説明

レンズ鏡筒および撮像装置

【課題】駆動制御機構を備えたレンズ鏡筒において、十分な駆動力が得られ、光軸方向の薄形化も可能であり、組み立ても容易であるレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】レンズ鏡筒は、ウォブリングレンズを保持する可動枠43と、該可動枠を光軸O方向に移動可能に支持するガイド軸とを備えており、更に、上記可動枠43の一部に固着される磁性材からなる吸着板65と、該吸着板に吸着する状態で取り付けられ、上記吸着板との吸着面と直交する方向に磁化された異極接合磁石61,62と、該異極接合磁石の上記吸着面の裏面側に接合されるヨーク64と、上記異極接合磁石に伝達部67を介在して結合する送り用圧電素子66とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子カメラや携帯電話の撮像装置、光ディスク装置等に適用可能なフォーカス制御機構、ウォブリング制御機構等の進退駆動制御機構、あるいは、ブレ補正機構を備えたレンズ鏡筒および撮像装置、あるいは、光ディスク装置に用いるコリメータレンズ球面収差補正機構を備えたレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像装置にてフォーカスレンズやウォブリングレンズを光軸方向へ進退駆動するために電磁駆動機構や圧電素子駆動機構が知られている。例えば、特許文献1に開示された撮像装置装着可能なレンズ鏡筒に組み込まれる電磁駆動機構として、レンズを保持する可動枠に固着される可動コイルを適用するものがある。
【0003】
また、特許文献2に開示されたレンズモジュールは、圧電素子駆動機構として、電気機械変換素子である積層圧電素子と該圧電素子の変位方向の一端に固定された磁石と、該磁石に吸着される磁性体を有し、光学レンズを保持したレンズホルダとを備えている。上記永久磁石の振動を駆動力として磁性材を駆動することで、レンズホルダを光軸方向に進退駆動する。
【0004】
また、従来の撮像装置にて手ブレ補正のための駆動機構を備えたものとして特許文献3に開示されたものは、手ぶれ発生時、ぶれ補正駆動機構によって撮影レンズ群のうち、撮像素子側に配される撮影レンズをレンズ光軸直交面に沿って手ぶれを補正する方向に変位駆動する。上記ぶれ補正駆動機構は、形状記憶合金からなるアクチュエータからなり、上記撮影レンズを保持するレンズ枠がレンズ光軸直交面上に配されるガイド軸に沿って変位駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−256814号公報
【特許文献2】特開2008−203583号公報
【特許文献3】特開2008−11327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に開示された電磁駆動機構においては、異極接合した永久磁石を固定側に配置し、小判形のコイルを可動枠に固着した場合、コイルおよび永久磁石の光軸方向の占有スペ−スが長くなる。したがって、レンズ鏡筒の沈胴状態における光軸方向の長さが長くなり、薄型化が極めて難しく、レンズ鏡筒の外形が大きくなることが懸念される。
【0007】
一方、上記圧電素子駆動機構を適用するものでは、フォーカスレンズやウォブリングレンズのレンズ開口数が大きい場合、上記圧電素子に結合した磁石のN極またはS極とレンズホルダに結合した磁性材との吸着力が重要である。しかし、特許文献2に開示されたレンズモジュールのように短い棒磁石を適用することから吸着力が弱く、レンズホルダの動作が不安定となる。また、上記棒磁石の外部に磁束が漏れることが懸念され、吸着力を弱めることが懸念される。
【0008】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、駆動制御機構を備えたレンズ鏡筒において、十分な駆動力が得られ、光軸方向の薄型化も可能であり、組み立ても容易であるレンズ鏡筒および該レンズ鏡筒を適用する撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のレンズ鏡筒は、光学レンズを保持するレンズ移動枠と、該レンズ移動枠を光軸方向、または、該光軸方向に直交する平面内にて移動可能に支持する案内部材とを備えたレンズ鏡筒において、上記レンズ移動枠の一部に固着される第一の磁性部材と、上記第一の磁性部材に吸着し、上記第一の磁性部材との吸着面と直交する方向に磁化された異極接合磁石と、上記異極接合磁石の上記吸着面側に対する反対面にに接合される第二の磁性部材と、上記異極接合磁石に伝達部材を介在して結合する送り用圧電素子とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動制御機構を備えたレンズ鏡筒において、十分な駆動力が得られ、薄型化が可能であるレンズ鏡筒および該レンズ鏡筒を適用する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態のレンズ鏡筒が装着されるカメラシステムの構成図
【図2】図1のカメラシステムのブロック構成図
【図3】図1のカメラシステムに適用されるレンズ鏡筒のうちのアダプタレンズ装置の光軸に沿った縦断面図
【図4】図3のA矢視図
【図5】図3のB−B断面図
【図6】図5のC−C断面図
【図7】図6のD−D断面図
【図8】図3のアダプタレンズ装置に組み込まれる可動枠保持機構まわりの拡大図
【図9】図5のG−G断面図
【図10】図1のカメラシステムにおけるAF処理のフローチャート
【図11】図6のアダプタレンズ装置におけるガイド軸押圧機構部に対する変形例を示す図であって、図7に対応する断面図
【図12】本発明の第二実施形態のレンズ鏡筒を物体側から見た図
【図13】図11のE−E断面図
【図14】図11のF−F断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一実施形態のレンズ鏡筒を備えるカメラシステムについて、図を用いて説明する。
【0013】
