説明

レンズ鏡胴及び撮像装置

【課題】簡単な構造で且つ、退避位置及び撮影位置との両方で、レンズ群を確実に保持することができるレンズ鏡胴及び撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明のレンズ鏡胴は、入れ子状に重なって繰出し及び繰込み可能な複数の筒体を含み、繰り出された複数の筒体を繰込んで沈胴する鏡胴と、鏡胴に収納された複数のレンズ群を含む光学系と、複数の筒体を繰り出した状態で光軸上に配置されるレンズ群であって、鏡胴の沈胴に伴い光軸から外れた位置に退避されるレンズ群を保持するレンズ保持体と、鏡胴が繰込まれた状態及び繰出した状態で、ばねの付勢力によってレンズ保持体の位置を保持するトグル機構と、を備え、トグル機構は、スライドする前記レンズ保持体の所定位置を境に前記ばねの付勢力の向きが切り換わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡胴及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、デジタルカメラが広く普及している。デジタルカメラでは、小型化、薄型化とともに、益々の高画質化が求められてきている。このニーズに合うデジタルカメラの一つとして、沈胴式のレンズ鏡胴を備えた撮像装置が提案されている。このようなレンズ鏡胴は、同軸に配置された複数の筒体を有し、これら筒体が繰り出され、また沈胴する鏡胴を備えた構成である。また、鏡胴には、光学系が収容されている。レンズ鏡胴は、撮影するとき以外のときでは複数の筒体を沈胴させることで短尺化することができ、よって、撮像装置を小型化することが可能となる。
【0003】
レンズ鏡胴としては、変倍調整を行う変倍レンズ群、フォーカス調整を行うフォーカスレンズ群、その他のレンズ群が鏡筒内に光軸方向に並べて収容され、更に、シャッタ或いは絞り等の光量制御部材を備えたものである。撮像装置は、固体撮像素子を備え、レンズ鏡胴に入射した光を固体撮像素子の撮像面に結像させることで画像を得る。
【0004】
現在、レンズ鏡胴としては、沈胴時に、レンズ群同士が干渉することを回避するため、複数のレンズ群のうち一部を光軸から外れる位置へ退避させ、レンズ鏡胴を更に短尺化することを可能とするものが提案されている。
【0005】
特許文献1には、第1〜第4レンズ群を備え、第3レンズ群を光軸から外れる位置へ退避させるレンズ鏡胴を備えたデジタルカメラが記載されている。このデジタルカメラは、レンズ鏡胴が撮影状態であるとき、退避レンズ群を磁力により撮影位置で保持する。このような構成では、退避レンズ群を磁力により保持するための磁性体を設ける必要があり、構成が複雑になる点で改善の余地がある。
【0006】
特許文献2には、複数のレンズ群を備え、収納状態への移行に伴って退避レンズ群を撮影光軸から退避させるとともに撮影状態への移行に伴って該退避レンズ群を撮影光軸上に進出させるレンズ進退機構を備えたレンズ鏡胴が記載されている。このレンズ鏡胴は、退避レンズ群を所定の第1の回動方向に回動させるバネ部材と、筒長の変更に伴ってバネ部材の付勢力に抗して第1の回動方向とは逆向きの第2の回動方向に回動させるカム機構とを備えている。このような構成では、退避レンズ群を第1の回動方向と第2の回動方向のそれぞれで回動するための機構が異なるため、構成が複雑になる点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−145757号公報
【特許文献2】特開2006−91910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、レンズ群を退避させる機構を持ったレンズ鏡胴では、通常の撮影状態では、退避するレンズ群を光軸上の位置で保持するとともに、鏡胴の沈胴時には退避位置で退避したレンズ群を保持する必要がある。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、簡単な構造で且つ、退避位置及び撮影位置との両方で、レンズ群を確実に保持することができるレンズ鏡胴及び撮像装置を提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)入れ子状に重なって繰出し及び繰込み可能な複数の筒体を含み、繰り出された前記複数の筒体を繰込んで沈胴する鏡胴と、
