レンズ鏡筒
【課題】レンズにエアーを吹き付けたときにレンズ鏡筒から外れてしまうことを防止できる絞り板を提供する。
【解決手段】投写レンズ１０の組み立て時には、先ず、収束レンズ１３をレンズ鏡筒１１に固定する。この後、絞り板１４のカシメ孔１４ｂにカシメベース１１ａの一面１１ｂから突出するカシメピン１１ｃを挿入して熱カシメを行い、絞り板１４をレンズ鏡筒１１に固定する。絞り板１４の固定後、絞り開口１４ａを介して絞り板１４の前面１４ｅ側から収束レンズ１３に向けてエアーを吹き付けて異物を除去する。収束レンズ１３に吹き付けたエアーは、エアー逃がし用通路１１ｄとエアー逃がし用切り欠き１４ｄとから絞り板１４の前面１４ｅ側に逃げる。このため、絞り板１４の熱カシメ部分に圧力が集中してカシメピン１１ｃが破損することを防止できる。
【解決手段】投写レンズ１０の組み立て時には、先ず、収束レンズ１３をレンズ鏡筒１１に固定する。この後、絞り板１４のカシメ孔１４ｂにカシメベース１１ａの一面１１ｂから突出するカシメピン１１ｃを挿入して熱カシメを行い、絞り板１４をレンズ鏡筒１１に固定する。絞り板１４の固定後、絞り開口１４ａを介して絞り板１４の前面１４ｅ側から収束レンズ１３に向けてエアーを吹き付けて異物を除去する。収束レンズ１３に吹き付けたエアーは、エアー逃がし用通路１１ｄとエアー逃がし用切り欠き１４ｄとから絞り板１４の前面１４ｅ側に逃げる。このため、絞り板１４の熱カシメ部分に圧力が集中してカシメピン１１ｃが破損することを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、プロジェクタの投写レンズなどに使用されるレンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
プロジェクタは、画像表示部からの画像光を投写レンズに入射させてスクリーンに画像を投影する。投写レンズのレンズ鏡筒内には、画像表示部からの画像光が入射する収束レンズや、収束レンズに入射した画像光が通過する絞り開口を有する絞り板、絞り開口を通過した光を結像させる結像レンズなどが収納されている。近年、プロジェクタの製造コストを低減するための工夫として、各レンズがプラスチックで形成され、また、絞り板は厚みが０．５ｍｍ程度の薄い樹脂で弾性を有するシート状に形成されている。
【０００３】
投写レンズの組み立ては、先ず、収束レンズを挿入し、その後に絞り板が取り付けられる。投写レンズのレンズ鏡筒の内面には、その中心軸に向けて突出する段差が形成されている。絞り板は、レンズ鏡筒の段差にその一方の面を押し付けるとともに、段差からレンズ鏡筒の中心軸の軸方向と平行に延びる突出するカシメピンにそのカシメ孔を挿入して熱カシメすることによりレンズ鏡筒に固定される。ここで、収束レンズがプラスチックで形成されていると、熱カシメを行ったときに塵や埃などの異物が静電気によって収束レンズの表面に付着しやすくなる。このため、絞り板をレンズ鏡筒に固定した後に、絞り開口を介して収束レンズにエアーを吹き付けて、収束レンズの表面に付着した異物を除去することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００７−２１９０４９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、収束レンズにエアーを吹き付けると、吹き付けたエアーの流れが変化して絞り板に向けてエアーが吹き付けられる。そして、上述したように、絞り板は薄い樹脂で形成されているため、絞り板にエアーが吹き付けられたときの圧力は熱カシメ部分に集中してしまい、この圧力によってカシメピンが破損してしまうことがあった。カシメピンが破損してしまうと、絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまい、再度、熱カシメによって絞り板を固定しなければならないため、投写レンズの製造効率が低下していた。