本実施形態のレンズ鏡筒を適用する撮像装置としてのカメラシステム1は、図1のシステム構成図および図2のシステムのブロック構成図に示すように撮像素子18を有するカメラ本体としてのボディユニット5と、ボディユニット5に着脱可能なレンズ鏡筒2とからなる。該レンズ鏡筒2は、マスターレンズMLを有する交換式レンズ鏡筒である鏡筒部3と、鏡筒部3に着脱可能であって、アダプタレンズALを備えたアダプタレンズ装置4とで構成される。
【0014】
なお、上記マスターレンズMLおよび上記アダプタレンズALの光軸は、図中、「O」で示される。また、カメラシステム1の説明において、物体側を前方側とし、像側を後方側とする。
【0015】
図1に示すように鏡筒部3は、像面側に配されるレンズ側マウントリング26を介してアダプタレンズ装置4に結合させることができるが、直接、レンズ側マウントリング26をボディユニット5の前面に設けられたボディ側マウントリング23に結合することによりボディユニット5に着脱自在に装着可能である。
【0016】
この鏡筒部3は、レンズ枠34と、該レンズ枠34に保持されるフォーカスレンズ33を含むマスターレンズMLと、フォーカスレンズ33を進退駆動するためのレンズ駆動機構37と、レンズ駆動回路36と、レンズ制御用マイクロコンピュータ(以下、LCPUと記載する)35とを備えている。
【0017】
上記マスターレンズMLは、撮像素子18上の撮像面に像を形成する二群構成のズームレンズであって、物体側から像側の順に負屈折力の第一群レンズである前群レンズ31と、フォーカスレンズ33を含む正屈折力の第二群レンズである後群レンズ32とからなる。前群レンズ31と後群レンズ32は、カメラのズーミング操作時に光軸O方向に進退駆動される。具体的には、本出願人による特願2010−233876号に記載されるように第一レンズ群は、3枚のレンズからなり、負屈折力を有している。第二レンズ群は、9枚構成の正屈折力を有するレンズ群であり、正屈折力の単レンズであって、フォーカシング時に光軸O方向に進退駆動される物体側副レンズと、8枚構成の像側副レンズとで構成される。また、前群レンズ31とフォーカスレンズ33の間には絞りが配置されている。この絞りは、図示されていない絞り駆機構内に設けられたステッピングモータ、または、電磁駆動型リニアモータ等によって駆動される。
【0018】
後群レンズ32を構成するフォーカスレンズ33は、可動のレンズ枠34によって支持されており、カメラのフォーカシング動作時、レンズ駆動機構37内に配されるステッピングモータによって上記レンズ枠34を光軸方向に沿って進退駆動され、該フォーカスレンズ33がフォーカシング位置に向けて進退駆動される。レンズ駆動回路36は、LCPU35からの制御信号によりレンズ駆動機構37を介して前述のようにレンズ枠34を進退駆動する。フォーカスレンズ33のフォーカシング動作については、後で詳細に説明する。
【0019】
LCPU35は、レンズ駆動回路36等、鏡筒部3内の各部の制御を行う。このLCPU35は、通信部としての通信コネクタ23a〜26aを介してボディユニット5側のボディ制御用マイクロコンピュータ(以下、BCPUと記載する)10と電気的に接続され、当該BCPU10からの指令に従って制御される。
【0020】
アダプタレンズ装置4は、ボディユニット5の前面に着脱自在に装着可能であり、鏡筒部3とボディユニット5との間に当該アダプタレンズ装置4を介在させて装着する場合は、レンズ側マウントリング26とアダプタレンズ装置4のアダプタ物体側マウントリング25と結合させ、さらに、アダプタ像側マウントリング24をボディ側マウントリング23と結合させる。なお、上記各マウントリングは、例えば、すべてバヨネットタイプとする。
【0021】
このアダプタレンズ装置4は、主に物体側レンズ群51、ウォブリングレンズ53、像側レンズ群52からなるアダプタレンズALを備え、光学レンズであるウォブリングレンズ53を保持するレンズ移動枠である可動枠43と、可動枠43を進退駆動するウォブリング駆動機構50と、ウォブリング駆動回路39と、アダプタレンズ制御用マイクロコンピュータ(以下、ACPUと記載する)38と、さらに、可動枠43の位置検出用としてホール素子78および磁気スケール79(図3)を備えている。なお、上述したウォブリングレンズ53およびアダプタレンズ装置4の詳細な構成、作用については、後で説明する。
【0022】
ウォブリング駆動回路39は、鏡筒部3のフォーカシング動作に際してACPU38からの制御信号に従って、ウォブリング駆動機構50を駆動し、可動枠43に保持されるウォブリングレンズ53を光軸方向に沿って小振幅振動、すなわち、ウォブリング動作を行わせる。このウォブリング動作は、静止画撮影、あるいは、動画撮影時、装着されている鏡筒部3のフォーカスレンズ33の「山登り制御」によるフォーカシング駆動を行う際、ウォブリングレンズ53を小振幅振動移動させることにより、フォーカスレンズ33の移動するべき方向を検知し、素早いフォーカシング動作を可能にするための動作である。
【0023】
ACPU38は、ウォブリング駆動回路39等、アダプタレンズ装置4内の各部を制御する。このACPU38は、通信部としての通信コネクタ23aを介してボディユニット5側のBCPU10と電気的に接続され、当該BCPU10からの指令に従って制御される。
【0024】
アダプタレンズ装置4がボディユニット5と鏡筒部3との間に装着されると、BCPU10とACPU38とLCPU35とは、通信コネクタ23a、24a、25a、26aを介して電気的接続され、通信可能となる。LCPU35とACPU38とBCPU10の通信は、光接続によって通信してもよく、また、無線等の非接触で通信してもよい。
【0025】
ボディユニット5は、図1,2に示すようにその内部に鏡筒部3におけるフォーカスレンズ33等の撮影レンズを通過した物体像を光電変換するための撮像素子18が撮影レンズの光軸O上に配置されているが、通常のデジタル一眼レフカメラのように撮像素子18の前方にファインダ光学系に被写体光束を導くための可動ミラー装置が配置されていない。但し、上記可動ミラーが配置されているカメラボディに対しても本実施形態のアダプタレンズ装置4は、適用可能である。
【0026】