前記鏡胴に収納された複数のレンズ群を含む光学系と、
前記複数の筒体を繰り出した状態で光軸上に配置されるレンズ群であって、前記鏡胴の沈胴に伴い光軸から外れた位置に退避される前記レンズ群を保持するレンズ保持体と、
前記鏡胴が繰込まれた状態及び繰出した状態で、ばねの付勢力によって前記レンズ保持体の位置を保持するトグル機構と、を備え、
前記トグル機構は、移動する前記レンズ保持体の所定位置を境に前記ばねの付勢力の向きが切り換わるレンズ鏡胴。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構造で且つ、退避位置及び撮影位置との両方で、レンズ群を確実に保持することができるレンズ鏡胴及び撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を説明するための、撮像装置の一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1の撮像装置を、レンズ鏡胴がテレ端まで繰出された状態で示す外観斜視図である。
【図3】図1の撮像装置の内部構造を、レンズ鏡胴が沈胴位置まで沈胴した状態で示す斜視図である。
【図4】図1の撮像装置の内部構造を、レンズ鏡胴が沈胴位置まで沈胴した状態で示す断面図である。
【図5】図1の撮像装置の内部構造を、レンズ鏡胴がワイド端まで繰出された状態で示す断面図である。
【図6】図1の撮像装置の内部構造を、レンズ鏡胴がテレ端まで繰出された状態で示す断面図である。
【図7】図1のレンズ鏡胴を分解して示す斜視図である。
【図8】第3レンズ群を含む3群ユニットの構成を示す外観斜視図である。
【図9】第3レンズ群を含む3群ユニットの構成を示す外観斜視図である。
【図10】第3レンズ群を含む3群ユニットを分解して示す斜視図である。
【図11】第3レンズ群をスライドする機構を示す外観斜視図である。
【図12】レンズ鏡胴が沈胴位置からワイド端まで繰出される際の、第3レンズ群の移動を説明する図である。
【図13】レンズ鏡胴がワイド端から沈胴位置まで繰込まれる際の、第3レンズ群の移動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、撮像装置の一例を示す。図1は、レンズ鏡胴が不使用時の沈胴位置まで繰込まれた状態で示されている。図2は、図1の撮像装置を、レンズ鏡胴がテレ端まで繰出された状態で示す外観斜視図である。
【0014】
撮像装置1は、光学系を収納したレンズ鏡胴2と、CCDやCMOSなどの固体撮像素子を含む図示しない撮像ユニットと、を備えている。
【0015】
レンズ鏡胴2は、入れ子状に重ねられる第1筒体3、第2筒体4、第3筒体5、及び最も外側の第3筒体5に外嵌する収容筒30を有する本体6を含んでいる。第3筒体5は本体6に対して、第2筒体4は第3筒体5に対して、そして第1筒体3は第2筒体4に対して、それぞれ光軸方向(図中矢印Z方向)に繰出され、また、繰込まれる。これら第1筒体3、第2筒体4、及び第3筒体5の繰出し及び繰込みにより、レンズ鏡胴2の繰出し及び沈胴が行われる。
【0016】
撮像ユニットは、レンズ鏡胴2の後側(像側)に取り付けられている。
【0017】
図3から図6は、撮像装置1の内部構造を示す。なお、図3には、レンズ鏡胴が沈胴位置まで繰込まれた状態で示されている。図4には、レンズ鏡胴が沈胴位置まで繰込まれた状態が示されている。図5には、レンズ鏡胴がワイド端まで繰出された状態が示されている。図6には、レンズ鏡胴がテレ端まで繰出された状態が示されている。
【0018】
レンズ鏡胴2に収納された光学系は、第1レンズ群101、第2レンズ群201、シャッタ701、第3レンズ群301、第4レンズ群401で構成され、これらの光学要素は前側(被写体側)からこの順に並んで配置される。
【0019】
第1レンズ群101を含む1群ユニット100は、第1筒体3内に収容されている。第2レンズ群201を含む2群ユニット200は、第2筒体4内に収容されている。シャッタ701を含むシャッタユニット700、第3レンズ群301を含む3群ユニット300は、第3筒体5内に収容されている。第4レンズ群401を含む4群ユニット400は、本体6の後部に取り付けられ、第4レンズ群401は、本体6の収容筒30内に収容されている。
【0020】
