ装置において、移動体にフレキシブル基板が接続されるとともに、移動体を案内する案内軸の周囲にフレキシブル基板が伸縮自在に配され、移動体の移動に追随させるようにしたものである。
【0038】
従ってこのようなレンズ装置によれば、案内軸の周囲に伸縮自在に配されたフレキシブル基板によって給電がおこなわれるとともに、移動体の移動の際に上記フレキシブル基板が案内軸上で伸縮するために、フレキシブル基板を配置するための特別なスペースを要せず、これによってレンズ装置の小型化および軽量化が可能になる。またフレキシブル基板が伸縮自在であることから、移動体に対する反力を軽減できるようになる。また案内軸の周囲にフレキシブル基板を配置しているために、レンズ装置の光路を上記のフレキシブル基板が遮ることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1〜図7は本実施の形態に係る撮像用レンズ装置を示すものであって、この撮像用レンズ装置は図1および図2に示すように、ほぼ直方体状をなす合成樹脂製の外筐20を備える。外筐20の前面側の開口は前面板21によって閉じられるようになっており、しかも前面板21には図1〜図3に示すように前側鏡筒22が連設されている。そして前側鏡筒22に対物レンズ23が固定保持されている。これに対して外筐20の背面側の開口は背面板24によって閉塞されるようになっている。
【0040】
外筐20の内部にはその上側に左右一対の案内用主軸26、27が配設され、下側には案内用副軸28が配されている。これらの主軸26、27および副軸28は、前面板21と背面板24とによってその前端部と後端部とがそれぞれ支持されるようになっている。
【0041】
上記案内用主軸26と案内用副軸28とによって、図3〜図5に示すズーム移動体31が光軸方向に移動自在に取付けられている。ズーム移動体31はレンズ枠であって、ズームレンズ32を保持している。また案内用主軸27と案内用副軸28とによって図3、図4、および図6に示すようにフォーカス移動体33が光軸方向に移動自在に配されている。そしてフォーカス移動体33によってフォーカスレンズ34が固定支持されている。
【0042】
また外筐20内にはその光軸方向の中間位置であってレンズ移動体31とフォーカス移動体33との間に隔壁36(図3参照)が固定配置され、この隔壁36にはその中心部に前方に突出するように中間鏡筒37が突設されている。そして中間鏡筒37には中間固定レンズ38が固定保持されている。また中間固定レンズ間には絞り装置を構成するアイリス39(図1参照)が挿入されるようになっている。
【0043】
次に上記ズーム移動体31を移動するためのズーム用リニアモータ41の構成について説明すると、図4および図5に示すように、ズーム用リニアモータ41は角筒状をなすコイル42を備え、このコイル42がズーム移動体31に固定されるとともに、案内用主軸26とほぼ平行に配されるガイドコア43の外周部に摺動自在に取付けられる。そして上記ガイドコア43の両端に接するように、ほぼコ字状をなすヨーク44が上方から取付けられる。そしてヨーク44の下面にはマグネット45が固着され、このマグネット45の磁束が上記ヨーク44およびガイドコア43を通過することによって磁気回路を形成するようになっている。
【0044】
上記コイル42を備えるズーム移動体31の外側面上には位置検出用マグネット46が取付けられており、この位置検出用マグネット46を取付け板47(図2参照)に取付けられた磁気抵抗素子48によって検出するようにしている。なお上記コイル42はズーム移動体31の背面側であって、後述する撮像素子61側の面に取付けられたフレキシブル基板49によって給電される。またヨーク44は図1および図2に示すように外筐20の上面に形成されたスリット50内に受入れられる。
【0045】
次にフォーカスレンズ34を保持するフォーカス移動体33の移動のためのフォーカス用リニアモータ51について、図3、図4、図5、図6によって説明する。このリニアモータ51はフォーカス移動体33に取付けられた角筒状のコイル52を備えている。角筒状のコイル52は案内用主軸27に平行に配されたガイドコア53によって摺動自在に案内される。そしてガイドコア53の上面に接するようにほぼコ字状をなすヨーク54が取付けられる。ヨーク54は図1および図2に示すように、外筐20の上面のスリット60に保持される。そして上記ヨーク54の下面には棒状のマグネット55が取付けられるようになっている。
【0046】
上記コイル52を取付けているフォーカス移動体33の側面には、位置検出用マグネット56が取付けられ、このマグネット56を、取付け板57(図1参照)の内側に固定された磁気抵抗素子58によって検出するようにしている。またフォーカス移動体33の対物レンズ側の側面には、フレキシブル基板59が取付けられ、このプリント基板59によってコイル52に対する給電がなされるようになっている。