そして、ボディユニット5の内部に撮像素子18に接続された撮像素子インターフェース回路11と、記憶領域として設けられたSDRAM13及びFLASH ROM14と、記録メディア15と、液晶モニタ16と、画像処理を行うための画像処理コントローラ12とが設けられている。
【0027】
画像処理コントローラ12には、撮像素子インターフェース回路11と、SDRAM13と、FLASH ROM14と、記録メディア15と、液晶モニタ16とが接続されている。これらは、電子撮像機能と共に電子撮像表示機能を提供できるように構成されている。
【0028】
記録メディア15は、各種のメモリカードや外付けのハードディスクドライブ(HDD)等の外部記録媒体であり、カメラのボディユニット5と通信可能で、かつ、交換可能に装着される。
【0029】
BCPU10には通信コネクタ23aと、画像処理コントローラ12と、不揮発性メモリであるEEPROM17等とが接続されている。
【0030】
画像処理コントローラ12は、BCPU10の指令に従って撮像素子インターフェース回路11を制御して撮像素子18から画像データを取り込む。この画像データは、画像処理コントローラ12によりビデオ信号に変換され、液晶モニタ16に出力してライブビュー表示される。撮影者は、この液晶モニタ16のライブビュー表示画像により、撮影する画像の構図等のイメージを認識することができる。また、撮影後の記録画像を液晶モニタ16に表示させ画像の確認をすることも可能である。
【0031】
SDRAM13は、画像データの一時的保管用メモリであり、画像データが変換される際のワークエリア等に使用される。この画像データは、各種の画像処理が行われ、例えば、静止画像がJPEGデータに変換された後には、記録メディア15に保管されるように設定されている。また、BCPU10には、カメラ操作スイッチ(SW)19と、電源回路22を介して電池21とが接続されている。
【0032】
EEPROM17は、その他の記憶領域として、カメラ制御に必要な所定の制御パラメータを記憶するもので、BCPU10からアクセス可能になっている。
【0033】
カメラ操作スイッチ19は、例えば、撮影動作の実行を指示するレリーズスイッチ、静止面撮影モード、動画撮影モード、記録画像表示モードを切り替えるモード変更スイッチ、動画撮影を開始させる動画記録開始スイッチ及びパワースイッチ等、当該カメラを操作するために必要な操作釦を含むスイッチ群で構成される。レリーズスイッチは、半押し動作すなわちファーストレリーズスイッチ(1RSW)の動作と、全押し動作であるセカンドレリーズスイッチ(2RSW)の動作とがある。
【0034】
電源回路22は、電池21の出力電圧を、当該装置を構成する各回路部が必要とする電圧に変換して供給するために設けられている。
【0035】
ここで、本実施形態のアダプタレンズ装置4の詳細な構造について、図3〜9を用いて説明する。
【0036】
アダプタレンズ装置4は、図3の縦断面図に示すように前、後固定枠41,42と、可動枠43と、前固定枠41、可動枠43、後固定枠42のそれぞれの中央開口部41a、43a,42aに保持されるアダプタレンズALとして、物体側から順に配置される物体側レンズ群51、ウォブリングレンズ53、像側レンズ群52と、前固定枠41および可動枠43に組み込まれるウォブリング駆動機構50と、可動枠43の保持状態と解放状態を切り換えるための可動枠保持機構55と、ウォブリング動作時の可動枠43の初期位置検出用として反射部材74およびフォトリフレクタ73と、可動枠43の移動位置検出用としてホール素子78および磁気スケール79と、前固定枠41の物体面側端面に固着されたアダプタ物体側マウントリング25と、後固定枠42の像面側端面に固着されたアダプタ像側マウントリング24と、前述したACPU38とを備えている。
【0037】
前固定枠41と後固定枠42とは、アダプタレンズAL、可動枠43、ウォブリング駆動機構50を組み込んだ状態で印籠嵌合部Z1で結合され、接着固定される。なお、前固定枠41と後固定枠42には可動枠43を摺動可能に支持する案内部材であるガイド軸44,45が貫通状態で支持されている(図5,6)。
【0038】
アダプタ像側マウントリング24は、図4に示すようにバヨネット爪24bを有し、開口部下部に通信接続コネクタ接片24aが配されている。アダプタ物体側マウントリング25は、図2及び図3に示すようにバヨネット部25bを有し、開口部下部に通信接続コネクタ接片25aが配されている。
【0039】
可動枠43は、前固定枠41の内部に収容され、一方の軸穴43bを貫通するガイド軸44および他方の長穴43cを貫通するガイド軸45によって光軸O方向に移動可能支持されている(図5,6)。更に、ガイド軸44が貫通する可動枠軸穴43bの前、後端部に一対の軸押圧機構部43d,43eが設けられている(図6,7)。また、前固定枠41および後固定枠42の後端面部、前端面部には、可動枠43が前方、または、後方移動限界位置に移動したとき、当接可能な緩衝材としてシリコンゴム等からなる一対の突起部71,72が対向して配設されている(図3)。なお、一対の突起部71,72は、例えば、それぞれ周方向に3か所設けられる。一対の突起部71,72を設けることにより可動枠43が暴走したときの破損を防止できる。
【0040】
なお、可動枠43およびガイド軸44,45の材質は、例えば、マグネシウム合金等の金属とするが、ガラス繊維が含まれたPPS(ポリフェニレンスルフィド)樹脂やABS樹脂でもよい。上記繊維強化プラスチック材(表面硬度がビッカース硬度400〜700Hvの強化プラスチック材)の強化材として、ガラス繊維の他にもカーボン繊維が好適である。特に可動枠43にカーボン繊維を含む液晶性樹脂を適用すると、弾性率上も有利であり、可動枠43に形成される軸受面の真円度を上げることができる。このように上記の材料には非セラミックス材料のプラスチックエンジニア材料が適用される。
【0041】
可動枠43に形成される軸押圧機構部43dは、図7に示すようにV溝43daと、弾性変形可能な押圧板部43dbとを備えている。ガイド軸44の可動枠43を貫通した前面側は、V溝43daと押圧板部43dbとにより押圧摺動可能状態で挟持される。一方、軸押圧機構部43eも軸押圧機構部43dと同一構造を有しており、ガイド軸44の可動枠43を貫通した後面側も軸押圧機構部43eによって押圧摺動可能状態で挟持される。したがって、可動枠43は、ガイド軸44に対してガタつきのない状態で摺動可能に支持される。更には、上記軸押圧機構部のガイド軸に対する摩擦力によって可動枠43が装置外部から衝撃力等により容易に移動することが防止される。