第1レンズ群101及び第2レンズ群201、並びに第3レンズ群301は、ズーム倍率、即ち、焦点距離を調整するためのズーム光学系を構成する。第1レンズ群101及び第2レンズ群201は、変倍系レンズ群であり、第3レンズ群301は、補正系レンズ群である。レンズ鏡胴2の繰出し及び繰込みに伴って、第1レンズ群101及び第2レンズ群201が光軸に沿って進退し、それによって焦点距離が変化する。これに同期して、第3レンズ群301もまた、光軸に沿って進退し、それによって、変倍に起因する焦点位置の変化が抑止される。
【0021】
シャッタ701は、その開閉によって露光を制御する。なお、開度を可変として絞りを兼ねる場合もある。シャッタ701は、第3レンズ群301の被写体側に隣り合って配置されており、レンズ鏡胴2の繰出し及び繰込みに伴って、第3レンズ群301との間に略一定の間隔をおくように、光軸に沿って進退する。
【0022】
第4レンズ群401は、最終的に像を結像させるための光学系を構成する。第4レンズ群401は、レンズ鏡胴2がテレ端からワイド端の範囲で繰出されている間は、レンズ鏡胴2の繰出しによらず、位置は不変である。
【0023】
図示しない撮像ユニットに含まれる固体撮像素子は、上記の光学系の結像点に配置されている。
【0024】
図3及び図4に示すように、レンズ鏡胴2が沈胴位置まで繰込まれた状態では、第3レンズ群301が、その他の光学要素(第1レンズ群101、第2レンズ群201、シャッタ701、第4レンズ群401)の光軸から外れた位置に退避される。
【0025】
第3レンズ群301が退避されて生じたスペースには第4レンズ群401が配置され、第3レンズ群301及び第4レンズ群401は、光軸とほぼ直交する方向(図中のY方向)に並んでいる。
【0026】
以下、レンズ鏡胴2の沈胴機構、即ち第1筒体3、第2筒体4、及び第3筒体5の繰出し及び繰込み機構について説明し、併せてレンズ鏡胴2の繰出し及び繰込みに伴って光軸に沿って進退する光学要素(第1レンズ群101、第2レンズ群201、第3レンズ群301)の進退機構について説明する。
【0027】
図7は、レンズ鏡胴2を分解した状態を示している。
【0028】
レンズ鏡筒2の繰出し及び繰込み機構について説明する。
【0029】
第3筒体5は、外側に位置する筒体である回転筒10と、回転筒10に回転自在に内嵌する直進筒11とで構成されている。回転筒10と、直進筒11とは、光軸方向の被写体側端部において互いに嵌合している。このため、回転筒10と、直進筒11とは光軸方向に一体となって進退する。
【0030】
回転筒10の後端部の外周面には、複数のギヤ歯13が形成されている。ギヤ歯13は、雄ヘリコイドのヘリコイド山に光軸方向の溝を所定間隔で刻設することによって形成されている。このように、回転筒10の外周面において、ギヤ歯13と雄ヘリコイドが併設されている。
【0031】
本体6の収容筒30には、その内と外とを連通する窓が形成されており、そこに柱状のギヤ31が配置されている。このギヤ31は、第3筒体5の回転筒10に形成されたギヤ歯13に噛み合う。そして、収容筒30には、このギヤ31を回転駆動する沈胴用モータ34が取り付けられている。
【0032】
また、収容筒30の内周面には、周方向に等間隔をおいて3つのキー溝33が形成されている。これらのキー溝33は、光軸に沿って直線状に形成されており、第3筒体5の直進筒11のガイド突起15が係合する。
【0033】
回転筒10は、モータ34によって回動し、また、回転筒10の外周面に形成された雄ヘリコイド(ギヤ歯13と兼用)と収容筒30の内周面に形成された雌ヘリコイド35からなるヘリコイド機構により、光軸方向に進出する。また、回転筒10が進出すると、直進筒11も同時に回転筒10と一体となって光軸方向に進出する。こうして、第3筒体5は本体6の収容筒30に対する繰出し及び繰込みがなされる。
【0034】
シャッタ701を含むシャッタユニット700、第3レンズ群301を含む3群ユニット300は、前側からこの順に並んで第3筒体5内に収容される。3群ユニット300は、直進筒11の内周面に形成された光軸方向に沿って延びるキー溝(不図示)に係合しており、繰出し及び繰込み時には光軸方向に沿って直進するように案内される。シャッタユニット700は、3群ユニット300の光軸方向の被写体側に組み付けられており、3群ユニット300と一体に光軸に沿って進退する。
【0035】
