説明

レンズ鏡筒、撮像装置及びレンズ鏡筒の取付け調整方法

【課題】レンズ鏡筒をハウジングへの取付けるときに、精度よく傾き調整することができるレンズ鏡筒の取付け調整方法を提供する。
【解決手段】レンズ鏡筒3の後部側が固定されるハウジングの取付開口部4dの背面側周囲の、撮影レンズ系の光軸方向と直交する平面上の3箇所に、レンズ鏡筒3の傾きを調整するためのカム面を有するカム10を光軸方向に沿った回転軸を回転中心にして回転可能に設け、レンズ鏡筒3の後部側に、各カム面に接するように取付けたカム当接部材11と、各カム当接部材11をカム面に押し付ける方向へ付勢する圧縮コイルばね14とを備えており、各カム10を回転軸を回転中心にして回転させて、カム面に付勢されているカム当接部材11を光軸方向に沿って前後へ移動させることで、レンズ鏡筒3をハウジングに取付けるときの傾きを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒、撮像装置及びレンズ鏡筒の取付け調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレンズが内部に配置されたレンズ鏡筒を該レンズ鏡筒が取付けられるハウジングに取付けて固定する場合、例えば、特許文献1のような鋼球の直径を変化させることでレンズ鏡筒のハウジングへの取付け位置を調整する技術が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記特許文献1のような鋼球の直径を変化させることでレンズ鏡筒のハウジングへの取付け位置を調整する技術では、鋼球の直径を変化させるピッチで調整精度が決まってしまう。このため、前記特許文献1の技術を、レンズ鏡筒をハウジングに取付けて固定するときのレンズ鏡筒の傾き調整に適用した場合、鋼球の直径を変化させるピッチでレンズ鏡筒の傾きの調整精度が決まってしまうため、必ずしも精度の高い傾き調整を行えないことがある。
【0004】
そこで、本発明は、レンズ鏡筒をハウジングへの取付けるときに、精度よく傾き調整することができるレンズ鏡筒、撮像装置及びレンズ鏡筒の取付け調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明に係るレンズ鏡筒は、ハウジングの取付開口部周囲に位置決めされて取付けられる、複数のレンズ群を有する撮影レンズ系が少なくとも配置されたレンズ鏡筒において、前記レンズ鏡筒の後部側が固定される前記ハウジングの取付開口部の背面側周囲の、前記撮影レンズ系の光軸方向と直交する平面上に所定間隔を有するようにして少なくとも3箇所に、前記レンズ鏡筒の前記ハウジングに対する傾きを調整するための傾斜状のカム面を有するカムを前記光軸方向に沿った回転軸を回転中心にして回転可能にそれぞれ設け、前記レンズ鏡筒の後部側に、前記各カム面に接するようにそれぞれ取付けたカム当接部材と、前記各カム当接部材を前記カム面に押し付ける方向へ付勢する付勢部材と、を備えており、前記各カムを前記回転軸を回転中心にして回転させて、前記カム面に付勢されている前記カム当接部材を光軸方向に沿って前後へ移動させることで、前記ハウジングに対して傾き調整されることを特徴としている。
【0006】
また、本発明に係る撮像装置は、請求項1に記載のレンズ鏡筒を備えていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明に係るレンズ鏡筒の取付け調整方法は、複数のレンズ群を有する撮影レンズ系が少なくとも配置されたレンズ鏡筒を、ハウジングの取付開口部周囲に取付けるときのレンズ鏡筒の取付け調整方法であって、前記レンズ鏡筒の後部側が固定される前記ハウジングの取付開口部の背面側周囲の、前記撮影レンズ系の光軸方向と直交する平面上に所定間隔を有するようにして少なくとも3箇所に、前記レンズ鏡筒の前記ハウジングに対する傾きを調整するための傾斜状のカム面を有するカムを前記光軸方向に沿った回転軸を回転中心にして回転可能にそれぞれ設け、前記レンズ鏡筒の後部側に、前記各カム面に接するようにそれぞれ取付けたカム当接部材と、前記各カム当接部材を前記カム面に押し付ける方向へ付勢する付勢部材と、を備えており、前記各カムを前記回転軸を回転