【０００６】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、レンズにエアーを吹き付けたときに絞り板が外れてしまうことを防止できるレンズ鏡筒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的を達成するにあたり、本発明は、略中央部に絞り開口が形成された絞り板がレンズと対面するように固定されるレンズ鏡筒において、前記絞り開口を介して前記レンズに吹き付けたエアーを逃がすエアー逃がし用通路をその内面で前記絞り板の周囲に形成したものである。
【０００８】
なお、前記エアー逃がし用通路は、前記絞り板の周囲で前記内面に形成した溝からなり、前記絞り板の端縁が切り欠かれたエアー逃がし用切り欠きが前記エアー逃がし用通路と対峙するように前記絞り板が配置されていることが好ましい。
【０００９】
また、前記内面から突出する段差と、前記段差からその中心軸の軸方向と平行に延びるカシメピンとを備え、前記絞り板の前記絞り開口の周囲にカシメ孔を形成し、前記カシメピンを前記カシメ孔に挿通して熱カシメを行うことにより前記絞り板が前記段差に固定されることが好ましい。
【００１０】
また、前記段差に予備用の前記カシメピンを形成し、前記絞り板を前記段差に固定した状態では、予備用の前記カシメピンが前記エアー逃がし用切り欠きから突出することが好ましい。
【発明の効果】
【００１１】
請求項１記載の発明によれば、レンズに吹き付けたエアーを逃がすことが可能になるので、レンズにエアーを吹き付けたときに絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまうことを防止できる。
【００１２】
請求項２記載の発明によれば、エアー逃がし通路とエアー逃がし用切り欠きとで効率よくエアーを逃がすことが可能になるので、レンズにエアーを吹き付けたときに絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまうことをより効果的に防止できる。
【００１３】
請求項３記載の発明によれば、熱カシメ部分に圧力が集中してカシメピンや絞り板が破損することを防止することが可能になるので、レンズにエアーを吹き付けたときに絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまうことを防止できる。
【００１４】
請求項４記載の発明によれば、エアーによってカシメピンが破損してしまってもレンズ鏡筒を交換せずに再利用できるので、レンズ鏡筒を交換することに起因する製造コストの上昇を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】本発明を用いたレンズ鏡筒の図２におけるＡ−Ａ部分の断面図である。
【図２】本発明を用いたレンズ鏡筒の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
図１に示すように、プロジェクタ用の投写レンズ１０はレンズ鏡筒１１を備えている。レンズ鏡筒１１は、プロジェクタ筐体１２の前面にネジ止めされている。レンズ鏡筒１１の内部には、収束レンズ１３、絞り板１４、結像レンズ１５、フォーカスレンズ１６が保持されている。これらの各部材は光軸Ｐ（中心軸）に沿って並べて配置されている。絞り板１４は、その厚みが０．５ｍｍで樹脂によって弾性を有するシート状に形成されている。また、収束レンズ１３や結像レンズ１５、フォーカスレンズ１６はプラスチックで形成されている。なお、各レンズは、１ブロック化して図示してあるが、これらは単レンズ又は複数枚レンズのいずれであってもよい。
【００１７】
プロジェクタ筐体１２の内部には、簡略的に示してあるが画像表示部１７が組み込まれ、フルカラーの画像光をレンズ鏡筒１１に組み込まれた投写光学系に入射させる。画像表示部１７は、例えば光源からの白色光をダイクロイックミラーで分割して得たＲ，Ｇ，Ｂの基本色光で照明される３枚の液晶パネルと、これらの液晶パネルからの画像を合成するクロスダイクロイックプリズムから構成されている。