シャッタユニット700は、シャッタ701を保持するホルダ702を有している。シャッタ701は、ホルダ702の中央に形成された開口部に設けられる。ホルダ702には、カムピン703が設けられている。
【0036】
第3レンズ群301を含む3群ユニット300は、第3レンズ群301を保持するホルダ302を有する。
【0037】
第2筒体は、外筒40と、外筒40の内周面に回転自在に内嵌するカム筒42とを備えている。外筒40と、カム筒42は、光軸方向において撮像面側である後端で互いに嵌合している。外筒40とカム筒42は相対回転可能であって光軸方向には一体的に移動する。外筒40は外周面に3本のピン(不図示)を備え、このピンが直進筒11の内周面に設けられた光軸方向のキー溝(不図示)に係合している。カム筒42の後端部には周方向に等間隔で3つのカムピン45が設けられている。
【0038】
カム筒42のカムピン45は直進筒11のカム溝21を貫いて回転筒10の内周面に形成された光軸方向のキー溝(不図示)に係合している。従って、カム筒42は回転筒10と一体的に回転し、回転筒10に対して光軸方向に進退する。
【0039】
カム筒42の内周にはカム溝47が設けられており、このカム溝47にカムピン703が係合することによって、3群ユニット300とシャッタユニット700を光軸方向へ直進するように案内する。。
【0040】
第2レンズ群201を含む2群ユニット200は、第2レンズ群201を保持するホルダ202を有する。第2レンズ群201は、ホルダ202における円盤状部分の中央に形成された開口部に配置されている。ホルダ202の外周部には、カムピン212が設けられている。2群ユニットは200は、3群ユニット300に係合するキー嵌合部を有しており、繰出し及び繰込み時に、回転することなく光軸方向に沿って直進するように案内される。
【0041】
2群ユニット200は、そのカムピン212を、第2筒体4のカム筒42のカム溝46に係合させる。第2筒体4の繰出し及び繰込みに伴いカム筒42が回転すると、2群ユニット200は、第2筒体4内で光軸に沿って進退する。
【0042】
第1筒体3は、第1レンズ群を含む1群ユニット100と、外筒120とを備えている。
第1レンズ群101を含む1群ユニット100は、第1レンズ群101を保持する円筒形状のホルダ102を有する。第1レンズ群101は、ホルダ102の中央に形成された開口部に配置されている。
【0043】
第1筒体3は、図示しないキー嵌合部によって第2筒体4と嵌合しており、繰出し及び繰込み時には、回転することなく、光軸方向に沿って直進するように案内される。第1筒体3の内面には不図示のカム溝が形成されている。そのカム溝にカムピン43が係合しており、カム筒42の回転に従って、第1筒体3は回転せずに光軸方向に進退する。
【0044】
第3筒体5の後端には、環状のカムプレート50が設けられている。繰出し及び繰込み時には、カムプレート50は、第3筒体と一体となって進退する。また、カムプレート50の外周にギヤ歯51が形成されている。カムプレート50は、ギヤ歯51が収容筒30に設けられたギヤ31に係合させており、ギヤ31の回転駆動によって、X−Y平面において回転する。
【0045】
また、カムプレート50は、内周側に突出する第1の係合部52と、第2の係合部53とを有する。カムプレート50は、回転し、第1の係合部52及び第2の係合部53を3群ユニット300と係合させることによって、第3レンズ群を退避する位置と撮影する際の位置との間で移動させる係合部材である。カムプレート50の形状はこれに限定されず、3群ユニット300と係合して第3レンズ群301を退避する位置と撮影する際の位置との間で移動させることが可能である範囲で適宜変更することができる。
【0046】
次に、第3レンズ群を含む3群ユニットの構成を説明する。
【0047】
図8は、第3レンズ群を含む3群ユニットの構成を示す外観斜視図である。図9は、図8の矢印Z方向反対側から見た外観斜視図である。図10は、3群ユニットを分解して示す斜視図である。
【0048】
3群ユニット300は、第3レンズ群301を直接保持する板状の防振部材312と、該防振部材312を4つのスプリング313を介して支持する板状のベース部材314とを備えている。防振部材312は、ベース部材314に対してスプリングの伸縮によって相対変位可能に一体に連結されており、防振部材312とベース部材314とは第3レンズ群301を保持するレンズ保持体を構成する。