中心にして回転させて、前記カム面に付勢されている前記カム当接部材を光軸方向に沿って前後へ移動させることで、前記レンズ鏡筒を前記ハウジングに取付けるときの傾きを調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各カムを回転軸を回転中心にして回転させて、カム面に付勢されているカム当接部材を光軸方向に沿って前後へ移動させることで、レンズ鏡筒をハウジングへの取付けるときの傾き調整を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る撮像装置としてのレンズ鏡筒交換可能なデジタルカメラのレンズ鏡筒を取外した状態を示す斜視図。
【図2】レンズ鏡筒が装着された状態のデジタルカメラを示す斜視図。
【図3】レンズ鏡筒が広角端に繰り出された状態のデジタルカメラを示す斜視図。
【図4】レンズ鏡筒が望遠端に繰り出された状態のデジタルカメラを示す斜視図。
【図5】(a)は、レンズ鏡筒の撮影レンズ系が収納された状態を示す断面図、(b)は、レンズ鏡筒が広角端に繰り出された状態を示す断面図、(c)は、レンズ鏡筒が望遠端に繰り出された状態を示す断面図。
【図6】ハウジングの内部を前面側から見た斜視図。
【図7】ハウジングの内部を背面側から見た斜視図。
【図8】本発明の要部であるカムとカム当接部材付近を示す拡大斜視図。
【図9】本発明の要部であるカムとカム当接部材付近を示す拡大平面図。
【図10】(a)は、カムのカム面側を示した斜視図、(b)は、カムの凹凸部側を示した斜視図。
【図11】ねじに挿通される圧縮コイルばねを示した図。
【図12】(a)は、レンズ鏡筒をハウジングに取付けたときにレンズ鏡筒の傾き調整が行われた状態を示す図、(b)、(c)は、レンズ鏡筒をハウジングに取付けたときにレンズ鏡筒に傾きが生じている状態を示す図。
【図13】一般的な構成のレンズ鏡筒を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明に係る撮像装置としてのレンズ鏡筒交換可能なデジタルカメラのレンズ鏡筒を取外した状態を示す斜視図、図2は、レンズ鏡筒が装着された状態のデジタルカメラを示す斜視図である。図1、図2に示した本実施形態に係るデジタルカメラは、レンズ鏡筒内に撮影レンズ系とその光軸上に撮像素子等が一体構成で配置されている。
【0011】
図1、図2に示すように、このデジタルカメラ1は、カメラ本体2と、このカメラ本体2の前面側の装着部5に着脱可能に装着されるレンズ鏡筒3と、このレンズ鏡筒3が取り付けられたハウジング4とで構成されており、ハウジング4の背面側を装着部5に装着し横方向(矢印方向)にスライドさせることで、レンズ鏡筒3(ハウジング4)が装着部5に着脱可能に装着される。この際、ハウジング4に設けた複数の電気端子(不図示)がカメラ本体2のコネクター部6に電気的に接続される。
【0012】
レンズ鏡筒3は、内部にズーム機能を有する撮影レンズ系を有し、この撮影レンズ系の光軸に沿って、所定の収納(沈胴)位置と所定の撮像位置との間で進退可能となっている(図5参照)。レンズ鏡筒3は、図2、図5(a)に示すように、非撮影時(電源OFF時)にはレンズ鏡筒3の先端部付近のみが露出するようにして鏡筒ハウジング部4a内に収納されている。この鏡筒ハウジング部4aは、ハウジング4の前面側に一体的に形成されている。
【0013】
レンズ鏡筒3は、図3、図5(b)に示すように、撮影時で広角端に繰り出されているときはレンズ鏡筒3の先端部付近が非撮影時よりも少し突出している。また、レンズ鏡筒3は、図4、図5(c)に示すように、撮影時で望遠端に繰り出されているときはレンズ鏡筒3から最大に突出している。
【0014】
図5(a)に示すように、レンズ鏡筒3内に光軸A方向に沿って配置される撮影レンズ系は、被写体側(図の左側)から順に前玉レンズ21、第2レンズ群22、第3レンズ群23、第4レンズ群24、第5レンズ群25とで構成されている。第3レンズ群23と第4レンズ群24の間には、シャッタ機能を有する絞りユニット28が配置されている。第5レンズ群25の後方側(図の右側)には、IRカットフィルタ26とCCDなどの撮像素子27が配置されている。なお、IRカットフィルタ26と撮像素子27は、レンズ鏡筒3の後部(図の右側)に接続されたベース部材29に固定されている。