【００１８】
画像表示部１７からの画像光（光）は収束レンズ（レンズ）１３に入射し、絞り板１４の略中央部に形成された絞り開口１４ａを通過する。絞り開口１４ａを通過した画像光は結像レンズ１５で結像され、フォーカスレンズ１６を介して図示しないスクリーンに画像が投影される。絞り開口１４ａを介して画像光を結像レンズ１５に入射させることにより、スクリーン上に投影した画像のフレアやゴーストを防止している。
【００１９】
図２に示すように、レンズ鏡筒１１の内面には、光軸Ｐに向けて突出する略直方体形状のカシメベース（段差）１１ａが形成されている。カシメベース１１ａの光軸Ｐと直交する一面１１ｂからは、光軸Ｐの軸方向と平行に延びる円柱状のカシメピン１１ｃが形成されている。カシメピン１１ｃは、絞り板１４の一方の面であって収束レンズ１３と対面する後面１４ｃに向けて突出している。また、カシメピン１１ｃは、レンズ鏡筒１１の周方向に１２０度間隔で配置した３本が１組となっており、レンズ鏡筒１１の周方向の位置を異ならせて２組の計６本形成されている。これに伴い、カシメベース１１ａも同様の配置で６箇所に形成されている。絞り板１４の絞り開口１４ａの周囲には、カシメピン１１ｃを挿入するカシメ孔１４ｂがその周方向に１２０度間隔で３箇所に形成されている。絞り板１４は、いずれか一組のカシメピン１１ｃを３つのカシメ孔１４ｂに挿入するとともに、その一方の面であって収束レンズ１３と対面する後面１４ｃを押し当て、カシメピン１１ｃを熱カシメすることにより、レンズ鏡筒１１に固定されている。他方、絞り板１４の固定に使用されていない１組のカシメピン１１ｃは予備用となっている。図１中では、熱カシメしたカシメピン１１ｃはその先端が潰れて絞り板１４に溶着した状態を示し、予備用のカシメピン１１ｃは熱カシメ前の円柱状の状態を示している。なお、カシメピン１１ｃの数及びその組数は適宜数設けてよい。
【００２０】
レンズ鏡筒１１の内面には、絞り板１４の周囲に配置されたエアー逃がし用通路１１ｄが形成されている。エアー逃がし用通路１１ｄは、光軸Ｐと平行に絞り板１４の両面側に延びるように形成された溝からなる。エアー逃がし用通路１１ｄは、レンズ鏡筒１１の周方向においては各カシメベース１１ａの間に配置されている。エアー逃がし用通路１１ｄを形成した部分では、絞り板１４の外径よりもレンズ鏡筒１１の内径が大きくなる。このため、エアー逃がし用通路１１ｄを介して絞り板１４の両面側が連通する。なお、エアー逃がし用通路１１ｄが形成された部分以外の部分では、絞り板１４の外径とレンズ鏡筒１１の内径とは同一になっており、絞り板１４の端縁がレンズ鏡筒１１の内面に当接している。
【００２１】
また、絞り板１４には、その端縁を切り欠いたエアー逃がし用切り欠き１４ｄが３箇所に形成されている。エアー逃がし用切り欠き１４ｄは、各々がカシメ孔１４ｂの間に配置されている。これにより、絞り板１４の周方向においてカシメ孔１４ｂとエアー逃がし用切り欠き１４ｄとは交互に配置されている。エアー逃がし用切り欠き１４ｄを介して、絞り板１４の後面１４ｃ側と、その他方の面である前面１４ｅ側とは連通している。上述したように、エアー逃がし用通路１１ｄは、レンズ鏡筒１１の周方向においては各カシメベース１１ａの間に配置されているため、エアー逃がし用切り欠き１４ｄはエアー逃がし用通路１１ｄと対峙している。絞り板１４をレンズ鏡筒１１に固定した状態では予備用のカシメピン１１ｃはエアー逃がし用切り欠き１４ｄから絞り板の前面１４ｅ側に突出してエアー逃がし用切り欠き１４ｄを介して逃がされている。
【００２２】
次に、上記構成による作用について説明する。
【００２３】