【0042】
なお、ガイド軸45に対しても上記軸押圧機構部と同様構造であるが上記V溝のない機構部を設け、長穴43cの長穴方向の直交する方向に上記押圧板部で押圧することでガイド軸45に対してもガタつきのない状態で可動枠43を支持する。
【0043】
アダプタレンズ装置4に組み込まれるアダプタレンズALのうち、物体側レンズ群51は、物体側から順に、両凸正レンズの第1レンズと両凹負レンズの第2レンズを接合した負屈折力を有する接合レンズである。ウォブリングレンズ53は、単一の両凸正レンズからなり、光軸O方向に微小幅、例えば、200μmだけ進退可能である。像側レンズ群52は、物体側から順に、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズと両凹負レンズを接合した負屈折力を有する接合レンズである。そして、物体側レンズ群51、ウォブリングレンズ53、像側レンズ群52の間は、隙間a1,a2を設ける(図1)。
【0044】
上述のようなアダプタレンズALを採用することによって、ウォブリングに必要な正レンズを確保し、収差変動の低減に有利な光学系とし、さらにアダプタレンズALを光学的な倍率をほぼ等倍にすることができる。このようにほぼ等倍率とすることで鏡筒部3にアダプタレンズ装置4を装着してもレンズ鏡筒2の焦点距離が変化することがない。
【0045】
また、アダプタレンズ装置4のアダプタレンズALの外径は、鏡筒部3のマスターレンズMLの外径よりも大きくなっている。これにより明るい鏡筒部が装着された場合であっても、周辺光量が確保される。その他のマスターレンズMLおよびアダプタレンズALの光学特性については、本出願人による特願2010−038192号に記載されている。
【0046】
なお、これらのアダプタレンズALは、通信コネクタを逃げるために下部がカットされ、同様に上部もカットされたダブルDカット形状になっているが(図5)、下部側のみがカットされたDカット形状であってもよい。
【0047】
ウォブリング駆動機構50は、図3に示すように前固定枠41の開口部41bに挿入されて支持されるバネ支持板69と、錘部材68と、円形、またはリング状の積層ピエゾ素子からなる送り用圧電素子66と、例えば、アルミニウム合金やマルテンサイト系ステンレス鋼等の非磁性体からなる伝達部材67と、非磁性材63を介在した永久磁石からなる異極接合磁石61,62とからなり、それらの部材が物体側から像側に向けて接着剤で一体固着されている。また、送り用圧電素子66の側面と前固定枠41の開口部41b内表面との間にはシリコン剤66aを介在させ、送り用圧電素子66の撓み変位を低減させる。
【0048】
異極接合磁石61,62は、第一の磁性部材の吸着板65に摺動摩擦状態での相対移動可能に吸着する。吸着板65は、可動枠43の外周に接着固定される。異極接合磁石61,62と吸着板65との互いの吸着表面は、フッ素樹脂のコーティングやスパッタリングが施されている。なお、異極接合磁石61,62は、吸着板65との吸着面に対して直交する方向に磁化されている。吸着板65にはSUS430等のフェライト系ステンレス鋼が用いられる。
【0049】
また、異極接合磁石61,62の上記吸着面に対する裏面側、即ち、外周側には第二の磁性部材であるヨーク64が接着固定されている。ヨーク64にはSUS430等のフェライト系ステンレス鋼を用られ、磁気抵抗の小さい磁気回路が構成される。
【0050】
ヨーク64は、規制部となるくびれ部64aを備えており、くびれ部64aを前固定枠41の凹部41cの内側に配される光軸O方向に沿ったガイド溝41dに摺動可能に係合させる。この係合によって異極接合磁石61,62は、ヨーク64を介して前固定枠41に対して光軸O方向に移動可能な状態のもとで、周方向、および、ラジアル方向位置が規制される。したがって、可動枠43を前固定枠41内に組み込む際、ウォブリング駆動機構50、特に異極接合磁石61,62に干渉させることなく挿入することができる。
【0051】
バネ支持板69は、送り用圧電素子66側から観るとエッチング法により一部が取り除かれた中心対称のバネ形状、例えば、中心対称のヒンジ型板ばね、あるいは、取り付けねじ穴が左右、上下で異なる非対称板ばねで形成される。
【0052】
なお、異極接合磁石61,62の間に介在する非磁性材63は、必ずしも必要ではない。伝達部材67の両端面に非磁性材からなる板部材を接合すれば、伝達部材67は、磁性材で形成してもよい。
【0053】
ウォブリング動作時、ウォブリング駆動回路39により送り用圧電素子66に所定波形のウォブリング駆動電圧が印加されると、送り用圧電素子66は光軸O方向に伸縮する。送り用圧電素子66の伸縮は、伝達部材67を介して異極接合磁石61,62に伝達される。異極接合磁石61,62の光軸方向の微小変位を繰り返すことで吸着状態の摩擦により可動枠43側の吸着板65が変位し、可動枠43が光軸O方向にウォブリング駆動され、即ち、小振幅振動する。なお、吸着板65が変位する方向は、送り用圧電素子66に印加される駆動電圧パルス波形により定まる。上記駆動電圧パルス波形が三角波の場合、例えば、印加電圧は数万Hzの三角波を入力電圧として、1つの三角波に要する時間をt1+t2とすると、時間t1(加速)に於いて送り用圧電素子66および異極接合磁石61はゆっくりと進み、時間t2(減速)に於いて急速に縮む。時間t2においては異極接合磁石61と吸着板65との最大静止摩擦以上の加速度が得られるようにする。このように時間t1では異極接合磁石61と吸着板65が共に移動し、時間t2では異極接合磁石61と吸着板65との間に滑りが生ずる。これを連続的に繰り返すことで可動枠43の変位を制御することができる。
【0054】