【0047】
このようなレンズ構成を備える光学系の結像部には撮像素子61が配されている。この撮像素子61で光学像を電気的な撮像信号に変換する。撮像素子61としては、CCDイメージャが使用される。撮像素子61から読出された映像信号は、図7に示すA/D変換器62によってデジタル信号に変換され、信号処理プロセッサ63に供給されて適正な映像信号とする処理が行われ、この処理が行われた映像信号が撮像装置から出力される。またこの撮像装置が映像信号記録部を備えたビデオカメラである場合には、得られた映像信号がその記録部で記録される。
【0048】
信号処理プロセッサ63内には、撮像信号の所定の成分、例えば輝度の高域成分を検波する検波回路を備え、この検波回路の検出出力を、撮像装置の撮像動作を制御するコントローラ64に供給する。コントローラ64では、この検出信号のレベルに基づいて、フォーカスの状態、すなわち合焦状態を判定し、その判定した合焦状態がジャストフォーカス状態となるように自動フォーカス制御を行なう。
【0049】
このフォーカス制御は、コントローラ64からサーボ回路66にフォーカス制御用レンズ34を駆動するためのサーボ制御処理を行なってモータ51の駆動信号を生成させ、この駆動信号をサーボモータ51に供給し、フォーカスレンズ34の可動位置を調整することにより行なう。
【0050】
またコントローラ64には、ズーム操作キーの操作情報が供給され、このズーム操作キーの操作情報に基づいて、画枠設定用のズームレンズ32の目標位置情報をサーボ回路66に供給し、サーボ回路66でその目標位置にズームレンズ32を駆動するためのサーボ処理を行なってモータ41の駆動信号を生成させ、その駆動信号をモータ41に供給し、ズームレンズ32の可動位置を調整する。
【0051】
この場合にズーム操作キーの操作状態によって、サーボモータ41による画枠設定用ズームレンズ32の駆動速度を可変できる構成にしており、最も高速で駆動した際には、ワイド端(すなわち最も焦点距離が短い状態)からテレ端(すなわち最も焦点距離が長い状態)に画枠設定用ズームレンズ群32が移動する時間が、例えば1秒未満の非常に短い高速駆動ができるようにしている。
【0052】
フォーカス調整用レンズ34はフォーカスを合わせる被写体位置が同じであっても、画枠(焦点距離)が変化するときに、焦点距離に対して位置を変化させないと、ジャストフォーカス状態を維持できない。この焦点距離とジャストフォーカス状態のフォーカス調整用レンズ34の位置との対応関係については、コントローラ64に接続されたメモリ65に予め必要な情報が設定されている。そして焦点距離が変化したときに、コントローラ64はメモリ65の記憶情報を読出して、サーボ回路66にフォーカス制御用のサーボ制御信号を供給し、フォーカス調整用レンズ34の可動位置を調整する。
【0053】
この場合にサーボモータ51によるフォーカスレンズ34の駆動についても、非常に高速駆動できるようにしてあり、例えば上述したように画枠設定用ズームレンズ32を高速で可動させたときに、その移動に追従したフォーカスレンズ34の可動位置を補正してジャストフォーカス状態を維持する処理についても、高速で行なえるようにしている。
【0054】
次にこのような撮像用レンズ装置において、上記ズーム用リニアモータ41のコイル42、およびフォーカス用リニアモータ51のコイル52に対する給電の構造について説明する。これらは実質的にほぼ同一の構成になっているために、以下ズーム用リニアモータ41のコイル42に対する給電について説明する。
【0055】
図8および図9に示すように、ズーム移動体31を駆動するズーム用リニアモータ41のコイル42に給電するためのフレキシブル基板49はズームレンズ32を保持する移動体31を案内する案内用主軸26の周囲に螺旋状に巻付けられて取付けられる。ここで案内用主軸26の外周面と、フレキシブル基板49の平面とがほぼ平行になるように配置され、移動体31の移動中に、螺旋の隣合うフレキシブル基板49同士が重ならない形状にしている。これによって、フレキシブル基板49同士が重合うことで発生する負荷変動や、摺動抵抗を発生することなく、伸縮動作を行なうことが可能になる。また形状作成の際も、均一径の部材に巻付けながら成形して形成することが可能になる。
【0056】
このような構成は、ズーム移動体31の軸受け部分であるスリーブ71が摺動するための空間を有効に利用し、この空間にフレキシブル基板49等の配線体を配置するために、フレキシブル基板49の配置のための特別なスペースを確保する必要がなくなる。すなわちフレキシブル基板49等の配線体を、ズーム移動体31が移動する際に案内する案内主軸26の周囲に、省スペース型で配置している。