投写レンズ１０の組み立て時には、先ず、収束レンズ１３が絞り板１４の後面１４ｃ側（図１の画像表示部１７側）からレンズ鏡筒１１に挿入されて固定される。収束レンズ１３の固定後、絞り板１４が反対側からレンズ鏡筒１１内に挿入されるとともに、２組のカシメピン１１ｃのうちいずれか１組が絞り板１４のカシメ孔１４ｂに挿通される。この後、熱カシメが行われて絞り板１４がレンズ鏡筒１１に固定される。収束レンズ１３はプラスチックで形成されているため、熱カシメを行ったときに静電気によって塵や埃などの異物がその表面に付着しやすい。このため、絞り板１４の固定後、絞り開口１４ａを介してその前面１４ｅ側から収束レンズ１３に向けてエアーが吹き付けられ、収束レンズ１３の表面に付着した異物が除去される。収束レンズ１３に吹き付けたエアーは、収束レンズ１３の表面でその流れが変化して絞り板１４の後面１４ｃに向けて吹き付けられる。絞り板１４の後面１４ｃに吹き付けられたエアーは、エアー逃がし用通路１１ｄとエアー逃がし用切り欠き１４ｄとから前面１４ｅ側に逃げる。このため、絞り板１４の熱カシメ部分に圧力が集中してカシメピン１１ｃが破損することを防止できる。仮に、絞り板１４の固定に使用されている１組のカシメピン１１ｃが破損したときには、予備用の１組のカシメピン１１ｃを絞り板１４の固定に使用できるので、レンズ鏡筒１１を交換することなく使用できる。
【００２４】
以上のように、収束レンズ１３に吹き付けたエアーをエアー逃がし用通路１１ｄとエアー逃がし用切り欠き１４ｄとから逃がすことにより、カシメピン１１ｃの破損を防止できることに加え、レンズ鏡筒１１及び絞り板１４の重量を軽量化できるので、投写レンズ１０の重量を軽量化できる。
【００２５】
上記実施形態では、絞り板１４にエアー逃がし用切り欠き１４ｄを形成したが、絞り板１４にはエアー逃がし用切り欠き１４ｄを形成せずに、レンズ鏡筒１１にエアー逃がし用通路１１ｄのみを形成してもよい。また、エアー逃がし用通路はレンズ鏡筒１１の内面に形成した溝に限らず、例えば、従来の絞り板１４の外径をレンズ鏡筒１１の内径よりも小さくして、絞り板１４を固定したときにカシメベース１１ａと絞り板１４の周縁との隙間からエアーが逃げるようにしてもよい。
【００２６】
上記実施形態では、熱カシメによって絞り板をレンズ鏡筒に固定したが、例えば、周面の一部に切れ目を入れるとともに切れ目を入れた部分を一面側に折り曲げた金属板をネジ止めによってレンズ鏡筒に取り付け、金属板の折り曲げ部分に絞り板のカシメ開口を挿入してカシメを行う、あるいは、接着によって絞り板をレンズ鏡筒に固定するなど、絞り板をレンズ鏡筒に固定する方法は適宜の方法でよい。
【００２７】
上記実施形態では、プロジェクタに用いる投写レンズのレンズ鏡筒に本発明を適用したが例えばカメラなどプロジェクタ以外のレンズ鏡筒に本発明を適用してもよい。さらに、エアーを吹き付けるレンズは収束レンズ１３に限らず、結像レンズやオートフォーカスレンズなど他のレンズでもよい。
【符号の説明】
【００２８】
１１ レンズ鏡筒
１１ａ カシメベース
１１ｂ 一面
１１ｃ カシメピン
１１ｄ エアー逃がし用通路
１３ 収束レンズ（レンズ）
１４ 絞り板
１４ａ 絞り開口
１４ｃ 後面
１４ｄ エアー逃がし用切り欠き
１４ｅ 前面
【技術分野】
【０００１】
本発明は、プロジェクタの投写レンズなどに使用されるレンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
プロジェクタは、画像表示部からの画像光を投写レンズに入射させてスクリーンに画像を投影する。投写レンズのレンズ鏡筒内には、画像表示部からの画像光が入射する収束レンズや、収束レンズに入射した画像光が通過する絞り開口を有する絞り板、絞り開口を通過した光を結像させる結像レンズなどが収納されている。近年、プロジェクタの製造コストを低減するための工夫として、各レンズがプラスチックで形成され、また、絞り板は厚みが０．５ｍｍ程度の薄い樹脂で弾性を有するシート状に形成されている。
【０００３】