フォトリフレクタ73と反射部材74は、図3,9に示すようにそれぞれ可動枠43と前固定枠41とに対向する状態で固定支持されている。フォトリフレクタ73の発光素子73aからの光は、反射部材74の反射面74aで反射され、フォトリフレクタ73の2分割受光素子73bに入射し、可動枠43の前固定枠41に対する相対位置が検出される。このフォトリフレクタ73の検出信号によりウォブリングレンズ53がウォブリング動作を開始する初期位置(動作開始位置)が検出される。
【0055】
フォトリフレクタ73により初期位置検出動作について、図9を用いて詳しく説明すると、フォトリフレクタ73は基材上に配置されたLED等の発光素子73aと受光素子73b1,73b2と2分割された2分割受光素子73bで構成され、可動枠43の端面には反射板74が接合されている。
【0056】
発光素子73aから照射された光ビームは、反射板74で反射され、2分割された一方の受光素子73b1上に入射し、2分割受光素子73bからの差信号の出力により可動枠43の位置が検出される。その後、可動枠43が可動枠43′の位置まで移動すると、反射板74も反射板74′に位置まで移動するので、上記光ビームは、他方の受光素子73b2に入射し、2分割受光素子73bからの差信号の出力により移動後の可動枠43′の位置が検出される。このようにして可動枠43の初期位置(動作開始位置)を決めることができる。なお、2分割受光素子73bに対して、受光部をさらに直角三角形で2分割した4分割受光素子を適用してもよい。
【0057】
可動枠位置検出用として可動枠43の外表面における右端にはホール素子78が取付いている。一方、前固定枠41または後固定枠42の内表面にはN極とS極が所定のピッチで交互に配列された磁気スケール79が固着されている(図3)。ホール素子78と磁気スケール79は対向配置されている。上記ホール素子78の出力信号により可動枠43の移動量が算出され、上記ホール素子78の出力信号は、後述するキャリブレーション動作時の検出信号としても利用される。
【0058】
可動枠保持機構55は、暴走や外部振動による可動枠43の破損を防止するための保持機構であり、図8に示すように異極接合磁石62の側面に固着される素子保持枠56と、一方側がバネ支持部材58に接合支持された状態で素子保持枠56内部に収容される制圧用圧電素子として円柱、または、直方体形状制圧用積層圧電素子57と、制圧用積層圧電素子57の可動枠43側に保持部材58を介し、吸着板65と圧接可能な状態で保持されており、摺動部材としても機能するボール状の緩衝部材59とからなる。制圧用積層圧電素子57は、素子保持枠56の内面との間にシリコンゴム57aを介在した状態で保持される。バネ支持部材58は、素子保持枠56にビス等で固着される。
【0059】
可動枠保持機構55の動作は、異極接合磁石61,62が振動を開始する直前に、円筒またはリング型の制圧用積層圧電素子57に素子の分極方向と逆方向に印加電圧(負電位)が与えられる。制圧用積層圧電素子57は、縮む方向に変位し、吸着板65と緩衝部材59とは離間する。
【0060】
また、異極接合磁石61,62の振動が停止すると、制圧用積層圧電素子57も停止し、緩衝部材59は吸着板65に対して押圧力が与えられた状態で当接する。この当接状態では、可動枠43は、可動枠保持機構55によりロックされ、光軸O方向の進退移動が規制される。したがって、可動枠保持機構55を設けたことにより異極接合磁石61,62の振動が停止状態にあるとき当該装置に外部からの振動が与えられた場合や可動枠43が暴走駆動した場合、可動枠43の破損を防止することができる。
【0061】
制圧用積層圧電素子57は、円柱、または、直方体形状であるが、これに替えて光軸Oを軸心とするリング型制圧用積層圧電素子も適用可能である。この場合、素子保持枠を前、または、後固定枠の内周部に固着支持する構成とし、更に、緩衝部材をリング型制圧用積層圧電素子の内周面上に複数配置し、可動枠上の吸着板、または、可動枠外周に当接可能とする。
【0062】
次に、上述した構成を有する鏡筒部3とアダプタレンズ装置4とからなるレンズ鏡筒2を適用するカメラシステム1におけるAF動作制御について、図10を用いて説明する。
【0063】
レンズ鏡筒2おいては、ウォブリングレンズ53を光軸O上で前方または後方に微小駆動させることは、フォーカスレンズ33を光軸O上で前方または後方に微小駆動させることと光学的に等価となるように撮像光学系が構成されており、ウォブリングレンズ53を光軸O上で前方、または、後方に微小振動した位置でのAF評価値(コントラスト値)となる。このAF評価値により、フォーカスレンズ33の合焦位置が存在する方向を認識して、フォーカスレンズ33のフォーカス移動が行われる。
【0064】
まず、ステップS101にてカメラシステム1が動画撮影開始状態にあることが検出されると、ステップS102に進み、キャリブレーシュンが実行される。すなわち、BCPU10は、キャリブレーシュン処理にて送り用圧電素子66のウォブリング駆動による可動枠43の動作チェックを行う。すなわち、送り用圧電素子66にパルス駆動波形を印加して振動させ、ホール素子78の出力信号によって可動枠43が進退移動することを確認する。このキャリブレーション動作は、ボディユニット5の電源オン後の動画撮影時における最初のAF動作状態下のみで行われる。更に、動画撮影開始時間を短縮する場合には電源オンや電源オフ時に行われる。ホール素子78の出力信号が検出されない場合、すなわち、可動枠43の進退移動が確認できない異常状態の場合は、ステップS103に進み、BCPU10は、液晶モニタ16の画面に「ウォブリング動作が開始されません」などの表示を行わせ、AF処理を終了させる。
【0065】
ステップS102で可動枠43の進退移動が確認できた場合、ステップS104に進み、ウォブリング動作を実行させる。このウォブリング動作では送り用圧電素子66に所定波形の駆動電圧を印加し、可動枠43を介してウォブリングレンズ53を振幅変位させる。このウォブリング動作によってフォーカスレンズ33のフォーカス位置に向かう移動方向が検出され、その方向にフォーカスレンズ33が駆動される。ステップS105にて撮像素子18からの画像データをメモリに複数回、例えば、5回だけ取り込む。ステップS106において、取り込まれた画像データから画像処理部にて各画像データのコントラスト値を生成する。このコントラスト値の最大値および最小値との差異を予め決めた許容値と比較する。BCPU10は、上記最大値および最小値との差異が許容値以下かどうかを判別し、より大きい場合、コントラスト値の差異によって、フォーカスレンズ33の合焦位置の方向へ駆動する。これによって、フォーカスレンズ33を合焦位置に近づけることができる。