【0057】
図10は図8および図9に示す形態の変形例を示している。この変形例においては、案内用主軸26の外周囲に巻装されるフレキシブル基板49がこの案内軸26上のズーム移動体31の両側に配されている。すなわちコイル42を駆動するために一方、例えば右方のフレキシブル基板49によって給電を行ない、この後に他方のフレキシブル基板49によってアース側に電流を流すようにしている。従ってこのような構成によると、移動体31の両側のフレキシブル基板49によって案内軸26の長さ方向に電流を流しながらコイル42を駆動できるようになる。
【0058】
次に図11および図12によって、別の実施の形態を説明する。この実施の形態は、フレキシブル基板49を、ズーム移動体31を案内する案内用主軸26の周囲に、フレキシブル基板49の表面が案内用主軸26の表面にならうように、螺旋状に巻付けるような形で配置される。しかもズーム移動体31が移動する際に、螺旋の隣合うフレキシブル基板49同士が可動中に、常に重なって隙間を発生しない状態を維持する形状としている。このような構成によって、フレキシブル基板49の螺旋の巻数を増すことが可能になり、このフレキシブル基板49によって発生する反力を上記図8および図9に示す形態よりも低減させることができ、伸縮の確実性が増大することになる。
【0059】
次に上記実施の形態の変形例を図13および図14によって説明する。図13に示す変形例は、移動体31の両側において、案内用主軸26上にそれぞれフレキシブル基板49を配し、これらのフレキシブル基板49によってコイル42の駆動を行なうようにしている。従ってここでは、一方のフレキシブル基板49によって給電が行なわれ、この後に他方のフレキシブル基板49を通してアース側に電流が流れる。
【0060】
図14に示す構成は、案内用主軸26と案内用副軸28とにそれぞれフレキシブル基板49を配した構成になっており、例えば案内用主軸26上に巻装されたフレキシブル基板49によってコイル42に給電を行ない、この後に移動体31に取付けられたフレキシブル基板から、案内用副軸26上のフレキシブル基板49に電流が流れ、これによってアースに落ちる。
【0061】
次に図11および図12に示す形態の別の変形例を、図15によって説明する。ここではフレキシブル基板49を、ズーム移動体31を案内する案内用主軸26の周囲に、このフレキシブル基板49の面が案内用主軸26の表面にならうように、螺旋状に巻付けるような形で配置するとともに、螺旋の互いに隣合うフレキシブル基板49同士の曲率に差を持たせるようにしている。従ってズーム移動体31が移動する際に、互いに隣合うフレキシブル基板49同士が衝突することがなく、重なることができるようにする。これによって、図8および図9に示す構成に比較して、フレキシブル基板49の螺旋の巻数を増加させることが可能になり、このフレキシブル基板49によって発生する反力を上記の形態よりも低減させることが可能になる。
【0062】
次にさらに別の実施の形態を図16および図17によって説明する。この実施の形態は、リボン状をなす配線材料を螺旋状に形成した螺旋状配線体72を用いる。ズーム移動体31を案内する案内用主軸26の周囲に、この螺旋状配線体72を巻付けるように、案内用主軸26と螺旋状配線体72の面が互いにほぼ直角になるような形で形成配置する。これによって、螺旋状配線体72が発生するズーム移動体31の移動に対する反力を低減させることが可能になる。
【0063】
次に図18によって上記の形態の変形例を説明する。この変形例は、案内用主軸26上であって、移動体31の両側にそれぞれ螺旋状配線体72を配するようにしている。一方の螺旋状配線体72によってコイル41に給電を行ない、この後にコイル42からの電流を他方の螺旋状配線体72に流すようにしている。従って両側の螺旋状配線体72はそれぞれが単一の導電性パターンを有するだけでよく、これによって両側の螺旋状配線体72の巾を狭くすることが可能になる。
【0064】
次に別の実施の形態を、図19〜図21によって説明する。ここでは図19および図20に示すように、フレキシブル基板49に多数の折返し部74を設け、蛇腹状に折返した形状を作成し(図21参照)、その中央部にズーム移動体31が可動する際のガイドとなる案内用主軸26が貫通できる穴75を設けることによって、案内用主軸26の周囲にフレキシブル基板49を配置できるようになる。しかもここでフレキシブル基板49には多数の折返し部74が形成されているために、フレキシブル基板49がズーム移動体31に与える反力を小さく抑えることが可能になる。なお図20および図21に示すように、フレキシブル基板49には、その両端にそれぞれ接続部73が形成され、この接続部73が所定の位置に接続される。