投写レンズの組み立ては、先ず、収束レンズを挿入し、その後に絞り板が取り付けられる。投写レンズのレンズ鏡筒の内面には、その中心軸に向けて突出する段差が形成されている。絞り板は、レンズ鏡筒の段差にその一方の面を押し付けるとともに、段差からレンズ鏡筒の中心軸の軸方向と平行に延びる突出するカシメピンにそのカシメ孔を挿入して熱カシメすることによりレンズ鏡筒に固定される。ここで、収束レンズがプラスチックで形成されていると、熱カシメを行ったときに塵や埃などの異物が静電気によって収束レンズの表面に付着しやすくなる。このため、絞り板をレンズ鏡筒に固定した後に、絞り開口を介して収束レンズにエアーを吹き付けて、収束レンズの表面に付着した異物を除去することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開２００７−２１９０４９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
しかし、収束レンズにエアーを吹き付けると、吹き付けたエアーの流れが変化して絞り板に向けてエアーが吹き付けられる。そして、上述したように、絞り板は薄い樹脂で形成されているため、絞り板にエアーが吹き付けられたときの圧力は熱カシメ部分に集中してしまい、この圧力によってカシメピンが破損してしまうことがあった。カシメピンが破損してしまうと、絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまい、再度、熱カシメによって絞り板を固定しなければならないため、投写レンズの製造効率が低下していた。
【０００６】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、レンズにエアーを吹き付けたときに絞り板が外れてしまうことを防止できるレンズ鏡筒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記目的を達成するにあたり、本発明は、略中央部に絞り開口が形成された絞り板がレンズと対面するように固定されるレンズ鏡筒において、前記絞り開口を介して前記レンズに吹き付けたエアーを逃がすエアー逃がし用通路をその内面で前記絞り板の周囲に形成したものである。
【０００８】
なお、前記エアー逃がし用通路は、前記絞り板の周囲で前記内面に形成した溝からなり、前記絞り板の端縁が切り欠かれたエアー逃がし用切り欠きが前記エアー逃がし用通路と対峙するように前記絞り板が配置されていることが好ましい。
【０００９】
また、前記内面から突出する段差と、前記段差からその中心軸の軸方向と平行に延びるカシメピンとを備え、前記絞り板の前記絞り開口の周囲にカシメ孔を形成し、前記カシメピンを前記カシメ孔に挿通して熱カシメを行うことにより前記絞り板が前記段差に固定されることが好ましい。
【００１０】
また、前記段差に予備用の前記カシメピンを形成し、前記絞り板を前記段差に固定した状態では、予備用の前記カシメピンが前記エアー逃がし用切り欠きから突出することが好ましい。
【発明の効果】
【００１１】
請求項１記載の発明によれば、レンズに吹き付けたエアーを逃がすことが可能になるので、レンズにエアーを吹き付けたときに絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまうことを防止できる。
【００１２】
請求項２記載の発明によれば、エアー逃がし通路とエアー逃がし用切り欠きとで効率よくエアーを逃がすことが可能になるので、レンズにエアーを吹き付けたときに絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまうことをより効果的に防止できる。
【００１３】
請求項３記載の発明によれば、熱カシメ部分に圧力が集中してカシメピンや絞り板が破損することを防止することが可能になるので、レンズにエアーを吹き付けたときに絞り板がレンズ鏡筒から外れてしまうことを防止できる。
【００１４】
請求項４記載の発明によれば、エアーによってカシメピンが破損してしまってもレンズ鏡筒を交換せずに再利用できるので、レンズ鏡筒を交換することに起因する製造コストの上昇を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【００１５】