【0066】
BCPU10によりステップS104からステップS106の処理が繰り返され、得られたコントラスト値の差が許容値以下となったと判断された場合、フォーカスレンズ33は合焦位置であると判断して、ステップS108に進み、ウォブリング駆動が停止され、上記ホール素子の出力信号により可動枠43の振幅ゼロ状態を検出してAF動作は終了する。
【0067】
上記AF動作が完了すると、動画撮影が行われる。撮影された動画データは、画像処理コントローラ12で処理されて記録メディア15に記録される。同時に画像処理コントローラ12で処理された動画は、画像表示制御回路を介して液晶モニタ16に表示される。
【0068】
上述したカメラシステム1に適用された本実施形態のレンズ鏡筒2によれば、鏡筒部3に装着可能なウォブリング用アダプタレンズ装置4の駆動機構として積層ピエゾ素子を適用したウォブリング駆動機構50を適用しており、該駆動機構を前固定枠41と可動枠43の外周部との間に光軸Oに沿って配置することでアダプタレンズ装置4の小型化が実現でき、組み立ても容易になる。
【0069】
また、ウォブリング駆動機構50において、異極接合磁石61,62の外周側に接着固定されるヨーク64のくびれ部64aを前固定枠41のガイド溝41dに係合させている。そのためにウォブリング駆動機構50の送り用圧電素子66並びに異極接合磁石61,62が前固定枠41に対してラジアル方向に位置規制され、可動枠43の挿入時、異極接合磁石61,62と吸着板65との磁気吸着による干渉やバネ支持板69の変形が防止でき、組み込みが容易になる。
【0070】
可動枠保持機構55設けたことにより外部からの振動が与えられたときや可動枠43が暴走駆動したときなど、制動用圧電素子57で可動枠43をロックすることができ、暴走時や外部振動を受けた時に可動枠43の破損を防止できる。
【0071】
また、軸押圧機構部43d,43eを配したことによって、ガイド軸44に対して摺動可能に支持される可動枠43に可動枠43がガイド軸44に対してガタつきのない状態で支持され、ウォブリングレンズ53が光軸O方向の直交面上、ガタつくことなく進退可能に支持され、精度のよいウォブリング駆動が実現できる。
【0072】
なお、本実施形態に適用したウォブリング駆動機構50の構造は、鏡筒部3の前群レンズ31、後群レンズ32の変倍駆動機構としても適用可能である。更には、光ディスク装置におけるコリメータレンズの球面収差補正機構にも適用可能である。
【0073】
上述した第一の実施形態において、アダプタレンズ装置4の可動枠43に配される軸押圧機構部43dに対する変形例について、図11を用いて説明する。
【0074】
この変形例の軸押圧機構部43Bdは、レンズ移動枠である可動枠43Bの前端面部および後端面部に配され、真鍮、ジュラルミンやベリリウム銅の材質からなる球面部材75と、押さえ部材76と、バネ部材77とからなる。可動枠43Bを摺動可能に貫通する案内部材であるSUS420等のマルテンサイト系のステンレス鋼やこのステンレス鋼の表面にフッ素樹脂コートを施したガイド軸44BにはV溝44Baが設けられる。可動枠43B側の前、後端面部の軸穴43Bdaには逃げ部43Bdbと上方挿通穴43Bdcとが設けられている。
【0075】
球面部材75は、先端球面部を有しており、軸穴43Bdaの上方挿通穴43Bdcに嵌入するフランジ部75bと、上部に凹部75aとを備えている。球面部材75は、フランジ部75bを上方挿通穴43Bdcに挿入し、先端球面部をガイド軸44BのV溝44Baに当接する状態で組み込まれる。
【0076】
なお、ガイド軸44BやV溝44Baの表面に施したフッ素樹脂コート(詳しくは、4フッ化エチレン樹脂のコート)の表面硬度をビッカース硬度160から400Hvとする。また、球面部材75の材質を真鍮、ジュラルミン、ベリリウム銅等とし、ビッカース硬度100から240Hvとする。このようにガイド軸44Bに比べ、球面部材75の表面硬度を同一、または、それ以下にすることにより、ガイド軸などに圧痕などが発生しないようにしている。特に、ガイド軸の材質をSUS420等のマルテンサイト系ステンレス鋼(表面のビッカース硬度500Hv)とし、球面部材をSUS303などのオーステナイト系やSUS430等のフェライト系ステンレス鋼(表面のビッカース硬度200Hv)を用いることが望ましい。勿論、ガイド軸の材質を繊維強化プラスチック(表面のビッカース硬度400〜700Hv)とし、球面部材をSUS420等のマルテンサイト系ステンレス鋼(表面のビッカース硬度500Hv)やSUS430等のフェライト系ステンレス鋼(表面のビッカース硬度200Hv)を何れかを選択してもよい。
【0077】
押さえ部材76は、凸部76bを有しており、該凸部を球面部材75の凹部75aに嵌入させ、上方挿通穴43Bdc上部にビス等で固定する。
【0078】
バネ部材77は、球面部材75のフランジ部75bと押さえ部材76の間に圧縮した状態で挿入される。したがって、球面部材75の先端球面部は、バネ部材77の付勢力でガイド軸44BのV溝44Baに当接する。
【0079】
上述した構成を有する変形例の軸押圧機構部43Bdを適用することにより可動枠43Bは、ガイド軸44Bに対してガタつきのない状態で摺動可能に支持される。更には上記軸押圧機構部のガイド軸に対する摩擦力によって可動枠43Bが装置外部から衝撃力等により容易に移動することが防止される。軸押圧機構部43Bdでは、バネ部材77の付勢力の設定が容易であり、好ましいガイド軸付勢状態で可動枠43Bを摺動可能に支持することができる。
【0080】
次に、本発明の第二の実施形態としてブレ補正機能を有する撮像装置に適用されるレンズ鏡筒について、図12〜14を用いて説明する。
【0081】