【0065】
次に図22によって上記の形態の変形例を説明する。この変形例は、蛇腹状に折返されたフレキシブル基板49を、移動体31に対してその両側において案内用主軸26上に配するようにしている。従って案内用主軸26の外周部であってスリーブ71の両側の空間を有効に利用してフレキシブル基板49を取付けることができるようになる。
【0066】
図23に示す構成は、案内用主軸26に代えて、案内用副軸28上の、上記移動枠31の両側の部分にそれぞれ蛇腹状のフレキシブル基板49を配したものである。このように案内用主軸26のみならず、案内用副軸28を利用して、移動体31の両側にフレキシブル基板49を配することも可能である。
【0067】
図24はさらに別の変形例を示している。この変形例は、案内用主軸26の外周面上であってとくに移動体31に対して右側の部分に蛇腹状のフレキシブル基板49を配し、これに対して移動体31に対して左側であって案内用主軸26上には、螺旋状に巻回されたフレキシブル基板49を巻装している。ここで左側のフレキシブル基板49は図9に示すように、互いに隣接するフレキシブル基板同士が離れた状態で螺旋状に巻装される。
【0068】
このように案内用主軸26あるいは案内用副軸28の移動体31の両側に、螺旋状であってその表面が案内用主軸26または案内用副軸28の表面とほぼ平行なフレキシブル基板49(図9、図12、図15)、螺旋状であってその表面が案内用主軸26または案内用副軸28の表面とほぼ直角なフレキシブル基板49(図17)、螺旋状であって中央に案内用主軸26または案内用副軸28を挿通する穴75を形成したフレキシブル基板49(図20)、螺旋状であって中央に案内用主軸26または案内用副軸28を挿通する切欠き76を形成したフレキシブル基板(図25)等の、互いに構造が異なるフレキシブル基板49あるいは配線体を配し、これによってコイル42に対する給電を行なうことが可能である。この場合に、移動体31に対して、案内用主軸26上のフレキシブル基板49と案内用副軸48上のフレキシブル基板とが互いに反対側にあってもよく、あるいはまた同一側にあってもよい。
【0069】
次にさらに別の実施の形態を図25によって説明する。この実施の形態は、フレキシブル基板49を図25に示すように打抜くとともに、多数の折曲げ線74を形成し、これによって蛇腹状に折返した形状とする。また折返した状態で、その中央部にズーム移動体31の案内のための案内用主軸26が貫通できる切欠き76を設けるようにしている。従って図25に示すフレキシブル基板49を折曲げた蛇腹状の形態を、案内用主軸26に対してその側方からこの主軸26に取付けることができる。しかも折曲げ線74による折曲げ部を多数設けることによって、このフレキシブル基板49がズーム移動体31に与える反力を小さくすることが可能になる。
【0070】
図26および図27は、図25に示す構成の変形例を示している。すなわちフレキシブル基板49の打抜き形状を変更するとともに、折曲げ線74の位置を、折曲げられたときにその角度範囲が、270度、180度、90度の領域で折曲げられるようにしている。
【0071】
またこのようなフレキシブル基板49において、折曲げ部分の幅を狭くしたり、配線用基板49の厚さを薄くしたり、折曲げ部分のみのこの配線板の厚さを部分的に薄くすること等によって、折曲げ部分で発生する反力がさらに低減される。また折曲げ部分の数を増やすことによって発生する反力をさらに低減させることが可能になる。
【0072】
次に、さらに別の実施の形態を、図28および図29によって説明する。この実施の形態は、断面が円形の線材によって螺旋状配線体80を形成し、この螺旋状配線体80をズーム移動体31を案内する案内用主軸26の外周部に装着したものである。すなわち断面が円形の導線80を、ズーム移動体31を案内する案内用主軸26の周囲に、コイルばねのように螺旋状に巻付けて配置することによって、この導線80が発生する可動体31の移動に伴なう反力を小さく抑えることが可能になる。
【0073】
ここで、上記の螺旋状配線体80を構成する導線を、ズーム移動体31に取付けられているコイル42を構成する線材と別部材としてもよい。配線材料が、ボイスコイルのように、マグネットワイヤのような導線から成立っている場合には、ボイスコイルを形成する導線を、そのまま引出して形成してもよい。またボイスコイルを形成する導線を、そのまま引出して使用する場合に、その導線にソクシール(ニッポン高度紙工業株式会社の商品名。ポリイミド系樹脂で、一般には薄型フレキシブル基板の基本素材として用いられるものであるが、皮膜材としてコーティングして強度を上げたもの。ここでソクシール以外の補強皮膜材を用いてもよい。)をコーティングする等の被膜処理を行なうことで、導線80の強度を上げることが可能になり、組立て時等の取扱いの際の断線等の事故を防止できるようになる。