【0049】
防振部材312は、中央に第3レンズ群301を嵌め込む開口が形成され、その開口の周囲に、一対のマグネット316、及び一対のコイル317が組み付けられている。
【0050】
ベース部材314には、中央に防振部材312の開口より僅かに径が大きな開口が形成され、ベース部材314のこの開口から、防振部材312に保持された第3レンズ群301の前側部分が、ホルダ302側に露呈する。
【0051】
ベース部材314には、一対のマグネット315が組み付けられている。これら一対のマグネット315はそれぞれ、防振部材312に組み付けられた一対のコイル317とZ方向に向かい合うように配置されている。
【0052】
また、図示しないが、ベース部材314には、2つの開口部319が設けられ、これら開口部319にはそれぞれホール素子311が組み付けられている。2つのホール素子311はそれぞれが、防振部材312の一対のマグネット316とZ方向に向かい合うように配置されている。
【0053】
ベース部材314は、防振部材312とは反対側の面に、一対のマグネット315から漏れ出る磁束を遮断するためのシールド板318が2つ設けられている。
【0054】
また、防振部材312及びベース部材314には、一対のコイル317に電流を供給するためのフレキシブル基板310が固定されている。
【0055】
3群ユニット300は、フレキシブル基板310によってコイル317に電流を供給することで、コイル317とマグネット315との間に磁場を発生させ、この磁場で生じた力によって防振部材312を、光軸に対して垂直な面内、つまりX−Y平面に対して平行な面内において所望の方向に移動させる。また、ホール素子311は、マグネット316のX−Y平面における変位を検出する。このように、3群ユニット300は、防振部材312に保持された第3レンズ群301の位置をX−Y平面に対して平行な面で移動させることで、撮影時に像ブレのブレ補正を行うことができる機構を備えている。
【0056】
また、3群ユニット300は、ホルダ302に2本のガイドシャフト320を備えている。2本のガイドシャフト320はともにY方向に沿った軸を有し、互いに平行に配されている。2本のガイドシャフト320はそれぞれ、ベース部材314に挿通され、ホルダ302に固定されている。こうして、ベース部材314は、ガイドシャフト320によってY方向とその反対方向にスライド可能な状態でホルダ302に支持されている。
【0057】
さらに、3群ユニット300は、ホルダ302とベース部材314との間に配された、トグルばね330を備えている。トグルばね330は、Ω(オーム)形状のオームばねで形成される。なお、トグルばねの形状は特に限定されない。
【0058】
図9及び図10に示すように、トグルばね330は、一端331がベース部材314における係止部321に係止され、他端332がホルダ302の係止部322に係止されている。
【0059】
X−Y平面において、ホルダ302の係止部322の位置は変わらないが、ベース部材の係止部321の位置は、ベース部材の位置に応じて変化する。そして、トグルばね330は、X−Y平面において一端331と他端332との相対的な位置関係が変化することによって、該トグルばね330の付勢力の向きが切り換わる。具体的には、トグルばね330は、X−Y平面において、他端332側から一端331側に離れる向きの付勢力が加わっており、他端332に対して一端331の位置が変わった場合に、変位した一端331側に他端332側から離れる向きの付勢力が加わる。
【0060】
次に、ベース部材314及び防振部材312をスライドする機構について説明する。
【0061】
図11は、第3レンズ群をスライドする機構を示す外観斜視図である。
ベース部材314には、カムプレート50の第1の係合部52に係合する第1の係合突部342と、第2の係合部53に係合する第2の係合突部343が形成されている。
【0062】
ホルダ302には凹部350が形成されている。凹部350には、退避された第3レンズ群301の前方端部が収容される。
【0063】