【0015】
また、レンズ鏡筒3には、図5(b),(c)に示すように、前玉レンズ21を保持している直進筒31、第2レンズ群22を保持している第2群枠32、第3レンズ群23を保持している第3群枠33、第4レンズ群24と絞りユニット28を保持している第3群枠34、第5レンズ群25を保持している第5群枠35が配置されている(図5(b)参照)。
【0016】
更に、直進筒31を光軸A方向に沿って直進駆動するためのカム筒36と、直進キーが形成されているライナー37が前記ベース部材29に固定されており、駆動機構(不図示)によりカム筒36が回転駆動されると、カム筒36の外周に形成されているカム溝によって直進筒31が被写体側(図の左側)に繰り出される。また、第2群枠32〜第5群枠35は、カム筒36の内周に形成されているカムによって被写体側(図の左側)に繰り出される。
【0017】
このように、本実施形態のレンズ鏡筒3の最も外側の筒は直進筒31であり、鏡筒ハウジング部4aはこの直進筒31を覆うようにして直進筒31の周面外側に配置されている。また、図5に示すように、鏡筒ハウジング部4aの前面側(図の左側)の内周に設けた溝には、可撓性を有するリング状の防塵シート40が接着されている。この防塵シート40により、直進筒31の繰り出し繰り込み時にレンズ鏡筒3と直進筒31の間の隙間からごみ等がレンズ鏡筒3内に進入することを防止することができる。
【0018】
図6は、ハウジング4の内部を前面側から見た斜視図、図7は、ハウジング4の内部を背面側から見た斜視図である。
【0019】
図6、図7に示すように、鏡筒ハウジング部4aの後部に一体に形成されたハウジング4の前面部4bの内側(以下、「ハウジング内面部」という)4cには、取付開口部4d(図7参照)が形成されており、ハウジング内面部4cの取付開口部4d付近にレンズ鏡筒3の後部のベース部材29が配置されている。なお、このベース部材29には、前記IRカットフィルタ26、撮像素子27以外にもレンズ駆動ユニット、撮像素子制御ユニット、撮像素子27の手ぶれ防止機構等が配置されている。
【0020】
図7に示すように、ハウジング内面部4cには、ベース部材29の周辺部に位置するようにして3つのカム10が所定の間隔で回転可能に配置されている。3つのカム10は、略二等辺三角形の頂点付近に位置するようにして配置されている。
【0021】
図8、図9、図10(a),(b)に示すように、各カム10の先端側には円弧状の傾斜面を有するカム面10aが形成され、カム10の基端側の周囲には凹凸部12が形成されている。カム面10aの傾斜面は基端部10a’から先端部10a''に向けて低くなるように傾斜している。なお、図8、図9は、図7に示した3つのカム10のうちの左上側のカム10付近を示している。
【0022】
カム10の中心に形成された回転軸10bの基端部は、ハウジング内面部4cに回転可能に設置されている。また、ハウジング内面部4cには、カム10に形成された凹凸部12の所定範囲を囲むようにして円弧状のリブ13が形成されている。リブ13の両側には、凹凸部12の表面に近接するようにして突起部13a,13bが形成されている。
【0023】
図8、図9に示すように、ベース部材29の角部付近には、カム10のカム面10aに接するようにしてカム当接部材11が設けられている。カム当接部材11の基端側に形成された挿通穴(不図示)には、圧縮コイルばね14を介してねじ15が挿通され、ねじ15のねじ部15a(図11参照)がハウジング内面部4cに形成されたボス16(図8参照)の内周面のねじ溝(不図示)に螺合されている。
【0024】
なお、図8、図9では、ハウジング内面部4cの左上側のカム10を示しているが、ハウジング内面部4cの右上側と左下側の各カム10付近においても同様に構成されている。
【0025】