【0074】
次に上記実施の形態の変形例を説明する。図30に示すように、案内用主軸26上であって移動体31の両側にそれぞれ螺旋状配線体80を配し、これらの螺旋状配線体の先端部を、コイル42の一対の端子にそれぞれ接続することによって、コイル42の駆動が可能になる。
【0075】
図31に示す構成は、案内用主軸26ではなく、案内用副軸28上であって、移動体31の両側において、それぞれ螺旋状配線体80を巻装して取付けている。ここで両側の螺旋状配線体80の先端部は、移動体31の部分に取付けられているフレキシブル基板を介してコイル42の両側の端子に接続される。
【0076】
図32に示す構成は、案内用主軸26の移動体31に対して左側の部分に螺旋状配線体80を配し、案内用副軸28の移動体31の右側の部分に螺旋状配線体80を取付けるようにしたものである。ここで案内用主軸26上の螺旋状配線体80はコイル42の一端に接続される。これに対して案内用副軸28上の螺旋状配線体80は、移動体31上のフレキシブル基板を介してコイル42の他方の端子に接続される。
【0077】
図33に示す構成は、案内用主軸26の移動体31の左側の部分に螺旋状配線体80を取付けるようにし、さらに案内用副軸28の移動体31の左側の部分に別の螺旋状配線体80を配するようにしている。案内用主軸26上の配線体80は、コイル42の一端に接続される。これに対して案内用副軸28上の螺旋状配線体80は、移動体31に取付けられるフレキシブル基板を介して、コイル42に接続される。
【0078】
次に別の実施の形態を図34および図35によって説明する。この実施の形態は、案内用主軸26を、移動体31を駆動するリニアモータのヨークと兼用するようにしたものである。すなわち磁性材料から成る円柱状の案内用主軸26は、コ字状をなすヨーク82と組合わされるようになっており、ヨーク82の下面であって上記案内用主軸26の外周側と対向する位置に細長いマグネット83が取付けられる。そして案内用主軸26上であってボビン84上にはコイル85が巻装される。そしてコイル85とマグネット83とによって上記移動体31を移動するリニアモータが構成される。しかも移動体31の外周上には位置検出用マグネット46が固着され、この位置検出用マグネット46の磁気を磁気抵抗素子48によって検出するようになっており、これによって移動体31に取付けられるズームレンズ32の位置の検出を行なうようになっている。なお移動体31は、上記案内用主軸26とともにもう1本の案内用副軸28によって光軸方向に移動自在に支持される。
【0079】
しかもここで、ヨークを兼用する案内用主軸26上を摺動可能に移動するボビン84上のコイル85に通電を行なうために、案内用主軸26上には、ボビン84の両側にそれぞれ螺旋状配線体72が配される。従ってこのような配線体72を通してコイル85に対する通電が行なわれ、この通電によってコイル85が推力を生じ、このためにボビン84を介して移動体31が、案内用主軸26と案内用副軸28とによって案内されながら光軸方向に移動される。なおこのときの移動位置は、移動体31と一緒に移動する位置検出用マグネット46の磁極を磁気抵抗素子48によって検出することにより、検出が行なわれる。
【0080】
このような構成によると、レンズ32を光軸方向に移動させるリニアモータのヨークを案内用主軸26によって兼用することができるために、部品点数が少くなるとともに、移動体31の移動のためのリニアモータのスペースを小さくできるようになり、より小型のレンズ装置が提供される。なお案内用主軸26に代えて案内用副軸28をリニアモータのヨークと兼用してもよい。
【0081】
またこのように、案内用主軸26の外周部にコイル85とマグネット83とを配置し、案内用主軸26をリニアモータの磁気回路のヨークとして利用する駆動装置において、コイル85に対する給電手段を構成する螺旋状配線体72の巻き方向を駆動コイル85と同じ方向にすると、螺旋状配線体72も軸線方向の推力を発生し、この推力が移動体31の動きを阻害する螺旋状配線体72の反力をさらに低減させる効果が期待できる。すなわち反力を螺旋状配線体72の推力と相殺することによって、反力が減少することになる。
【0082】