【図１】本発明を用いたレンズ鏡筒の図２におけるＡ−Ａ部分の断面図である。
【図２】本発明を用いたレンズ鏡筒の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【００１６】
図１に示すように、プロジェクタ用の投写レンズ１０はレンズ鏡筒１１を備えている。レンズ鏡筒１１は、プロジェクタ筐体１２の前面にネジ止めされている。レンズ鏡筒１１の内部には、収束レンズ１３、絞り板１４、結像レンズ１５、フォーカスレンズ１６が保持されている。これらの各部材は光軸Ｐ（中心軸）に沿って並べて配置されている。絞り板１４は、その厚みが０．５ｍｍで樹脂によって弾性を有するシート状に形成されている。また、収束レンズ１３や結像レンズ１５、フォーカスレンズ１６はプラスチックで形成されている。なお、各レンズは、１ブロック化して図示してあるが、これらは単レンズ又は複数枚レンズのいずれであってもよい。
【００１７】
プロジェクタ筐体１２の内部には、簡略的に示してあるが画像表示部１７が組み込まれ、フルカラーの画像光をレンズ鏡筒１１に組み込まれた投写光学系に入射させる。画像表示部１７は、例えば光源からの白色光をダイクロイックミラーで分割して得たＲ，Ｇ，Ｂの基本色光で照明される３枚の液晶パネルと、これらの液晶パネルからの画像を合成するクロスダイクロイックプリズムから構成されている。
【００１８】
画像表示部１７からの画像光（光）は収束レンズ（レンズ）１３に入射し、絞り板１４の略中央部に形成された絞り開口１４ａを通過する。絞り開口１４ａを通過した画像光は結像レンズ１５で結像され、フォーカスレンズ１６を介して図示しないスクリーンに画像が投影される。絞り開口１４ａを介して画像光を結像レンズ１５に入射させることにより、スクリーン上に投影した画像のフレアやゴーストを防止している。
【００１９】
図２に示すように、レンズ鏡筒１１の内面には、光軸Ｐに向けて突出する略直方体形状のカシメベース（段差）１１ａが形成されている。カシメベース１１ａの光軸Ｐと直交する一面１１ｂからは、光軸Ｐの軸方向と平行に延びる円柱状のカシメピン１１ｃが形成されている。カシメピン１１ｃは、絞り板１４の一方の面であって収束レンズ１３と対面する後面１４ｃに向けて突出している。また、カシメピン１１ｃは、レンズ鏡筒１１の周方向に１２０度間隔で配置した３本が１組となっており、レンズ鏡筒１１の周方向の位置を異ならせて２組の計６本形成されている。これに伴い、カシメベース１１ａも同様の配置で６箇所に形成されている。絞り板１４の絞り開口１４ａの周囲には、カシメピン１１ｃを挿入するカシメ孔１４ｂがその周方向に１２０度間隔で３箇所に形成されている。絞り板１４は、いずれか一組のカシメピン１１ｃを３つのカシメ孔１４ｂに挿入するとともに、その一方の面であって収束レンズ１３と対面する後面１４ｃを押し当て、カシメピン１１ｃを熱カシメすることにより、レンズ鏡筒１１に固定されている。他方、絞り板１４の固定に使用されていない１組のカシメピン１１ｃは予備用となっている。図１中では、熱カシメしたカシメピン１１ｃはその先端が潰れて絞り板１４に溶着した状態を示し、予備用のカシメピン１１ｃは熱カシメ前の円柱状の状態を示している。なお、カシメピン１１ｃの数及びその組数は適宜数設けてよい。
【００２０】
レンズ鏡筒１１の内面には、絞り板１４の周囲に配置されたエアー逃がし用通路１１ｄが形成されている。エアー逃がし用通路１１ｄは、光軸Ｐと平行に絞り板１４の両面側に延びるように形成された溝からなる。エアー逃がし用通路１１ｄは、レンズ鏡筒１１の周方向においては各カシメベース１１ａの間に配置されている。エアー逃がし用通路１１ｄを形成した部分では、絞り板１４の外径よりもレンズ鏡筒１１の内径が大きくなる。このため、エアー逃がし用通路１１ｄを介して絞り板１４の両面側が連通する。なお、エアー逃がし用通路１１ｄが形成された部分以外の部分では、絞り板１４の外径とレンズ鏡筒１１の内径とは同一になっており、絞り板１４の端縁がレンズ鏡筒１１の内面に当接している。