本実施形態のレンズ鏡筒80は、撮像装置の撮像素子(図示せず)の前面位置に配置され、上記撮像装置にて手ブレが検出された場合、撮像素子露光時にレンズ鏡筒80の撮影レンズを光軸Oとの直交面に沿って手ブレを打ち消すように変位させことによって、上記撮像素子より手ブレのない撮影画像データが得る手ブレ補正機能を有している。
【0082】
なお、上記撮影レンズの光軸は、図中、「O」で示す。光軸Oとの直交面をXY平面とし、XY平面に沿った互いに直交する方向をX方向(左右)、および、Y方向(上下)とする。
【0083】
レンズ鏡筒80は、図12〜14に示すように上記撮像素子の前面側に配される基台82と、基台82に対して相対的にX方向に移動可能に支持されるX枠83と、X枠83に対して相対的にY方向に移動可能に支持されるレンズ移動枠であるY枠84と、Y枠84に保持される光学レンズである2枚構成のレンズ群121,122と、X方向に沿う一対の案内部材であるXガイド軸85,86と、Y方向に沿う一対の案内部材であるYガイド軸87,88と、X枠83を基台82に対してX方向に変位駆動するためのX駆動機構90と、Y枠84をX枠83に対してY方向に変位駆動するためのY駆動機構100とからなる。
【0084】
基台82は、XY平面に沿った板部材からなり、中央開口部82aと、物体側方向に起立する一対の軸支持部82b,82cおよび一対の軸支持部82d,82eとを備えており、撮像装置本体(図示せず)に固定支持されている。Xガイド軸85の両端部は、軸支持部82b,82cにより固定支持される。Xガイド軸86の両端部は、軸支持部82d,82eにより固定支持される。
【0085】
X枠83は、中央開口部83aと、物体側方向に起立する一対の軸支持部83b,83cおよび一対の軸支持部83d,83eと、Y方向両端部突出部にガイド軸穴83f,83gを備えている。Yガイド軸87の両端部は、軸支持部83b,83cにより固定支持される。Yガイド軸88の両端部は、軸支持部83d,83eにより固定支持される。ガイド軸穴83f,83gにはそれぞれXガイド軸85,86が摺動可能に嵌入している。したがって、X枠83は、基台82の物体側にてX方向にスライド移動可能に支持される。
【0086】
Y枠84は、中央開口部84aにレンズ群121,122を保持しており、X方向両端部突出部にガイド軸穴84b,84cが設けられる。Yガイド軸87,88は、それぞれガイド軸穴84b,84cに摺動可能に嵌入する。したがって、Y枠84は、X枠83に対して相対的にY方向に変位可能に支持され、Y枠84に保持されるレンズ群121,122は、基台に対してにXY平面上の任意方向に変位可能に支持される。
【0087】
X駆動機構90は、圧電素子基板98と、積層ピエゾ素子からなる送り用圧電素子96と、非磁性体からなる伝達部材97と、非磁性材93を介在した永久磁石からなる異極接合磁石91,92とからなり、上記各部材がX方向に沿って接着剤で一体固着されて構成される。圧電素子基板98は、基台82の物体側に起立して配置される支持台99の折り曲げ部99bに固定支持される。
【0088】
異極接合磁石91,92は、第一の磁性材料の吸着板95に摺動摩擦状態で相対移動可能に吸着する。吸着板95は、X枠83のY方向突起部外面83hに接着固定される。異極接合磁石91,92と吸着板95との互いの吸着表面は、フッ素樹脂コーティングやスパッタリングが施されている。そして、異極接合磁石91,92は、吸着板95との吸着面に対して直交する方向に磁化されている。なお、吸着板95にはSUS430等のフェライト系ステンレス鋼が用いられる。
【0089】
また、異極接合磁石91,92の上記吸着面に対する裏面側、即ち、反X枠側には第二の磁性部材であるヨーク94が接着固定されている。ヨーク94にはSUS430等のフェライト系ステンレス鋼が用いられ、磁気抵抗の小さい磁気回路が構成される。
【0090】
ヨーク94は、規制部となるくびれ部94aを備えており、くびれ部94aは、支持台99に配されるX方向に沿ったガイド溝99aに摺動可能に係合させる。この係合によって異極接合磁石91,92は、ヨーク94を介して支持台99に対してX方向に移動可能な状態のもとで、X方向と直交するY方向の位置が規制される。したがって、X枠83を組み込む際、異極接合磁石91,92に干渉させることなく挿入することができる。
【0091】
X駆動機構90において、送り用圧電素子96に所定波形の駆動電圧パルスが印加されると、送り用圧電素子96はX方向に伸縮する。送り用圧電素子96の伸縮は、伝達部材97を介して異極接合磁石91,92に伝達される。異極接合磁石91,92のX方向の微小変位を繰り返すことで吸着状態での摩擦力により吸着板95を介してX枠83がX方向に変位する。上記駆動電圧パルス波形によりX枠93の左右の変位方向を制御することができる。
【0092】
Y駆動機構100は、圧電素子基板108と、積層ピエゾ素子からなる送り用圧電素子106と、アルミニウム合金やマルテンサイト系のステンレス鋼の非磁性体からなる伝達部材107と、非磁性材103を介在する異極接合磁石101,102とからなり、上記各部材がY方向に沿って接着剤で一体固着されて構成される。圧電素子基板108は、X枠83の物体側に起立して配置される支持台109の折り曲げ部109bに固定支持される。
【0093】
異極接合磁石101,102は、第一の磁性材料の吸着板105に摺動相対移動可能な状態で、かつ、摩擦移動可能な状態で吸着する。吸着板105は、Y枠84のX方向突起部外面84dに接着固定される。異極接合磁石101,102と吸着板105との互いの吸着表面は、フッ素樹脂コーティングやスパッタリングが施されている。そして、異極接合磁石101,102は、吸着板105との吸着面に対して直交する方向に磁化されている。吸着板105にはSUS430等のフェライト系ステンレス鋼が用いられる。
【0094】
また、異極接合磁石101,102の上記吸着面に対する裏面側、即ち、反Y枠側には第二の磁性部材であるヨーク104が接着固定されている。ヨーク104にはSUS430等のフェライト系ステンレス鋼が用いられ、磁気抵抗の小さい磁気回路が構成される。
【0095】