このように、3つのカム10付近でカム当接部材11の基端側を挿通するようにしてねじ15をボス16に螺合することにより、レンズ鏡筒3のベース部材29がハウジング内面部4cに位置決めされて取付けられる。この際、圧縮コイルばね14のばね力により、カム当接部材11の摺接面がカム10のカム面10aに摺動可能に押し付けられるようにして接している。これにより、カム10のハウジング内面部4cからの抜けやがたつきが防止される。なお、この取付け状態ではまだ仮固定であり、次に以下に述べるようなレンズ鏡筒3の傾きを補正するための調整(傾き補正)を行う。
【0026】
レンズ鏡筒3の傾き調整を行う場合には、カム10の回転軸10b内の軸穴10b’に専用工具(不図示)を挿入して、例えば、時計回り方向(右回り方向)に回転させるとカム10(カム面10a)も時計回り方向に回転する。カム10が時計回り方向に回転すると、カム面10aに摺動可能に押し付けられているカム当接部材11の摺接面がカム面10aの先端部10a''側に近づく。これにより、圧縮コイルばね14のばね力で付勢されているカム当接部材11が、撮影レンズ系(前玉レンズ21、第2レンズ群22、第3レンズ群23、第4レンズ群24、第5レンズ群25)の光軸方向に沿ってレンズ鏡筒3の前方側(図5(a)の左側)に移動する。
【0027】
また、カム10の回転軸10b内の軸穴10b’に専用工具(不図示)を挿入して、例えば、反時計回り方向(左回り方向)に回転させるとカム10(カム面10a)も反時計回り方向に回転する。カム10が反時計回り方向に回転すると、カム面10aに摺動可能に押し付けられているカム当接部材11の摺接面がカム面10aの基端部10a’側に近づく。これにより、圧縮コイルばね14のばね力で付勢されているカム当接部材11が、撮影レンズ系(前玉レンズ21、第2レンズ群22、第3レンズ群23、第4レンズ群24、第5レンズ群25)の光軸方向に沿ってレンズ鏡筒3の後方側(図5(a)の右側)に移動する。
【0028】
このように、上記したようにレンズ鏡筒3のベース部材29の3箇所の角部付近が、ねじ15をボス16に螺合することによってハウジング内面部4cに仮固定された状態にあるときに、カム10を時計回り方向または反時計回り方向に回転させることで、各カム面10aに付勢されているカム当接部材11を撮影レンズ系の光軸方向に沿って前後にそれぞれ移動させることができる。
【0029】
よって、レンズ鏡筒3内の撮影レンズ系の光軸がハウジング内面部4cの平面に対して直角でなく傾きがある場合、この傾きを補正するように、略二等辺三角形の頂点に位置する3つのカム10をそれぞれ時計回り方向または反時計回り方向に回転させることで、各カム当接部材11が設けられているベース部材29の3箇所の角部付近を、カム当接部材11の移動量に応じてそれぞれ傾けることができる。
【0030】
これにより、レンズ鏡筒3がハウジング内面部4cの平面に対して傾きなく略直角となるように調整される。そして、レンズ鏡筒3の傾き調整を終えると、図9のように、カム10の基端部に形成された凹凸部12とリブ13の間に、例えば熱硬化性接着剤Aを充填して、ハウジング内面部4cに3つのカム10を固定する。
【0031】
各カム10が接着剤Aでハウジング内面部4cに固定されることにより、カム面10aに付勢されているカム当接部材11が移動することはない。更に、ハウジング4等に衝撃が作用した場合でも圧縮コイルばね14のばね力により、カム当接部材11の摺接面がカム10のカム面10aに所定の圧力で常に押し付けられているので、傾き調整されているレンズ鏡筒3に傾きズレが生じることもない。
【0032】
このように、レンズ鏡筒3のベース部材29をハウジング内面部4cに取り付けるときに、3つのカム10をそれぞれ時計回り方向または反時計回り方向に回転させて、カム面10aに摺接しているカム当接部材11を光軸方向に沿って前後に移動させることで、レンズ鏡筒3の傾き調整を精度よく行うことができる。これにより、レンズ鏡筒3をハウジング内面部4cの平面に対して略直角となるように位置決めされた状態で取付けることができる。
【0033】
そして、図12(a)に示すように、レンズ鏡筒3の傾き調整が精度よく行われたとき、即ちレンズ鏡筒3内の撮影レンズ系の光軸Aがハウジング内面部4cの平面に対して略直角となるように調整されたときには、レンズ鏡筒3の最外筒の直進筒31と鏡筒ハウジング部4aの内周面との間に略均一な所定の隙間が設けられる。この場合には、リング状の防塵シート40が直進筒31の周面に円周方向に沿って均一に接するので、良好な防塵効果を保ちながら、直進筒31の繰り出し繰り込み動作をスムーズに行なうことができる。