【００２１】
また、絞り板１４には、その端縁を切り欠いたエアー逃がし用切り欠き１４ｄが３箇所に形成されている。エアー逃がし用切り欠き１４ｄは、各々がカシメ孔１４ｂの間に配置されている。これにより、絞り板１４の周方向においてカシメ孔１４ｂとエアー逃がし用切り欠き１４ｄとは交互に配置されている。エアー逃がし用切り欠き１４ｄを介して、絞り板１４の後面１４ｃ側と、その他方の面である前面１４ｅ側とは連通している。上述したように、エアー逃がし用通路１１ｄは、レンズ鏡筒１１の周方向においては各カシメベース１１ａの間に配置されているため、エアー逃がし用切り欠き１４ｄはエアー逃がし用通路１１ｄと対峙している。絞り板１４をレンズ鏡筒１１に固定した状態では予備用のカシメピン１１ｃはエアー逃がし用切り欠き１４ｄから絞り板の前面１４ｅ側に突出してエアー逃がし用切り欠き１４ｄを介して逃がされている。
【００２２】
次に、上記構成による作用について説明する。
【００２３】
投写レンズ１０の組み立て時には、先ず、収束レンズ１３が絞り板１４の後面１４ｃ側（図１の画像表示部１７側）からレンズ鏡筒１１に挿入されて固定される。収束レンズ１３の固定後、絞り板１４が反対側からレンズ鏡筒１１内に挿入されるとともに、２組のカシメピン１１ｃのうちいずれか１組が絞り板１４のカシメ孔１４ｂに挿通される。この後、熱カシメが行われて絞り板１４がレンズ鏡筒１１に固定される。収束レンズ１３はプラスチックで形成されているため、熱カシメを行ったときに静電気によって塵や埃などの異物がその表面に付着しやすい。このため、絞り板１４の固定後、絞り開口１４ａを介してその前面１４ｅ側から収束レンズ１３に向けてエアーが吹き付けられ、収束レンズ１３の表面に付着した異物が除去される。収束レンズ１３に吹き付けたエアーは、収束レンズ１３の表面でその流れが変化して絞り板１４の後面１４ｃに向けて吹き付けられる。絞り板１４の後面１４ｃに吹き付けられたエアーは、エアー逃がし用通路１１ｄとエアー逃がし用切り欠き１４ｄとから前面１４ｅ側に逃げる。このため、絞り板１４の熱カシメ部分に圧力が集中してカシメピン１１ｃが破損することを防止できる。仮に、絞り板１４の固定に使用されている１組のカシメピン１１ｃが破損したときには、予備用の１組のカシメピン１１ｃを絞り板１４の固定に使用できるので、レンズ鏡筒１１を交換することなく使用できる。
【００２４】
以上のように、収束レンズ１３に吹き付けたエアーをエアー逃がし用通路１１ｄとエアー逃がし用切り欠き１４ｄとから逃がすことにより、カシメピン１１ｃの破損を防止できることに加え、レンズ鏡筒１１及び絞り板１４の重量を軽量化できるので、投写レンズ１０の重量を軽量化できる。
【００２５】
上記実施形態では、絞り板１４にエアー逃がし用切り欠き１４ｄを形成したが、絞り板１４にはエアー逃がし用切り欠き１４ｄを形成せずに、レンズ鏡筒１１にエアー逃がし用通路１１ｄのみを形成してもよい。また、エアー逃がし用通路はレンズ鏡筒１１の内面に形成した溝に限らず、例えば、従来の絞り板１４の外径をレンズ鏡筒１１の内径よりも小さくして、絞り板１４を固定したときにカシメベース１１ａと絞り板１４の周縁との隙間からエアーが逃げるようにしてもよい。
【００２６】
上記実施形態では、熱カシメによって絞り板をレンズ鏡筒に固定したが、例えば、周面の一部に切れ目を入れるとともに切れ目を入れた部分を一面側に折り曲げた金属板をネジ止めによってレンズ鏡筒に取り付け、金属板の折り曲げ部分に絞り板のカシメ開口を挿入してカシメを行う、あるいは、接着によって絞り板をレンズ鏡筒に固定するなど、絞り板をレンズ鏡筒に固定する方法は適宜の方法でよい。
【００２７】
上記実施形態では、プロジェクタに用いる投写レンズのレンズ鏡筒に本発明を適用したが例えばカメラなどプロジェクタ以外のレンズ鏡筒に本発明を適用してもよい。さらに、エアーを吹き付けるレンズは収束レンズ１３に限らず、結像レンズやオートフォーカスレンズなど他のレンズでもよい。