上述の何れの実施の形態においても、案内用主軸26の周囲であってスリーブ71の摺動スペースに、フレキシブルプリント基板49あるいは螺旋状配線体72、80が配されるために、レンズ鏡筒内で光路を遮ることなくしかもコイル42に対する給電用配線体を配置することが可能になる。また上述の配線体は、案内用主軸26の軸線方向に対してフレキシブルであって変形可能になっているために、ズーム移動体31の反力を抑えることが可能になり、ズーム用リニアモータ41の消費電力を低減し、ズームレンズ32の移動の安定した制御性を得ることが可能になる。
【0083】
表1は、上記のそれぞれの実施の形態に係るフレキシブル基板あるいは螺旋状配線体を作成したときの、寸法とばね定数とを示している。また図20は、上記のそれぞれの実施の形態を従来のものと比較したときの、ズーム移動体の移動に伴なう変位と、水平方向の荷重、すなわち配線体の反力とをグラフによって示したものである。このグラフから明らかなように、大部分の実施の形態は、従来の配線構造に比べて変位に対する配線体の反力が小さくなっている。またこのグラフから、ストロークに応じて最適な反力の配線体を選択できる。
【0084】
【表1】

【0085】
以上本願発明を、図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願に含まれる発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。例えば図30〜図35の構成において、移動枠31の両側に螺旋状配線体80を配するのではなくて、一方には螺旋状配線体80を、他方には伸縮自在なフレキシブル基板を配するようにしてもよい。また上記実施の形態は、ズーム用リニアモータ41のコイル42に対する給電を、フレキシブル基板49、螺旋状配線体72、80等によって行なうようにしているが、これらのフレキシブル基板や円形の導線を用いる代わりに、リボン状のマグネットワイヤのような導線を用いて同様の形状とすることにより、上記実施の形態と同様の作用効果を奏することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本願発明は、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯情報端末用カメラ、その他各種の撮像装置の撮像用レンズ装置として広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】撮像用レンズ装置の外観斜視図である。
【図2】撮像用レンズ装置の右側面を上側にした状態の外観斜視図である。
【図3】同レンズ装置の外筐を取外した状態の側面図である。
【図4】レンズ装置の要部の斜視図である。
【図5】図4に示す要部を対物レンズ側から見た正面図である。
【図6】図4に示すレンズ装置を撮像素子側から見た背面図である。
【図7】レンズ装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図8】ズーム移動体のコイルに対する給電機構を示す要部斜視図である。
【図9】給電用フレキシブル基板の要部斜視図である。
【図10】変形例の給電機構を示す要部斜視図である。
【図11】別の実施の形態のコイルに対する給電機構を示す要部斜視図である。
【図12】同給電用フレキシブル基板の外観斜視図である。
【図13】変形例の給電機構を示す要部斜視図である。
【図14】別の変形例の給電機構を示す要部斜視図である。
【図15】変形例のフレキシブル基板の外観斜視図である。
【図16】さらに別の実施の形態のコイルに対する給電の構造を示す要部斜視図である。
【図17】同螺旋状配線体の要部斜視図である。
【図18】変形例に係る給電機構を備えるズーム移動体の移動機構の要部斜視図である。
【図19】さらに別の実施の形態のコイルに対する給電機構を示す要部斜視図である。
【図20】同フレキシブル基板の要部斜視図である。
【図21】同フレキシブル基板の展開平面図である。
【図22】変形例の給電機構を示す要部斜視図である。
【図23】別の変形例の給電機構の要部斜視図である。
【図24】さらに別の変形例の給電機構の要部斜視図である。
【図25】別の実施の形態のフレキシブル基板の展開平面図である。
【図26】同変形例に係るフレキシブル基板の展開平面図である。
【図27】別の変形例に係るフレキシブル基板の展開平面図である。
【図28】さらに別の実施の形態のコイルに対する給電機構を示す要部斜視図である。
【図29】同螺旋状配線体の外観斜視図である。
【図30】変形例に係る給電機構を示す要部斜視図である。
【図31】別の変形例の給電機構の要部斜視図である。
【図32】さらに別の変形例の給電機構の要部斜視図である。
【図33】さらに別の変形例の給電機構の要部斜視図である。
【図34】別の実施の形態のズーム移動体の要部斜視図である。
【図35】図34に示すズーム移動体の駆動機構を垂直に立てた状態の斜視図である。