【0034】
これに対して、図12(b),(c)に示すように、レンズ鏡筒3内の撮影レンズ系の光軸Aがハウジング内面部4cの平面に対して傾きが生じているときには、レンズ鏡筒3の最外筒の直進筒31と鏡筒ハウジング部4aの内周面との間の隙間が不均一となる。この場合、傾きが大きいと、直進筒31の先端側が鏡筒ハウジング部4aの内周面先端部に接して干渉し、直進筒31の繰り出し繰り込み動作に支障をきたすことがある。なお、図12(b)では図の左下方側にレンズ鏡筒3が傾いている状態であり、図12(c)では図の左上方側にレンズ鏡筒3が傾いている状態である。
【0035】
更に、図12(b),(c)のように、レンズ鏡筒3が傾いている場合には、リング状の防塵シート40が直進筒31の周面に不均一に接し、隙間が大きい側での防塵効果が低下する。
【0036】
図13は、一般的な構成のレンズ鏡筒がハウジング内に収納された状態の一例を示した断面図である。
【0037】
図13に示すように、ハウジング50内には収納状態のレンズ鏡筒51が配置されており、このレンズ鏡筒51の最外側には、ハウジング50の内周面に接するように配置された筒状の固定枠52が設けられている。そして、この固定枠52の内側に、駆動機構(不図示)により直進駆動可能な直進筒53が所定の隙間を有するように位置決めされて配置されている。なお、この直進筒53の内側には、前玉レンズ54、第2レンズ群55、第3レンズ群56、第4レンズ群57とで構成された撮影レンズ系が配置されている。
【0038】
このように、図13に示したこの一般的な構成のレンズ鏡筒51では、レンズ鏡筒51の傾き調整機能を有していないので、ハウジング50とは別体の直進筒53をハウジング50の内周面に対して傾きなく均一な隙間を設けて組付けることが難しい。このため、ハウジング50の内周面に固定枠52を配置してこの固定枠52の内側に直進筒53を精度よく組付けるようにしている。
【0039】
これに対して、上記した本実施形態のレンズ鏡筒3は、レンズ鏡筒3のベース部材29をハウジング内面部4cに取付けるときに、3つのカム10をそれぞれ時計回り方向または反時計回り方向に回転させて、カム面10aに摺接しているカム当接部材11を光軸方向に沿って前後に移動させることで、レンズ鏡筒3がハウジング内面部4cの平面に対して略直角となるように精度よく調整することができる。
【0040】
これにより、レンズ鏡筒3の最外側に固定枠を設けることなく、直進筒31と鏡筒ハウジング部4aの内周面との間に略均一な所定の隙間を設けて、直進筒31をスムーズに直進駆動させることができるので、固定枠が不要となり、コスト低減と小型化を図ることができる。
【0041】
なお、上記した実施形態ではレンズ鏡筒交換可能なデジタルカメラで、レンズ鏡筒内に撮影レンズ系とその光軸上に撮像素子等が一体構成で配置され、レンズ鏡筒側にハウジングが取付けられた構成であったが、これに限定されることなく、レンズ駆動ユニット、撮像素子、ハウジング等がカメラ本体側に配置されたデジタルカメラ(撮像装置)において、撮影レンズ系が配置されたレンズ鏡筒をカメラ本体側のハウジングに取付けるような構成においても同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 デジタルカメラ
2 カメラ本体
3 レンズ鏡筒
4 ハウジング
4a 鏡筒ハウジング部
10 カム
10a カム面
11 カム当接部材
14 圧縮コイルばね
15 ねじ
29 ベース部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開平7−104163号公報(図1)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの取付開口部周囲に位置決めされて取付けられる、複数のレンズ群を有する撮影レンズ系が少なくとも配置されたレンズ鏡筒において、