【符号の説明】
【００２８】
１１ レンズ鏡筒
１１ａ カシメベース
１１ｂ 一面
１１ｃ カシメピン
１１ｄ エアー逃がし用通路
１３ 収束レンズ（レンズ）
１４ 絞り板
１４ａ 絞り開口
１４ｃ 後面
１４ｄ エアー逃がし用切り欠き
１４ｅ 前面
【特許請求の範囲】
【請求項１】
略中央部に絞り開口が形成された絞り板がレンズと対面するように固定されるレンズ鏡筒において、
前記絞り開口を介して前記レンズに吹き付けたエアーを逃がすエアー逃がし用通路をその内面で前記絞り板の周囲に形成したことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項２】
前記エアー逃がし用通路は、前記内面に形成した溝からなり、
前記絞り板の端縁が切り欠かれたエアー逃がし用切り欠きが前記エアー逃がし用通路と対峙するように前記絞り板が配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項３】
前記内面から突出する段差と、前記段差からその中心軸の軸方向と平行に延びるカシメピンとを備え、
前記絞り板の前記絞り開口の周囲にカシメ孔を形成し、
前記カシメピンを前記カシメ孔に挿通して熱カシメを行うことにより前記絞り板が前記段差に固定されることを特徴とする請求項１又は２記載のレンズ鏡筒。
【請求項４】
前記段差に予備用の前記カシメピンを形成し、
前記絞り板を前記段差に固定した状態では、予備用の前記カシメピンが前記エアー逃がし用切り欠きから突出することを特徴とする請求項３記載のレンズ鏡筒。
【請求項１】
略中央部に絞り開口が形成された絞り板がレンズと対面するように固定されるレンズ鏡筒において、
前記絞り開口を介して前記レンズに吹き付けたエアーを逃がすエアー逃がし用通路をその内面で前記絞り板の周囲に形成したことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項２】
前記エアー逃がし用通路は、前記内面に形成した溝からなり、
前記絞り板の端縁が切り欠かれたエアー逃がし用切り欠きが前記エアー逃がし用通路と対峙するように前記絞り板が配置されていることを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項３】
前記内面から突出する段差と、前記段差からその中心軸の軸方向と平行に延びるカシメピンとを備え、
前記絞り板の前記絞り開口の周囲にカシメ孔を形成し、
前記カシメピンを前記カシメ孔に挿通して熱カシメを行うことにより前記絞り板が前記段差に固定されることを特徴とする請求項１又は２記載のレンズ鏡筒。
【請求項４】
前記段差に予備用の前記カシメピンを形成し、
前記絞り板を前記段差に固定した状態では、予備用の前記カシメピンが前記エアー逃がし用切り欠きから突出することを特徴とする請求項３記載のレンズ鏡筒。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２０１０−１８５９３９（Ｐ２０１０−１８５９３９Ａ）
【公開日】平成２２年８月２６日（２０１０．８．２６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−２８５００（Ｐ２００９−２８５００）
【出願日】平成２１年２月１０日（２００９．２．１０）
【出願人】（０００００５４３０）フジノン株式会社 (2,231)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年８月２６日（２０１０．８．２６）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年２月１０日（２００９．２．１０）
【出願人】（０００００５４３０）フジノン株式会社 (2,231)
【Ｆターム（参考）】
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