レンズ鏡胴を沈胴の状態から繰り出した状態とするとき、カムプレート50を回動させ、第1の係合部52をベース部材314の第1の係合突部342に係合させ、ベース部材314をY方向の反対側にスライドさせる。カムプレート50の回動を開始した時点では、ベース部材314はトグルばね330によってY方向側に付勢されている。そして、ベース部材314がY方向の反対側にある程度進んだ位置を境として、トグルばね330の付勢力がかかる方向が反転し、ベース部材314がY方向の反対側に付勢される。
【0064】
レンズ鏡胴2を繰り出した状態から沈胴の状態とするとき、カムプレート50を回動させ、第2の係合部53をベース部材314の第2の係合突部343に係合させ、ベース部材314をY方向にスライドさせる。カムプレート50の回動を開始した時点では、ベース部材314はトグルばね330によってY方向の反対側に付勢されている。そして、ベース部材314がY方向にある程度進んだ位置を境として、トグルばね330の付勢力がかかる方向が反転し、ベース部材314がY方向に付勢される。
【0065】
次に、ベース部材314をスライドさせる動作を説明する。
【0066】
図12は、レンズ鏡胴が沈胴位置からワイド端まで繰出される際の、第3レンズ群のスライド動作を説明する図である。
【0067】
図12(a)に示すように、レンズ鏡胴の沈胴時には、ベース部材314がトグルばね330の付勢力によって光軸上の位置から退避した位置に保持されている。
【0068】
図12(b)に示すように、レンズ鏡胴をワイド端の位置まで繰り出すとき、カムプレート50が図中矢印方向に回動し、第1の係合部52がベース部材314の第1の係合突部342に係合する。ベース部材314には、第1の係合突部342によって、トグルばね330の付勢力に抗して、Y方向の反対側へスライドする力が加わる。そして、ベース部材314がY方向の反対側に進み、所定の位置を境として、トグルばね330の付勢力の向きが反転し、ベース部材314をY方向の反対側に付勢する。すると、図12(c)に示すように、ベース部材314は、トグルばね330の付勢力によってY方向の反対側へスライドし、第3レンズ群301の光軸が他の光学系の光軸と一致する位置(撮影位置)に到達する。
【0069】
図12(c)に示すように第3レンズ群301が撮影位置にある状態で、ベース部材314は、トグルばね330によるY方向とは反対向きの付勢力によって保持されている。
【0070】
図13は、レンズ鏡胴がワイド端から沈胴位置まで繰込まれる際の、第3レンズ群のスライド動作を説明する図である。
【0071】
図13(a)に示すように、レンズ鏡胴の繰出し時には、ベース部材314がトグルばね330の付勢力によって、第3レンズ群301の光軸が他の光学系の光軸と一致させた撮影位置に保持されている。
【0072】
図13(b)に示すように、レンズ鏡胴を沈胴するとき、カムプレート50が図中矢印方向に回動し、第2の係合部53がベース部材314の第2の係合突部343に係合する。ベース部材314には、第2の係合突部343によって、トグルばね330の付勢力に抗して、Y方向へスライドする力が加わる。そして、ベース部材314がY方向に進み、所定の位置を境として、トグルばね330の付勢力の向きが反転し、ベース部材314をY方向に付勢する。すると、図13(c)に示すように、ベース部材314は、トグルばね330の付勢力によってY方向へスライドし、第3レンズ群301の光軸が他の光学系の光軸から退避した位置に到達する。
【0073】
図13(c)に示すように第3レンズ群301が退避した位置にある状態で、ベース部材314は、トグルばね330のY方向の付勢力によって保持されている。
【0074】
上述したレンズ鏡胴及び撮像装置によれば、トグルばねの付勢力によって、第3レンズ群を退避した位置と撮影位置との両方で保持することができ、レンズ群のがたつきが生じることを防止できる。また、それぞれの位置において別々の保持機構を設ける必要がなく、構造の複雑化や大型化を避けることができる。
【0075】
また、レンズ鏡胴及び撮像装置は、第3レンズ群を保持する3群ユニットにブレ補正機構が設けられた構成であるが、レンズ鏡胴の沈胴時には、ブレ補正機構全体を退避可能な構成であるため、ブレ補正機構によって沈胴時のレンズ鏡胴の小型化が妨げられることを回避することができる。
【0076】
本明細書は次の事項を開示する。
(1)入れ子状に重なって繰出し及び繰込み可能な複数の筒体を含み、繰り出された前記複数の筒体を繰込んで沈胴する鏡胴と、
前記鏡胴に収納された複数のレンズ群を含む光学系と、