前記レンズ鏡筒の後部側が固定される前記ハウジングの取付開口部の背面側周囲の、前記撮影レンズ系の光軸方向と直交する平面上に所定間隔を有するようにして少なくとも3箇所に、前記レンズ鏡筒の前記ハウジングに対する傾きを調整するための傾斜状のカム面を有するカムを前記光軸方向に沿った回転軸を回転中心にして回転可能にそれぞれ設け、
前記レンズ鏡筒の後部側に、前記各カム面に接するようにそれぞれ取付けたカム当接部材と、前記各カム当接部材を前記カム面に押し付ける方向へ付勢する付勢部材と、を備えており、
前記各カムを前記回転軸を回転中心にして回転させて、前記カム面に付勢されている前記カム当接部材を光軸方向に沿って前後へ移動させることで、前記ハウジングに対して傾き調整されることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ鏡筒を備えていることを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
複数のレンズ群を有する撮影レンズ系が少なくとも配置されたレンズ鏡筒を、ハウジングの取付開口部周囲に取付けるときのレンズ鏡筒の取付け調整方法であって、
前記レンズ鏡筒の後部側が固定される前記ハウジングの取付開口部の背面側周囲の、前記撮影レンズ系の光軸方向と直交する平面上に所定間隔を有するようにして少なくとも3箇所に、前記レンズ鏡筒の前記ハウジングに対する傾きを調整するための傾斜状のカム面を有するカムを前記光軸方向に沿った回転軸を回転中心にして回転可能にそれぞれ設け、
前記レンズ鏡筒の後部側に、前記各カム面に接するようにそれぞれ取付けたカム当接部材と、前記各カム当接部材を前記カム面に押し付ける方向へ付勢する付勢部材と、を備えており、
前記各カムを前記回転軸を回転中心にして回転させて、前記カム面に付勢されている前記カム当接部材を光軸方向に沿って前後へ移動させることで、前記レンズ鏡筒を前記ハウジングに取付けるときの傾きを調整することを特徴とするレンズ鏡筒の取付け調整方法。
【請求項4】
前記付勢部材は、圧縮コイルばねであることを特徴とする請求項3に記載のレンズ鏡筒の取付け調整方法。
【請求項5】
前記レンズ鏡筒の後部は、前記圧縮コイルばねを介装して前記カム当接部材の基端側を挿通したねじを前記取付開口部の背面側周囲に螺合することで前記ハウジングに固定されていることを特徴とする請求項4に記載のレンズ鏡筒の取付け調整方法。
【請求項6】
前記カムの基端側には表面周囲に凹凸部が形成され、更に、前記凹凸部の所定範囲を囲むようにしてリブが形成されており、前記リブと前記凹凸部との間に接着剤を充填して前記カムを固定することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒の取付け調整方法。
【請求項7】
前記レンズ鏡筒は、複数のレンズ群のうちの少なくとも一部のレンズ群を光軸方向に沿って移動させて沈胴させる収納状態と、複数のレンズ群のうちの少なくとも一部のレンズ群を光軸方向に沿って繰り出させる撮影状態とに設定可能であり、前記レンズ鏡筒の最外側の筒は、前記収納状態と前記撮影状態の間で光軸方向に沿って直進駆動可能な直進筒であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒の取付け調整方法。
【請求項8】
前記ハウジングには、前記直進筒の外周面に対して所定の隙間を設けて内包するように鏡筒ハウジング部が一体的に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のレンズ鏡筒の取付け調整方法。
【請求項9】
前記鏡筒ハウジング部と前記直進筒との間には、円周方向に沿って前記直進筒と摺動可能な可撓性を有するリング状の防塵シートが設けられていることを特徴とする請求項8に記載のレンズ鏡筒の取付け調整方法。
【請求項10】
前記ハウジングに取付けられた前記レンズ鏡筒は、撮像装置の装置本体に着脱可能に装着可能であり、前記レンズ鏡筒内には、前記撮影レンズ系の光軸上に位置するようにして撮像素子が内蔵されていることを特徴とする請求項3乃至9のいずれか一項に記載のレンズ鏡筒の取付け調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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