【図36】給電用フレキシブル基板または給電用配線体の変位に対する水平方向の反力を示すグラフである。
【図37】従来のレンズ装置の要部縦断面図である。
【図38】従来の給電用フレキシブル基板の配置を示すズーム移動体の要部斜視図である。
【図39】従来の別の形態に係るフレキシブル基板の配置を示す要部斜視図である。
【符号の説明】
【0088】
1…前側鏡筒、2…対物レンズ、3…ズーム移動体、4…ズームレンズ、5…中間鏡筒、6…中間固定レンズ、7…フォーカス移動体、8…フォーカスレンズ、9…後部鏡筒、10…撮像素子(CCD)、11…アイリス、12、13…案内軸(上)、14…案内軸(下)、16…フレキシブルプリント基板、20…外筐、21…前面板、22…前側鏡筒、23…対物レンズ、24…背面板、26、27…案内用主軸、28…案内用副軸、31…ズーム移動体、32…ズームレンズ、33…フォーカス移動体、34…フォーカスレンズ、36…隔壁、37…中間鏡筒、38…中間固定レンズ、39…アイリス(絞り装置)、41…ズーム用リニアモータ、42…コイル、43…ガイドコア、44…ヨーク、45…マグネット、46…位置検出用マグネット、47…取付け板、48…磁気抵抗素子、49…フレキシブルプリントケーブル、50…スリット、51…フォーカス用リニアモータ、52…コイル、53…ガイドコア、54…ヨーク、55…マグネット、56…位置検出用マグネット、57…取付け板、58…磁気抵抗素子、59…フレキシブルプリントケーブル、60…スリット、61…撮像素子(CCD)、62…A/D変換器、63…信号処理プロセッサ、64…コントローラ、65…メモリ、66…サーボ回路、71…スリーブ、72…螺旋状配線体、73…接続部、74…折曲げ線、75…貫通穴、76…切欠き、80…螺旋状配線体、82…ヨーク、83…マグネット、84…ボビン、85…コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを移動体に保持し、該移動体を鏡筒内において光軸方向に移動自在に取付けたレンズ装置において、
前記移動体にフレキシブル基板が接続されるとともに、前記移動体を案内する案内軸の周囲に前記フレキシブル基板が伸縮自在に配され、前記移動体の移動に追随することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記移動体がリニアモータによって光軸方向に移動されるようになされ、該リニアモータのコイルが前記移動体に取付けられ、該コイルへの給電が前記フレキシブル基板によって行なわれることをと特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
移動体に保持されて該移動体とともに光軸方向に移動されるレンズが、ズームレンズであることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項4】
移動体に保持されて該移動体とともに光軸方向に移動されるレンズが、フォーカスレンズであることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記移動体を案内する案内軸の周囲であって、前記案内軸と摺動自在に嵌合する移動体のスリーブの摺動スペースに前記フレキシブル基板が伸縮自在に配されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記移動体を案内する案内軸の周囲であって、前記移動体の両側に前記フレキシブル基板が伸縮自在に配されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記移動体を案内する一対の案内軸の周囲であって、前記移動体に対して反対側に前記フレキシブル基板が伸縮自在に配されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記移動体を案内する一対の案内軸の周囲であって、前記移動体に対して同一の側に前記フレキシブル基板が伸縮自在に配されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記案内軸の外周面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ平行になるように、前記フレキシブル基板が前記案内軸の周囲に螺旋状に配されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項10】