前記複数の筒体を繰り出した状態で光軸上に配置されるレンズ群であって、前記鏡胴の沈胴に伴い光軸から外れた位置に退避される前記レンズ群を保持するレンズ保持体と、
前記鏡胴が繰込まれた状態及び繰出した状態で、ばねの付勢力によって前記レンズ保持体の位置を保持するトグル機構と、を備え、
前記トグル機構は、移動する前記レンズ保持体の所定位置を境に前記ばねの付勢力の向きが切り換わるレンズ鏡胴。
(2)(1)に記載のレンズ鏡胴であって、
前記鏡胴の繰込み及び繰出しに伴って変位し、前記レンズ保持体と係合して、該レンズ保持体を光軸上の位置から退避する位置へ移動させる係合部材を備えるレンズ鏡胴。
(3)(1)又は(2)に記載のレンズ鏡胴であって、
前記ばねは、一端が前記レンズ保持体をスライド可能に保持するホルダに係止され、他端が光軸から外れた位置に退避される前記レンズ群に係止されたトグルばねであるレンズ鏡胴。
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載のレンズ鏡胴であって、
前記レンズ保持体がベース部材と、該ベース部材に支持された防振部材とを備え、該防振部材を光軸に対して垂直な面内で移動させるブレ補正機構を備えるレンズ鏡胴。
(5)(1)から(4)のいずれか1つに記載のレンズ鏡胴と、
前記レンズ鏡胴の前記光学系の結像点に配置される撮像素子と、を備える撮像装置。
【符号の説明】
【0077】
1 撮像装置
2 レンズ鏡筒
3 第1筒体
4 第2筒体
5 第3筒体
6 本体
50 カムプレート(係合部材)
52 第1の係合部
53 第2の係合部
100 1群ユニット
101 第1レンズ群
200 2群ユニット
201 第2レンズ群
300 3群ユニット
301 第3レンズ群
312 ベース部材
314 防振部材
320 ガイドシャフト
330 トグルばね
342 第1の係合突部
343 第2の係合突部
400 4群ユニット
401 第4レンズ群
700 シャッタユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入れ子状に重なって繰出し及び繰込み可能な複数の筒体を含み、繰り出された前記複数の筒体を繰込んで沈胴する鏡胴と、
前記鏡胴に収納された複数のレンズ群を含む光学系と、
前記複数の筒体を繰り出した状態で光軸上に配置されるレンズ群であって、前記鏡胴の沈胴に伴い光軸から外れた位置に退避される前記レンズ群を保持するレンズ保持体と、
前記鏡胴が繰込まれた状態及び繰出した状態で、ばねの付勢力によって前記レンズ保持体の位置を保持するトグル機構と、を備え、
前記トグル機構は、移動する前記レンズ保持体の所定位置を境に前記ばねの付勢力の向きが切り換わるレンズ鏡胴。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ鏡胴であって、
前記鏡胴の繰込み及び繰出しに伴って変位し、前記レンズ保持体と係合して、該レンズ保持体を光軸上の位置から退避する位置へ移動させる係合部材を備えるレンズ鏡胴。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレンズ鏡胴であって、
前記ばねは、一端が前記レンズ保持体をスライド可能に保持するホルダに係止され、他端が光軸から外れた位置に退避される前記レンズ群に係止されたトグルばねであるレンズ鏡胴。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のレンズ鏡胴であって、
前記レンズ保持体がベース部材と、該ベース部材に支持された防振部材とを備え、該防振部材を光軸に対して垂直な面内で移動させるブレ補正機構を備えるレンズ鏡胴。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ鏡胴と、
前記レンズ鏡胴の前記光学系の結像点に配置される撮像素子と、を備える撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−79996(P2013−79996A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218523(P2011−218523)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】