ヨーク104は、規制部となるくびれ部104aを備えており、くびれ部104aは、支持台109に配されるY方向に沿ったガイド溝109aに摺動可能に係合させる。この係合によって異極接合磁石101,102は、ヨーク104を介して支持台109に対してY方向に移動可能な状態のもとで、Y方向と直交するX方向の位置が規制される。したがって、Y枠84を組み込む際、異極接合磁石101,102に干渉させることなく挿入することができる。
【0096】
Y駆動機構100において、送り用圧電素子106に所定波形の駆動電圧パルスが印加されると、送り用圧電素子106はY方向に伸縮する。送り用圧電素子106の伸縮は、伝達部材107を介して異極接合磁石101,102に伝達される。異極接合磁石101,102のY方向の微小変位を繰り返すことで吸着状態での摩擦力により吸着板105を介してY枠84がY方向に変位する。上記駆動電圧パルス波形によりY枠84の上下の変位方向を制御することができる。
【0097】
基台82およびX枠83にはそれぞれ位置検出用のホール素子111,113が配されており、それぞれホール素子111,113に対向する状態でX枠83、および、Y枠84に永久磁石112,114が配されている。ホール素子111によってX枠83のX方向の移動位置が検出され、ホール素子113によってY枠84のY方向の移動位置が検出される。
【0098】
上述のように構成されたレンズ鏡筒80を備えた上記撮像装置にて手ブレ補正処理時の動作について説明する。
【0099】
上記撮像装置において、撮像素子の露光時、手ブレが検出された場合、送り用圧電素子96,106に対して上記手ブレを補正する方向にX枠83およびY枠84を変位させるための駆動電圧パルスが印加される。送り用圧電素子96,106がそれぞれ伸縮駆動され、X駆動機構90を介してX枠83が基台82に対して相対的に変位し、かつ、Y駆動機構100を介してY枠84がX枠83に対して相対的に変位し、結果的にY枠84に保持されるレンズ群121,122が上記撮像素子に対してXY平面上、手ブレを補正する方向に変位する。このレンズ群121,122の変位により上記撮像素子より出力される撮像信号は、手ブレ成分を含まないものとなる。
【0100】
本実施形態のレンズ鏡筒80によれば、積層ピエゾ素子を適用したX,Y駆動機構90,100を適用することで、該駆動機構をそれぞれX枠83およびY枠84のそれぞれの一側方に配置されており、レンズ鏡筒の小型化が実現でき、組み立ても容易になる。
【0101】
また、X,Y駆動機構90,100にて異極接合磁石91,92および101,102の外側に接着固定されるヨーク104のくびれ部104aを支持台99,109のガイド溝99a,101aにそれぞれ係合させている。そのためにX枠83,Y枠84の組み込みに際して、異極接合磁石91,92の位置規制がなされ、X枠83,Y枠84の干渉が防止でき、組み込みが容易になる。
【0102】
この発明は、上記各実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0103】
上述のように本発明のレンズ鏡筒は、駆動制御機構を備えたレンズ鏡筒において、十分な駆動力が得られ、光軸方向の薄型化も可能であり、組み立ても容易であるレンズ鏡筒としての利用が可能である。
【符号の説明】
【0104】
2,80…レンズ鏡筒
43…可動枠(レンズ移動枠)
44,45…ガイド軸(案内部材)
53…ウォブリングレンズ(光学レンズ)
57…制圧用積層圧電素子(制圧用圧電素子)
59…緩衝部材(摺動部材)
65,95,105…吸着板(第一の磁性部材)
61,62,91,92,101,102…異極接合磁石
64,94,104…ヨーク(第二の磁性部材)
64a,94a,104a…くびれ部(規制部)
66,96,106…送り用圧電素子
67,97,107…伝達部材
84…Y枠(レンズ移動枠)
85,86…Xガイド軸(案内部材)
87,88…Yガイド軸(案内部材)
121,122…レンズ群(光学レンズ)
O…光軸方向
XY平面…光軸方向と直交する平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学レンズを保持するレンズ移動枠と、該レンズ移動枠を光軸方向、または、該光軸方向に直交する平面内にて移動可能に支持する案内部材とを備えたレンズ鏡筒において、
上記レンズ移動枠の一部に固着される第一の磁性部材と、
上記第一の磁性部材に吸着する状態で取り付けられ、上記第一の磁性部材との吸着面と直交する方向に磁化された異極接合磁石と、
上記異極接合磁石の上記吸着面側に対する反対面に接合される第二の磁性部材と、
上記異極接合磁石に伝達部材を介在して結合する送り用圧電素子と、
を有することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
上記レンズ移動枠は、上記光学レンズの光軸方向に進退移動可能であって、上記案内部材は、上記レンズ移動枠を上記光軸方向に摺動可能に支持すること特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
上記第二の磁性部材は、規制部を備えており、上記送り用圧電素子と上記異極接合磁石との間に設けた伝達部材は、非磁性材で接合したことを特徴とする請求項2記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
上記光学レンズは、単一の正レンズでDカット部、または、ダブルDカット部を有することを特徴とする請求項2に記載のレンズ鏡筒
【請求項5】
上記異極接合磁石の側面に制圧用圧電素子と摺動部材を設け、該磁石が変位停止状態下では上記摺動部材は上記可動枠を押圧することを特徴とする請求項3に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項2に記載のレンズ鏡筒を備えた撮像装置において、電源オン時、または電源オフ時に上記送り用圧電素子に駆動電圧を印加して上記異極接合磁石を光軸方向に振動させるによって上記レンズ移動枠を光軸方向へ移動させ、該レンズ移動枠の位置を検出して確認を行うキャリブレーション制御動作を行わせることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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