前記案内軸の外表面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ直角になるように、前記フレキシブル基板が前記案内軸の周囲に螺旋状に配されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記フレキシブル基板に複数の折返し部を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部を貫通するように穴を形成し、前記案内軸を前記穴内に挿通することを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項12】
前記フレキシブル基板に複数の折返し部を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部に切欠きを形成し、前記案内軸を前記切欠き内に挿通することを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項13】
案内軸の外表面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ平行になるように螺旋状に形成されたフレキシブル基板と、案内軸の外表面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ直角になるように螺旋状に形成されたフレキシブル基板と、複数の折返し部を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部を貫通するように案内軸を挿通する穴を形成したフレキシブル基板と、複数の折返し部分を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部に案内軸を挿通する切欠きを形成したフレキシブル基板と、フレキシブルな配線体と、の内の2種が同一の案内軸の前記移動体の両側に配されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項14】
案内軸の外表面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ平行になるように螺旋状に形成されたフレキシブル基板と、案内軸の外表面と前記フレキシブル基板の表面とが互いにほぼ直角になるように螺旋状に形成されたフレキシブル基板と、複数の折返し部を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部を貫通するように案内軸を挿通する穴を形成したフレキシブル基板と、複数の折返し部分を設けて蛇腹形状とし、しかもほぼ中央部に案内軸を挿通する切欠きを形成したフレキシブル基板と、フレキシブルな配線体と、の内の2種が前記移動体を案内する一対の案内軸の周囲であって、前記移動体に対して反対側または同一の側に配されることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項15】
レンズを移動体に保持し、該移動体を鏡筒内において光軸方向に移動自在に取付けたレンズ装置において、
前記移動体にフレキシブルな配線体が接続されるとともに、前記移動体を案内する案内軸の周囲に前記フレキシブルな配線体が伸縮自在に配され、前記移動体の移動に追随することを特徴とするレンズ装置。
【請求項16】
前記移動体がリニアモータによって光軸方向に移動されるようになされ、該リニアモータのコイルが前記移動体に取付けられ、該コイルへの給電が前記フレキシブルな配線体によって行なわれることを特徴とする請求項15に記載のレンズ装置。
【請求項17】
レンズを移動体に保持し、該移動体を鏡筒内において移動自在に取付けたレンズ装置において、
前記移動体を移動自在に案内する案内軸をリニアモータのヨークと兼用し、該ヨーク上にコイルを取付けるとともに、前記コイルに給電する配線体を前記案内軸の周囲に伸縮自在に配することを特徴とするレンズ装置。
【請求項18】
前記配線体が螺旋状に巻いて伸縮自在にした導体であることを特徴とする請求項17に記載のレンズ装置。
【請求項19】
前記配線体が前記ヨーク上のコイルの線材と同一方向に巻装されることを特徴とする請求項18に記載のレンズ装置。
【請求項20】
前記案内軸上にボビンが摺動可能に嵌合され、該ボビン上のコイルに前記移動体が連結されることを特徴とする請求項17に記載のレンズ装置。
【請求項21】
請求項1〜20の何れかに記載のレンズ装置を有する撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−215521(P2006−215521A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184112(P2005−184112)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】